説明

中綴じ本の製造方法、中綴じ本及び中綴じ機

【課題】 折丁の厚さによらず背割れを防止できる中綴じ本の製造方法などを提供することを目的とする。
【解決手段】 折丁を順に重ねて丁合した後(S1)、正確に丁合されたかを検査する(S2)。そして、重ねられた折丁の背を針金等の留め具で留めると同時に、重ねられた折丁の天地の各辺を、背から小口に向けて所定の長さだけ切れ目を入れる(S3)。その後、天地の各辺を切れ目に連続して完全に断裁し(S4)、小口辺を断裁する(S5)。つまり、一般的な断裁機を使用して天地辺を断裁する際に背割れが発生する部分を、中綴じ工程において予め断裁しておくことにより、背割れを起こすことなく天地辺を断裁でき、背割れのない中綴じ本を製作できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、中綴じ本の製造方法に関し、特には、折丁の天地辺断裁の際に発生しやすい背割れ(背むしれ)を防止して、中綴じ本をきれいに仕上げることのできる方法等に関する。さらには、背割れを防止する機構を備えた中綴じ機に関する。
【背景技術】
【0002】
中綴じ本は、一般的に、ロール紙への印刷工程、印刷紙断裁工程、中綴じ工程、三方断裁工程等を経て作成される。印刷工程においては、複数のページ分を大きな紙に印刷し、断裁工程において、この紙を指定のサイズに断裁し、断裁された印刷紙をページサイズに折り畳んだ折丁を作製する。そして、中綴じ工程においては、折丁をページ順に並べて重ね背の部分を針金などの留め部材で留める。三方断裁工程においては、中綴じされた折丁の天地辺(背に直角な二つの辺)と小口辺(背に平行な辺)を断裁機で断裁する。これにより中綴じ本が完成する。
【0003】
前述の中綴じ工程においては、重ねた印刷紙がある程度の厚みを有するため、重ねられた折丁は、背の先端にいくほど厚さが薄くなっている。つまり、側面視において、重ねられた折丁の背はV字に近いU字型であり、背の先端(中央)が重ねられた折丁の厚さ方向のほぼ中央に位置し、上側の面は背の先端から表紙側に湾曲し、下側の面は裏表紙側に湾曲している。このような折丁を三方断裁する際は、通常、折丁を水平な姿勢として、まず天地辺を断裁し、次に小口辺を断裁する。この天地辺断裁時に、下側になった印刷紙の天地辺の、背の先端から数ミリの位置にかけて、破れ又はほつれが生じることがある。このような破れやほつれは背割れあるいは背むしれと呼ばれ、商品価値が下がる要因となっている。
【0004】
この背割れの発生原因について図6を参照して説明する。
図6は、背割れの発生メカニズムを説明する図であり、図6(A)は断裁機上の折丁の状態を説明する側面図、図6(B)は図6(A)のA部の拡大図である。
裁断機60は、固定された下刃61、上下に移動可能な上刃62、折丁Pを下刃61に対して押さえるクランプ63を有する。中綴じされた折丁Pは、水平な姿勢で、天地辺が上刃61と下刃62との間に位置するように送られた後、クランプ63で押さえられる。そして、上刃62を下降させて天地辺の各々を裁断する。この際、図6(B)に示すように、折丁Pの背Bの近傍以外の部分の上側の面Fはクランプ63に密着しており、下側の面Rは下刃61に密着している。しかし、背近傍は前述のように断面形状がU字型であるため、背の上側の面B1とクランプ63と、及び、背の下側の面B2と下刃61とは密着せず、これらの間には空間が空いている。背の上側の部分B1は、クランプ63で固定されている部分Fに引っ張られて比較的緊張した状態であるので、上刃62だけでもスムーズに断裁される。しかし、背の下側の部分B2は、比較的緩んだ状態であるため固定されず、上刃62だけの押し切りとなってしまい、前述の背割れが発生する。
【0005】
このような背割れの対策として、背の部分の下側の面B2と下刃61との間の空間に、摺動可能な枕状断裁刃を挿入して断裁する装置が提案されている(例えば、特許文献1参照)。また、クランプ63に、背の部分の上側B1の面を押さえる背割れ防止具を備えた断裁機も提案されている(例えば、特許文献2参照)。
【0006】
【特許文献1】実願平4―48951号公報
【特許文献2】実用新案登録第3111720号
【0007】
これらの装置は、いずれも、背の部分の上側の面とクランプとの間の空間、又は、下側の面と下刃との間の空間を埋めるように改良を加えたものである。このような方法は、完全にこの空間を埋められるものではなく、特に、上側の面や下側の面と折丁の厚さが変わった場合には、各空間を十分に埋めきれないようなこともありうるので、完全に背割れを防ぐことができない。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は上記の問題点に鑑みてなされたものであって、折丁の厚さによらず背割れを防止できる中綴じ本の製造方法などを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の中綴じ本の製造方法は、 多数枚の印刷紙を背となる部分で二つ折りにして重ねて折丁とした後に背を針金などの留め部材で留めて中綴じし、さらにその後に折丁の天地及び小口を断裁して中綴じ本を製造する方法であって、 天地の断裁前に、天地の辺と背が交差する部分(背近傍天地辺)に切れ目を入れておくことを特徴とする。
【0010】
本発明によれば、天地辺断裁前に、折丁の天地辺に、背から小口に向けて予め所定の長さの切れ目を入れておく。そして、天地辺断裁時には、切れ目が入った部分以外の天地辺を切れ目に連続して断裁する。このように、一般的な断裁機を使用して天地辺を断裁する際に背割れが発生する部分を予め断裁しておくことにより、背割れを起こすことなく天地辺を断裁でき、背割れのない中綴じ本を製作できる。
【0011】
本発明においては、 中綴じの際に前記背近傍天地辺に背から小口方向にナイフを差し込んで切れ目を入れることとすれば、ステッチング装置等を使用した中綴じ作業と同時に、ナイフで切れ目を入れるので、工程数を増やさずに背割れのない中綴じ本を製造できる。また、一般的なステッチング機にナイフを組み込めば、ステッチング機と別の新たな装置を設ける必要がない。なお、ナイフは回転刃であってもよい。
【0012】
本発明の中綴じ本は、 多数枚の印刷紙を背となる部分で二つ折りにして重ねて折丁とした後に背を針金などの留め部材で止めて中綴じし、さらにその後に折丁の天地及び小口を断裁した中綴じ本であって、 天地の断裁前に、天地の辺と背の交差する手前の部分(背近傍天地辺)に切れ目が入れられていることを特徴とする。
【0013】
本発明の中綴じ機は、 多数枚の印刷紙を背となる部分で二つ折りにして重ねた折丁を中綴じする中綴じ機であって、 重ねた折丁の背を針金などの留め部材で留めるステッチング装置と、 重ねた折丁の天地辺に、背から小口に向けて所定の長さの切れ目を入れるナイフ装置と、を備え、 前記ナイフ装置が、 上下方向に移動可能な、折丁の背に直交する方向に延びるナイフと、 上下方向に移動可能な、折丁の背の天地辺近傍を押さえるクランプと、を有し、 前記クランプを下降させて折丁の背の天地辺近傍を押さえた後、前記ナイフを下降して、折丁の天地辺に、背から小口に向けて所定の長さだけ切れ目を入れることを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
以上の説明から明らかなように、本発明によれば、中綴じ工程において、天地辺の背から小口に向けて所定の長さだけ切れ目を入れておくので、天地辺断裁機を用いて天地辺を断裁する際には、背付近の天地辺の部分を断裁しない。このため、天地辺断裁時に起こりやすい背割れが発生せず、中綴じ本をきれいに仕上げることができる。また、天地辺に予め切れ目を入れる工程は、通常のステッチング工程と同時に行えば、製本工程数が増えることもない。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。
まず、本発明の中綴じ本製造工程を説明する。
図1は、本発明の実施の形態に係る中綴じ本製造工程(丁合以降)のフローチャートである。
図2は、本発明の実施の形態に係る中綴じ本製造装置を模式的に説明する図である。
図3、図4は、中綴じ本製造工程の中綴じ工程の一部を示す図である。
まず、図1を参照して丁合後の製造工程を簡単に説明する。S1において、折丁を順に重ねて丁合した後、S2において、正確に丁合されたかを検査する。そして、S3において、重ねられた折丁の背を針金等の留め具で留める。同時に、重ねられた折丁の天地の各辺を、背から小口に向けて所定の長さだけ切れ目を入れる。その後、S4において、天地の各辺を切れ目に連続して完全に断裁した後、S5において小口辺を断裁する。これにより中綴じ本が完成する(S6)。
【0016】
次に、図2を参照して中綴じ本製造装置を説明する。
中綴じ本製造装置1は、丁合機10、検査装置20、中綴じ機30等から構成される。これらの装置は、折丁Pの送り装置3(例えばギャザリングチェーン)の送り方向に沿って順に並んでいる。この例では、丁合機10は、送り方向に2台並んでいる。丁合機10においては、折丁Pは、表紙及び裏表紙を上側として、折り目の部分がギャザリングチェーン3に掛けられるように重ねられる。こうして重ねられた折丁Pはギャザリングチェーン3で検査装置20に搬送されて、正確に丁合されたかを検査された後、中綴じ機30に搬送される。
【0017】
中綴じ機30は、2個のナイフ装置40と所定の個数(この例では2個)のステッチング装置50からなり、折丁Pの搬送方向(折丁の高さ方向)に、ナイフ装置40、2個のステッチング装置50、ナイフ装置40の順に並んでいる。各ナイフ装置40は、搬送された折丁Pの天地辺の各々の上方に配置されている。ステッチング装置50は、コの字状に折り曲げた針金を、折丁Pの背の中央部分の2か所に上側から突き刺し、折丁を貫通した針金の先端を内側に折り曲げて、重ねられた折丁を綴じる。ナイフ装置40のナイフ43(詳細後述)は、図3に示すように、折丁Pの天地の各辺H、Tを、背Bから小口Eに向けて所定の長さだけ切れ目C1、C2を入れる。つまり、天地辺H、Tの背近傍の部分に、中綴じ工程で予め切れ目を入れておく。この作業は、ステッチング装置50の中綴じ作業と同時に行われる。
【0018】
ナイフ装置40について詳細に説明する。
図5は、ナイフ装置の一例を説明する図である。
ナイフ装置40は、ギャザリングチェーン3の上方に配置されている。同装置40は、本体41と、本体41に上下にスライド可能に設けられたナイフ43とクランプ45とを有する。本体41は、取付金具42で中綴じ機30の本体に取り付けられている。ナイフ43は、切断面が折丁Pの背Bと直交する方向にある幅を有している。2台のナイフ装置40のナイフ43間の間隔は天地辺の間隔と同じである。クランプ45の下面45aは、折丁Pの背Bと直交する方向において凹状となっている。クランプ45は、各ナイフの内側(ステッチング装置50側)に配置されている。
【0019】
ナイフ装置40の作業を説明する。
図5(A)に示すように、初期状態では、ナイフ43とクランプ45は上昇位置で本体41に支持されて待機している。折丁Pが中綴じ機30に搬送されると、まず、図5(B)に示すように、各クランプ45が下降して、折丁Pの背Bの天地辺側の端部を、ギャザリングチェーン3に対して押しつけて固定する。その後、図5(C)に示すように、各ナイフ43が下降する。これにより、図3に示すように、天地辺H、Tに、背Bから小口Eに向けて切れ目C1、C2が入る。切れ目Cの長さ(深さ)は、中綴じ本の厚さによって変わるが、1〜20mmが好ましい。切れ目C1、C2が形成された後、クランプ45及びナイフ43は上昇する。
【0020】
このようなナイフ装置40は、一般に使用されるステッチング装置50と併用して使用することができる。その場合、ステッチング装置50による中綴じ作業と同時に行うことができるので、工程数が増えない。
【0021】
その後、図4(A)に示すような、天地辺H、Tに切れ目C1、C2が入れられた中綴じ後の折丁Pは、水平姿勢となって、天地辺断裁機に送られる。同断裁機においては、図4(B)に示すように、中綴じされた折丁Pの天地辺H、Tを完全に断裁する。つまり、天地辺H、Tは、ナイフ装置40で形成された切れ目C1、C2の部分から連続して断裁される。この際、背割れの発生する背の部分には予め切れ目が入っているので、背割れが発生することはない。そして、図4(C)に示すように、小口辺断裁機に送られて、小口辺Eを断裁する。これにより中綴じ本Mが完成する。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明の実施の形態に係る中綴じ本製造工程(丁合以降)のフローチャートである。
【図2】本発明の実施の形態に係る中綴じ本製造装置を模式的に説明する図である。
【図3】中綴じ本製造工程の中綴じ工程の一部を示す図である。
【図4】中綴じ本製造工程の中綴じ工程の一部を示す図である。
【図5】ナイフ装置の一例を説明する図である。
【図6】背割れの発生メカニズムを説明する図であり、図6(A)は断裁機上の折丁の状態を説明する側面図、図6(B)は図6(A)のA部の拡大図である。
【符号の説明】
【0023】
1 中綴じ本製造装置 3 搬送装置
10 丁合機 20 検査装置
30 中綴じ機 40 ナイフ装置
41 本体 42 取付金具
43 ナイフ 45 クランプ
50 ステッチング装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
多数枚の印刷紙を背となる部分で二つ折りにして重ねて折丁とした後に背を針金などの留め部材で留めて中綴じし、さらにその後に折丁の天地及び小口を断裁して中綴じ本を製造する方法であって、
天地の断裁前に、天地の辺と背が交差する部分(背近傍天地辺)に切れ目を入れておくことを特徴とする中綴じ本の製造方法。
【請求項2】
中綴じの際に前記背近傍天地辺に背から小口方向にナイフを差し込んで切れ目を入れることを特徴とする請求項1記載の中綴じ本の製造方法。
【請求項3】
多数枚の印刷紙を背となる部分で二つ折りにして重ねて折丁とした後に背を針金などの留め部材で止めて中綴じし、さらにその後に折丁の天地及び小口を断裁した中綴じ本であって、
天地の断裁前に、天地の辺と背の交差する手前の部分(背近傍天地辺)に切れ目が入れられていることを特徴とする中綴じ本。
【請求項4】
多数枚の印刷紙を背となる部分で二つ折りにして重ねた折丁を中綴じする中綴じ機であって、
重ねた折丁の背を針金などの留め部材で留めるステッチング装置と、
重ねた折丁の天地辺に、背から小口に向けて所定の長さの切れ目を入れるナイフ装置と、を備え、
前記ナイフ装置が、
上下方向に移動可能な、折丁の背に直交する方向に延びるナイフと、
上下方向に移動可能な、折丁の背の天地辺近傍を押さえるクランプと、を有し、
前記クランプを下降させて折丁の背の天地辺近傍を押さえた後、前記ナイフを下降して、折丁の天地辺に、背から小口に向けて所定の長さだけ切れ目を入れることを特徴とする中綴じ機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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