中空柱の閉塞具および該閉塞具を用いた中空柱の閉塞方法
【課題】 中空柱内において上方からの降下物を受け止めて下方への降下を防止する。
【解決手段】 中空柱101の地際部分を複数の補強環11で更に補強するに当たり、アラミドロッド3とPC鋼線5の複数の補強用棒状部材からなる補強組立体98を上方に吊り上げてから補強組立体98の下側であって側部開口101aの上部に閉塞具1を設置して、上方に吊り上げた補強組立体98や補強組立体の構成部材などの移動を閉塞具1で受け止める。
【解決手段】 中空柱101の地際部分を複数の補強環11で更に補強するに当たり、アラミドロッド3とPC鋼線5の複数の補強用棒状部材からなる補強組立体98を上方に吊り上げてから補強組立体98の下側であって側部開口101aの上部に閉塞具1を設置して、上方に吊り上げた補強組立体98や補強組立体の構成部材などの移動を閉塞具1で受け止める。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、下部が地中に埋設されて地上に立設された、例えば鋼管柱やコンクリート製電柱等の中空柱内において、中空柱内の作業空間を確保するための中空柱の閉塞具および該閉塞具を用いた中空柱の閉塞方法に関する。
【背景技術】
【0002】
鋼管柱やコンクリート製電柱等は、通常、内部が空洞、すなわち中空の筒状体の中空柱であり、その基端部の所定長部分が地中に埋設されて地上に立設される。このような既設の中空柱は補強に際して、例えば、その地中に埋設された地中部分と地上に立設された地上部分との境の地際部分から1m程上方の側面に側面開口を形成し、この側面開口から中空柱の内部に補強用棒状部材を複数本挿入して補強している(特許文献1)。
【0003】
更に詳しくは、中空柱は、中空柱の中心軸に沿って固定的にガイド棒が立設される。このガイド棒を中心にして均等配置治具が上下方向に移動可能に保持され、さらにこの複数の均等配置治具により、複数の補強用棒状部材が中空柱の周方向に等角度で均等に配設されて、複数の補強用棒状部材と均等配置冶具とが一体的に構成される補強組立体が組まれる。そして、この補強組立体により中空柱の地際部分が補強される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007-77613号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
このように中空柱の比較的弱い地際部分を更に強固に補強するために、上述した補強組立体に加えて、中空柱の地際部分の内側に補強環などの補強部材を入れることが提案されている。このような補強環などの補強部材を中空柱の地際部分に入れて補強する作業は、従来、中空柱内の地際部分に複数の補強用棒状部材と均等配置治具とからなる補強組立体などを設けた後に行う。そのため、地際部分に補強環などの補強部材を入れるなどの補強作業を行う際には、この補強組立体などを一旦補強したい中空柱の地際部分から上方に移動し、この移動した上方で補強組立体などを一時的に紐などで締結して固定することで、補強したい地際部分に補強作業の妨げになる物がないようにしてから補強作業を行っている。
【0006】
しかしながら、前記補強作業においては、上方に移動して一時的に固定された補強組立体などが下方に移動して、補強組立体が側部開口から中空柱内で行っている補強作業の妨げになる等の支障が生じることが考えられた。
【0007】
本発明は、上記に鑑みてなされたもので、その目的とするところは、中空柱内において上方からの補強組立体や補強用棒状部材等の補強体の移動を受け止める中空柱の閉塞具および該閉塞具を用いた中空柱の閉塞方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を達成するため、請求項1記載の中空柱の閉塞具は、下部が地中に埋設されて地上に立設された中空柱の内部に設けられる作業空間を確保するために該作業空間の上方に設置される中空柱の閉塞具であって、中空柱の内径よりも小さい外径を有し、前記作業空間上部を塞ぐ閉塞手段と、この閉塞具を作業空間の上方の中空柱内に一時的に固定する固定手段とを有することを要旨とする。
【0009】
請求項1にあっては、閉塞手段が作業空間の上方において中空柱内を塞ぐことから、作業空間内への補強体等の侵入を防ぐ。
【0010】
請求項2記載の中空柱の閉塞具は、前記閉塞手段は、中空柱の内径よりも小さい外径を有する環状部材と、この環状部材の内側に棒状部材を配設してなる閉塞部とを有することを要旨とする。
【0011】
請求項2にあっては、閉塞手段は、中空柱の内径よりも小さい外径を有する環状部材と、この環状部材の内側に棒状部材を配設してなる閉塞部とを有する。
【0012】
請求項3記載の中空柱の閉塞具は、請求項1記載の中空柱の閉塞具を用いた閉塞方法であって、中空柱の作業空間において中空柱を補強する補強体補強体を作業空間よりも上方に移動した後に一時的に固定し、前記補強体の下側であってかつ作業空間の上側の中空柱内に閉塞具を挿入し、この挿入した閉塞具を中空柱内で水平に設定してから一時的に固定することを要旨とする。
【0013】
請求項3にあっては、作業の妨げとなる補強体を作業空間よりも上方に移動した後に、閉塞手段を作業空間の上方に一時的に設置して中空柱内を塞ぐことから、補強体等の作業空間内への侵入が防止される。
【0014】
これにより環状部材からなる閉塞具を中空柱内において作業空間の上方に水平に設置するため、中空柱内において作業空間の上方から降下物があったとしても、この降下物を閉塞部で受け止め、降下物の作業空間への降下を防止する。
【0015】
また閉塞部が環状部材の内側に縦横に所定の狭い間隔で配設され、各両端が環状部材の内周部に固定的に取り付けられた複数の棒状部材を有する。
【0016】
これにより閉塞部が環状部材の内側に縦横に所定の狭い間隔で配設された複数の棒状部材で構成されるため、中空柱内の作業空間の上方からの降下物は狭い間隔で配設された複数の棒状部材で受け止められ、降下物の作業空間への降下を防止する。
【0017】
また固定手段が、前記環状部材の周囲を三等分以上に等角度でほぼ均等に分割した複数の箇所に最も近接した棒状部材の各部に複数のロープをそれぞれ結び、この複数のロープを作業空間の上方で中空柱に形成された開口部から中空柱の外部に出し、外部の固定部に固定する。
【0018】
これにより環状部材の周囲を均等に分割した箇所に近接した棒状部材にロープを結び、このロープを作業空間の上方で中空柱の外部に出し、外部の固定部に固定するため、棒状部材からなる閉塞部は中空柱の上方からの降下物を確実に受け止める。
【0019】
また、ロープが、棒状部材の各部に結ばれる端部がビニールロープで構成され、このビニールロープにステンレスワイヤロープを結び、このステンレスワイヤロープを中空柱に形成された開口部から外部に出し、外部の固定部に固定される。
【0020】
これにより棒状部材に結ばれたビニールロープにステンレスワイヤロープを結び、このステンレスワイヤロープを中空柱の開口部から外部に出し、外部の固定部に固定するため、中空柱の開口部からステンレスワイヤロープを取り出して、容易に引っ張り上げる。
【0021】
また、中空柱の作業空間において作業の妨げとなる物、具体的に補強体等を上方に吊り上げながら作業空間よりも上方に移動し、この移動した上方で一時的に固定し、この移動した物の下側であって、作業空間の上方の中空柱内に閉塞具を挿入し、この挿入した閉塞具を中空柱内で水平に設定してから一時的に固定する。
【0022】
これにより中空柱の作業空間において作業の妨げとなる物を上方に吊り上げながら上方に移動して撤去し、この移動した補強体等の下側であって作業空間の上方に閉塞具を挿入するため、中空柱内において作業空間の上方から降下物があったとしても、この降下物を閉塞具の閉塞部で受け止め、降下物の作業空間への降下を防止する。
【0023】
また、中空柱の作業空間において補強体等を上方に吊り上げながら作業空間よりも上方に移動し、この移動した上方で一時的に固定し、閉塞具の環状部材の周囲を三等分以上に等角度でほぼ均等に分割した複数の箇所に最も近接した棒状部材の各部に複数のロープをそれぞれ結び、この結ばれた複数のロープのうちの少なくとも2本を中空柱の側部開口の外部に残した状態で残りのロープを中空柱の側部開口から中空柱の内部に挿入してから、中空柱の側部開口よりも上方の所定の場所に形成された孔を貫通して外部に出した状態で閉塞具を中空柱の側部開口から中空柱の内部に挿入し、この側部開口から挿入された閉塞具を中空柱内で水平に設定し、前記孔を貫通したロープを上方に引っ張り上げるとともに側部開口の外部に残された少なくとも2本のロープを側部開口の外側で上方に引っ張り上げる動作を閉塞具の水平を維持しつつ全ロープについて均等に行って、閉塞具を作業空間の上方の中空柱内に水平に設置し、上方に引っ張り上げられたロープをすべて中空柱の外部の固定部に結び付けて固定する。
【0024】
これにより中空柱の作業空間において補強体を上方に吊り上げながら上方に移動し、環状部材の周囲を均等に分割した箇所に近接した棒状部材にロープを結び、このロープを作業空間の上方で側部開口および側部開口より上方の孔から中空柱の外部に出して引っ張りながら閉塞具を中空柱内の作業空間の上方で水平に設定し外部に固定するため、中空柱内において作業空間の上方から降下物があったとしても、この降下物を閉塞具の閉塞部で受け止め、降下物の作業空間への降下を防止する。
【発明の効果】
【0025】
本発明によれば、閉塞部を有する環状部材からなる閉塞具を中空柱内において作業空間の上方に設置するので、中空柱内において作業空間の上方から降下物があったとしても、この降下物を閉塞部で受け止め、作業空間を確保することができる。
【0026】
本発明によれば、中空柱の作業空間において作業の妨げとなる物である補強組立体を吊り上げながら上方に移動し、この移動した物の下側であって作業空間の上方に閉塞具を挿入するので、中空柱内において作業空間の上方から降下物があったとしても、この降下物を閉塞具の閉塞部で受け止め、作業空間を確保することができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】本発明の一実施形態に係わる中空柱の閉塞具を鋼管柱やコンクリート製電柱等の中空柱に適用して、中空柱の地際部分の補強作業を行いつつある状態を示す説明図である。
【図2】図1に示す閉塞具1の構成を示す平面図および側面図である。
【図3】中空柱の周囲に組み込まれた足場用鉄パイプに閉塞具を吊り下げているステンレスワイヤロープを取り付けた状態を示す図である。
【図4】閉塞具を側部開口から中空柱内に挿入しようとする状態を示す図である。
【図5】図4のように中空柱の側部開口から挿入された閉塞具が補強組立体の下側に水平に設定された状態を示す図である。
【図6】図5のように閉塞具が補強組立体の下側に水平に設定された状態で中空柱の下方のガイド棒に保護アーム組立体を取り付けた状態を示す図である。
【図7】図6のように中空柱の下方のガイド棒に取り付けられた保護アーム組立体をその縮退自在アームが伸長して広がった状態で示す斜視図である。
【図8】図6のように中空柱の下方のガイド棒に取り付けられた保護アーム組立体をその縮退自在アームが縮退してしぼんだ状態で示す斜視図である。
【図9】中空柱の地際部分に6個の補強環が配設された状態を示す図である。
【図10】中空柱の地際部分を補強組立体と複数の補強環で堅固に補強した状態を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、図面を用いて、本発明を実施するための形態(以下、実施形態と称する)を説明する。
【0029】
図1は、本発明の一実施形態に係わる中空柱の閉塞具を鋼管柱やコンクリート製電柱等の中空柱101に適用して、中空柱101の地際部分の補強作業を行いつつある状態を示す説明図である。
【0030】
図1においては、中空柱101の地際部分の補強作業を行うために、アラミドロッド3とPC鋼線5からなる複数の補強用棒状部材などから構成される補強組立体98がステンレスワイヤロープ27で上方に引き上げられて一時的に固定されている状態を示す。
【0031】
更に詳しくは、この補強組立体98は、アラミドロッド3およびPC鋼線5からなる複数の補強用棒状部材が中空柱101の長手方向に沿って配設されるとともに、中空柱101の中心軸に固定的に設定される後述するガイド棒13を中心にして中空柱101の周方向に等角度で均等に配設されるように均等配置治具である複数のロッド配置用スペーサ7で固定的に保持され、このように保持された複数の補強用棒状部材の周囲を更に複数のビニールバンド9で取り囲み締め付けて固定することで全体が一体的に組み立てられている。
【0032】
なお、補強組立体98及び補強組立体98を構成するアラミドロッド3、PC鋼線5、ロッド配置用スペーサ7、ガイド棒13等はそれぞれが補強体として機能するものである。
【0033】
このように中空柱内に一体的に組み立てられた補強組立体98は、その一番上のロッド配置用スペーサ7に2本のビニールロープ25をループ状に取り付け、この2本のビニールロープ25の上端に2本のステンレスワイヤ27をそれぞれ結び、この2本のステンレスワイヤ27を中空柱101の上方に形成した2個のワイヤ通線孔29に通して中空柱101の内部から外部に取り出し、この外部に取り出した2本のステンレスワイヤ27を外部で矢印100で示す方向に引っ張ることにより補強組立体98の全体を上方に引き上げている。
【0034】
更に具体的には、補強組立体98は、中空柱101の補強作業を行う地際部分を中心とした作業空間、具体的には中空柱101の地際部分から1mほど上方の側面に中空柱101の長手方向に沿って形成された例えば幅55mm、長さ400mm程度の側部開口101aから下方の作業空間よりも上方に引き上げられている。このように補強組立体98を引き上げて空所となった側部開口101aより下方の場所は、中空柱101の補強作業を行う地際部分を中心とした作業空間であるので、補強作業の妨げとなる補強体、すなわち補強組立体98などがないことが補強作業を行う際に要求される。
【0035】
図1においては、中空柱101の底の最下端から側部開口101aの真横までには、ガイド棒13が中空柱101の中心軸上を延出して配設されている。そして、このガイド棒13の下端部には、ガイド棒固定用治具15が取り付けられている。このガイド棒固定用治具15は、ガイド棒13を中空柱101の中心軸に固定的に設定するためのものであって、このガイド棒固定用治具15をガイド棒13の下端部に取り付けてから中空柱101内に挿入することにより、ガイド棒13が中空柱101の底部において中空柱101の中心軸に固定されるようになっている。
【0036】
また、ガイド棒3のガイド棒固定用治具15が取り付けられている上方には、高ナットあるいは短パイプで構成されるストッパー17が固定的に取り付けられているが、このストッパー17は、後述する図10に示すように、補強組立体98の複数の補強用棒状部材を保持している複数のロッド配置用スペーサ7のうちの一番下のロッド配置用スペーサ7を受け止めて、この位置に固定的に支持し、この位置において補強組立体98の全体を支持するようになっている。
【0037】
なお、上述したように補強作業の妨げとなる補強組立体98などを上方に移動して地際部分を中心とした作業空間を設けた後、この空の作業空間には、ガイド棒固定用治具15で下端部が中空柱101の中心軸に固定されたガイド棒13のみが残っている。
【0038】
補強作業の妨げとなる補強組立体98などを上方に移動して地際部分周辺を含む作業空間がガイド棒13を除いて空所にした後、中空柱101の地際部分を補強するために、図1に示すように複数(本実施形態では6個)の補強環11を側部開口101aから中空柱101内に挿入する。なお、図1では、6個の補強環11のうち第1番目の補強環11が既に地際部分に挿入され、第2番目の補強環11が側部開口101aから挿入されつつあり、残りの4個の補強環11がまだ外部にある状態を示している。
【0039】
図10は、上述した6個の補強環11を中空柱101の地際部分に挿入して補強した後、図1に示したように上方に引き上げていた補強組立体98を下方の所定の位置に戻し、これにより中空柱101の地際部分を補強組立体98と複数の補強環11で堅固に補強した状態を示す図である。
【0040】
図10において、6個の補強環11は、中空柱101の地際部分において複数の補強用棒状部材からなる補強組立体98の周囲を取り囲むように中空柱の内周面に沿って配設され、補強したい地際部分を中心とした所定の領域を覆うように互い密接に配設されている。上方に引き上げられていた補強組立体98は、この地際部分の6個の補強環11の内部を貫通するように下方に降ろされ、その最下端部のロッド配置用スペーサ7がストッパー17に当接することにより図10の位置に固定され、これにより補強組立体98と6個の補強環11により中空柱101の地際部分を堅固に補強している。
【0041】
なお、図10において、補強組立体98の上部には、ガイド棒固定用治具19が設けられているが、このガイド棒固定用治具19は、その中心にガイド棒13が挿入され、これによりガイド棒13を側部開口1aの近辺においても中空柱1の中心軸に合わせるようになっている。
【0042】
図1に戻って、補強組立体98が上方に引き上げられた状態において、この補強組立体98の下方の中空柱101の地際部分に側部開口101aから補強環11などを挿入して補強作業を行うに先だって、補強組立体98の真下であって側部開口101aの上部に、すなわち中空柱101内の補強作業を行う作業空間の上方に閉塞具1を設置する。この閉塞具1は、3本のビニールロープ103で上方から吊るされて一時的に固定される。なお、図1においては、3本のビニールロープ103は、閉塞具1に結ばれた先端の一部のみが図示され、その他は図面の簡単化のため省略されている。
【0043】
閉塞具1は、詳細には、図2(a)、(b)に示すように、環状部材1aと、この環状部材1aの内側に縦横に配設された閉塞部を構成する複数の棒状部材1bとで構成されている。環状部材1aは、その外径が中空柱101の内径よりも小さく、中空柱101内に挿入される場合には、その外周部が中空柱101の内周に沿うように中空柱101内において水平に設けられる。また、縦横に配設された複数の棒状部材1bは、各両端が環状部材1aの内周部に固定的に取り付けられている。
【0044】
なお、閉塞具1を構成する環状部材1aおよび棒状部材1bは、金属性であることが好ましく、この場合には各棒状部材1bの両端は環状部材1aの内周面に溶接されることが好ましいが、これに限定されるものではない。また、閉塞部は、本実施形態では棒状部材1bで構成されているが、これに限定されるものでなく、降下物を受け止められればよいものであり、例えば環状部材1aの内側に張られた鉄板などの板状の部材でもよいものである。
【0045】
閉塞具1の棒状部材1bの3か所には、前記ビニールロープ103がループ状に取り付けられ、このループ状部を構成するビニールロープ103は、その結び目がビニールテープ105で覆われるとともに、このビニールテープ105のところでステンレスワイヤロープ107に連結されている。なお、3本のビニールロープ103は、環状部材1aの周囲を三等分に等角度でほぼ均等に分割した3箇所に最も近接した棒状部材1bの各部にそれぞれ結び付けられ、これによりこの3本のビニールロープ103で閉塞具1を吊り下げた時、閉塞具1が水平になるようになっている。なお、ビニールロープ103は3本に限るものでなく、1本以上であれば4本や6本であっても良く、安定して保持されるためには3本が好適である。
【0046】
上述したように、閉塞具1にループ状に取り付けられた3本のビニールロープ103およびこのビニールロープ103に連結された3本のステンレスワイヤロープ107は、このステンレスワイヤロープ107の先端が上方に引っ張られて、図3に示すように、中空柱101の周囲に中空柱の作業のために組みこまれた足場用鉄パイプ111に取り付けられ、これにより閉塞具1は、図1に示すように、上方に引き上げられた補強組立体98の真下の側部開口101aの上部に、すなわち補強のための作業空間の上方に水平に一時的に固定される。このように閉塞具1を作業空間の上方に設けることにより、上方に引き上げた補強組立体98または補強組立体98の一部の部材が降下しても、この降下物は閉塞具1の閉塞部を構成する棒状部材1bで受け止められ、作業空間に降下することがない。なお、ビニールロープ103、ステンレスワイヤロープ107、足場用鉄パイプ111は、本発明の固定手段を構成しているものである。
【0047】
また、閉塞具1に3本のビニールロープ103を介して取り付けられた3本のステンレスワイヤロープ107は、図3から分かるように、そのうちの2本が側部開口101aから上方に引き出され、足場用鉄パイプ111に取り付けられて固定されるが、残りの1本のステンレスワイヤロープ107は、中空柱の側部開口101aの少し上に形成されている水抜孔113を貫通して外部に出た後、足場用鉄パイプ111に取り付けられ固定されている。
【0048】
また、図1において、中空柱101の下方に設けられたガイド棒13には、保護アーム組立体31が取り付けられているが、この保護アーム組立体31は、図7および図8に拡大して示すように、ガイド棒13が挿通される2個の中心部31a、31bと、この中心部31a、31bから中空柱101の内周面に向かって図7のように伸長して広がったり、中空柱1の内周面から離隔してガイド棒13にほぼ平行になって図8のように縮退してしぼむ3本の縮退自在アーム33とから構成されている。
【0049】
また、保護アーム組立体31の下側の中心部31bの下には六角形の高ナット35がガイド棒13を挿通されて取り付けられ、上側の中心部31aの上には六角形の高ナットなどからなる重り37がガイド棒13を挿通されて取り付けられ、この重り37の少し離れた上方には六角形の高ナット39がガイド棒13を挿通されて取り付けられている。
【0050】
なお、この高ナット39には、いもねじ41が螺合し得るようになっていて、このいもねじ41を螺合して締め付けることにより高ナット39をガイド棒13に固定し得るようになっている。なお、重り37は、この重り37の重量を上側の中心部31aにかけることにより、縮退自在アーム33を中空柱1の内周面に向かって図7のように伸長させて広げるためのものである。
【0051】
そして、保護アーム組立体31の中心部31bの下の高ナット35には、ワイヤ43の下端が取り付けられ、このワイヤ43の上端は、上方の高ナット39に取り付けられている。また、保護アーム組立体31の中心部31aにも、別のワイヤ45の下端が取り付けられ、このワイヤ45の上端はループ状に形成されて、高ナット39の上方に突出したガイド棒13に引っ掛けられている。
【0052】
なお、ワイヤ45を上方に引っ張ることにより重り37の重量に抗して上側の中心部31aが上方に引き上げられ、縮退自在アーム33を図8のように縮退させてしぼませることができる。
【0053】
上述したように構成され、中空柱101内において図1または図7に示すように伸長して広がった状態の保護アーム組立体31は、図1に示すように、中空柱101の側部開口101aから補強環11を中空柱101内に挿入する作業において補強環11が中空柱101の下方の底に降下することを防止するためにガイド棒13に取り付けられるものである。
【0054】
すなわち、図1に示すように、保護アーム組立体31がガイド棒13に取り付けられて、中空柱の地際部分よりも少し下方の位置に設定された状態において、補強環11を中空柱の側部開口101aから中空柱内に挿入しつつある作業中において何らかの不注意で補強環11を降下させてしまった場合、この降下した補強環11は、保護アーム組立体31の伸長して広がった縮退自在アーム33で受け止められることになり、中空柱の底まで降下することを防止できる。
【0055】
なお、中空柱の底まで降下してしまった補強環11は、簡単に拾い上げることはできないが、保護アーム組立体31の縮退自在アーム33で受け止められた場合には、側部開口101aから例えば先端がフック状の長い棒などを挿入してフック部に引っ掛けるなどしたり、または保護アーム組立体31の高ナット35に取り付けられているワイヤ43を引き上げるなどして、降下した補強環11を取り戻すことができる。
【0056】
このように降下した補強環11を受け止める保護アーム組立体31を図1に示すように中空柱101の下部のガイド棒13に取り付けるには、保護アーム組立体31の縮退自在アーム33を図8に示すように縮退させてしぼめ、このしぼめた状態で側部開口101aから中空柱101内に挿入し、この中空柱内の側部開口の付近において保護アーム組立体31の高ナット35、中心部31a、31b、重り37、高ナット39などの各部に順次ガイド棒13を挿入する。保護アーム組立体31にガイド棒13が挿入されると、保護アーム組立体31は、そのしぼんだ状態のまま、ガイド棒13に沿って中空柱内を下方に降ろされ、図6に示すように、中空柱の地際部分よりも少し下方の位置に達した時、縮退自在アーム33が図7に示すように伸長して開いた状態に設定され、この状態で上側の高ナット39をいもねじ41でガイド棒13に取り付けることにより一時的に固定される。
【0057】
図4は、先述したように、中空柱101の下方にガイド棒13を残した状態で補強組立体98を上方に引き上げて、地際部分を中心とした作業空間がガイド棒13を除いて空所になった後、閉塞具1を側部開口101aから中空柱101内に挿入しようとする状態を示しているものである。
【0058】
同図に示すように、閉塞具1は、垂直に立てるようにしながら中空柱101の側部開口101aから中空柱内に挿入されるが、この場合前記3本のビニールロープ103に連結されたステンレスワイヤロープ107の1本は、中空柱の側部開口101aの少し上に形成されている水抜孔113を貫通して外部に出され、それから上述したように足場用鉄パイプ111に取り付けられるが、残りの2本のステンレスワイヤロープ107は、側部開口101aの外にあり、そのまま側部開口101aの外で上述したように足場用鉄パイプ111に取り付けられる。
【0059】
閉塞具1は、図4に示すように側部開口101aから中空柱101内に入れられたあと、3本のステンレスワイヤロープ107で上方に引き上げられ、補強組立体98の真下の側部開口101aの上部に、すなわち補強のための作業空間の上方に図5に示すように水平に固定される。
【0060】
図5に示すように、中空柱101の下方にガイド棒13を残した状態で補強組立体98を上方に引き上げて、空所になった地際部分を中心とした作業空間の上方に閉塞具1が水平に設定された後、図6に示すように、保護アーム組立体31が上述したように下方のガイド棒13に挿入される。このように閉塞具1が作業空間の上方に入れられ、下方のガイド棒13に保護アーム組立体31が挿入された後、図1に示すように、複数、すなわち本実施形態では6個の補強環11が側部開口101aから中空柱101内に挿入される。
【0061】
この補強環11の側部開口101aからの挿入は、図1に示すように補強環11を立てながら側部開口101aから挿入し、中空柱101内に入ってから水平に戻し、ステンレスワイヤ21で吊りながら、中空柱の地際部分に設定される。このように中空柱101内に側部開口101aから挿入された6個の補強環11は、中空柱101の地際部分において中空柱101の内周面に沿って配設され、図9に示すように、補強したい地際部分を中心とした所定の領域を覆うように互い密接に配設されている。
【0062】
なお、このように6個の補強環11が地際部分に密接に配設された後、保護アーム組立体31はガイド棒13から上方に引き上げられ、側部開口101aから取り出されて、地際部分から除去されるが、図9は、このように保護アーム組立体31が除去された状態を示している。
【0063】
このように6個の補強環11が地際部分に密接に配設された後、補強組立体98は、地際部分の6個の補強環11の内部を貫通するように下方に降ろされ、その最下端部のロッド配置用スペーサ7が図10に示すようにストッパー17に当接することにより図10の位置に固定され、これにより補強組立体98と6個の補強環11により中空柱101の地際部分を堅固に補強する。
【0064】
次に、上述した一連の動作を順を追って説明する。まず、アラミドロッド3とPC鋼線5からなる複数の補強用棒状部材、この複数の補強用棒状部材を均等に保持する複数のロッド配置用スペーサ7および複数の補強用棒状部材の周囲を取り囲んで締め付けて固定している複数のビニールバンド9からなる補強組立体98は、既に地際部分に組み込まれているものとする。
【0065】
このように地際部分に組み込まれた補強組立体98は、地際部分に行う補強作業の妨げとなる物であるので、図1に示すようにステンレスワイヤ27で上方から吊り下げながら作業空間よりも上方に移動して撤去され、この移動した上方で一時的に固定する。
【0066】
このように補強組立体98を上方に移動して、補強を行う地際部分を中心とした作業空間がガイド棒13を除いて空所となった後、図4に示すように、閉塞具1を立てながら側部開口101aから中空柱101内に挿入し、図3に示すようにステンレスワイヤロープ107で水平に吊り下げながら足場用鉄パイプ111に取り付け、これにより補強組立体98の真下であって側部開口101aの上部に、すなわち中空柱101内の補強作業を行う作業空間の上方に閉塞具1を図5に示すように水平に設置する。
【0067】
図5に示すように、閉塞具1が作業空間の上方に水平に設置された後、次に中空柱101の下方にガイド棒13に図6に示すように保護アーム組立体31を挿入する。保護アーム組立体31がガイド棒13に挿入された後、図1に示すように6個の補強環11が一個ずつ順に側部開口101aから中空柱101内に挿入される。
【0068】
このような補強環11の挿入作業において、上方に一時的に吊り上げた補強組立体98やその一部の部品などが仮に降下したとしても、この降下物は、作業空間の上方に設けられた閉塞具1によって受け止められ、作業空間に降下してくることはなく、補強環11の挿入作業を安全に行うことができる。
【0069】
6個の補強環11が側部開口101aから中空柱内に挿入された後、中空柱101の下方のガイド棒13に挿入されていた保護アーム組立体31を上方に引き上げ、側部開口101aから外部に撤去する。なお、保護アーム組立体31の引き上げは、いもねじ41を取り外してからワイヤ43を側部開口101aから上方に引っ張り上げて行う。保護アーム組立体31を中空柱内から撤去すると、図9に示すように中空柱の地際部分には、6個の補強環11が取り付けられ、これにより中空柱の地際部分が更に強固に補強される。
【0070】
6個の補強環11が地際部分に設けられるとともに、保護アーム組立体31が撤去された後、図9に示すように中空柱101内に残っている閉塞具1を中空柱101から撤去する。この閉塞具1の撤去は、図4で説明した動作を逆に行うことにより達成される。
【0071】
すなわち、図9のように水平に設定されていた閉塞具1のステンレスワイヤロープ107を緩めてから、図4に示すように閉塞具1を垂直に立てながら側部開口101aを内部からくぐり抜けさせて外部に出し、最後にステンレスワイヤロープ107を水抜孔113から引っ張り出せばよい。
【0072】
このように閉塞具1を中空柱101内から撤去すると、側部開口101aより下方の地際部分を中心とした作業空間には、上述したように地際部分に設けられた6個の補強環11とガイド棒13のみが残り、この作業空間の上方には補強組立体98がステンレスワイヤ27で吊り下げられているので、次にこのステンレスワイヤ27を緩めて、補強組立体98を徐々に下方に降ろし、6個の補強環11の内部を貫通させながら、更に下方に降ろし、補強組立体98の最下端部のロッド配置用スペーサ7がストッパー17に当接することにより補強組立体98を図10の位置に固定し、これにより補強組立体98と6個の補強環11により中空柱101の地際部分を補強する。それから、最後に補強組立体98を吊り下げていたステンレスワイヤ27およびビニールロープ25をほどいて取り除き、これによりすべての作業は完了する。
【0073】
なお、上記実施形態では、補強組立体98を上方に移動し、この上方に移動した補強組立体98の下側に閉塞具1を設定し、この閉塞具1によって上方の補強組立体98やその構成部材などが降下した場合、この補強組立体98やその構成部材などの降下物を受け止めて、下方への降下を防止しているが、本発明はこれに限定されるものでなく、閉塞具1は任意の降下物を受け止め、その下方への降下を防止できるものである。
【符号の説明】
【0074】
1 閉塞具
1a 環状部材
1b 棒状部材
3 アラミドロッド
5 PC鋼線
7 ロッド配置用スペーサ
9 ビニールバンド
11 補強環
13 ガイド棒
15、19 ガイド棒固定用治具
27 ステンレスワイヤ
31 保護アーム組立体
33 縮退自在アーム
98 補強組立体
101 中空柱
101a 側部開口
103 ビニールロープ
107 ステンレスワイヤロープ
111 足場用鉄パイプ
113 水抜孔
【技術分野】
【0001】
本発明は、下部が地中に埋設されて地上に立設された、例えば鋼管柱やコンクリート製電柱等の中空柱内において、中空柱内の作業空間を確保するための中空柱の閉塞具および該閉塞具を用いた中空柱の閉塞方法に関する。
【背景技術】
【0002】
鋼管柱やコンクリート製電柱等は、通常、内部が空洞、すなわち中空の筒状体の中空柱であり、その基端部の所定長部分が地中に埋設されて地上に立設される。このような既設の中空柱は補強に際して、例えば、その地中に埋設された地中部分と地上に立設された地上部分との境の地際部分から1m程上方の側面に側面開口を形成し、この側面開口から中空柱の内部に補強用棒状部材を複数本挿入して補強している(特許文献1)。
【0003】
更に詳しくは、中空柱は、中空柱の中心軸に沿って固定的にガイド棒が立設される。このガイド棒を中心にして均等配置治具が上下方向に移動可能に保持され、さらにこの複数の均等配置治具により、複数の補強用棒状部材が中空柱の周方向に等角度で均等に配設されて、複数の補強用棒状部材と均等配置冶具とが一体的に構成される補強組立体が組まれる。そして、この補強組立体により中空柱の地際部分が補強される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007-77613号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
このように中空柱の比較的弱い地際部分を更に強固に補強するために、上述した補強組立体に加えて、中空柱の地際部分の内側に補強環などの補強部材を入れることが提案されている。このような補強環などの補強部材を中空柱の地際部分に入れて補強する作業は、従来、中空柱内の地際部分に複数の補強用棒状部材と均等配置治具とからなる補強組立体などを設けた後に行う。そのため、地際部分に補強環などの補強部材を入れるなどの補強作業を行う際には、この補強組立体などを一旦補強したい中空柱の地際部分から上方に移動し、この移動した上方で補強組立体などを一時的に紐などで締結して固定することで、補強したい地際部分に補強作業の妨げになる物がないようにしてから補強作業を行っている。
【0006】
しかしながら、前記補強作業においては、上方に移動して一時的に固定された補強組立体などが下方に移動して、補強組立体が側部開口から中空柱内で行っている補強作業の妨げになる等の支障が生じることが考えられた。
【0007】
本発明は、上記に鑑みてなされたもので、その目的とするところは、中空柱内において上方からの補強組立体や補強用棒状部材等の補強体の移動を受け止める中空柱の閉塞具および該閉塞具を用いた中空柱の閉塞方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を達成するため、請求項1記載の中空柱の閉塞具は、下部が地中に埋設されて地上に立設された中空柱の内部に設けられる作業空間を確保するために該作業空間の上方に設置される中空柱の閉塞具であって、中空柱の内径よりも小さい外径を有し、前記作業空間上部を塞ぐ閉塞手段と、この閉塞具を作業空間の上方の中空柱内に一時的に固定する固定手段とを有することを要旨とする。
【0009】
請求項1にあっては、閉塞手段が作業空間の上方において中空柱内を塞ぐことから、作業空間内への補強体等の侵入を防ぐ。
【0010】
請求項2記載の中空柱の閉塞具は、前記閉塞手段は、中空柱の内径よりも小さい外径を有する環状部材と、この環状部材の内側に棒状部材を配設してなる閉塞部とを有することを要旨とする。
【0011】
請求項2にあっては、閉塞手段は、中空柱の内径よりも小さい外径を有する環状部材と、この環状部材の内側に棒状部材を配設してなる閉塞部とを有する。
【0012】
請求項3記載の中空柱の閉塞具は、請求項1記載の中空柱の閉塞具を用いた閉塞方法であって、中空柱の作業空間において中空柱を補強する補強体補強体を作業空間よりも上方に移動した後に一時的に固定し、前記補強体の下側であってかつ作業空間の上側の中空柱内に閉塞具を挿入し、この挿入した閉塞具を中空柱内で水平に設定してから一時的に固定することを要旨とする。
【0013】
請求項3にあっては、作業の妨げとなる補強体を作業空間よりも上方に移動した後に、閉塞手段を作業空間の上方に一時的に設置して中空柱内を塞ぐことから、補強体等の作業空間内への侵入が防止される。
【0014】
これにより環状部材からなる閉塞具を中空柱内において作業空間の上方に水平に設置するため、中空柱内において作業空間の上方から降下物があったとしても、この降下物を閉塞部で受け止め、降下物の作業空間への降下を防止する。
【0015】
また閉塞部が環状部材の内側に縦横に所定の狭い間隔で配設され、各両端が環状部材の内周部に固定的に取り付けられた複数の棒状部材を有する。
【0016】
これにより閉塞部が環状部材の内側に縦横に所定の狭い間隔で配設された複数の棒状部材で構成されるため、中空柱内の作業空間の上方からの降下物は狭い間隔で配設された複数の棒状部材で受け止められ、降下物の作業空間への降下を防止する。
【0017】
また固定手段が、前記環状部材の周囲を三等分以上に等角度でほぼ均等に分割した複数の箇所に最も近接した棒状部材の各部に複数のロープをそれぞれ結び、この複数のロープを作業空間の上方で中空柱に形成された開口部から中空柱の外部に出し、外部の固定部に固定する。
【0018】
これにより環状部材の周囲を均等に分割した箇所に近接した棒状部材にロープを結び、このロープを作業空間の上方で中空柱の外部に出し、外部の固定部に固定するため、棒状部材からなる閉塞部は中空柱の上方からの降下物を確実に受け止める。
【0019】
また、ロープが、棒状部材の各部に結ばれる端部がビニールロープで構成され、このビニールロープにステンレスワイヤロープを結び、このステンレスワイヤロープを中空柱に形成された開口部から外部に出し、外部の固定部に固定される。
【0020】
これにより棒状部材に結ばれたビニールロープにステンレスワイヤロープを結び、このステンレスワイヤロープを中空柱の開口部から外部に出し、外部の固定部に固定するため、中空柱の開口部からステンレスワイヤロープを取り出して、容易に引っ張り上げる。
【0021】
また、中空柱の作業空間において作業の妨げとなる物、具体的に補強体等を上方に吊り上げながら作業空間よりも上方に移動し、この移動した上方で一時的に固定し、この移動した物の下側であって、作業空間の上方の中空柱内に閉塞具を挿入し、この挿入した閉塞具を中空柱内で水平に設定してから一時的に固定する。
【0022】
これにより中空柱の作業空間において作業の妨げとなる物を上方に吊り上げながら上方に移動して撤去し、この移動した補強体等の下側であって作業空間の上方に閉塞具を挿入するため、中空柱内において作業空間の上方から降下物があったとしても、この降下物を閉塞具の閉塞部で受け止め、降下物の作業空間への降下を防止する。
【0023】
また、中空柱の作業空間において補強体等を上方に吊り上げながら作業空間よりも上方に移動し、この移動した上方で一時的に固定し、閉塞具の環状部材の周囲を三等分以上に等角度でほぼ均等に分割した複数の箇所に最も近接した棒状部材の各部に複数のロープをそれぞれ結び、この結ばれた複数のロープのうちの少なくとも2本を中空柱の側部開口の外部に残した状態で残りのロープを中空柱の側部開口から中空柱の内部に挿入してから、中空柱の側部開口よりも上方の所定の場所に形成された孔を貫通して外部に出した状態で閉塞具を中空柱の側部開口から中空柱の内部に挿入し、この側部開口から挿入された閉塞具を中空柱内で水平に設定し、前記孔を貫通したロープを上方に引っ張り上げるとともに側部開口の外部に残された少なくとも2本のロープを側部開口の外側で上方に引っ張り上げる動作を閉塞具の水平を維持しつつ全ロープについて均等に行って、閉塞具を作業空間の上方の中空柱内に水平に設置し、上方に引っ張り上げられたロープをすべて中空柱の外部の固定部に結び付けて固定する。
【0024】
これにより中空柱の作業空間において補強体を上方に吊り上げながら上方に移動し、環状部材の周囲を均等に分割した箇所に近接した棒状部材にロープを結び、このロープを作業空間の上方で側部開口および側部開口より上方の孔から中空柱の外部に出して引っ張りながら閉塞具を中空柱内の作業空間の上方で水平に設定し外部に固定するため、中空柱内において作業空間の上方から降下物があったとしても、この降下物を閉塞具の閉塞部で受け止め、降下物の作業空間への降下を防止する。
【発明の効果】
【0025】
本発明によれば、閉塞部を有する環状部材からなる閉塞具を中空柱内において作業空間の上方に設置するので、中空柱内において作業空間の上方から降下物があったとしても、この降下物を閉塞部で受け止め、作業空間を確保することができる。
【0026】
本発明によれば、中空柱の作業空間において作業の妨げとなる物である補強組立体を吊り上げながら上方に移動し、この移動した物の下側であって作業空間の上方に閉塞具を挿入するので、中空柱内において作業空間の上方から降下物があったとしても、この降下物を閉塞具の閉塞部で受け止め、作業空間を確保することができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】本発明の一実施形態に係わる中空柱の閉塞具を鋼管柱やコンクリート製電柱等の中空柱に適用して、中空柱の地際部分の補強作業を行いつつある状態を示す説明図である。
【図2】図1に示す閉塞具1の構成を示す平面図および側面図である。
【図3】中空柱の周囲に組み込まれた足場用鉄パイプに閉塞具を吊り下げているステンレスワイヤロープを取り付けた状態を示す図である。
【図4】閉塞具を側部開口から中空柱内に挿入しようとする状態を示す図である。
【図5】図4のように中空柱の側部開口から挿入された閉塞具が補強組立体の下側に水平に設定された状態を示す図である。
【図6】図5のように閉塞具が補強組立体の下側に水平に設定された状態で中空柱の下方のガイド棒に保護アーム組立体を取り付けた状態を示す図である。
【図7】図6のように中空柱の下方のガイド棒に取り付けられた保護アーム組立体をその縮退自在アームが伸長して広がった状態で示す斜視図である。
【図8】図6のように中空柱の下方のガイド棒に取り付けられた保護アーム組立体をその縮退自在アームが縮退してしぼんだ状態で示す斜視図である。
【図9】中空柱の地際部分に6個の補強環が配設された状態を示す図である。
【図10】中空柱の地際部分を補強組立体と複数の補強環で堅固に補強した状態を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、図面を用いて、本発明を実施するための形態(以下、実施形態と称する)を説明する。
【0029】
図1は、本発明の一実施形態に係わる中空柱の閉塞具を鋼管柱やコンクリート製電柱等の中空柱101に適用して、中空柱101の地際部分の補強作業を行いつつある状態を示す説明図である。
【0030】
図1においては、中空柱101の地際部分の補強作業を行うために、アラミドロッド3とPC鋼線5からなる複数の補強用棒状部材などから構成される補強組立体98がステンレスワイヤロープ27で上方に引き上げられて一時的に固定されている状態を示す。
【0031】
更に詳しくは、この補強組立体98は、アラミドロッド3およびPC鋼線5からなる複数の補強用棒状部材が中空柱101の長手方向に沿って配設されるとともに、中空柱101の中心軸に固定的に設定される後述するガイド棒13を中心にして中空柱101の周方向に等角度で均等に配設されるように均等配置治具である複数のロッド配置用スペーサ7で固定的に保持され、このように保持された複数の補強用棒状部材の周囲を更に複数のビニールバンド9で取り囲み締め付けて固定することで全体が一体的に組み立てられている。
【0032】
なお、補強組立体98及び補強組立体98を構成するアラミドロッド3、PC鋼線5、ロッド配置用スペーサ7、ガイド棒13等はそれぞれが補強体として機能するものである。
【0033】
このように中空柱内に一体的に組み立てられた補強組立体98は、その一番上のロッド配置用スペーサ7に2本のビニールロープ25をループ状に取り付け、この2本のビニールロープ25の上端に2本のステンレスワイヤ27をそれぞれ結び、この2本のステンレスワイヤ27を中空柱101の上方に形成した2個のワイヤ通線孔29に通して中空柱101の内部から外部に取り出し、この外部に取り出した2本のステンレスワイヤ27を外部で矢印100で示す方向に引っ張ることにより補強組立体98の全体を上方に引き上げている。
【0034】
更に具体的には、補強組立体98は、中空柱101の補強作業を行う地際部分を中心とした作業空間、具体的には中空柱101の地際部分から1mほど上方の側面に中空柱101の長手方向に沿って形成された例えば幅55mm、長さ400mm程度の側部開口101aから下方の作業空間よりも上方に引き上げられている。このように補強組立体98を引き上げて空所となった側部開口101aより下方の場所は、中空柱101の補強作業を行う地際部分を中心とした作業空間であるので、補強作業の妨げとなる補強体、すなわち補強組立体98などがないことが補強作業を行う際に要求される。
【0035】
図1においては、中空柱101の底の最下端から側部開口101aの真横までには、ガイド棒13が中空柱101の中心軸上を延出して配設されている。そして、このガイド棒13の下端部には、ガイド棒固定用治具15が取り付けられている。このガイド棒固定用治具15は、ガイド棒13を中空柱101の中心軸に固定的に設定するためのものであって、このガイド棒固定用治具15をガイド棒13の下端部に取り付けてから中空柱101内に挿入することにより、ガイド棒13が中空柱101の底部において中空柱101の中心軸に固定されるようになっている。
【0036】
また、ガイド棒3のガイド棒固定用治具15が取り付けられている上方には、高ナットあるいは短パイプで構成されるストッパー17が固定的に取り付けられているが、このストッパー17は、後述する図10に示すように、補強組立体98の複数の補強用棒状部材を保持している複数のロッド配置用スペーサ7のうちの一番下のロッド配置用スペーサ7を受け止めて、この位置に固定的に支持し、この位置において補強組立体98の全体を支持するようになっている。
【0037】
なお、上述したように補強作業の妨げとなる補強組立体98などを上方に移動して地際部分を中心とした作業空間を設けた後、この空の作業空間には、ガイド棒固定用治具15で下端部が中空柱101の中心軸に固定されたガイド棒13のみが残っている。
【0038】
補強作業の妨げとなる補強組立体98などを上方に移動して地際部分周辺を含む作業空間がガイド棒13を除いて空所にした後、中空柱101の地際部分を補強するために、図1に示すように複数(本実施形態では6個)の補強環11を側部開口101aから中空柱101内に挿入する。なお、図1では、6個の補強環11のうち第1番目の補強環11が既に地際部分に挿入され、第2番目の補強環11が側部開口101aから挿入されつつあり、残りの4個の補強環11がまだ外部にある状態を示している。
【0039】
図10は、上述した6個の補強環11を中空柱101の地際部分に挿入して補強した後、図1に示したように上方に引き上げていた補強組立体98を下方の所定の位置に戻し、これにより中空柱101の地際部分を補強組立体98と複数の補強環11で堅固に補強した状態を示す図である。
【0040】
図10において、6個の補強環11は、中空柱101の地際部分において複数の補強用棒状部材からなる補強組立体98の周囲を取り囲むように中空柱の内周面に沿って配設され、補強したい地際部分を中心とした所定の領域を覆うように互い密接に配設されている。上方に引き上げられていた補強組立体98は、この地際部分の6個の補強環11の内部を貫通するように下方に降ろされ、その最下端部のロッド配置用スペーサ7がストッパー17に当接することにより図10の位置に固定され、これにより補強組立体98と6個の補強環11により中空柱101の地際部分を堅固に補強している。
【0041】
なお、図10において、補強組立体98の上部には、ガイド棒固定用治具19が設けられているが、このガイド棒固定用治具19は、その中心にガイド棒13が挿入され、これによりガイド棒13を側部開口1aの近辺においても中空柱1の中心軸に合わせるようになっている。
【0042】
図1に戻って、補強組立体98が上方に引き上げられた状態において、この補強組立体98の下方の中空柱101の地際部分に側部開口101aから補強環11などを挿入して補強作業を行うに先だって、補強組立体98の真下であって側部開口101aの上部に、すなわち中空柱101内の補強作業を行う作業空間の上方に閉塞具1を設置する。この閉塞具1は、3本のビニールロープ103で上方から吊るされて一時的に固定される。なお、図1においては、3本のビニールロープ103は、閉塞具1に結ばれた先端の一部のみが図示され、その他は図面の簡単化のため省略されている。
【0043】
閉塞具1は、詳細には、図2(a)、(b)に示すように、環状部材1aと、この環状部材1aの内側に縦横に配設された閉塞部を構成する複数の棒状部材1bとで構成されている。環状部材1aは、その外径が中空柱101の内径よりも小さく、中空柱101内に挿入される場合には、その外周部が中空柱101の内周に沿うように中空柱101内において水平に設けられる。また、縦横に配設された複数の棒状部材1bは、各両端が環状部材1aの内周部に固定的に取り付けられている。
【0044】
なお、閉塞具1を構成する環状部材1aおよび棒状部材1bは、金属性であることが好ましく、この場合には各棒状部材1bの両端は環状部材1aの内周面に溶接されることが好ましいが、これに限定されるものではない。また、閉塞部は、本実施形態では棒状部材1bで構成されているが、これに限定されるものでなく、降下物を受け止められればよいものであり、例えば環状部材1aの内側に張られた鉄板などの板状の部材でもよいものである。
【0045】
閉塞具1の棒状部材1bの3か所には、前記ビニールロープ103がループ状に取り付けられ、このループ状部を構成するビニールロープ103は、その結び目がビニールテープ105で覆われるとともに、このビニールテープ105のところでステンレスワイヤロープ107に連結されている。なお、3本のビニールロープ103は、環状部材1aの周囲を三等分に等角度でほぼ均等に分割した3箇所に最も近接した棒状部材1bの各部にそれぞれ結び付けられ、これによりこの3本のビニールロープ103で閉塞具1を吊り下げた時、閉塞具1が水平になるようになっている。なお、ビニールロープ103は3本に限るものでなく、1本以上であれば4本や6本であっても良く、安定して保持されるためには3本が好適である。
【0046】
上述したように、閉塞具1にループ状に取り付けられた3本のビニールロープ103およびこのビニールロープ103に連結された3本のステンレスワイヤロープ107は、このステンレスワイヤロープ107の先端が上方に引っ張られて、図3に示すように、中空柱101の周囲に中空柱の作業のために組みこまれた足場用鉄パイプ111に取り付けられ、これにより閉塞具1は、図1に示すように、上方に引き上げられた補強組立体98の真下の側部開口101aの上部に、すなわち補強のための作業空間の上方に水平に一時的に固定される。このように閉塞具1を作業空間の上方に設けることにより、上方に引き上げた補強組立体98または補強組立体98の一部の部材が降下しても、この降下物は閉塞具1の閉塞部を構成する棒状部材1bで受け止められ、作業空間に降下することがない。なお、ビニールロープ103、ステンレスワイヤロープ107、足場用鉄パイプ111は、本発明の固定手段を構成しているものである。
【0047】
また、閉塞具1に3本のビニールロープ103を介して取り付けられた3本のステンレスワイヤロープ107は、図3から分かるように、そのうちの2本が側部開口101aから上方に引き出され、足場用鉄パイプ111に取り付けられて固定されるが、残りの1本のステンレスワイヤロープ107は、中空柱の側部開口101aの少し上に形成されている水抜孔113を貫通して外部に出た後、足場用鉄パイプ111に取り付けられ固定されている。
【0048】
また、図1において、中空柱101の下方に設けられたガイド棒13には、保護アーム組立体31が取り付けられているが、この保護アーム組立体31は、図7および図8に拡大して示すように、ガイド棒13が挿通される2個の中心部31a、31bと、この中心部31a、31bから中空柱101の内周面に向かって図7のように伸長して広がったり、中空柱1の内周面から離隔してガイド棒13にほぼ平行になって図8のように縮退してしぼむ3本の縮退自在アーム33とから構成されている。
【0049】
また、保護アーム組立体31の下側の中心部31bの下には六角形の高ナット35がガイド棒13を挿通されて取り付けられ、上側の中心部31aの上には六角形の高ナットなどからなる重り37がガイド棒13を挿通されて取り付けられ、この重り37の少し離れた上方には六角形の高ナット39がガイド棒13を挿通されて取り付けられている。
【0050】
なお、この高ナット39には、いもねじ41が螺合し得るようになっていて、このいもねじ41を螺合して締め付けることにより高ナット39をガイド棒13に固定し得るようになっている。なお、重り37は、この重り37の重量を上側の中心部31aにかけることにより、縮退自在アーム33を中空柱1の内周面に向かって図7のように伸長させて広げるためのものである。
【0051】
そして、保護アーム組立体31の中心部31bの下の高ナット35には、ワイヤ43の下端が取り付けられ、このワイヤ43の上端は、上方の高ナット39に取り付けられている。また、保護アーム組立体31の中心部31aにも、別のワイヤ45の下端が取り付けられ、このワイヤ45の上端はループ状に形成されて、高ナット39の上方に突出したガイド棒13に引っ掛けられている。
【0052】
なお、ワイヤ45を上方に引っ張ることにより重り37の重量に抗して上側の中心部31aが上方に引き上げられ、縮退自在アーム33を図8のように縮退させてしぼませることができる。
【0053】
上述したように構成され、中空柱101内において図1または図7に示すように伸長して広がった状態の保護アーム組立体31は、図1に示すように、中空柱101の側部開口101aから補強環11を中空柱101内に挿入する作業において補強環11が中空柱101の下方の底に降下することを防止するためにガイド棒13に取り付けられるものである。
【0054】
すなわち、図1に示すように、保護アーム組立体31がガイド棒13に取り付けられて、中空柱の地際部分よりも少し下方の位置に設定された状態において、補強環11を中空柱の側部開口101aから中空柱内に挿入しつつある作業中において何らかの不注意で補強環11を降下させてしまった場合、この降下した補強環11は、保護アーム組立体31の伸長して広がった縮退自在アーム33で受け止められることになり、中空柱の底まで降下することを防止できる。
【0055】
なお、中空柱の底まで降下してしまった補強環11は、簡単に拾い上げることはできないが、保護アーム組立体31の縮退自在アーム33で受け止められた場合には、側部開口101aから例えば先端がフック状の長い棒などを挿入してフック部に引っ掛けるなどしたり、または保護アーム組立体31の高ナット35に取り付けられているワイヤ43を引き上げるなどして、降下した補強環11を取り戻すことができる。
【0056】
このように降下した補強環11を受け止める保護アーム組立体31を図1に示すように中空柱101の下部のガイド棒13に取り付けるには、保護アーム組立体31の縮退自在アーム33を図8に示すように縮退させてしぼめ、このしぼめた状態で側部開口101aから中空柱101内に挿入し、この中空柱内の側部開口の付近において保護アーム組立体31の高ナット35、中心部31a、31b、重り37、高ナット39などの各部に順次ガイド棒13を挿入する。保護アーム組立体31にガイド棒13が挿入されると、保護アーム組立体31は、そのしぼんだ状態のまま、ガイド棒13に沿って中空柱内を下方に降ろされ、図6に示すように、中空柱の地際部分よりも少し下方の位置に達した時、縮退自在アーム33が図7に示すように伸長して開いた状態に設定され、この状態で上側の高ナット39をいもねじ41でガイド棒13に取り付けることにより一時的に固定される。
【0057】
図4は、先述したように、中空柱101の下方にガイド棒13を残した状態で補強組立体98を上方に引き上げて、地際部分を中心とした作業空間がガイド棒13を除いて空所になった後、閉塞具1を側部開口101aから中空柱101内に挿入しようとする状態を示しているものである。
【0058】
同図に示すように、閉塞具1は、垂直に立てるようにしながら中空柱101の側部開口101aから中空柱内に挿入されるが、この場合前記3本のビニールロープ103に連結されたステンレスワイヤロープ107の1本は、中空柱の側部開口101aの少し上に形成されている水抜孔113を貫通して外部に出され、それから上述したように足場用鉄パイプ111に取り付けられるが、残りの2本のステンレスワイヤロープ107は、側部開口101aの外にあり、そのまま側部開口101aの外で上述したように足場用鉄パイプ111に取り付けられる。
【0059】
閉塞具1は、図4に示すように側部開口101aから中空柱101内に入れられたあと、3本のステンレスワイヤロープ107で上方に引き上げられ、補強組立体98の真下の側部開口101aの上部に、すなわち補強のための作業空間の上方に図5に示すように水平に固定される。
【0060】
図5に示すように、中空柱101の下方にガイド棒13を残した状態で補強組立体98を上方に引き上げて、空所になった地際部分を中心とした作業空間の上方に閉塞具1が水平に設定された後、図6に示すように、保護アーム組立体31が上述したように下方のガイド棒13に挿入される。このように閉塞具1が作業空間の上方に入れられ、下方のガイド棒13に保護アーム組立体31が挿入された後、図1に示すように、複数、すなわち本実施形態では6個の補強環11が側部開口101aから中空柱101内に挿入される。
【0061】
この補強環11の側部開口101aからの挿入は、図1に示すように補強環11を立てながら側部開口101aから挿入し、中空柱101内に入ってから水平に戻し、ステンレスワイヤ21で吊りながら、中空柱の地際部分に設定される。このように中空柱101内に側部開口101aから挿入された6個の補強環11は、中空柱101の地際部分において中空柱101の内周面に沿って配設され、図9に示すように、補強したい地際部分を中心とした所定の領域を覆うように互い密接に配設されている。
【0062】
なお、このように6個の補強環11が地際部分に密接に配設された後、保護アーム組立体31はガイド棒13から上方に引き上げられ、側部開口101aから取り出されて、地際部分から除去されるが、図9は、このように保護アーム組立体31が除去された状態を示している。
【0063】
このように6個の補強環11が地際部分に密接に配設された後、補強組立体98は、地際部分の6個の補強環11の内部を貫通するように下方に降ろされ、その最下端部のロッド配置用スペーサ7が図10に示すようにストッパー17に当接することにより図10の位置に固定され、これにより補強組立体98と6個の補強環11により中空柱101の地際部分を堅固に補強する。
【0064】
次に、上述した一連の動作を順を追って説明する。まず、アラミドロッド3とPC鋼線5からなる複数の補強用棒状部材、この複数の補強用棒状部材を均等に保持する複数のロッド配置用スペーサ7および複数の補強用棒状部材の周囲を取り囲んで締め付けて固定している複数のビニールバンド9からなる補強組立体98は、既に地際部分に組み込まれているものとする。
【0065】
このように地際部分に組み込まれた補強組立体98は、地際部分に行う補強作業の妨げとなる物であるので、図1に示すようにステンレスワイヤ27で上方から吊り下げながら作業空間よりも上方に移動して撤去され、この移動した上方で一時的に固定する。
【0066】
このように補強組立体98を上方に移動して、補強を行う地際部分を中心とした作業空間がガイド棒13を除いて空所となった後、図4に示すように、閉塞具1を立てながら側部開口101aから中空柱101内に挿入し、図3に示すようにステンレスワイヤロープ107で水平に吊り下げながら足場用鉄パイプ111に取り付け、これにより補強組立体98の真下であって側部開口101aの上部に、すなわち中空柱101内の補強作業を行う作業空間の上方に閉塞具1を図5に示すように水平に設置する。
【0067】
図5に示すように、閉塞具1が作業空間の上方に水平に設置された後、次に中空柱101の下方にガイド棒13に図6に示すように保護アーム組立体31を挿入する。保護アーム組立体31がガイド棒13に挿入された後、図1に示すように6個の補強環11が一個ずつ順に側部開口101aから中空柱101内に挿入される。
【0068】
このような補強環11の挿入作業において、上方に一時的に吊り上げた補強組立体98やその一部の部品などが仮に降下したとしても、この降下物は、作業空間の上方に設けられた閉塞具1によって受け止められ、作業空間に降下してくることはなく、補強環11の挿入作業を安全に行うことができる。
【0069】
6個の補強環11が側部開口101aから中空柱内に挿入された後、中空柱101の下方のガイド棒13に挿入されていた保護アーム組立体31を上方に引き上げ、側部開口101aから外部に撤去する。なお、保護アーム組立体31の引き上げは、いもねじ41を取り外してからワイヤ43を側部開口101aから上方に引っ張り上げて行う。保護アーム組立体31を中空柱内から撤去すると、図9に示すように中空柱の地際部分には、6個の補強環11が取り付けられ、これにより中空柱の地際部分が更に強固に補強される。
【0070】
6個の補強環11が地際部分に設けられるとともに、保護アーム組立体31が撤去された後、図9に示すように中空柱101内に残っている閉塞具1を中空柱101から撤去する。この閉塞具1の撤去は、図4で説明した動作を逆に行うことにより達成される。
【0071】
すなわち、図9のように水平に設定されていた閉塞具1のステンレスワイヤロープ107を緩めてから、図4に示すように閉塞具1を垂直に立てながら側部開口101aを内部からくぐり抜けさせて外部に出し、最後にステンレスワイヤロープ107を水抜孔113から引っ張り出せばよい。
【0072】
このように閉塞具1を中空柱101内から撤去すると、側部開口101aより下方の地際部分を中心とした作業空間には、上述したように地際部分に設けられた6個の補強環11とガイド棒13のみが残り、この作業空間の上方には補強組立体98がステンレスワイヤ27で吊り下げられているので、次にこのステンレスワイヤ27を緩めて、補強組立体98を徐々に下方に降ろし、6個の補強環11の内部を貫通させながら、更に下方に降ろし、補強組立体98の最下端部のロッド配置用スペーサ7がストッパー17に当接することにより補強組立体98を図10の位置に固定し、これにより補強組立体98と6個の補強環11により中空柱101の地際部分を補強する。それから、最後に補強組立体98を吊り下げていたステンレスワイヤ27およびビニールロープ25をほどいて取り除き、これによりすべての作業は完了する。
【0073】
なお、上記実施形態では、補強組立体98を上方に移動し、この上方に移動した補強組立体98の下側に閉塞具1を設定し、この閉塞具1によって上方の補強組立体98やその構成部材などが降下した場合、この補強組立体98やその構成部材などの降下物を受け止めて、下方への降下を防止しているが、本発明はこれに限定されるものでなく、閉塞具1は任意の降下物を受け止め、その下方への降下を防止できるものである。
【符号の説明】
【0074】
1 閉塞具
1a 環状部材
1b 棒状部材
3 アラミドロッド
5 PC鋼線
7 ロッド配置用スペーサ
9 ビニールバンド
11 補強環
13 ガイド棒
15、19 ガイド棒固定用治具
27 ステンレスワイヤ
31 保護アーム組立体
33 縮退自在アーム
98 補強組立体
101 中空柱
101a 側部開口
103 ビニールロープ
107 ステンレスワイヤロープ
111 足場用鉄パイプ
113 水抜孔
【特許請求の範囲】
【請求項1】
下部が地中に埋設されて地上に立設された中空柱の内部に設けられる作業空間を確保するために該作業空間の上方に設置される中空柱の閉塞具であって、
中空柱の内径よりも小さい外径を有し、前記作業空間上部を塞ぐ閉塞手段と、
この閉塞具を作業空間の上方の中空柱内に一時的に固定する固定手段と
を有することを特徴とする中空柱の閉塞具。
【請求項2】
前記閉塞手段は、中空柱の内径よりも小さい外径を有する環状部材と、この環状部材の内側に棒状部材を配設してなる閉塞部とを有することを特徴とする請求項1記載の中空柱の閉塞具。
【請求項3】
請求項1記載の中空柱の閉塞具を用いた閉塞方法であって、
中空柱の作業空間において中空柱を補強する補強体を作業空間よりも上方に移動した後に一時的に固定し、
前記補強体の下側であってかつ作業空間の上側の中空柱内に閉塞具を挿入し、
この挿入した閉塞具を中空柱内で水平に設定してから一時的に固定する
ことを特徴とする中空柱の閉塞方法。
【請求項1】
下部が地中に埋設されて地上に立設された中空柱の内部に設けられる作業空間を確保するために該作業空間の上方に設置される中空柱の閉塞具であって、
中空柱の内径よりも小さい外径を有し、前記作業空間上部を塞ぐ閉塞手段と、
この閉塞具を作業空間の上方の中空柱内に一時的に固定する固定手段と
を有することを特徴とする中空柱の閉塞具。
【請求項2】
前記閉塞手段は、中空柱の内径よりも小さい外径を有する環状部材と、この環状部材の内側に棒状部材を配設してなる閉塞部とを有することを特徴とする請求項1記載の中空柱の閉塞具。
【請求項3】
請求項1記載の中空柱の閉塞具を用いた閉塞方法であって、
中空柱の作業空間において中空柱を補強する補強体を作業空間よりも上方に移動した後に一時的に固定し、
前記補強体の下側であってかつ作業空間の上側の中空柱内に閉塞具を挿入し、
この挿入した閉塞具を中空柱内で水平に設定してから一時的に固定する
ことを特徴とする中空柱の閉塞方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【公開番号】特開2011−162949(P2011−162949A)
【公開日】平成23年8月25日(2011.8.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−23953(P2010−23953)
【出願日】平成22年2月5日(2010.2.5)
【出願人】(504239984)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年8月25日(2011.8.25)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年2月5日(2010.2.5)
【出願人】(504239984)
【Fターム(参考)】
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