説明

中性サイジング方法および中性サイジング紙

【課題】
第1の課題は、中性抄紙あるいはアルカリ性抄紙において、抄紙機および抄紙系内の汚れが少なく、サイズ度の立ち上がりが早く、得られる紙の滑りの問題もなく、かつ低添加率で効率よくサイズ度を発現できるために低コストである等の特徴を有する優れた中性サイジング方法の提供にある。第2の課題は、該中性サイジング方法により抄造される滑りの問題もなく、充分なサイズ性を有する中性サイジング紙の提供にある。
【解決手段】
内添サイズ剤として、中性ロジンサイズ剤およびアルケニル無水コハク酸サイズ剤を使用し、中性ロジンサイズ剤/アルケニル無水コハク酸サイズ剤=95/5〜40/60の固形分重量比でパルプスラリーに添加し、かつ無機凝結剤を添加する。また、この中性サイジング方法を適用し、紙中填料率4重量%以上30重量%以下の中性サイジング紙を得る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、中性サイジング方法と該中性サイジング方法によりサイジングされた紙に関するものである。
【背景技術】
【0002】
製紙業界では、酸性抄造紙における紙の経年劣化や低白色度、低不透明度などの諸問題の改善を目的として、更に、酸性抄紙で使用されるタルク、カオリン、二酸化チタンなどよりも安価な填料の使用を可能にして紙製造コストの削減を図ることを目的として、酸性抄紙からの転換が進められ、現状、中性抄紙あるいはアルカリ性抄紙が広く行なわれている。この中性抄紙用の内添サイズ剤としては、アルキルケテンダイマー(以下、AKDと記す)、アルケニル無水コハク酸(以下、ASAと記す)、中性ロジンサイズ剤などが代表的なものであり、これらから選ばれる1種類の中性サイズ剤を使用することが一般的である。しかし、これらの中性サイズ剤にはそれぞれ問題がある。
【0003】
AKDサイズ剤の場合には、抄紙機のプレスロール、スムーザーロール、フェルトなどの抄紙用具が汚れ易いという操業上のトラブルがしばしば発生する。更に、AKDサイズ剤でサイジングされた紙はサイズ効果の発現が遅く(サイズ度の立ち上がりが遅い)、紙のサイズ度管理が難しいという問題がある。また、AKDサイズ剤でサイジングされた紙は滑り易く、紙の断裁などの加工や紙製品の使用時に、紙の滑りによるトラブルが発生することが多い。
【0004】
ASAサイズ剤の場合には、紙の摩擦係数を低下させることもなく、また、サイズ度の立ち上がりが早いという長所がある。しかし、ASAは加水分解しやすく、ASA加水分解物はサイズ発現効果がないため、ASAサイズ剤は、紙料へ添加する直前に乳化しなければならないという問題がある。また、ASA加水分解物に起因する汚れが抄紙機に付着し易く、操業上のトラブルを発生することがAKDサイズ剤の場合よりも多いという問題がある。
【0005】
中性ロジンサイズ剤の場合には、そのサイズ剤の使用に際して抄紙条件を適正にコントロールしないと、初期のサイズ度が得られなく、加えてサイズ性能が低いためサイズ剤の添加率を高くする必要があり、サイジングコストが高くなるという問題がある。
【0006】
以上のように各中性サイズ剤にはそれぞれ問題点があるのに加えて、中性抄紙あるいはアルカリ性抄紙において炭酸カルシウムなどの填料の配合率が増大すると、これらの内添中性サイズ剤ではサイズ効果が顕著に低下してしまうという問題がある。このため、高サイズ度が要求される印刷用紙などの紙では、中性サイズ剤の内添のみでは、そのサイズ度を紙に付与させることが困難な場合もあった。
【0007】
上記の中性サイズ剤の問題を解決することを目的として、従来から中性サイジング方法の改善が試みられている。
【0008】
従来の技術として、中性サイズ剤と他の化学物質との併用技術があり、併用する化学物質として、カチオン化澱粉、カチオン性ポリアクリルアミド、両性ポリアクリルアミド、ポリアミン−エピクロルヒドリン樹脂、ポリアミンポリアミド−エピクロルヒドリン樹脂などがある。更に近年の技術としては、例えば、中性サイズ剤のサイズ効果を効果的に発揮せしめることを課題として、AKD、ASA、カチオン性モノマーと疎水性モノマーとの共重合体、カチオン化石油樹脂、カチオン化脂肪酸アミドからなる群から選ばれる1種または2種以上の中性サイズ剤と、キトサンを併用してサイジングする方法が開示されている(特許文献1参照)。また、中性サイズ剤を用いた抄紙系において、汚れの発生を低減した紙の製造方法の提供を課題として、AKD、ASA、ロジンエステル系サイズ剤から選ばれるいずれか少なくとも1種からなる中性サイス剤と、スチレン系カチオン性高分子を、パルプスラリーに添加し、抄紙して紙を製造する方法が開示されている(特許文献2参照)。また、中性抄紙あるいはアルカリ性抄紙において、AKD、ASAなどの反応性サイス剤と併用してサイズ効果に優れる紙の提供を技術的課題とし、併用物質として、ロジン類、強化ロジン類、ロジンエステル類、強化ロジンエステル類からなる群より選ばれたロジン系樹脂の存在下に、スチレン類と(メタ)アクリル酸のアミノアルキルエステルとを共重合させ、4級化剤または酸でカチオン化処理したロジン結合型カチオン性重合体が開示されている(特許文献3参照)。以上のような中性サイズ剤と他の化学物質を併用する技術では、中性サイズ剤のパルプへの定着率を充分には向上できない等の理由から、未だ充分に満足できるサイズ効果を得るには至っていない。
【0009】
サイズ剤を混合する技術としては、例えば、ケテンダイマーを含む分散相と、分散剤を含む水性連続相から成るケテンダイマー系製紙用サイズ剤において、分散相がケテンダイマーとロジンエステルとの混合物であり、重量比がケテンダイマー/ロジンエステル=96/4〜40/60であるケテンダイマー系製紙用サイズ剤が開示されている(特許文献4参照)。また、サイズ度の立ち上がりが良く、サイズ性能に優れ、抄紙条件の設定が容易かつ抄紙機を汚さないサイズ剤の提供を課題として、ロジンエステル類及びその強化物の少なくとも1種を含有するロジン系物質を含有する水性分散液と、AKDを含有する水性分散液を混合して得られる中性抄紙用サイズ剤の製造方法、そのサイズ剤、これを用いたサイジング方法、サイジング紙が開示されており、ロジン系物質とAKDの重量比が、ロジン系物質/AKD=99/1〜65/35とすることも開示されている(特許文献5参照)。
【0010】
また、従来のサイズ剤を反応させ、更に他のサイズ剤を混合使用する技術としては、製紙用中性サイズ剤及びそれを用いる紙のサイジング方法に関し、pH6〜9の中性抄紙領域において優れたサイズ効果を発現する製紙用中性サイズ剤の提供を課題として、ASAとロジン類と多価アルコールとを加熱反応せしめて得られるエステル化反応生成物と強化ロジンとの混合樹脂を乳化分散剤の存在下に水に分散せしめた製紙用中性サイズ剤が開示されている(特許文献6参照)。
【0011】
【特許文献1】特許第2571919号公報
【特許文献2】特開2001-32191号公報
【特許文献3】特開2001-73293号公報
【特許文献4】特許第1275798号公報
【特許文献5】特開平7-229083号公報
【特許文献6】特許第2908775号公報
【0012】
本発明の中性サイジング方法は、上記のいずれの従来技術にも属さない、サイズ発現効果に優れた新規な中性サイジング方法である。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
第1の課題は、中性抄紙あるいはアルカリ性抄紙において、抄紙機および抄紙系内の汚れが少なく、サイズ度の立ち上がりが早く、得られる紙の滑りの問題もなく、かつ低添加率で効率よくサイズ度を発現できるために低コストである等の特徴を有する優れた中性サイジング方法の提供にある。第2の課題は、該中性サイジング方法により抄造される滑りの問題もなく、充分なサイズ性を有する中性サイジング紙の提供にある。
【課題を解決するための手段】
【0014】
第1の課題である優れた中性サイジング方法の提供は、内添サイズ剤として、中性ロジンサイズ剤およびアルケニル無水コハク酸サイズ剤を使用し、中性ロジンサイズ剤/アルケニル無水コハク酸サイズ剤=95/5〜40/60の固形分重量比でパルプスラリーに添加し、かつ無機凝結剤を添加することにより、解決できる。また、第2の課題である中性サイジング紙の提供は、少なくとも、内添サイズ剤として中性ロジンサイズ剤およびアルケニル無水コハク酸サイズ剤を、中性ロジンサイズ剤/アルケニル無水コハク酸サイズ剤=95/5〜40/60の固形分重量比で含有し、かつ無機凝結剤を含有する紙料を抄紙して、紙中填料率4重量%以上30重量%以下の中性サイジング紙を得ることにより、解決できる。
【発明の効果】
【0015】
内添サイズ剤として、中性ロジンサイズ剤およびアルケニル無水コハク酸サイズ剤を使用し、中性ロジンサイズ剤/アルケニル無水コハク酸サイズ剤=95/5〜40/60の固形分重量比でパルプスラリーに添加し、かつ無機凝結剤を添加し、抄紙することを特徴とする本発明の紙の中性サイジング方法により、抄紙機および抄紙系内の汚れを低減でき、サイズ度の立ち上がりを早くすることが可能であり、かつ低添加率で効率よくサイズ度を発現できるためにサイジングコストを低減できる。また、得られる紙の滑りの問題もなく、紙中填料率が高いにも拘わらず充分なサイズ性を有する紙を提供できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
本発明の優れたサイズ効果を有する中性サイジング方法は、内添中性サイズ剤として、中性ロジンサイズ剤とASAサイズ剤の2種類のサイズ剤を併用するものである。
【0017】
本発明で使用する中性ロジンサイズ剤は、中性抄紙あるいはアルカリ性抄紙においてサイズ度を発現できるものであれば良く、公知公用の中性ロジンサイズ剤の中から適宜選択され、単独で使用することもできるし、2種以上の中性ロジンサイズ剤を併用することもできる。
【0018】
本発明で使用する中性ロジンサイズ剤は、ロジンエステル類、強化ロジンエステル類から選ばれるの少なくとも1種類を主成分として含有するものである。
【0019】
このロジンエステル類は、ロジン類および/または強化ロジンと多価アルコールとを公知のエステル化条件で反応させ、水性分散液としたものが用いられる。
【0020】
ロジン類とは、ガムロジン、ウッドロジン、トール油ロジン等の原料ロジンであり、これらを単独または2種以上混合して用いることもできる。また、この原料ロジンを、水素添加、不均化、アルデヒド変性、重合等の処理を単独あるいは2種以上施した変性ロジンも、このロジン類に含まれる。
【0021】
強化ロジンとは、原料ロジンの一部をα,β-不飽和カルボン酸等で変性したものをいう。α,β-不飽和カルボン酸としてはマレイン酸、フマール酸、アクリル酸、メタアクリル酸、イタコン酸、シトラコン酸、これらの無水物及びこれらの混合物を例示できる。
【0022】
多価アルコールとは、グリセリン、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、3−メチルペンタン−1,3,5−トリオール、トリエタノールアミン等の3価アルコールや、ペンタエリスリトール、ジグリセリン等の4価アルコールが挙げられ、これらの中から少なくとも1種類が用いられる。
【0023】
ロジンエステル類の製造は、ロジン類および/または強化ロジンと多価アルコールを仕込んだ後、多価アルコールの沸点に応じて、常圧、減圧または加圧下に温度150〜300℃で3〜40時間程度撹拌しながら脱水縮合することにより行う。得られるロジンエステルは、多価アルコール類の水酸基が全てロジン類のカルボキシル基とエステル化している完全エステル化物及び該水酸基の一部がエステル化している部分エステル化物のいずれでも良い。
【0024】
強化ロジンエステル類は、ロジン類に多価アルコールとα,β-不飽和カルボン酸等とを順次または同時に反応させることにより得られる。順次とはロジン類に多価アルコールを反応させた後にα,β-不飽和カルボン酸等を反応させても良いし、ロジン類にα,β-不飽和カルボン酸等を反応させた後に多価アルコールを反応させても良いことを意味する。
【0025】
ロジンエステル類、強化ロジンエステル類から選ばれるの少なくとも1種類を主成分として含有する中性ロジンサイズ剤の水性分散液は、ロジンエステル類および/または強化ロジンエステル類を分散剤および/または保護コロイドの存在下で分散させることにより容易に調製できる。水性分散化の方法は、特に制限は無く、従来公知の各種方法を採用でき、例えば、高圧ホモジナイザー等を用いる高圧乳化法、反転乳化法等が挙げられる。
【0026】
ロジンエステル類、強化ロジンエステル類から選ばれるの少なくとも1種類を主成分として含有する中性ロジンサイズ剤の水性分散化に使用する分散剤としては、アルキルベンゼンスルホン酸塩、アルキル硫酸塩、ロジン石鹸等のアニオン系分散剤、ポリエチレンオキシド、ポリプロピレンオキシド等のノニオン系乳化剤、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル硫酸塩、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテルスルホン酸塩、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテルのスルホコハク酸塩、ポリオキシエチレンジスチリルフェニルエーテル硫酸塩、ポリオキシエチレンジスチリルフェニルエーテルのスルホコハク酸塩等のノニオン−アニオン性分散剤等を例示できる。
【0027】
ロジンエステル類、強化ロジンエステル類から選ばれるの少なくとも1種類を主成分として含有する中性ロジンサイズ剤の水性分散化に使用する保護コロイドとしては、カゼイン、レシチン、ポリビニルアルコール、各種変性澱粉、ポリマー系乳化剤(スチレン/アクリル酸(塩)共重合物、アクリルエステル/アクリル酸(塩)共重合物、アクリルアミド/アクリル酸(塩)共重合物等)等を例示できる。
【0028】
本発明において、前記中性ロジンサイズ剤と併用するASA類とは、下記一般式で示される化合物である。
【0029】
【化1】

前記一般式中、R1は炭素数6〜30の不飽和の炭化水素基を示す。
【0030】
上記化学式1で表されるASAは、R1は炭素数が14〜22の不飽和炭化水素基であることがより好ましい。R1は直鎖状の炭化水素基に限定されるもではなく、分岐状や環状であっても構わない。このようなASAの具体例としては、イソオクタデセニル無水コハク酸、ヘキサデセニル無水コハク酸、ドデシル無水コハク酸、デセニル無水コハク酸、オクテニル無水コハク酸等が挙げられる。
【0031】
ASAの水性分散液は、ASAを分散剤および/または保護コロイドの存在下で分散させることにより容易に調製できる。水性分散化の方法は、特に制限は無く、従来公知の各種方法を採用でき、例えば、高圧ホモジナイザー等を用いる高圧乳化法、反転乳化法、ベンチュリー管を用いる乳化法等が挙げられる。
【0032】
ASAの水性分散化に使用する分散剤としては、アルキルベンゼンスルホン酸塩、アルキル硫酸塩、ロジン石鹸等のアニオン系分散剤、ポリエチレンオキシド、ポリプロピレンオキシド等のノニオン系乳化剤、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル硫酸塩、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテルスルホン酸塩、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテルのスルホコハク酸塩、ポリオキシエチレンジスチリルフェニルエーテル硫酸塩、ポリオキシエチレンジスチリルフェニルエーテルのスルホコハク酸塩等のノニオン−アニオン性分散剤等を例示できる。
【0033】
ASAの水性分散化に使用する保護コロイドとしては、カゼイン、レシチン、ポリビニルアルコール、各種変性澱粉、ポリマー系乳化剤(スチレン/アクリル酸(塩)共重合物、アクリルエステル/アクリル酸(塩)共重合物、アクリルアミド/アクリル酸(塩)共重合物等)等を例示できる。
【0034】
本発明では、前述の中性ロジンサイズ剤とASAサイズ剤を併用して用いるが、その比率は、固形分重量比で、95:5〜40:60である。より好ましくは90:10〜45:55である。尚、ここでいうASAサイズ剤の比率は、乳化剤や保護コロイドを含まないASA成分そのものの比率を指す。この範囲内でサイズ効果が顕著に向上する。中性ロジンサイズ剤とASAサイズ剤は別々に紙料へ添加しても良いし、両サイズ剤を混合後、紙料へ添加しても良い。中性ロジンサイズ剤とASAサイズ剤の混合液を紙料へ添加する場合、ASAサイズ剤は加水分解しやすいので、混合後、直ちに紙料へ添加する必要がある。中性ロジンサイズ剤とASAサイズ剤の添加量は、パルプ絶乾重量に対して、両サイズ剤の合計で0.1〜0.6固形分重量%であり、0.2〜0.5固形分重量%がより好ましい。0.1固形分重量未満では、紙に充分なサイズ性を付与することが困難であり、0.6固形分重量%を超えて添加してもサイズ度が頭打ちとなるためサイジングコストが高くなってしまう。
【0035】
本発明の中性サシジング方法においては、サイズ剤の定着助剤として硫酸バンド、ポリ塩化アルミニウム等の無機凝結剤を併用すると、サイズ剤のサイズ効果をより高めることができる。パルプ絶乾重量に対する硫酸アルミニウムの添加量は、0.2〜3.5重量%(硫酸アルミニウム14水和物50%水溶液として)であり、0.5〜2.7重量%がより好ましい。ポリ塩化アルミニウムの添加量は、0.15〜2.7重量%(水道用JIS1475-1978の規格品として)であり、0.38〜2.0重量%がより好ましい。無機凝結剤の添加場所は、パルプと無機凝結剤が充分に混合される箇所であれば良く、特に限定はないが、通常の添加場所はミキシングチェストあるいは連続ミキサーであり、本発明においてもミキシングチェストあるいは連続ミキサーで好適に添加される。
【0036】
サイズ剤の添加場所は、親水性であるパルプ繊維に効率良くサイズ剤を定着させる観点から、前記無機凝結剤添加後〜填料添加前の間で添加する。
【0037】
抄紙pHは、中性抄紙やアルカリ性抄紙において従来から実施されているpH範囲内であれば良く、特に限定は無いが、通常の抄紙pHは6.5〜9.0である。
【0038】
本発明で使用するパルプ原料は特に限定は無く、クラフトパルプあるいはサルファイトパルプなどの晒あるいは未晒化学パルプ、砕木パルプ、機械パルプあるいはサーモメカニカルパルプなどの晒あるいは未晒高収率パルプ、新聞古紙、雑誌古紙、段ボール古紙あるいは脱墨古紙などの古紙パルプのいずれも使用することができ、製造する紙の種類に応じて、これらのパルプを適宜配合して使用することができる。また、これらの木材パルプ原料の他に、石綿や、ポリアミド、ポリイミド、ポリエステル、ポリオレフィン等の合成繊維等も使用することができる。
【0039】
本発明で使用する填料は、紙料のpHが中性〜弱アルカリ性の範囲で安定な物質であれば良く、特に限定はない。具体的には、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、炭酸バリウム、水酸化アルミニウム、水酸化カルシウム、水酸化マグネシウム、水酸化亜鉛、クレー、焼成カオリン、デラミカオリン、二酸化チタン、酸化亜鉛、酸化珪素、非晶質シリカ等の無機填料や、尿素−ホリマリン樹脂、ポリスチレン樹脂、フェノール樹脂、微小中空粒子等から選ばれる1種類以上を併用することができる。この中でも、中性抄紙で多用されている炭酸カルシウムの使用が好ましい。紙中の填料含有率は4重量%以上30重量%以下であることが好ましい。填料含有率が4重量%未満の場合には、中性ロジンサイズ剤またはASAサイズ剤の単独添加でも、比較的高いサイズ度が得られるため、中性ロジンサイズ剤とASAサイズ剤との併用による本発明の高サイズ度発現の顕著な効果が小さくなる。一方、填料含有率が30重量%を超えると、本発明の中性ロジンサイズ剤とASAサイズ剤とを併用する中性サイジング方法でも、紙に充分なサイズ性を付与することが困難となる。
【0040】
また、本発明においては、乾燥紙力向上剤、湿潤紙力向上剤、歩留向上剤、濾水性向上剤、染料などを必要に応じて使用しても良い。乾燥紙力向上剤としては、例えば、アニオン性ポリアクリルアミド、カチオン性ポリアクリルアミド、両性ポリアクリルアミド、カチオン化澱粉等が挙げられ、これらは単独あるいは併用しても良い。湿潤紙力向上剤としては、ポリアミド・エピクロルヒドリン樹脂等が挙げられる。歩留向上剤としては、アニオン性又はカチオン性の高分子量ポリアクリルアミド、シリカゾルとカチオン化澱粉の併用、ベントナイトとカチオン性高分子量ポリアクリルアミドの併用等が挙げられる。濾水向上剤としては、ポリエチレンイミン、カチオン性又はアニオン性ポリアクリルアミド等が挙げられる。
【0041】
また、本発明においては、表面強度の向上や吸水抵抗性を付与する目的で表面処理剤を塗布することもできる。表面処理剤は、特に限定は無く、例えば、生澱粉や、酸化澱粉、エステル化澱粉、カチオン化澱粉、酵素変性澱粉、アルデヒド化澱粉、ヒドロキシエチル化澱粉などの変性澱粉、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、メチルセルロースなどのセルロース誘導体、ポリビニルアルコール、カルボキシル変性ポリビニルアルコールなどの変性アルコール、スチレンブタジエン共重合体、ポリ酢酸ビニル、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリアクリル酸エステル、ポリアクリルアミドなどを単独または併用できる。その中でも表面強度向上効果にすぐれるヒドロキシエチル化澱粉の塗布が最も好ましい。また、表面処理剤には前記の薬剤の他に、スチレンアクリル酸、スチレンマレイン酸、オレフィン系化合物、カチオン性サイズ剤などの表面サイズ剤を併用塗布することができる。表面処理剤の塗布量は、紙に要求される表面強度等により適宜決定されるので特に限定はないが、通常は両面で0.1〜10g/m2の範囲である。0.1〜5g/m2が好ましく、0.5〜5g/m2がより好ましい。
【0042】
表面処理剤を塗布する装置の種類は特に限定はなく、2ロールサイズプレス、ゲートロールコーター、ブレードメタリングコーター、ロッドメタリングコーター、ビルブレードコーター等の塗工機によって塗布することができる。
【0043】
また、紙の表面を平滑にする目的で、マシンキャレンダー、ソフトニップカレンダー、高温ソフトニップカレンダーなどの公知のカレンダー装置を用いて処理を行っても良い。
【0044】
本発明の中性サイジング方法は、従来の中性サイジング方法、例えばAKD、ASA、中性ロジンサイズ剤などを単独で使用するサイジング方法に比べ、填料を含む紙において高いサイズ効果が得られる。また、サイズ性に優れるため、サイズ剤の使用量を減らすことで、抄紙白水系や、プレスロール、ドライヤーキャンバスなどの抄紙用具の汚れが少ない特徴がある。さらに、サイジングコストの面でも優れている。
【0045】
このように優れたサイズ性を発揮する理由は明らかではないが、中性ロジンサイズ剤もしくはASAのどちらかが、パルプ繊維に定着し、パルプ繊維にサイズ性を付与すると同時に、もう一方のサイズ剤に対し定着助剤として機能しているのではないかと推察している。
【実施例】
【0046】
以下、実施例にて本発明を説明する。この実施例は本発明の範囲を限定するものではない。なお、実施例及び比較例中の%、部は各々絶乾パルプ重量に対する重量%、重量部を表す。
手抄紙の作成:手抄試験機(TAPPIスタンダードシートマシン)を用いて坪量60g/m2の手抄紙を作成した。
ステキヒトサイズ度の測定方法:手抄紙を温度23℃、湿度50%の恒温恒湿室内に1日放置して調湿した後、JIS P8122により、サイズ度を測定した。
【0047】
[実施例1]
叩解済みパルプスラリー(LBKP:NBKP=5:5、CSF400ml)に、カチオン化澱粉(Cato304:日本NSC社製)を0.65%、硫酸バンドを2.0%(硫酸アルミニウム14水和物、50%溶液として)添加し、次に、中性ロジンサイズ剤としてサイズパインNT87(荒川化学工業株式会社製)を0.2%、ASAサイズ剤としてAS1532(星光PMC株式会社製)を0.12%添加した。尚、AS1532の20部に対して乳化剤SP1802(星光PMC株式会社製)を24.4部添加混合後、ホモジナイザーを用いて乳化した。次いで、填料として軽質炭酸カルシウム(TP-221BM:奥多摩工業社製)を紙中填料率20%目標で添加し、歩留向上剤DR-1500(ハイモ社製)を0.015%添加した。中性ロジンサイズ剤とASAサイズ剤の添加比率は、中性ロジンサイズ剤/ASAサイズ剤=62.5/37.5である。この紙料を用いて手抄紙を作成した。抄紙時のpHは6.8であった。結果を表1に示す。
【0048】
[実施例2]
叩解済みパルプスラリー(LBKP:NBKP=5:5、CSF400ml)に、カチオン化澱粉(Cato304:日本NSC社製)を0.65%、硫酸バンドを2.0%(硫酸アルミニウム14水和物、50%溶液として)添加し、次に、中性ロジンサイズ剤としてサイズパインNT87(荒川化学工業株式会社製)を0.2%、ASAサイズ剤としてAS1532(星光PMC株式会社製)を0.05%添加した。尚、AS1532の20部に対して乳化剤SP1802(星光PMC株式会社製)を24.4部添加混合後、ホモジナイザーを用いて乳化した。次いで、填料として軽質炭酸カルシウム(TP-221BM:奥多摩工業社製)を紙中填料率20%目標で添加し、歩留向上剤DR-1500(ハイモ社製)を0.015%添加した。中性ロジンサイズ剤とASAサイズ剤の添加比率は、中性ロジンサイズ剤/ASAサイズ剤=80/20である。この紙料を用いて手抄紙を作成した。抄紙時のpHは6.8であった。結果を表1に示す。
【0049】
[実施例3]
ASAサイズ剤AS1532の添加量を0.18%とした以外は、実施例1と同様にして手抄紙を作成した。中性ロジンサイズ剤とASAサイズ剤の添加比率は、中性ロジンサイズ剤/ASAサイズ剤=52.6/47.4である。抄紙時のpHは6.8であった。結果を表1に示す。
【0050】
[実施例4]
硫酸バンドの代わりにポリ塩化アルミニウムをJIS規格品有姿で1.5%添加した以外は実施例1と同様に行った。抄紙時のpHは7.2であった。結果を表1に示す。
【0051】
[比較例1]
叩解済みパルプスラリー(LBKP:NBKP=5:5、CSF400ml)に、カチオン化澱粉(Cato304:日本NSC社製)を0.65%、硫酸バンドを2.0%(硫酸アルミニウム14水和物、50%溶液として)添加し、次に、中性ロジンサイズ剤としてサイズパインNT87(荒川化学工業株式会社製)を0.5%添加した。次いで、填料として軽質炭酸カルシウム(TP-221BM:奥多摩工業社製)を紙中填料率20%目標で添加し、歩留向上剤DR-1500(ハイモ社製)を0.015%添加した。中性ロジンサイズ剤とASAサイズ剤の添加比率は、中性ロジンサイズ剤/ASAサイズ剤=100/0である。この紙料を用いて手抄紙を作成した。抄紙時のpHは6.8であった。結果を表1に示す。
【0052】
[比較例2]
叩解済みパルプスラリー(LBKP:NBKP=5:5、CSF400ml)に、カチオン化澱粉(Cato304:日本NSC社製)を0.65%、硫酸バンドを2.0%(硫酸アルミニウム14水和物、50%溶液として)添加し、次に、中性ロジンサイズ剤としてサイズパインNT87(荒川化学工業株式会社製)を0.5%、ASAサイズ剤としてAS1532(星光PMC株式会社製)を0.01%添加した。尚、AS1532の20部に対して乳化剤SP1802(星光PMC株式会社製)を24.4部添加混合後、ホモジナイザーを用いて乳化した。次いで、填料として軽質炭酸カルシウム(TP-221BM:奥多摩工業社製)を紙中填料率20%目標で添加し、歩留向上剤DR-1500(ハイモ社製)を0.015%添加した。中性ロジンサイズ剤とASAサイズ剤の添加比率は、中性ロジンサイズ剤/ASAサイズ剤=98.0/2.0である。この紙料を用いて手抄紙を作成した。抄紙時のpHは6.8であった。結果を表1に示す。
【0053】
[比較例3]
叩解済みパルプスラリー(LBKP:NBKP=5:5、CSF400ml)に、カチオン化澱粉(Cato304:日本NSC社製)を0.65%、硫酸バンドを2.0%(硫酸アルミニウム14水和物、50%溶液として)添加し、次に、中性ロジンサイズ剤としてサイズパインNT87(荒川化学工業株式会社製)を0.20%、ASAサイズ剤としてAS1532(星光PMC株式会社製)を0.31%添加した。尚、AS1532の20部に対して乳化剤SP1802(星光PMC株式会社製)を24.4部添加混合後、ホモジナイザーを用いて乳化した。次いで、填料として軽質炭酸カルシウム(TP-221BM:奥多摩工業社製)を紙中填料率20%目標で添加し、歩留向上剤DR-1500(ハイモ社製)を0.015%添加した。中性ロジンサイズ剤とASAサイズ剤の添加比率は、中性ロジンサイズ剤/ASAサイズ剤=39.2/60.8である。この紙料を用いて手抄紙を作成した。抄紙時のpHは6.8であった。結果を表1に示す。
【0054】
[比較例4]
叩解済みパルプスラリー(LBKP:NBKP=5:5、CSF400ml)に、カチオン化澱粉(Cato304:日本NSC社製)を0.65%、硫酸バンドを2.0%(硫酸アルミニウム14水和物、50%溶液として)添加し、次に、ASAサイズ剤としてAS1532(星光PMC株式会社製)を0.18%添加した。尚、AS1532の20部に対して乳化剤SP1802(星光PMC株式会社製)を24.4部添加混合後、ホモジナイザーを用いて乳化した。次いで、填料として軽質炭酸カルシウム(TP-221BM:奥多摩工業社製)を紙中填料率20%目標で添加し、歩留向上剤DR-1500(ハイモ社製)を0.015%添加した。中性ロジンサイズ剤とASAサイズ剤の添加比率は、中性ロジンサイズ剤/ASAサイズ剤=0/100である。この紙料を用いて手抄紙を作成した。抄紙時のpHは6.8であった。結果を表1に示す。
【0055】
[比較例5]
叩解済みパルプスラリー(LBKP:NBKP=5:5、CSF400ml)に、カチオン化澱粉(Cato304:日本NSC社製)を0.65%、硫酸バンドを2.0%(硫酸アルミニウム14水和物、50%溶液として)添加し、次に、ASAサイズ剤としてSA864(荒川化学工業株式会社製)を0.18%添加した。尚、SA864の20部に対して乳化剤AP-N(荒川化学工業株式会社製)を18.47部添加混合後、ホモゾナイザーを用いて乳化した。次いで、填料として軽質炭酸カルシウム(TP-221BM:奥多摩工業社製)を紙中填料率20%目標で添加し、歩留向上剤DR-1500(ハイモ社製)を0.015%添加した。中性ロジンサイズ剤とASAサイズ剤の添加比率は、中性ロジンサイズ剤/ASAサイズ剤=0/100である。この紙料を用いて手抄紙を作成した。抄紙時のpHは6.8であった。結果を表1に示す。
【0056】
【表1】

【0057】
表1から明らかなように、中性ロジンサイズ剤とASAサイズ剤との添加比率が95/5〜40/60の範囲内にある実施例1から実施例4は、中性ロジンサイズ剤のみを高添加した比較例1よりも、またASAサイズ剤のみを高添加した比較例4、5よりもステキヒトサイズ度が高い。更に、中性ロジンサイズ剤とASAサイズ剤との添加比率が前記の範囲外である比較例2,3よりも高く、中性ロジンサイズ剤とASAサイズ剤との添加比率が95/5〜40/60の範囲内でステキヒトサイズ度が顕著に向上することがわかる。また、紙中灰分20%前後の紙においても充分なステキヒトサイズ度が得られることがわかる。
【0058】
[実施例5]
叩解済みパルプスラリー(LBKP:NBKP=5:5、CSF400ml)に、カチオン化澱粉(Cato304:日本NSC社製)を0.65%、硫酸バンドを2.0%(硫酸アルミニウム14水和物、50%溶液として)添加し、次に、中性ロジンサイズ剤としてサイズパインNT87(荒川化学工業株式会社製)を0.2%、ASAサイズ剤としてAS1532(星光PMC株式会社製)を0.12%添加した。尚、AS1532の20部に対して乳化剤SP1802(星光PMC株式会社製)を24.4部添加混合後、ホモジナイザーを用いて乳化した。次いで、填料として軽質炭酸カルシウム(TP-221BM:奥多摩工業社製)を紙中填料率15%目標で添加し、歩留向上剤DR-1500(ハイモ社製)を0.015%添加した。中性ロジンサイズ剤とASAサイズ剤の添加比率は、中性ロジンサイズ剤/ASAサイズ剤=62.5/37.5である。この紙料を用いて手抄紙を作成した。抄紙時のpHは6.8であった。結果を表2に示す。
【0059】
[実施例6]
中性ロジンサイズ剤サイズパインNT87の添加量を0.1%とした以外は、実施例1と同様にして手抄紙を作成した。中性ロジンサイズ剤とASAサイズ剤の添加比率は、中性ロジンサイズ剤/ASAサイズ剤=45.5/54.5である。抄紙時のpHは6.8であった。結果を表2に示す。
【0060】
[実施例7]
ASAサイズ剤AS1532の添加量を0.05%とした以外は、実施例1と同様にして手抄紙を作成した。中性ロジンサイズ剤とASAサイズ剤の添加比率は、中性ロジンサイズ剤/ASAサイズ剤=80.0/20.0である。抄紙時のpHは6.8であった。結果を表2に示す。
【0061】
[実施例8]
叩解済みパルプスラリー(LBKP:NBKP=5:5、CSF400ml)に、カチオン化澱粉(Cato304:日本NSC社製)を0.65%、硫酸バンドを2.0%(硫酸アルミニウム14水和物、50%溶液として)添加し、次に、中性ロジンサイズ剤としてサイズパインNT87(荒川化学工業株式会社製)を0.22%、ASAサイズ剤としてSA864(荒川化学工業株式会社製)を0.12%添加した。尚、SA864の20部に対して乳化剤AP-N(荒川化学工業株式会社製)を18.47部添加混合後、ホモジナイザーで乳化した。次いで、填料として軽質炭酸カルシウム(TP-221BM:奥多摩工業社製)を紙中填料率15%目標で添加し、歩留向上剤DR-1500(ハイモ社製)を0.015%添加した。中性ロジンサイズ剤とASAサイズ剤の添加比率は、中性ロジンサイズ剤/ASAサイズ剤=64.7/35.3である。この紙料を用いて手抄紙を作成した。抄紙時のpHは6.8であった。結果を表2に示す。
【0062】
[実施例9]
硫酸バンドの代わりにポリ塩化アルミニウムをJIS規格品有姿で1.5%添加した以外は実施例5と同様に行った。抄紙時のpHは7.2であった。結果を表2に示す。
【0063】
[比較例6]
叩解済みパルプスラリー(LBKP:NBKP=5:5、CSF400ml)に、カチオン化澱粉(Cato304:日本NSC社製)を0.65%、硫酸バンドを2.0%(硫酸アルミニウム14水和物、50%溶液として)添加し、次に、中性ロジンサイズ剤としてサイズパインNT87(荒川化学工業株式会社製)を0.5%添加した。次いで、填料として軽質炭酸カルシウム(TP-221BM:奥多摩工業社製)を紙中填料率15%目標で添加し、歩留向上剤DR-1500(ハイモ社製)を0.015%添加した。中性ロジンサイズ剤とASAサイズ剤の添加比率は、中性ロジンサイズ剤/ASAサイズ剤=100/0である。この紙料を用いて手抄紙を作成した。抄紙時のpHは6.8であった。結果を表2に示す。
【0064】
[比較例7]
叩解済みパルプスラリー(LBKP:NBKP=5:5、CSF400ml)に、カチオン化澱粉(Cato304:日本NSC社製)を0.65%、硫酸バンドを2.0%(硫酸アルミニウム14水和物、50%溶液として)添加し、次に、中性ロジンサイズ剤としてサイズパインNT87(荒川化学工業株式会社製)を0.5%、ASAサイズ剤としてAS1532(星光PMC株式会社製)を0.01%添加した。尚、AS1532の20部に対して乳化剤SP1802(星光PMC株式会社製)を24.4部添加混合後、ホモジナイザーを用いて乳化した。次いで、填料として軽質炭酸カルシウム(TP-221BM:奥多摩工業社製)を紙中填料率15%目標で添加し、歩留向上剤DR-1500(ハイモ社製)を0.015%添加した。中性ロジンサイズ剤とASAサイズ剤の添加比率は、中性ロジンサイズ剤/ASAサイズ剤=98.0/2.0である。この紙料を用いて手抄紙を作成した。抄紙時のpHは6.8であった。結果を表2に示す。
【0065】
[比較例8]
叩解済みパルプスラリー(LBKP:NBKP=5:5、CSF400ml)に、カチオン化澱粉(Cato304:日本NSC社製)を0.65%、硫酸バンドを2.0%(硫酸アルミニウム14水和物、50%溶液として)添加し、次に、中性ロジンサイズ剤としてサイズパインNT87(荒川化学工業株式会社製)を0.20%、ASAサイズ剤としてAS1532(星光PMC株式会社製)を0.31%添加した。尚、AS1532の20部に対して乳化剤SP1802(星光PMC株式会社製)を24.4部添加混合後、ホモジナイザーを用いて乳化した。次いで、填料として軽質炭酸カルシウム(TP-221BM:奥多摩工業社製)を紙中填料率15%目標で添加し、歩留向上剤DR-1500(ハイモ社製)を0.015%添加した。中性ロジンサイズ剤とASAサイズ剤の添加比率は、中性ロジンサイズ剤/ASAサイズ剤=39.2/60.8である。この紙料を用いて手抄紙を作成した。抄紙時のpHは6.8であった。結果を表2に示す。
【0066】
[比較例9]
叩解済みパルプスラリー(LBKP:NBKP=5:5、CSF400ml)に、カチオン化澱粉(Cato304:日本NSC社製)を0.65%、硫酸バンドを2.0%(硫酸アルミニウム14水和物、50%溶液として)添加し、次に、ASAサイズ剤としてAS1532(星光PMC株式会社製)を0.18%添加した。尚、AS1532の20部に対して乳化剤SP1802(星光PMC株式会社製)を24.4部添加混合後、ホモジナイザーを用いて乳化した。次いで、填料として軽質炭酸カルシウム(TP-221BM:奥多摩工業社製)を紙中填料率15%目標で添加し、歩留向上剤DR-1500(ハイモ社製)を0.015%添加した。中性ロジンサイズ剤とASAサイズ剤の添加比率は、中性ロジンサイズ剤/ASAサイズ剤=0/100である。この紙料を用いて手抄紙を作成した。抄紙時のpHは6.8であった。結果を表2に示す。
【0067】
[比較例10]
叩解済みパルプスラリー(LBKP:NBKP=5:5、CSF400ml)に、カチオン化澱粉(Cato304:日本NSC社製)を0.65%、硫酸バンドを2.0%(硫酸アルミニウム14水和物、50%溶液として)添加し、次に、ASAサイズ剤としてSA864(荒川化学工業株式会社製)を0.18%添加した。尚、SA864の20部に対して乳化剤AP-N(荒川化学工業株式会社製)を18.47部添加混合後、ホモジナイザーを用いて乳化した。次いで、填料として軽質炭酸カルシウム(TP-221BM:奥多摩工業社製)を紙中填料率15%目標で添加し、歩留向上剤DR-1500(ハイモ社製)を0.015%添加した。中性ロジンサイズ剤とASAサイズ剤の添加比率は、中性ロジンサイズ剤/ASAサイズ剤=0/100である。この紙料を用いて手抄紙を作成した。抄紙時のpHは6.8であった。結果を表2に示す。
【0068】
【表2】

【0069】
表2から明らかなように、中性ロジンサイズ剤とASAサイズ剤との添加比率が95/5〜40/60の範囲内にある実施例5から実施例9は、中性ロジンサイズ剤のみを高添加した比較例6よりも、またASAサイズ剤のみを高添加した比較例9、10よりもステキヒトサイズ度が高い。更に、中性ロジンサイズ剤とASAサイズ剤との添加比率が前記の範囲外である比較例7、8よりも高く、中性ロジンサイズ剤とASAサイズ剤との添加比率が95/5〜40/60の範囲内でステキヒトサイズ度が顕著に向上することがわかる。
【0070】
[実施例10]
叩解済みパルプスラリー(LBKP:NBKP=5:5、CSF400ml)に、カチオン化澱粉(Cato304:日本NSC社製)を0.65%、硫酸バンドを2.0%(硫酸アルミニウム14水和物、50%溶液として)添加し、次に、中性ロジンサイズ剤としてサイズパインNT87(荒川化学工業株式会社製)を0.2%、ASAサイズ剤としてAS1532(星光PMC株式会社製)を0.12%添加した。尚、AS1532の20部に対して乳化剤SP1802(星光PMC株式会社製)を24.4部添加混合後、ホモジナイザーを用いて乳化した。次いで、填料として軽質炭酸カルシウム(TP-221BM:奥多摩工業社製)を紙中填料率4%目標で添加し、歩留向上剤DR-1500(ハイモ社製)を0.015%添加した。中性ロジンサイズ剤とASAサイズ剤の添加比率は、中性ロジンサイズ剤/ASAサイズ剤=62.5/37.5である。この紙料を用いて手抄紙を作成した。抄紙時のpHは6.8であった。結果を表3に示す。
【0071】
[実施例11]
中性ロジンサイズ剤サイズパインNT87の添加量を0.1%とした以外は、実施例1と同様にして手抄紙を作成した。中性ロジンサイズ剤とASAサイズ剤の添加比率は、中性ロジンサイズ剤/ASAサイズ剤=45.5/54.5である。抄紙時のpHは6.8であった。結果を表3に示す。
【0072】
[実施例12]
叩解済みパルプスラリー(LBKP:NBKP=5:5、CSF400ml)に、カチオン化澱粉(Cato304:日本NSC社製)を0.65%、硫酸バンドを2.0%(硫酸アルミニウム14水和物、50%溶液として)添加し、次に、中性ロジンサイズ剤としてサイズパインNT87(荒川化学工業株式会社製)を0.2%、ASAサイズ剤としてAS1532(星光PMC株式会社製)を0.06%添加した。尚、AS1532の20部に対して乳化剤SP1802(星光PMC株式会社製)を24.4部添加混合後、ホモジナイザーを用いて乳化した。次いで、填料として軽質炭酸カルシウム(TP-221BM:奥多摩工業社製)を紙中填料率4%目標で添加し、歩留向上剤DR-1500(ハイモ社製)を0.015%添加した。中性ロジンサイズ剤とASAサイズ剤の添加比率は、中性ロジンサイズ剤/ASAサイズ剤=76.9/23.1である。この紙料を用いて手抄紙を作成した。抄紙時のpHは6.8であった。結果を表3に示す。
【0073】
[実施例13]
硫酸バンドの代わりにポリ塩化アルミニウムをJIS規格品有姿で1.5%添加した以外は実施例10と同様に行った。抄紙時のpHは7.2であった。結果を表3に示す。
【0074】
[比較例11]
叩解済みパルプスラリー(LBKP:NBKP=5:5、CSF400ml)に、カチオン化澱粉(Cato304:日本NSC社製)を0.65%、硫酸バンドを2.0%(硫酸アルミニウム14水和物、50%溶液として)添加し、次に、中性ロジンサイズ剤としてサイズパインNT87(荒川化学工業株式会社製)を0.5%添加した。次いで、填料として軽質炭酸カルシウム(TP-221BM:奥多摩工業社製)を紙中填料率4%目標で添加し、歩留向上剤DR-1500(ハイモ社製)を0.015%添加した。中性ロジンサイズ剤とASAサイズ剤の添加比率は、中性ロジンサイズ剤/ASAサイズ剤=100/0である。この紙料を用いて手抄紙を作成した。抄紙時のpHは6.8であった。結果を表3に示す。
【0075】
[比較例12]
叩解済みパルプスラリー(LBKP:NBKP=5:5、CSF400ml)に、カチオン化澱粉(Cato304:日本NSC社製)を0.65%、硫酸バンドを2.0%(硫酸アルミニウム14水和物、50%溶液として)添加し、次に、中性ロジンサイズ剤としてサイズパインNT87(荒川化学工業株式会社製)を0.5%、ASAサイズ剤としてAS1532(星光PMC株式会社製)を0.01%添加した。尚、AS1532の20部に対して乳化剤SP1802(星光PMC株式会社製)を24.4部添加混合後、ホモジナイザーを用いて乳化した。次いで、填料として軽質炭酸カルシウム(TP-221BM:奥多摩工業社製)を紙中填料率4%目標で添加し、歩留向上剤DR-1500(ハイモ社製)を0.015%添加した。中性ロジンサイズ剤とASAサイズ剤の添加比率は、中性ロジンサイズ剤/ASAサイズ剤=98.0/2.0である。この紙料を用いて手抄紙を作成した。抄紙時のpHは6.8であった。結果を表3に示す。
【0076】
[比較例13]
叩解済みパルプスラリー(LBKP:NBKP=5:5、CSF400ml)に、カチオン化澱粉(Cato304:日本NSC社製)を0.65%、硫酸バンドを2.0%(硫酸アルミニウム14水和物、50%溶液として)添加し、次に、中性ロジンサイズ剤としてサイズパインNT87(荒川化学工業株式会社製)を0.20%、ASAサイズ剤としてAS1532(星光PMC株式会社製)を0.31%添加した。尚、AS1532の20部に対して乳化剤SP1802(星光PMC株式会社製)を24.4部添加混合後、ホモジナイザーを用いて乳化した。次いで、填料として軽質炭酸カルシウム(TP-221BM:奥多摩工業社製)を紙中填料率4%目標で添加し、歩留向上剤DR-1500(ハイモ社製)を0.015%添加した。中性ロジンサイズ剤とASAサイズ剤の添加比率は、中性ロジンサイズ剤/ASAサイズ剤=39.2/60.8である。この紙料を用いて手抄紙を作成した。抄紙時のpHは6.8であった。結果を表3に示す。
【0077】
[比較例14]
叩解済みパルプスラリー(LBKP:NBKP=5:5、CSF400ml)に、カチオン化澱粉(Cato304:日本NSC社製)を0.65%、硫酸バンドを2.0%(硫酸アルミニウム14水和物、50%溶液として)添加し、次に、ASAサイズ剤としてAS1532(星光PMC株式会社製)を0.18%添加した。尚、AS1532の20部に対して乳化剤SP1802(星光PMC株式会社製)を24.4部添加混合後、ホモジナイザーを用いて乳化した。次いで、填料として軽質炭酸カルシウム(TP-221BM:奥多摩工業社製)を紙中填料率4%目標で添加し、歩留向上剤DR-1500(ハイモ社製)を0.015%添加した。中性ロジンサイズ剤とASAサイズ剤の添加比率は、中性ロジンサイズ剤/ASAサイズ剤=0/100である。この紙料を用いて手抄紙を作成した。抄紙時のpHは6.8であった。結果を表3に示す。
【0078】
[比較例15]
叩解済みパルプスラリー(LBKP:NBKP=5:5、CSF400ml)に、カチオン化澱粉(Cato304:日本NSC社製)を0.65%、硫酸バンドを2.0%(硫酸アルミニウム14水和物、50%溶液として)添加し、次に、ASAサイズ剤としてSA864(荒川化学工業株式会社製)を0.18%添加した。尚、SA864の20部に対して乳化剤AP-N(荒川化学工業株式会社製)を18.47部添加混合後、ホモジナイザーを用いて乳化した。次いで、填料として軽質炭酸カルシウム(TP-221BM:奥多摩工業社製)を紙中填料率4%目標で添加し、歩留向上剤DR-1500(ハイモ社製)を0.015%添加した。中性ロジンサイズ剤とASAサイズ剤の添加比率は、中性ロジンサイズ剤/ASAサイズ剤=0/100である。この紙料を用いて手抄紙を作成した。抄紙時のpHは6.8であった。結果を表3に示す。
【0079】
【表3】

【0080】
表3から明らかなように、中性ロジンサイズ剤とASAサイズ剤との添加比率が95/5〜40/60の範囲内にある実施例10から実施例13は、中性ロジンサイズ剤のみを高添加した比較例11よりも、またASAサイズ剤のみを高添加した比較例14、15よりもステキヒトサイズ度が高い。更に、中性ロジンサイズ剤とASAサイズ剤との添加比率が前記の範囲外である比較例12,13よりも高く、中性ロジンサイズ剤とASAサイズ剤との添加比率が95/5〜40/60の範囲内でステキヒトサイズ度が顕著に向上することがわかる。但し、紙中灰分が4%程度であると、表1や表2に示したような本発明のサイズ度発現効果の優位性が若干縮小することがわかる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内添サイズ剤として、中性ロジンサイズ剤およびアルケニル無水コハク酸サイズ剤を使用し、中性ロジンサイズ剤/アルケニル無水コハク酸サイズ剤=95/5〜40/60の固形分重量比でパルプスラリーに添加し、かつ無機凝結剤を添加し、抄紙することを特徴とする紙の中性サイジング方法。
【請求項2】
中性ロジンサイズ剤とアルケニル無水コハク酸サイズ剤のパルプスラリーの絶乾重量に対する添加率の合計が、0.1〜0.6固形分重量%であることを特徴とする請求項1記載の紙の中性サイジング方法。
【請求項3】
少なくとも、内添サイズ剤として中性ロジンサイズ剤およびアルケニル無水コハク酸サイズ剤を、中性ロジンサイズ剤/アルケニル無水コハク酸サイズ剤=95/5〜40/60の固形分重量比で含有し、かつ無機凝結剤を含有する紙料を抄紙して得られる、紙中填料率が4重量%以上30重量%以下の中性サイジング紙。

【公開番号】特開2006−89852(P2006−89852A)
【公開日】平成18年4月6日(2006.4.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−272658(P2004−272658)
【出願日】平成16年9月21日(2004.9.21)
【出願人】(000183484)日本製紙株式会社 (981)
【Fターム(参考)】