中空のマイクロニードルアレイ及び方法
最小の痛みで迅速かつ大量に皮内注入することは、1個のマイクロニードルが隣接するマイクロニードルと平均1.5mm以上の間隔を持ち、100μm超〜1mm未満の長さを有する10〜30個の中空のマイクロニードルのアレイを患者の皮膚に貼り付けて、20μL/分以上の速度で、中空のマイクロニードルを通して200μL超の流体を送り出すことで達成される(achived)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、中空のマイクロニードルのドラッグ・デリバリー用品に関する。
【背景技術】
【0002】
経皮的貼付剤は、皮膚を通して容易に吸収される小分子の脂肪親和性薬物の投与に長く使用されてきた。この非侵襲的送達経路は、多くの薬物の生物学的利用能を劇的に低減し得る消化器系及び肝門脈系の両方をバイパスして、薬物を体循環に直接吸収させるので、経口送達に不適合な多くの薬物の投与に有利である。経皮的送達はまた、患者の不快感、針嫌い、投与を行う人に誤って怪我を負わせるリスク、及び鋭利物の処理にまつわる問題を大幅に軽減することによって、皮下注射に関連する多くの難題を克服する。
【0003】
これらの多くの利点にもかかわらず、薬物の経皮的送達は、皮膚を通した吸収に適合するクラスの分子に制限される。小分子の塩類及び治療用タンパク質の送達は、従来の経皮的送達では、吸収を促進する賦形剤が存在する場合でも、皮膚がこれらの分子に有効な保護バリヤーを提供するので、通常行うことができない。
【0004】
多種多様な設計及び材料に基づくマイクロニードル(マイクロブレードを含む)のドラッグ・デリバリー用品が提案された。例えば薬物が上にコーティングされた中空でないものもあれば、例えばリザーバから薬物が送達される中空のものもある。金属で作られたものもあれば、シリコン材料からエッチングされたもの、あるいは、ポリカーボネート等のプラスチックで作られたものもある。
【0005】
マイクロニードルの個数、寸法、形状、及び配置もまた、著しく多様である。単一のニードルを有するものもあれば、特に中空でないマイクロニードルにおいて、アレイごとに何百ものニードルを有するものもある。大半は、寸法が100μm〜2mmの範囲である。
【0006】
マイクロニードルは、皮内及び経皮的な薬物送達に有望であり、特に、ワクチン又は効能のある薬物の場合等の、比較的少量の薬物が必要な場合に有望である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
必要に応じて、多くの患者にとって不安及び/又は痛みの原因となり得る、従来の皮下注射針に取って代わることは、言うまでもなくマイクロニードルの所望の有益性のうちの1つである。更に、例えば、ワクチンのように、筋肉注射によるよりも皮膚に送達することに利点がある薬物もある。しかしながら、マイクロニードルデリバリーシステムは、かなり低速の送達速度を提供するものとして見なされていることが多く、したがって、少量の製剤の使用、又は長期送達期間のどちらかが要求されることによって、システムの有用性は限定される。例えば、マイクロニードルを使用する典型的な皮内注入は、30mcL/時未満の低注入速度、及び200mcL未満の低注入量で文書化されてきた。より高速の注入速度が試みられる場合、著しい痛みが示されたとの報告もある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
使用するマイクロニードルの個数、及び単位面積当たりの密度は、事実上痛みを誘発させることなく、はるかに高速の送達速度を生じ得ることが、今では判明している。これは、注射可能な製剤を高速かつ無痛に送達するために、皮下注射に取り代わってマイクロニードルアレイを使用する可能性を初めて提示する。
【0009】
方法は、1個のマイクロニードルが隣接するマイクロニードルと平均1.5mm以上の間隔を持ち、100μm〜1mmの長さを有する10〜30個の中空のマイクロニードルのアレイを患者の皮膚に貼り付けて、20μL/分超の速度で、中空のマイクロニードルを通して200μL超の流体を送り出すことによって、最小の痛みで迅速かつ大量に皮内注入することを伴う。
【0010】
好ましい構成では、本発明のマイクロニードルアレイは、最大1mLまで、又はそれ以上の液体製剤を、驚くべき500μL/分の高速で送達することができる。したがって、例えば、毎時(毎分ではなく)10μLの遅い速度で100μLしか送達しない他に報告されるマイクロニードルアレイとは対照的に、本発明のマイクロニードルアレイは、約1分、又はそれ以下で、まるまる1mLを皮内注入で送達することができる。
【0011】
本発明によるマイクロニードルアレイは、1平方cm当たり30〜50個のマイクロニードルの間隔の密度で、13〜20個のマイクロニードルを概して有する。一実施形態では、18個のマイクロニードルが使用される。好ましくは、マイクロニードルは、隣接するマイクロニードル間で少なくとも2mmの間隔を空けて配置される。
【0012】
マイクロニードルは、500μm〜750μmの長さ、及び断面積20〜50平方μmの平均チャネル孔を概して有する。
【0013】
本発明の方法は、マイクロニードルを通して少なくとも750μLの流体が送り出される注入を提供することができる。流体は、少なくとも400μL/分の速度で中空のマイクロニードルを通して送り出されてもよい。送り出し中の背圧は、通常25psi(172.4kPa)以下であり、概して20psi(137.9kPa)で維持される。
【0014】
マイクロニードルは、それぞれのマイクロニードルの側壁に設置された出口孔を有する。
【0015】
マイクロニードルは通常、真皮に100μm〜400μm貫通する(したがって、貫通の深さはマイクロニードル自体の全高ではない)。
【0016】
いかなる特定の理論に拘束されることを望むことなく、多くの従来技術のマイクロニードルアレイは、多数の密接するマイクロニードルを使用するようであり、それは皮膚組織内に収容できる流体の量及び速度を制限する可能性がある。そのようなデバイスで流体を急速に注入しようすると、過度の背圧、注入中に流体が皮膚から逆流して漏れる、ニードルアレイが外れる、組織がドーム形成する、及び/又は著しい痛み、のいずれかを生じる可能性がある。
【0017】
本明細書で使用される場合、特定の用語は、以下に説明する意味を有するものと理解される。
【0018】
「マイクロニードル」は、治療薬の経皮的送達を促進するために、又は皮膚を通して流体のサンプリングを促進するために、角質層を貫通するように設計されたアレイに関連する特定の微視的構造をいう。例として、マイクロニードルには、マイクロブレードを含む針、又は針状の構造、並びに角質層を貫通できる他の構造が挙げられる。
【0019】
本発明の特徴及び利点は、発明を実施するための形態、及び添付の特許請求の範囲を考慮することで理解される。本発明のこれら並びに他の特徴及び利点は、本発明の様々な例示的な実施形態に関連して以下で説明され得る。上記の本発明の概要は、本発明の開示した各実施形態又はすべての実現形態を説明することを意図したものではない。以下の図面及び発明を実施するための形態は、実例となる実施形態をより具体的に例示するものである。
【図面の簡単な説明】
【0020】
これから、本発明の好ましい実施形態について、添付の図面を参照して以下により詳細に説明する。
【図1A】マイクロニードルアレイの一実施形態の斜視図であり、更に1個の中空のマイクロニードルの詳細図。
【図1B】マイクロニードルアレイの一実施形態の斜視図であり、更に1個の中空のマイクロニードルの詳細図。
【図2A】中空のマイクロニードル貼付剤を除去して染色した無毛モルモットの皮膚の画像。
【図2B】中空のマイクロニードル貼付剤を除去して染色した無毛モルモットの皮膚の画像。
【図3A】メチレンブルーを示しているマイクロニードルの注入部位の画像。
【図3B】メチレンブルーを示しているマイクロニードルの注入部位の画像。
【図4】送達経路ごとのナロキソン血中濃度対時間の比較グラフ。
【図5】注入の痛み対特定注入カテゴリをプロットする図。
【図6】最大注入圧力対特定注入カテゴリをプロットする図。
【図7】最大注入速度対特定注入カテゴリをプロットする図。
【図8】注入量対特定注入カテゴリをプロットする図。
【図9】注入の痛み対最大注入圧力をプロットする図。
【図10】注入の痛み対最大注入速度をプロットする図。
【図11】注入の痛み対注入量をプロットする図。
【0021】
上で特定した図面は、本発明のいくつかの実施形態を示しているが、考察部分で述べているように、他の実施形態も考えられる。いかなる場合も、本開示は、本発明を、限定するのではなく代表して提示するものである。本発明の原理の範囲及び趣旨に含まれる多数の他の修正形態及び実施形態が、当業者によって考案され得ることを理解されたい。図面は縮尺通りに描かれていない場合がある。図の全体にわたって、同様の参照番号を用いて同様の部分を示している。
【発明を実施するための形態】
【0022】
本発明は、以下の非限定的な実施形態を参照して記載される。
【0023】
マイクロニードルアレイ
マイクロニードルデバイス10は、複数の18個のマイクロニードル14がそこから延在する基材12を備えるマイクロニードルアレイ11を有する。それぞれのマイクロニードル14は、基部16から先端18までおよそ500μmの高さを有する。中空のチャネル(図示せず)は、基材12及びマイクロニードル14を通して延在し、マイクロニードルの先端近くにおいてチャネル開口部20で抜ける。これによって、アレイの後部から(例えばリザーバ(図示せず)から)それぞれのマイクロニードル14を通って、流体連通が可能である。チャネルは、マイクロニードル14の中心軸線に沿って伸びるが、皮下注射針と同様に、マイクロニードルの勾配のある側壁で抜けて、挿入時の組織による閉塞を防ぐのに役立つ。チャネルは、約20〜50平方μmの平均断面積を有する。
【0024】
隣接したマイクロニードル14間で距離dが2mmになるように、マイクロニードル14は、離間して配置される。ディスクの形状をした基材12は約1.27平方cmの面積を有し、マイクロニードル14の最外列の外辺部を使用して測定する場合、マイクロニードル14は、約0.42平方cmの面積に広がっている。これにより、マイクロニードルの密度は、マイクロニードル約14個/平方cmになる。
【0025】
マイクロニードルアレイ11は、医療用グレードのポリカーボネート等のポリマーを熱サイクル射出成形によって作製した後、レーザードリルでマイクロニードルのチャネルが形成される。
【0026】
アレイ周縁構造体22は、基材12の外辺部24から外に向かって延在し(extent)、注入中に中空のマイクロニードルアレイ11を皮膚に固定させる粘着ディスク(図示せず)(3M 1513 Medical Tape,3M Corp,St.Paul MN)を組み込む裏張り部材(図示せず)を、マイクロニードル基材12に取り付けるために使用される。粘着性リングを含むマイクロニードルデバイス10全体の表面と接触している皮膚は、約5.5平方cmとなる。
【0027】
マイクロニードルデバイス10は通常、外部アプリケータ(図示せず)を使用して、皮膚に付けられる。マイクロニードルが、単に皮膚を変形するのではなく(rather then)皮膚を貫通するように、アプリケータは、例えば、バネ機構を使用して、所望の速度が得られるように設計される。付けられると、粘着性リングは、マイクロニードルデバイスを皮膚に対して固定させる。様々なアプリケータデバイスが、例えば、国際公開特許第WO2005/123173号、同第2006/055802号、同第2006/05579号、同第2006/055771号、同第2006/108185号、同第2007/002521号、及び同第2007/002522号に開示される(すべて、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる)。
【0028】
マイクロニードルアレイを通して送達される流体は、流体を収容するリザーバ(図示せず)に収容することが可能であるか、あるいは、例えば、チューブ又はルアコネクタを使用して接続が可能である注射器、又は他の容器等の外部源から、流体を送り出すことによって送達されることも可能である。薬物は、製剤中に溶解させるか、又は懸濁させることができ、典型的な製剤は、皮下注射針から注入可能なタイプのものである。
【0029】
処方可能であり皮下注射経由で送達可能ないかなる物質も使用されてもよく、医薬品、栄養薬剤、薬用化粧品(cosmaceutical)、診断用薬、及び治療薬が挙げられる(便宜上、総じて「薬物」と本明細書で言及される)。本発明で注射可能な薬剤に有用な薬物の例には、ACTH(例えば、副腎皮質刺激ホルモン注射)、黄体形成ホルモン放出ホルモン(例えば、ゴナドレリン塩酸塩)、成長ホルモン放出ホルモン(例えば、セルモレリン酢酸塩)、コレシストキニン(シンカリド)、副甲状腺ホルモン及びその断片(例えば、テリパラチド酢酸塩)、甲状腺刺激ホルモン放出ホルモン(thyroid releasing hormone)及びその類似体(例えば、プロチレリン)、セクレチン及び同類物、α1アンチトリプシン、抗血管新生薬、アンチセンス、ブトルファノール、カルシトニン及び類似体、セレデース、COX−II抑制剤、外皮用剤、ジヒドロエルゴタミン、ドーパミン作動薬及び拮抗薬、エンケファリン及び他のオピオイドペプチド、上皮成長因子、エリスロポエチン及び類似体、卵胞刺激ホルモン、G−CSF、グルカゴン、GM−CSF、グラニセトロン、成長ホルモン及び類似体(成長ホルモン放出ホルモンを含む)、成長ホルモン拮抗薬、ヒルジン、並びにヒルログ、IgE抑制剤、インスリン、インスリノトロピン及び類似体等のヒルジンの類似体、インスリン様成長因子、インターフェロン、インターロイキン、黄体形成ホルモン、黄体ホルモン分泌促進(releasing)ホルモン及び類似体、ヘパリン、低分子量ヘパリン及び他の天然グリコアミノグリカン、修飾グリコアミノグリカン、又は合成(synethetic)グリコアミノグリカン、M−CSF、メトクロプラミド、ミダゾラム、単クローン抗体、PEG化抗体、PEG化タンパク質、又は親水性ポリマー、疎水性ポリマー、若しくは追加の官能基で変更した任意のタンパク質、融合タンパク質、単鎖抗体断片、又は付着タンパク質、巨大分子、若しくはその追加の官能基の任意の組み合わせを備える同断片、麻薬性鎮痛薬、ニコチン、非ステロイド性抗炎症剤、オリゴ糖、オンダンセトロン、副甲状腺ホルモン及び類似体、副甲状腺ホルモン拮抗薬、プロスタグランジン拮抗薬、プロスタグランジン、組み換え型可溶性レセプター、スコポラミン、セロトニン作動薬及び拮抗薬、シルデナフィル、テルブタリン、血栓溶解薬、組織プラスミノーゲン活性化因子、TNF拮抗薬及びTNF拮抗薬、キャリア/アジュバントの有無に関係なく、予防薬及び治療用抗原(サブユニットタンパク質、ペプチド及び多糖類、多糖類複合体、トキソイド、遺伝的ワクチン、弱毒生、リアソータント、不活性化、全細胞、ウイルス性、及びバクテリアのベクターが挙げられるが、これらに限定されない)を含む、依存症、関節炎、コレラ、コカイン常用、ジフテリア、破傷風、HIB、ライム病、髄膜炎菌、麻疹、耳下腺炎、風疹、水痘、黄熱病に関連したワクチン、呼吸系発疹ウイルス、ダニ媒介日本脳炎、肺炎球菌、連鎖球菌、腸チフス、インフルエンザ、A型肝炎、B型肝炎、C型肝炎及びE型肝炎を含む肝炎、中耳炎、狂犬病、ポリオ、HIV、パラインフルエンザ、ロタウイルス、エプスタイン・バーウイルス(Virsu)、CMV、クラミディア、判別不能ヘモフィルス、モラクセラカタラーリス、ヒト乳頭腫ウイルス、BCGを含む結核、淋病、喘息、アテローム性動脈硬化症マラリア、大腸菌、アルツハイマー病、ピロリ菌、サルモネラ、糖尿病、癌、単純ヘルペス、ヒト乳頭腫及び同類物、風邪薬等の主な治療学のすべてを含む等の他の物質、抗依存症、抗アレルギー、反吐剤、肥満治療、反骨粗鬆症(antiosteoporeteic)、感染症用薬、鎮痛剤、麻酔薬、拒食症、抗関節炎薬、抗喘息薬、抗痙攣薬、抗うつ薬、糖尿病薬、抗ヒスタミン剤、抗炎症薬、片頭痛治療剤、乗物酔治療剤、鎮吐薬、抗悪性腫瘍剤、パーキンソン病治療薬、かゆみ止め、抗精神病薬、解熱剤、抗コリン作用薬、ベンゾジアゼピン拮抗薬、全身刺激剤、冠状動脈刺激剤、抹消及び大脳刺激剤、骨刺激剤を含む血管拡張剤、中枢神経系興奮薬、ホルモン、催眠薬、免疫抑制薬、筋弛緩剤、副交感神経遮断薬、副交感神経興奮薬(parasympathomimetrics)、プロスタグランジン、タンパク質、ペプチド、ポリペプチド及び他の巨大分子、覚醒剤、鎮静剤、性的機能低下及び精神安定剤が挙げられるが、これらに限定されない。
【0030】
円錐形、円筒状、角錐形状、切頭、非対称、及びこれらの組み合わせ等の広範囲な中空のマイクロニードル形状が使用できることが理解される。更に、ポリマー、金属、及びシリコンベース等の様々な材料を使用することができ、射出成形、スタンピング、及びフォトリソグラフィの使用等の任意の適切な方法で製造することができる。基材上のマイクロニードルの配置は、ランダム、多角形、正方形、及び円形等の任意のパターンであり得る(皮膚と接触するアレイの表面に向かって見た場合)。
【0031】
上記の説明に加えて、米国特許第6,881,203号、同第6,908,453号、同第2005−0261631号、国際公開特許第2005/065765号、同第2005/082596号、同第2006/062974号、同第2006/135794号、米国特許第2006/048640号、米国仮出願第60/793611号、米国特許第2007/064789号、国際公開特許第2006/062848号、同第2007/002523号、及び米国仮出願第60/793564号の特許文献は、本発明による使用に有用である、あるいは適応性がある、マイクロニードルデバイス、材料、製造、アプリケータ、及び使用を開示する。
【0032】
実験
図1Aに関連して上述のマイクロニードルアレイデバイスが、次の実験及び実施例に使用された。
【0033】
動物モデル及び皮膚の準備
無毛モルモット(HGP)
オスのHGPを、IACUC承認の3M動物使用の適用に準拠して、Charles River Laboratories(Wilmington,MA)から注文し、そのプロトコルに基づいて使用した。本試験で使用した動物はすべて、体重が0.8〜1kgであった。
【0034】
家畜ブタ
試験は、IACUC承認の3M動物使用の適用に準拠して取得した、体重がおよそ10〜30kgである、生後およそ6〜18週のメスの家畜ブタに行った。注入中、及び本試験全体を通して、ブタは、イソフルラン(2〜5%)と酸素との混合の麻酔下に維持された。ブタの上臀部を、最初に手術用クリッパー(クリップ刃#50)を使用して剃毛し、次に少量のGillette Foamシェービングクリームを使用して、Schick3かみそりで剃毛した。剃毛後、部位を水で濯ぎ、軽くたたいて水気を拭き取ってから、イソプロピルアルコール(Phoenix Pharmaceutical,Inc.,St.Joseph,MO)で拭いた。
【0035】
血清ナロキソン測定
それぞれの時点で、Vacutainer Collections Set(Becton Dickenson & Co.,Franklin Lakes,NJ)を使用して、ブタの耳静脈から1.5〜2mLの全血を採取した。血液は、少なくとも30分間室温で放置した後、1500rpmで10分間遠心分離した。遠心分離後、血清は全血から分離されて、抽出まで冷所に保管された。
【0036】
固相抽出カートリッジ(Phenomenex,Torrance,CA)を使用して、室温の血清試料を調製した。カートリッジをメタノール(EMD Chemicals,Inc,Gibbstown,NJ)で処理して、血清試料を加える前に、試薬グレード水で平衡化した。2mLの5%メタノール水溶液(試薬グレード水)、及び100%メタノールで溶出したナロキソンで、血清を洗浄した。溶離液は、14mLのガラス管すなわち16×100mmの管に採取され、37℃の水浴中で15psi(103.4kPa)の窒素で乾固した。
【0037】
抽出物は、5%アセトニトリル/95% 0.1%ギ酸(Alfa Aesar,Ward Hill,MA)水溶液で調製再し、微小遠心管に移して(Eppendorf,Westbury,NY)14000rpmで10分間遠心分離した。
【0038】
抽出物はLCMSMSを使用して、定量的に分析された。分離は、Agilent Eclipse XDB−C18カラム(Agilent Technologies,Wilmington,DE)、続いてPhenomenex C18 Guard Column(Phenomenex,Torrence,Ca)の順で使用して行った。移動相は、0.1%ギ酸及びアセトニトリルであり、ギ酸は、1分間で95%から10%に傾斜した。Turbo IonSprayインタフェースを用いて、陽イオンモードで作動するSciex API3000トリプル四重極質量分析計(Applied Biosystems,Foster City,CA)が、次のm/z遷移から生じる生成イオンを定量的にモニタするために使用された。328.17→310.10及び342.16→324.30。ナロキソンの線形範囲は、1/x曲線重み付けを使用して、0.1〜100ng/mLを評価した。
【0039】
様々な大きさのブタに投薬したので、ブタの体重に関して血液ナロキソン濃度を標準化するために、血液ナロキソン濃度は、ブタの体重の62mL血液/kgの変換係数で乗算して、次に、投薬時のブタの体重(kg)で乗算した。最終的な計算値を、μgナロキソン/ブタとしてプロットした。
【0040】
HGP及びブタへの貫通の深さ
技術文献に基づき、かつミクロ構造の寸法を考慮して、角質層を貫通するために1ミクロ構造当たり0.004〜0.16Nの力が必要であると推定された。S.P.David,B.J.Landis,Z.H.Adams,M.G.Allen,M.R.Prausnitz.Insertion of microneedles into skin:measurement and prediction of insertion force and needle fracture force.Journal of Biomechanics.37:115〜116(2004)。本明細書で用いられるミクロ構造の十分な耐久性を確実にするために、アレイは非弾性表面に接して押され、およそ245Nの力がアレイに加えられたとき、先端に曲げが生じた。
【0041】
汗腺がないことを除いて、ブタの皮膚は概して、厚さ、毛の密度、及び下層組織への付着に関して、ヒトの皮膚に類似すると見なされる。これらの試験で使用したブタの表皮の深さが、ヒトに見られるものとほぼ同等である場合、貫通の深さのデータは、本明細書で使用する中空のマイクロニードルデバイス(図1Aを参照)の注入の深さがおそらく180〜280μm(平均250μm)であり、注入中に遭遇する背圧の大きさに影響を与え得る真皮又は表皮のどちらかに一致するであろう深さであることを示している。したがって、マイクロニードルの高さは約500μmであるが、実際の貫通の深さはその約半分であることが理解される。
【0042】
貫通の深さ(DOP)の実験は、HGP及び家畜ブタの両方に行われ、結果が表Iに要約される。
【0043】
【表1】
【0044】
ミクロ構造の破損は力試験の実験で観察されず、DOP試験の後で、針の破断も観察されなかった。
【0045】
図2A及び2Bは、貼付剤を除去した後の、HGPの貼付部位を示す。図2Aは、貼付前にマイクロニードルにコーティングされたローダミンB染料によって作られたマーキングを示す。図2Bは、マイクロニードルアレイを除去した後、メチレンブルーで染色されたマーキングを示す。18個のミクロ構造のそれぞれによる角質層の貫通は、図2Bのメチレンブルーのドットパターンから明白である。貼付中及び貼付後、血液は観察されなかった。
【0046】
ブタに、5%滅菌デキストロース溶液、又は0.001%メチレンブルー溶液を使用して、最大1mLまでの注入を数回行った。一旦調合物が送達されると、デバイスは、システムの背圧が注入前のレベルに戻る間、最大10分間までそのまま放置された。図2は、800μLの0.001%メチレンブルー配合物をブタに皮内注入した結果を示す。皮膚は、貼付剤を除去した後、触ってみると乾いており、注入した配合物の濃青色により、処置の視覚的な評価を行うことができる。
【0047】
図3A及び3Bは、ブタに0.05%メチレンブルー配合物を皮内注入し、貼付剤除去後、それぞれ、T=0分、T=9分の画像を示す。皮膚は触ってみると乾いていた。
【0048】
皮膚上の青点はそれぞれ、アレイの18個の中空のミクロ構造のうちの1個に対応する。染料は、9分後に多少にじんで(拡散して)見えたが、青色の染色は、24時間後も本質的に変化なく残り、膨疹は1時間未満で消えた。染料が組織内に実際に染色した、つまり沈殿したのであり、その意味では、注入後の長時間の皮内注入パターンとしての有効な指標では恐らくないと考えられる。
【0049】
注入後に中空のマイクロニードル貼付剤を除去する際に、少量(1〜3μL)の配合物が、皮膚の表面上に通常観察された。この流体をティッシュで軽く拭き取って除去するとき、追加の流体は観察されない。中空のマイクロニードルアレイの寸法のピンク色のしみが、貼付剤を除去する際に通常見られるが、しみは、5分以内にほとんど区別がつかなくなるまで消えてしまう。更にほぼ中空のマイクロニードルアレイの寸法の小さいドームが、ブタの皮膚上に同様に観察された。軽く押すと、ドームはへこんだが、「漏れ」なかった。ドームは、目視による、及び手で触れることによる両方で、貼付した貼付剤を除去して40分以内に消散した。貼付後24時間、及び48時間の貼付部位の観察において、紅斑も浮腫も認められなかった。
【実施例】
【0050】
実施例1.ブタへの大量デキストロースの注入
大量注入が家畜ブタに実証された。ブタに使用した注入システムは、貼付後に中空のマイクロニードルアレイ貼付剤に接続されて、標準医療用具を用いて、配合物の送達を提供する。中空のマイクロニードル貼付用貼付剤は、インライン滅菌済みDTX Plus TNF−R圧変換器(BD Infusion Therapy Systems,Inc,Sandy,UT)を含む、市販の滅菌済みPolyethylene IV Extension Set(Vygon Corporation,Ecouen,France)を経由して、Medfusion 3500シリンジポンプ(Smiths Medical,St.Paul,MN)につながれる。Medfusion 3500ポンプは、病院現場で一般に使用され、あらかじめ設定された安全停止機能有する。圧力数値を、2秒ごとにおよそ1測定の速度で記録した。5%デキストロースUSP注射剤液(Baxter Healthcare,Deerfield,IL)をそのまま注入に使用した。0.001%メチレンブルー溶液を滅菌水で調製して、投与前にろ過した。
【0051】
試験は、IACUC承認の3M動物使用の適用に準拠して取得した、生後およそ6〜18週で、体重がおよそ10〜30kgのメスの家畜ブタに行った。注入中、及び本試験全体を通して、ブタは、イソフルラン(2〜5%)と酸素との混合の麻酔下に維持された。ブタの上臀部を、最初に手術用クリッパー(クリップ刃#50)を使用して剃毛し、次に少量のGillette Foamシェービングクリームを使用して、Schick 3かみそりで剃毛した。剃毛後、部位を水で濯ぎ、軽くたたいて水気を拭き取ってから、イソプロピルアルコール(Phoenix Pharmaceutical,Inc.,St.Joseph,MO)で拭いた。
【0052】
最大1mLの5%デキストロース水溶液、あるいは最大425mcLのナロキソンを、ブタの上臀部に送達した。注入システムに漏れが無いことを確認するために、注入中、背圧が絶えずモニタされた。ブタに用いた典型的な注入速度プロファイルを、下の表IIに収載する。
【0053】
【表2】
【0054】
注入後、中空のマイクロニードルアレイを除去すると、皮膚下に小さい泡状突起が残った。この泡状突起は、40分以内に完全に消えた。貼付剤除去後48時間の観察中に、ブタに部位反応は観察されなかった。
【0055】
デキストロース注入中、及びメチレンブルー注入中に、背圧が連続的にモニタされ記録された。3つの注入に対する測定した最大背圧を、注入状態と共に、表IIIに収載する。
【0056】
【表3】
【0057】
実施例2.ナロキソン注入、及び結果とした生じたPKプロファイル
注入の定量化を改善させるために、中空のマイクロニードルPOCデバイスを使用して、ナロキソンの1mg/mLの市販配合物をブタに注入した。ナロキソンは、μ−オピオイドレセプター競合拮抗薬で、ヘロイン等の薬物の過剰投与を抑制するために主に使用される。ナロキソンは、速く反応させるために通常は静脈内に投与され、経口投与の場合、約2%のみ生体に作用する。ナロキソンは吸収性が良いが、初回通過中にほぼ90%が除去される。文献レビューによると、ナロキソンの半減期は成人の場合30〜81分で、小児の場合はそれより相当長い(およそ3時間)。ナロキソンは代謝産物として尿に排泄される。
【0058】
注入前、及び注入後最大2時間までの特定の時点に、ブタの耳静脈から血液試料が採取された。試料は、血清中のナロキソン濃度を判定するために調製され分析された。比較するために、未処置のブタに、同じナロキソンの市販配合物を皮下注射、又は静脈注射のどちらかを使用して投与した。皮内注入と同様に、ナロキソン濃度を調べるために、血液試料が採取され分析された。
【0059】
中空のマイクロニードル注入後、皮下注射後、及びIV注射後に発生するPKプロファイルを比較するために、3匹の別個の動物を本試験に使用した。ブタは、投与時に体重10〜22kg、生後1.5〜3か月の範囲であった。塩酸ナロキソンの市販配合物(1mg/mL)(International Medication Systems,Ltd,So.El Monte,CA)が注入に使用された。表IVは、中空のマイクロニードルデバイスを用いたナロキソン投与で使用された注入プロファイルを示す。
【0060】
【表4】
【0061】
送達経路ごとの、ナロキソン血中濃度対時間の比較グラフが図4に示される。ブタはまた、皮下注射によってナロキソンを投与された。これらのブタは、中空のマイクロニードルデバイスによってナロキソンを投与されたブタと体重及び年齢が類似していた。これらの結果は、中空のマイクロニードルと皮下注射との比較可能なナロキソンの送達を示す。注入開始後の最大2時間まで採取した血液試料に基づいて、中空のマイクロニードル技術によって投与されたナロキソンの生物学的利用能は、皮下投与からの結果の107+/−35%であると推測される。
【0062】
実施例3.デキストロースを用いたヒトへの注入試験
上述した用具と同じものを使用して、大量、高速注入をヒトで実証した。ヒト臨床試験において、28人の被験者に、4〜6回連続の中空のマイクロニードルによるプラセボ注入が、上腕、及び/又は大腿部に投与された。背圧は、注入全体を通して、連続的にモニタされた。10点の痛みの尺度(図4を参照)を使用して、被験者はそれぞれ、中空のマイクロニードル貼付剤の貼付、及び除去に関連する痛みを評価することを求められた。被験者は、注入中10分ごとに、又は注入が10分未満で終了した場合は注入の終了時に、注入に関連した痛みを評価することも求められた。
【0063】
図5、9、10、及び11は、次の痛みの尺度に基づいて、痛みに伴うデータをプロットする。
【数1】
【0064】
125回の注入が開始されたうち、46回の注入は、750μL以上投与された。試験中、10〜433μL/分の注入速度にわたって、異なる注入速度プロファイルが使用された。被験者が知覚した痛みと注入量との間に統計的有意差はなかった。表Vは、大量の注入を受ける被験者(カテゴリ3、>750μL)に対して、最大注入速度、注入量、及び注入中の最大不快感をカテゴリごとに要約する。
【0065】
【表5】
【0066】
図5〜8は、カテゴリごとに分類された注入パラメータの分布の要約を収載する。図5は、注入の痛み対カテゴリをプロットする。図6は、最大注入圧力対カテゴリをプロットする。図7は、最大注入速度対カテゴリをプロットする。図8は、注入量対カテゴリをプロットする。
【0067】
表VIは、カテゴリ3の注入すべてに対する注入パラメータの要約を収載する。
【0068】
【表6】
【0069】
図9〜11は、カテゴリ3(750〜1000μL)の注入のみに対して注入の痛みと様々な注入パラメータとの関係をプロットする。図9は、注入の痛み対最大注入圧力をプロットする。図10は、注入の痛み対最大注入速度をプロットする。図11は、注入の痛み対注入量をプロットする。
【0070】
本発明に対する様々な予見できない修正及び変更は、本発明の範囲及び趣旨から逸脱することなく当業者に明らかとなるであろうことが理解される。本発明は、本明細書で述べる例示的な実施形態及び実施例によって不当に限定されることを意図するものではないこと、また、こうした実施例及び実施形態は、本明細書において以下に記述する特許請求の範囲によって(be)のみ限定されることを意図する本発明の範囲に関する例示のためにのみ提示されることを理解すべきである。
【技術分野】
【0001】
本発明は、中空のマイクロニードルのドラッグ・デリバリー用品に関する。
【背景技術】
【0002】
経皮的貼付剤は、皮膚を通して容易に吸収される小分子の脂肪親和性薬物の投与に長く使用されてきた。この非侵襲的送達経路は、多くの薬物の生物学的利用能を劇的に低減し得る消化器系及び肝門脈系の両方をバイパスして、薬物を体循環に直接吸収させるので、経口送達に不適合な多くの薬物の投与に有利である。経皮的送達はまた、患者の不快感、針嫌い、投与を行う人に誤って怪我を負わせるリスク、及び鋭利物の処理にまつわる問題を大幅に軽減することによって、皮下注射に関連する多くの難題を克服する。
【0003】
これらの多くの利点にもかかわらず、薬物の経皮的送達は、皮膚を通した吸収に適合するクラスの分子に制限される。小分子の塩類及び治療用タンパク質の送達は、従来の経皮的送達では、吸収を促進する賦形剤が存在する場合でも、皮膚がこれらの分子に有効な保護バリヤーを提供するので、通常行うことができない。
【0004】
多種多様な設計及び材料に基づくマイクロニードル(マイクロブレードを含む)のドラッグ・デリバリー用品が提案された。例えば薬物が上にコーティングされた中空でないものもあれば、例えばリザーバから薬物が送達される中空のものもある。金属で作られたものもあれば、シリコン材料からエッチングされたもの、あるいは、ポリカーボネート等のプラスチックで作られたものもある。
【0005】
マイクロニードルの個数、寸法、形状、及び配置もまた、著しく多様である。単一のニードルを有するものもあれば、特に中空でないマイクロニードルにおいて、アレイごとに何百ものニードルを有するものもある。大半は、寸法が100μm〜2mmの範囲である。
【0006】
マイクロニードルは、皮内及び経皮的な薬物送達に有望であり、特に、ワクチン又は効能のある薬物の場合等の、比較的少量の薬物が必要な場合に有望である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
必要に応じて、多くの患者にとって不安及び/又は痛みの原因となり得る、従来の皮下注射針に取って代わることは、言うまでもなくマイクロニードルの所望の有益性のうちの1つである。更に、例えば、ワクチンのように、筋肉注射によるよりも皮膚に送達することに利点がある薬物もある。しかしながら、マイクロニードルデリバリーシステムは、かなり低速の送達速度を提供するものとして見なされていることが多く、したがって、少量の製剤の使用、又は長期送達期間のどちらかが要求されることによって、システムの有用性は限定される。例えば、マイクロニードルを使用する典型的な皮内注入は、30mcL/時未満の低注入速度、及び200mcL未満の低注入量で文書化されてきた。より高速の注入速度が試みられる場合、著しい痛みが示されたとの報告もある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
使用するマイクロニードルの個数、及び単位面積当たりの密度は、事実上痛みを誘発させることなく、はるかに高速の送達速度を生じ得ることが、今では判明している。これは、注射可能な製剤を高速かつ無痛に送達するために、皮下注射に取り代わってマイクロニードルアレイを使用する可能性を初めて提示する。
【0009】
方法は、1個のマイクロニードルが隣接するマイクロニードルと平均1.5mm以上の間隔を持ち、100μm〜1mmの長さを有する10〜30個の中空のマイクロニードルのアレイを患者の皮膚に貼り付けて、20μL/分超の速度で、中空のマイクロニードルを通して200μL超の流体を送り出すことによって、最小の痛みで迅速かつ大量に皮内注入することを伴う。
【0010】
好ましい構成では、本発明のマイクロニードルアレイは、最大1mLまで、又はそれ以上の液体製剤を、驚くべき500μL/分の高速で送達することができる。したがって、例えば、毎時(毎分ではなく)10μLの遅い速度で100μLしか送達しない他に報告されるマイクロニードルアレイとは対照的に、本発明のマイクロニードルアレイは、約1分、又はそれ以下で、まるまる1mLを皮内注入で送達することができる。
【0011】
本発明によるマイクロニードルアレイは、1平方cm当たり30〜50個のマイクロニードルの間隔の密度で、13〜20個のマイクロニードルを概して有する。一実施形態では、18個のマイクロニードルが使用される。好ましくは、マイクロニードルは、隣接するマイクロニードル間で少なくとも2mmの間隔を空けて配置される。
【0012】
マイクロニードルは、500μm〜750μmの長さ、及び断面積20〜50平方μmの平均チャネル孔を概して有する。
【0013】
本発明の方法は、マイクロニードルを通して少なくとも750μLの流体が送り出される注入を提供することができる。流体は、少なくとも400μL/分の速度で中空のマイクロニードルを通して送り出されてもよい。送り出し中の背圧は、通常25psi(172.4kPa)以下であり、概して20psi(137.9kPa)で維持される。
【0014】
マイクロニードルは、それぞれのマイクロニードルの側壁に設置された出口孔を有する。
【0015】
マイクロニードルは通常、真皮に100μm〜400μm貫通する(したがって、貫通の深さはマイクロニードル自体の全高ではない)。
【0016】
いかなる特定の理論に拘束されることを望むことなく、多くの従来技術のマイクロニードルアレイは、多数の密接するマイクロニードルを使用するようであり、それは皮膚組織内に収容できる流体の量及び速度を制限する可能性がある。そのようなデバイスで流体を急速に注入しようすると、過度の背圧、注入中に流体が皮膚から逆流して漏れる、ニードルアレイが外れる、組織がドーム形成する、及び/又は著しい痛み、のいずれかを生じる可能性がある。
【0017】
本明細書で使用される場合、特定の用語は、以下に説明する意味を有するものと理解される。
【0018】
「マイクロニードル」は、治療薬の経皮的送達を促進するために、又は皮膚を通して流体のサンプリングを促進するために、角質層を貫通するように設計されたアレイに関連する特定の微視的構造をいう。例として、マイクロニードルには、マイクロブレードを含む針、又は針状の構造、並びに角質層を貫通できる他の構造が挙げられる。
【0019】
本発明の特徴及び利点は、発明を実施するための形態、及び添付の特許請求の範囲を考慮することで理解される。本発明のこれら並びに他の特徴及び利点は、本発明の様々な例示的な実施形態に関連して以下で説明され得る。上記の本発明の概要は、本発明の開示した各実施形態又はすべての実現形態を説明することを意図したものではない。以下の図面及び発明を実施するための形態は、実例となる実施形態をより具体的に例示するものである。
【図面の簡単な説明】
【0020】
これから、本発明の好ましい実施形態について、添付の図面を参照して以下により詳細に説明する。
【図1A】マイクロニードルアレイの一実施形態の斜視図であり、更に1個の中空のマイクロニードルの詳細図。
【図1B】マイクロニードルアレイの一実施形態の斜視図であり、更に1個の中空のマイクロニードルの詳細図。
【図2A】中空のマイクロニードル貼付剤を除去して染色した無毛モルモットの皮膚の画像。
【図2B】中空のマイクロニードル貼付剤を除去して染色した無毛モルモットの皮膚の画像。
【図3A】メチレンブルーを示しているマイクロニードルの注入部位の画像。
【図3B】メチレンブルーを示しているマイクロニードルの注入部位の画像。
【図4】送達経路ごとのナロキソン血中濃度対時間の比較グラフ。
【図5】注入の痛み対特定注入カテゴリをプロットする図。
【図6】最大注入圧力対特定注入カテゴリをプロットする図。
【図7】最大注入速度対特定注入カテゴリをプロットする図。
【図8】注入量対特定注入カテゴリをプロットする図。
【図9】注入の痛み対最大注入圧力をプロットする図。
【図10】注入の痛み対最大注入速度をプロットする図。
【図11】注入の痛み対注入量をプロットする図。
【0021】
上で特定した図面は、本発明のいくつかの実施形態を示しているが、考察部分で述べているように、他の実施形態も考えられる。いかなる場合も、本開示は、本発明を、限定するのではなく代表して提示するものである。本発明の原理の範囲及び趣旨に含まれる多数の他の修正形態及び実施形態が、当業者によって考案され得ることを理解されたい。図面は縮尺通りに描かれていない場合がある。図の全体にわたって、同様の参照番号を用いて同様の部分を示している。
【発明を実施するための形態】
【0022】
本発明は、以下の非限定的な実施形態を参照して記載される。
【0023】
マイクロニードルアレイ
マイクロニードルデバイス10は、複数の18個のマイクロニードル14がそこから延在する基材12を備えるマイクロニードルアレイ11を有する。それぞれのマイクロニードル14は、基部16から先端18までおよそ500μmの高さを有する。中空のチャネル(図示せず)は、基材12及びマイクロニードル14を通して延在し、マイクロニードルの先端近くにおいてチャネル開口部20で抜ける。これによって、アレイの後部から(例えばリザーバ(図示せず)から)それぞれのマイクロニードル14を通って、流体連通が可能である。チャネルは、マイクロニードル14の中心軸線に沿って伸びるが、皮下注射針と同様に、マイクロニードルの勾配のある側壁で抜けて、挿入時の組織による閉塞を防ぐのに役立つ。チャネルは、約20〜50平方μmの平均断面積を有する。
【0024】
隣接したマイクロニードル14間で距離dが2mmになるように、マイクロニードル14は、離間して配置される。ディスクの形状をした基材12は約1.27平方cmの面積を有し、マイクロニードル14の最外列の外辺部を使用して測定する場合、マイクロニードル14は、約0.42平方cmの面積に広がっている。これにより、マイクロニードルの密度は、マイクロニードル約14個/平方cmになる。
【0025】
マイクロニードルアレイ11は、医療用グレードのポリカーボネート等のポリマーを熱サイクル射出成形によって作製した後、レーザードリルでマイクロニードルのチャネルが形成される。
【0026】
アレイ周縁構造体22は、基材12の外辺部24から外に向かって延在し(extent)、注入中に中空のマイクロニードルアレイ11を皮膚に固定させる粘着ディスク(図示せず)(3M 1513 Medical Tape,3M Corp,St.Paul MN)を組み込む裏張り部材(図示せず)を、マイクロニードル基材12に取り付けるために使用される。粘着性リングを含むマイクロニードルデバイス10全体の表面と接触している皮膚は、約5.5平方cmとなる。
【0027】
マイクロニードルデバイス10は通常、外部アプリケータ(図示せず)を使用して、皮膚に付けられる。マイクロニードルが、単に皮膚を変形するのではなく(rather then)皮膚を貫通するように、アプリケータは、例えば、バネ機構を使用して、所望の速度が得られるように設計される。付けられると、粘着性リングは、マイクロニードルデバイスを皮膚に対して固定させる。様々なアプリケータデバイスが、例えば、国際公開特許第WO2005/123173号、同第2006/055802号、同第2006/05579号、同第2006/055771号、同第2006/108185号、同第2007/002521号、及び同第2007/002522号に開示される(すべて、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる)。
【0028】
マイクロニードルアレイを通して送達される流体は、流体を収容するリザーバ(図示せず)に収容することが可能であるか、あるいは、例えば、チューブ又はルアコネクタを使用して接続が可能である注射器、又は他の容器等の外部源から、流体を送り出すことによって送達されることも可能である。薬物は、製剤中に溶解させるか、又は懸濁させることができ、典型的な製剤は、皮下注射針から注入可能なタイプのものである。
【0029】
処方可能であり皮下注射経由で送達可能ないかなる物質も使用されてもよく、医薬品、栄養薬剤、薬用化粧品(cosmaceutical)、診断用薬、及び治療薬が挙げられる(便宜上、総じて「薬物」と本明細書で言及される)。本発明で注射可能な薬剤に有用な薬物の例には、ACTH(例えば、副腎皮質刺激ホルモン注射)、黄体形成ホルモン放出ホルモン(例えば、ゴナドレリン塩酸塩)、成長ホルモン放出ホルモン(例えば、セルモレリン酢酸塩)、コレシストキニン(シンカリド)、副甲状腺ホルモン及びその断片(例えば、テリパラチド酢酸塩)、甲状腺刺激ホルモン放出ホルモン(thyroid releasing hormone)及びその類似体(例えば、プロチレリン)、セクレチン及び同類物、α1アンチトリプシン、抗血管新生薬、アンチセンス、ブトルファノール、カルシトニン及び類似体、セレデース、COX−II抑制剤、外皮用剤、ジヒドロエルゴタミン、ドーパミン作動薬及び拮抗薬、エンケファリン及び他のオピオイドペプチド、上皮成長因子、エリスロポエチン及び類似体、卵胞刺激ホルモン、G−CSF、グルカゴン、GM−CSF、グラニセトロン、成長ホルモン及び類似体(成長ホルモン放出ホルモンを含む)、成長ホルモン拮抗薬、ヒルジン、並びにヒルログ、IgE抑制剤、インスリン、インスリノトロピン及び類似体等のヒルジンの類似体、インスリン様成長因子、インターフェロン、インターロイキン、黄体形成ホルモン、黄体ホルモン分泌促進(releasing)ホルモン及び類似体、ヘパリン、低分子量ヘパリン及び他の天然グリコアミノグリカン、修飾グリコアミノグリカン、又は合成(synethetic)グリコアミノグリカン、M−CSF、メトクロプラミド、ミダゾラム、単クローン抗体、PEG化抗体、PEG化タンパク質、又は親水性ポリマー、疎水性ポリマー、若しくは追加の官能基で変更した任意のタンパク質、融合タンパク質、単鎖抗体断片、又は付着タンパク質、巨大分子、若しくはその追加の官能基の任意の組み合わせを備える同断片、麻薬性鎮痛薬、ニコチン、非ステロイド性抗炎症剤、オリゴ糖、オンダンセトロン、副甲状腺ホルモン及び類似体、副甲状腺ホルモン拮抗薬、プロスタグランジン拮抗薬、プロスタグランジン、組み換え型可溶性レセプター、スコポラミン、セロトニン作動薬及び拮抗薬、シルデナフィル、テルブタリン、血栓溶解薬、組織プラスミノーゲン活性化因子、TNF拮抗薬及びTNF拮抗薬、キャリア/アジュバントの有無に関係なく、予防薬及び治療用抗原(サブユニットタンパク質、ペプチド及び多糖類、多糖類複合体、トキソイド、遺伝的ワクチン、弱毒生、リアソータント、不活性化、全細胞、ウイルス性、及びバクテリアのベクターが挙げられるが、これらに限定されない)を含む、依存症、関節炎、コレラ、コカイン常用、ジフテリア、破傷風、HIB、ライム病、髄膜炎菌、麻疹、耳下腺炎、風疹、水痘、黄熱病に関連したワクチン、呼吸系発疹ウイルス、ダニ媒介日本脳炎、肺炎球菌、連鎖球菌、腸チフス、インフルエンザ、A型肝炎、B型肝炎、C型肝炎及びE型肝炎を含む肝炎、中耳炎、狂犬病、ポリオ、HIV、パラインフルエンザ、ロタウイルス、エプスタイン・バーウイルス(Virsu)、CMV、クラミディア、判別不能ヘモフィルス、モラクセラカタラーリス、ヒト乳頭腫ウイルス、BCGを含む結核、淋病、喘息、アテローム性動脈硬化症マラリア、大腸菌、アルツハイマー病、ピロリ菌、サルモネラ、糖尿病、癌、単純ヘルペス、ヒト乳頭腫及び同類物、風邪薬等の主な治療学のすべてを含む等の他の物質、抗依存症、抗アレルギー、反吐剤、肥満治療、反骨粗鬆症(antiosteoporeteic)、感染症用薬、鎮痛剤、麻酔薬、拒食症、抗関節炎薬、抗喘息薬、抗痙攣薬、抗うつ薬、糖尿病薬、抗ヒスタミン剤、抗炎症薬、片頭痛治療剤、乗物酔治療剤、鎮吐薬、抗悪性腫瘍剤、パーキンソン病治療薬、かゆみ止め、抗精神病薬、解熱剤、抗コリン作用薬、ベンゾジアゼピン拮抗薬、全身刺激剤、冠状動脈刺激剤、抹消及び大脳刺激剤、骨刺激剤を含む血管拡張剤、中枢神経系興奮薬、ホルモン、催眠薬、免疫抑制薬、筋弛緩剤、副交感神経遮断薬、副交感神経興奮薬(parasympathomimetrics)、プロスタグランジン、タンパク質、ペプチド、ポリペプチド及び他の巨大分子、覚醒剤、鎮静剤、性的機能低下及び精神安定剤が挙げられるが、これらに限定されない。
【0030】
円錐形、円筒状、角錐形状、切頭、非対称、及びこれらの組み合わせ等の広範囲な中空のマイクロニードル形状が使用できることが理解される。更に、ポリマー、金属、及びシリコンベース等の様々な材料を使用することができ、射出成形、スタンピング、及びフォトリソグラフィの使用等の任意の適切な方法で製造することができる。基材上のマイクロニードルの配置は、ランダム、多角形、正方形、及び円形等の任意のパターンであり得る(皮膚と接触するアレイの表面に向かって見た場合)。
【0031】
上記の説明に加えて、米国特許第6,881,203号、同第6,908,453号、同第2005−0261631号、国際公開特許第2005/065765号、同第2005/082596号、同第2006/062974号、同第2006/135794号、米国特許第2006/048640号、米国仮出願第60/793611号、米国特許第2007/064789号、国際公開特許第2006/062848号、同第2007/002523号、及び米国仮出願第60/793564号の特許文献は、本発明による使用に有用である、あるいは適応性がある、マイクロニードルデバイス、材料、製造、アプリケータ、及び使用を開示する。
【0032】
実験
図1Aに関連して上述のマイクロニードルアレイデバイスが、次の実験及び実施例に使用された。
【0033】
動物モデル及び皮膚の準備
無毛モルモット(HGP)
オスのHGPを、IACUC承認の3M動物使用の適用に準拠して、Charles River Laboratories(Wilmington,MA)から注文し、そのプロトコルに基づいて使用した。本試験で使用した動物はすべて、体重が0.8〜1kgであった。
【0034】
家畜ブタ
試験は、IACUC承認の3M動物使用の適用に準拠して取得した、体重がおよそ10〜30kgである、生後およそ6〜18週のメスの家畜ブタに行った。注入中、及び本試験全体を通して、ブタは、イソフルラン(2〜5%)と酸素との混合の麻酔下に維持された。ブタの上臀部を、最初に手術用クリッパー(クリップ刃#50)を使用して剃毛し、次に少量のGillette Foamシェービングクリームを使用して、Schick3かみそりで剃毛した。剃毛後、部位を水で濯ぎ、軽くたたいて水気を拭き取ってから、イソプロピルアルコール(Phoenix Pharmaceutical,Inc.,St.Joseph,MO)で拭いた。
【0035】
血清ナロキソン測定
それぞれの時点で、Vacutainer Collections Set(Becton Dickenson & Co.,Franklin Lakes,NJ)を使用して、ブタの耳静脈から1.5〜2mLの全血を採取した。血液は、少なくとも30分間室温で放置した後、1500rpmで10分間遠心分離した。遠心分離後、血清は全血から分離されて、抽出まで冷所に保管された。
【0036】
固相抽出カートリッジ(Phenomenex,Torrance,CA)を使用して、室温の血清試料を調製した。カートリッジをメタノール(EMD Chemicals,Inc,Gibbstown,NJ)で処理して、血清試料を加える前に、試薬グレード水で平衡化した。2mLの5%メタノール水溶液(試薬グレード水)、及び100%メタノールで溶出したナロキソンで、血清を洗浄した。溶離液は、14mLのガラス管すなわち16×100mmの管に採取され、37℃の水浴中で15psi(103.4kPa)の窒素で乾固した。
【0037】
抽出物は、5%アセトニトリル/95% 0.1%ギ酸(Alfa Aesar,Ward Hill,MA)水溶液で調製再し、微小遠心管に移して(Eppendorf,Westbury,NY)14000rpmで10分間遠心分離した。
【0038】
抽出物はLCMSMSを使用して、定量的に分析された。分離は、Agilent Eclipse XDB−C18カラム(Agilent Technologies,Wilmington,DE)、続いてPhenomenex C18 Guard Column(Phenomenex,Torrence,Ca)の順で使用して行った。移動相は、0.1%ギ酸及びアセトニトリルであり、ギ酸は、1分間で95%から10%に傾斜した。Turbo IonSprayインタフェースを用いて、陽イオンモードで作動するSciex API3000トリプル四重極質量分析計(Applied Biosystems,Foster City,CA)が、次のm/z遷移から生じる生成イオンを定量的にモニタするために使用された。328.17→310.10及び342.16→324.30。ナロキソンの線形範囲は、1/x曲線重み付けを使用して、0.1〜100ng/mLを評価した。
【0039】
様々な大きさのブタに投薬したので、ブタの体重に関して血液ナロキソン濃度を標準化するために、血液ナロキソン濃度は、ブタの体重の62mL血液/kgの変換係数で乗算して、次に、投薬時のブタの体重(kg)で乗算した。最終的な計算値を、μgナロキソン/ブタとしてプロットした。
【0040】
HGP及びブタへの貫通の深さ
技術文献に基づき、かつミクロ構造の寸法を考慮して、角質層を貫通するために1ミクロ構造当たり0.004〜0.16Nの力が必要であると推定された。S.P.David,B.J.Landis,Z.H.Adams,M.G.Allen,M.R.Prausnitz.Insertion of microneedles into skin:measurement and prediction of insertion force and needle fracture force.Journal of Biomechanics.37:115〜116(2004)。本明細書で用いられるミクロ構造の十分な耐久性を確実にするために、アレイは非弾性表面に接して押され、およそ245Nの力がアレイに加えられたとき、先端に曲げが生じた。
【0041】
汗腺がないことを除いて、ブタの皮膚は概して、厚さ、毛の密度、及び下層組織への付着に関して、ヒトの皮膚に類似すると見なされる。これらの試験で使用したブタの表皮の深さが、ヒトに見られるものとほぼ同等である場合、貫通の深さのデータは、本明細書で使用する中空のマイクロニードルデバイス(図1Aを参照)の注入の深さがおそらく180〜280μm(平均250μm)であり、注入中に遭遇する背圧の大きさに影響を与え得る真皮又は表皮のどちらかに一致するであろう深さであることを示している。したがって、マイクロニードルの高さは約500μmであるが、実際の貫通の深さはその約半分であることが理解される。
【0042】
貫通の深さ(DOP)の実験は、HGP及び家畜ブタの両方に行われ、結果が表Iに要約される。
【0043】
【表1】
【0044】
ミクロ構造の破損は力試験の実験で観察されず、DOP試験の後で、針の破断も観察されなかった。
【0045】
図2A及び2Bは、貼付剤を除去した後の、HGPの貼付部位を示す。図2Aは、貼付前にマイクロニードルにコーティングされたローダミンB染料によって作られたマーキングを示す。図2Bは、マイクロニードルアレイを除去した後、メチレンブルーで染色されたマーキングを示す。18個のミクロ構造のそれぞれによる角質層の貫通は、図2Bのメチレンブルーのドットパターンから明白である。貼付中及び貼付後、血液は観察されなかった。
【0046】
ブタに、5%滅菌デキストロース溶液、又は0.001%メチレンブルー溶液を使用して、最大1mLまでの注入を数回行った。一旦調合物が送達されると、デバイスは、システムの背圧が注入前のレベルに戻る間、最大10分間までそのまま放置された。図2は、800μLの0.001%メチレンブルー配合物をブタに皮内注入した結果を示す。皮膚は、貼付剤を除去した後、触ってみると乾いており、注入した配合物の濃青色により、処置の視覚的な評価を行うことができる。
【0047】
図3A及び3Bは、ブタに0.05%メチレンブルー配合物を皮内注入し、貼付剤除去後、それぞれ、T=0分、T=9分の画像を示す。皮膚は触ってみると乾いていた。
【0048】
皮膚上の青点はそれぞれ、アレイの18個の中空のミクロ構造のうちの1個に対応する。染料は、9分後に多少にじんで(拡散して)見えたが、青色の染色は、24時間後も本質的に変化なく残り、膨疹は1時間未満で消えた。染料が組織内に実際に染色した、つまり沈殿したのであり、その意味では、注入後の長時間の皮内注入パターンとしての有効な指標では恐らくないと考えられる。
【0049】
注入後に中空のマイクロニードル貼付剤を除去する際に、少量(1〜3μL)の配合物が、皮膚の表面上に通常観察された。この流体をティッシュで軽く拭き取って除去するとき、追加の流体は観察されない。中空のマイクロニードルアレイの寸法のピンク色のしみが、貼付剤を除去する際に通常見られるが、しみは、5分以内にほとんど区別がつかなくなるまで消えてしまう。更にほぼ中空のマイクロニードルアレイの寸法の小さいドームが、ブタの皮膚上に同様に観察された。軽く押すと、ドームはへこんだが、「漏れ」なかった。ドームは、目視による、及び手で触れることによる両方で、貼付した貼付剤を除去して40分以内に消散した。貼付後24時間、及び48時間の貼付部位の観察において、紅斑も浮腫も認められなかった。
【実施例】
【0050】
実施例1.ブタへの大量デキストロースの注入
大量注入が家畜ブタに実証された。ブタに使用した注入システムは、貼付後に中空のマイクロニードルアレイ貼付剤に接続されて、標準医療用具を用いて、配合物の送達を提供する。中空のマイクロニードル貼付用貼付剤は、インライン滅菌済みDTX Plus TNF−R圧変換器(BD Infusion Therapy Systems,Inc,Sandy,UT)を含む、市販の滅菌済みPolyethylene IV Extension Set(Vygon Corporation,Ecouen,France)を経由して、Medfusion 3500シリンジポンプ(Smiths Medical,St.Paul,MN)につながれる。Medfusion 3500ポンプは、病院現場で一般に使用され、あらかじめ設定された安全停止機能有する。圧力数値を、2秒ごとにおよそ1測定の速度で記録した。5%デキストロースUSP注射剤液(Baxter Healthcare,Deerfield,IL)をそのまま注入に使用した。0.001%メチレンブルー溶液を滅菌水で調製して、投与前にろ過した。
【0051】
試験は、IACUC承認の3M動物使用の適用に準拠して取得した、生後およそ6〜18週で、体重がおよそ10〜30kgのメスの家畜ブタに行った。注入中、及び本試験全体を通して、ブタは、イソフルラン(2〜5%)と酸素との混合の麻酔下に維持された。ブタの上臀部を、最初に手術用クリッパー(クリップ刃#50)を使用して剃毛し、次に少量のGillette Foamシェービングクリームを使用して、Schick 3かみそりで剃毛した。剃毛後、部位を水で濯ぎ、軽くたたいて水気を拭き取ってから、イソプロピルアルコール(Phoenix Pharmaceutical,Inc.,St.Joseph,MO)で拭いた。
【0052】
最大1mLの5%デキストロース水溶液、あるいは最大425mcLのナロキソンを、ブタの上臀部に送達した。注入システムに漏れが無いことを確認するために、注入中、背圧が絶えずモニタされた。ブタに用いた典型的な注入速度プロファイルを、下の表IIに収載する。
【0053】
【表2】
【0054】
注入後、中空のマイクロニードルアレイを除去すると、皮膚下に小さい泡状突起が残った。この泡状突起は、40分以内に完全に消えた。貼付剤除去後48時間の観察中に、ブタに部位反応は観察されなかった。
【0055】
デキストロース注入中、及びメチレンブルー注入中に、背圧が連続的にモニタされ記録された。3つの注入に対する測定した最大背圧を、注入状態と共に、表IIIに収載する。
【0056】
【表3】
【0057】
実施例2.ナロキソン注入、及び結果とした生じたPKプロファイル
注入の定量化を改善させるために、中空のマイクロニードルPOCデバイスを使用して、ナロキソンの1mg/mLの市販配合物をブタに注入した。ナロキソンは、μ−オピオイドレセプター競合拮抗薬で、ヘロイン等の薬物の過剰投与を抑制するために主に使用される。ナロキソンは、速く反応させるために通常は静脈内に投与され、経口投与の場合、約2%のみ生体に作用する。ナロキソンは吸収性が良いが、初回通過中にほぼ90%が除去される。文献レビューによると、ナロキソンの半減期は成人の場合30〜81分で、小児の場合はそれより相当長い(およそ3時間)。ナロキソンは代謝産物として尿に排泄される。
【0058】
注入前、及び注入後最大2時間までの特定の時点に、ブタの耳静脈から血液試料が採取された。試料は、血清中のナロキソン濃度を判定するために調製され分析された。比較するために、未処置のブタに、同じナロキソンの市販配合物を皮下注射、又は静脈注射のどちらかを使用して投与した。皮内注入と同様に、ナロキソン濃度を調べるために、血液試料が採取され分析された。
【0059】
中空のマイクロニードル注入後、皮下注射後、及びIV注射後に発生するPKプロファイルを比較するために、3匹の別個の動物を本試験に使用した。ブタは、投与時に体重10〜22kg、生後1.5〜3か月の範囲であった。塩酸ナロキソンの市販配合物(1mg/mL)(International Medication Systems,Ltd,So.El Monte,CA)が注入に使用された。表IVは、中空のマイクロニードルデバイスを用いたナロキソン投与で使用された注入プロファイルを示す。
【0060】
【表4】
【0061】
送達経路ごとの、ナロキソン血中濃度対時間の比較グラフが図4に示される。ブタはまた、皮下注射によってナロキソンを投与された。これらのブタは、中空のマイクロニードルデバイスによってナロキソンを投与されたブタと体重及び年齢が類似していた。これらの結果は、中空のマイクロニードルと皮下注射との比較可能なナロキソンの送達を示す。注入開始後の最大2時間まで採取した血液試料に基づいて、中空のマイクロニードル技術によって投与されたナロキソンの生物学的利用能は、皮下投与からの結果の107+/−35%であると推測される。
【0062】
実施例3.デキストロースを用いたヒトへの注入試験
上述した用具と同じものを使用して、大量、高速注入をヒトで実証した。ヒト臨床試験において、28人の被験者に、4〜6回連続の中空のマイクロニードルによるプラセボ注入が、上腕、及び/又は大腿部に投与された。背圧は、注入全体を通して、連続的にモニタされた。10点の痛みの尺度(図4を参照)を使用して、被験者はそれぞれ、中空のマイクロニードル貼付剤の貼付、及び除去に関連する痛みを評価することを求められた。被験者は、注入中10分ごとに、又は注入が10分未満で終了した場合は注入の終了時に、注入に関連した痛みを評価することも求められた。
【0063】
図5、9、10、及び11は、次の痛みの尺度に基づいて、痛みに伴うデータをプロットする。
【数1】
【0064】
125回の注入が開始されたうち、46回の注入は、750μL以上投与された。試験中、10〜433μL/分の注入速度にわたって、異なる注入速度プロファイルが使用された。被験者が知覚した痛みと注入量との間に統計的有意差はなかった。表Vは、大量の注入を受ける被験者(カテゴリ3、>750μL)に対して、最大注入速度、注入量、及び注入中の最大不快感をカテゴリごとに要約する。
【0065】
【表5】
【0066】
図5〜8は、カテゴリごとに分類された注入パラメータの分布の要約を収載する。図5は、注入の痛み対カテゴリをプロットする。図6は、最大注入圧力対カテゴリをプロットする。図7は、最大注入速度対カテゴリをプロットする。図8は、注入量対カテゴリをプロットする。
【0067】
表VIは、カテゴリ3の注入すべてに対する注入パラメータの要約を収載する。
【0068】
【表6】
【0069】
図9〜11は、カテゴリ3(750〜1000μL)の注入のみに対して注入の痛みと様々な注入パラメータとの関係をプロットする。図9は、注入の痛み対最大注入圧力をプロットする。図10は、注入の痛み対最大注入速度をプロットする。図11は、注入の痛み対注入量をプロットする。
【0070】
本発明に対する様々な予見できない修正及び変更は、本発明の範囲及び趣旨から逸脱することなく当業者に明らかとなるであろうことが理解される。本発明は、本明細書で述べる例示的な実施形態及び実施例によって不当に限定されることを意図するものではないこと、また、こうした実施例及び実施形態は、本明細書において以下に記述する特許請求の範囲によって(be)のみ限定されることを意図する本発明の範囲に関する例示のためにのみ提示されることを理解すべきである。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
最小の痛みで迅速かつ大量に皮内注入する方法であって、
1個のマイクロニードルが隣接するマイクロニードルと平均1.5mm以上の間隔を持ち、100μm超〜1mm未満の長さを有する10〜30個の中空のマイクロニードルのアレイを患者の皮膚に貼り付けることと、
20μL/分超の速度で、前記中空のマイクロニードルを通して200μL超の流体を送り出すことと、を含む方法。
【請求項2】
前記アレイは13〜20個のマイクロニードルを有する、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記中空のマイクロニードルは断面積20〜50平方μmの平均チャネル孔を有する、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記マイクロニードルは500μm〜750μmの長さを有する、請求項1〜3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記マイクロニードルは1平方cm当たり30〜50個のマイクロニードルの間隔の密度を有する、請求項1〜4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
少なくとも750μLの流体が前記マイクロニードルを通して送り出される、請求項1〜5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記流体は、少なくとも400μL/分の速度で前記中空のマイクロニードルを通して送り出される、請求項1〜6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
送り出し中の背圧は25psi(172.4kPa)以下である、請求項1〜7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記送り出し中の背圧は20psi(137.9kPa)で維持される、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記マイクロニードルはそれぞれのマイクロニードルの側壁に設置された出口孔を有する、請求項1〜9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
前記マイクロニードルは真皮に100μm〜400μm貫通する、請求項1〜10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
前記マイクロニードルは互いに平均少なくとも2mmの間隔を空けて配置される、請求項1〜11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項1】
最小の痛みで迅速かつ大量に皮内注入する方法であって、
1個のマイクロニードルが隣接するマイクロニードルと平均1.5mm以上の間隔を持ち、100μm超〜1mm未満の長さを有する10〜30個の中空のマイクロニードルのアレイを患者の皮膚に貼り付けることと、
20μL/分超の速度で、前記中空のマイクロニードルを通して200μL超の流体を送り出すことと、を含む方法。
【請求項2】
前記アレイは13〜20個のマイクロニードルを有する、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記中空のマイクロニードルは断面積20〜50平方μmの平均チャネル孔を有する、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記マイクロニードルは500μm〜750μmの長さを有する、請求項1〜3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記マイクロニードルは1平方cm当たり30〜50個のマイクロニードルの間隔の密度を有する、請求項1〜4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
少なくとも750μLの流体が前記マイクロニードルを通して送り出される、請求項1〜5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記流体は、少なくとも400μL/分の速度で前記中空のマイクロニードルを通して送り出される、請求項1〜6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
送り出し中の背圧は25psi(172.4kPa)以下である、請求項1〜7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記送り出し中の背圧は20psi(137.9kPa)で維持される、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記マイクロニードルはそれぞれのマイクロニードルの側壁に設置された出口孔を有する、請求項1〜9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
前記マイクロニードルは真皮に100μm〜400μm貫通する、請求項1〜10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
前記マイクロニードルは互いに平均少なくとも2mmの間隔を空けて配置される、請求項1〜11のいずれか一項に記載の方法。
【図1A】
【図1B】
【図2A】
【図2B】
【図3A】
【図3B】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図1B】
【図2A】
【図2B】
【図3A】
【図3B】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公表番号】特表2012−509106(P2012−509106A)
【公表日】平成24年4月19日(2012.4.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−536589(P2011−536589)
【出願日】平成21年11月17日(2009.11.17)
【国際出願番号】PCT/US2009/064742
【国際公開番号】WO2010/059605
【国際公開日】平成22年5月27日(2010.5.27)
【出願人】(505005049)スリーエム イノベイティブ プロパティズ カンパニー (2,080)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成24年4月19日(2012.4.19)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年11月17日(2009.11.17)
【国際出願番号】PCT/US2009/064742
【国際公開番号】WO2010/059605
【国際公開日】平成22年5月27日(2010.5.27)
【出願人】(505005049)スリーエム イノベイティブ プロパティズ カンパニー (2,080)
【Fターム(参考)】
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