説明

両面接着性感圧接着シート

【課題】水分散型の感圧接着剤組成物から形成された粘着剤層を有し、層間破壊を起こさずに再剥離することのできる両面粘着シートを提供すること。
【解決手段】本発明に係る両面粘着シート11は、水分散型の粘着剤組成物を用いて形成された粘着剤層2と、該粘着剤層を支持する不織布基材1とを備える。不織布基材1は、構成繊維として麻を含有し、ビスコースおよびデンプンからなる群から選択される含浸剤で加工されている。不織布基材1の坪量は凡そ7g/m〜17g/mである。この両面粘着シート11は、良好な粘着特性を示し、かつ層間破壊を起こさずに再剥離することができるので、例えばリサイクル用の部品を固定する用途に好適である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、不織布を基材とし、水分散型の感圧接着剤組成物を用いて形成された感圧接着剤層を有する両面接着性感圧接着シートに関する。特に、リサイクル用の部品に貼り付けて用いるのに適した両面接着性感圧接着シートに関する。
【背景技術】
【0002】
不織布を基材(支持体)とする両面接着型の感圧接着シート(両面粘着シート)は、作業性がよく接着の信頼性の高い接合手段として家電製品から自動車、OA機器等の各種産業分野において広く利用されている。また、近年、省資源の観点から、製品に使用されているリサイクル可能な部品については、使用後に製品を分解して該部品またはその構成素材を再利用(リサイクル)することが多くなってきている。両面粘着シートを利用して互いに接合された部品またはその構成素材を再利用する際には、通常、まず該両面粘着シートによる接合部を引き剥がして部品同士を分離し、その後、該部品から両面粘着シート単体を分離(再剥離)するという手順をとる。このとき、初期の部品引き剥がし(分解)工程において上記両面粘着シートが不織布の内部で厚み方向に引き裂かれる態様の破壊(層間破壊)を起こすと、その厚み方向に裂けた不織布が剥き出しとなった両面粘着シートの残渣が分解された両部品の表面に付着した状態となり、かかる残渣を部品表面から取り除く作業によってリサイクル工程の効率が著しく低下してしまう。このような層間破壊の防止に関する従来技術文献として特許文献1〜3が挙げられる。
【0003】
【特許文献1】特開2006−143856号公報
【特許文献2】特開2001−152111号公報
【特許文献3】特開2000−265140号公報
【0004】
上記のように接合手段として用いられる両面粘着シートには、粘着力とともに、被着体の表面形状(凹凸、曲がり等)に対して良好に追随する性質(曲面接着性の高さまたは反撥性の低さとしても把握され得る。)が要求されることが多い。かかる追随性が不足すると、貼付面が非平面形状(曲面形状等)である部品の接合に使用された場合に、接合部の浮き、剥がれ等が生じやすくなるためである。リサイクル用部品に貼り付けて用いられる両面粘着シートにおいても、リサイクルを行わない場合と同様に、当該粘着シートの使用目的を果たすに足る粘着性能(粘着力、曲面接着性等)が併せて要求されることは言うまでもない。したがって、上述した層間破壊の問題への対応策として、層間破壊が生じなくなるまで単に粘着力を下げるという安易な解決方法を採用するのでは不十分である。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、これまで両面粘着シートの製造に使用される感圧接着剤組成物としては、有機溶剤に感圧接着成分(ポリマー等)を溶解させた溶剤型の組成物が主流であった。しかし近年では、環境への配慮、両面粘着シートから放散する揮発性有機化合物(Volatile Organic Compounds;VOC)量の低減等の観点から、感圧接着剤成分が水に分散した態様の水分散型(水性)感圧接着剤組成物の使用が好まれる傾向にある。このような水分散型の感圧接着剤組成物への転換は、両面粘着シート用の感圧接着剤組成物に限らず種々の分野で検討されており、溶剤型の感圧接着剤組成物に匹敵するかあるいはこれを上回る粘着性能(上記追随性等)を実現し得る水分散型感圧接着剤組成物を目指して開発が進められている。
【0006】
しかし、水分散型感圧接着剤組成物を用いた両面粘着シートは溶剤型の感圧接着剤組成物を用いた両面粘着シートに比べて層間破壊を起こしやすい傾向にあることから、水分散型感圧接着剤組成物を用いた従来の両面粘着シートでは、粘着特性と層間破壊防止性とを高度なレベルで両立させることができなかった。このことが、両面粘着シート(特に、リサイクル用部品に貼り付けて使用される両面粘着シート)の分野において、溶剤型の感圧接着剤組成物から水分散型への転換を妨げる一因ともなっていた。
【0007】
本発明は、不織布を基材とする両面接着性感圧接着シートであって、水分散型の感圧接着剤組成物から形成された感圧接着剤層を有する両面接着性感圧接着シートでありながら粘着特性および層間破壊防止性を高レベルで両立する両面接着性感圧接着シートを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明によると、水分散型の感圧接着剤(以下、「粘着剤」ともいう。)組成物を用いて形成された感圧接着剤層と、該感圧接着剤層を支持する支持体としての不織布基材と、を備える両面接着性の感圧接着シート(以下、「両面粘着シート」ともいう。)が提供される。その両面粘着シートを構成する不織布基材は、構成繊維として麻を含有し、ビスコースおよびデンプンからなる群から選択される含浸剤で加工されている。該不織布基材の坪量は凡そ7g/m〜17g/mである。
上記不織布基材は、構成繊維として麻(典型的にはマニラ麻)を含むことから強度に優れる。また、坪量が適切な範囲にあり且つ上述した特定の含浸剤により加工されていることにより、水分散型の粘着剤組成物に由来する粘着剤層を該不織布基材に設けた構成の両面粘着テープにおいて、良好な粘着特性(例えば、粘着力、曲面接着性)を発揮し、かつ、被着体から剥離(再剥離)する際には層間破壊を起こすことなく良好に剥離することができる。
【0009】
上記水分散型感圧接着剤組成物としては、例えば、アクリル系ポリマーを主体とし、該アクリル系ポリマーが水に分散している水性エマルジョン型の感圧接着剤組成物を好ましく採用することができる。
【0010】
前記感圧接着剤層は、前記感圧接着剤組成物を予め乾燥させてなる感圧接着剤膜を前記不織布基材に積層して形成されたものであり得る。前記不織布基材の両面に上記感圧接着剤膜(粘着剤膜)を積層して形成された両面粘着シートが好ましい。ここに開示される両面粘着シートは、坪量が適切な範囲にあり且つ上述した特定の含浸剤により加工された不織布基材を備えるので、このような形成方法によっても良好な粘着特性および層間破壊防止性を示す両面粘着シートが実現され得る。予め乾燥させた粘着剤層を不織布基材に積層する上記方法によると、例えば粘着剤組成物を不織布基材に塗布した後に乾燥させて粘着剤層を形成する方法に比べて、粘着剤層の発泡が抑えられて表面状態の良好な粘着剤層が得られやすいこと等から、得られる両面粘着シートの粘着特性を向上し得る。
【0011】
ここに開示される両面粘着シートは、上述のように良好な粘着特性(例えば、粘着力、曲面接着性)を有するので、一般的な両面粘着シートと同様に各種用途(例えば、部品等の被着体を半永久的に固定する用途)に好ましく使用され得る。また、上述のように層間破壊を起こすことなく被着体から剥離(再剥離)できるという特性を有することから、特にリサイクル用の部品に貼り付けて用いられる(典型的には、リサイクル予定のある部品の固定に用いられる)両面粘着シートとして好適である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、本発明の好適な実施形態を説明する。なお、本明細書において特に言及している事項以外の事柄であって本発明の実施に必要な事柄は、当該分野における従来技術に基づく当業者の設計事項として把握され得る。本発明は、本明細書に開示されている内容と当該分野における技術常識とに基づいて実施することができる。
【0013】
本発明に係る両面粘着シート(テープ状等の長尺状のものであり得る。)は、例えば、図1または図2に模式的に示される断面構造を有するものであり得る。図1に示す両面粘着シート11は、不織布基材1の両面に粘着剤層2が設けられ、それらの粘着剤層2が、少なくとも該粘着剤層側が剥離面となっている剥離ライナー3によってそれぞれ保護された構成を有している。図2に示す両面粘着シート12は、不織布基材1の両面に粘着剤層2が設けられ、それらの粘着剤層のうち一方が、両面が剥離面となっている剥離ライナー3により保護された構成を有している。この種の粘着シート12は、該粘着シート12を巻回することにより他方の粘着剤層を剥離ライナー3の裏面に当接させ、該他方の粘着剤層もまた剥離ライナー3によって保護された構成とすることができる。なお、図1および図2では図解の便宜のため粘着剤層2と不織布基材1との界面を直線で表しているが、実際には不織布基材1の両面に設けられた粘着剤層2の少なくとも下部(不織布基材1側)はそれぞれ不織布基材1に含浸している。
【0014】
ここに開示される両面粘着シートに使用される不織布基材は、構成繊維として少なくとも麻を含有する。構成繊維が実質的に麻(典型的にはマニラ麻)からなる不織布基材であってもよく、麻および他の一種または二種以上の繊維からなる不織布基材であってもよい。麻とともに使用される他の繊維の好適例として、例えば、木材繊維(木材パルプ等)、レーヨン、アセテート等のセルロース系繊維が挙げられる。上記他の繊維は、ポリエステル繊維、ポリビニルアルコール(PVA)繊維、ポリアミド繊維、ポリオレフィン繊維、ポリウレタン繊維等の繊維であってもよい。基材(不織布)構成繊維に占める麻の割合は、典型的には凡そ10質量%以上であり、好ましくは20質量%以上、より好ましくは30質量%以上である。ここに開示される両面粘着シートの好ましい一つの態様は、構成繊維が実質的にセルロース系繊維(麻、あるいは麻および他のセルロース系繊維)からなる不織布基材を備えた両面粘着シートである。なお、ここでいう「不織布」は、主として粘着テープその他の粘着シート(感圧接着シート)の分野において使用される粘着シート用不織布を指す概念であって、典型的には一般的な抄紙機を用いて作製されるような不織布(いわゆる「紙」と称されることもある。)をいう。
【0015】
ここに開示される両面粘着シートに使用される不織布基材は、所定の含浸剤により加工(典型的には、繊維の集積体に所定の含浸剤が含浸)された不織布基材であって、該含浸剤がビスコースおよびデンプンからなる群から選択される含浸剤であることを特徴とする。なお、ここでいう「ビスコース」の概念には、不織布(特に、両面粘着シートの基材として利用される不織布)の分野において、バインダまたは紙力増強剤として用いられるビスコース系材料が含まれる。上記分野において所謂ビスコース加工(ビスコース含浸加工)に使用されるビスコース系材料は、ここでいうビスコースの概念に包含される典型例である。同様に、ここでいう「デンプン」の概念には、上記分野においてバインダまたは紙力増強剤として用いられるデンプン系材料が含まれる。このような含浸剤による含浸加工は、例えば、該含浸剤を適当な溶媒(好ましくは水)に溶解させた含浸剤溶液を繊維集積体(不織布)に染み込ませた後に乾燥させる処理を行うことにより好ましく実施され得る。なお、ビスコースおよびデンプンからなる群から選択される含浸剤を使用する限りにおいて、含浸加工を行う方法はこれに限定されない。また、不織布構成繊維への含浸剤の付与量、含浸剤を溶解させる溶媒の組成、含浸剤溶液における含浸剤濃度、含浸操作や乾燥操作を行う具体的な態様等は、技術常識に基づいて適宜設定することができる。
【0016】
上記不織布基材の坪量は、凡そ7g/m〜17g/m(例えば、凡そ10g/m〜17g/m)の範囲にある。上記範囲よりも坪量が大きすぎると層間破壊が生じやすくなる。また、かかる過大な坪量の不織布基材を用いてなる両面粘着シートは、曲面接着性が不足しがちである。一方、上記範囲よりも坪量が小さすぎると、リサイクル工程等において分解した(両面粘着シートによる接合部を引き剥がした)部品すなわち被着体から両面粘着シート単体を再剥離する際に、該粘着シートが途中で千切れやすくなることがある。
【0017】
ここに開示される両面粘着テープにおいて粘着剤層を形成するために採用し得る手法の好適例として、(1)水分散型粘着剤組成物を剥離ライナーに付与(典型的には塗布)して乾燥させることにより該剥離ライナー上に粘着剤膜を形成し、その粘着剤膜付き剥離ライナーを不織布基材に貼り合わせて該粘着剤膜を不織布基材に転写(積層)する方法(以下、この方法を「転写法」ということもある。);(2)水分散型粘着剤組成物を不織布基材に直接付与(典型的には塗布)して乾燥させる方法(以下、この方法を「直接法」または「直接塗布法」ということもある。);等が挙げられる。これらの方法を組み合わせて用いてもよい。例えば、不織布基材の一方の面に転写法により粘着剤膜を積層し、該不織布基材の他方の面に粘着剤組成物を直接塗布してもよい。
【0018】
両面粘着シートの製造効率等の観点から、不織布基材の一方の面および他方の面の両方に転写法によって粘着剤膜を積層する方法(以下、「両面転写法」ということもある。)を特に好ましく採用し得る。ここに開示される両面粘着シートは、上述した所定の条件(坪量、構成繊維の組成、所定の含浸剤による含浸加工)を満たす不織布基材を備えることにより、かかる両面転写法を適用して製造された場合であっても、優れた粘着特性(特に曲面接着性)および層間破壊防止性を実現することができる。
【0019】
したがって、ここに開示される発明は、他の側面として、構成繊維として麻を含有しビスコースおよびデンプンからなる群から選択される含浸剤により加工された不織布基材(好ましくは、坪量7g/m〜17g/mの不織布基材)を用意すること;水分散型の感圧接着剤組成物(好ましくは、アクリル系ポリマーを主体とし、該アクリル系ポリマーが水に分散している水性エマルジョン型の感圧接着剤組成物)を予め乾燥させて感圧接着剤膜を形成すること;および、該感圧接着剤膜を前記不織布基材の両面に積層する(典型的には、剥離ライナー上に形成した前記感圧接着剤膜を前記不織布基材の両面に貼り合わせる)こと;を包含する両面粘着シート製造方法を提供する。
【0020】
特に限定するものではないが、転写法(典型的には両面転写法)を適用して両面粘着シートを製造する場合における層間破壊防止性および両面粘着シートの強度(被着体から再剥離する際の千切れにくさ)等の観点から、該不織布基材の厚さは凡そ15μm〜70μm(より好ましくは凡そ30μm〜60μm)の範囲にあることが好ましい。また、該不織布基材の嵩密度(上記坪量を上記厚さで除して算出され得る。)は凡そ0.3g/cm3〜0.5g/cm3の範囲にあることが好ましい。
【0021】
粘着剤組成物の塗布は、例えば、グラビアロールコーター、リバースロールコーター、キスロールコーター、ディップロールコーター、バーコーター、ナイフコーター、スプレーコーター等の慣用のコーターを用いて行うことができる。特に限定するものではないが、粘着剤組成物の塗布量(ここでは、不織布基材の片面側に設けられる粘着剤層当たりの塗布量をいう。)は、粘着剤の固形分換算で例えば凡そ20μm〜150μm(典型的には凡そ40μm〜100μm)の粘着剤層が形成される程度の量とすることができる。好ましい塗布量の下限は、使用する不織布基材の性状によっても異なり得る。通常は、不織布基材の片面当たり、該不織布基材の厚さに対して凡そ0.5倍〜10倍(好ましくは凡そ1倍〜5倍、より好ましくは凡そ1倍〜3倍)の厚さの粘着剤層が形成される程度の塗布量とすることが適当である。架橋反応の促進、製造効率向上等の観点から、粘着剤組成物の乾燥は加熱下で行うことが好ましい。被塗布物(剥離ライナーおよび/または不織布基材)の材質にもよるが、通常は例えば凡そ40〜120℃程度の乾燥温度を好ましく採用することができる。
【0022】
ここに開示される両面粘着シートにおいて粘着剤層の形成に用いられる水分散型粘着剤組成物としては、粘着成分として機能し得るアクリル系、ポリエステル系、ウレタン系、ポリエーテル系、ゴム系、シリコーン系、ポリアミド系、フッ素系等の公知の各種ポリマーが水に分散した形態の水分散型(典型的にはエマルジョン型)粘着剤組成物を適宜選択することができる。好ましく使用される粘着剤組成物として、アクリル系ポリマーを主体とし(すなわち、該粘着剤組成物に含まれる不揮発分(固形分)に占めるアクリル系ポリマーの質量割合が50質量%を超える割合であり)、該アクリル系ポリマーが水に分散した形態の水性エマルジョン型粘着剤組成物が例示される。
【0023】
上記アクリル系ポリマーは、アルキル(メタ)アクリレート、すなわちアルキルアルコールの(メタ)アクリル酸エステルを主モノマー(主構成単量体)とするモノマー原料を重合(典型的にはエマルジョン重合)してなる重合体であり得る。該モノマー原料を構成するアルキル(メタ)アクリレートとしては、炭素原子数2〜20(より好ましくは4〜10)のアルキルアルコールの(メタ)アクリル酸エステルが好ましい。該アルキルアルコールにおけるアルキル基の具体例としては、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、ペンチル基、イソペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、2−エチルヘキシル基、イソオクチル基、イソノニル基、イソデシル基等が挙げられる。特に好ましいアルキル(メタ)アクリレートとしてブチル(メタ)アクリレートおよび2−エチルヘキシル(メタ)アクリレートが例示される。
【0024】
上記モノマー原料は、主モノマーとしてのアルキル(メタ)アクリレートに加えて、任意成分としてその他のモノマー(共重合成分)を含有することができる。当該「その他のモノマー」は、ここで使用するアルキル(メタ)アクリレートと共重合可能な種々のモノマーから選択される一種または二種以上であり得る。例えば、カルボキシル基、水酸基、アミノ基、アミド基、エポキシ基、アルコキシシリル基等から選択される一種または二種以上の官能基を有するエチレン性不飽和単量体(官能基含有モノマー)を使用することができる。なかでもアクリル酸および/またはメタクリル酸の使用が好ましい。また、上記官能基含有モノマーとして、アクリル酸および/またはメタクリル酸に加えて、アルコキシシリル基を有する(メタ)アクリレートを好ましく使用することができる。上記官能基含有モノマーは、主モノマーたるアルキル(メタ)アクリレートとともにモノマー原料の構成成分として用いられて、該モノマー原料から得られるアクリル系ポリマーに架橋点を導入するのに役立ち得る。上記官能基含有モノマーの種類およびその含有割合(共重合割合)は、使用する架橋剤の種類およびその量、架橋反応の種類、所望する架橋の程度(架橋密度)等を考慮して適宜設定することができる。
【0025】
上記水分散型粘着剤組成物は、上記のようなモノマー原料をエマルジョン重合に付して得られたものであり得る。上記エマルジョン重合の態様は特に限定されず、従来公知の一般的な乳化重合と同様の態様により、例えば公知の各種モノマー供給方法、重合条件(重合温度、重合時間、重合圧力等)、使用材料(重合開始剤、界面活性剤等)を適宜採用して行うことができる。例えば、モノマー供給方法としては、全モノマー原料を一度に重合容器に供給する一括仕込み方式、連続供給(滴下)方式、分割供給(滴下)方式等のいずれも採用可能である。モノマー原料の一部または全部をあらかじめ水と混合して乳化し、その乳化液を反応容器内に供給してもよい。
【0026】
重合温度としては、例えば20〜100℃(典型的には40〜80℃)程度の温度を採用することができる。重合開始剤としては、アゾ系開始剤、過酸化物系開始剤、レドックス系開始剤等が例示されるが、これらに限定されない。重合開始剤の使用量は、モノマー原料100質量部に対して、例えば0.005〜1質量部程度とすることができる。
乳化剤(界面活性剤)としては、ラウリル硫酸ナトリウム、ラウリル硫酸アンモニウム、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、ポリオキシエチレンラウリル硫酸ナトリウム等のアニオン系乳化剤;ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル等のノニオン系乳化剤;等を使用できる。かかる乳化剤は、単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。乳化剤の使用量は、モノマー原料100質量部に対して、例えば凡そ0.2〜10質量部程度(好ましくは0.5〜5質量部程度)とすることができる。
【0027】
上記重合には、必要に応じて、従来公知の各種の連鎖移動剤(分子量調節剤あるいは重合度調節剤としても把握され得る。)を使用することができる。かかる連鎖移動剤は、例えば、ドデシルメルカプタン(ドデカンチオール)、グリシジルメルカプタン、2−メルカプトエタノール等のメルカプタン類から選択される一種または二種以上であり得る。なかでもドデカンチオールの使用が好ましい。連鎖移動剤の使用量は、モノマー原料100質量部に対して例えば凡そ0.001〜0.5質量部程度とすることができる。この使用量が凡そ0.02〜0.05質量部程度であってもよい。
特に限定するものではないが、かかるエマルジョン重合は、例えば、得られたアクリル系ポリマーを酢酸エチルで抽出して残った不溶分の質量割合(ゲル分率)が0質量%以上凡そ70質量%未満となるように実施され得る。また、該アクリル系ポリマーをテトラヒドロフラン(THF)で抽出した可溶分の質量平均分子量(Mw)が、標準ポリスチレン換算で、例えば凡そ50万〜100万程度となるように実施され得る。
【0028】
ここに開示される両面粘着テープにおいて粘着剤層の形成に用いられる粘着剤組成物(好ましくはアクリル系水性エマルジョン型粘着剤組成物)には、必要に応じて、一般的な架橋剤、例えばカルボジイミド系架橋剤、ヒドラジン系架橋剤、エポキシ系架橋剤、イソシアネート系架橋剤、オキサゾリン系架橋剤、アジリジン系架橋剤、金属キレート系架橋剤、シランカップリング剤等から選択される架橋剤が配合されていてもよい。これらの架橋剤は単独でまたは二種以上を組み合わせて使用し得る。特に限定するものではないが、架橋剤の使用量は、当該組成物から形成された粘着剤(すなわち、上記架橋剤による架橋後の粘着剤)を酢酸エチルで抽出して残った不溶分の質量割合(ゲル分率)が凡そ15〜70質量%(例えば凡そ30〜55質量%)となる程度の量とすることができる。
【0029】
上記粘着剤組成物には粘着付与剤が配合されていてもよい。かかる粘着付与剤としては、例えば、ロジン系樹脂、ロジン誘導体樹脂、石油系樹脂、テルペン系樹脂、フェノール系樹脂、ケトン系樹脂等の各種粘着付与剤樹脂から選択される一種または二種以上を用いることができる。粘着付与剤の配合割合は、不揮発分(固形分)換算として、ポリマー成分(例えば、アクリル系水性エマルジョン型粘着剤組成物ではアクリル系ポリマー)100質量部に対して例えば凡そ50質量部以下とすることができる。通常は、上記配合割合を凡そ30質量部以下とすることが適当である。粘着付与剤含有量の下限は特に限定されないが、通常はポリマー成分100質量部に対して凡そ1質量部以上とすることにより良好な結果が得られる。
【0030】
高温環境下における凝集力を高める等の観点から、例えば軟化点が凡そ140℃以上(典型的には140〜180℃)の粘着付与剤を好ましく採用し得る。かかる軟化点を有する粘着付与剤の市販品としては、荒川化学工業株式会社製品の商品名「スーパーエステルE−865」、「スーパーエステルE−865NT」、「スーパーエステルE−650」、「スーパーエステルE−786−60」、「タマノルE−100」、「タマノルE−200」、「タマノル803L」、「ペンセルD−160」、「ペンセルKK」;ヤスハラケミカル株式会社製品の商品名「YSポリスターS」、「YSポリスターT」、「マイティエースG」;等が例示されるが、これらに限定されない。このような粘着付与剤は、一種のみを使用してもよく、二種以上を組み合わせて使用してもよい。かかる粘着付与剤が水に分散された水分散液(粘着付与剤エマルジョン)の形態であって、かつ、有機溶剤を実質的に含有しない粘着付与剤エマルジョンの使用が特に好ましい。
【0031】
上記粘着剤組成物は、pH調整等の目的で使用される酸または塩基(アンモニア水等)を含有するものであり得る。該組成物に含有され得る他の任意成分としては、粘度調整剤、レベリング剤、可塑剤、充填剤、顔料、染料等の着色剤、安定剤、防腐剤、老化防止剤等の、水性粘着剤組成物の分野において一般的な各種の添加剤が例示される。また、該粘着剤組成物には、不織布基材への粘着剤の含浸性を高めるために、公知の濡れ向上剤が添加されていてもよい。かかる濡れ向上剤の添加は、不織布基材の少なくとも一方の面に直接法を適用して粘着剤層を形成する場合に特に有効である。このような各種添加剤については、従来公知のものを常法により使用することができ、特に本発明を特徴づけるものではないので、詳細な説明は省略する。
【0032】
ここに開示される両面粘着シートによると、水分散型の粘着剤組成物から形成された粘着剤層を有する両面粘着シート(すなわち、水分散型の粘着剤組成物を用いて製造された両面粘着シート)でありながら、優れた粘着特性および層間破壊防止性が実現され得る。例えば、後述する粘着力測定による粘着力が10N/20mm以上(典型的には、概ね10N/20mm〜15N/20mm程度)であって後述する曲面接着性試験における端末剥がれ高さが2mm以下という良好な粘着特性を示し、且つ、後述する層間破壊試験において層間破壊を起こすことなく(さらに好ましくは、糊残りを生じることもなく)剥離することができるという良好なリサイクル適性を示す両面粘着シートであり得る。
【0033】
本発明を実施するにあたって上述のような本発明の効果が発揮される理由を明らかにする必要はないが、該効果に関連し得る要因として例えば以下のことが挙げられる。すなわち、水分散型の粘着剤組成物は、溶剤型の粘着剤組成物とは異なり不均一系であることや溶剤型とは分散媒の表面張力(極性)が相違すること等により、水分散型の粘着剤組成物および/または該組成物から形成された粘着剤(粘着剤膜)は、不織布基材への含浸性が溶剤型とは大きく異なり得る。また、水分散型の粘着剤組成物を用いた両面粘着シート(特に、麻系等のセルロース系繊維からなる不織布を基材とする両面粘着シート)の製造においては、溶媒型の粘着剤組成物を用いる場合に比べて、粘着剤層の形成方法として直接法よりも転写法を採用したいとの要請が大きい。しかし、直接法に比べて転写法では、不織布基材によく含浸させて粘着剤層を設けることがさらに困難となる傾向にある。水分散型の粘着剤組成物から形成された粘着剤層を備えるこれまでの両面粘着シート(特に、リサイクル部品に貼り付けて使用される両面粘着シート)において粘着特性と層間破壊防止性との両立が困難であった一因は、該粘着剤層の不織布基材への含浸性の不足にあるものと推察される。
本発明の構成によると、特定の構成繊維を含む不織布基材において、坪量が適切な範囲にあり且つ特定の含浸剤で加工(表面処理)された不織布基材を用いることにより、水分散型の粘着剤組成物および/または該組成物から形成された粘着剤(粘着剤膜)を、上記不織布基材によく含浸させて設けることができる。このことによって、粘着特性および層間破壊防止性をより高度なレベルで両立させた両面粘着テープが実現されたものと考えられる。
【0034】
以下、本発明に関するいくつかの実施例を説明するが、本発明をかかる実施例に示すものに限定することを意図したものではない。なお、以下の説明において「部」および「%」は、特に断りがない限り質量基準である。
【0035】
<例1>
冷却管、窒素導入管、温度計および攪拌機を備えた反応容器に、2,2’−アゾビス[N−(2−カルボキシエチル)−2−メチルプロピオンアミジン]ハイドレート(開始剤)(和光純薬工業株式会社製品、商品名「VA−057」を使用した。)0.279gおよびイオン交換水100gを投入し、窒素ガスを導入しながら1時間攪拌した。これを60℃に保ち、ここにブチルアクリレート29部、2−エチルヘキシルアクリレート67部、アクリル酸4部、3−メタクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン(信越化学工業株式会社製品、商品名「KBM−503」を使用した。)0.02部、ドデカンチオール(連鎖移動剤)0.033部およびポリオキシエチレンラウリル硫酸ナトリウム(乳化剤)2部をイオン交換水41部に添加して乳化したもの(すなわち、モノマー原料のエマルジョン)400gを3時間かけて徐々に滴下して乳化重合反応を進行させた。モノマー原料エマルジョンの滴下終了後、さらに3時間同温度に保持して熟成させた。これに10%アンモニウム水を添加して液性をpH7.5に調整した。このようにして、アクリル系ポリマーの水分散液(エマルジョン)を得た。以下、このアクリル系ポリマーエマルジョンを「エマルジョン(a)」ということがある。
【0036】
上記エマルジョン(a)を構成するアクリル系ポリマーをTHFで抽出した可溶分の質量平均分子量(Mw)は67.1×10(標準ポリスチレン換算)であった。また、該アクリル系ポリマーの酢酸エチル不溶分の質量割合は47.6%であった。
【0037】
上記エマルジョン(a)に対し、該エマルジョンに含まれるアクリル系ポリマー100部当たり20部(固形分換算)の割合で粘着付与剤のエマルジョン(荒川化学工業株式会社製品、軟化点160℃の重合ロジン樹脂の水分散液、商品名「スーパーエステルE−865−NT」を使用した。)を添加して、例1に係る粘着剤組成物を得た。以下、この粘着剤組成物を「粘着剤組成物(A)」ともいう。
【0038】
上記粘着剤組成物(A)および不織布基材を用いて両面粘着シートを作製した。本例では不織布基材として、マニラ麻100%からなりビスコース含浸加工が施された不織布(日本大昭和板紙株式会社製品の薄葉紙、商品名「薄葉紙123」;以下、「不織布B1」ということもある。)を使用した。この不織布B1の坪量は12.4g/mであり、厚さは39μm、嵩密度は0.32g/cm3であった、
すなわち、両面にラミネート加工が施された上質紙にシリコーン系剥離剤を塗布してなる剥離ライナーに上記粘着剤組成物(A)を塗布し、これを100℃で3分間乾燥させて該ライナー上に厚さ約70μmの粘着剤膜を形成した。このような粘着剤膜付き剥離ライナーを2枚用意した。そのうち1枚目の粘着剤膜付き剥離ライナーを不織布基材B1の一方の面に貼り合わせた。次いで、該不織布基材B1の他方の面に2枚目の粘着剤膜付き剥離ライナーを貼り合わせた。このように不織布基材B1の両面に粘着剤膜を積層して(すなわち、不織布基材B1の両面に粘着剤膜を転写する両面転写法により)例1に係る両面粘着シートを得た。この両面粘着シートの両粘着面は、該粘着シートの作製に使用した剥離ライナーによってそのまま保護されている。
【0039】
<例2>
上記粘着剤組成物(A)を上記例1とは異なる不織布基材に付与して両面粘着シートを作製した。すなわち、本例では不織布基材として、マニラ麻、木材パルプおよびレーヨンからなりデンプンで含浸加工された不織布(日本大昭和板紙株式会社から入手可能な薄葉紙、商品名「#6004」;以下、「不織布B2」ということもある。)を使用した。この不織布B2の坪量は17g/mであり、厚さは56μm、嵩密度は0.30g/cm3であった。上記不織布B2を使用した点以外は例1と同様にして、例2に係る両面粘着シートを得た。
【0040】
<例3>
本例では、不織布基材として、マニラ麻、木材パルプおよびレーヨンからなりビスコース含浸加工が施された不織布(日本大昭和板紙株式会社から入手可能な精錬用紙;以下、「不織布B3」ということもある。)を使用した。この不織布B3の坪量は15g/mであり、厚さは35μm、嵩密度は0.43g/cm3であった。上記不織布B3を使用した点以外は例1と同様にして、例3に係る両面粘着シートを得た。
【0041】
<例4>
本例では、不織布基材として、マニラ麻100%からなりビスコース含浸加工が施された不織布(日本大昭和板紙株式会社から入手可能な不織布;以下、「不織布B4」ということもある。)を使用した。この不織布B4の坪量は14g/mであり、厚さは45μm、嵩密度は0.31g/cm3であった。上記不織布B4を使用した点以外は例1と同様にして、例4に係る両面粘着シートを得た。
【0042】
<例5>
本例では、不織布基材として、マニラ麻100%からなり樹脂含浸加工が施されていない不織布(日本大昭和板紙株式会社から入手可能な不織布;以下、「不織布B5」ということもある。)を使用した。この不織布B5の坪量は14g/mであり、厚さは53μm、嵩密度は0.26g/cm3であった。上記不織布B5を使用した点以外は例1と同様にして、例5に係る両面粘着シートを得た。
なお、例4で用いた不織布B4は、本例で用いた不織布B5にビスコース含浸加工を施したものに相当する。
【0043】
<例6>
本例では、不織布基材として、マニラ麻および木材パルプからなりカルボキシメチルセルロース(CMC)で含浸加工された不織布(三木特殊製紙株式会社から入手可能な不織布、商品名「CN−1501」;以下、「不織布B6」ということもある。)を使用した。この不織布B6の坪量は16/mであり、厚さは53μm、嵩密度は0.30g/cm3であった。上記不織布B6を使用した点以外は例1と同様にして、例6に係る両面粘着シートを得た。
【0044】
<例7>
本例では、不織布基材として、マニラ麻100%からなりCMCで含浸加工された不織布(三木特殊製紙株式会社から入手可能な不織布、商品名「CN−1805」;以下、「不織布B7」ということもある。)を使用した。この不織布B7の坪量は16.5g/mであり、厚さは77μm、嵩密度は0.22g/cm3であった。上記不織布B7を使用した点以外は例1と同様にして、例7に係る両面粘着シートを得た。
【0045】
<例8>
本例では、不織布基材として、マニラ麻100%からなりビスコース含浸加工が施された不織布(日本大昭和板紙株式会社から入手可能な不織布;以下、「不織布B8」ということもある。)を使用した。この不織布B8の坪量は18g/mであり、厚さは60μm、嵩密度は0.30g/cm3であった。上記不織布B8を使用した点以外は例1と同様にして、例8に係る両面粘着シートを得た。
【0046】
<例9>
本例では、不織布基材として、マニラ麻100%からなりビスコース含浸加工が施された不織布(日本大昭和板紙株式会社から入手可能な不織布;以下、「不織布B9」ということもある。)を使用した。この不織布B9の坪量は23.6g/mであり、厚さは81μm、嵩密度は0.29g/cm3であった。上記不織布B9を使用した点以外は例1と同様にして、例9に係る両面粘着シートを得た。
【0047】
<例10>
本例では、不織布基材として、マニラ麻100%からなりCMCで含浸加工された不織布(三木特殊製紙株式会社から入手可能な不織布、商品名「CN−2003」;以下、「不織布B10」ということもある。)を使用した。この不織布B10の坪量は21.1g/mであり、厚さは78μm、嵩密度は0.27g/cm3であった。上記不織布B10を使用した点以外は例1と同様にして、例10に係る両面粘着シートを得た。
【0048】
<例11>
本例では、不織布基材として、木材パルプおよびPET繊維からなり樹脂含浸加工が施されていない不織布(三木特殊製紙株式会社から入手可能なPET混抄紙;以下、「不織布B11」ということもある。)を使用した。この不織布B11の坪量は12g/mであり、厚さは49.8μm、嵩密度は0.24g/cm3であった。上記不織布B11を使用した点以外は例1と同様にして、例11に係る両面粘着シートを得た。
【0049】
<例12>
本例では、不織布基材として、木材パルプ100%からなり樹脂含浸加工が施されていない不織布(三木特殊製紙株式会社から入手可能なRNT原紙;以下、「不織布B12」ということもある。)を使用した。この不織布B12の坪量は14g/mであり、厚さは32.5μm、嵩密度は0.43g/cm3であった。上記不織布B12を使用した点以外は例1と同様にして、例12に係る両面粘着シートを得た。
【0050】
例1〜12により得られた両面粘着シートを作製から3日間50℃の環境下に保存した後、以下の評価試験に供した。なお、上記保存後の粘着シートから採取した粘着剤サンプルの酢酸エチル不溶分の質量割合は48%であった。
【0051】
[粘着力測定]
上記両面粘着シートの一面を保護する剥離ライナーを剥がして粘着剤層を露出させ、これを厚さ25μmのポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムに貼り付けて裏打ちした。この裏打ちされた粘着シートを幅20mm、長さ100mmのサイズにカットして試験片を作製した。被着体としてのSUS304ステンレス板に上記試験片を、2kgのローラを1往復させる方法で圧着した。これを23℃に30分間放置した後、JIS Z0237に準じ、温度23℃、相対湿度50%の測定環境下、引張試験機を使用して引張速度300mm/分、剥離角度180°の条件で接着力(N/20mm幅)を測定した。
【0052】
[曲面接着性試験]
上記両面粘着シートの一面を保護する剥離ライナーを剥がし、露出した粘着剤層を厚さ0.5mm、幅10mm、長さ90mmのアルミニウム板に貼り合わせて試験片を作製した。その試験片の長手方向をφ50mmの丸棒に沿わせて弧状に曲げた後、該試験片の他面から剥離ライナーを剥がして粘着剤層を露出させ、ラミネータを用いてポリプロピレン板に圧着した。これを23℃の環境下に24時間放置し、次いで70℃で2時間加温した後に、ポリプロピレン板表面から浮きあがった試験片端部の高さ(mm)を測定した。測定は3つの試験片を用いて行い(すなわちn=3)、それらの平均値を当該両面粘着シートの曲面接着性(端末剥がれ高さ)とした。
【0053】
[層間破壊試験]
上記両面粘着シートを15mm×15mmのサイズにカットし、その両面に厚さ0.1mm、幅20mm、長さ100mmのアルミニウム板を貼り合わせて試験片を作製した。該試験片を60℃で24時間保存した後、常温まで除冷し、上記アルミニウム板の両端を手で持って10m/分程度の速度で手によりT型剥離を行った。このようにしてアルミニウム板を剥離した(引き剥がした)後、使用した両面粘着シートの状態を目視により観察し、不織布基材層間での破壊が生じているかどうかを以下の三段階で評価した。
○:層間破壊が認められない。
△:使用した両面粘着シートの一部面積が層間破壊している。
×:使用した両面粘着シートのほぼ全面積が層間破壊している。
【0054】
[糊残り性]
上記層間破壊試験において層間破壊が認められなかったサンプルについては、さらに、アルミニウム板表面への糊残りの有無を目視にて確認し、以下の二段階で評価した。
○:糊残りは認められない。
×:糊残りが認められる。
【0055】
上記評価試験の結果を、使用した不織布基材の構成および性状(坪量、厚さ、嵩密度、繊維組成、含浸加工の有無および含浸剤の種類、引張強さ)とともに表1および表2に示した。表中の−(ハイフン)は、当該項目について評価を行っていないことを表している。なお、不織布基材の引張強さは以下のようにして測定した。すなわち、不織布基材の流れ方向が長手方向と一致するようにして該不織布基材を幅15mmの帯状にカットしたものを試験片とし、該試験片を引張試験機によりチャック間距離100mm、引張速度300mm/分の条件で引っ張ったときに観測された最大応力を、該不織布の縦方向(流れ方向)の引張強度[N/15mm]とした。また、不織布基材の幅方向が長手方向と一致するようにして該不織布基材を幅15mmの帯状にカットした試験片について同様の条件で観測された最大応力を、該不織布の横方向の引張強度[N/15mm]とした。
【0056】
【表1】

【0057】
【表2】

【0058】
これらの表からわかるように、坪量が7g/m〜17g/m(より詳しくは12g/m〜17g/m)であってビスコースまたはデンプンで加工された麻系の(構成繊維として麻を含む)不織布基材を備える例1〜4に係る両面粘着シートは、いずれも上記層間破壊試験において良好な層間破壊防止性を示した。すなわち、該両面粘着シートの層間破壊を起こすことなく、該両面粘着シートにより接合された二枚のアルミニウム板を引き剥がすことができた。また、その引き剥がされた面には糊残りも認められなかった。このように、例1〜4に係る両面粘着シートは優れたリサイクル適性を示した。さらに、例1〜4に係る両面粘着シートは、いずれも、10N/20mm以上という良好な粘着性と、端末剥がれ高さ2mm以下という良好な曲面接着性を兼ね備えるものであった。特に、含浸剤としてビスコースを使用した例1,3および4に係る両面粘着シートは、いずれも、端末剥がれ高さ0.5mm以下(さらには0.2mm以下)という特に良好な曲面接着性を示した。
一方、ビスコースおよびデンプン以外の含浸剤で含浸加工された或いは含浸加工されていない、坪量が大きすぎる、構成繊維として麻を含有しない、のうち一または二以上に該当する不織布基材を用いた例5〜12に係る両面粘着シートは、いずれも上記層間破壊試験の結果が不良であった。また、例えば不織布B5(含浸加工なし)と、不織布B4(ビスコース含浸加工)、不織布B2(デンプン含浸加工)および不織布B7(CMC含浸加工)との縦方向の引張強さの比較から判るように、ビスコース、デンプンおよびCMCのいずれを用いた含浸加工によっても不織布の引張強度が向上するにも拘らず、CMCによる含浸加工によっては層間破壊の防止および粘着性能(曲面接着性)の向上効果は認められなかった。これらの結果から、CMCにより含浸加工された不織布とは異なり、ビスコースまたはデンプンにより含浸加工された不織布では、含浸剤の種類(組成)特異的に、該不織布への粘着剤(粘着剤膜)の含浸性を高める効果が発揮されることが確認された。
【産業上の利用可能性】
【0059】
以上に説明したとおり、本発明に係る両面粘着シートは層間破壊防止性(好ましくは、さらに糊残り防止性)に優れているので、家電製品、自動車、OA機器その他の各種産業分野において、リサイクルが予定されている部品(該部品の形態でリサイクルする場合および該部品の構成素材をリサイクルする場合を含む)に貼り付けて使用される(典型的には、該部品の固定に使用される)両面粘着シートとして好適である。また、上記両面粘着シートは良好な粘着特性を兼ね備えるので、リサイクル用の部品に限定されず、種々の分野において好適に利用され得る。
【図面の簡単な説明】
【0060】
【図1】両面粘着シートの代表的な構成例を模式的に示す断面図である。
【図2】両面粘着シートの他の代表的な構成例を模式的に示す断面図である。
【符号の説明】
【0061】
1:不織布基材
2:粘着剤層
3:剥離ライナー
11,12:両面粘着シート

【特許請求の範囲】
【請求項1】
水分散型の感圧接着剤組成物を用いて形成された感圧接着剤層と、該感圧接着剤層を支持する支持体としての不織布基材と、を備える両面接着性の感圧接着シートであって、
前記不織布基材は、構成繊維として麻を含有し、ビスコースおよびデンプンからなる群から選択される含浸剤により加工された坪量7g/m〜17g/mの不織布基材である、両面接着性感圧接着シート。
【請求項2】
前記感圧接着剤組成物は、アクリル系ポリマーを主体とし、該アクリル系ポリマーが水に分散している水性エマルジョン型の感圧接着剤組成物である、請求項1に記載のシート。
【請求項3】
前記感圧接着剤層は、前記感圧接着剤組成物を予め乾燥させてなる感圧接着剤膜を前記不織布基材に積層して形成されたものである、請求項1または2に記載のシート。
【請求項4】
リサイクル用の部品に貼り付けて用いられるものであることを特徴とする、請求項1から3のいずれか一項に記載のシート。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2008−280439(P2008−280439A)
【公開日】平成20年11月20日(2008.11.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−126461(P2007−126461)
【出願日】平成19年5月11日(2007.5.11)
【出願人】(000003964)日東電工株式会社 (5,557)
【Fターム(参考)】