説明

中間転写記録媒体、及び画像記録繊維質基材

【課題】
インクジェット方式で画像を印画でき、印画する際には画像が滲まず、乾燥が早く、かつ、媒体へ転写された画像は耐スクラッチ性、洗濯堅牢度などの耐久性に優れる中間転写記録媒体、及び画像記録繊維質基材を提供する。
【解決手段】
基材11、離型層13、保護層15及び受容層21が積層されてなる中間転写記録媒体10であって、保護層15が架橋ポリエステル樹脂とフィラーとを含み、受容層21がカチオン性ウレタン系樹脂、カチオン性フィックス剤、フィラー及び分子内に2個以上のアジリジニル基を有するアジリジン誘導体とを含むことを特徴とし、保護層15が架橋ポリエステル樹脂:フィラー=100:5〜20で、受容層21のカチオン性ウレタン系樹脂:分子内に2個以上のアジリジニル基を有するアジリジン誘導体=100:1〜15であることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、中間転写記録媒体に関し、さらに詳しくは、インクジェット方式で個人用途などの1枚のみ又は少ロットの好みの画像を簡便に印画でき、前記画像をTシャツ等の繊維質素材に重ねてアイロン等で加熱加圧することで簡便に転写でき、転写後の画像は耐擦傷性や洗濯堅牢度などの耐久性に優れる中間転写記録媒体、及び画像記録繊維質基材に関するものである。
【0002】
本明細書において、配合を示す「比」、「部」、「%」などは特に断わらない限り質量基準であり、「/」印は一体的に積層されていることを示す。また、「PET」は「ポリエチレンテレフタレート」、「MEK」は「メチルエチルケトン」の略語、機能的表現、通称、又は業界用語である。
【背景技術】
【0003】
(主なる用途)本発明の中間転写記録媒体を用いて画像を転写してなる画像記録繊維質基材(被転写体、媒体)の主なる用途としては、例えば、繊維質基材から構成されているTシャツなどの衣類、カートン、ケース、外装紙などの包装材類、バッグ類などの装身具、鑑賞券、グリーティングカード、封筒、タグ、しおり、カレンダー、ポスター、パンフレット、ネームプレート、レポート用紙など文具類、建材、パネル、エンブレム、履物、靴などがある。しかしながら、個人用途などの1枚のみ又は少ロットの画像を、アイロン等で加熱加圧することで転写する用途であれば、特に限定されるものではない。
【0004】
(背景技術)近年、個人の好みが多様化し個性化が進み、多くの個人向け商品は多品種小ロット生産の傾向が高まっている。ステーショナリーやアパレル製品では、1個人に1つのオンリーワン製品までが要望されている。しかしながら、従来の布や紙などの繊維質素材、例えばTシャツへの画像の形成は直接スクリーン印刷するか、転写紙へオフセットやスクリーン印刷法で印刷した後に、Tシャツへ転写する方法のために、少ロット製品では極端に製造コストが上昇して現実的ではないという問題点があった。
従って、布や紙などの繊維質素材への少ロットの画像形成方法は、如何に容易に低コストにて製造でき、かつ、画像は高画質で、洗濯などの使用での耐久性に優れることが求められている。
【0005】
(先行技術)従来、剥離シート、絵柄を有する絵柄保持層および熱可塑性ポリマーから形成された接着層の構成で、上記絵柄保持層が親水性ポリマーからなり、絵柄保持層のインク吸収性が接着層のインク吸収性よりも大とすることで、接着層側からインクを滲透させて絵柄を形成することを特徴とする転写シート(本願発明の中間転写記録媒体に相当する)が知られている(例えば、特許文献1参照。)。しかしながら、絵柄保持層と接着層とにインク吸収性の差をつけるために材料が限定され、製造コストが高いという問題点がある。
また、Tシャツ等の表面に加熱したアイロンにて押さえることで転写する熱転写シートであって、Tシャツ等に転写された転写シートのカラートナー画像が表面化しないように、片面にシリコーン層を形成した基材に溶剤系ポリウレタン樹脂を塗布した乾燥塗膜にて形成したa層、該a層の上に水溶性ポリウレタン樹脂に酸化チタン15部と多孔性シリカ混入品50部と熱可塑性粉体等を混入したウレタン樹脂製の水性インク受容層を乾燥塗膜として形成したb層、そして該b層の上に多孔性シリカ混入品と熱可塑性粉体等を混入したウレタン樹脂を塗布した乾燥塗膜を形成したc層にて構成した撥水性熱転写シートが知られている(例えば、特許文献2参照。)。しかしながら、受容層がa層b層c層の3層からなり、工程が煩雑でコストが高くなるという欠点がある。
さらに、本出願人も、被転写体に受容層を熱転写して形成するもので、受容層はインクジェット用インクを受容するための多孔質または粒子状形態を備えているので、被転写体の種類を問わず高画質を得ることができる、基材の一方の面に、剥離可能な受容層を設けたインクジェット用受容層転写シート(本発明の中間転写記録媒体に相当する)を開示している(例えば、特許文献3参照。)。しかしながら、専用紙と同等の高画質を得ることを目的とするもので、画像の洗濯などの使用での耐久性については記載も示唆もされていない。
【0006】
【特許文献1】特開昭62−242600号公報
【特許文献2】特開2004−232148号公報
【特許文献3】特開平11−277895号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
そこで、本発明はこのような問題点を解消するためになされたものである。その目的は、少ロットの布や紙などの繊維質素材への画像の形成が、インクジェット方式で個人用途などの1枚のみ又は少ロットの好みの画像を簡便に低コストで印画でき、前記画像をTシャツ等の繊維質素材に重ねてアイロン等で加熱加圧することで簡便に転写でき、転写後の画像は耐擦傷性や洗濯堅牢度などの耐久性に優れる中間転写記録媒体、及び画像記録繊維質基材を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の課題を解決するために、請求項1の発明に係わる中間転写記録媒体は、基材と、該基材の一方の面に少なくとも離型層、保護層及び受容層が積層されてなる中間転写記録媒体であって、前記保護層が飽和共重合ポリエステル樹脂をイソシアネート化合物で架橋した架橋ポリエステル樹脂とフィラーとを含み、前記受容層がカチオン性ウレタン系樹脂、カチオン性フィックス剤、フィラー及び分子内に2個以上のアジリジニル基を有するアジリジン誘導体とを含み、かつ前記受容層がインクジェット方式で印画できるように、したものである。
請求項2の発明に係わる中間転写記録媒体は、上記保護層が架橋ポリエステル樹脂に対するフィラーの配合割合が質量基準で、架橋ポリエステル樹脂:フィラー=100:5〜20で、かつ、上記受容層のカチオン性ウレタン系樹脂に対する分子内に2個以上のアジリジニル基を有するアジリジン誘導体の配合割合が質量基準で、カチオン性ウレタン系樹脂:分子内に2個以上のアジリジニル基を有するアジリジン誘導体=100:1〜15であるように、したものである。
請求項3の発明に係わる画像記録繊維質基材は、繊維質基材と、該繊維質基材の一方の面へ飽和共重合ポリエステル樹脂を含む定着層を設け、該定着層面へ、請求項1〜2のいずれかに記載の中間転写記録媒体の上記受容層へインクジェット方式で画像を印画した後に、保護層及び画像が形成された前記受容層が転写されてなるように、したものである。
【発明の効果】
【0009】
請求項1の本発明によれば、少ロットの布や紙などの繊維質素材への画像の形成が、インクジェット方式で個人用途などの1枚のみ又は少ロットの好みの画像を簡便に低コストで印画でき、前記画像をTシャツ等の繊維質素材に重ねてアイロン等で加熱加圧することで簡便に転写でき、転写後の画像は耐擦傷性や洗濯堅牢度などの耐久性に優れる中間転写記録媒体が提供される。
請求項2の本発明によれば、請求項1の効果に加えて、耐擦傷性及び洗濯堅牢度などの耐久性により優れる中間転写記録媒体が提供される。
請求項3の本発明によれば、簡便に低コストで印画された好みの画像が転写され、該画像は耐擦傷性や洗濯堅牢度などの耐久性に優れる画像記録繊維質基材が提供される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照しながら、詳細に説明する。
図1は、本発明の1実施例を示す中間転写記録媒体の断面図である。
図2は、本発明の中間転写記録媒体への画像を形成した断面図である。
図3は、画像を形成した本発明の中間転写記録媒体と、定着層を設けた繊維質基材とをアイロン転写を説明する断面図である。
図4は、本発明の1実施例を示す画像記録繊維質基材の断面図である。
図5は、本発明の中間転写記録媒体を用いて、繊維質基材へ転写する工程を説明する工程図である。
【0011】
(中間転写記録媒体)本発明の中間転写記録媒体10は、図1に示すように、基材11と、該基材11の一方の面へ離型層13、保護層15、及び受容層21を有する。これらの層間及び/又は層表面へ、必要に応じてプライマ層、印刷層などの他の層を設けてもよい。保護層15は飽和共重合ポリエステル樹脂をイソシアネート化合物で架橋した架橋ポリエステル樹脂とフィラーとを含み、好ましくは架橋ポリエステル樹脂に対するフィラーの配合割合が質量基準で、架橋ポリエステル樹脂:フィラー=100:5〜20とする。受容層21はカチオン性ウレタン系樹脂、カチオン性フィックス剤、フィラー及び分子内に2個以上のアジリジニル基を有するアジリジン誘導体とを含み、かつ受容層21へはインクジェット方式で印画することができ、好ましくは、受容層21のカチオン性ウレタン系樹脂に対する分子内に2個以上のアジリジニル基を有するアジリジン誘導体の配合割合が質量基準で、カチオン性ウレタン系樹脂:分子内に2個以上のアジリジニル基を有するアジリジン誘導体=100:1〜15とする。さらに、受容層21へインクジェット方式で画像103を印画した状態を図2に示す。画像103を印画した本発明の中間転写記録媒体10を被転写体(繊維質基材101)へ、図3に示すように転写することで、図4に示すような画像記録繊維質基材100となる。
【0012】
中間転写記録媒体10は、次のような効果を奏することができる。(1)保護層15は飽和共重合ポリエステル樹脂をイソシアネート化合物で架橋した架橋ポリエステル樹脂とフィラーとを含ませることで、紫外線硬化樹脂に匹敵する耐摩耗性、耐スクラッチ性(耐擦傷性)耐久性に優れる。(2)保護層15は紫外線硬化樹脂ではないので、紫外線を照射せず、該工程が不要で、紫外線照射装置も不要で、従来の装置で容易に製造できる。(3)中間転写記録媒体10から保護層15及び受容層21を被転写体である繊維質基材101へ転写する際には、保護層15が離型層13から容易に剥離するので、例えば家庭用のアイロンでも転写性よく転写することができる。(4)受容層23はカチオン性ウレタン系樹脂、カチオン性フィックス剤、フィラーを含んでおり、インクジェット方式で個人情報などの画像を、滲まず、乾燥性よく印画することができる。(5)しかも、受容層23は分子内に2個以上のアジリジニル基を有するアジリジン誘導体をも含んでおり、インクジェット方式のインキの定着性がよく、耐溶剤性や耐洗濯性などの耐久性に優れる。
【0013】
また、画像記録繊維質基材100は、次のような効果を奏することができる。(1)画像記録繊維質基材100には保護層15及び受容層21(画像103が印画されている)が転写され、画像記録繊維質基材100の最表面は保護層15となり、該保護層15は飽和共重合ポリエステル樹脂をイソシアネート化合物で架橋した架橋ポリエステル樹脂とフィラーとを含み、紫外線硬化樹脂に匹敵する耐摩耗性、耐スクラッチ性(耐擦傷性)耐久性に優れる。(2)従って、多数回の繰り返し使用でも、耐摩耗性、耐スクラッチ性(耐擦傷性)耐久性に優れ、従来の紫外線硬化樹脂(ハードコート層とも呼称される)による保護層と比較しても、遜色なく媒体の表面を強固に保護することができる。(3)受容層23に印画された画像103はインクジェット方式での印画であるので、該画像は溶融転写又は昇華タイプの熱転写インクリボンを用いる熱転写方法による転写画像と異なって、インクリボンを使用しないので、個人情報などの痕跡が残らず、セキュリティ性に優れる。(4)また、画像103はインクジェット方式での印画であるので、個人用途などの1枚のみ又は少ロットの好みの画像を簡便に低コストで印画できる。(5)該画像103をTシャツ等の繊維質基材に重ねてアイロン等で加熱加圧することで簡便に転写できるので、個人用途などの1枚のみのものへ、好みの画像を形成させることができる。(6)転写後の画像103が印画された受容層21は、保護層15と定着層31との間に挟まれており、外力による摩擦や引掻きに強く、また洗濯でも退色しにくく耐久性に優れる。
【0014】
(基材)基材11としては、特に限定されるではなく、好ましい基材11の具体例としては、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等の耐熱性の高いポリエステル、ポリプロピレン、ポリカーボネート、酢酸セルロース、ポリエチレン誘導体、ポリアミド、ポリメチルペンテン等のプラスチックの延伸または未延伸フィルムが挙げられる。また、これらの材料を2種以上積層した複合フィルムも使用することができる。基材フィルムの厚さは、その強度および耐熱性等が適切になるように材料に応じて適宜選択することができるが、通常は1〜100μm程度のものが好ましく用いられる。
【0015】
(離型層)転写時の剥離性を向上させるために離型層13を設け、必要に応じて、離型層13の代わりに剥離層も設けてもよく、離型層13及び剥離層の両方を設けるとより転写性をより向上できる。
【0016】
(離型層)離型層13としては、通常、離型性樹脂、離型剤を含んだ樹脂、電離放射線で架橋する硬化性樹脂などがあるが、好ましくはメラミン系樹脂を用い、後述するハードコート層14と組合わせることで、離型層13との剥離性が安定し、転写時の転写性を向上させることができる。離型層13の形成は、該樹脂を溶媒へ分散又は溶解して、ロールコート、グラビアコートなどの公知のコーティング方法で、塗布し乾燥して、温度150℃〜200℃程度で焼き付ける。離型層13の厚さとしては、通常は0.01μm〜5.0μm程度、好ましくは0.5μm〜3.0μm程度である。
(剥離層)必要に応じて設ける剥離層としては、一般的にはエチルセルロース、ニトロセルロース、酢酸セルロースなどのセルロース誘導体、ポリメタクリル酸メチル、ポリメタクリル酸エチル、ポリアクリル酸ブチルなどのアクリル系樹脂、ポリ塩化ビニル、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、ポリビニルブチラールなどのビニル共重合体の熱可塑性樹脂や、不飽和ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、アミノアルキッド樹脂などの熱硬化型の樹脂を用いて形成することができる。また、離型層には箔切れ性を向上させるために、マイクロシリカやポリエチレンワックスなどのフィラーを含有させることが好ましい。離型層は、上記の樹脂を溶媒へ分散又は溶解して、ロールコート、グラビアコート、バーコートなどの公知のコーティング方法で、少なくとも1部に塗布し乾燥して塗膜を形成したりすれば良い。離型層の厚さとしては、通常は0.1μm〜5μm程度、好ましくは0.5μm〜2μm程度である。離型層13及び剥離層の両方を設ける場合には、適宜組み合わせて用いればよく、この場合には、剥離層は転写後には被転写体へ転写移行して、保護層としての機能を合わせ持つ。
【0017】
(保護層)保護層15としては、飽和共重合ポリエステル樹脂をイソシアネート化合物で架橋させた架橋ポリエステル樹脂とフィラーとを含ませる。飽和共重合ポリエステル樹脂は末端に水酸基を有するもので、例えば、市販のユニチカ社製のエリーテルUE3410、UE−3510などが例示できる。イソシアネート化合物としては、イソシアネート基を2個以上含むイソシアネート化合物やウレタン系樹脂で、例えば、市販の日本ポリウレタン社製のコロネートL、コロネートHL、三井ポリウレタン社製のタケネートD103H、タケネートD165Nなどが例示できる。架橋ポリエステル樹脂は上記の飽和共重合ポリエステル樹脂を上記のイソシアネート化合物で架橋させればよい。
【0018】
(保護層の形成)保護層15は、飽和共重合ポリエステル樹脂、イソシアネート化合物、フィラー、及び必要に応じて添加剤を、溶媒へ分散又は溶解して、ロールコート、グラビアコート、コンマコートなどの公知のコーティング方法で、塗布し乾燥した後に、加温室で硬化(反応)させて保護層15となる。保護層15の厚さとしては、通常は1μm〜30μm程度、好ましくは2μm〜20μm程度である。複数回の塗布でもよい。
【0019】
フィラーとしてはマイクロシリカやポリエチレンワックスなどが例示でき、好ましくは架橋ポリエステル樹脂に対するフィラーの配合割合が質量基準で、架橋ポリエステル樹脂:フィラー=100:5〜20とする。この範囲未満では耐スクラッチ性が不足であり、この範囲を超えて透明性が低下する。
【0020】
(受容層)保護層15面へ、必要に応じてプライマー層を介して、受容層21を設ける。該受容層21は中間転写記録媒体10の最表面となり、該受容層21にはインクジェット方式によって画像が印画される。インクジェット用受容層21はインクジェット用受容層組成物を塗布したもので、該インクジェット用受容層組成物は、少なくともカチオン性ウレタン系樹脂、カチオン性フィックス剤、フィラー、及び分子内に2個以上のアジリジニル基を有するアジリジン誘導体とを含ませる。該受容層21の成分のうち、複数の成分が相互に反応していると推測されるが、生成物が明らかでなく、本発明の受容層21は成分相互の反応物も含むものとする。
【0021】
カチオン性ウレタン系樹脂としてはカチオン性基を有するポリカーボネート系ポリウレタン、ポリテトラメチレンエーテルグリコール系ポリウレタン、ポリエステルエーテル系ポリウレタン、ポリブチレンアジペート系ポリウレタン、ポリメチルペンタンアジペート系ポリウレタン、ポリノナンジオールアジペート/ポリオクタンアジペート系ポリウレタン、ポリメチルペンタンアジペート系ポリウレタンなどのウレタン系樹脂で、好ましくは自己乳化性又は水性で、カチオン性親水基を有するポリカーボネート系又はポリエステル系のポリオールと脂肪族イソシアネート化合物の反応物が好ましい。カチオン性基としては1〜3級アミン或いは4級アンモニウム塩基などが例示できる。
【0022】
(カチオン性フィックス剤)カチオン性フィックス剤としては、ポリアミン誘導体や第4級アンモニウム塩などの染料固着剤が例示できる。
【0023】
(フィラー)フィラーとしては、箔切れ性を良くし、透明性を害さない程度に含有させ、シリカ、アルミナ、炭酸カルシウム、プラスチックピグメント等の透明性の高い微粒子やワックス等で、マイクロシリカが好ましい。
【0024】
(アジリジニン誘導体)アジリジル誘導体としては分子内に2個以上のアジリジニル基を有する化合物を用い、好ましくは、
【化1】

(式中、R1は水素原子、炭素数1〜3のアルキル基、又はR2−OCH2−で、R25は水素原子、塩素原子、アルキル基、ハロゲン化アルキル基、アルキルアルコール基、アクリル酸アルキル基、アルキルフェノール基で、同一でも異なってもよい。)
【化2】

(式中、R610は水素原子、塩素原子、アルキル基、ハロゲン化アルキル基、アルキルアルコール基、アクリル酸アルキル基、アルキルフェノール基で、同一でも異なってもよい。nは1〜3の整数)
一般式1におけるR35のうち2個以上が一般式2の構造を有する化合物、即ち、分子内に2個以上のアジリジニル基を有するアジリジル誘導体である。
【0025】
分子内に2個以上のアジリジニル基を有するアジリジン誘導体、例えば、トリメチロールプロパン−トリス−(α−メチル−α−アジリジニルアセテート)、トリメチロールプロパン−トリス−(α−エチル−α−アジリジニルアセテート)、トリメチロールメタン−トリス−(β−(1−アジリジニルプロピオナート))、トリメチロールエタン−トリス−(β−(1−アジリジニルプロピオナート))、トリメチロールブタン−トリス−(β−(1−アジリジニルプロピオナート))、モノエトキシトリメチロールメタン−トリス−(β−(1−アジリジニルプロピオナート))、トリメチロールエタン−トリス−(β−(2−メチル-1−アジリジニルプロピオナート))、テトラメチロールメタン−トリス−(α−メチル−α−アジリジニルアセテート)、テトラメチロールエタン−トリス−(β−(1−アジリジニルプロピオナート))、ジトリメチロールプロパン−ヘキサキス−(β−アジリジニルプロピオナート)、ジトリメチロールプロパン−ペンタキス−(β−(2−メチルアジリジニルプロピオナート)等が挙げられる。
【0026】
好ましくは、トリメチロールメタン−トリス−(β−(1−アジリジニルプロピオナート))、トリメチロールエタン−トリス−(β−(1−アジリジニルプロピオナート))、トリメチロールプロパン−トリス−(β−(1−アジリジニルプロピオナート))、トリメチロールブタン−トリス−(β−(1−アジリジニルプロピオナート))、トリメチロールエタン−トリス−(β−(2−メチル-1−アジリジニルプロピオナート))、トリメチロールプロパン−トリス−(β−(2−メチル−1−アジリジニルプロピオナート))、トリメチロールプロパン−トリス−(β−(2,2−ジメチル−1−アジリジニルプロピオナート))、トリメチロールプロパン−トリス−(α−メチル−β−(1−アジリジニルプロピオナート)、トリメチロールプロパン−トリス−(β−メチル−β−(1−アジリジニルプロピオナート)、テトラメチロールメタン−トリス−(α−メチル−α−アジリジニルアセテート)、テトラメチロールメタン−トリス−(β−(1−アジリジニルプロピオナート)、テトラメチロールエタン−トリス−(β−(1−アジリジニルプロピオナート))、テトラメチロールメタン−トリス−(β−(2−プロピル−1−アジリジニルプロピオナート))、テトラメチロールメタン−トリス−(β−(2−メチル−1−アジリジニルプロピオナート))、テトラメチロールメタン−トリス−(β−(2,2−ジメチル−1−アジリジニルプロピオナート)、テトラメチロールメタン−トリス−(β−(2,2−ジエチル−1−アジリジニルプロピオナート)テトラメチロールメタン−テトラキス−β−(1−アジリジニルプロピオナート)、テトラメチロールメタン−テトラキス−β−メチル−β−(1−アジリジニルプロピオナート)、テトラメチロールメタン−テトラキス−β−(2−メチル−1−アジリジニルプロピオナート)、ジトリメチロールプロパン−ヘキサキス−(β−アジリジニルプロピオナート)、ジトリメチロールプロパン−ペンタキス−(β−(2−メチルアジリジニルプロピオナート)が好ましく、トリメチロールプロパン−トリス−(β−(1−アジリジニルプロピオナート)、テトラメチロールメタン−トリス−(β−(1−アジリジニルプロピオナート)、テトラメチロールメタン−テトラキス−(β−アジリジニルプロピオナート)である。
【0027】
分子内に2個以上のアジリジニル基を有するアジリジン誘導体について市販されているものとしては、例えば、相互薬工社製のTAZM(トリメチロールプロパン−トリス−(β−アジリジニルプロピオナート)、TAZO(テトラメチロールメタン−トリス−(β−(1−アジリジニルプロピオナート)))日本触媒製のケミタイトPZ−33(トリメチロールプロパン−トリス−(β−アジリジニルプロピオナート))等が挙げられる。3個のアジリジニル基を有するアジリジン誘導体が、硬化する反応性の速さ、硬化後に網目状となるので耐久性の高さ点で、特に好ましい。
【0028】
カチオン性ウレタン系樹脂とカチオン性フィックス剤とマイクロシリカと分子内に2個以上のアジリジニル基を有するアジリジン誘導体との割合が質量基準でカチオン性ウレタン系樹脂:カチオン性フィックス剤:マイクロシリカ:分子内に2個以上のアジリジニル基を有するアジリジン誘導体=100:5〜20:1〜10:1〜15である。カチオン性フィックス剤の含有割合が上記範囲未満では定着性が悪く、上記範囲を越えると洗濯中に溶出して堅牢性を低下させる。マイクロシリカの含有割合が上記範囲未満ではインキ定着性が悪く、上記範囲を越えると透明性が低下し画像が見えにくくなる。
【0029】
アジリジン誘導体の添加量は、本発明の効果を阻害しない量であれば特に制限されないが、通常カチオン性ウレタン系樹脂に対する分子内に2個以上のアジリジニル基を有するアジリジン誘導体の配合割合が質量基準で、カチオン性ウレタン系樹脂:分子内に2個以上のアジリジニル基を有するアジリジン誘導体=100:1〜15が好ましく、さらに好ましくは100:3〜10である。アジリジン誘導体は水溶性の硬化剤として機能するので、アジリジン誘導体の含有割合が上記範囲未満では、硬化が不足するために耐水性や耐アルコール性などの耐溶剤性などの耐久性が充分ではなく、上記範囲を越えると透明性が低下し画像が見えにくくなる。
【0030】
インクジェット用の受容層21の形成は、上記の材料を溶媒へ分散又は溶解して、必要に応じて添加剤を添加し、媒体101の少なくとも一方の面へ、必要に応じてコロナ処理やプライマ層を設けて、ロールコート、グラビアコート、コンマコート、ダイコートなどの公知のコーティング方法で、塗布し乾燥すればよい。そのの厚さとしては、通常は1μm〜15μm程度、好ましくは2μm〜10μm程度である。
【0031】
(他の層)層間及び/又は層表面へ必要に応じて設ける層としては、プライマ層、印刷層、帯電防止層、背面滑性層などがあり、それぞれ公知のものでよい。特に、印刷層としては、着色インキや蛍光インキなどを用いて、公知のスクリーン印刷やグラビア印刷法で印刷すればよい。
【0032】
(プライマ層)特に、受容層21を設ける際に、接着力を向上させるために、保護層15面へプライマー層を設けることが好ましい。該プライマ層としては、例えば、ポリウレタン系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリアミド系樹脂、エポキシ系樹脂、フェノール系樹脂、ポリ塩化ビニル系樹脂、ポリ酢酸ビニル系樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、酸変性ポリオレフィン系樹脂、エチレンと酢酸ビニル或いはアクリル酸などとの共重合体、(メタ)アクリル系樹脂、ポリビニルアルコール系樹脂、ポリビニルアセタール樹脂、ポリブタジエン系樹脂、ゴム系化合物などを使用することができ、好ましくは、酸素若しくは窒素を有するもの、若しくはイソシアネート化合物化合物を反応性のもの、例えばアクリル樹脂、ウレタン樹脂、アミド樹脂、エポキシ樹脂、アイオノマー樹脂、ゴム系樹脂等の従来の接着剤として既知のものである。該プライマ層は膜厚が薄いので必ずしも含有しなくてもよいが、マイクロシリカやポリエチレンワックスなどのフィラーを含有させることが好ましい。
【0033】
(繊維質基材)被転写体(媒体)となる繊維質基材101としては、繊維質であれば特に限定されず、例えば、布や、植物パルプ、プラスチック、ガラス、金属、セラミックスなどの繊維からなる織物、不織布、抄紙したものなどのいずれのものでもよく、またそれらの複数層からなっていてもよい。また、繊維質基材101の媒体はその少なくとも1部が着色、印刷、その他の加飾が施されていてもよい。
【0034】
繊維質基材101へ転写方法は、図5に示すように、ステップS11で中間転写記録媒体10を準備し、ステップS12では中間転写記録媒体10の受容層21面へ画像を形成する。別途、ステップS21で繊維質基材101を準備し、ステップS22で繊維質基材101の転写面へ定着層31を形成する。次に、ステップS33では、ステップS12で中間転写記録媒体10の画像が形成された受容層21面と、ステップS22で定着層31が形成された繊維質基材101の定着層31面とを重ね合せて、図3に示すように、例えばアイロンなどで加熱加圧して転写し、ステップS34で基材11と離型層13とを剥離し除去することで、画像記録繊維質基材100となる。
【0035】
(定着層)定着層31としては、受容層に含まれているバインダと転写時の加熱加圧によって軟化及び/又は溶融して、密着して一体化するものであれば、特に限定されない。例えば、ポリエステル系樹脂、エチレン−酢酸ビニル共重合体、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、ポリスチレン系樹脂、アクリル系樹脂、ポリウレタン系樹脂、アクリルウレタン樹脂、これらの樹脂の変性樹脂、及びこれらの樹脂の混合物が挙げられ、好ましくは受容層21のバインダ樹脂と同系樹脂であるポリウレタン系樹脂や、ポリエステル系樹脂、さらに好ましくは飽和共重合ポリエステル樹脂であり、飽和共重合ポリエステル樹脂としては末端に水酸基を有するもので、例えば、市販のユニチカ社製のエリーテルUE3410、UE−3510などが例示できる。
【0036】
(定着層の形成)定着層31は、ポリエステル系樹脂、及び必要に応じて添加剤を、溶媒へ分散又は溶解して、ロールコート、刷毛塗り、インクジェットコート、スプレーコートなどの公知のコーティング方法で、塗布し乾燥すればよい。定着層31の厚さとしては、通常は5μm〜100μm程度、好ましくは10μm〜50μm程度である。複数回の塗布でもよい。塗布場所を自由に選べるスプレーコートが好ましい。
【0037】
本願発明の中間転写記録媒体10の受容層21では含まれているバインダが熱接着性を有し、転写時の熱で密着して一体化するので、転写をすることができ、しかも、被転写体である繊維質基材101へ転写には、接着機能を増すために、定着層31を設けているので、繊維質基材101の表面へ転写時の加熱加圧によって受容層21と軟化及び/又は溶融して密着して強固に接着した転写をすることができる。
【0038】
(インクジェット)ステップS12の中間転写記録媒体10の受容層21面へ画像103の形成は、受容層21へインクジェット方式で印画すればよい。インクジェット方式には熱や圧力によるインパクト法などがあるが特に限定されず、インクジェットインキも水性や油性インキなどがあるが特に限定されない。また、インクジェット方式で形成する画像103も、円形や星形などのスポット状、文字、数字、イラスト、写真などの任意の形状でよく、その色調も単独、複数、フルカラー用など限定されるものではない。好ましくは、オンデマンドで可変情報をインクジェット方式で印画したり、個人用途などの1枚のみ画像を印画したりすることができる。しかも簡便に低コストで印画できる。また、インクジェット方式では、画像103を印画する際に、個人情報などの痕跡が残るインクリボンを使用せず、また、画像103を印画する際にも、画像が滲まず、乾燥が早いので効率よく印画することができる。
【0039】
(転写)繊維質基材101への転写工程は図3に示すように、画像103とが形成された中間転写記録媒体10の受容層21面を繊維質基材101面の定着層31面へ重ね合わせて加熱し基材を剥離して転写する。画像103とが形成された受容層21/プライマー層(必要に応じて)/保護層15とが繊維質基材101へ転写されて、画像記録繊維質基材100となる。該転写方法としては、公知の転写法でよく、例えば、熱刻印によるホットスタンプ(箔押)、熱ロールによる全面又はストライプ転写、サーマルヘッド(感熱印画ヘッド)によるサーマルプリンタ(熱転写プリンタともいう)などの公知の方法が適用でき、図示のようにアイロンによる手作業でも容易に転写できる。転写の形状は円形、矩形、星形などのスポット状などの任意の形状でよい。
【0040】
(インライン操作)画像103の印画と、転写とは、別々のオフライン操作でも、連続して行うインライン操作でもよい。好ましくはインライン操作でも画像103が滲まず、乾燥が早いので、画像103を印画した直後でも転写操作をすることができる。
【0041】
(定着性)従来のインクジェット方式による画像としては、画像の形成は容易であるが、これらの画像は耐久性、特に耐摩擦性が劣るという欠点がある。従来のインクジェット用受容層はポリビニルアルコールなどの水溶性樹脂を主体とするもので、耐水性は著しく悪く、また、多孔質質のフィラーを用いたり、受容層塗工液の溶媒として良溶媒と貧溶媒を用いて、乾燥中に相分離、ゲル化させて多孔質の網目構造とさせたり、していたが、画像の定着性が充分でなく、洗濯時に画像が淡く退色したり、滲んだりする問題点もあった。
【0042】
これに対して、本発明の中間転写記録媒体の受容層21に、インクジェット方式によって印画された画像103でも、高画質で定着性がよく、印画された画像は耐擦傷性、耐水性や耐アルコール性などの耐溶剤性、洗濯堅牢度などの耐久性に優れるようになる。定着性と洗濯堅牢度の両立は定かではないが、カチオン性ウレタン系樹脂、カチオン性フィックス剤、フィラー、及び分子内に2個以上のアジリジニル基を有するアジリジン誘導体とを含むことで、塗膜の表面が微細な凹凸状となったり、塗膜自身の凝集状態も密ではなくかなり粗状になっていたり、また、分子内に2個以上のアジリジニル基を有するアジリジン誘導体が他の成分を反応して、網目状や凝集状態の安定化したりするために、画像成分との密着性が向上し、特に、耐アルコール性が向上させることができる。また、画像を構成する染料などがカチオン性ウレタン系樹脂、カチオン性フィックス剤、分子内に2個以上のアジリジニル基を有するアジリジン誘導体と硬化などの反応や相互に作用すると推測される。しかも、転写後の画像103が印画された受容層21は、保護層15と定着層31との間に挟まれており、洗濯でも退色しにくく耐久性に優れ、また、最表面となる保護層15は飽和共重合ポリエステル樹脂をイソシアネート化合物で架橋した架橋ポリエステル樹脂とフィラーとを含むので、外力による摩擦や引掻きに強く、耐久性に優れている。
【実施例】
【0043】
以下、実施例及び比較例により、本発明を更に詳細に説明するが、これに限定されるものではない。なお、溶媒を除き、各層の各組成物は固形分換算の質量部である。
【0044】
(実施例1)基材11として厚さ20μmのPETフィルムを用い、該基材11の一方の面へ、グラビアコート法で、下記の離型層樹脂組成物(塗工液)を乾燥後2μmになるように塗布し乾燥して、180℃20秒間焼き付けて、離型層13を形成した。
・<離型層の樹脂組成物>
TCM01メジューム(大日本インキ社製、メラミン樹脂商品名) 25部
溶媒(MEK:トルエン=1:1) 75部
該離型層13面へ、下記の保護層組成物をグラビアリバースコーターで乾燥後の厚さが5μmになるように、塗工し100℃で乾燥させた後に、40℃の環境下に3日間放置して硬化させて、保護層15を形成した。
・<保護層組成物>
エリーテルUE−3410
(ユニチカ社製、飽和共重合ポリエステル樹脂商品名)100部
コロネートHL
(日本ポリウレタン社製、イソシアネート化合物商品名) 5部
ポリエチレンワックス(平均粒径3〜5μm、球状) 5部
溶媒(トルエン:メチルエチルケトン=1:1) 400部
該保護層15面へ、下記のプライマ層組成物をグラビアコーターで乾燥後の塗布量が0.5μmになるように、塗工し100℃で乾燥させて、プライマ層とした。
・<プライマ層組成物途工液>
ポリエステル樹脂 20部
マイクロシリカ(平均粒子径0.5μ) 1部
溶媒(トルエン:メチルエチルケトン=1:1)80部
該プライマ層16面へ、下記の受容層組成物をグラビアリバースコーターで乾燥後の厚さが4μmになるように塗工し乾燥させて、受容層21とし、画像の形成されていない中間転写記録媒体10を得た。
・<受容層組成物>
第4級アンモニウム塩型ポリカーボネート系ポリウレタン 100部
ダンフィックス505RE(日東紡績社製;ポリカチオン性フィックス剤)10部
マイクロシリカ(平均粒子径0.5μ) 5部
ケミタイトPZ−33(日本触媒製、アジリジン誘導体商品名) 3部
溶媒(水) 300部
【0045】
(実施例2)下記の保護層組成物及び受容層組成物を用いる以外は、実施例1と同様にして、実施例2の中間転写記録媒体10を得た。
・<保護層組成物>
エリーテルUE−3410
(ユニチカ社製、飽和共重合ポリエステル樹脂商品名)1000部
コロネートHL
(日本ポリウレタン社製、イソシアネート化合物商品名) 5部
ポリエチレンワックス(平均粒径3〜5μm、球状) 10部
溶媒(トルエン:メチルエチルケトン=1:1) 400部
・<受容層組成物>
第4級アンモニウム塩型ポリカーボネート系ポリウレタン 100部
ダンフィックス505RE(日東紡績社製;ポリカチオン性フィックス剤)10部
マイクロシリカ(平均粒子径0.5μ) 5部
ケミタイトPZ−33(日本触媒社製、アジリジン誘導体) 5部
溶媒(水) 300部
【0046】
(実施例3)下記の保護層組成物及び受容層組成物を用いる以外は、実施例1と同様にして、実施例3の中間転写記録媒体10を得た。
・<保護層組成物>
エリーテルUE−3410
(ユニチカ社製、飽和共重合ポリエステル樹脂商品名)100部
コロネートHL
(日本ポリウレタン社製、イソシアネート化合物商品名) 5部
ポリエチレンワックス(平均粒径3〜5μm、球状) 15部
溶媒(トルエン:メチルエチルケトン=1:1) 400部
・<受容層組成物>
第4級アンモニウム塩型ポリカーボネート系ポリウレタン 100部
ダンフィックス505RE(日東紡績社製;ポリカチオン性フィックス剤)10部
マイクロシリカ(平均粒子径0.5μ) 5部
ケミタイトPZ−33(日本触媒社製、アジリジン誘導体) 10部
溶媒(水) 300部
【0047】
(比較例1)下記の保護層組成物及び受容層組成物を用いる以外は、実施例1と同様にして、比較例1の中間転写記録媒体10を得た。
・<保護層組成物>
エリーテルUE−3410
(ユニチカ社製、飽和共重合ポリエステル樹脂商品名)100部
溶媒(トルエン:メチルエチルケトン=1:1) 400部
・<インクジェット用受容層組成物>
第4級アンモニウム塩型ポリカーボネート系ポリウレタン 100部
ダンフィックス505RE(日東紡績社製;ポリカチオン性フィックス剤)10部
マイクロシリカ(平均粒子径0.5μ) 5部
溶媒(水) 300部
【0048】
(比較例2)下記の保護層組成物及び受容層組成物を用いる以外は、実施例1と同様にして、比較例2の中間転写記録媒体10を得た。
・<保護層組成物>
エリーテルUE−3410
(ユニチカ社製、飽和共重合ポリエステル樹脂商品名)100部
コロネートHL
(日本ポリウレタン社製、イソシアネート化合物商品名) 5部
ポリエチレンワックス(平均粒径3〜5μm、球状) 25部
溶媒(トルエン:メチルエチルケトン=1:1) 400部
・<インクジェット用受容層組成物>
第4級アンモニウム塩型ポリカーボネート系ポリウレタン 100部
ダンフィックス505RE(日東紡績社製;ポリカチオン性フィックス剤)10部
マイクロシリカ(平均粒子径0.5μ) 5部
ケミタイトPZ−33(日本触媒社製、アジリジン誘導体) 20部
溶媒(水) 300部
【0049】
(実施例4〜6、比較例3〜4)実施例1〜3及び比較例1〜2の中間転写記録媒体10の受容層21へ、600dpiのカラーインクジェットプリンターで、公知の水性インクジェット用インクを用いて、オンデマンド方式で画像103としてカラー顔写真を印画した。別途、繊維質基材101として木綿製のTシャツを用いて、該Tシャツの転写部分へ転写部分よりやや大きめに、エリーテルUE−3410(ユニチカ社製、飽和共重合ポリエステル樹脂商品名)を固形分が10%になれように溶媒(トルエン:メチルエチルケトン=1:1)で稀釈してスプレーし乾燥して、乾燥後の厚さが30〜50μmの定着層31を形成した。該定着層31面へ前記の画像103を重ねて、中間転写記録媒体10の基材11面から加熱したアイロンを押し当てて転写した後に、基材11及び離型層13を剥離し徐去して、画像が転写されたTシャツ(実施例4〜6及び比較例3〜4の画像記録繊維質基材100)を得た。なお、実施例1〜3及び比較例1〜2の中間転写記録媒体10の受容層21へのインクジェット方式での印画はいずれも問題なかった。
【0050】
(評価)評価は洗濯試験、耐スクラッチ性、透明性で行った。
洗濯試験は、JIS L−0217 103法に準じ、洗濯40℃、12分、すすぎ40℃、2.5分の3回繰り返しで洗濯を実施し乾燥した。画像に著しい変化が認められず実用上支障ないものを合格とした。
耐スクラッチ性は、保護層15の表面に対して、荷重条件20kPa(200g/cm2)の下、スチールウール0000番を10回往復させた後、傷つき度合いを目視により観察し、表面に著しい傷が認められず実用上支障ないものを合格とした。
透明性は、インクジェット方式での印画画像を目視で観察し、画像の見やすさに著しい変化が認められず実用上支障ないものを合格とした。
【0051】
(評価結果)実施例4〜6では洗濯試験、耐スクラッチ性、透明性のすべてが合格であった。比較例4では洗濯試験、耐スクラッチ性が合格であったが、透明性が不合格であった。比較例3では透明性が合格であったが、洗濯試験、耐スクラッチ性が不合格であった。
【図面の簡単な説明】
【0052】
【図1】本発明の1実施例を示す中間転写記録媒体の断面図である。
【図2】本発明の中間転写記録媒体への画像を形成した断面図である。
【図3】画像を形成した本発明の中間転写記録媒体と、定着層を設けた繊維質基材とをアイロン転写を説明する断面図である。
【図4】本発明の1実施例を示す画像記録繊維質基材の断面図である。
【図5】本発明の中間転写記録媒体を用いて、繊維質基材へ転写する工程を説明する工程図である。
【符号の説明】
【0053】
10:中間転写記録媒体
11:基材
13:離型層
15:保護層
21:受容層
100:画像記録繊維質基材
101:繊維質基材
103:画像

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材と、該基材の一方の面に少なくとも離型層、保護層及び受容層が積層されてなる中間転写記録媒体であって、前記保護層が飽和共重合ポリエステル樹脂をイソシアネート化合物で架橋した架橋ポリエステル樹脂とフィラーとを含み、前記受容層がカチオン性ウレタン系樹脂、カチオン性フィックス剤、フィラー及び分子内に2個以上のアジリジニル基を有するアジリジン誘導体とを含み、かつ前記受容層がインクジェット方式で印画できることを特徴とする中間転写記録媒体。
【請求項2】
上記保護層が架橋ポリエステル樹脂に対するフィラーの配合割合が質量基準で、架橋ポリエステル樹脂:フィラー=100:5〜20で、かつ、上記受容層のカチオン性ウレタン系樹脂に対する分子内に2個以上のアジリジニル基を有するアジリジン誘導体の配合割合が質量基準で、カチオン性ウレタン系樹脂:分子内に2個以上のアジリジニル基を有するアジリジン誘導体=100:1〜15であることを特徴とする請求項1に記載の中間転写記録媒体。
【請求項3】
繊維質基材と、該繊維質基材の一方の面へ飽和共重合ポリエステル樹脂を含む定着層を設け、該定着層面へ、請求項1〜2のいずれかに記載の中間転写記録媒体の上記受容層へインクジェット方式で画像を印画した後に、保護層及び画像が形成された前記受容層が転写されてなることを特徴とする画像記録繊維質基材。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2009−297930(P2009−297930A)
【公開日】平成21年12月24日(2009.12.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−152498(P2008−152498)
【出願日】平成20年6月11日(2008.6.11)
【出願人】(000002897)大日本印刷株式会社 (14,506)
【Fターム(参考)】