説明

中間転写型熱転写印刷装置及びそのフィルム剥離方法

【課題】 カードの印刷品質を向上させるようにした中間転写型熱転写印刷装置及びそのフィルム剥離方法を提供する。
【解決手段】 中間転写型熱転写印刷装置は、カードSの前進につれて、第1の剥離部44の位置で、カードSの前端Sa側からフィルムFを剥離しながら、フィルムFから透明受像層42を分離させる。これによって、カードSの前端剥離が達成される。また、カードSの後退につれて、第2の剥離部46の位置で、カードSの後端側からフィルムFを剥離しながら、フィルムFから透明受像層42を分離させる。これによって、カードSの後端剥離が達成される。さらに、カードSの後端Sbをストッパ部50に突き当てることにより、後端剥離時において、ストッパ部50でカードSの後退距離を規制し、カードSが後退し過ぎることでカードSが搬送経路に戻り難くなるのを適切に防止している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、印刷画像をフィルム上に一旦転写した後、フィルム上の画像を記録媒体の表面に転写するための中間転写型熱転写印刷装置及びそのフィルム剥離方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、このような分野の技術として、特開2000−187712号公報がある。この公報に記載されたカード記録装置は、磁気ストライプ付きのカード、ICカードなどの表面に所望の画像を印刷するための装置である。すなわち、このカード記録装置は、フィルム及びカラーインクリボンをサーマルヘッドとプラテンとで挟み込んで、カラーインクリボンによってフィルム上に画像を一旦熱転写(一次転写)し、その後、フィルム上の画像とカードの表面とを重ね合わせながら、ヒートローラでフィルムを加熱させる。このとき、フィルムをカードに押圧することで、カードの表面にフィルム上の画像が再転写(二次転写)される。そして、再転写時にカードに熱圧着されたフィルムは、ヒートローラよりも下流側でカードから剥離するように流動し、これによって、カードへの画像転写が完了する。
【0003】
【特許文献1】特開2000−187712号公報
【特許文献2】特開平5−169692号公報
【特許文献3】特開平5−261952号公報
【特許文献4】特開2000−141727号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
再転写時において、前進し続けるカードからフィルムを剥離させる際、フィルムのシート基材から透明受像層が分離しながら、透明受像層がカードの表面に貼着する。このとき、カードの搬送速度やヒートローラの温度が適切でないと、図10に示すように、カード100の搬送方向(矢印101方向)においてカード100の後端100aで透明受像層が引き裂かれたようなバリ102が形成される。そして、このようなバリ102の発生は、カードの印刷品質を低下させることになる。
【0005】
本発明は、特に、記録媒体の印刷品質を向上させるようにした中間転写型熱転写印刷装置及びそのフィルム剥離方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る中間転写型熱転写印刷装置は、サーマルヘッドとプラテンとの協働により、インクリボン上の配色に基づいてフィルムの透明受像層に画像が熱転写され、このフィルムを、ヒートローラで加熱させながら記録媒体に押圧することによって、記録媒体の表面にフィルムの透明受像層を貼着させる中間転写型熱転写印刷装置において、フィルムの巻取り側ボビンとヒートローラとの間で、フィルムの搬送経路上に設けられると共に、記録媒体の前進時に記録媒体の前端側からフィルムを剥離しながら、フィルムから透明受像層を分離させる第1の剥離部と、ヒートローラとプラテンとの間で、フィルムの搬送経路上に設けられると共に、記録媒体の後退時に記録媒体の後端側からフィルムを剥離しながら、フィルムから透明受像層を分離させる第2の剥離部と、記録媒体の後退時において、第2の剥離部でフィルムが記録媒体から剥離する際に、記録媒体の後端が突き当たるストッパ部とを備えたことを特徴とする。
【0007】
この中間転写型熱転写印刷装置は、サーマルヘッドとプラテンとの協働による一次転写と、ヒートローラによる二次転写とを行うタイプの印刷装置であり、フィルム及びインクリボンを搬送させながら一次転写が実施され、フィルム及び記録媒体を搬送させながら二次転写が実施される。このような装置では、再転写(二次転写)時において、フィルムから記録媒体に画像を熱転写した後に、記録媒体からフィルムを適切に剥離させる必要がある。この剥離において、記録媒体の前進につれて、第1の剥離部の位置で、記録媒体の前端側からフィルムを剥離しながら、フィルムから透明受像層を分離させる。これによって、記録媒体の前端剥離が達成される。また、記録媒体の後退につれて、第2の剥離部の位置で、記録媒体の後端側からフィルムを剥離しながら、フィルムから透明受像層を分離させる。これによって、記録媒体の後端剥離が達成される。このように一枚の記録媒体において前端剥離と後端剥離とを行うことにより、記録媒体の両端において、透明受像層によって形成されるバリの発生が抑制される。このことは、記録媒体の印刷品質を向上させるものである。さらに、記録媒体の後端をストッパ部に突き当てることにより、後端剥離時に記録媒体の後退距離を規制し、記録媒体が後退し過ぎることで記録媒体が搬送経路に戻り難くなるのを適切に防止している。
【0008】
また、記録媒体の搬送経路上でヒートローラよりも下流側に配置されたガイドローラを更に備え、ガイドローラとストッパ部との直線的な距離は、記録媒体の前端から後端までの長さ以下であると好適である。このような構成を採用すると、剥離時に記録媒体が後退するとき、記録媒体の搬送経路上にあるガイドローラから記録媒体の前端が外れることがなく、記録媒体の後退後に記録媒体を前進させるに際して、記録媒体を搬送経路内にスムーズに導き入れることができる。
【0009】
本発明に係る中間転写型熱転写印刷装置のフィルム剥離方法は、サーマルヘッドとプラテンとの協働により、インクリボン上の配色に基づいてフィルムの透明受像層に画像が熱転写され、このフィルムを、ヒートローラで加熱させながら記録媒体に押圧することによって、記録媒体の一表面にフィルムの透明受像層を貼着させる中間転写型熱転写印刷装置において、フィルム及び記録媒体を前進させながら、記録媒体における一表面の全面に亘ってフィルムの透明受像層を貼着した後、記録媒体を後退させて、記録媒体の後端側からフィルムを剥離しながら、フィルムから透明受像層を分離させ、記録媒体の後端側の部分的な剥離後に、記録媒体を前進させて、記録媒体の前端側からフィルムを剥離しながら、フィルムから透明受像層を分離させることを特徴とする。
【0010】
この中間転写型熱転写印刷装置のフィルム剥離方法では、記録媒体の前進時において、記録媒体の前端側からフィルムを剥離しながら、フィルムから透明受像層を分離させる。これによって、記録媒体の前端剥離が達成される。また、記録媒体の後退時において、記録媒体の後端側からフィルムを剥離しながら、フィルムから透明受像層を分離させる。これによって、記録媒体の後端剥離が達成される。このように一枚の記録媒体において前端剥離と後端剥離とを行うことにより、記録媒体の両端において、透明受像層によって形成されるバリの発生が抑制される。このことは、記録媒体の印刷品質を向上させるものである。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、記録媒体の印刷品質を向上させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、図面を参照しつつ本発明に係る中間転写型熱転写印刷装置及びそのフィルム剥離方法の好適な実施形態について詳細に説明する。
【0013】
図1に示すように、中間転写型熱転写印刷装置1は、カードプリンタとも呼ばれ、印刷画像を厚さ約20μm程度の透明なフィルムFに一旦転写した後、このフィルムFから記録媒体(例えばプラスチック製のキャッシュカード、クレジットカード、プリペードカード、ICカードなど)Sに再転写する装置である。このような熱転写印刷装置1は、カードSを発行する際に利用され、高品位な画像をカードSの表面に印刷することできる。従って、セキュリティを高める目的で顔写真の入ったカードSの発行をも可能にする。
【0014】
このような中間転写型熱転写印刷装置1は、印刷予定のプラスチック製カードSを積層状態でセッティングするためのストック部2を有する。カードSは、送出し爪3の進退運動によってストック部2の一番下から一枚ずつ繰り出され、ストック部2から繰り出されたカードSは、反転部4内に一旦装填される。反転部4が水平状態から90度回転した後、送りローラ6によってカードSが上昇すると、カードSは磁気読み/書き部7内に送り込まれる。そして、この磁気読み/書き部7で、カードSの磁気ストライプ内に所定の情報を書き込んだり、磁気ストライプ内の所定の情報を読み取る。
【0015】
これに対して、送りローラ6によってカードSが下降すると、カードSは、非接触IC読み/書き部8内に送り込まれる。そして、この非接触IC読み/書き部8で、カードSのIC内に所定の情報を書き込んだり、IC内の所定の情報を読み取る。その後、反転部4から送り出されたカードSは、着脱自在なクリーニングローラ10を通過した後、ガイド溝12で両側を支持されながら、搬送ローラ11によりカードSは画像印刷される直前まで移動する。
【0016】
なお、磁気検出や非接触IC検出が必要ない場合には、反転部4は水平に維持される。また、磁気読み/書き部7又は非接触IC読み/書き部8で不適切と判断されたカードSは、反転部4の回転後、送りローラ6によってイジェクトボックス9内に排出される。
【0017】
次に、カードSへの画像転写を可能にするために、この熱転写印刷装置1は、フィルムFに画像を熱転写する記録部(一次転写部)Aと、フィルムFに転写された画像とカードSとを対向させて、カードSに画像を熱転写する再転写部(二次転写部)Bと、画像転写後のカードSの反りを矯正する反り矯正部Cとを備えている。
【0018】
さらに、この熱転写印刷装置1は、抜き差しにより交換可能なフィルムカートリッジ13とリボンカートリッジ14とを有している。このフィルムカートリッジ13では、フィルムFが上下一対のボビン15,16に巻かれ、リボンカートリッジ14では、カラーインクリボンRが上下一対のボビン17,18に巻かれている。そして、リボンカートリッジ14内のカラーインクリボンRには、溶融性又は昇華性のイエロー・マゼンタ・シアンの3色(またはブラックを加えた4色)のインクを1フレームとして周期的にインクが塗布されている。
【0019】
ここで、前述した記録部Aでは、水平方向に進退可能なフィルム引出しローラ19a,19bとプラテンローラ(通称「プラテン」)20との協働により、プラテンローラ20の略半周面にフィルムFが押し当てられるように巻き付けられ、サーマルヘッド21によって、プラテンローラ20上のフィルムFにカラーインクリボンRが押し当てられる。そして、フィルムFとカラーインクリボンRとを同期させながら下方に送ることで、加熱状態のサーマルヘッド21によって、カラーインクリボンRの第1色目(シアン)がフィルムF上に熱転写される。
【0020】
次に、ラック・ピニオン駆動機構22によってサーマルヘッド21を後退させて、フィルムFとカラーインクリボンRとを離間させた状態で、プラテンローラ20を逆転させながらフィルムFを上昇させて元の位置に復帰させる。その後、前述の転写動作を繰り返しながら、フィルムF上にマゼンタ、イエロー、ブラックの順に色を重層させて、所望のカラー画像をフィルムF上に作り出す。
【0021】
その後、フィルム引出しローラ19a,19bをプラテンローラ20から離間させた状態で、供給側ボビン15及び巻取り側ボビン16の回転によってフィルムF上の記録画像をヒートローラ23の手前まで移動させる。このとき、カードSの先端は、フィルムF上の記録画像の先端と位置合わせされ、カードSとフィルムFとは、重ね合わされた状態で再転写部Bに送り込まれる。
【0022】
この再転写部Bにおいて、位置合わせされたカードSとフィルムFとは、重ね合わされた状態でヒートローラ23と押圧ローラ24とで挟み込まれ、160〜200°Cに加熱されたヒートローラ23と押圧ローラ24との協働により、カードSとフィルムFとを加圧搬送させながら、フィルムF上の記録画像をカードSの表面に徐々に転写させる。その後、フィルムFは、カードSから剥離しながらボビン16に巻き取られていく。また、ヒートローラ23によって加熱されたカードSには反りが発生するので、カードSは、反り矯正部Cに送り込まれて加圧処理された後、真っ直ぐな状態で装置1外に排出される。
【0023】
ここで、前述した再転写部(二次転写部)Bにおいては、図2に示すように、ヒートローラ23を、押圧ローラ24に対して当接/離間させる必要があり、このヒートローラ23は揺動型として構成されている。揺動型を達成するために、ヒートローラ23は、支持部材34の先端で回転自在に保持され、支持部材34の基端は、装置本体側に取り付けられた支軸35によって回転自在に保持されている。そして、支持部材34の上部に水平に固定された押圧板36を、回動レバー37によって上から押し下げることで、ヒートローラ23と押圧ローラ24との間でフィルムF及びカードSを所定の圧力で挟み付けることができる。
【0024】
さらに、回動レバー37の基端部37aは、装置本体側に設けられた駆動モータ(図示せず)によって回動する駆動軸33に固定され、回動レバー37の先端には、押圧板36へのスムーズな当接を可能にするための転動ローラ38が設けられている。また、押圧板36から回動レバー37が離間した際にヒートローラ23を押圧ローラ24から自動的に離間させるために、支軸35と支持部材34とが、コイルバネ(図示せず)を介して連結されている。
【0025】
よって、モータ(図示せず)によって駆動軸33が正転すると、回転レバー37の転動ローラ38が下に向かって移動し、ヒートローラ23は、バネ力に抗して押圧ローラ24に向けて押し下げられる。これに対し、駆動軸33が逆転すると、回転レバー37の転動ローラ38が上に向かって移動し、ヒートローラ23は、押圧ローラ24から離間する方向にバネ力をもって上昇する。
【0026】
従って、再転写部(二次転写部)Bでは、160〜200°Cに加熱されたヒートローラ23と回転し続ける押圧ローラ24との協働により、カードSとフィルムFとを同期して加圧搬送させることができ、これによって、フィルムF上の画像をカードSの表面に徐々に転写させることができる。そして、フィルムFは、カードSから剥離しながらボビン16に巻き取られていく。
【0027】
また、図3に示すように、フィルムFは、シート基材40上に剥離層41を介して透明受像層42が設けられた構造をなしている。従って、記録部(一次転写部)Aで所望の画像を透明受像層42に転写することができ、剥離層41によって、この透明受像層42を再転写部(二次転写部)Bでシート基材40から容易に剥離することができる。そして、カードSからフィルムFを剥離する際、カードSの前端Sa及び後端Sbにおいて、透明受像層42が引き裂かれたようなバリの発生を適切に抑制する必要がある。
【0028】
そこで、図1及び図2に示すように、フィルムFの巻取り側ボビン16とヒートローラ23との間で、フィルムFの搬送経路上に前端剥離ピン(第1の剥離部)44が配置されている。この前端剥離ピン44は、フィルムFの搬送経路においてヒートローラ23よりも下流側に配置されると共に、搬送方向に対して直交するように水平方向に延在する。さらに、この前端剥離ピン44は、装置本体側に固定されると共に、フィルムカートリッジ13の下側に一体的に設けられたガイドピン13aとヒートローラ23との間に配置されている。そして、この前端剥離ピン44は、カードSの前進時にカードSの前端側からフィルムFを剪断剥離しながら、フィルムFから透明受像層42を分離させるための部材として機能する(図9参照)。
【0029】
これに対し、ヒートローラ23とプラテンローラ20との間で、フィルムFの搬送経路上に後端剥離ピン(第2の剥離部)46が配置されている。この後端剥離ピン46は、フィルムFの搬送経路においてヒートローラ23よりも上流側に配置されると共に、搬送方向に対して直交するように水平方向に延在する。さらに、この後端剥離ピン46は、フィルムカートリッジ13に一体的に固定され、フィルムカートリッジ13の下側に設けられたガイドピンが後端剥離ピン46として機能する。そして、この後端剥離ピン46は、カードSの後退時にカードSの後端側からフィルムFを剪断剥離しながら、フィルムFから透明受像層42を分離させるための部材として機能する(図8参照)。
【0030】
さらに、カードSの搬送経路上には、ヒートローラ23よりも上流側に第1のガイドローラ47が配置され、ヒートローラ23よりも下流側に第2のガイドローラ48が配置されている。この第1のガイドローラ47は、上下一対のガイドローラ47a,47bからなると共に、後端剥離ピン46の近傍で装置本体側に設けられている。また、第2のガイドローラ48は、上下一対のガイドローラ48a,48bからなると共に、前端剥離ピン44の近傍で装置本体側に設けられている。
【0031】
さらに、後端剥離ピン46の近傍には、後端剥離時においてカードSの後端Sbが突き当たる位置に板状のストッパ部50が設けられている(図8参照)。このストッパ部50は、装置本体側に固定されると共に、鉛直方向に延在するストッパ面50aを有する。そして、第2のガイドローラ48とストッパ部50のストッパ面50aとの直線的な距離は、カードSの前端Saから後端Sbまでの長さ(いわゆるカード長さ)以下に設定されている。これにより、カードSのオーバーランを防止し、カードSが後退する際でも、カードSの搬送経路上にある第2のガイドローラ48からカードSの前端Saが外れることがなく、カードSの後退後にカードSを前進させる際、カードSの搬送経路内にカードSをスムーズに導き入れることができる。
【0032】
次に、カードSの剥離動作について説明する。
【0033】
図4に示すように、カードSの搬送経路上を前進するカードSは、第1のガイドローラ47によって案内されながら、160〜200°Cに加熱されたヒートローラ23と押圧ローラ24とで挟まれるように流動する。このとき、フィルムFの透明受像層42に形成された画像とカードSの所定位置とが予め位置合わせされ、この状態で、図5に示すように、押圧ローラ24を駆動させながらカードSとフィルムFとを加圧搬送させる。これによって、フィルムFの透明受像層42をカードSの一表面に貼着させながら、所望の画像がカードSの表面に徐々に転写されていく。このとき、巻取り側ボビン16をフリーの状態にしておくことで、フィルムFの前進に追従して巻取り側ボビン16から所定量のフィルムFが繰り出される。
【0034】
そして、カードSの一表面の全体に亘って透明受像層42を貼着させることで、フィルムFの画像がカードSに完全に転写される。その後、モータ(図示せず)によって駆動軸33を逆転させて、回転レバー37の転動ローラ38を上方に向かって移動させ、ヒートローラ23を、押圧ローラ24から離間する方向にバネ力をもって上昇させる(図2参照)。これによって、押圧ローラ24からヒートローラ23が離間し、カードSからフィルムFを剥離させる準備が整えられる。
【0035】
その後、図6に示すように、カードSが後退する方向に供給側ボビン15を回転させながら、巻取り側ボビン16により余剰なフィルムFを巻き取る。これによって、カードSがフィルムFと一緒に後退を開始する。このとき、カードSの後端Sbが後端剥離ピン46に達するまで、フィルムFは、カードSから剥離されない。
【0036】
その後、図7及び図8に示すように、カードSがさらに後退するように供給側ボビン15を回転し続けると、カードSの後端側からフィルムFの剥離が開始される。そして、カードSの後退につれて、後端剥離ピン46の位置で、カードSの後端側からフィルムFが剥離し続ける。このとき、フィルムFのシート基材40から透明受像層42が分離し、この透明受像層42はカードSの表面に貼着する。このようにして、カードSの後端側からフィルムFを剥離させ、これによって、カードSの確実な後端剥離が達成され、カードSの後端Sbにおいて透明受像層42のバリの発生が抑制される。
【0037】
また、カードSの後端Sbはストッパ部50のストッパ面50aに突き当たり、この直後に供給側ボビン15の回転が停止し、カードSの後退を停止させる。これによって、第2のガイドローラ48からカードSの前端Saが外れることがなく、カードSの後退後にカードSを前進させるに際して、カードSを搬送経路内にスムーズに導き入れることができる。すなわち、後端剥離時において、ストッパ部50でカードSの後退距離を規制し、カードSが後退し過ぎることでカードSが搬送経路に戻り難くなるのを適切に防止している。
【0038】
このようにカードSの後端側の部分的な剥離後、巻取り側ボビン16によるフィルムFの巻き取りを開始し、図9に示すように、カードSの前進につれて、前端剥離ピン44の位置で、カードSの前端側からフィルムFが剥離し続ける。このとき、フィルムFのシート基材40から透明受像層42が分離し、この透明受像層42はカードSの表面に貼着する。このようにして、カードSの前端側からフィルムFを剥離させ、これによって、カードSの確実な前端剥離が達成され、カードSの前端Saにおいて透明受像層42のバリの発生が抑制される。そして、フィルムFの剥離後、カードSは、反り矯正部Cに送り込まれて加圧処理された後、装置1外に排出される。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【図1】本発明に係る中間転写型熱転写印刷装置の一実施形態を示す断面図である。
【図2】再転写部(二次転写部)におけるヒートローラの揺動構造を示す側面図である。
【図3】フィルムを示す断面図である。
【図4】カードに画像を転写する直前の状態を示す側面図である。
【図5】カードに画像の転写が完了した状態を示す側面図である。
【図6】カードの後端からフィルムを剥離する直前の状態を示す側面図である。
【図7】カードの後端がストッパ部に当接した状態を示す側面図である。
【図8】図7の要部拡大断面図である。
【図9】カードの前端からフィルムを剥離している途中の状態を示す断面図である。
【図10】剥離時において、透明受像層からなるバリがカードの端部に発生した状態を示す斜視図である。
【符号の説明】
【0040】
1…中間転写型熱転写印刷装置、20…プラテンローラ(プラテン)、21…サーマルヘッド、23…ヒートローラ、40…シート基材、42…透明受像層、44…前端剥離ピン(第1の剥離部)、46…後端剥離ピン(第2の剥離部)、48…第2のガイドローラ(ガイドローラ)、50…ストッパ部、S…カード(記録媒体)、Sa…カード(記録媒体)の前端、Sb…カード(記録媒体)の後端、F…フィルム、R…カラーインクリボン(インクリボン)。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
サーマルヘッドとプラテンとの協働により、インクリボン上の配色に基づいてフィルムの透明受像層に画像が熱転写され、このフィルムを、ヒートローラで加熱させながら記録媒体に押圧することによって、前記記録媒体の表面に前記フィルムの前記透明受像層を貼着させる中間転写型熱転写印刷装置において、
前記フィルムの巻取り側ボビンと前記ヒートローラとの間で、前記フィルムの搬送経路上に設けられると共に、前記記録媒体の前進時に前記記録媒体の前端側から前記フィルムを剥離しながら、前記フィルムから前記透明受像層を分離させる第1の剥離部と、
前記ヒートローラと前記プラテンとの間で、前記フィルムの搬送経路上に設けられると共に、前記記録媒体の後退時に前記記録媒体の後端側から前記フィルムを剥離しながら、前記フィルムから前記透明受像層を分離させる第2の剥離部と、
前記記録媒体の後退時において、前記第2の剥離部で前記フィルムが前記記録媒体から剥離する際に、前記記録媒体の前記後端が突き当たるストッパ部とを備えたことを特徴とする中間転写型熱転写印刷装置。
【請求項2】
前記記録媒体の搬送経路上で前記ヒートローラよりも下流側に配置されたガイドローラを更に備え、
前記ガイドローラと前記ストッパ部との直線的な距離は、前記記録媒体の前記前端から前記後端までの長さ以下であることを特徴とする請求項1記載の中間転写型熱転写印刷装置。
【請求項3】
サーマルヘッドとプラテンとの協働により、インクリボン上の配色に基づいてフィルムの透明受像層に画像が熱転写され、このフィルムを、ヒートローラで加熱させながら記録媒体に押圧することによって、前記記録媒体の一表面に前記フィルムの前記透明受像層を貼着させる中間転写型熱転写印刷装置において、
前記フィルム及び前記記録媒体を前進させながら、前記記録媒体における前記一表面の全面に亘って前記フィルムの前記透明受像層を貼着した後、前記記録媒体を後退させて、前記記録媒体の後端側から前記フィルムを剥離しながら、前記フィルムから前記透明受像層を分離させ、
前記記録媒体の後端側の部分的な剥離後に、前記記録媒体を前進させて、前記記録媒体の前端側から前記フィルムを剥離しながら、前記フィルムから前記透明受像層を分離させることを特徴とする中間転写型熱転写印刷装置のフィルム剥離方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2006−199442(P2006−199442A)
【公開日】平成18年8月3日(2006.8.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−13100(P2005−13100)
【出願日】平成17年1月20日(2005.1.20)
【出願人】(000001225)日本電産コパル株式会社 (755)
【Fターム(参考)】