説明

両頭針

【課題】中空針の針先がむき出しにならず、薬液を移行させる両容器の栓体との一体化が良好になり、しかも、薬液移行中での液漏れの全くない両頭針を提供する。
【解決手段】本願両頭針1は、2つの有底筒2、3をその外底面を背反方向に連結体4を介して結合し、該各有底筒2、3の筒内に内底面より中空針5、6を突設し、該中空針の内孔同士を前記連結体を貫通した通路7を介して接続するとともに、該連結体4の途中に設けた管体8を、前記一方の中空針5の尖端に通気孔9を介して連通し、中空針5、6がむき出しにならず、指先などを傷付ける危険を解消でき、しかも、血液の移行を行う移行元の容器は容易に陽圧化できるし、両容器の口栓に中空針をそれぞれ結合させると、栓体を含め両容器の口部を有底筒が覆って外から把持するとともに、栓体と中空針とも摩擦により結合するために容器との一体感がよくなるように構成した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、採血した注射器に接続して採血血液を真空導入する保管容器(元の容器)と、その保管容器から血液を真空導入して導入中にフィルターにより血清を分離するか、導入後に遠心分離するための分離容器(受領容器)とを、接続する両頭針に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般に、両頭針は、バイアル瓶などに収容されている薬剤(血液を含む)を、他の容器に移行(移し換える)させるために使用される。例えば、特開2002−238979に係る両頭針は、バイアル瓶(元の容器)などの口部ゴム栓に差し込む一方の中空針と、他の容器(受領容器)の口部ゴム栓に差し込む他方の中空針を把持板を介して背反方向に備え、両中空針を双方のゴム栓に差し、かつ、バイアル瓶などを高い位置にすると、薬剤が受領容器に液圧を利用して移行されるようになっていた。これは上記特開2002−238979に係る両頭針は、バイアル瓶などの口部ゴム栓に中空針を差し込むと、外の空気が中空針に形成した通路を通して瓶内に導入できるように工夫されていた。従って、バイアル瓶などの内部にフィルター付き注射針などを差し込んで陽圧するという作業が不要であった。
【特許文献1】特開2002−238979号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、上記両頭針は把持板を介して背反方向に備えた中空針はそれぞれの針がむき出しであったため、指先などを傷付ける危険があったばかりでなく、むき出しの中空針では薬液を移行させたい容器の両口部に差し込んだときの容器との一体化は、両口部の栓体と針体との摩擦のみであって確実に固定される保証がなかった。また、例えば、血液の保管容器から血清を取り出す分離容器へ真空を利用して血液を移行させる場合、両口部の栓体と針体との間に出来る微細な隙間から液漏れを生じさせる虞があった。
【0004】
本発明は、上記の問題点を解消するためのもので、その目的とするところは、中空針の針先がむき出しにならず、薬液を移行させる両容器の栓体との一体化が良好になり、しかも、薬液移行中での液漏れの全くない両頭針を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記の目的を達成するため、本発明に係る両頭針は、2つの有底筒をその外底面を背反方向に連結体を介して結合し、該各有底筒の筒内に内底面より中空針を突設し、該中空針の内孔同士を前記連結体を貫通した通路を介して接続するとともに、該連結体の途中に設けた管体を、前記一方の中空針の尖端に通気孔を介して連通したことを特徴とし、中空針がむき出しにならないように構成した。
【0006】
また、請求項2に記載の発明に係る両頭針は、前記通気孔のない中空針側の有底筒の内底寄りに、開孔を対向設置したことを特徴とし、薬液移行終了後、移行先の容器を切り離したときに有底筒に栓体が保留されるように構成した。
【0007】
さらに、請求項3に記載の発明に係る両頭針は、前記管体内に、エアフィルターを装填したことを特徴とし、空中に浮遊する異物を除去した状態で薬液移行元の容器を陽圧にできるように構成した。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、移行元の容器の口栓に通気孔を有する中空針を差し、他方の中空針を移行先の容器の口栓に差すことにより使用されるが、有底筒内に突設された中空針はむき出しにならず、指先などを傷付ける危険を解消できる。しかも、血液の移行を行う移行元の容器は容易に陽圧化できるし、両容器の口栓に中空針をそれぞれ結合させると、栓体を含め両容器の口部を有底筒が覆って外から把持するとともに、栓体と中空針とも摩擦により結合するために容器との一体感がよく、確実に固定されるばかりでなく、栓体と中空針との間に微細な空隙も出来ず、液漏れの虞もないなどの各種の優れた効果を奏するものである。
【0009】
また、請求項2に記載の発明によれば、薬液移行終了後、移行先の容器を切り離したときに有底筒に栓体が保留されて仕舞うため、二度使用が出来なくなり、院内感染などを未然に防止できるという優れた効果を奏するものである。
【0010】
さらに、請求項3に記載の発明によれば、薬液移行中に室内に浮遊することのある病原菌などの異物を移行元の容器内に侵入させることがないという優れた効果を奏するものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
次に、本発明の最良の形態を図面に基いて説明する。図1は本願両頭針の外観斜視図、図2は本願両頭針の拡大断面図、図3は薬液移行手順で、(a)は接続前、(b)は移行後、(c)は移行先容器を切離した場合である。
【0012】
1は本願両頭針である。該本願両頭針1を構成する2つの有底筒2、3は、その外底面2a、3aを背反方向に連結体4を介して結合している。該各有底筒2、3の筒内には内底面から中空針5、6が突設している。該中空針5、6の内孔同士は前記連結体4を貫通した通路7を介して接続されている。また、該連結体4の途中には管体8が設けられ、該管体8と一方の中空針5の尖端とは通気孔9が連通している。
【0013】
前記2つの有底筒2、3と、連結体4及び中空針5、6は、透明プラスチックにより形成されている。また、前記連結体4は、中心部を構成する軸部4aと該軸部4aより前記管体8を設けた上面を除き3方に翼状に張り出したリブ片4b、4b′、4b″とで頑強に構成されている。前記プラスチック素材は、薬品に強く、ガスバリヤー性(気体を透過させない性質)に優れ、かつ、透明性を保有する限り、特に、素材の種類は問わない。
【0014】
前記本願両頭針1の2つの有底筒2、3のうち、一方の有底筒(通気孔9を持つ中空針5を備えた有底筒)2には、図3(a)の如く、予め、血液(血液以外の薬液の場合もある)Aを収容した移行元の容器10を対峙させ、矢印イの如く挿し込むと、同図(b)の如く、容器10の口部に嵌入した口栓11に中空針5が差し込まれる。次に、他方の有底筒3に、図3(a)の如く、対峙させた移行先の真空の容器12を、矢印ロの如く、挿し込むと、同図(b)の如く、容器12の口部に嵌入した口栓13に中空針6が差し込まれる。前記移行元の容器10には、例えば、人体より採血した注射器(図示せず)に、接続器(図示せず)を介して接続して注射器から血液が収容されている。
【0015】
前記移行元の容器10を上述の如く本願両頭針1の一方の有底筒2に容器10を接続した後、他方の有底筒3に、予め、真空になっている移行先の容器12を接続すると、移行元の容器10内の血液は移行先の容器12に真空導入される。この移行先の容器12内に真空導入された血液は、導入中に特殊フィルター12′により血清Bに分離される。この場合、移行先の容器12には特殊フィルター12′を使わずに、真空導入後の血液を遠心分離器(図示せず)に掛けて血清を分離するようにしてもよい。
【0016】
前記移行元の容器10は、元々、真空化した容器であるが、人体より採血した注射器に接続して血液を真空導入した時に真空度合いが既に低減している。一方、前記移行先の容器12は、予め、高い真空状態にあり、その高い真空度合いは口部に嵌入した口栓13のゴム弾性によって確実に保たれている。
【0017】
前記移行先の容器12は、その口部に嵌入した口栓13とともに本願両頭針1の他方の有底筒3に、奥深く差し込んだときに、該有底筒3の内底寄りに対向設置されている開孔14a、14bに、前記容器12の口栓13の周囲に張出した鍔部13′が嵌入するようになっている。従って、血液(薬液)移行後に移行先の容器12を、前記有底筒3から図3(c)の如く、引き抜くと、口栓13が該有底筒3に保留されるようになっている。この場合、有底筒3の開孔14a、14bの端縁14a′、14b′の両側に沿って切り込み溝15a、15bを設け、該端縁14a′、14b′が前記口栓13の鍔部13′の段部に食い込み易くするように構成しておくとよい。
【0018】
前記連結体4の途中に設けた管体8には、エアフィルター16が装填されている。これは薬液移行中に病院の室内に浮遊していることのある病原菌などの異物を移行元の容器内に侵入させない(薬液に溶け込ませない)ために有効である。このフィルターとしては、空気は通すが水(水分)は通さないものであればよく、繊維を集束したものでも、織物でも、焼結ナイロンなどの固体でもよい。
【0019】
次に、前記本願両頭針1の作用について説明する。まず、本願両頭針1の一方の有底筒(通気孔9を持つ中空針5を備えている)2に、予め、薬液(血液を含む)を収容した移行元の容器10を挿し込む。同時に、該容器10の口部に嵌入した口栓11に中空針5を差し込む。
【0020】
次いで、本願両頭針1の他方の有底筒3に、移行先の真空の容器12を挿し込む。同時に、該容器12の口部に嵌入した口栓13に中空針6を差し込む。これにより移行元の容器10内は、前記連結体4の途中に設けた管体8から通気孔9を通って中空針5の尖端より採り入れられた空気により陽圧になるため、移行元の容器10内の薬液は、前記連結体4を貫通した通路7を通して移行先の真空の容器12内に液圧を利用して移行するようになる。
【0021】
前述のごとく、移行元の容器10から移行先の容器12に導入(受領)された薬液が血液Aの場合は、その真空導入中に特殊フィルター12′により血清Bが分離され、取り出されて種々の試験(あるいは検査)に供される。尤も、移行先の容器12に導入(受領)された薬液の利用法については限定されない。
【産業上の利用可能性】
【0022】
本願両頭針は、例えば、人体より採血した注射器に接続して採血血液を真空導入する容器と、その容器から血液を真空導入して導入中にフィルターにより血清を分離するか、導入後に遠心分離するための容器とを接続して血液を移行させるようにするもので、医療用として、あるいは検査用としてもその利用性は高いものである。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本願両頭針の外観斜視図である。
【図2】本願両頭針の拡大断面図である。
【図3】薬液移行手順で、(a)は接続前、(b)は移行後、(c)は移行先容器を切離した場合である。
【符号の説明】
【0024】
1 本願両頭針
2、3 有底筒
4 連結体
5、6 中空針
7 通路
8 管体
9 通気孔
10 移行元の容器
11 口栓
12 移行先の容器
13 口栓
13′ 鍔部
14a、14b 開孔口
15a、15b 切り込み溝
16 エアフィルター
A 薬液(血液を含む)
B 血清

【特許請求の範囲】
【請求項1】
2つの有底筒をその外底面を背反方向に連結体を介して結合し、該各有底筒の筒内に内底面より中空針を突設し、該中空針の内孔同士を前記連結体を貫通した通路を介して接続するとともに、該連結体の途中に設けた管体を、前記一方の中空針の尖端に通気孔を介して連通したことを特徴とする両頭針。
【請求項2】
前記通気孔のない中空針側の有底筒の内底寄りに、開孔を対向設置したことを特徴とする請求項1に記載の両頭針。
【請求項3】
前記管体内に、エアフィルターを装填したことを特徴とする請求項1又は2に記載の両頭針。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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