説明

中性子吸収材および中性子吸収材の製造のための方法

本発明は、中性子吸収材(1)および中性子吸収材を製造するための方法に関する。中性子吸収材は第1の材料からなるコア(2)と第2の材料からなる層(3)とを備える。層は、コアを少なくとも部分的に包囲し、かつ外側周囲からコアを保護するように構成される。第1の材料は第2の材料よりも、より高い中性子吸収性能を有する。中性子吸収材は、中間層(4)をコアと層との間で形成するように焼結することにより製造される。中間層は、コアから層への第1の材料の濃度の減少、およびコアから層への第2の材料の濃度の増加を含む材料勾配を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、第1の材料からなるコアおよび第2の材料からなる層を備える中性子吸収材に関し、層は、コアを少なくとも部分的に包囲し、かつ外側周囲からコアを保護するように構成され、第1の材料は第2の材料よりも、より高い中性子吸収性能を有する。
【0002】
本発明はまた中性子吸収材の製造のための方法に関し、第1の材料からなるコアおよび第2の材料からなる層を備え、層は、コアを少なくとも部分的に包囲し、かつ外側周囲からコアを保護するように構成され、第1の材料は第2の材料よりも、より高い中性子吸収性能を有する。
【背景技術】
【0003】
核分裂リアクタにおいて、異なる種類の中性子吸収材(neutron absorbing component)がリアクタ内の反応性を制御するために用いられる。それらの材は、リアクタが稼動している間に反応性を調整するために利用でき、リアクタのパワーの調整が得られる。このタイプの調整は、例えば、沸騰水型原子炉で見られ得る。中性子吸収材はまた、核分裂プロセスを維持する中性子を生成する連鎖反応を終了させるために利用可能であり、ここで核分裂プロセスの臨界は止まり、リアクタは停止される。このタイプの核分裂プロセスの終了のための部品(コンポーネント)、いわゆる制御棒は、例えば、沸騰型水炉および加圧水型原子炉内に見出される。中性子吸収材は、さらに、例えば核燃料の輸送中に、核物質がそれらの非臨界状態を保つことを保証するために利用可能である。
【0004】
中性子吸収材は、しばしば、核分裂リアクタ内の反応環境などの外側周囲(outer surrounding)において用いられる。そうした外側環境は高温および高圧力にて化学的にアグレッシブである物質を含むことができる。中性子吸収材周囲の外側周囲は、例えば、加圧水型原子炉および沸騰水型原子炉内の軽水を含む減速材および冷却媒体であってよい。アグレッシブな物質は、中性子吸収材内の中性子吸収物質と反応し得る。それにより、その要素の吸収機能は衰退し得る。さらに、中性子吸収材周囲のリアクタ内の外側周囲は、中性子吸収物質によって、および/または、中性子吸収材内での中性子吸収の間に形成されたガス状の物質によって汚染され得る。外側周囲のこうした汚染により、結果としてリアクタ内の反応性が不確実および/または不安定になり得る。中性子吸収材に影響がある場合には、リアクタを停止して要素を取り替え、かつ、中性子吸収物質または中性子吸収の間に形成されたガス状の物質から、リアクタの外側周囲を汚染除去する必要があり得る。こうしたことは、稼動停止することでのエネルギー産出を欠くこと、そして中性子吸収材を交換するコストといった形で結果として大きな損失となる。
【0005】
核燃料要素などの核物質を輸送するにあたっては、物質がその非臨界状態を維持することが最も重要である。核物質の輸送の一例は、核燃料要素の輸送である。非放射性の核燃料要素は、核燃料製造業者から核分裂リアクタへと、中性子吸収材を含む意図された輸送コンテナ内にて、輸送される。コンテナが高温に曝されるといった好ましくない状態の場合には、中性子吸収材の機能および輸送コンテナ内でのそれらの位置は維持されることが重要である。
【0006】
さらなるデポジションについての、燃焼済み(burned out)の核燃料の処理についての技術は特許文献1に開示されている。特許文献1において、燃焼済みの核燃料は、冷間静水圧成形法(CIP)によって圧力が掛けられたアルミニウムおよびホウ素の粉末で処理され、次いで、プラズマ焼結によって共に焼結される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】欧州特許第1249844号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の課題は改良された特性を有する中性子吸収材を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本課題は、請求項1の特徴付けられた部分において規定された特徴を含む、最初に規定された要素でもって達成される。
【0010】
中性子吸収材は、コアと層との間にある中間層により上述の目的を達成する。中間層は、第1の材料および第2の材料の混合物を含むか、それから成る。
【0011】
焼結によってその中性子吸収材を製造することに関連して得ることができる中間層は、第1の材料から第2の材料への特性の遷移を提供するコアと層との間の層である。中間層は、第1の材料と第2の材料との濃度の段階的または漸次的な遷移を含む。中間層は材料勾配を有し、これは、中間層の中における第1の材料および第2の材料の濃度がゼロよりも大きいことを意味する。材料勾配は、コアおよび層と比較した場合の濃度変化を含む。材料勾配は、第1および第2の材料が均質(homogenous)の混合物を含むことができる。材料勾配はまた、第1の材料と第2の材料との濃度の間の比の、中間層内での変化を含むことができる。それにより、材料勾配は、中性子吸収材の良い材料特性を得るために、第1および第2の材料の、例えば、温度の広がり(expansion)に関して、それらの物質特性に基づいて調整可能である。材料勾配により、コア内の第1の材料と層内の第2の材料との間に遷移が形成されて、層とコアとの間に強い接着を提供する。中間層における材料勾配により、第1の材料と第2の材料との間の熱および可撓性の差に起因して形成される、中性子吸収部材における内部ストレスが減少する。それにより、層のコアに対する接着が改善して、中性子吸収部材に対して改善された機能性を提供する。
【0012】
中性子吸収材は、中性子吸収材に、第1の材料と第2の材料との一緒の高焼結を提供する適切な焼結方法によって製造される。焼結方法は、圧力を加え、および/または温度を上昇させることを含み得るか、または組み合わされ得る。焼結方法は、焼結された材の複数の物質特性、例えば粒子サイズおよび孔隙率(porosity)などが広範囲の範囲内で制御可能であることを保証するものである。
【0013】
中性子吸収材を用いて、核物質の反応性および臨界を制御するように構成されることが意図される。中性子吸収材は中性子を捕捉する能力を有する。中性子吸収材が中性子を捕捉する場合、現在の中性子と形成された中性子との間の比を減少させ、それにより、例えば核分裂リアクタ内の反応性を減少させる。中性子吸収材は、例えば、核分裂リアクタ内の反応性を調整または終了させるために用いられることができる。さらに、中性子吸収材は核物質の臨界前状態を保証することができる。
【0014】
中性子吸収材のコアは第1の材料からなる。第1の材料は第2の材料よりもより高い中性子吸収能力を有する。核分裂リアクタ内での反応性に影響を与える中性子吸収材の能力は、主に、コアの中性子吸収能力に起因する。
【0015】
中性子吸収材の層は、外側周囲(outer surrounding)からのコアを保護するように構成される。層は第2の材料からなり、これは中性子吸収材のコアを保護するために適切である特性を有する。
【0016】
外側周囲は、その使用する技術分野によって異なるタイプであり得る。例えば核分裂リアクタ内において、外側周囲は主に減速媒体および冷却媒体を含む。臨界前状態を確保するための使用において、外側周囲は例えば空気またはコンクリートを含み得る。リアクタの稼動中は、とりわけ、リアクタ内の中性子吸収材に影響を与える反応環境が形成される。層の機能を保護することにより、中性子吸収材のコアは、例えば核分裂リアクタ内の環境など、外側周囲によって影響を受けないことが保証される。層が外側周囲からコアを保護するので、中性子吸収材の機能性への影響は回避される。コアの保護によりまた、結果として、外側周囲、例えば、軽水核分裂リアクタの減速材が、第1の材料によって、または、中性子吸収材のコア内に形成されるガス状の物質によって汚染されなくなる。外側周囲が汚染されないことにより、リアクタの反応性の不安定性が回避される。それにより、リアクタの制御および監視が正確かつ確実に実行可能である。層はまた中性子吸収材を、例えば、輸送の間、非常に高い温度の好ましくない状況等にさせないように保護することができる。それにより、中性子吸収材の機能およびその位置の維持が保証され得る。
【0017】
材料の中性子吸収性能で、どの程度まで、物質が中性子を捕捉する能力を有するかが理解される。材料の中性子吸収能力は、中性子のエネルギースペクトルにより様々であり、異なる材料は、異なる中性子エネルギーにて、非常に高い中性子吸収能力が得られる中性子吸収断面におけるいわゆる共振ピークを有する。中性子吸収能力をもって、これに関連し、核分裂リアクタのための適切な中性子スペクトルに亘る、中性子を捕捉しそれによりリアクタの反応性を減少させる材料の能力が理解される。核分裂リアクタ内における物質の中性子吸収材を反映する測定の一例は、等量ボロン濃度(Equivalent Boron Concentration:EBC)であり、1に近い値は高い中性子吸収能力を有する材料であり、ゼロに近い値は低い中性子吸収能力を有する材料を含む。
【0018】
本発明の実施形態によれば、中性子吸収材は核分裂リアクタ内において用いられるように構成される。それにより、コア、層、および中間層によって提供される中性子吸収材の特性は、核分裂リアクタ内、例えば、沸騰水型原子炉および加圧水型原子炉内に存在する条件および環境下において用いられるように構成される。
【0019】
本発明の実施形態によれば、材料勾配は、コアから層への第1の材料の濃度の連続的な減少、および、コアから層への第2の材料の濃度の連続的な上昇を含む。それにより、材料勾配は、第1の材料から第2の材料へ(逆もまた然り)の特性の漸次的な遷移を提供するように構成される。
【0020】
本発明の実施形態によれば、中性子吸収材の層は、実質的に、ガス状の物質、少なくともヘリウムに対して不透過である。第1の材料中での中性子の捕捉が中性子吸収材の内部において維持できる場合、層は、実質的にガス状において不透過な物質である。それにより、中性子吸収材において形成されるガス状の物質によって外側周囲が汚染されることはない。
【0021】
本発明の実施形態によれば、中性子吸収材の層は、実質的に、核分裂リアクタの環境内において耐食性である。実質的に耐食性であるので、層は化学的に不活性であり、または実質的に化学的に不活性であり、それによる保護の効果は、核分裂リアクタ内における外側周囲に曝された場合にも維持されることが理解される。層が耐食性であることにより、中性子吸収材のコアは外側周囲によって影響を受けずに保護される。それにより、中性子吸収材の完全性および機能が保証される。
【0022】
本発明の実施形態によれば、中性子吸収材の層における孔隙率(porosity)の細孔容積(pore volume)は、コアにおける孔隙率の細孔容積より少ない。コアの孔隙率は、材料構造内での形成されたガスを少なくとも部分的に維持するために用いられる。層のより低い孔隙率により、層の所望され得る材料特性、例えば高い密度等が達成されて、これにより、外側周囲からコアを保護し、かつ、コア内に形成されたガス状の物質が中性子吸収材から逃げないようにする別個の効果を層に提供する。それにより、中性子吸収材の完全性および機能が保証され、第1の材料またはコア内に形成されたガス状の物質によって外側周囲が汚染されるリスクが低減される。
【0023】
本発明の実施形態によれば、中性子吸収材の層は、金属材料およびセラミック材料のうちの少なくとも1つを含む。これらの群からの特定の材料は、リアクタ環境内において特に適切である性質を有する。例えば、特定のセラミック材料、例えば、SiCは、高い耐食性、高い硬度を有し、熱に対しても耐久性がある。例えば、特定の金属材料、例えばZrは高い耐食性および首尾良い機械的特性を有する。
【0024】
本発明の実施形態によれば、中性子吸収材の層は、Ti、Zr、Al、Fe、Cr、Ni、SiC、SiN、ZrO2、Alおよびそれらの混合物の群より選択される少なくとも1つの物質、ならびにとり得るバランスからなる。この群からの物質は、中性子吸収材の層にとって好ましい特性を有する。
【0025】
本発明の実施形態によれば、中性子吸収材のコアは、Hf、B、In、Cd、Hg、Ag、Gd、Er、B、B、Bおよびそれらの混合物の群より選択される少なくとも1つの物質、ならびにとり得るバランスからなる。この群からの物質は、中性子吸収材のコアにとって好ましい特性を有する。本発明の枠組み内において、コアのこれらの物質の任意と、層の上述の物質の任意、例えば、SiCの層と、B、例えばBCなどのコアを組み合わせることが可能である。
【0026】
本発明の実施形態によれば、中性子吸収材は、制御棒内に位置するように構成され、層はコアを完全に包囲する。1つ以上の中性子吸収材で制御棒を充填することによって、そのコアは、完全に包囲され、かつ層によって保護され、制御棒は中性子吸収材の改善された特性が与えられる。
【0027】
有利にも、中性子吸収材は、核分裂リアクタ内の反応性を制御することが意図された制御棒の少なくとも一部を構成する。それにより、制御棒は、異なる構成において、1つ以上の中性子吸収材から構成可能である。制御棒は、それにより、異なるタイプのリアクタにおける使用に対して適合される。
【0028】
本発明のさらなる実施形態によれば、制御棒は、沸騰水型原子炉のタイプの軽水核分裂リアクタ内において用いられるように構成される。有利にも、制御棒は、少なくとも1つのシートで形成された中性子吸収材から構成される。
【0029】
本発明のさらなる実施形態によれば、制御棒は、加圧水型原子炉のタイプの軽水核分裂リアクタ内において用いられるように構成される。有利にも、制御棒は、少なくとも円筒形状の中性子吸収材で構成され得る。
【0030】
本発明の目的はまた、中性子吸収材を製造するための方法を提供することである。
【0031】
この目的は請求項15に規定された方法により達成される。
【0032】
このような方法は、上記第2の材料が上記第1の材料を少なくとも部分的に包囲するように、上記第1の材料および上記第2の材料をツールのスペースに供給する工程と、その後、上記第1の材料および上記第2の材料を共に、上記中性子吸収材に焼結する工程と、を含み、上記コアと上記層との間に上記中間層が形成され、上記中間層が材料勾配を有する。
【0033】
上記方法のためのツールはツール部分を含み、スペースは、焼結のための材料で充填されるように構成される。好ましくは、圧力および/または温度上昇が、焼結方法の間の緻密化を上昇させるために適用可能である。
【0034】
本発明の実施形態によれば、中性子吸収材は核分裂リアクタ内において用いられるように構成される。
【0035】
本発明の実施形態によれば、材料勾配は、コアから層への第1の材料の濃度の連続した減少、および、コアから層への第2の材料の濃度の連続した増加を含む。
【0036】
本発明の実施形態によれば、上記第1の材料および第2の材料を供給する工程において、上記スペースの内側部分と上記スペースの外側部分との間に中間ゾーンが形成され、上記中間ゾーンは、上記スペースの内側部分から外側部分への上記第1の材料の濃度の減少、および、上記スペースの内側部分から外側部分への上記第2の材料の濃度の増加、を含む。中間ゾーンは、スペースの内側部分と、スペースの外側部分との間のスペースの中間部分に位置して、第1の材料および第2の材料からなる。中間ゾーンは材料勾配を含み、結果として、第1の材料および第2の材料は、互いに段階的にまたは漸次的に移動する。材料がスペースに供給される場合、第1の材料および第2の材料は、層、コア、および中間層が形成されるように焼結することによって共に接合される。
【0037】
本発明の実施形態によれば、上記第1および上記第2の材料は、共にもたらされて上記中間ゾーンを形成するように、上記スペースは振動される。第1の材料および第2の材料が、焼結前、スペースに供給された後、スペースは振動される。それにより、第1の材料および第2の材料の材料勾配は、スペースの内側部分とスペースの外側部分との間に生じる。
【0038】
本発明の実施形態によれば、上記第1の材料は粉末形状で供給される。粉末形状での物質により、固体の状態における材料は、小さな粒子サイズで多数の粒子を含むと理解される。粉末は、可能であれば、またフリーフロー(free flowing)であってよく、これは、粉末が機械的なストレスに曝された場合に、容易に変形されることを意味する。それにより、粉末は、焼結のために、ツールのスペースを満たす。粉末形状の材料を用いることによって、本方法は、中間ゾーンが形成された場合に容易にされる。
【0039】
本発明の実施形態によれば、第2の材料は粉末形状にて供給される。
【0040】
本発明の実施形態によれば、上記スペースは、上記内側部分を備える内側パイプによって分けられ、上記スペースは、上記外側部分を備える外側パイプによって分けられ、上記外側パイプと上記内側パイプとの間に中間部分が形成され、上記中間部分は、上記中間ゾーンを生成するために、上記第1の材料および上記第2の材料の混合物が供給される。内側部分は第1の材料が供給されるように構成され、焼結後、中性子吸収材のコアを形成する。外側部分は第2の材料が供給されるように構成され、焼結後、中性子吸収材の層を形成する。中間部分は、焼結後、中性子吸収材の中間層を形成する。
【0041】
中間部分における材料は、焼結後、中性子吸収材の中間層を形成する。
【0042】
本発明の実施形態によれば、上記中間部分は、少なくとも中間のパイプの分割部分(division)に分けられ、上記分割部分は、上記第1の材料の濃度と上記第2の材料の濃度との間で異なる比率の混合物が供給される。2つ以上の分割部分に、スペースの中間部分を分割することによって、分割部分における第1および第2の材料の材(component)は、焼結後、形成された中間層が、層とコアとの首尾良い接着を提供する材料勾配を得るように構成されている。
【0043】
本発明はここで、本発明の異なる実施形態の記載によってより綿密に説明され、かつ添付の図面を参照して説明される。
【図面の簡単な説明】
【0044】
【図1】図1は、本発明の一実施形態に係る中性子吸収材の、側面から見た場合における断面を示す。
【図2】図2は、中性子吸収材の断面の物質濃度の異なる例を有する図を示す。
【図3】図3は、中性子吸収材の断面の物質濃度の異なる例を有する図を示す。
【図4】図4は、中性子吸収材の断面の物質濃度の異なる例を有する図を示す。
【図5】図5は、中性子吸収材の断面の物質濃度の異なる例を有する図を示す。
【図6】図6は、沸騰水型反応炉内の制御棒の一例の斜視図である。
【図7】図7は、加圧水型原子炉内の制御棒の一例の斜視図である。
【図8】図8は、焼結のための物質を供給するためのツールの断面図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0045】
図1は、側面から見た断面図において、本発明の一実施形態に係る中性子吸収材1の一例を開示しており、以下では、中性子吸収材(コンポーネント)として示す。図1の材1は円筒形状を有し、シリンダの底の中心は0(ゼロ)にあり、シリンダの外皮表面は、x軸に沿ったRにある。材1の他の形状もまた可能であり、例えば矩形、方形、球状等である。
【0046】
材1は、第1の材料からなるコア2、および第2の材料からなる層3を備える。材のコア2は、例えば沸騰水型原子炉および加圧水型原子炉などの核分裂リアクタ内の反応性を制御する目的で、中性子を吸収するように構成された中性子吸収材料を含む。材の層3は、図1に開示された例においては、コア2を完全に包囲しており、かつ外側周囲(outer surrounding)からコア2を保護する。層3は、耐食性およびガス状の物質に対する不浸透性などの保護特性を有する第2の材料を含む。材1は、中間層4がコア2と層3との間において形成されるような方法で焼結により製造される。中間層4は第1の材料および第2の材料の両方を含む。中間層4は、コア2から層3へは第1の材料の濃度が減少して、コア2から層3へは第2の材料の濃度が増加する材料勾配を有する。中間層4は、コア2と層3との間の遷移を形成し、こうして第1の材料の物質特性は第2の材料の特性へと遷移し、逆もまた然りである。それによりコア2と層3との間の首尾良い接着が得られる。
【0047】
図2から図5は、中性子吸収材の断面の物質濃度の例を開示する。図におけるx軸は寸法の軸であり、ここで0は材の中心を示し、Rは材の外周を示す。図のy軸は、材の、第1の材料および第2の材料についての物質濃度を百分率で示しており、ここで第1の材料はAで示しかつ点線で示され、第2の材料はBで示しかつ実線で示される。図において、コア2、中間層4、および層3は図のx軸に沿って指定されている。
【0048】
図2は、中性子吸収材内の物質濃度のバリエーションの一例を示しており、ここで、コア2と層3との間の中間層4は、コアから層へ第1の材料の濃度が段階的に減少し、かつ、コアから層へ第2の材料の濃度が段階的に増加する材料勾配を有する。図2に示される例において、コア2から中間層4への第1の材料の濃度の減少は段階的に生じ、第1の材料の濃度は、コア2中において実質的に100%から、中間層4において実質的に50%に減少する。第1の材料の濃度は中間層4内では一定である。さらに、中間層4から層3への第1の材料の濃度の減少は段階的に生じ、実質的に50%から実質的に0%となる。逆に、コア2から中間層4へは、第2の材料の濃度が段階的に増加し、ここで第2の材料の濃度はコアにおいてほぼ0%から中間層において実質的に50%に増加する。第2の材料の濃度は中間層4内において一定である。さらに、中間層から層への、第2の材料の濃度の増加は、段階的に生じて、実質的に50%から実質的に100%となる。
【0049】
図3は、図2と同様に、中性子吸収材内の物質濃度の段階的なバリエーションの一例であり、違いは、中間層4が2つの濃度エリア、すなわち第1の濃度エリア41および第2の濃度エリア42を含んでおり、第1の材料と第2の材料とは異なる濃度である。第1の材料および第2の材料の濃度は、第1の濃度エリア41および第2の濃度エリア42内で一定である。図3の例において、コア2から中間層4への第1の材料の濃度の減少は段階的に生じており、ここで第1の材料の濃度はコア2内において、実質的に100%から、中間層4の第1の濃度エリア41内において実質的に70%に減少する。中間層4内において、第1の濃度エリア41から第2の濃度エリア42への第1の材料の濃度の段階的な減少が生じて、実質的に70%から実質的に30%となる。中間層4から層3への第2の濃度エリア42からの第1の材料の濃度の段階的な減少が生じ、実質的に30%から実質的に0%となる。逆に、コア2から中間層4へは、第2の材料の濃度の増加が生じる。
【0050】
図4は、中性子吸収材内の物質濃度の一例を開示しており、ここでコア2と層3との間の中間層4は、コアから層へ、第1の材料の濃度の連続的な減少、ならびに、コアから層へ、第2の材料の濃度の連続的な増加を含む材料勾配を有する。中間層4内において、コア2から層3へ、第1の材料の濃度は、実質的に100%から実質的に0%へ、一定した比率で減少する。逆に、中間層内において、第2の材料の濃度は、コア2から層3へと、実質的に0%から実質的に100%へと上昇する。
【0051】
図5は、中性子吸収材内における物質濃度のバリエーションの1つの例を開示し、ここでコア2と層3との間の中間層4は、コア2から層3への第1の材料の濃度の連続した減少、ならびにコア2から層3への第2の材料の濃度の連続した増加を含む材料勾配を含む。図5の例において、コア2から中間層4への第1の材料の濃度の減少は連続的な形態で生じる。中間層4内において、第1の材料の濃度の漸次的な減少が生じ、実質的に100%から実質的に0%となる。コア2と層3との間の遷移は、例えば、非線形の形態で生じ得る。逆に、コア2から、第2の材料の濃度の増加が生じる。開示された例において、中間層4は材の主たる部分を形成し、他方でコア2および層3は材の少ない部分を形成する。
【0052】
図6は、沸騰水型原子炉内における制御棒70の一例を斜視図にて開示する。制御棒70は、層3によって部分的に包囲されたコア2を有する、1つ以上のシートで形成された中性子吸収材71から構成可能である。開示された例において、制御棒70は、4つのシートから形成された中性子吸収材71を備える。材71は互いに取り付けられ、かつ取付け装置72において取り付けられた十字形状を形成する。図には示されていないが、リアクタ内の制御装置は、制御棒70がどの程度までリアクタ内に挿入されるかを制御するための取付け装置72に取り付けられている。
【0053】
図7は、加圧水型原子炉内の制御棒80の一例を斜視図にて開示する。制御棒80は、層3によって部分的に包囲されたコア2を有する、1つ以上の円筒形の中性子吸収材81から構成可能である。開示された例において、制御棒80は円筒形の中性子吸収材81を備える。円筒形の材81は取付け装置82において取り付けられる。図には開示されていないが、リアクタ内の制御装置は、制御棒80がリアクタ内に挿入されることができるための取付け装置82に取り付けられている。
【0054】
図8は、中性子吸収材の製造のためのツールの一例の断面を開示する。開示されたツールは、中性子吸収材を製造するための任意の適切な焼結方法において用いられることができる。本発明のために用いることができる適切な焼結方法の例は、大気圧かつ上昇した温度にて焼結する従来の焼結技術、冷間静水圧成形法(CIP)、熱間静水圧成形法(HIP)、放電プラズマ焼結等である。
【0055】
本方法のためのツールはツール部分を備えており、焼結のための材料が供給されるためにスペースが配置されている。ツール部分は周囲要素91を備える。周囲要素91は上述のスペースを包囲する。ツールのスペースは、内側部分99を生成する内側パイプ98によって分けられ、この内側部分99において、第1の材料が供給され、これは、焼結後、材のコア2を形成する。ツールのスペースはまた、外側部分93を形成する外側パイプ94によって分けられ、この外側部分93において、第2の材料が供給され、これは、焼結後、材の層3を形成する。外側パイプ94と内側パイプ98との間には、中間部分95が形成され、この中間部分95の間には、第1の材料と第2の材料との混合物が供給可能であり、これらは、焼結後、材の中間層4を形成する。このようなツールの構成により、例えば、図2における物質濃度のバリエーションを有する材が達成可能である。
【0056】
図8における例において、中間部分95は、中間パイプ96の分割部分(division)に分けられる。中間部分95内の分割部分は、第1の材料の濃度と第2の材料の濃度との間で異なる比率の混合物が供給される。混合物は、例えば図3に示されるように、焼結後に形成された層が、コア2から層3への、第1の材料の濃度の減少、ならびに、コア2から層3への、第2の材料の濃度の増加を含む材料勾配を得るような方法にて構成可能である。
【0057】
第1および第2の材料の上述の変動(vibration)により、図4および図5に示されるように、物質濃度のバリエーションは、図8に示されているツールの配置構成によって達成可能である。
【0058】
本発明の一実施形態において、図8に開示されたパイプ94、96、98は、ツールのスペース内の材料が中性子吸収材に共に焼結される前に、ツールのスペースから引き出される。あるいは、ツールのスペース内の材料は、共に焼結する前に、さらに、ツールを振動させることによって共にもたらされてもよい。
【0059】
本発明の一実施形態において、図8に開示されたパイプ94、96、98は、焼結方法の間に蒸発する材料を含む。それにより、パイプ94、96、98は、中性子吸収材のセラミック組成物に影響を与えることなく、焼結方法の間、ツールのスペース内に残すことができる。
【0060】
本発明の一実施形態において、図8に開示されたパイプ94、96、98は、ツールのスペースの底に対して距離が形成されるように配置される。それにより、第2の材料は、第1の材料を完全に包囲するように、ツールのスペースに供給可能である。
【0061】
本発明は開示された実施形態に限定されず、特許請求の範囲の請求項の範囲内において修正および変更可能である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の材料からなるコア(2)および第2の材料からなる層(3)を備える中性子吸収材(1)であって、
前記層(3)は、前記コア(2)を少なくとも部分的に包囲し、かつ外側周囲から前記コア(2)を保護するように構成され、前記第1の材料は前記第2の材料よりも、より高い中性子吸収性能を有し、
前記中性子吸収材(1)は、前記コア(2)と前記層(3)との間に中間層(4)を備え、前記中間層(4)は、前記コア(2)から前記層(3)への前記第1の材料の濃度の減少、および前記コア(2)から前記層(3)への前記第2の材料の濃度の増加を含む材料勾配を有する、中性子吸収材(1)。
【請求項2】
前記材(1)は核分裂リアクタ内において用いられるように構成される、請求項1に記載の中性子吸収材(1)。
【請求項3】
前記材料勾配は、前記コア(2)から前記層(3)への前記第1の材料の濃度の連続した減少、および前記コア(2)から前記層(3)への前記第2の材料の濃度の連続した増加を含む、請求項1または請求項2に記載の中性子吸収材(1)。
【請求項4】
前記層(3)は、ガス状の物質、少なくともヘリウムに対して実質的に不浸透性である、請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の中性子吸収材(1)。
【請求項5】
前記層(3)は、核分裂リアクタの環境内において、実質的に耐食性である、請求項1から請求項4のいずれか一項に記載の中性子吸収材(1)。
【請求項6】
前記層(3)はゼロより大きいかまたはそれに等しい全細孔容積を有する孔隙率を有し、前記コア(2)は、ゼロより大きい全細孔容積を有する孔隙率を有し、前記層(3)における孔隙率の細孔容積は、前記コア(2)における孔隙率の細孔容積より著しく低い、請求項1から請求項5のいずれか一項に記載の中性子吸収材(1)。
【請求項7】
前記層(3)は、金属材料およびセラミック材料のうちの少なくとも1つを含む、請求項1から請求項6のいずれか一項に記載の中性子吸収材(1)。
【請求項8】
前記層(3)は、Ti、Zr、Al、Fe、Cr、Ni、SiC、SiN、ZrO2、Alおよびそれらの混合物の群より選択される少なくとも1つの物質、ならびにとり得るバランスからなる、請求項1から請求項7のいずれか一項に記載の中性子吸収材(1)。
【請求項9】
前記コア(2)は、Hf、B、In、Cd、Hg、Ag、Gd、Er、B、B、Bおよびそれらの混合物の群より選択される少なくとも1つの物質、ならびにとり得るバランスからなる、請求項1から請求項8のいずれか一項に記載の中性子吸収材(1)。
【請求項10】
前記材(1)は制御棒内に位置するように構成され、前記層(3)は前記コア(2)を完全に包囲する、請求項1から請求項9のいずれか一項に記載の中性子吸収材(1)。
【請求項11】
前記制御棒は、沸騰水型原子炉のタイプの軽水核分裂リアクタ内において用いられるように構成される、請求項10に記載の中性子吸収材(1)。
【請求項12】
前記制御棒は、少なくとも1つのシートで形成された中性子吸収材から構成される、請求項11に記載の中性子吸収材(1)。
【請求項13】
前記制御棒は、加圧水型原子炉のタイプの軽水核分裂リアクタ内において用いられるように構成される、請求項10に記載の中性子吸収材(1)。
【請求項14】
前記制御棒は、少なくとも円筒形状の中性子吸収材から構成される、請求項13に記載の中性子吸収材(1)。
【請求項15】
請求項1から請求項14のいずれか一項に記載の中性子吸収材を製造するための方法であって、
前記第2の材料が前記第1の材料を少なくとも部分的に包囲するように、前記第1の材料および前記第2の材料をツールのスペースに供給する工程と、
前記コアと前記層との間に前記中間層が形成されるように、前記第1の材料および前記第2の材料を共に、前記中性子吸収材に焼結する工程と、を含む、方法。
【請求項16】
前記第1の材料および第2の材料を供給する工程において、前記スペースの内側部分と前記スペースの外側部分との間に中間ゾーンが形成され、前記中間ゾーンは、前記スペースの内側部分から前記スペースの外側部分への前記第1の材料の濃度の減少、および、前記スペースの内側部分から前記スペースの外側部分への前記第2の材料の濃度の増加、を含む、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記第1および前記第2の材料は、共にもたらされて前記中間ゾーンを形成するように、前記スペースは振動される、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
供給される前記第1の材料は粉末形状である、請求項15から請求項17のいずれか一項に記載の方法。
【請求項19】
供給される前記第2の材料は粉末形状である、請求項15から請求項18のいずれか一項に記載の方法。
【請求項20】
前記スペースは、前記内側部分を備える内側パイプによって分けられ、前記スペースは、前記外側部分を備える外側パイプによって分けられ、前記外側パイプと前記内側パイプとの間に中間部分が形成され、前記中間部分は、前記中間ゾーンを形成するために、前記第1の材料および前記第2の材料の混合物が供給される、請求項15から請求項19のいずれか一項に記載の方法。
【請求項21】
前記中間部分は、少なくとも中間に位置するパイプの分割部分に分けられ、前記分割部分は、前記第1の材料の濃度と前記第2の材料の濃度との間で異なる比率の混合物が供給される、請求項20に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公表番号】特表2013−521492(P2013−521492A)
【公表日】平成25年6月10日(2013.6.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−556037(P2012−556037)
【出願日】平成23年2月23日(2011.2.23)
【国際出願番号】PCT/SE2011/050202
【国際公開番号】WO2011/108973
【国際公開日】平成23年9月9日(2011.9.9)
【出願人】(504446548)ウェスティングハウス エレクトリック スウェーデン アーベー (26)