説明

両面粘着テープ

【課題】表裏の接着性が異なる両面接着テープを簡便な手法で、より薄く製造できる方法を提供する。
【解決手段】樹脂組成物4と無機フィラー2を含有する粘着剤組成物を特定の表面粗さの離型紙上でシート状に成形すると無機フィラーの沈降による偏在により表裏の接着性が異なる接着シートが成形できる。シート状に硬化した両面粘着テープ1の、樹脂組成物4が、(A)アクリレート系モノマー、(B)(A)と共重合可能なモノマー、(C)光重合開始剤、(D)光架橋剤を含有する。無機フィラー2は平均粒径30μm以下であり、テープの片面1a側に偏在している。無機フィラー2が偏在している側のテープ面1aの表面粗度(中心線平均粗さRa)は0.01〜0.50μmである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、表裏の接着性が異なる両面粘着テープに関する。
【背景技術】
【0002】
両面粘着テープには、その取り扱い性や被着材のリムーバブル性の点から表裏の接着性を変えたものがある。
【0003】
従来、表裏の接着性が異なる両面粘着テープの製造方法としては、UV硬化型粘着剤組成物からなるシートの表裏に照射強度を変えて紫外線を照射する方法(特許文献1)や、接着力が異なる2層以上の粘着層を重畳する方法(特許文献2)などが知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007-123624号公報
【特許文献2】特開2007-107011号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、表裏の接着性が異なる両面粘着テープを製造する従来の方法は工程が複雑であり、製造コストが高くなる。さらに、表裏で紫外線の照射強度を変える方法(特許文献1)や、接着力が異なる粘着層を積層する方法(特許文献2)では、所期の接着力を発揮させ、かつテープを薄くすることに限界をきたしていた。
【0006】
これに対し、本発明は、表裏の接着性が異なる両面粘着テープを簡便な手法で、より薄く製造できるようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者は、特定の粒子径の無機フィラーを含有させた粘着剤組成物を、特定の表面粗さの離型紙上でシート状に成形すると、離型紙の表面粗さが転写された粘着テープの表面粗さと、その表面粗さを有するテープ面側へのフィラーの沈降の偏在とが相俟って、表裏の接着性が大きく異なる両面粘着テープを得られることを見出した。
【0008】
即ち、本発明は、次の成分(A)〜(D)
(A)アクリレート系モノマー
(B)(A)と共重合可能なモノマー
(C)光重合開始剤
(D)光架橋剤
を含有する樹脂組成物と無機フィラーとを含有する粘着剤組成物がシート状に硬化した両面粘着テープであって、無機フィラーは平均粒径30μm以下であり、テープの片面側に偏在し、
無機フィラーが偏在している側のテープ面の表面粗度(中心線平均粗さRa)が0.01〜0.50μmである両面粘着テープを提供する。
【0009】
また、本発明は上述の両面粘着テープの製造方法として、次の成分(A)〜(D)
(A)アクリレート系モノマー
(B)(A)と共重合可能なモノマー
(C)光重合開始剤
(D)光架橋剤
を含有する樹脂組成物と平均粒径30μm以下の無機フィラーとを含有する粘着剤組成物を、表面粗度(中心線平均粗さRa)0.01〜0.50μmの剥離シート上に塗布し、粘着剤組成物を光硬化させる両面粘着テープの製造方法を提供する。
【発明の効果】
【0010】
本発明の両面粘着テープは、無機フィラーを含有した粘着剤組成物を、特定の表面粗度を有する離型シート上でシート状に成形することにより得られるので、簡便に製造することができる。
【0011】
また、本発明の両面粘着テープは、粘着剤組成物を硬化させた単一の粘着層で構成することができ、他の粘着層や基材となる層が不要となる。そのため、所期の接着力を確保しつつテープ厚を薄くすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】図1は、本発明の両面粘着テープの模式的断面図である。
【図2】図2は、表面粗度が大きすぎる両面粘着テープの模式的断面図である。
【図3】図3は、本発明の両面粘着テープの製造方法の説明図である。
【図4】図4は、実施例及び比較例の両面粘着テープにおける表面粗度と剥離強度との関係図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明を実施例により具体的に説明する。
【0014】
図1は、本発明の一実施例の両面粘着テープ1の模式的断面図である。この両面粘着テープ1は、光硬化性の樹脂組成物と無機フィラー2とを含有する粘着剤組成物が光照射によりシート状に硬化した粘着層3から形成されている。無機フィラー2の平均粒径は30μm以下であり、テープの片面1a側に偏在しており、無機フィラー2が偏在している側の面1aの表面粗度は中心線平均粗さRaで0.01〜0.50μmである。テープの他面1bには無機フィラー2が存在せず、粘着層3が平坦に形成されている。このため、この両面接着テープ1によれば、片面1aでは、平均粒径30μm以下の無機フィラー2の存在と、粘着層3の表面粗度Ra0.01〜0.50μmの表面凹凸が相俟って接着性が大きく低下する。一方、他面1bでは無機フィラー2が存在せず、同じ粘着層3が平坦に形成されていることにより、フィラーと表面凹凸による接着性の低下はない。したがって、この両面粘着テープ1によれば表裏の接着性が大きく異なり、表面(平坦面)に貼付する被着材M1の剥離強度と、裏面(粗面)に貼着する被着材M2の剥離強度との比を2倍以上にすることができる。
【0015】
ここで、テープ片面1aの表面粗度が上述の範囲より小さい場合にも、大きい場合にも、その面1aの接着性を十分に低くすることができない。これは、テープ面の表面粗度を平坦な状態から次第に大きくしていくと、被着面とテープ面との接触面積が小さくなることにより接着性が低下するが、表面粗度が過度に大きくなると図2に示すように、無機フィラー2より粗面1a側に存在する樹脂量が多くなるため、粗面1aの接着性が大きくなり、他面1bとの接着強度の差が小さくなるためと考えられる。このように無機フィラー2が存在する側のテープの表面粗度を特定の範囲とすることにより、テープの表裏で接着性を大きく変えられることは、本発明者の知見によるものである。
【0016】
無機フィラー2の平均粒子径は、30μmを超えると、無機フィラー2による表面凹凸がテープの平坦面1b側にも形成され、テープ表裏の接着性の差が小さくなるので好ましくない。無機フィラー2の好ましい平均粒子径はテープ表裏の接着性の差の点から5〜20μmである。
【0017】
また、無機フィラー2としては、両面粘着テープ1の製造時に無機フィラー2をテープ片面1a側に速やかに沈降させ、偏在させた状態で粘着剤組成物を硬化させることができるように、比重を2.0以上とすることが好ましい。このような無機フィラー2としては、酸化アルミニウム、酸化マグネシウム、二酸化珪素等の絶縁性の金属酸化物や、水酸化アルミニウム等の金属水酸化物をあげることができる。
【0018】
無機フィラー2の形状は、沈降によりテープ表面に凹凸が形成されやすい形状が好ましく、より具体的には球状、真球状等を好ましく使用することができる。
【0019】
一方、粘着層3を形成する樹脂組成物としては、次の成分(A)〜(D)
(A)アクリレート系モノマー
(B)(A)と共重合可能なモノマー
(C)光重合開始剤
(D)光架橋剤
を含有するものを使用する。
【0020】
このうち、(A)アクリレート系モノマーとしては、アルキル基の炭素数が1〜14、好ましくは4〜12のアクリル酸アルキルエステル又はメタクリル酸アルキルエステル(以下、これらを(メタ)アクリル酸アルキルエステルともいう)が好ましい。より具体的には、(メタ)ブチル(メタ)アクリレート、イソアミル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ノニル(メタ)アクリレート、イソノニル(メタ)アクリレート、イソオクチル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、デシル(メタ)アクリレート等があり、これらの1種以上を使用することができる。
【0021】
(B)(A)と共重合可能なモノマーとしては、(メタ)アクリル酸、N-ビニルピロリドン、イタコン酸、テトラヒドロフルフリルアクリレート、エチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、イソボニル(メタ)アクリレート、エトキシエチル(メタ)アクリレート、ブトキシエチル(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、フェニル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート等を挙げることができ、これらの1種以上を使用することができる。
【0022】
(C)光重合開始剤としては、:アセトフェノン系又はベンゾフェノン系開始剤を好ましく使用することができ、具体的には、4−フェノキシジシクロアセトフェノン、4−t−ブチル−ジクロロアセトフェノン、ジフェノキシアセトフェノン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテル、ベンジルメチルケタール及びこれらの混合物がある。
【0023】
(D)光架橋剤としては、多官能(メタ)アクリレートを使用することができる。
【0024】
この他、樹脂組成物には、(E)成分として、ロジン系、テルペン系、テルペンフェノール系等のタッキーファイヤーを含有させることができ、さらに必要に応じて難燃剤等を含有させることができる。
【0025】
成分(A)のアクリレート系モノマーと、成分(B)の(A)と共重合可能なモノマーとの配合割合は、成分(A)100重量部に対して成分(B)を1〜20重量部とすることが好ましい。
【0026】
樹脂組成物は、粘度500〜3500mPa・sec(B型粘度計、ロータNo.3、20rpm、25℃)に調製することが好ましい。粘度が低すぎる塗布時に樹脂組成物が広がりすぎて片面に無機フィラーが偏在した塗膜を形成することが困難となり、粘度が高すぎると無機フィラーの沈降が遅くなり、テープの表裏で無機フィラーの沈降の程度に差をつけることが困難となる。
【0027】
また、樹脂組成物と前述の無機フィラーとの配合割合は、樹脂組成物100重量部に対して無機フィラーを100〜500重量部とすることが好ましい。
【0028】
両面接着テープ1の製造方法としては、まず、常法により樹脂組成物を構成する各成分を混合して樹脂組成物を調製し、図3(a)に示すように、樹脂組成物4を表面粗度(中心線平均粗さ)0.01〜0.50μmの剥離シート10上にコーター等を用いて均一に塗布する。このような表面粗度の剥離シートとしては、上質紙にポリエチレンコートとシリコーンコートを順次行った市販の剥離紙や剥離処理プラスチックフィルム等を使用することができる。ここで、剥離シートの表面粗度は、JIS B0601に準拠して測定される値である。また、剥離シート10上の樹脂組成物4の塗布厚は50〜500μmとすることが好ましい。
【0029】
次に、樹脂組成物4の塗布層を雰囲気中の酸素から遮断するために、樹脂組成物4の塗布層の上に透明な剥離用PETフィルム等の剥離フィルム11をラミネートする。そして、剥離フィルム11側からUV照射して樹脂組成物4を硬化させて粘着層3を形成する。この硬化の間に、樹脂組成物4に均一に分散していた無機フィラー2は沈降し、剥離シート10側に偏在する。通常、無機フィラー2の比重は樹脂組成物4の比重に比して2倍以上大きく、樹脂組成物4を剥離シート10に塗布した後に無機フィラー2は速やかに沈降するので、実際上は塗布からUV照射までの間に静置時間をおくことは不要であるが、無機フィラー2をより確実に偏在させるためには塗布後の沈降時間として3秒以上をおくことが好ましい。UV照射により樹脂組成物4が硬化した後、剥離シート10と剥離フィルム11を除去し、本発明の両面接着テープ2を得ることができる。
【実施例】
【0030】
以下、実施例に基づき、本発明を具体的に説明する。
【0031】
実施例1〜3及び比較例1、2
表1の組成の樹脂組成物を調製し、この樹脂組成物100重量部と、無機フィラーとして水酸化アルミニウム(平均粒子径20μm、球状)100重量部とを混合し、粘着剤組成物を調製した。
【0032】
【表1】

【0033】
なお、樹脂組成物の粘度(25℃)をB型粘度計(ロータNo.3、20rpm)で測定したところ、700mPa・secであった。
【0034】
表2に示すように、表面粗度が異なる5種の剥離シートを用意した。これらの剥離シートの表面粗度は、表面粗さ測定器(ミツトヨ(株)、SV−2100)を用いて、JIS B0601に準拠し、10mm/sの走査速度で測定した。
【0035】
剥離シートの上に上述の樹脂組成物をよく撹拌した後、コーターで塗布厚100μmに塗布し、塗布層上に剥離用PETフィルムをラミネートし、そのPETフィルム上からUVを照射し(照射量:2.8J/cm2)、樹脂組成物を硬化させ、実施例1〜4及び比較例1の両面粘着テープを得た。
【0036】
評価
実施例1〜3及び比較例1、2の両面粘着テープについて、表面(平坦面)と裏面(粗面)の(a)ボールタックと(b)剥離強度を次のように測定した。
結果を表2と図4に示す。
【0037】
(a)ボールタック
JIS Z 0237により、傾斜角30°のテープ上で剛球を転がし、テープ上で停止した剛球の最大径を求めた。
【0038】
(b)剥離強度
JIS Z・0237に準拠し、引張試験機として、テンシロンRTA−250(エーアンドディー(株))を使用し、試験片としてSUS304(研磨板)を使用し、引張速度300mm/min、引張方向180°で測定した。
【0039】
【表2】

【0040】
表2及び図4の結果から、剥離シートの表面粗さ(Ra)、即ち、両面粘着テープの粗面の表面粗さ(Ra)が0.01〜0.50μmの範囲にある実施例1〜3では、表裏の剥離強度の比が2倍以上あるが、表面粗さ(Ra)がこれよりも小さい比較例1や、これよりも大きい比較例2では、表裏の剥離強度の違いが小さいことがわかる。
【産業上の利用可能性】
【0041】
本発明の両面粘着テープは、表裏の接着性が大きく異なるため、電子機器内部の部品の固定等に用いられる再剥離性の粘着テープや、仮貼り、再剥離等の用途に有用であり、特に、無機フィラーの含有量が多いことから、耐熱性が必要とされる再剥離性の粘着テープとして有用である。
【符号の説明】
【0042】
1 両面粘着テープ
1a 両面粘着テープの片面又は粗面
1b 両面粘着テープの他面又は平坦面
2 無機フィラー
3 粘着層
4 樹脂組成物
10 剥離シート
11 剥離フィルム

【特許請求の範囲】
【請求項1】
次の成分(A)〜(D)
(A)アクリレート系モノマー
(B)(A)と共重合可能なモノマー
(C)光重合開始剤
(D)光架橋剤
を含有する樹脂組成物と無機フィラーとを含有する粘着剤組成物がシート状に硬化した両面粘着テープであって、無機フィラーは平均粒径30μm以下であり、テープの片面側に偏在し、
無機フィラーが偏在している側のテープ面の表面粗度(中心線平均粗さRa)が0.01〜0.50μmである両面粘着テープ。
【請求項2】
粘着剤組成物が、樹脂組成物100重量部に対して無機フィラー100〜500重量部を含有する請求項1記載の両面粘着テープ。
【請求項3】
次の成分(A)〜(D)
(A)アクリレート系モノマー
(B)(A)と共重合可能なモノマー
(C)光重合開始剤
(D)光架橋剤
を含有する樹脂組成物と平均粒径30μm以下の無機フィラーとを含有する粘着剤組成物を、表面粗度(中心線平均粗さ)0.01〜0.50μmの剥離シート上に塗布し、粘着剤組成物を光硬化させる両面粘着テープの製造方法。
【請求項4】
粘着剤組成物を剥離シート上に塗布後3秒以上おいて粘着剤組成物を光硬化させる請求項3記載の両面粘着テープの製造方法。
【請求項5】
粘着剤組成物が、樹脂組成物100重量部に対して無機フィラー100〜500重量部を含有する請求項3又は4記載の両面粘着テープの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−188500(P2012−188500A)
【公開日】平成24年10月4日(2012.10.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−51708(P2011−51708)
【出願日】平成23年3月9日(2011.3.9)
【出願人】(000108410)ソニーケミカル&インフォメーションデバイス株式会社 (595)
【Fターム(参考)】