説明

中空孔付き蛇篭及び蛇篭連結体

【課題】金網製の篭本体の内部に栗石を充填して形成される蛇篭を、現場に設置した際の蛇篭同士の連結を簡単且つ迅速に行うことができるように構成する。
【解決手段】金網からなる篭本体2の内部に栗石3が充填されると共に、中空部材5が前記篭本体2を横切る状態に配設されることにより、該中空部材5の内部に、蛇篭同士を連結する線状あるいは棒状の連結部材16を挿通するための中空孔4が、前記篭本体2の内部を一端から他端まで一続きに貫通するように形成される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、金網からなる篭本体の内部に栗石を充填することにより形成される蛇篭に関するものであり、更に詳しくは、並べて設置した際の相互連結が容易な中空孔付き蛇篭に関するものである。
【背景技術】
【0002】
例えば、特許文献1に開示されているように、海岸、河岸、湖岸等の岸辺に護岸壁を構築したり、傾斜地の法面に補強壁を構築したりする場合に、蛇篭が使用される。この蛇篭は、菱形金網等の金網によって四角い容器形や円筒形などに形成された篭本体の内部に栗石を充填したもので、複数の蛇篭を岸辺や法面に沿って縦又は横に並べたり、縦及び横の両方向に並べたりすることにより、前記護岸壁や補強壁等の擁壁が構築される。その際、蛇篭の位置ずれを防止して前記擁壁の強度を高めるため、隣接する蛇篭同士を適宜の連結金具で互いに連結している。
【0003】
前記蛇篭同士の連結は、一般に、隣接する蛇篭の稜部に取り付けられている枠線同士を針金で結束するか、針金をコイル状に折曲して形成したスクリューストッパを巻き付けて結束するか、あるいは、菱形金網を形成する列線同士を針金で結束するなどして行われるが、何れの方法も、蛇篭の複数箇所において前記枠線同士或いは列線同士を前記連結金具を用いて結束するものであるため、設置する蛇篭の数が多い場合に、全ての蛇篭の連結を完了するまでに非常に多くの手間と時間とが必要であった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平10−18295号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の技術的課題は、金網製の篭本体の内部に栗石を充填することにより形成される蛇篭を、並べて設置した際の蛇篭同士の相互連結を簡単且つ迅速に行うことができるように構成することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記課題を解決するため、本発明の蛇篭は、金網からなる篭本体の内部に栗石が充填されると共に、蛇篭同士を連結する線状又は棒状の連結部材を挿通するための中空孔が、前記篭本体の内部を一端から他端まで貫通した状態に形成されていることを特徴とするものである。
【0007】
本発明の具体的な1つの実施態様によれば、前記篭本体は、方形の上面網及び底面網と、方形の前面網及び後面網と、方形の右側面網及び左側面網とによって四角い容器形に形成され、前記中空孔は、前記上面網と底面網とを結ぶ上下方向、前記前面網と後面網とを結ぶ前後方向、前記右側面網と左側面網とを結ぶ左右方向のうち、少なくとも一方向に向けて形成されている。
【0008】
また、本発明の蛇篭連結体は、金網からなる篭本体の内部に栗石を充填することにより形成された蛇篭が複数個並べて配置され、各蛇篭の内部には、該蛇篭を一端から他端まで貫通する中空孔が形成されていて、該中空孔内に連結部材が挿通され、該連結部材によって前記蛇篭が相互に連結されていることを特徴とする。
【0009】
前記蛇篭連結体においては、隣接する蛇篭の互いに近接する位置に前記中空孔が互いに並行するように形成され、該中空孔内に挿通した連結部材を相互に連結することによって前記蛇篭同士が連結されているか、あるいは、隣接する蛇篭の中空孔同士が相互に連なるように形成されていて、該中空孔内に挿通された連結部材によって複数の蛇篭が数珠繋ぎに連結されている。
本発明において前記中空孔は、前記蛇篭の内部に設置した中空部材の内部に形成されていることが望ましい。
【0010】
また、本発明によれば、金網からなる篭本体の内部に、該篭本体を一端から他端まで横切るように中空部材を配設すると共に、栗石を充填することにより、該篭本体の内部を一端から他端まで一続きに貫通する中空孔を備えた蛇篭を形成する工程、前記蛇篭を複数個並べて配置する工程、前記中空孔内に連結部材を挿通し、該連結部材で前記蛇篭を相互に連結する工程、を有することを特徴とする蛇篭の設置方法が提供される。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、蛇篭に中空孔を形成し、該中空孔内に挿通した連結部材で並設した蛇篭を相互に連結するようにしたので、針金や該針金をコイル状に折曲したスクリューストッパ等の連結金具を用いる従来の連結方法に比べ、蛇篭同士の相互連結を簡単且つ迅速に行うことができ、この結果、設置する蛇篭の数が多くても、蛇篭の連結作業を簡単かつ迅速に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明に係る蛇篭の一実施形態を示す斜視図である。
【図2】図1の蛇篭の一部を破断して示す要部断面図である。
【図3】連結部材の一例を示す斜視図である。
【図4】連結部材の他例を示す側面図である。
【図5】図1の蛇篭を左右に複数個並設して線状連結部材で連結した蛇篭連結体の正面図である。
【図6】図5の蛇篭連結体の平面図である。
【図7】図1の蛇篭を上下に複数段段積して線状連結部材で連結した蛇篭連結体の正面図である。
【図8】図1の蛇篭を前後に複数個並設して線状連結部材で連結した蛇篭連結体の平面図である。
【図9】図1の蛇篭を左右及び上下に複数個並設して線状連結部材で連結した蛇篭連結体の正面図である。
【図10】図1とは異なる実施形態の蛇篭を上下に複数段段積して線状連結部材で連結した状態の側面図である。
【図11】更に異なる実施形態の蛇篭を前後及び左右に並設して線状連結部材で連結した蛇篭連結体の平面図である。
【図12】図1の蛇篭を左右に並設して棒状連結部材で連結した状態の正面図である。
【図13】図12の平面図である。
【図14】棒状連結部材と共に用いられる連繋金具の斜視図である。
【図15】図1の蛇篭を左右及び上下に複数個並設して棒状連結部材で連結した蛇篭連結体の正面図である。
【図16】図1とは異なる実施形態の蛇篭を上下に複数段段積して棒状連結部材で連結した状態の側面図である。
【図17】蛇篭の異なる実施形態を示す要部斜視図である。
【図18】図17の蛇篭を棒状連結部材で連結した状態を示す要部側面図である。
【図19】蛇篭の更に異なる実施形態を示す要部斜視図である。
【図20】図19の蛇篭を棒状連結部材で連結した状態を示す要部側面図である。
【図21】更に異なる実施形態の蛇篭を複数個段積して棒状連結部材で連結した状態の側面図である。
【図22】更に異なる実施形態の蛇篭を複数個並設して連結した蛇篭連結体の平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
図1及び図2には本発明に係る中空孔付き蛇篭の第1実施形態が示されている。この第1実施形態の蛇篭1Aは、角形蛇篭であって、金網好ましくは菱形金網を用いて四角い容器形に形成された篭本体2の内部に栗石3を充填することにより形成され、該蛇篭1Aの内部には、複数の中空孔4が、栗石充填領域を一端から反対側の他端まで一続きに貫通するように形成されている。
【0014】
前記菱形金網は、偏平螺旋状に折曲した列線7の折曲部7a同士を順次連繋させることにより形成されたもので、前記篭本体2は、このような菱形金網からなる方形の上面網8及び底面網9と、方形の前面網10及び後面網11と、方形の右側面網12及び左側面網13とを、四角い容器形に組み立てることにより形成されている。そして、前記蛇篭1Aの左右両側端部寄りの上下位置、即ち四隅の近くに、前記前面網10と後面網11とを結ぶ前後方向に向けて該蛇篭1Aを貫通する前記中空孔4が形成されている。
【0015】
前記篭本体2を形成する場合、前記上面網8、底面網9、前面網10、後面網11、右側面網12、左側面網13をそれぞれ個別に形成し、各面網の外周に取り付けられた枠線同士を針金やスクリューストッパ等の連結金具14で連結しても良いが、前記底面網9と前面網10と後面網11とを一連の菱形金網で形成し、上面網8と右側面網12及び左側面網13は個別に形成し、それらを容器形に連結しても良い。
【0016】
前記篭本体2への栗石3の充填は、手作業で行うこともできるが、通常は、木製又は金属製の方形の保持枠(図示せず)の中に、上面網8を取り外した前記篭本体2を収容し、パワーショベル等の機械力を利用して該篭本体2の中に栗石3が充填される。充填が完了すると、前記保持枠が篭本体2から分離されたあと前記上面網8が取り付けられるか、又は、前記上面網8が取り付けられたあとに前記保持枠が蛇篭1Aから分離される。
複数の篭本体2を1つの保持枠の内部に並べて保持させ、該複数の篭本体2内に同時に栗石3を充填することも行われる。
【0017】
前記栗石3の充填に当たり、前記篭本体2の内部には、前記中空孔4を形成するため、金属製あるいは合成樹脂製のパイプ等からなる中空部材5が、該篭本体2を一端(図では前端)から反対側の他端(図では後端)まで横切る状態に配設され、その状態で前記栗石3の充填が行われる。前記中空部材5の両端は、前面網10及び後面網11と同じ位置にあっても、外部に若干突出しても良い。
前記中空部材5の断面形状は円形に限定されず、三角形や四角形あるいはその他の形状であっても良く、また、前記中空孔4の断面形状も円形である必要はなく、三角形や四角形あるいはその他の任意の形状とすることができる。
【0018】
前記中空部材5は、栗石3の充填が完了するまで適宜の方法で篭本体2に仮止めさせておく。その方法としては、例えば、該中空部材5の両端を前面網10及び後面網11の網目から突出させて列線7に係止させる方法、該中空部材5の両端を仮止用針金で前面網10及び後面網11の列線7に結びつける方法、該中空部材5の内部に挿通した仮止用針金の両端を篭本体2の適宜位置に係止させる方法、該中空部材5の両端に該中空部材5の軸線と直交する方向に張り出すフランジ状あるいは棒状の係止片を設け、この係止片を前面網10及び後面網11の外面に係止させる方法などがある。
【0019】
また、前記中空部材5を右側面網12及び左側面網13の内面に直接接触する状態に配設する場合は、該中空部材5の中間の適宜位置を仮止用針金で前記右側面網12及び左側面網13の列線7に結び着けても良い。
前記仮止用針金は、栗石充填後に除去しても良いが、そのまま放置しても良い。
【0020】
これによって前記蛇篭1Aの内部には、前記中空部材5の内部に、該蛇篭1Aを一端から他端まで一続きに貫通する前記中空孔4が形成される。
【0021】
図2に示すように、前記中空部材5を右側面網12又は左側面網13との間に栗石3が介在する程度に該側面網から離して配設した場合、該中空部材5は、前記栗石3で回りを取り囲まれた状態に保持される。また、前記中空部材5を右側面網12又は左側面網13と接触する程度に該側面網の内面に沿って配設した場合には、該中空部材5は、前記側面網12,13と栗石3との間に挟持された状態となる。何れの場合においても、前記中空部材5は、前記栗石3によって蛇篭の内部に安定的に配設されることになる。
【0022】
前記中空部材5は、栗石3の充填に伴う衝撃力や該栗石3の重量等が作用しても簡単には潰れや湾曲などの変形を生じない程度に強度の大きいものが適している。しかし、若干変形したとしても、完全に潰れたり急角度で折れ曲がったりしない限り、該中空部材5の内部即ち中空孔4内に連結部材を挿通することは可能である。従って、該中空部材5即ち中空孔4は、蛇篭の内部を完全に真っ直ぐ延びている必要はなく、前記連結部材を挿通することができる程度であれば若干曲がっていても構わない。しかし、好ましくは、該中空孔4の断面の少なくとも一部が、蛇篭の一端から他端まで真っ直ぐ連なっていることである。但し、前記側面網と実質的に平行である必要はない。
【0023】
また、前記篭本体2の内部に充填された前記栗石3は、密に充填されることによって隣接するもの同士が強く当接しかつ支え合っているため、安定した状態を維持し、容易に位置ずれすることはない。このため、前記中空部材5が極端に大径でなければ、栗石3の充填後に該中空部材5を蛇篭1Aから抜き取ることも可能であり、抜き取った場合には、その跡に前記中空孔4が形成されることになる。該中空部材5を抜き取った跡に形成される中空孔4は、回りを栗石3に囲まれているため、当然滑らかな内周面を有していないが、連結部材を挿入するのには全く問題がない。しかし、ここで説明する各実施形態においては、前記中空部材5が蛇篭に取り付けられているものが前提である。
【0024】
前記中空孔4は、蛇篭同士を相互に連結するための連結部材16を挿通させるもので、このような連結部材16としては、図3に示すような、針金やワイヤロープ等の可撓性ある線状素材で形成された線状連結部材16Aや、図4に示すような、ナット17を螺着するための螺子部18を両端に有する剛性の大きい棒状連結部材16B等が好適に用いられる。
なお、以下の説明において、前記線状連結部材16Aと棒状連結部材16Bとを区別して表現する必要がない場合には、それらを総称して「連結部材16」と表示する。
【0025】
前記構成を有する蛇篭1Aは、現場に列状に並べて設置され、前記中空孔4内に連結部材16を挿通することによって様々な態様で連結され、蛇篭連結体を形成する。
【0026】
図5及び図6は、前記蛇篭1Aを左右方向に並設して線状連結部材16Aで相互に連結した蛇篭連結体の平面図及び正面図であり、隣接する蛇篭1A同士が、前記中空孔4内に挿通した線状連結部材16Aを輪状に連結することにより、相互に連結されている。この場合、隣接する蛇篭1Aの上方(上面側)の中空孔4同士又は下方(底面側)の中空孔4同士は、互いに近接し且つ相互に平行又は平行に近い姿勢を占めている。
【0027】
前記線状連結部材16Aを輪状に連結する場合、図6の左から2番目の蛇篭1Aと3番目の蛇篭1Aとを連結する連結部のように、各蛇篭1Aの中空孔4内に線状連結部材16Aを個別に挿通し、隣接する蛇篭の線状連結部材16Aの端部同士を一体に結合しても良いが、図6の左から3番目の蛇篭1Aと右端の蛇篭1Aとを連結する連結部のように、隣接する蛇篭1Aの中空孔4内に1つの線状連結部材16AをU字状に折り曲げて挿通し、該線状連結部材16Aの両端を1つに結合しても良い。前記線状連結部材16Aによる連結は、上方又は下方の中空孔4毎に別々に行われる。
前記線状連結部材16Aの端部同士を結合する方法としては、該端部同士を相互に撚り合わせたり、端部に形成した環同士を相互に連繋させたり、端部同士を別の金具で固定するなどの方法がある。
【0028】
また、前記中空部材5は、該中空部材5の内部に前記線状連結部材16Aを挿通したあと、この線状連結部材16Aに沿って蛇篭1Aから抜き取り、そのあと該線状連結部材16Aを前述のように輪状に結合することもできる。
なお、前記線状連結部材16Aを各蛇篭1Aに個々に挿通する場合は、該線状連結部材16Aを蛇篭の製造段階で前記中空部材5内に挿通しておいても良い。
【0029】
図7には、図1に示す蛇篭1Aを上下に複数段段積して前記線状連結部材16Aで連結した蛇篭連結体の正面図が示されている。この蛇篭連結体では、上下に隣接する蛇篭1A同士が、下段の蛇篭1Aにおける上方の中空孔4と上段の蛇篭1Aにおける下方の中空孔4とに挿通した前記線状連結部材16Aを輪状に結合することにより相互に連結されている。前記線状連結部材16Aを輪状に結合する方法は、前記図5及び図6の実施形態で説明した場合と同様である。
【0030】
図8には、図1に示す蛇篭1Aを前後方向に並設して前記線状連結部材16Aで連結した蛇篭連結体の平面図が示されている。この実施形態では、前後に隣接する蛇篭1Aの対応する中空孔4同士は1つに連なるため、連なった中空孔4内に一連の線状連結部材16Aを挿通し、該線状連結部材16Aの両端を列の両端の蛇篭1Aに適宜の手段で係止させることにより、複数の蛇篭1Aが前記線状連結部材16Aにより数珠繋ぎに連結されている。
また、図8に鎖線で示すように、左右に並設されている蛇篭連結体同士を相互に連結する場合には、隣接する蛇篭連結体の線状連結部材16Aの両端部同士を互いに結合することにより、隣接する蛇篭連結体同士を相互に連結することもできる。
【0031】
図9には、図1に示す蛇篭1Aを上下及び左右に並べて配置し、線状連結部材16Aで連結した蛇篭連結体の正面図が示されている。この実施形態において、4つの蛇篭の端部が接する部分では、各中空孔4内にそれぞれ2本の線状連結部材16Aが挿通され、一方の線状連結部材16Aで上下に隣接する蛇篭1A同士が連結され、他方の線状連結部材16Aで左右に隣接する蛇篭1A同士が連結されている。従ってこの場合、前記線状連結部材16Aとしては、前記中空孔4内に同時に複数本挿通できる太さの線状連結部材16Aが使用される。
【0032】
また、図9において、前後方向に並設されている蛇篭同士も同時に連結する場合には、図8に示す実施形態のように、前後の蛇篭1Aの1つに連なった中空孔4内に第3の線状連結部材を挿通し、該第3の線状連結部材の両端部を列の両端の蛇篭1Aに係止させることにより、前後の蛇篭を前記第3の線状連結部材で数珠繋ぎに連結することができる。
【0033】
前記実施形態では、蛇篭1Aの正面視において左右両端寄りの位置にそれぞれ上下2つ(合計4つ)の中空孔4が設けられているが、この中空孔4の配設位置及び数は任意であり、蛇篭の連結態様に応じて1つ又は2つ以上の中空孔4を適宜位置に設けることができる。例えば、蛇篭の左右両端寄りで上下方向の中央位置にそれぞれ1つ(合計2つ)の中空孔4を設けることも、左右方向の中央位置に1つの中空孔4を設けることもできる。
【0034】
また、前記実施形態において前記中空孔4は、蛇篭1Aの前後方向即ち前面網10と後面網11とを結ぶ方向に配設されているが、該中空孔4は、蛇篭1Aの左右方向即ち右側面網12と左側面網13とを結ぶ方向に配設することも、蛇篭1Aの上下方向即ち上面網8と底面網9とを結ぶ方向に配設することも、前記3つの方向のうちの何れか2方向あるいは3方向に配設することもでき、それらの配設位置及び数も前述した場合と同様に任意である。
【0035】
図10には、複数の蛇篭1Bを前後に少しずつ位置をずらせて階段状に段積し、上下に隣接する蛇篭1B同士を線状連結部材16Aで連結した蛇篭連結体が示されている。この実施形態において、各蛇篭1Bには、その中央に対して前面網10側に寄った位置と後面網11側に寄った位置とにそれぞれ中空孔4が上下方向に形成され、前面網10側の中空孔4(前方中空孔4a)には、第1の線状連結部材16A1が、該前方中空孔4aより蛇篭1Bの前面網10側に位置する部分を取り巻くと共に、一部に延長部16aを有するように挿通され、後面網11側の中空孔4(後方中空孔4b)には、第2の線状連結部材16A2が、該後方中空孔4bより蛇篭1Bの後面網11側に位置する部分を取り巻くと共に、一部に延長部16aを有するように挿通されている。
【0036】
そして、上段の蛇篭1Bの前端部が下段の蛇篭1Bの前方中空孔4aの位置を占めると共に、下段の蛇篭1Bの後端部が上段の蛇篭1Bの後方中空孔4bの位置を占めるように上下の蛇篭1Bを段積し、下段の蛇篭1Bの第1の線状連結部材16A1の延長部16aを、上段の蛇篭1Bの前面で該上段の蛇篭1Bの第1の線状連結部材16A1に連結すると共に、下段の蛇篭1Bの第2の線状連結部材16A2の延長部16aを、上段の蛇篭1Bの後面で該上段の蛇篭1Bの第2の線状連結部材16A2に連結することにより、上下の蛇篭1Bが相互に連結されている。
【0037】
図11には、第1−第4の4つの蛇篭1Cが相互に連結されて形成された蛇篭連結体が示されている。前記蛇篭1Cは、中央部に中空部材5を縦向きに配設することにより、該蛇篭1Cの中央を上下方向に貫通する1つの中空孔4が形成されたものである。
【0038】
この実施形態では、4つの蛇篭1Cが前後及び左右に配設され、第1の蛇篭1C1の中空孔4と第2の蛇篭1C2の中空孔4とに、1本の第1の線状連結部材16A1がU字形に折り曲げられて下から上に向けて挿通され、第2の蛇篭1C2の中空孔4と第3の蛇篭1C3の中空孔4とに、1本の第2の線状連結部材16A2がU字形に折り曲げられて下から上に向けて挿通され、第3の蛇篭1C3の中空孔4と第4の蛇篭1C4の中空孔4とに、1本の第3の線状連結部材16A3がU字形に折り曲げられて下から上に向けて挿通され、第4の蛇篭1C4の中空孔4と第1の蛇篭1C1の中空孔4とに、1本の第4の線状連結部材16A4がU字形に折り曲げられて下から上に向けて挿通されている。
【0039】
そして、前記各蛇篭1Cの上面において、前記第1の線状連結部材16A1の端部同士と、第2の線状連結部材16A2の端部同士と、第3の線状連結部材16A3の端部同士と、第4の線状連結部材16A4の端部同士とが、それぞれ1つに結合されることにより前記4つの蛇篭1Cが一体に連結されている。
【0040】
前記図11の蛇篭連結体を形成するときは、上面網8が取り外されて未だ栗石3が充填されていない状態の4つの篭本体2を、前記中空部材5の内部に4本の前記線状連結部材16A1−16A4を挿通して端部同士を結合していない状態で配置し、各篭本体2の内部に栗石3を充填して上面網8を取り付けたあと、前記4本の線状連結部材16A1−16A4の端部同士を前述した態様で連結する。
【0041】
図12及び図13には、図1に示す蛇篭1Aを棒状連結部材16Bを用いて連結する方法が示されている。この方法では、左右に隣接する蛇篭1Aの中空孔4内に、図4に示す棒状連結部材16Bをそれぞれ挿通し、並行する左右2本の棒状連結部材16Bの両端部間に図14に示すような連繋金具21を掛け渡したあと、各棒状連結部材16Bの両端の螺子部18にそれぞれナット17を螺着することにより、前記連繋金具21で前記2本の棒状連結部材16Bが互いに連結され、それによって隣接する前記蛇篭1A同士が相互に連結されている。
【0042】
前記連繋金具21は、図14に示すように、細長くかつ平たい金属プレートに棒状連結部材16Bを挿入するための2つの係止孔22を設けたもので、該係止孔22は、隣接する蛇篭1Aの棒状連結部材16Bの間隔に若干のばらつきがあっても対応できるように、少なくとも一方を横に長い長孔とするのが望ましい。
前記プレート状の連繋金具21の代わりに、針金の両端を環状に折曲して形成した針金製の連繋金具を使用することもできる。
【0043】
蛇篭が左右方向に3つ以上並設されている場合には、上記方法によって隣接する蛇篭同士を次々に連結することができる。
【0044】
また、上下に段積した蛇篭1A同士を相互に連結する場合は、上下の蛇篭1Aの中空孔4内に挿通した棒状連結部材16B間に前記連繋金具21を掛け渡してナットで固定することにより、上下の棒状連結部材16Bを該連繋金具21で連結すれば良い。
【0045】
更に、前後方向に並設した蛇篭1Aを相互に連結する場合は、図8に示すように前後の蛇篭1Aの中空孔4は1つに連なるため、連なった中空孔4内に、図8の線状連結部材16Aの代わりに、連結すべき複数の蛇篭1Aを貫通する長さを有する1本の棒状連結部材16Bを挿通し、該棒状連結部材16Bの両端に、菱形金網の網目より大径の円板形、矩形、棒状等の係止金具を取り付け、棒状連結部材16Bの両端に螺着したナット17でこの係止金具を蛇篭の前面網10及び後面網11の外面に係止させることにより、前記蛇篭1Aを前記棒状連結部材16Bで数珠繋ぎに連結することができる。
あるいは、蛇篭に左右方向の中空孔を形成し、隣接する蛇篭の中空孔内に挿通した棒状連結部材16B間に前記連繋金具21を掛け渡してナット17で固定するようにしても良い。
【0046】
図15には、図1に示す蛇篭1Aを上下及び左右に並べて配置し、中空孔4内に挿入した棒状連結部材16Bで相互に連結した蛇篭連結体の正面図が示されている。この実施形態において、4つの蛇篭1Aの端部が集中する部分では、各棒状連結部材16Bに、左右の蛇篭の棒状連結部材16B同士を連結する連繋金具21と上下の蛇篭の棒状連結部材16B同士を連結する連繋金具21との、2つの連繋金具21が取り付けられる。
蛇篭が左右だけ又は上下だけに隣接し合う位置においては、棒状連結部材16Bに1つの連結部材16が取り付けられることによって隣接する蛇篭が相互に連結されている。
【0047】
蛇篭が左右方向及び上下方向にそれぞれ3つ以上並設されている場合には、上記方法によって隣接する蛇篭同士を次々に連結することができる。
【0048】
図16には、複数の蛇篭1Dを少しずつ前後に位置をずらせて階段状に段積し、上下に隣接する蛇篭1D同士を棒状連結部材16Bで相互に連結した蛇篭連結体の実施形態が示されている。この実施形態では、上下2つの蛇篭1Dの互いに重なり合う位置に、中空部材5を上下方向に設置することにより1つに連なる中空孔4が形成され、この中空孔4内に、2つの蛇篭1Dを貫通する長さの1本の棒状連結部材16Bが挿通され、該棒状連結部材16Bの上下端に菱形金網の網目より大径の円板形、矩形、棒状等の係止金具23が取り付けられると共に、ナット17が螺着され、該ナット17で前記係止金具23が蛇篭1Dの上面網8及び底面網9の外面にそれぞれ係止されることにより、上下の蛇篭1Dが相互に連結されている。
【0049】
図17には、蛇篭1E及び蛇篭連結体の他の実施形態が示されている。この実施形態では、隣接する第1の蛇篭1E1と第2の蛇篭1E2との相互に連結される端部にそれぞれ段状の凸部25,26が形成され、第1の蛇篭1E1の凸部25は該蛇篭の下半部に形成され、第2の蛇篭1E1の凸部26は該蛇篭の上半部に形成され、各凸部25,26の内部には、複数の中空部材5を縦向きに設置することにより該凸部25,26を上下方向に貫通する複数の中空孔4が平行に形成されている。
【0050】
そして、図18に示すように、前記凸部25,26同士を上下から相互に当接させて対応する中空孔4同士を1つに連通させ、その中にそれぞれ棒状連結部材16Bを挿通し、第1の蛇篭1E1の下面と第2の蛇篭1E2の上面とにおいて全部の棒状連結部材16Bに渡る長さの係止金具23を取り付け、各棒状連結部材16Bに螺着したナット17で該係止金具23を蛇篭1Eの外面に係止させることにより、前記第1の蛇篭1E1と第2の蛇篭1E2とが相互に連結されている。
【0051】
前記第1の蛇篭1E1及び第2の蛇篭1E2の他端には、前記凸部25,26が図示した場合とは上下逆の配置で形成されていて、他の蛇篭と次々に連結できるようになっている。
なお、前記棒状連結部材16Bの代わりに線状連結部材16Aを用いることもできる。
【0052】
図19には、蛇篭1F及び蛇篭連結体の他の実施形態が示されている。この実施形態では、隣接する第1の蛇篭1F1と第2の蛇篭1F2との互いに連結される端部に、相互に嵌合するほぞ穴27とほぞ28とが形成されると共に、第1の蛇篭1F1の前記ほぞ穴27の両側の部分と、第2の蛇篭1F2の前記ほぞ28の部分とに、中空部材5を横向きに配設することにより前記ほぞ28をほぞ穴27内に嵌合したとき1つに連なる中空孔4が形成されている。
【0053】
そして、図20に示すように、前記ほぞ28をほぞ穴27に嵌合させた状態で前記中空孔4内に1本の棒状連結部材16Bを挿通し、該棒状連結部材16Bの両端に係止金具23を取り付け、前記棒状連結部材16Bに螺着したナット17で該係止金具23を蛇篭の外面に係止させることにより、前記第1の蛇篭1F1と第2の蛇篭1F2とが相互に連結されている。
【0054】
前記ほぞ穴27が形成された第1の蛇篭1F1の反対側の端部にはほぞが形成され、前記ほぞが形成された第2の蛇篭1F2の反対側の端部にはほぞ穴が形成されていて、他の蛇篭と次々に連結できるようになっていることが望ましい。
なお、前記棒状連結部材16Bの代わりに線状連結部材16Aを用いることもできる。
【0055】
なお、前記各実施形態において、前記中空孔4は、それが貫通する面網に対して実質的に垂直の方向に形成されているが、必ずしも垂直である必要はなく、貫通する面網に対して斜めをなすように傾斜していても良い。
【0056】
図21に示す蛇篭連結体は、蛇篭1Gの内部に上面網8及び底面網9に対して斜めに貫通する中空孔4を形成し、複数の蛇篭1Gを上下に階段状に段積し、1つに連なる中空孔4内に全ての蛇篭を貫通する1本の棒状連結部材16Bを挿通し、該棒状連結部材16Bの上下両端を係止金具23とナット17とで最上段の蛇篭1Gの上面と最下段の蛇篭1Gの下面とにそれぞれ係止させることにより、前記蛇篭1Gが数珠繋ぎに連結されたものである。
【0057】
以上に説明したように、蛇篭に中空孔4を形成し、該中空孔4内に挿通した連結部材16で蛇篭同士を相互に連結することにより、列状に並設された複数の蛇篭を簡単な方法で強固に連結することができる。特に、この連結方法は、従来のような隣接する蛇篭の枠線同士或いは列線同士を複数箇所で針金やスクリューストッパ等の連結金具で結合する方法に比べ、非常に簡単かつ効率的であるため、設置する蛇篭の数が多い場合でも、少ない手間でそれらを迅速かつ短時間に連結することが可能である。
【0058】
なお、前記各実施形態では、四角い篭本体2を用いて形成された角形の蛇篭が示されているが、円筒形の蛇篭や短円柱形をした蛇篭(だるま篭)など角形の蛇篭以外にも本発明は適用することができる。
例えば、図22に示すように、円筒形の蛇篭1Hに該蛇篭を直径方向に貫通する中空部材5を設けることによって中空孔4を1つ又は複数形成し、隣接する蛇篭1Hの対応する中空孔4が1つに連なるように複数の蛇篭を並設し、前記中空孔4内に挿通した棒状連結部材16Bと係止金具23及びナット17とによって前記蛇篭1Hを相互に連結することもできる。
前記円筒形の蛇篭1Hを軸線方向に並設した場合には、該蛇篭1Hの軸線方向に中空孔4を形成し、この中空孔4内に挿通した連結部材16で複数の蛇篭を数珠繋ぎに連結することもできる。
前記棒状連結部材16Bに代えて線状連結部材16Aを使用することもできる。
【符号の説明】
【0059】
1A−1H 蛇篭
2 篭本体
3 栗石
4 中空孔
5 中空部材
8 上面網
9 底面網
10 前面網
11 後面網
12 右側面網
13 左側面網
16 連結部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
金網からなる篭本体の内部に栗石が充填されると共に、蛇篭同士を連結する線状又は棒状の連結部材を挿通するための中空孔が、前記篭本体の内部を一端から他端まで貫通した状態に形成されていることを特徴とする中空孔付き蛇篭。
【請求項2】
前記中空孔は、前記篭本体の内部に設置した中空部材の内部に形成されていることを特徴とする請求項1に記載の蛇篭。
【請求項3】
前記篭本体は、方形の上面網及び底面網と、方形の前面網及び後面網と、方形の右側面網及び左側面網とによって四角い容器形に形成され、
前記中空孔は、前記上面網と底面網とを結ぶ上下方向、前記前面網と後面網とを結ぶ前後方向、前記右側面網と左側面網とを結ぶ左右方向のうち、少なくとも一方向に向けて形成されている、
ことを特徴とする請求項1又は2に記載の蛇篭。
【請求項4】
金網からなる篭本体の内部に栗石を充填することにより形成された蛇篭が複数個並べて配置され、各蛇篭の内部には、該蛇篭を一端から他端まで貫通する中空孔が形成されていて、該中空孔内に連結部材が挿通され、該連結部材によって前記蛇篭が相互に連結されていることを特徴とする蛇篭連結体。
【請求項5】
前記中空孔は、前記篭本体の内部に設置した中空部材の内部に形成されていることを特徴とする請求項4に記載の蛇篭連結体。
【請求項6】
隣接する蛇篭の互いに近接する位置に前記中空孔が互いに並行するように形成され、該中空孔内に挿通した連結部材を相互に連結することによって前記蛇篭が相互に連結されていることを特徴とする請求項4又は5に記載の蛇篭連結体。
【請求項7】
前記中空孔は、隣接する蛇篭の中空孔同士が相互に連なるように形成されていて、該中空孔内に挿通された連結部材によって複数の蛇篭が数珠繋ぎに連結されていることを特徴とする請求項4又は5に記載の蛇篭連結体。
【請求項8】
金網からなる篭本体の内部に、該篭本体を一端から他端まで横切るように中空部材を配設すると共に、栗石を充填することにより、該篭本体の内部を一端から他端まで一続きに貫通する中空孔を備えた蛇篭を形成する工程、
前記蛇篭を複数個並べて配置する工程、
前記中空孔内に連結部材を挿通し、該連結部材で前記蛇篭を相互に連結する工程、
を有することを特徴とする蛇篭の設置方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【公開番号】特開2012−92612(P2012−92612A)
【公開日】平成24年5月17日(2012.5.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−242344(P2010−242344)
【出願日】平成22年10月28日(2010.10.28)
【出願人】(505444905)近畿砕石株式会社 (6)
【出願人】(390006116)瀬戸内金網商工株式会社 (18)
【Fターム(参考)】