説明

中空成形機のパリソン切断装置

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、中空成形機のパリソン切断装置に関し、特に、モータにより電熱カッターの移動を行うことにより、操業者の感に頼ることなく、パリソンの切断を一定の速度で、かつ、高精度に行うための新規な改良に関する。
【0002】
【従来の技術】従来、用いられていたこの種の中空成形機のパリソン切断装置としては種々あるが、その中で代表的なものについて述べると、図4から図6に示される一般に採用されていた構成を挙げることができる。すなわち、図4において符号1で示されるものは電熱カッター2を有するカッターホルダであり、このカッターホルダ1は、固定部3に固定されたエヤーシリンダ4のロッド5に接続されている。
【0003】前記エヤーシリンダ4の第1孔4aと第2孔4bには、第1絞り弁6a及び第2絞り弁6bを介して電磁弁7が接続されており、この電磁弁7の切替えによってエヤーシリンダ4内にエヤーを供給し、ロッド5を介して電熱カッター2を矢印Aの方向に沿って往復移動させることによってパリソン50を切断するように構成されている。
【0004】図5及び図6は、図1の構成を詳細に示すもので、前記エヤーシリンダ4の後端4cに設けられたブラケット8にはリミットスイッチ9が設けられていると共に、前記ロッド5の後端5aにはカム10が設けられている。
【0005】従って、前記ロッド5の動きをこのカム10及びリミットスイッチ9を介して検出することにより、エヤーシリンダ4へのエヤーの供給を切替えて電熱カッター2の移動を行っていた。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】従来の中空成形機のパリソン切断装置は、以上のように構成されていたため、次のような課題が存在していた。すなわち、電熱カッターの前後進の速度は、エヤーシリンダの入口に設けた絞り弁の調節で決めているが、一度最適な状態に調節した場合でも、エヤーを供給するエヤー源の圧力に変動があった場合には、直ちにその速度が変化することになり、成形品毎の再現性を一定に保つことは極めて困難で、実際には、現場の操作者の感に頼っているのが現状であった。また、パリソンの切断中においても、エヤー源の圧力の変動及び切断負荷の変動により切断速度が変わり、切れ味及び切り口を安定させることは極めて困難であると共に、糸引きを防止することは不可能であった。さらに、エヤーシリンダのエヤー洩れが発生した場合、成形機周辺のチリ等を飛散させ、このチリ等がパリソンに付着することがあり、このような事態が発生した場合には、パリソン自体が不良となり、良質の成形品を成形することは不可能であった。
【0007】本発明は、以上のような課題を解決するためになされたもので、特に、モータにより電熱カッターの移動を行うことにより、操作者の感に頼ることなく、パリソンの切断を一定の速度で高精度に行うようにした中空成形機のパリソン切断装置を提供することを目的とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】本発明による中空成形機のパリソン切断装置は、クロスヘッドから押出されて垂下したパリソンを、電熱カッターで切断するようにした中空成形機のパリソン切断装置において、固定部に設けられモータを用いた直線送り機構と、前記固定部に固定されたシャフトと、前記シャフトにリニアブッシュを介して移動自在に設けられ前記直線送り機構に接続されると共に全体形状がほぼコ字型をなすカッターホルダと、前記カッターホルダの一端に設けられたガイドプレートと、前記ガイドプレートに設けられた固定ブッシュと、前記固定ブッシュに移動自在に設けられたガイドバーと、前記ガイドバーに設けられたカッター取付板と、前記カッターホルダの他端にその一端が固定され前記カッター取付板及び前記ガイドプレートを経て延長部が前記ガイドプレートより外側へ作動自在に突出する電熱カッターと、前記延長部とガイドプレート間に設けられ前記電熱カッターを一方へ付勢する弾性体とを備え、前記電熱カッターの他端は前記カッター取付板に固定され、前記電熱カッターをモータを介して移動させる構成である。
【0009】
【作用】本発明による中空成形機のパリソン切断装置においては、電熱カッターを有するカッターホルダを固定部のシャフトに移動自在に設け、モータを有する直線送り機構によってカッターホルダを移動させているため、カッターホルダはシャフトに沿って極めて円滑に移動でき、さらにこのモータを作動させる制御部に対し、最適な切断状態となる条件をプログラムとして記憶させておくことにより、この電熱カッターの速度を完全に再現することができ、従来のようなベテランの操作者を必要とせず、初心者の操作者でも従来のベテランの操作者が切る状態と同じ切り口でパリソンを切断することができる。また、電熱カッターの他端側が弾性体によって一方に付勢されているため、熱による電熱カッターの伸びを吸収し、常に一定のテンションを保つことができる。
【0010】
【実施例】以下、図面と共に本発明による中空成形機のパリソン切断装置の好適な実施例について詳細に説明する。なお、従来例と同一又は同等部分には、同一符号を付して説明する。図1から図3までは本発明による中空成形機のパリソン切断装置を示すもので、図1は全体構成を示す概略構成図、図2は図1の要部を拡大して詳細を示す平面図、図3は図2の側面図である。
【0011】図1において符号1で示されるものは電熱カッター2を有し全体形状がほぼコ字型をなすカッターホルダであり、このカッターホルダ1に接続されたラックからなる従動体20には、ステップモータ又はブラシレス回転制御形モータ等の可変速度からなるモータ21の回転軸21aに設けられたピニオン22が係合していると共に、このピニオン22は前記従動体20を駆動するための駆動体を構成している。従って、このモータ21、従動体20、ピニオン22等によりカッターホルダ1を直線移動させるための直線送り機構60を構成している。なお、この直線送り機構60は後述のようにモータ21を用いた他の機構も可である。
【0012】前記モータ21には、メモリ(図示せず)を有する制御部23が接続されており、このメモリ内にこのモータ21の作動条件に沿ったプログラムを記憶させておくことにより、この記憶内容に沿ってこのモータ21の作動をプログラム制御することができる。
【0013】前記カッターホルダ1の一端1aには、図2R>2、図3で示すように絶縁板24を介してガイドプレート25が取付ボルト26によって着脱自在に設けられており、このガイドプレート25には、カッター取付板27がガイドバー28及び固定ブッシュ29を介して作動自在に設けられている。
【0014】前記カッターホルダ1の他端1bに取付板30を介してその一端2aが固定されたカッター2の他端2bは、前記電熱カッター取付板27に固定ねじ31を介して固定締結されており、この電熱カッター2の他端2bの延長部2bAは前記ガイドプレート25を作動自在に貫通して外方に突出している。
【0015】前記延長部2bAの外端には一対のナット32,33が螺合されており、このナット33とガイドプレート25間における前記延長部2bAの外周位置には、スプリングからなる弾性体33aが介装されている。従って、このナット32,33を締めることによってカッター2の張り状態を自在に調整できると共に電熱カッター2の他端2b側が常時一方の方向に付勢されるように構成されている。
【0016】前記カッターホルダ1に設けられた一対の輪状のリニアブッシュ34内には、このカッターホルダ1とは離間して配設された固定部3の一対のシャフト35が摺動自在に挿入されており、このカッターホルダ1の前記各リニアブッシュ34の間の位置には、押さえ板36を介して前記従動体20の一端20aが固定されている。
【0017】前記従動体20の他端20bは、前記固定部3の孔3aを作動自在な状態で貫通すると共に、この固定部3に設けられた前記モータ21の駆動体22と係合しており、このモータ21の作動によって前記従動体20及びカッターホルダ1は移動するように構成されている。なお、前記電熱カッター2には、図示しない電源が供給されている。
【0018】次に、前述の構成において本発明による中空成形機のパリソン切断装置を作動させる場合について説明する。まず、クロスヘッド40から押出された筒状のパリソン50が垂下した状態で、制御部23を介してモータ21を回転させると、駆動体22及び従動体20を介してカッターホルダ1及び電熱カッター2が前進し、一対のパリソン50(図2に示す)を同時に切断することができる。
【0019】従って、前述のパリソン50に対する切断動作を、各種材質及び温度並びに径等の異なる条件のパリソン50に対して行い、最適な切り口が得られるようなモータ21の回転条件を、制御部23のメモリ(図示せず)にプログラムとして記憶させておくことにより、モータ21のプログラム制御が可能となり、初心者の操作者でもスイッチ(図示せず)を押すだけの操作で自動的に理想的な切断動作を容易に遂行することができるものである。
【0020】なお、前述の従動体20及び駆動体22は、本実施例に示したラックとピニオンの構成に限らず、ベルトとローラ等の他の手段を用いることができることは述べるまでもないことである。
【0021】
【発明の効果】本発明による中空成形機のパリソン切断装置は、以上のように構成されているため、次のような効果を得ることができる。すなわち、電熱カッターを有するカッターホルダを固定部のシャフトに移動自在に設け、モータを有する直線送り機構によってカッターホルダを移動させているため、カッターホルダはシャフトに沿って極めて円滑に移動でき、さらに、制御部を用いてモータをプログラム制御することができるため、切断速度の変更が容易にでき、一定速度切断、高速から低速に徐々に速度を変えて切断、逆に低速から高速に変えて切断する等の条件の設定が自在であり、それにより、パリソンの材質、径等に関係なく常に理想的な円形の切断面を得ることができる。また、電熱カッター2の他端2b側が一方の方向へ付勢されて一定のテンションを保持しているため、常に一定の切断面が得られ、後工程の中空成形における歩留まりを高くすることができる。また、制御部を介して切断速度表示及び高精度な再現性を容易に得ることができる。また、切断負荷に対して切断速度を変化させることなく切断することができる。また、パリソン径に合わせて電熱カッターのストロークを調整することができるため、切断時間の短縮を行うことができる。さらに、前述の各効果により、成形品の不良低減、段取時間の短縮、初期成形品の不良低減を達成することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明による中空成形機のパリソン切断装置を示す概略図である。
【図2】図1の要部の詳細を示す拡大平面図である。
【図3】図2の側面図である。
【図4】従来の中空成形機のパリソン切断装置を示す概略構成図である。
【図5】図4の要部の詳細を示す拡大平面図である。
【図6】図4の側面図である。
【符号の説明】
1 カッターホルダ
2 電熱カッター
3 固定部
20 従動体
21 モータ
23 制御部
35 シャフト
50 パリソン
60 直線送り機構

【特許請求の範囲】
【請求項1】 クロスヘッド(40)から押出されて垂下したパリソン(50)を、電熱カッター(2)で切断するようにした中空成形機のパリソン切断装置において、固定部(3)に設けられモータ(21)を用いた直線送り機構(60)と、前記固定部(3)に固定されたシャフト(35)と、前記シャフト(35)にリニアブッシュ(34)を介して移動自在に設けられ前記直線送り機構(60)に接続されると共に全体形状がほぼコ字型をなすカッターホルダ(1)と、前記カッターホルダ(1)の一端(1a)に設けられたガイドプレート(25)と、前記ガイドプレート(25)に設けられた固定ブッシュ(29)と、前記固定ブッシュ(29)に移動自在に設けられたガイドバー(28)と、前記ガイドバー(28)に設けられたカッター取付板(27)と、前記カッターホルダ(1)の他端(1b)にその一端(2a)が固定され前記カッター取付板(27)及び前記ガイドプレート(25)を経て延長部(2bA)が前記ガイドプレート(25)より外側へ作動自在に突出する電熱カッター(2)と、前記延長部(2bA)とガイドプレート(25)間に設けられ前記電熱カッター(2)を一方へ付勢する弾性体(33a)とを備え、前記電熱カッター(2)の他端(2b)は前記カッター取付板(27)に固定され、前記電熱カッター(2)をモータ(21)を介して移動させるように構成したことを特徴とする中空成形機のパリソン切断装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図6】
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【図5】
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【特許番号】第2659296号
【登録日】平成9年(1997)6月6日
【発行日】平成9年(1997)9月30日
【国際特許分類】
【出願番号】特願平3−233095
【出願日】平成3年(1991)9月12日
【公開番号】特開平5−69474
【公開日】平成5年(1993)3月23日
【前置審査】 前置審査
【出願人】(000004215)株式会社日本製鋼所 (840)
【参考文献】
【文献】特開 平3−178420(JP,A)
【文献】「ACサーボ・ガイダンス」 三菱電機株式会社 (平成元年1月) 第3及び第17頁