両面粘着テープ貼付け装置
【課題】ワークの湾曲状あるいは屈曲状のテープ貼合せ面に、表面にセパレータ貼合わされた両面粘着テープの当該セパレータ表面に損傷を与えることがないとともに、セパレータの浮が生じないように確実の貼付けることのできる両面粘着テープ貼付け装置を提供する。
【解決手段】手持ち操作可能なベース部2に、連続供給された両面粘着テープTを導くテープガイド3と、ベース部2の先端部にまで導かれた両面粘着テープTをワークの貼付け面に押し付ける貼付けヘッド4とを備えるとともに、ベース部2と貼付けヘッド4とをテープ長手方向に向かう支点X周りに相対的に回動可能に構成してある。
【解決手段】手持ち操作可能なベース部2に、連続供給された両面粘着テープTを導くテープガイド3と、ベース部2の先端部にまで導かれた両面粘着テープTをワークの貼付け面に押し付ける貼付けヘッド4とを備えるとともに、ベース部2と貼付けヘッド4とをテープ長手方向に向かう支点X周りに相対的に回動可能に構成してある。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、両面粘着テープをワークの表面に連続して貼付けてゆく両面粘着テープ貼付け装置に関する。
【背景技術】
【0002】
粘着テープをワークの表面に連続して貼付けてゆく方法としては、以下の方法が知られている。例えば、セパレータ付きの粘着テープを手持ち式の貼付け装置に導き、セパレータを剥離しながら粘着面が露出させる。この粘着面を所定の貼付け面に押し付けて貼付け装置を移動させることにより、粘着テープを連続的にワークに貼付けてゆく(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2005−35724号公報
【0004】
両面粘着テープも上記と同様な形態で貼付けてゆくことは可能であるが、次のような不具合が生じることがある。
【0005】
ワークの貼付け面に両面粘着テープを貼り付けてゆくに際して、貼付け装置の先端貼り付け部位を貼付け面と平行に維持することにより、両面粘着テープの幅方向に均一に押圧して貼付けることができる。しかしながら、貼付け経路が湾曲あるいは屈曲しているような場合、貼付け装置を把持した手首を返して貼付け装置の先端貼り付け部位を貼付け面と平行にする必要がある。このとき、湾曲した貼付け経路と直線状の貼付け経路とが混在していると、手首を頻繁に返すことになり操作者にとって疲労しやすくなっている。特に、貼付け経路が蛇行状である場合には、手首を正逆に返す必要があり一層疲労しやすくなっている。
【0006】
また、粘着テープを貼付けたワークを移送する場合、粘着テープの表面に残されているセパレータが不用意に剥離浮上してしまうと、露出した粘着面が大気に触れて劣化したり、粘着面に異物が付着して接着性能が低下したりする恐れがある。したがって、ワークに貼付けられた両面粘着テープは、表面のセパレータが勝手に剥離浮上しないようにしておくことが必要となる。
【0007】
ワークの表面の直線径路あるいは直線に近い緩やかな湾曲径路に沿って両面粘着テープを貼付ける場合には、貼付けた粘着テープ表面のセパレータが勝手に剥離浮上するようなことはない。しかしながら、屈曲あるいは曲率の小さい湾曲径路にセパレータ付きの粘着テープを貼付ける場合には、セパレータの伸縮性が両面粘着テープ本体に比べて低いので、その復元力によってセパレータの「浮き」が生じたり、あるいは皺が発生したりするといった問題がある。
【0008】
具体的にセパレータは、粘着テープの粘着面に対して容易に剥離できる低接着性の樹脂テープや樹脂コーティングした紙材などの、粘着テープ本体に比べて伸縮性が小さい材質のものが用いられている。このため、小さい曲率の径路においては両面粘着テープが、湾曲内側では貼付け径路方向に圧縮され、湾曲外側では貼付け径路方向に伸長されて貼り付けられることになる。この場合、圧縮が生じる湾曲内側ではセパレータが多少シワになるだけで、粘着面から大きく剥離することはない。しかしながら、伸長が生じる湾曲外側ではセパレータが両面粘着テープの伸長に追従できず、粘着面から剥離しやすくなり、湾曲外側から発生した剥離がその周辺まで拡大され、湾曲径路の長い範囲でセパレータの剥離浮上が生じてしまう。
【0009】
さらに、湾曲形状に沿って装置を蛇行させる場合、先端部の貼付けローラがテープ幅方向の左右の回動に追従することができず、貼付けローラがワークの貼付け面と平行にならずに偏って接触してしまう。したがって、貼付けローラのエッジが両面粘着テープのセパレータ表面を押圧して損傷を与えるといった問題が生じている。
【0010】
本発明はこのような事情に鑑みてなされたものであって、湾曲した貼付け径路においても疲労少なく軽快に両面粘着テープを連続して貼り付けてゆくことができるとともに、湾曲した貼付け径路においてもセパレータの剥離を生じさせることなく均一な押圧を与えながら両面粘着テープを好適に貼付けてゆくことができる両面粘着テープ貼付け装置を提供することを主たる目的としている。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0011】
この発明は、このような目的を達成するために、次のような構成をとる。
すなわち、第1の発明は、片面の粘着面を露出させるとともに他面の粘着面にセパレータを貼合せた両面粘着テープをワークの貼付け面に貼付けてゆく両面粘着テープ貼付け装置であって、
手持ち操作可能なベース部と、
前記ベース部に連続供給された両面粘着テープを導くテープ案内手段と、
前記ベース部の先端部にまで導かれた両面粘着テープをワークの貼付け面に押し付ける貼付けヘッドとを備え、
前記ベース部と貼付けヘッドとをテープ長手方向に向かう支軸周りに相対的に回動可能に構成した
ことを特徴とする。
【0012】
(作用・効果) この構成によれば、粘着面が露出された両面粘着テープの先端をワーク貼付け面における貼付け開始位置に貼り付けた後、片手で把持した両面粘着テープ貼付け装置をワークに対して相対的に後方に移動させる。このとき、テープ幅方向の左右向き姿勢を変更し、貼付けヘッドで押え込んだ両面粘着テープを任意の貼付け径路に沿って貼り付けてゆく。
【0013】
すなわち、湾曲した貼付け径路においては、把持したベース部を左右に傾けることによって手首を大きく返さなくても装置全体の走行方向を修正することができる。この場合、ベース部を左右に傾けても貼付けヘッドは相対的に回動し、ワークの貼付け面と平行な姿勢が維持される。したがって、貼付けヘッドのエッジが両面粘着テープに偏って接触しないので、両面粘着テープを幅方向に均一に押圧して貼付けることができる。その結果、表面のセパレータを傷つけることがない。
【0014】
第2の発明は、上記第1の発明において、
前記ベース部と貼付けヘッドとの相対的な回動姿勢を弾性保持する弾性付勢手段を備えたことを特徴とする。
【0015】
(作用・効果) この構成によれば、湾曲した貼付け径路においては、把持したベース部を左右に傾けることによって手首を大きく返さなくても装置全体の走行方向を修正することができる。また、ベース部へかけた左右への傾斜力を解除すると、弾性復元力でベース部は貼付けヘッドに対して相対的に回動され、元の姿勢に復帰する。したがって、直線および湾曲した経路に対して両面粘着テープの貼付け姿勢を速やかに変更できるので、テープ貼付け経路の形状に関わらず、均一は押圧で両面粘着テープをワークに貼付けることができる。
【0016】
第3の発明は、上記第1または第2の発明において、
前記ベース部にセパレータの側辺にテープ長手方向に沿って所定間隔で切込みを形成するテープ切込み機構を備えたことを特徴とする。
【0017】
(作用・効果) この構成によれば、湾曲した貼付け径路において、セパレータの側辺にテープ長手方向に沿って所定間隔で切込みを形成してゆくことができる。したがって、両面粘着テープが伸長される湾曲外側では、形成された切込みが開き、伸縮性の劣るセパレータが張力によって粘着テープ本体から勝手に剥離してテープ長手方向の長い範囲で剥離浮上してしまうことが抑制される。
【0018】
第4の発明は、上記第3の発明において、
前記テープ切込み機構は、ベース部に枢支連結され揺動下降するアームと、
両面粘着テープのセパレータ側から作用する回転カッタと、
前記両面粘着テープを粘着面側から受ける受けローラと、
を備えたとことを特徴とする。
【0019】
(作用・効果) この構成によれば、両面粘着テープを回転カッタと受けローラの間に挟み込んで走行させることにより、セパレータの側辺に切込みを所定間隔で連続して的確に形成することができる。
【0020】
第5の発明は、上記第4の発明において、
前記テープ切込み機構は、回転カッタと受けローラとを接近させて、両者の間を通過する両面粘着テープにおけるセパレータの側辺に切込みを形成する作用状態と、回転カッタと受けローラとを離間させて、切込みを形成することなく両面粘着テープを通過走行させる非作用状態とに切換え可能に構成したことを特徴とする。
【0021】
(作用・効果)この構成によれば、直線状の貼付け径路と湾曲状の貼付け径路とが混在する場合、セパレータ剥離のおそれのある湾曲状の貼付け径路でのみ切り込み形成を行わせる。したがって、セパレータ剥離の恐れのない直線状の貼付け径路での不必要な切込み形成が回避されるので、貼付け操作を簡素化することができるとともに、回転カッタの早期損耗も低減できる。
【0022】
第6の発明は、第5の発明において、
前記ベース部に対してアームを上方に揺動付勢させる弾性体を備えたことを特徴とする。
【0023】
(作用・効果)この構成によれば、第5の発明を好適に実施することができる。
【0024】
この構成において、アームを揺動付勢に抗して下降させたとき、アームの下部に備わった回転カッタが作用位置で固定されるようアームをベース部に固定保持する保持機構を備えることが好ましい。
【0025】
この構成によれば、湾曲した貼付け径路が長く続くような場合に、作業者が力を入れ続けることなく径路追従操作に専念することができる。したがって、一定の押圧で貼付け作業を軽快に行うことができるので、両面粘着テープのワークへの密着性を高めることもできる。
【0026】
なお、この構成において、貼付けヘッドは、ベース部の先端部で回転自在に軸支されたローラや、両面粘着テープの厚みよりも小さく、かつ、テープ幅よりも大きいテープ貼付け溝をベース部の平坦な先端部を備えたものであってもよい。
【発明の効果】
【0027】
本発明の両面粘着テープ貼付け装置によれば、湾曲あるいは屈曲した貼付け径路においても疲労を少なく軽快に両面粘着テープを連続して貼り付けてゆくことができる。また、貼付けヘッドがテープ幅方向の左右に回動するので、貼付けヘッドに備わったローラなどのエッジが偏って両面粘着テープ表面のセパレータに接触しない。したがって、押圧の偏りによって生じるセパレータへの損傷を抑えることができる。さらに、湾曲あるいは屈曲径路においてもセパレータの剥離を生じることなく両面粘着テープを確実に貼り付けてゆくことができる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】両面粘着テープ貼付け装置の斜視図である。
【図2】両面粘着テープ貼付け装置の分解斜視図である。
【図3】両面粘着テープ貼付け装置の側面図である。
【図4】両面粘着テープ貼付け装置の平面図である。
【図5】貼付けヘッドの縦断側面図である。
【図6】両面粘着テープ貼付け装置の正面図である。
【図7】セパレータの切込みを形成しないときの貼付け作業状態を示す縦断側面図である。
【図8】セパレータの切込みを形成するの貼付け作業状態を示す縦断側面図である。
【図9】貼付け作業状態を示す斜視図である。
【図10】テープ切込み箇所を拡大した斜視図である。
【図11】両面面粘着テープの一部を示す斜視図である。
【図12】別実施例の両面粘着テープ貼付け装置を示す全体斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下、図面を参照して本発明の一実施例を説明する。
【0030】
図1〜図7に、本発明に係る両面粘着テープ貼付け装置の一例が示されており、図1は装置全体の斜視図、図2はその分解した斜視図、図3はその側面図、図4はその平面図である。
【0031】
この実施例で用いられる両面粘着テープTは、例えば図11に示すように、粘着テープ本体tの上下両面にセパレータs1、s2をそれぞれ貼り合せ保持して形成されたものである。粘着テープ本体tは、弾性変形可能な発泡樹脂材からなる幅数mmの基材taの上下両面に粘着層tbを備えて構成されている。
【0032】
セパレータs1、s2としては、剥離層を有する基材、フッ素系ポリマーからなる低接着性基材、無極性ポリマーからなる低接着性基材などを用いることができる。上記剥離層を有する基材としては、例えば、シリコーン系、長鎖アルキル系、フッ素系、硫化モリブデンなどの剥離剤がコーティングされたプラスチックフィルムや紙材などが利用される。また、上記フッ素系ポリマーとしては、例えば、ポリテトラフルオロエチレン、ポリクロロトリフルオロエチレン、ポリフッ化ビニル、ポリフッ化ビニリデン、テロラフルオロエチレン・ヘキサフルオロプロピレン共重合体、クロロフルオロエチレン・フッ化ビニリデン共重合体などが利用される。また、上記無極性ポリマーとしては、例えば、ポリエチレンやポリプロピレンなどのオレフィン系樹脂が利用される。
【0033】
両面粘着テープ貼付け装置1は、作業者が片手で把持して使用するように構成されている。図1に示すように、逆L字状に屈曲形成されており、片手で把持可能に構成したベース部2、ベース部2の後端部に備えたテープガイド3、ベース部2の先端部に備えた貼付けヘッド4、ベース部2の前半部に備えたテープ切込み機構5などから構成されている。
【0034】
ベース部2は、滑性に優れた硬質樹脂材で形成されている。このベース部2は、図2ないし図4に示すように、略水平姿勢の前半部に、上下に貫通する開口6が前後に形成されている。この開口6には、テープ切込み機構5が組み付けられるとともに、ベース部2の後上がり傾斜された後半部の下面にテープ案内溝7が前後に形成され、その一端側が開口6に連通されている。
【0035】
テープガイド3は、ベース部2の後端に支軸8を介して上下揺動可能に枢支連結される左右一対のブラケット9、両ブラケット9にわたって支架されたガイドローラ10、およびガイドピン11とで構成されている。また、テープガイド3は、図7ないし図9に示すように、図外のテープ供給部から送られてきた両面セパレータ付きの両面粘着テープTが、ガイドローラ10とガイドピン11の間を通るように上方から供給されて下方に巻回案内される。この巻回部位においてテープ下面のセパレータs1が剥離される。セパレータs1の剥離によって下向きの粘着面が露出された両面粘着テープTは、テープ案内溝7を通ってベース部2の下方に誘導され、さらに貼付けヘッド4の下方に供給されるようになっている。なお、テープガイド3は、本発明のテープ案内手段に相当する。
【0036】
貼付けヘッド4は、図1および図2に示すように、両面粘着テープTより幅広の弾性ローラからなる貼付けローラ12をブラケット13に支軸14を介して遊転自在に水平軸支して構成されている。また、貼付けヘッド4は、図5に示すように、ベース部2の前端面に埋設したボス部材15にねじ込まれる支軸ネジ16を介してブラケット13が回動可能に枢着されている。さらに、貼付けヘッド4は、図6に示すように、ベース部2と貼付けヘッド4とがテープ長手方向に向かう(図中奥側)支軸x周りに相対的に回動可能に構成されている。
【0037】
ベース部2の前端上面には、図2、4、5に示すように、板バネ片17がネジ18を介して連結固定されている。この板バネ片17から前方に延出された左右のアーム部17aが、支軸xの左右においてブラケット13の上端に当接されている。したがって、両アーム部17aによる当接支持の作用によって、貼付けヘッド4がベース部2に対して支持x周りに一定の回動姿勢となるよう弾性保持されている。なお、板ばね片17は、弾性付勢手段に相当する。
【0038】
テープ切込み機構5は、図2に示すように、開口6の後端近くにおいて支軸19を介して上下に揺動可能に枢支連結された作動アーム20、この作動アーム20の前後中間の下部に支軸21を介して遊転自在に支承された回転カッタ22、および、ベース部2に支軸23を介して遊転自在に支承された受けローラ24などから構成されている。なお、作動アーム20は、本発明のアームに相当する。
【0039】
支軸19にはねじりバネ25が外挿される。このねじりバネ25の一端部は、作動アーム20の側面に形成された溝26に係入されるとともに、ねじりバネ25の他端部は、開口6の内部に形成された段部に係合される。このねじりバネ25の弾性復元力によって作動アーム20が上方に揺動付勢されている。なお、溝26にねじりバネ25の一端部を係入した後に、この溝26に樹脂やブロックを封入し、ねじりバネ25の外れを防止するように構成する。
【0040】
図10に示すように、回転カッタ22は、樹脂ローラ22aの外周部の左右両端に支軸に沿った状態で複数の切刃22bを周方向に等ピッチで放射状に埋設して構成されている。作動アーム20に下方への押し込み外力を付与しない自由状態において、回転カッタ22は、受けローラ24から上方に離間した非作用位置に保持されている。また、作動アーム20に下方への押し込み外力を付与してバネ付勢力に抗して下方へ揺動させることにより、回転カッタ22が受けローラ24に接近したテープ切込み作用位置に移動されるようになっている。
【0041】
受けローラ24は、ベース部2の下方に案内されてきた両面粘着テープTを下方から受け止め案内するものである。また、受けローラ24は、セパレータs1が剥離されて下向きの粘着面が露出した両面粘着テープTを円滑に案内走行させるために難接着性の樹脂ローラで構成されている。さらに、受けローラ24は、回転カッタ22に対するテープ受け台として機能するものである。したがって、回転カッタ22に下方から対向するよう受けローラ24の配置位置が設定されている。
【0042】
本発明に係る両面粘着テープ貼付け装置1は以上のように構成されている。次に、この両面接粘着テープ貼付け装置を使用したときのテープ貼り付け作動について説明する。
【0043】
下向きの粘着面が露出された両面粘着テープTの先端をワークWの貼付け面の貼付け開始位置に貼り付けた後、図9に示すように、片手で把持した両面粘着テープ貼付け装置1をワークWに対して相対的に後方に移動させる。このとき、その左右向きの姿勢を変更し、貼付けローラ12で押え込んだ両面粘着テープTを任意の貼付け径路に沿って貼り付けてゆく。
【0044】
この場合、直線状の貼付け径路においては、図7に示すように、回転カッタ22を上方の非作用位置に保持しておく。ただし、湾曲した貼付け径路においては、図8に示すように、ベース部2を把持した手の指で作動アーム20を押さえ込んで、回転カッタ22をテープ切込み作用位置に下降させ、受けローラ24と回転カッタ22との間に両面粘着テープTを挟み込む。この挟み込みによって、回転カッタ22の切刃22bが、両面粘着テープTに上方から食い込み、両面粘着テープTの両側辺にテープ長手方向に沿って交差するよう一定のピッチで切込みkが形成される。この場合、回転カッタ22の押し付け具合によってテープ上面のセパレータs2のみを切込んだり、セパレータs2と粘着テープ本体tにわたって切込みkを形成したりすることができる。
【0045】
このように、湾曲した貼付け径路において、セパレータs2の側辺にテープ長手方向に所定のピッチで切込みkを形成してゆくことにより、両面粘着テープTが伸長される湾曲外側では、形成された切込みkが適度に開き、伸縮性の劣るセパレータs2が張力によって粘着テープ本体tから勝手に剥離してテープ長手方向の長い範囲で遊離してしまうことが回避される。
【0046】
また、湾曲した貼付け径路においては、把持したベース部2を左右に傾けることによって手首を大きく返さなくても装置全体の走行方向を修正することができる。この場合、図6に示すように、ベース部2を左右に傾けても貼付けヘッド4は板バネ片17における一方のアーム部17aを上方に弾性変形させながら支軸x周りに相対的に回動する。したがって、貼付けヘッド4は、ワークWの貼付け面と平行な姿勢に維持されたまま、両面粘着テープTを幅方向に均一に押圧して貼付けることができるので、ローラのエッジによってセパレータ表面に傷などの損傷を与えることがない。
【0047】
そして、ベース部2へかけた左右への傾斜力を解除すると、板バネ片17の弾性復元力によって、ベース部2は貼付けヘッド4に対して相対的に回動されるので、元の姿勢に復帰する。
【0048】
本発明は、以下のような形態で実施することもできる。
【0049】
(1)図12に示すように、上記実施例の貼付けヘッド4における貼付けローラ12を備えないものに構成することもできる。具体的には、上記実施例のブラケット13に相当する部分をブロック状に構成し、かつ、このブロックの平坦な下面に、両面粘着テープTの厚さより浅く設定されたテープ案内溝27を形成して実施することもできる。なお、ブラケット13に備わったブロックは、本発明の貼付けブロックに相当する。
【0050】
(2)両面粘着テープTの両端に形成する切込みkは、上記実施例のような対向する直線スリット状の他に次にように形成してもよい。
【0051】
例えば、テープ幅左右に交互に切込みkを形成したり、端辺から長手方向の中心に向かって先細りとなるVノッチ状の切欠きを形成したりしてもよい。
【0052】
(3)上記実施例では両面粘着テープTの両側辺に切込みkを形成する場合を示しているが、一定方向にのみ湾曲あるいは屈曲する貼付け径路で貼り付けを行う場合には、テープ伸長が行われる湾曲外側となるテープ側辺にのみ切込みkを形成するようにしてもよい。つまり、回転カッタ22の一端側のみに切刃22bを備えるように構成して実施することもできる。
【0053】
(4)上記実施例では、作動アーム20を手や指によって押さえ込み続けることで回転カッタ22をテープ切込み作用位置に切換え保持すようにしているが、適宜デテント機構によって作動アーム20を下方揺動位置に固定保持するように構成することもできる。
【0054】
例えば、作動アーム20の前端部の少なくとも一側面から先端が突出するよう金属製などのボールをバネ付勢させて構成し、このボールと対向し係合する凹部をベース本体の位置に形成して構成する。
【0055】
この構成によれば、湾曲した貼付け径路が長く続くような場合に、作業者は手や指に力を入れ続けることなく径路追従操作に専念することができる。したがって、一定の押圧で貼付け作業を軽快に行うことができるので、両面粘着テープTのワークWへの密着性を高めることもできる。なお、デデント機構は、本発明の保持機構に相当する。
【0056】
(5)両面粘着テープTとして、粘着剤のみからなる粘着テープ本体tの両面にセパレータs1、s2を貼り合せたものを用いることもできる。
【0057】
(6)上記実施例では両面セパレータs1、s2を貼合せた両面粘着テープTを供給して、テープガイド3において一方のセパレータs1を剥離除去しながらワークWに貼付ける場合を示しているが、予め別工程で一方のセパレータs1を剥離除去した粘着テープT、あるいは、片面のみにセパレータs2を貼り合せてロール巻きした両面粘着テープTを供給する形態で実施することもできる。
【0058】
(7)上記実施例は、作業者が把持して手作業でテープ貼り付けを行うものを例示しているが、ロボットハンドに装着して全自動でテープ貼り付けを行う形態にして実施することもできる。この場合、予め入力されたプログラムに基づいて回転カッタ22を適宜アクチュエータで位置切換えするとよい。
【0059】
(8)上記各実施例において、ベース部2を長手方向の中心軸(テープ誘導方向)に沿って分離可能とし、分離した中間部にアタッチメントを介在させるとともに、当該アタッチメントの幅に合せた作動アーム20、貼付けヘッド4、回転カッタ22、および受けローラ24を変更するよう構成してもよい。
【0060】
この構成によれば、両面粘着テープTの幅に合せて装置設定を適宜に変更することができる。
【符号の説明】
【0061】
2 … ベース部
4 … 貼付けヘッド
5 … テープ切込み機構
22 … 回転カッタ
24 … 受けローラ
T … 両面粘着テープ
k … 切込み
s1 … セパレータ
s2 … セパレータ
W … ワーク
【技術分野】
【0001】
本発明は、両面粘着テープをワークの表面に連続して貼付けてゆく両面粘着テープ貼付け装置に関する。
【背景技術】
【0002】
粘着テープをワークの表面に連続して貼付けてゆく方法としては、以下の方法が知られている。例えば、セパレータ付きの粘着テープを手持ち式の貼付け装置に導き、セパレータを剥離しながら粘着面が露出させる。この粘着面を所定の貼付け面に押し付けて貼付け装置を移動させることにより、粘着テープを連続的にワークに貼付けてゆく(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2005−35724号公報
【0004】
両面粘着テープも上記と同様な形態で貼付けてゆくことは可能であるが、次のような不具合が生じることがある。
【0005】
ワークの貼付け面に両面粘着テープを貼り付けてゆくに際して、貼付け装置の先端貼り付け部位を貼付け面と平行に維持することにより、両面粘着テープの幅方向に均一に押圧して貼付けることができる。しかしながら、貼付け経路が湾曲あるいは屈曲しているような場合、貼付け装置を把持した手首を返して貼付け装置の先端貼り付け部位を貼付け面と平行にする必要がある。このとき、湾曲した貼付け経路と直線状の貼付け経路とが混在していると、手首を頻繁に返すことになり操作者にとって疲労しやすくなっている。特に、貼付け経路が蛇行状である場合には、手首を正逆に返す必要があり一層疲労しやすくなっている。
【0006】
また、粘着テープを貼付けたワークを移送する場合、粘着テープの表面に残されているセパレータが不用意に剥離浮上してしまうと、露出した粘着面が大気に触れて劣化したり、粘着面に異物が付着して接着性能が低下したりする恐れがある。したがって、ワークに貼付けられた両面粘着テープは、表面のセパレータが勝手に剥離浮上しないようにしておくことが必要となる。
【0007】
ワークの表面の直線径路あるいは直線に近い緩やかな湾曲径路に沿って両面粘着テープを貼付ける場合には、貼付けた粘着テープ表面のセパレータが勝手に剥離浮上するようなことはない。しかしながら、屈曲あるいは曲率の小さい湾曲径路にセパレータ付きの粘着テープを貼付ける場合には、セパレータの伸縮性が両面粘着テープ本体に比べて低いので、その復元力によってセパレータの「浮き」が生じたり、あるいは皺が発生したりするといった問題がある。
【0008】
具体的にセパレータは、粘着テープの粘着面に対して容易に剥離できる低接着性の樹脂テープや樹脂コーティングした紙材などの、粘着テープ本体に比べて伸縮性が小さい材質のものが用いられている。このため、小さい曲率の径路においては両面粘着テープが、湾曲内側では貼付け径路方向に圧縮され、湾曲外側では貼付け径路方向に伸長されて貼り付けられることになる。この場合、圧縮が生じる湾曲内側ではセパレータが多少シワになるだけで、粘着面から大きく剥離することはない。しかしながら、伸長が生じる湾曲外側ではセパレータが両面粘着テープの伸長に追従できず、粘着面から剥離しやすくなり、湾曲外側から発生した剥離がその周辺まで拡大され、湾曲径路の長い範囲でセパレータの剥離浮上が生じてしまう。
【0009】
さらに、湾曲形状に沿って装置を蛇行させる場合、先端部の貼付けローラがテープ幅方向の左右の回動に追従することができず、貼付けローラがワークの貼付け面と平行にならずに偏って接触してしまう。したがって、貼付けローラのエッジが両面粘着テープのセパレータ表面を押圧して損傷を与えるといった問題が生じている。
【0010】
本発明はこのような事情に鑑みてなされたものであって、湾曲した貼付け径路においても疲労少なく軽快に両面粘着テープを連続して貼り付けてゆくことができるとともに、湾曲した貼付け径路においてもセパレータの剥離を生じさせることなく均一な押圧を与えながら両面粘着テープを好適に貼付けてゆくことができる両面粘着テープ貼付け装置を提供することを主たる目的としている。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0011】
この発明は、このような目的を達成するために、次のような構成をとる。
すなわち、第1の発明は、片面の粘着面を露出させるとともに他面の粘着面にセパレータを貼合せた両面粘着テープをワークの貼付け面に貼付けてゆく両面粘着テープ貼付け装置であって、
手持ち操作可能なベース部と、
前記ベース部に連続供給された両面粘着テープを導くテープ案内手段と、
前記ベース部の先端部にまで導かれた両面粘着テープをワークの貼付け面に押し付ける貼付けヘッドとを備え、
前記ベース部と貼付けヘッドとをテープ長手方向に向かう支軸周りに相対的に回動可能に構成した
ことを特徴とする。
【0012】
(作用・効果) この構成によれば、粘着面が露出された両面粘着テープの先端をワーク貼付け面における貼付け開始位置に貼り付けた後、片手で把持した両面粘着テープ貼付け装置をワークに対して相対的に後方に移動させる。このとき、テープ幅方向の左右向き姿勢を変更し、貼付けヘッドで押え込んだ両面粘着テープを任意の貼付け径路に沿って貼り付けてゆく。
【0013】
すなわち、湾曲した貼付け径路においては、把持したベース部を左右に傾けることによって手首を大きく返さなくても装置全体の走行方向を修正することができる。この場合、ベース部を左右に傾けても貼付けヘッドは相対的に回動し、ワークの貼付け面と平行な姿勢が維持される。したがって、貼付けヘッドのエッジが両面粘着テープに偏って接触しないので、両面粘着テープを幅方向に均一に押圧して貼付けることができる。その結果、表面のセパレータを傷つけることがない。
【0014】
第2の発明は、上記第1の発明において、
前記ベース部と貼付けヘッドとの相対的な回動姿勢を弾性保持する弾性付勢手段を備えたことを特徴とする。
【0015】
(作用・効果) この構成によれば、湾曲した貼付け径路においては、把持したベース部を左右に傾けることによって手首を大きく返さなくても装置全体の走行方向を修正することができる。また、ベース部へかけた左右への傾斜力を解除すると、弾性復元力でベース部は貼付けヘッドに対して相対的に回動され、元の姿勢に復帰する。したがって、直線および湾曲した経路に対して両面粘着テープの貼付け姿勢を速やかに変更できるので、テープ貼付け経路の形状に関わらず、均一は押圧で両面粘着テープをワークに貼付けることができる。
【0016】
第3の発明は、上記第1または第2の発明において、
前記ベース部にセパレータの側辺にテープ長手方向に沿って所定間隔で切込みを形成するテープ切込み機構を備えたことを特徴とする。
【0017】
(作用・効果) この構成によれば、湾曲した貼付け径路において、セパレータの側辺にテープ長手方向に沿って所定間隔で切込みを形成してゆくことができる。したがって、両面粘着テープが伸長される湾曲外側では、形成された切込みが開き、伸縮性の劣るセパレータが張力によって粘着テープ本体から勝手に剥離してテープ長手方向の長い範囲で剥離浮上してしまうことが抑制される。
【0018】
第4の発明は、上記第3の発明において、
前記テープ切込み機構は、ベース部に枢支連結され揺動下降するアームと、
両面粘着テープのセパレータ側から作用する回転カッタと、
前記両面粘着テープを粘着面側から受ける受けローラと、
を備えたとことを特徴とする。
【0019】
(作用・効果) この構成によれば、両面粘着テープを回転カッタと受けローラの間に挟み込んで走行させることにより、セパレータの側辺に切込みを所定間隔で連続して的確に形成することができる。
【0020】
第5の発明は、上記第4の発明において、
前記テープ切込み機構は、回転カッタと受けローラとを接近させて、両者の間を通過する両面粘着テープにおけるセパレータの側辺に切込みを形成する作用状態と、回転カッタと受けローラとを離間させて、切込みを形成することなく両面粘着テープを通過走行させる非作用状態とに切換え可能に構成したことを特徴とする。
【0021】
(作用・効果)この構成によれば、直線状の貼付け径路と湾曲状の貼付け径路とが混在する場合、セパレータ剥離のおそれのある湾曲状の貼付け径路でのみ切り込み形成を行わせる。したがって、セパレータ剥離の恐れのない直線状の貼付け径路での不必要な切込み形成が回避されるので、貼付け操作を簡素化することができるとともに、回転カッタの早期損耗も低減できる。
【0022】
第6の発明は、第5の発明において、
前記ベース部に対してアームを上方に揺動付勢させる弾性体を備えたことを特徴とする。
【0023】
(作用・効果)この構成によれば、第5の発明を好適に実施することができる。
【0024】
この構成において、アームを揺動付勢に抗して下降させたとき、アームの下部に備わった回転カッタが作用位置で固定されるようアームをベース部に固定保持する保持機構を備えることが好ましい。
【0025】
この構成によれば、湾曲した貼付け径路が長く続くような場合に、作業者が力を入れ続けることなく径路追従操作に専念することができる。したがって、一定の押圧で貼付け作業を軽快に行うことができるので、両面粘着テープのワークへの密着性を高めることもできる。
【0026】
なお、この構成において、貼付けヘッドは、ベース部の先端部で回転自在に軸支されたローラや、両面粘着テープの厚みよりも小さく、かつ、テープ幅よりも大きいテープ貼付け溝をベース部の平坦な先端部を備えたものであってもよい。
【発明の効果】
【0027】
本発明の両面粘着テープ貼付け装置によれば、湾曲あるいは屈曲した貼付け径路においても疲労を少なく軽快に両面粘着テープを連続して貼り付けてゆくことができる。また、貼付けヘッドがテープ幅方向の左右に回動するので、貼付けヘッドに備わったローラなどのエッジが偏って両面粘着テープ表面のセパレータに接触しない。したがって、押圧の偏りによって生じるセパレータへの損傷を抑えることができる。さらに、湾曲あるいは屈曲径路においてもセパレータの剥離を生じることなく両面粘着テープを確実に貼り付けてゆくことができる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】両面粘着テープ貼付け装置の斜視図である。
【図2】両面粘着テープ貼付け装置の分解斜視図である。
【図3】両面粘着テープ貼付け装置の側面図である。
【図4】両面粘着テープ貼付け装置の平面図である。
【図5】貼付けヘッドの縦断側面図である。
【図6】両面粘着テープ貼付け装置の正面図である。
【図7】セパレータの切込みを形成しないときの貼付け作業状態を示す縦断側面図である。
【図8】セパレータの切込みを形成するの貼付け作業状態を示す縦断側面図である。
【図9】貼付け作業状態を示す斜視図である。
【図10】テープ切込み箇所を拡大した斜視図である。
【図11】両面面粘着テープの一部を示す斜視図である。
【図12】別実施例の両面粘着テープ貼付け装置を示す全体斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下、図面を参照して本発明の一実施例を説明する。
【0030】
図1〜図7に、本発明に係る両面粘着テープ貼付け装置の一例が示されており、図1は装置全体の斜視図、図2はその分解した斜視図、図3はその側面図、図4はその平面図である。
【0031】
この実施例で用いられる両面粘着テープTは、例えば図11に示すように、粘着テープ本体tの上下両面にセパレータs1、s2をそれぞれ貼り合せ保持して形成されたものである。粘着テープ本体tは、弾性変形可能な発泡樹脂材からなる幅数mmの基材taの上下両面に粘着層tbを備えて構成されている。
【0032】
セパレータs1、s2としては、剥離層を有する基材、フッ素系ポリマーからなる低接着性基材、無極性ポリマーからなる低接着性基材などを用いることができる。上記剥離層を有する基材としては、例えば、シリコーン系、長鎖アルキル系、フッ素系、硫化モリブデンなどの剥離剤がコーティングされたプラスチックフィルムや紙材などが利用される。また、上記フッ素系ポリマーとしては、例えば、ポリテトラフルオロエチレン、ポリクロロトリフルオロエチレン、ポリフッ化ビニル、ポリフッ化ビニリデン、テロラフルオロエチレン・ヘキサフルオロプロピレン共重合体、クロロフルオロエチレン・フッ化ビニリデン共重合体などが利用される。また、上記無極性ポリマーとしては、例えば、ポリエチレンやポリプロピレンなどのオレフィン系樹脂が利用される。
【0033】
両面粘着テープ貼付け装置1は、作業者が片手で把持して使用するように構成されている。図1に示すように、逆L字状に屈曲形成されており、片手で把持可能に構成したベース部2、ベース部2の後端部に備えたテープガイド3、ベース部2の先端部に備えた貼付けヘッド4、ベース部2の前半部に備えたテープ切込み機構5などから構成されている。
【0034】
ベース部2は、滑性に優れた硬質樹脂材で形成されている。このベース部2は、図2ないし図4に示すように、略水平姿勢の前半部に、上下に貫通する開口6が前後に形成されている。この開口6には、テープ切込み機構5が組み付けられるとともに、ベース部2の後上がり傾斜された後半部の下面にテープ案内溝7が前後に形成され、その一端側が開口6に連通されている。
【0035】
テープガイド3は、ベース部2の後端に支軸8を介して上下揺動可能に枢支連結される左右一対のブラケット9、両ブラケット9にわたって支架されたガイドローラ10、およびガイドピン11とで構成されている。また、テープガイド3は、図7ないし図9に示すように、図外のテープ供給部から送られてきた両面セパレータ付きの両面粘着テープTが、ガイドローラ10とガイドピン11の間を通るように上方から供給されて下方に巻回案内される。この巻回部位においてテープ下面のセパレータs1が剥離される。セパレータs1の剥離によって下向きの粘着面が露出された両面粘着テープTは、テープ案内溝7を通ってベース部2の下方に誘導され、さらに貼付けヘッド4の下方に供給されるようになっている。なお、テープガイド3は、本発明のテープ案内手段に相当する。
【0036】
貼付けヘッド4は、図1および図2に示すように、両面粘着テープTより幅広の弾性ローラからなる貼付けローラ12をブラケット13に支軸14を介して遊転自在に水平軸支して構成されている。また、貼付けヘッド4は、図5に示すように、ベース部2の前端面に埋設したボス部材15にねじ込まれる支軸ネジ16を介してブラケット13が回動可能に枢着されている。さらに、貼付けヘッド4は、図6に示すように、ベース部2と貼付けヘッド4とがテープ長手方向に向かう(図中奥側)支軸x周りに相対的に回動可能に構成されている。
【0037】
ベース部2の前端上面には、図2、4、5に示すように、板バネ片17がネジ18を介して連結固定されている。この板バネ片17から前方に延出された左右のアーム部17aが、支軸xの左右においてブラケット13の上端に当接されている。したがって、両アーム部17aによる当接支持の作用によって、貼付けヘッド4がベース部2に対して支持x周りに一定の回動姿勢となるよう弾性保持されている。なお、板ばね片17は、弾性付勢手段に相当する。
【0038】
テープ切込み機構5は、図2に示すように、開口6の後端近くにおいて支軸19を介して上下に揺動可能に枢支連結された作動アーム20、この作動アーム20の前後中間の下部に支軸21を介して遊転自在に支承された回転カッタ22、および、ベース部2に支軸23を介して遊転自在に支承された受けローラ24などから構成されている。なお、作動アーム20は、本発明のアームに相当する。
【0039】
支軸19にはねじりバネ25が外挿される。このねじりバネ25の一端部は、作動アーム20の側面に形成された溝26に係入されるとともに、ねじりバネ25の他端部は、開口6の内部に形成された段部に係合される。このねじりバネ25の弾性復元力によって作動アーム20が上方に揺動付勢されている。なお、溝26にねじりバネ25の一端部を係入した後に、この溝26に樹脂やブロックを封入し、ねじりバネ25の外れを防止するように構成する。
【0040】
図10に示すように、回転カッタ22は、樹脂ローラ22aの外周部の左右両端に支軸に沿った状態で複数の切刃22bを周方向に等ピッチで放射状に埋設して構成されている。作動アーム20に下方への押し込み外力を付与しない自由状態において、回転カッタ22は、受けローラ24から上方に離間した非作用位置に保持されている。また、作動アーム20に下方への押し込み外力を付与してバネ付勢力に抗して下方へ揺動させることにより、回転カッタ22が受けローラ24に接近したテープ切込み作用位置に移動されるようになっている。
【0041】
受けローラ24は、ベース部2の下方に案内されてきた両面粘着テープTを下方から受け止め案内するものである。また、受けローラ24は、セパレータs1が剥離されて下向きの粘着面が露出した両面粘着テープTを円滑に案内走行させるために難接着性の樹脂ローラで構成されている。さらに、受けローラ24は、回転カッタ22に対するテープ受け台として機能するものである。したがって、回転カッタ22に下方から対向するよう受けローラ24の配置位置が設定されている。
【0042】
本発明に係る両面粘着テープ貼付け装置1は以上のように構成されている。次に、この両面接粘着テープ貼付け装置を使用したときのテープ貼り付け作動について説明する。
【0043】
下向きの粘着面が露出された両面粘着テープTの先端をワークWの貼付け面の貼付け開始位置に貼り付けた後、図9に示すように、片手で把持した両面粘着テープ貼付け装置1をワークWに対して相対的に後方に移動させる。このとき、その左右向きの姿勢を変更し、貼付けローラ12で押え込んだ両面粘着テープTを任意の貼付け径路に沿って貼り付けてゆく。
【0044】
この場合、直線状の貼付け径路においては、図7に示すように、回転カッタ22を上方の非作用位置に保持しておく。ただし、湾曲した貼付け径路においては、図8に示すように、ベース部2を把持した手の指で作動アーム20を押さえ込んで、回転カッタ22をテープ切込み作用位置に下降させ、受けローラ24と回転カッタ22との間に両面粘着テープTを挟み込む。この挟み込みによって、回転カッタ22の切刃22bが、両面粘着テープTに上方から食い込み、両面粘着テープTの両側辺にテープ長手方向に沿って交差するよう一定のピッチで切込みkが形成される。この場合、回転カッタ22の押し付け具合によってテープ上面のセパレータs2のみを切込んだり、セパレータs2と粘着テープ本体tにわたって切込みkを形成したりすることができる。
【0045】
このように、湾曲した貼付け径路において、セパレータs2の側辺にテープ長手方向に所定のピッチで切込みkを形成してゆくことにより、両面粘着テープTが伸長される湾曲外側では、形成された切込みkが適度に開き、伸縮性の劣るセパレータs2が張力によって粘着テープ本体tから勝手に剥離してテープ長手方向の長い範囲で遊離してしまうことが回避される。
【0046】
また、湾曲した貼付け径路においては、把持したベース部2を左右に傾けることによって手首を大きく返さなくても装置全体の走行方向を修正することができる。この場合、図6に示すように、ベース部2を左右に傾けても貼付けヘッド4は板バネ片17における一方のアーム部17aを上方に弾性変形させながら支軸x周りに相対的に回動する。したがって、貼付けヘッド4は、ワークWの貼付け面と平行な姿勢に維持されたまま、両面粘着テープTを幅方向に均一に押圧して貼付けることができるので、ローラのエッジによってセパレータ表面に傷などの損傷を与えることがない。
【0047】
そして、ベース部2へかけた左右への傾斜力を解除すると、板バネ片17の弾性復元力によって、ベース部2は貼付けヘッド4に対して相対的に回動されるので、元の姿勢に復帰する。
【0048】
本発明は、以下のような形態で実施することもできる。
【0049】
(1)図12に示すように、上記実施例の貼付けヘッド4における貼付けローラ12を備えないものに構成することもできる。具体的には、上記実施例のブラケット13に相当する部分をブロック状に構成し、かつ、このブロックの平坦な下面に、両面粘着テープTの厚さより浅く設定されたテープ案内溝27を形成して実施することもできる。なお、ブラケット13に備わったブロックは、本発明の貼付けブロックに相当する。
【0050】
(2)両面粘着テープTの両端に形成する切込みkは、上記実施例のような対向する直線スリット状の他に次にように形成してもよい。
【0051】
例えば、テープ幅左右に交互に切込みkを形成したり、端辺から長手方向の中心に向かって先細りとなるVノッチ状の切欠きを形成したりしてもよい。
【0052】
(3)上記実施例では両面粘着テープTの両側辺に切込みkを形成する場合を示しているが、一定方向にのみ湾曲あるいは屈曲する貼付け径路で貼り付けを行う場合には、テープ伸長が行われる湾曲外側となるテープ側辺にのみ切込みkを形成するようにしてもよい。つまり、回転カッタ22の一端側のみに切刃22bを備えるように構成して実施することもできる。
【0053】
(4)上記実施例では、作動アーム20を手や指によって押さえ込み続けることで回転カッタ22をテープ切込み作用位置に切換え保持すようにしているが、適宜デテント機構によって作動アーム20を下方揺動位置に固定保持するように構成することもできる。
【0054】
例えば、作動アーム20の前端部の少なくとも一側面から先端が突出するよう金属製などのボールをバネ付勢させて構成し、このボールと対向し係合する凹部をベース本体の位置に形成して構成する。
【0055】
この構成によれば、湾曲した貼付け径路が長く続くような場合に、作業者は手や指に力を入れ続けることなく径路追従操作に専念することができる。したがって、一定の押圧で貼付け作業を軽快に行うことができるので、両面粘着テープTのワークWへの密着性を高めることもできる。なお、デデント機構は、本発明の保持機構に相当する。
【0056】
(5)両面粘着テープTとして、粘着剤のみからなる粘着テープ本体tの両面にセパレータs1、s2を貼り合せたものを用いることもできる。
【0057】
(6)上記実施例では両面セパレータs1、s2を貼合せた両面粘着テープTを供給して、テープガイド3において一方のセパレータs1を剥離除去しながらワークWに貼付ける場合を示しているが、予め別工程で一方のセパレータs1を剥離除去した粘着テープT、あるいは、片面のみにセパレータs2を貼り合せてロール巻きした両面粘着テープTを供給する形態で実施することもできる。
【0058】
(7)上記実施例は、作業者が把持して手作業でテープ貼り付けを行うものを例示しているが、ロボットハンドに装着して全自動でテープ貼り付けを行う形態にして実施することもできる。この場合、予め入力されたプログラムに基づいて回転カッタ22を適宜アクチュエータで位置切換えするとよい。
【0059】
(8)上記各実施例において、ベース部2を長手方向の中心軸(テープ誘導方向)に沿って分離可能とし、分離した中間部にアタッチメントを介在させるとともに、当該アタッチメントの幅に合せた作動アーム20、貼付けヘッド4、回転カッタ22、および受けローラ24を変更するよう構成してもよい。
【0060】
この構成によれば、両面粘着テープTの幅に合せて装置設定を適宜に変更することができる。
【符号の説明】
【0061】
2 … ベース部
4 … 貼付けヘッド
5 … テープ切込み機構
22 … 回転カッタ
24 … 受けローラ
T … 両面粘着テープ
k … 切込み
s1 … セパレータ
s2 … セパレータ
W … ワーク
【特許請求の範囲】
【請求項1】
片面の粘着面を露出させるとともに他面の粘着面にセパレータを貼合せた両面粘着テープをワークの貼付け面に貼付けてゆく両面粘着テープ貼付け装置であって、
手持ち操作可能なベース部と、
前記ベース部に連続供給された両面粘着テープを導くテープ案内手段と、
前記ベース部の先端部にまで導かれた両面粘着テープをワークの貼付け面に押し付ける貼付けヘッドとを備え、
前記ベース部と貼付けヘッドとをテープ長手方向に向かう支軸周りに相対的に回動可能に構成した
ことを特徴とする両面粘着テープ貼付け装置。
【請求項2】
請求項1に記載の両面粘着テープ貼付け装置において、
前記ベース部と貼付けヘッドとの相対的な回動姿勢を弾性保持する弾性付勢手段を備えた
ことを特徴とする両面粘着テープ貼付け装置。
【請求項3】
請求項1または請求項2記載の両面粘着テープ貼付け装置において、
前記ベース部にセパレータの側辺にテープ長手方向に沿って所定間隔で切込みを形成するテープ切込み機構を備えた
ことを特徴とするの両面粘着テープ貼付け装置。
【請求項4】
請求項3に記載の両面粘着テープ貼付け装置において、
前記テープ切込み機構は、ベース部に枢支連結され揺動下降するアームと、
両面粘着テープのセパレータ側から作用する回転カッタと、
前記両面粘着テープを粘着面側から受ける受けローラと、
を備えたとことを特徴とする両面粘着テープ貼付け装置。
【請求項5】
請求項4に記載の両面粘着テープ貼付け装置において、
前記テープ切込み機構は、回転カッタと受けローラとを接近させて、両者の間を通過する両面粘着テープにおけるセパレータの側辺に切込みを形成する作用状態と、回転カッタと受けローラとを離間させて、切込みを形成することなく両面粘着テープを通過走行させる非作用状態とに切換え可能に構成した
ことを特徴とする両面粘着テープ貼付け装置。
【請求項6】
請求項5に記載の両面粘着テープ貼付け装置において、
前記ベース部に対してアームを上方に揺動付勢させる弾性体を備えた
ことを特徴とする両面粘着テープ貼付け装置。
【請求項7】
請求項6に記載の両面粘着テープ貼付け装置において、
前記アームを揺動付勢に抗して下降させたとき、アームの下部に備わった回転カッタが作用位置で固定されるようアームをベース部に固定保持する保持機構を備えた
ことを特徴とする両面粘着テープ貼付け装置。
【請求項8】
請求項1ないし請求項7のいずれかに記載の両面粘着テープ貼付け装置において、
前記貼付けヘッドは、ベース部の先端部で回転自在に軸支されたローラを備えた
ことを特徴とする両面粘着テープ貼付け装置。
【請求項9】
請求項1ないし請求項7のいずれかに記載の両面粘着テープ貼付け装置において、
前記貼付けヘッドは、両面粘着テープの厚みより浅く、かつ、テープ幅よりも大きいテープ貼付け溝が平坦な下面に形成された貼付けブロックを備えた
ことを特徴とする両面粘着テープ貼付け装置。
【請求項1】
片面の粘着面を露出させるとともに他面の粘着面にセパレータを貼合せた両面粘着テープをワークの貼付け面に貼付けてゆく両面粘着テープ貼付け装置であって、
手持ち操作可能なベース部と、
前記ベース部に連続供給された両面粘着テープを導くテープ案内手段と、
前記ベース部の先端部にまで導かれた両面粘着テープをワークの貼付け面に押し付ける貼付けヘッドとを備え、
前記ベース部と貼付けヘッドとをテープ長手方向に向かう支軸周りに相対的に回動可能に構成した
ことを特徴とする両面粘着テープ貼付け装置。
【請求項2】
請求項1に記載の両面粘着テープ貼付け装置において、
前記ベース部と貼付けヘッドとの相対的な回動姿勢を弾性保持する弾性付勢手段を備えた
ことを特徴とする両面粘着テープ貼付け装置。
【請求項3】
請求項1または請求項2記載の両面粘着テープ貼付け装置において、
前記ベース部にセパレータの側辺にテープ長手方向に沿って所定間隔で切込みを形成するテープ切込み機構を備えた
ことを特徴とするの両面粘着テープ貼付け装置。
【請求項4】
請求項3に記載の両面粘着テープ貼付け装置において、
前記テープ切込み機構は、ベース部に枢支連結され揺動下降するアームと、
両面粘着テープのセパレータ側から作用する回転カッタと、
前記両面粘着テープを粘着面側から受ける受けローラと、
を備えたとことを特徴とする両面粘着テープ貼付け装置。
【請求項5】
請求項4に記載の両面粘着テープ貼付け装置において、
前記テープ切込み機構は、回転カッタと受けローラとを接近させて、両者の間を通過する両面粘着テープにおけるセパレータの側辺に切込みを形成する作用状態と、回転カッタと受けローラとを離間させて、切込みを形成することなく両面粘着テープを通過走行させる非作用状態とに切換え可能に構成した
ことを特徴とする両面粘着テープ貼付け装置。
【請求項6】
請求項5に記載の両面粘着テープ貼付け装置において、
前記ベース部に対してアームを上方に揺動付勢させる弾性体を備えた
ことを特徴とする両面粘着テープ貼付け装置。
【請求項7】
請求項6に記載の両面粘着テープ貼付け装置において、
前記アームを揺動付勢に抗して下降させたとき、アームの下部に備わった回転カッタが作用位置で固定されるようアームをベース部に固定保持する保持機構を備えた
ことを特徴とする両面粘着テープ貼付け装置。
【請求項8】
請求項1ないし請求項7のいずれかに記載の両面粘着テープ貼付け装置において、
前記貼付けヘッドは、ベース部の先端部で回転自在に軸支されたローラを備えた
ことを特徴とする両面粘着テープ貼付け装置。
【請求項9】
請求項1ないし請求項7のいずれかに記載の両面粘着テープ貼付け装置において、
前記貼付けヘッドは、両面粘着テープの厚みより浅く、かつ、テープ幅よりも大きいテープ貼付け溝が平坦な下面に形成された貼付けブロックを備えた
ことを特徴とする両面粘着テープ貼付け装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2010−260675(P2010−260675A)
【公開日】平成22年11月18日(2010.11.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−111963(P2009−111963)
【出願日】平成21年5月1日(2009.5.1)
【出願人】(000003964)日東電工株式会社 (5,557)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年11月18日(2010.11.18)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年5月1日(2009.5.1)
【出願人】(000003964)日東電工株式会社 (5,557)
【Fターム(参考)】
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