説明

中空ポリマーエマルジョン組成物

【課題】優れた防腐性及び抗菌性を有し、長期間保存可能な中空ポリマーエマルジョン組成物を提供する。
【解決手段】中空ポリマーエマルジョンと、中空ポリマーエマルジョン100質量部に対して1×10−3〜5×10−2質量部の2−メチル−4−イソチアゾリン−3−オンと、中空ポリマーエマルジョン100質量部に対して2×10−4〜1×10−2質量部の2−n−オクチル−4−イソチアゾリン−3−オンとを含有する中空ポリマーエマルジョン組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は中空ポリマーエマルジョン組成物に関し、更に詳しくは、優れた防腐性を有し、カビの発生を抑制し、更に長期間保存可能な中空ポリマーエマルジョン組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
内部に閉鎖空間を有するポリマー粒子である中空ポリマー粒子は、例えば、その空孔に各種の物質を充填させた有機系マイクロカプセル粒子として、また粒子を空孔化することにより生じる光散乱性を利用した有機系光散乱剤や有機系光散乱助剤等として、紙、繊維、皮革等のコーティング剤、塗料等の分野で従来から広く用いられている。
【0003】
このような中空ポリマー粒子は、多くの場合、水性媒体中に分散された中空ポリマーエマルジョン組成物として用いられている。中空ポリマーエマルジョンは、ポリマー濃度が一般エマルジョンに比べて低く、水性媒体が多いため、細菌、かび等が繁殖することがあった(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2002−30113号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来、中空ポリマーエマルジョンには、1,2−ベンゾイソチアゾリン−3オン、5−クロロ−2−メチル−4−イソチアゾリン−3オン等を防腐剤として添加することが考えられていた。しかし、これらの防腐剤は、比較的短期間で分解し、防腐剤としての効果を長時間維持することができないという問題があった。
【0005】
本発明は、上述の問題に鑑みてなされたものであり、優れた防腐性を有し、カビの発生を抑制し、更に長期間保存可能な中空ポリマーエマルジョンを提供することを特徴とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
[1] (α)中空ポリマーエマルジョンと、前記中空ポリマーエマルジョン100質量部に対して1×10−3〜5×10−2質量部の(β)2−メチル−4−イソチアゾリン−3−オンと、前記中空ポリマーエマルジョン100質量部に対して2×10−4〜1×10−2質量部の(γ)2−n−オクチル−4−イソチアゾリン−3−オンとを含有する中空ポリマーエマルジョン組成物。
【0007】
[2] β成分とγ成分の質量比が、(β成分):(γ成分)=40:1〜1:1である[1]に記載の中空ポリマーエマルジョン組成物。
【0008】
[3] 前記α成分が、不飽和カルボン酸(a−1)及びラジカル重合性モノマー(a−2)からなるモノマー混合物(a)を水性媒体中で乳化重合させて得られたポリマー粒子(A)2〜50質量部の存在下、不飽和カルボン酸(b−1)5〜80質量%及びラジカル重合性モノマー(b−2)20〜95質量%からなるモノマー混合物(b)100質量部を乳化重合させてポリマー粒子(B)を得て、ポリマー粒子(B)3〜100質量部の存在下、不飽和カルボン酸(c−1)0〜20質量%及びラジカル重合性モノマー(c−2)80〜100質量%からなるモノマー混合物(c)100質量部を乳化重合させて、ポリマー粒子(B)の表層にモノマー混合物(c)に由来するポリマーを被覆させたコアシェル状のポリマー粒子(C)が分散するエマルジョンを得て、ポリマー粒子(C)が分散するエマルジョンのpHを揮発性塩基によって7以上に調整してポリマー粒子(C)を中和膨潤させ、中空ポリマー粒子を生成させて得られる中空ポリマーエマルジョンである[1]又は[2]に記載の中空ポリマーエマルジョン組成物。
【発明の効果】
【0009】
本発明の中空ポリマーエマルジョン組成物は、α成分100質量部に対して、β成分を1×10−3〜5×10−2質量部、γ成分を2×10−4〜1×10−2質量部含有するため、β成分の優れた防腐性能と、γ成分の優れた殺菌性能により、優れた防腐性及び抗菌性を有し、長期間保存可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、本発明の実施の形態を具体的に説明するが、本発明は以下の実施の形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、当業者の通常の知識に基づいて、適宜設計の変更、改良等が加えられることが理解されるべきである。
【0011】
(1)中空ポリマーエマルジョン組成物:
本発明の中空ポリマーエマルジョン組成物は、中空ポリマーエマルジョン(α成分)と、中空ポリマーエマルジョン100質量部に対して1×10−3〜5×10−2質量部の2−メチル−4−イソチアゾリン−3−オン(β成分)と、中空ポリマーエマルジョン100質量部に対して2×10−4〜1×10−2質量部の2−n−オクチル−4−イソチアゾリン−3−オン(γ成分)とを含有するものである。そして、中空ポリマーエマルジョンは、水性媒体中に中空ポリマー粒子が分散したエマルジョンであり、本発明の中空ポリマーエマルジョン組成物は、水性媒体中に、中空ポリマー粒子、β成分及びγ成分が分散したものということができる。発明者は、上記のように、中空ポリマーエマルジョンに、2−メチル−4−イソチアゾリン−3−オン(β成分)と、2−n−オクチル−4−イソチアゾリン−3−オン(γ成分)とを含有させることにより、β成分の優れた防腐性能と、γ成分の優れたカビ抑制の性能により、優れた防腐性及びカビ抑制性能を有し、β成分又はγ成分の中の一方を含有した場合と比較して、より長期間保存することが可能となることを見出した。
【0012】
本発明の中空ポリマーエマルジョン組成物は、pHが7.0〜12.0であることが好ましく、7.5〜11.5であることが更に好ましく、8.0〜11.0であることが特に好ましい。pHが7.0未満であると、中空ポリマーエマルジョンの機械的安定性が低下することがあり、12.0超であると、耐水性が低下することがある。
【0013】
(1−1)中空ポリマーエマルジョン(α成分):
α成分は、上記のように、水性媒体中に中空ポリマー粒子が分散したエマルジョンであり、中空ポリマー粒子は、内部に閉鎖空間を有するポリマー粒子である。中空ポリマー粒子を構成するポリマーは、特に限定されないが、不飽和カルボン酸由来の構造単位及びラジカル重合性モノマー由来の構造単位を含む共重合体、及びこれらに由来するコアシェル状ポリマー粒子を中和膨潤させた中空ポリマー粒子等が好ましい。上記不飽和カルボン酸及びラジカル重合性モノマーは、以下に示す「本発明の中空ポリマーエマルジョンの製造方法」において挙げた各モノマーであることが好ましい。中空ポリマー粒子の平均粒子径は、0.2〜5.5μmであることが好ましく、0.3〜5.0μmであることが更に好ましい。このような範囲とすることにより、不透明性が良好となる。平均細孔径は、日立透過型電子顕微鏡H−7650を使用して測定した値である。また、中空ポリマー粒子の容積気孔率は、5〜85体積%であることが好ましく、10〜70体積%であることが更に好ましい。容積気孔率をこのような範囲とすることにより、不透明性が更に良好になるという利点がある。容積気孔率は、日立透過型電子顕微鏡H−7650を使用して、中空ポリマー粒子の気孔径及び外径を測定して、これらの測定値から気孔及び粒子の体積を求め気孔体積を外径粒子体積で除した値である。
【0014】
また、α成分の固形分は、15〜35質量%であることが好ましく、20〜30質量%であることが更に好ましい。15質量%より低いと塗料等に用いたときに中空ポリマー粒子の濃度が足りなくなることがあり、35質量%より高いと流動性が低下することがある。固形分は、赤外線乾燥機を使用して中空ポリマーエマルジョンの水分を蒸発・乾固させる方法により測定した値である。
【0015】
また、α成分には、製造過程で添加される界面活性剤等を含有してもよい。含有される界面活性剤としては、以下に示す「本発明の中空ポリマーエマルジョン組成物の製造方法」において挙げた界面活性剤であることが好ましい。
【0016】
中空ポリマーエマルジョン(α成分)は、以下に示す「本発明の中空ポリマーエマルジョン組成物の製造方法」における「中空ポリマーエマルジョン(α成分)の製造方法」によって得られた中空ポリマーエマルジョンであることが好ましい。すなわち、中空ポリマーエマルジョン(α成分)は、不飽和カルボン酸(a−1)及びラジカル重合性モノマー(a−2)からなるモノマー混合物(a)を水性媒体中で乳化重合させて得られたポリマー粒子(A)2〜50質量部の存在下、不飽和カルボン酸(b−1)5〜80質量%及びラジカル重合性モノマー(b−2)20〜95質量%からなるモノマー混合物(b)100質量部を乳化重合させてポリマー粒子(B)を得て、ポリマー粒子(B)3〜100質量部の存在下、不飽和カルボン酸(c−1)0〜20質量%及びラジカル重合性モノマー(c−2)80〜100質量%からなるモノマー混合物(c)100質量%を乳化重合させて、ポリマー粒子(B)の表層にモノマー混合物(c)に由来するポリマーを被覆させたコアシェル状のポリマー粒子(C)が分散するエマルジョンを得て、ポリマー粒子(C)が分散するエマルジョンのpHを揮発性塩基によって7以上に調整してポリマー粒子(C)を中和膨潤させ、中空ポリマー粒子を生成させて得られる中空ポリマーエマルジョンであることが好ましい。
【0017】
(1−2)2−メチル−4−イソチアゾリン−3−オン(β成分):
β成分は、α成分100質量部に対して、1×10−3〜5×10−2質量部含有され、5×10−3〜4×10−2質量部含有されることが好ましく、1×10−2〜3×10−2質量部含有されることが更に好ましい。β成分の含有量をこのような範囲とすることにより、長期間に亘って防腐性能を発揮し、長期保存安定性に優れた中空ポリマーエマルジョン組成物となる。β成分が、1×10−3質量部未満であると防腐性能を十分に発揮せず、且つ短期間でその効果が失われる。5×10−2質量部を超えると、中空ポリマーエマルジョンが発泡しやすくなり、作業性が低下するおそれがある。
【0018】
(1−3)2−n−オクチル−4−イソチアゾリン−3−オン(γ成分):
γ成分は、α成分100質量部に対して、2×10−4〜1×10−2質量部含有され、3×10−4〜8×10−3質量部含有されることが好ましく、4×10−4〜7×10−3質量部含有されることが更に好ましい。γ成分の含有量をこのような範囲とすることにより、長期間に亘って殺菌性を発揮し、長期保存安定性に優れた中空ポリマーエマルジョン組成物となる。γ成分が、2×10−4質量部未満であると、殺菌性能を十分に発揮できず、且つ短期間でその効果が失われる。1×10−2質量部を超えると、例えば紙塗工用に使用した場合に、できた塗工紙の印刷光沢が低下する。
【0019】
中空ポリマーエマルジョン組成物中、β成分とγ成分の質量比が、(β成分):(γ成分)=40:1〜1:1であることが好ましく、20:1〜3:1が更に好ましく、15:1〜6:1が特に好ましい。β成分とγ成分の質量比をこのような範囲とすることにより、長期貯蔵中の防腐性と防カビ性の両方の効果を得ることができる。β成分がγ成分の40倍(質量基準)より多く含有されると、防カビ性が劣ることがあり、β成分がγ成分より少なく(質量基準)含有されると、防腐効果が低下することがある。
【0020】
(1−4)その他の成分:
本発明の中空ポリマーエマルジョン組成物は、α成分、β成分及びγ成分以外の、その他の成分として、ポリエチレングリコール、ジプロピレングリコール、ポリアクリル酸ナトリウム、ポリアクリルアミド、トリポリ燐酸ナトリウム等を含有してもよい。
【0021】
(2)中空ポリマーエマルジョン組成物の製造方法:
本発明の中空ポリマーエマルジョン組成物は、中空ポリマーエマルジョン(α成分)を製造し、得られたα成分に、2−メチル−4−イソチアゾリン−3−オン(β成分)、2−n−オクチル−4−イソチアゾリン−3−オン(γ成分)、及び必要に応じて「その他の成分」を添加して撹拌混合することにより得ることができる。β成分とγ成分とは、予め混合したものをα成分に添加してもよい。
【0022】
(2−1)中空ポリマーエマルジョン(α成分)の製造方法:
中空ポリマーエマルジョン(α成分)は、不飽和カルボン酸(a−1)及びラジカル重合性モノマー(a−2)からなるモノマー混合物(a)を水性媒体中で乳化重合させて得られたポリマー粒子(A)2〜50質量部の存在下、不飽和カルボン酸(b−1)5〜80質量%及びラジカル重合性モノマー(b−2)20〜95質量%からなるモノマー混合物(b)100質量部を乳化重合させてポリマー粒子(B)を得て、ポリマー粒子(B)3〜100質量部の存在下、不飽和カルボン酸(c−1)0〜20質量%及びラジカル重合性モノマー(c−2)80〜100質量%からなるモノマー混合物(c)100質量部を乳化重合させて、ポリマー粒子(B)の表層にモノマー混合物(c)に由来するポリマーを被覆させたコアシェル状のポリマー粒子(C)が分散するエマルジョンを得て、ポリマー粒子(C)が分散するエマルジョンのpHを揮発性塩基によって7以上に調整してポリマー粒子(C)を中和膨潤させ、中空ポリマー粒子を生成させて得ることができる。
【0023】
ポリマー粒子(A)の調製;
まず、不飽和カルボン酸(a−1)(以下、「モノマー(a−1)」ということがある)及びラジカル重合性モノマー(a−2)(以下、「モノマー(a−2)」ということがある)からなるモノマー混合物(a)を水性媒体中で乳化重合させることによってポリマー粒子(A)を調製する。
【0024】
モノマー(a−1)としては、例えば、(メタ)アクリル酸、クロトン酸、マレイン酸、フマール酸、イタコン酸等のモノ又はジカルボン酸、前記ジカルボン酸の酸無水物、モノアルキルエステル、モノアミド類等を挙げることができる。中でも、粒子の安定性の観点から、(メタ)アクリル酸及びイタコン酸が好ましい。これらは、1種単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0025】
モノマー(a−2)としては、例えば、不飽和カルボン酸エステル;スチレン、α−メチルスチレン等の芳香族モノマー;(メタ)アクリロニトリル;酢酸ビニル;ブタジエン;イソプレン等を挙げることができる。中でも、不飽和カルボン酸エステルが好ましく、特に、モノマー(a−2)総量の50質量%以上が、不飽和カルボン酸エステルであることが好ましい。不飽和カルボン酸エステルが、50質量%未満であると、後述する揮発性塩基による膨潤作用が低下し、空孔の形成が不十分となり、また、空孔が形成された場合でも、空孔に芯粒子が残存してしまうことがある。
【0026】
モノマー混合物(a)におけるモノマー(a−1)及びモノマー(a−2)の配合量は、モノマー(a−1)が2〜30質量%であり、モノマー(a−2)が70〜98質量%であることが好ましく、モノマー(a−1)が3〜25質量%であり、モノマー(a−2)が75〜97質量%であることがさらに好ましく、モノマー(a−1)が5〜20質量%であり、モノマー(a−2)が80〜95質量%であることが特に好ましい。モノマー(a−1)の割合が、2質量%未満であると、重合安定性が悪くなることがあり、また、後述する揮発性塩基による膨潤作用が低下し、空孔に芯粒子が残存し、空孔の割合が少なくなることがある。また、中空ポリマーエマルジョン組成物を塗料に添加して使用したときに、塗膜の、隠蔽性、白色度、光沢等の特性が不十分なものとなることがある。モノマー(a−1)の割合が、30質量%を超えると、中空ポリマー粒子を安定性よく得られないことがあり、また、中空ポリマー粒子の形状がいびつとなることがある。また、中空ポリマーエマルジョン組成物を塗料に添加して使用したときに、塗膜の耐水性、耐アルカリ性が不十分なものとなることがある。
【0027】
上記モノマー混合物(a)を水性媒体中で乳化重合させる方法については、特に制限はなく、例えば、モノマーを一括添加して重合してもよく、また、連続的に添加して重合してもよい。均一な粒径の粒子を安定性よく得るためには後者が好ましい。乳化剤としては、例えば、アニオン性界面活性剤、非イオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤、両性界面活性剤、有機懸濁保護剤等を挙げることができ、中でも、粒子の安定性の点でアニオン性界面活性剤、非イオン性界面活性剤、有機懸濁保護剤が好ましい。これらの乳化剤は、1種単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0028】
アニオン性界面活性剤としては、例えば、ロジン酸カリウム、ロジン酸ナトリウム等のロジン酸塩;オレイン酸カリウム、ラウリン酸カリウム、ラウリン酸ナトリウム、ステアリン酸ナトリウム、ステアリン酸カリウム等の脂肪酸のナトリウム塩又は、カリウム塩;ラウリル硫酸ナトリウム等の脂肪族アルコールの硫酸エステル塩、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム等のアルキルアリルスルホン酸等を挙げることができる。
【0029】
非イオン性界面活性剤としては、例えば、ポリエチレングリコールのアルキルエステル、アルキルエーテル、アルキルフェニルエーテル等を挙げることができる。
【0030】
有機懸濁保護剤としては、例えば、ポリアクリル酸、ポリメタクリル酸、ポリビニルスルホン酸、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ポリエチレングリコール等の親水性合成高分子物質;ゼラチン、水溶性でんぷん等の天然親水性高分子物質;カルボキシメチルセルロース等の親水性半合成高分子物質等を挙げることができる。
【0031】
重合開始剤としては、例えば、クメンハイドロパーオキサイド、ジイソプロピルベンゼンハイドロパーオキサイド、パラメンタンハイドロパーオキサイド等で代表される有機ハイドロパーオキサイド類と含糖ピロリン酸処方、スルホキシレート処方、含糖ピロリン酸処方/スルホキシレート処方の混合系処方等で代表される還元剤との組合せによるレドックス系の開始剤、過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウム等の過硫酸塩、アゾビスイソブチロニトリル、ベンゾイルパーオキサイド、ラウロイルパーオキサイド等を挙げることができ、中でも、粒子の安定性及び粒径の均一性の点で過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウム等の過硫酸塩、アゾビスイソブチロニトリル、ベンゾイルパーオキサイドが好ましい。また、必要に応じて還元剤を組み合せて用いることもできる。
【0032】
重合温度は、5〜95℃であることが好ましく、50〜90℃であることが更に好ましい。5℃未満であると、不飽和カルボン酸の反応性が低く、粒子が不安定になることがあり、95℃を超えると、粒子が不安定になることがある。
【0033】
ポリマー粒子(B)の調製;
本発明においては、ポリマー粒子(A)を調製した後に、ポリマー粒子(A)2〜50質量部の存在下に、不飽和カルボン酸(b−1)(以下、「モノマー(b−1)」ということがある)5〜80質量%及びラジカル重合性モノマー(b−2)(以下、「モノマー(b−2)」ということがある)20〜95質量%からなるモノマー混合物(b)100質量部を乳化重合させてポリマー粒子(B)を調製する。
【0034】
モノマー(b−1)としては、前述したモノマー(a−1)の例として示した不飽和カルボン酸と同じもの用いることができる。中でも、粒子の安定性の観点から(メタ)アクリル酸、イタコン酸等が好ましく、中でも、メタクリル酸がさらに好ましい。
【0035】
モノマー(b−2)としては、前述したモノマー(a−2)の例として示したラジカル重合性モノマーと同じものを用いることができる。中でも、不飽和カルボン酸エステルが好ましく、特に、モノマー(b−2)の50質量%以上が、不飽和カルボン酸エステルであることが好ましい。また、ジビニルベンゼン、エチレングリコールジメタクリレート等の架橋性モノマーを用いることができ、その好ましい配合量は、モノマー(b−2)の合計の0〜2質量%である。不飽和カルボン酸エステルが、モノマー(b−2)の50質量%未満であると、コアシェル状のポリマー粒子(C)を得る際に、シェルの被覆が不十分となることがあるため、中和膨潤処理時に中空ポリマー粒子にならず、破裂し易くなることがある。
【0036】
また、本発明におけるモノマー(b−2)は、それに由来するポリマーの溶解度パラメーターと、ラジカル重合性モノマー(a−2)に由来するポリマーの溶解度パラメーターとの差が2以下であることが好ましく、1以下であることが更に好ましく、0.5以下であることが特に好ましい。溶解度パラメーターの差が2を超えると、ポリマー粒子(B)の調製時、ポリマー粒子(A)と、モノマー混合物(b)の重合によって生成するポリマーとが層分離してしまうため、ポリマー粒子(C)の調製時、モノマー混合物(c)の重合によって生成するポリマーが偏在化して不完全なコアシェル状粒子となってしまう。この結果、揮発性塩基によるpH7以上への調整及び加熱処理の際にポリマー粒子(B)が溶出して所望の空孔を形成することができず、また、増粘が著しく、安定して粒子を得ることができない。
【0037】
モノマー混合物(b)におけるモノマー(b−1)及びモノマー(b−2)の配合量は、モノマー(b−1)が5〜80質量%、モノマー(b−2)が20〜95質量%であり、モノマー(b−1)が10〜70質量%、モノマー(b−2)30〜90質量%であることが好ましく、モノマー(b−1)が20〜60質量%、モノマー(a−2)が40〜80質量%であることが更に好ましい。モノマー(b−1)の割合が、5質量%未満であると、後述する揮発性塩基による膨潤作用が低下し、空孔の形成が不十分となり、モノマー(b−1)の割合が、80質量%を超えると、重合安定性が極めて悪く、コアシェル状のポリマー粒子(C)を得る際に、シェルの被覆が不十分となるため、中和膨潤処理時に中空粒子にならず、破裂し易くなり、塗膜としたときに、隠蔽性、耐水性等の特性が不十分なものとなる。
【0038】
ポリマー粒子(B)は、ポリマー粒子(A)2〜50質量部、好ましくは6〜18質量部の存在下、モノマー混合物(b)100質量部を乳化重合させて調製される。ポリマー粒子(A)の存在量が、モノマー混合物(b)100質量部に対して2質量部未満であると、後述するポリマー粒子(C)の重合安定性が著しく悪くなり、粒径の均一性に劣るものとなる。ポリマー粒子(A)の存在量が、50質量部を超えると、後述するポリマー粒子(C)の重合安定性が著しく悪くなり、また、中和膨潤処理時に空孔率の低い中空粒子となる。
【0039】
モノマー混合物(b)を乳化重合する方法としては特に制限はなく、上記「ポリマー粒子(A)の調製」で示した乳化重合の例と同じ方法を用いることができる。
【0040】
以上により得られるポリマー粒子(B)は、コア粒子となるものであり、ポリマー粒子(B)の粒子径は、0.1〜2μmであることが好ましく、0.2〜1μmであることが更に好ましい。
【0041】
ポリマー粒子(B)の調製は、1段の重合で行ってもよく、2段以上の多段階の重合で行ってもよい。
【0042】
ポリマー粒子(C)が分散するエマルジョンの調製;
ポリマー粒子(B)を調製した後に、ポリマー粒子(B)3〜100質量部の存在下で、不飽和カルボン酸(c−1)(以下、「モノマー(c−1)」ということがある)0〜20質量%及びラジカル重合性モノマー(c−2)(以下、「モノマー(c−2)」ということがある)80〜100質量%からなるモノマー混合物(c)100質量部を乳化重合させて、ポリマー粒子(B)の表層にモノマー混合物(c)に由来するポリマーを被覆させたコアシェル状のポリマー粒子(C)を生成させ、ポリマー粒子(C)が分散するエマルジョンを調製する。
【0043】
モノマー(c−1)としては、前述したモノマー(a−1)の例として示した不飽和カルボン酸と同じものを用いることができ、中でも、粒子の安定性の観点から、(メタ)アクリル酸及びイタコン酸が好ましい。
【0044】
モノマー(c−2)としては、例えば、スチレン等のモノエチレン性芳香族化合物、不飽和カルボン酸エステル、(メタ)アクリロニトリル、酢酸ビニル、ブタジエン等を挙げることができる。中でも、スチレン等のモノエチレン性芳香族化合物が好ましく、特に、モノマー(c−2)総量の50質量%以上が、スチレン等のモノエチレン性芳香族化合物であることが好ましい。モノエチレン性芳香族化合物が、50質量%未満であると、ポリマーの屈折率が低下し、白色度、不透明度、光沢が不十分になることがある。
【0045】
モノマー混合物(c)におけるモノマー(c−1)及びモノマー(c−2)の配合量は、モノマー(c−1)が0〜20質量%、モノマー(c−2)が80〜100質量%であり、モノマー(c−1)が0.1〜10質量%、モノマー(c−2)が90〜99.9質量%であることが好ましく、モノマー(c−1)が0.2〜5質量%、モノマー(c−2)が95〜99.8質量%であることが更に好ましい。モノマー(c−1)の割合が、20質量%を超えると、重合安定性が著しく悪くなり、また、揮発性塩基処理及び加熱処理後のポリマー粒子が、変形して空孔率が低下する。
【0046】
前述のように、ポリマー粒子(B)3〜100質量部、好ましくは5〜50質量部、さらに好ましくは8〜30質量部の存在下、モノマー混合物(c)100質量部を乳化重合させて、ポリマー粒子(B)の表層にモノマー混合物(c)に由来するポリマーを被覆させたコアシェル状のポリマー粒子(C)を調製する。ポリマー粒子(B)が、3質量部未満であると、最終目的物である中空ポリマー粒子(D)の空孔形成が不十分となり、塗膜としたときに隠蔽性、白色度、光沢等の特性が劣ったものとなる。ポリマー粒子(B)が、100質量部を超えると、重合安定性が悪くなり、また、揮発性塩基処理及び加熱処理後のポリマー粒子が、変形してつぶれてしまい、空孔率が低下する。
【0047】
モノマー混合物(c)を乳化重合する方法としては特に制限はなく、上記「ポリマー粒子(A)の調製」で示した乳化重合の例と同じ方法を用いることができる。この場合、シェルの構造を完全にするためには、はじめに、モノマー(c−2)のみで重合を行い、モノマー混合物(c)総量の25質量%程度の重合が終了した後に、モノマー(c−1)を共用して重合させることが好ましい。また、白色度、不透明度、光沢の向上の観点からは、シェルポリマーのガラス転移温度(Tg)は50℃以上であることが好ましく、また、モノマー混合物(c)を2段階以上に分けて重合を行う場合には、モノマー混合物(c)を構成するモノマーのうち、そのモノマーに由来するポリマーのガラス転移温度(Tg)が50℃以上のものを先に重合させ、次いで、そのモノマーに由来するポリマーのガラス転移温度(Tg)が50℃未満のものを重合させることが好ましい。
【0048】
以上により得られるエマルジョンに含有されるポリマー粒子(C)は、ガラス転移温度(Tg)が50℃以上であるものが、白色度、不透明度、光沢の向上の点から好ましい。また、ポリマー粒子(C)の粒子径は、0.15〜3μmであることが好ましく、0.25〜2μmであることが更に好ましい。
【0049】
中空ポリマーエマルジョンの調製;
次に、得られたコアシェル状のポリマー粒子(C)が分散するエマルジョンのpHをアンモニア、アミン等の揮発性塩基によって7以上に調整し、また、必要に応じて加熱することによって、ポリマー粒子(C)を中和膨潤させ中空ポリマー粒子(D)を生成させて中空ポリマーエマルジョンを調製する。
【0050】
モノマー混合物(c)に由来するポリマーは、揮発性塩基が浸透し得るため、上記処理によって、ポリマー粒子(B)成分が中和され、これに伴い、ポリマー粒子(B)成分が著しく吸水して、コアシェル状のポリマー粒子(C)は、内部に空孔を有する中空ポリマー粒子(D)となる。生成した粒子(D)は、水に分散している状態(中空ポリマーエマルジョン)では、粒子内部の空孔に水を含有している。従って、本発明の中空ポリマーエマルジョン組成物の使用時に、この含水粒子を乾燥させることによって、分散媒である水が揮発するとともに粒子内部の水も揮発して中空となる。なお、紙塗工用組成物や、コーティング組成物等の、水性媒体を主体とする塗料等の用途に用いる場合には、内部に水性媒体を含有するポリマー粒子(含水粒子)の状態のまま用いることができる。この場合、含水粒子は、塗料等の乾燥時に水が揮発して中空となる。
【0051】
ポリマー粒子(C)を中和膨潤させる際の中空ポリマーエマルジョンの温度は、「ポリマー粒子(C)のガラス転移温度(Tg)より50℃低い温度(Tg−50℃)、又はそれ以上とするのが好ましい。「Tg−50℃」未満であると中和膨潤が不十分となり、空孔率が低くなることがある。
【0052】
(2−2)各成分の混合:
得られた中空ポリマーエマルジョン(α成分)に、2−メチル−4−イソチアゾリン−3−オン(β成分)及び2−n−オクチル−4−イソチアゾリン−3−オン(γ成分)を添加して、本発明の中空ポリマーエマルジョン組成物を得る。α成分、β成分及びγ成分の配合比は、上述した本発明の中空ポリマーエマルジョン組成物におけるこれらの配合比と同様にすることが好ましい。
【0053】
また、α成分、β成分及びγ成分以外に、上述した本発明の中空ポリマーエマルジョン組成物における、「その他の成分」を添加することができる。「その他の成分」の配合比は、上述した本発明の中空ポリマーエマルジョン組成物における「その他の成分」の配合比と同様にすることが好ましい。
【0054】
α成分、β成分、γ成分及びその他の成分の混合方法は、特に限定されず、通常の攪拌・混合機等により混合することができる。
【実施例】
【0055】
以下、実施例を挙げて、本発明の実施の形態をさらに具体的に説明する。但し、本発明は、これらの実施例に何ら制約されるものではない。
【0056】
(1)殺菌性評価方法:
得られた中空ポリマーエマルジョン組成物について、添加後のcomamonas acidovorans(菌)の菌数が10個/mlとなるように、腐敗した中空ポリマーエマルジョン組成物を添加し、48時間後の、中空ポリマーエマルジョン組成物中の菌数を測定して殺菌性の評価を行う。評価基準は、菌数が10個/ml未満である場合を「○」とし、菌数が10〜10個/mlである場合を「△」とし、菌数が10/ml超である場合を「×」とする。なお、菌数の測定は、市販の「イージーカルトTTC」(Orion Diagnostica社製:フィンランド)を用い、28℃で48時間恒温器内で培養した後、コロニー数を観察して行う。
【0057】
(2)虐待試験方法:
得られた中空ポリマーエマルジョン組成物100gに、comamonas acidovorans(菌)の菌数10ヶ/mlの中空ポリマーエマルジョン(防腐剤未添加のもの)20gを1週間間隔で繰り返して添加し、中空ポリマーエマルジョンを添加する毎に、添加後48時間における共重合体ラテックス組成物中の菌数を測定して虐待試験の評価を行う。評価基準は、繰り返し添加5回(5週間経過後)の菌数が10個/ml以下である場合を「○」とし、繰り返し添加2〜4回(2〜4週間経過後)の菌数が10個/ml以下である場合を「△」(5回添加では、菌数が10個/mlを超える場合)とし、1回(1週間経過後)の菌数が10個/ml以上である場合を「×」とする。なお、菌数の測定は、上記「(1)殺菌性評価方法」と同様にして行う。
【0058】
(実施例1)
ポリマー粒子(A)の調製:
撹拌装置および温度調節器を備えた容量2リットルの耐圧反応容器に、水109.5部、乳化剤としてドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム0.2部、分子量調節剤としてオクチルグリコール0.5部及び重合開始剤として過硫酸ナトリウム0.5部を投入した。次にメタクリル酸10部とメタクリル酸メチル90部とを混合したモノマー混合物の20%を耐圧反応容器に投入した。その後、撹拌しながら温度75℃まで昇温し、75℃到達後1時間、重合反応を行い、その後、温度を75℃に保ちながら残りのモノマー混合物を連続的に2時間かけて耐圧反応容器に添加した。その後、さらに2時間熟成を行い、固形分40%、粒子径200nmのポリマー粒子(A)の水性分散体を得た。固形分の質量は、赤外線乾燥機を使用して中空ポリマーエマルジョンの水分を蒸発・乾固させる方法で測定し、乾固後の質量を固形分の質量とした。粒子径は大塚電子社製の農厚系粒径アナライザー(FPAR−1000)を使用し、定法によって測定した。
【0059】
ポリマー粒子(B)の調製:
撹拌装置および温度調節器を備えた容量2リットルの耐圧反応容器に、水186部を投入し、これにポリマー粒子(A)を固形分で10部、重合開始剤として過硫酸ナトリウム0.5部を投入し撹拌しながら温度80℃まで昇温した。次に、メタクリル酸30部、メタクリル酸メチル69.5部及びジビニルベンゼン0.5部を混合したモノマー混合物を耐圧反応容器に、温度80℃を保持し、撹拌しながら連続的に3時間かけて投入した。その後、さらに2時間熟成を行い、固形分31%、粒子径400nmのポリマー粒子(B)の水性分散体を得た。
【0060】
ポリマー粒子(C)の調製:
撹拌装置および温度調節器を備えた容量2リットルの耐圧反応容器に、水240部を投入し、これにポリマー粒子(B)を固形分で15部、重合開始剤として過硫酸ナトリウム0.4部を投入し、撹拌しながら温度80℃まで昇温した。次に、スチレン99部及びアクリル酸1部を混合したモノマー混合物を、撹拌しながら耐圧反応容器に連続的に4時間かけて投入した。モノマー混合物を投入する間、耐圧反応容器の温度は80℃に保持した。この際、モノマー混合物を投入開始後2時間経過時に、アクリル酸を1部投入した。そして、モノマー混合物の連続投入終了後、80℃に保持した耐圧反応容器内に水酸化アンモニウムを1.35部投入して3時間熟成を行い、固形分25%、粒子径1,000nm、粒子内径800nmである中空ポリマーエマルジョンを得た。中空ポリマーエマルジョンのPHは10であった。粒子内径は、日立透過型電子顕微鏡H−7650を使用して測定した。
【0061】
中空ポリマーエマルジョン組成物の調製:
得られた中空ポリマーエマルジョン1部に対して、防腐剤として、2−メチル−4−イソチアゾリン−3−オン(MIT)400×10−6部と、2−n−オクチル−4−イソチアゾリン−3−オン(OIT)10×10−6部とを添加し、撹拌して、中空ポリマーエマルジョン組成物を得た。得られた中空ポリマーエマルジョン組成物について、上記殺菌性評価及び虐待試験を行った。結果を表1に示す。
【0062】
【表1】

【0063】
(実施例2)
「中空ポリマーエマルジョン組成物の調製」において、中空ポリマーエマルジョン1部に対して、防腐剤として、2−メチル−4−イソチアゾリン−3−オン(MIT)200×10−6部(活性成分濃度換算)と、2−n−オクチル−4−イソチアゾリン−3−オン(OIT)10×10−6部(活性成分濃度換算)とを添加した以外は、実施例1と同様にして、中空ポリマーエマルジョン組成物を得た。得られた中空ポリマーエマルジョン組成物について、上記殺菌性評価及び虐待試験を行った。結果を表1に示す。
【0064】
(実施例3)
「中空ポリマーエマルジョン組成物の調製」において、中空ポリマーエマルジョン1部に対して、防腐剤として、2−メチル−4−イソチアゾリン−3−オン(MIT)100×10−6部(活性成分濃度換算)と、2−n−オクチル−4−イソチアゾリン−3−オン(OIT)20×10−6部(活性成分濃度換算)とを添加した以外は、実施例1と同様にして、中空ポリマーエマルジョン組成物を得た。得られた中空ポリマーエマルジョン組成物について、上記殺菌性評価及び虐待試験を行った。結果を表1に示す。
【0065】
(実施例4)
「中空ポリマーエマルジョン組成物の調製」において、中空ポリマーエマルジョン1部に対して、防腐剤として、2−メチル−4−イソチアゾリン−3−オン(MIT)50×10−6部(活性成分濃度換算)と、2−n−オクチル−4−イソチアゾリン−3−オン(OIT)3×10−6部(活性成分濃度換算)とを添加した以外は、実施例1と同様にして、中空ポリマーエマルジョン組成物を得た。得られた中空ポリマーエマルジョン組成物について、上記殺菌性評価及び虐待試験を行った。結果を表1に示す。
【0066】
(比較例1)
「中空ポリマーエマルジョン組成物の調製」において、中空ポリマーエマルジョン1部に対して、防腐剤として、2−メチル−4−イソチアゾリン−3−オン(MIT)8×10−6部(活性成分濃度換算)と、2−n−オクチル−4−イソチアゾリン−3−オン(OIT)1×10−6部(活性成分濃度換算)とを添加した以外は、実施例1と同様にして、中空ポリマーエマルジョン組成物を得た。得られた中空ポリマーエマルジョン組成物について、上記殺菌性評価及び虐待試験を行った。結果を表1に示す。
【0067】
(比較例2)
「中空ポリマーエマルジョン組成物の調製」において、中空ポリマーエマルジョン1部に対して、防腐剤として、2−メチル−4−イソチアゾリン−3−オン(MIT)100×10−6部(活性成分濃度換算)を添加した以外は、実施例1と同様にして、中空ポリマーエマルジョン組成物を得た。得られた中空ポリマーエマルジョン組成物について、上記殺菌性評価及び虐待試験を行った。結果を表1に示す。
【0068】
(比較例3)
「中空ポリマーエマルジョン組成物の調製」において、中空ポリマーエマルジョン1部に対して、防腐剤として、2−n−オクチル−4−イソチアゾリン−3−オン(OIT)10×10−6部(活性成分濃度換算)を添加した以外は、実施例1と同様にして、中空ポリマーエマルジョン組成物を得た。得られた中空ポリマーエマルジョン組成物について、上記殺菌性評価及び虐待試験を行った。結果を表1に示す。
【0069】
(比較例4)
「中空ポリマーエマルジョン組成物の調製」において、中空ポリマーエマルジョン1部に対して、防腐剤として、1,2−ベンゾイソチアゾリン−3−オン(BIT)100×10−6部(活性成分濃度換算)を添加した以外は、実施例1と同様にして、中空ポリマーエマルジョン組成物を得た。得られた中空ポリマーエマルジョン組成物について、上記殺菌性評価及び虐待試験を行った。結果を表1に示す。
【0070】
表1に示すように、実施例1〜4の中空ポリマーエマルジョン組成物は、いずれも殺菌性評価及び虐待試験において良好な結果が得られていることがわかる。比較例1の中空ポリマーエマルジョン組成物は、MIT及びOITの添加量が少ないため、殺菌性評価及び虐待試験において菌を十分に減らすことができなかったことがわかる。比較例2の中空ポリマーエマルジョン組成物は、MITだけを添加しているため、虐待試験において菌を十分に減らすことができなかったことがわかる。比較例3の中空ポリマーエマルジョン組成物は、OITだけを添加しているため、殺菌性評価及び虐待試験において菌を十分に減らすことができなかったことがわかる。比較例4の中空ポリマーエマルジョン組成物は、BITだけを添加しているため、虐待試験において菌を十分に減らすことができなかったことがわかる。
【産業上の利用可能性】
【0071】
有機系光散乱剤や有機系光散乱助剤等として、紙、繊維、皮革等のコーティング剤、塗料等の分野において利用することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
中空ポリマーエマルジョンと、前記中空ポリマーエマルジョン100質量部に対して1×10−3〜5×10−2質量部の2−メチル−4−イソチアゾリン−3−オンと、前記中空ポリマーエマルジョン100質量部に対して2×10−4〜1×10−2質量部の2−n−オクチル−4−イソチアゾリン−3−オンとを含有する中空ポリマーエマルジョン組成物。
【請求項2】
2−メチル−4−イソチアゾリン−3−オンと2−n−オクチル−4−イソチアゾリン−3−オンとの質量比が、(2−メチル−4−イソチアゾリン−3−オン):(2−n−オクチル−4−イソチアゾリン−3−オン)=40:1〜1:1である請求項1に記載の中空ポリマーエマルジョン組成物。
【請求項3】
前記中空ポリマーエマルジョンが、
不飽和カルボン酸(a−1)及びラジカル重合性モノマー(a−2)からなるモノマー混合物(a)を水性媒体中で乳化重合させて得られたポリマー粒子(A)2〜50質量部の存在下、不飽和カルボン酸(b−1)5〜80質量%及びラジカル重合性モノマー(b−2)20〜95質量%からなるモノマー混合物(b)100質量部を乳化重合させてポリマー粒子(B)を得て、
ポリマー粒子(B)3〜100質量部の存在下、不飽和カルボン酸(c−1)0〜20質量%及びラジカル重合性モノマー(c−2)80〜100質量%からなるモノマー混合物(c)100質量部を乳化重合させて、ポリマー粒子(B)の表層にモノマー混合物(c)に由来するポリマーを被覆させたコアシェル状のポリマー粒子(C)が分散するエマルジョンを得て、
ポリマー粒子(C)が分散するエマルジョンのpHを揮発性塩基によって7以上に調整してポリマー粒子(C)を中和膨潤させ、中空ポリマー粒子を生成させて得られる中空ポリマーエマルジョンである請求項1又は2に記載の中空ポリマーエマルジョン組成物。

【公開番号】特開2009−120784(P2009−120784A)
【公開日】平成21年6月4日(2009.6.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−299087(P2007−299087)
【出願日】平成19年11月19日(2007.11.19)
【出願人】(000004178)JSR株式会社 (3,320)
【Fターム(参考)】