説明

丸ブラシ素子の製造方法

【課題】 丸ブラシ素子の中心部に形成される溶着部の機械的強度を高める。
【解決手段】溶着ホーン3の小径棒体3aが、糸束1の中心部に糸材をかき分けて強制的に押し込まれる。また同時に、溶着ホーン3の本体先端面で糸束1を周囲へ直角に押し広げる。溶着ホーン3の空気孔3aから吐出される空気は80〜120℃に加熱されている。このため、糸束1が、押し広げ成形、及び溶着に先立って100℃程度に予熱される。この予熱により、太い糸束1であるにもかかわらず、その糸束1の成形性が良くなり、大きな糸押さえなしでも、また比較的小径のホーン先端面でも、糸束1を周囲へ直角に開いた状態に成形できる。また、小出力の溶着ホーンで溶着できるので、過剰加熱を防止でき、溶着部の品質をナイロン糸と同等の品質に仕上げることができ、その機械的強度を飛躍的に高めることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、円筒状ブラシに使用される丸ブラシ素子の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
歯ブラシの一種として円筒型歯ブラシがある。これは、特許文献1に示されるように、軸方向に操作される柄の先端部に円筒型のブラシヘッドを取付けたものであり、柄の中心線回りにおいて方向性がないため、従来の歯ブラシにはない数々の特徴を有し、歯科医師の間でも注目を集めている。
【0003】
【特許文献1】 特開2005−103225公報
【0004】
この円筒型歯ブラシは、通常の歯ブラシと同様に軸方向に往復操作されるように形成された柄と、柄の先端部に形成された小径軸部に嵌め込まれた円筒状のブラシヘッドとからなる。ブラシヘッドは複数枚の丸ブラシ素子を中心軸方向に積層して構成されている。個々の丸ブラシ素子は、中心部に貫通孔(中心孔)を有する薄い円板状の溶着部と、溶着部の周囲全周から放射状に延出した多数本の糸材からなる刷毛部とから構成される。
【0005】
この丸ブラシ素子は、ナイロン樹脂からなる所定本数の糸材を束ねた糸束から製造される。具体的には、加工テーブルに設けた通し孔に下から糸束を通し、加工テーブル上に所定長さ突出させる。糸束の突出部の上から超音波方式の溶着ホーンが下降する。溶着ホーンは中心部に空気孔を有しており、ここから空気を下方へ吹き下ろすことにより、糸束の突出部を周囲に広げる。そのまま溶着ホーンが下降を続けることにより、糸束の突出部を周囲へ直角に押し倒し、押し広げを完了する。この状態で、押し広げられた糸束の中心部を溶着ホーンの平坦な先端面により溶融接合し、薄い円板状の溶着部を形成する。
【0006】
溶着が終わると、溶着ホーンが退避し、代わってカッターが加工テーブルの通し孔上に位置し、下降して、溶着部の中心を円形に切除することにより、中心孔を形成する。また溶着部から糸束を切り離す。かくして、前述した丸ブラシ素子が製造される。丸ブラシ素子を除去された糸束の先端溶着部は、次の丸ブラシ素子の製造に備えて切除される。
【0007】
このような丸ブラシ素子を中心軸方向に複数枚積層して構成された円筒状のブラシヘッドを、柄の先端部に回転可能に取り付けた歯ブラシも知られている。
【0008】
前述した円筒型歯ブラシの問題点の一つとして、円筒状のブラシヘッドを構成する丸ブラシ素子の機械的強度が低いことがある。具体的には、丸ブラシ素子の円板状の溶着部が破れやすい。丸ブラシ素子を構成する個々の糸材はナイロン糸であり、1本でも非常に強く、人の力ではなかなか引きちぎれないほどである。溶着部は多数本の糸材が集合一体化してできているので、本来なら非常に高強度であるはずである。しかしながら、現実の溶着部は手で簡単に破ることができる程度の強度しか持ち合わせない。
【0009】
円筒型歯ブラシは方向性がないため老人用歯ブラシや幼児用歯ブラシとしても適する。幼児等は成人と違い予想外の行動にでることが少なくなく、歯磨き中はブラシヘッドを噛み潰するようなことをしばしばする。その場合、これまでの円筒型歯ブラシでは、ブラシヘッドから丸ブラシ素子が破れて脱離する危険があり、必ずしも安全性が高いとは言えなかった。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明の目的は、丸ブラシ素子の溶着部に高い機械的強度を効率的に付与できる丸ブラシ素子の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的を達成するために、本発明の丸ブラシ素子の製造方法は、所定本数の糸材を束ねた糸束をガイド孔を通してテーブル上へ突出させる工程と、糸束をテーブル上で周囲へ放射状に開く工程と、テーブル上で放射状に開いた糸束の中心部を溶着して丸ブラシ素子となす工程と、丸ブラシ素子を糸束から分離する工程とを含む丸ブラシ素子の製造方法において、前記テーブル上で放射状に開いた糸束の中心部を溶着する前に、前記糸束を予熱するものである。
【0012】
テーブル上で放射状に開いた糸束の中心部の溶着には、通常は超音波方式の溶着ホーンを使用するが、電気ヒータ等で加熱された棒状ヘッド(熱溶着棒)を使用してもよい。
【0013】
図1は丸ブラシ素子を製造するときの溶着予定部の温度変化を示すグラフである。丸ブラシ素子の材料に使用される樹脂は熱可塑性樹脂であって、通常はナイロン610、ナイロン612、PBTの3種類である。ナイロン610、ナイロン612といったナイロン樹脂の融点は約230℃である。テーブル上で放射状に開いた糸束の中心部を溶着ホーンの先端面で溶着する場合、溶着予定部の温度変化は線Aのようになる。すなわち、丸ブラシ素子の1個あたりの溶着時間短縮のために大出力の溶着ホーンが使用され、その結果、溶着予定部は常温から急激にナイロン樹脂の融点に到達する。具体的には溶着開始から0.5秒程度で融点に達する。
【0014】
しかし、溶着における温度設定、時間設定はシーケンサー等によりプログラムされ、電気的に行われるため、タイムラグが避けられず、僅かなタイムラグでも温度が過剰に上がる。例えばタイムラグが0.1秒とすれば、温度勾配が急なために270℃程度まで昇温する。この結果、溶着部ではは過剰加熱となってナイロン樹脂が本来有する物性を失い、カサカサ状態となって大変に脆く砕けやすいものになる。このことが溶着部の機械的強度の低い原因であることがわかった。
【0015】
これに加え、急激な加熱はナイロン糸の表面を高温にして脆くし、中心部は逆に熱量不足のため未溶融部として残るという問題も発生させる。最良の溶着部は、ナイロン糸と同様の色合い(透明糸の場合は透明な溶着部)である。溶着部の過剰加熱を防止するためには小出力の溶着ホーンにより時間をかけて溶着を行えばよい。しかし、その場合は溶着時間が長くなり、生産性が低下する。
【0016】
このような事情に鑑み、本発明者は糸束の溶着前の予熱に着目した。糸束を予熱しておく、例えば100℃に予熱しておくと、融点までの温度差は130℃に減少し、0.5秒で130℃温度を上げればよいだけであるから、線Bのように0.1秒のタイムラグがあっても到達温度は250℃まで下がる。実際は小出力の溶着ホーンを使用する(超音波容量が激減する)ため、線Cのようになり、その結果、多少のタイムラグがあっても、溶着部の温度は溶融温度を大きく超えない。したがって、溶着部の物性変化が抑制され、その材料が本来的に有する優れた物性が溶着部にも付与される。
【0017】
加えて、予熱により糸束が軟化するために糸束の成形性が上がる。すなわち、テーブル上で糸束を周囲へ放射状に開くときの成形性が良好となる。
【0018】
本発明者は丸ブラシ素子における糸材本数を増加させるために、溶着ホーンの先端部に小径軸部を設け、テーブル上で周囲へ放射状に開いた糸束の中心部にその小径軸部を差し込み、テーブルのガイド孔内の糸束を棒体外周面により中心側から円筒形状に溶着し、溶着部の内側に中心孔を同時形成する方法を開発した。この方法によれば、円板状の溶着部の中心部分に中心孔を切開する工程が不要のため、テーブルの通し孔の内径による本数制約がなくなり、多くの本数の糸材からなる太い糸束を使用でき、しかも小さな中心孔を形成できる。多くの本数の糸材からなる太い糸束を使用することにより、丸ブラシ素子の厚みを大きくできる。
【0019】
太い糸束を使用すると、溶着部の体積が大きくなり、溶着時間の延長や大容量超音波による溶着部の過剰加熱が大きな問題となるが、予熱によりこの問題を解決することができる。また、糸束を放射状に開く作業が難しくなるが、予熱によりこの成形作業も容易となる。
【0020】
勿論、従来からの円板状の溶着部の形成の際に予熱を用いることも効果的である。
【0021】
糸束の予熱方法としては、溶着ホーンを加熱する、テーブルを加熱する、テーブル下の糸束上下装置を加熱する、糸束の中心部に向けて吹き付けるガスを加熱するなどの方法を単独、又は複数組み合わせて用いることができる。ガス加熱の場合、その加熱ガスを溶着ホーンの中心部から吐出するのが合理的である。
【発明の効果】
【0022】
本発明の丸ブラシ素子の製造方法は、テーブル上で放射状に開いた糸束の中心部を溶着する前に、その糸束を予熱することにより、溶着部の過剰加熱による変質を防止し、糸束を構成する糸材の構成材料と同等の優れた物性(ナイロン樹脂の場合は特有の粘りを有し、引張強度、曲げ強度ともに優れた特性)を溶着部に付与することができる。その結果、円筒型歯ブラシのブラシヘッドに使用した場合に丸ブラシ素子の不用意な損傷がなくなり、幼児用や老人用、介護用としても安心して使用できる安全性の高い商品を提供できる。しかも、溶着に要する時間を延長する必要がなく、生産性を低下させるおそれがないため、経済性が高い。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
以下に本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。図2は本発明の丸ブラシ素子の製造方法の実施に適した製造装置の構成図である。
【0024】
製造装置は、ナイロン樹脂からなる所定本数の糸材を束ねて構成された糸束1から丸ブラシ素子を製造するものであり、その製造のために水平な加工テーブル2を備えている。加工テーブル2は、糸束1が下から上へ通過する糸束1の通し孔を有している。糸束1は、ここでは例えば糸径1.2mmの場合に800〜1200本の糸材からなり、従来の2〜3倍の本数である。これに伴って、加工テーブル2の通し孔も大きくなっている。
【0025】
加工テーブル2の通し孔には、その下方に設置された糸束上下装置により、下方から糸束1が供給される。
【0026】
加工テーブル2の上には、超音波式の溶着ホーン3が通し孔に対して同心状に設けられている。溶着ホーン3は、垂直な円柱形状の本体の中心部に空気孔3aを有し、本体の下向きの先端面の中央部に、下方へ突出した小径棒体を有している。溶着ホーン3の主な溶着面は、本体の先端面と小径棒体の外周面である。先端面の外径は通し孔の内径とほぼ同じで、例えば5〜7mm、小径棒体の直径はそれより小さい例えば2.3mmである。
【0027】
溶着ホーン3は又、中心部の空気孔3aから吐出する空気を加熱する加熱装置4を装備している。加熱装置4は、前記空気をナイロン樹脂の軟化点以上、融点未満、例えば80〜120℃程度に加熱する。
【0028】
上記製造装置を使用して丸ブラシ素子を製造するには、先ず糸束1を加工テーブル2の上に10mm程度突出させる。このとき、溶着ホーン3は上方に退避している。加工テーブル2の上に糸束1が突出すると、溶着ホーン3が空気孔3aから下へ空気を吐出しつつ、且つ超音波振動しつつ、下降する。空気孔3aからの空気の吐出により、加工テーブル2の上に突出した糸束1が周囲へ開き始める。そこに溶着ホーン3の先端部が押し込まれ、糸束1は周囲へ更に大きく開く。
【0029】
溶着ホーン3が更に下降を続けると、溶着ホーン3の小径棒体3aが、糸束1の中心部に糸材をかき分けて強制的に押し込まれる。また同時に、溶着ホーン3の本体先端面で糸束1を周囲へ直角に押し広げる。そして、小径棒体3aにより周囲の糸材が、小径棒体3aの外周面と通し孔の内周面との間で押圧固定された状態で円筒状に加熱されて溶融する。また、周囲に押し広げられた糸束1が、その押し広げ状態に成形される。
【0030】
ここで、溶着ホーン3の空気孔3aから吐出される空気は80〜120℃に加熱されている。このため、糸束1が、押し広げ成形、及び溶着に先立って100℃程度に予熱される。この予熱により、太い糸束1であるにもかかわらず、その糸束1の成形性が良くなり、大きな糸押さえなしでも、また比較的小径のホーン先端面でも、糸束1を周囲へ直角に開いた状態に成形できる。また、小出力の溶着ホーンで溶着できるので、過剰加熱を防止でき、溶着部の品質をナイロン糸と同等の品質に仕上げることができ、その機械的強度を飛躍的に高めることができる。
【0031】
円筒状の溶融部が凝固して円筒状の溶着部が形成される。そうすると、溶着ホーン3が上方に退避する。溶着ホーン3はナイロン樹脂のような熱可塑性樹脂を成形すると同時に瞬時に剥離可能であるため、溶着ホーン3の退避時に形崩れを起こす危険がない。剥離性をより良くするために、溶着ホーン3の少なくとも加工部表面には、ハードクロームメッキハブ(HCR−B)加工かフッ素樹脂加工を行うことが推奨される。
【0032】
溶着ホーン3が退避すると、溶着部が加工テーブル2の上に突出するように糸束1を上昇させる。円筒形状の溶着部は底が閉じた凹状になっている。そこで、図示されないカッターにより、底部の上で溶着部を直角に切断する。かくして、円筒形状の溶着部と、その一端部に形成された厚い刷毛部とをもつ丸ブラシ素子が製造される。丸ブラシ素子が切り離された後の糸束1の先端部には溶着部が残っている。前記底部に対応する部分である。このため、糸束1を僅かに上昇させてこの溶着部を切除し、次の丸ブラシ素子の製造に備える。
【0033】
製造された丸ブラシ素子は、糸束1として糸材を従来の2〜3倍も多くした太いものを使用しているので、厚みは従来より厚くなり、1〜1.5mmも可能である。円筒形状の溶着部は、円板状の溶着部から材料を供給するのではなく、加工テーブル2の通し孔内の糸束1を別途使用するので、長さを大きくできる。通し孔の内径に対応する外径をもつので、その外径を大きくできる。内径は、溶着ホーン3の小径棒体の外径に支配されるので、2.3mmというような従来と同じレベルを維持できる。結果、円筒形状の溶着部の肉厚を大きくすることができる。円板状の溶着部が存在せず、存在してもこれを小さくすることができる。円板状の溶着部の外径が小さくなれば、周囲の放射状の刷毛部における毛丈を長くすることができる。毛丈を長くする代わりに、丸ブラシ素子の外径を小さくすることもできる。
【0034】
このような厚肉の丸ブラシ素子を円筒型歯ブラシのブラシヘッドに使用すれば、剛性があり、優れた使用感を得ることができる。1mmというようなボス高を確保でき、ブラシヘッドにおける糸材密度を適正値まで下げることができる。しかも、丸ブラシ素子の使用枚数を数枚まで少なくすることでき、ワッシャ、スペーサー類も不要である。すなわち、理想的なブラシ設計の円筒型歯ブラシが、僅かの枚数の丸ブラシ素子により極めて経済的に製造できるのである。
【0035】
図3は本発明の丸ブラシ素子の製造方法の実施に適した他の製造装置の構成図である。この製造装置では、溶着ホーン3の本体をホーン加熱装置5により加熱する。これにより、溶着ホーン3で押し広げる糸束1を予熱することができる。中心部の空気孔を通過する空気も加熱することができ、両面から糸束1を予熱することができる。
【0036】
図4は本発明の丸ブラシ素子の製造方法の実施に適した更に別の製造装置の構成図である。この製造装置では、加工テーブル2に設けられた糸束1の通し孔の周囲をヒーター2aで加熱することにより、糸束1を予熱する。この予熱法によれば、糸束1を溶着前、成形前に予熱することができる。
【0037】
図5は本発明の丸ブラシ素子の製造方法の実施に適した更に別の製造装置の構成図である。この製造装置では、加工テーブル2の下で糸束1を上昇させる糸束上下装置6にヒーター6aを組み込んで糸束1を予熱する。この予熱法も、糸束1を溶着前、成形前に予熱することができる。
【0038】
図6は本発明の丸ブラシ素子の製造方法の実施に適した更に別の製造装置の構成図、図7及び図8は同製造装置の要部の構造説明図、図9〜図11は同装置による製造方法を段階的に示す工程説明図である。
【0039】
この製造装置では、図6に示すように、加工テーブル2の上にエア管7、糸押さえ9、及び熱溶着棒10が設けられている。糸押さえ9は、図7及び図8に示すように、エア管7を包囲する環状体であり、超音波振動子である。エア管7は予熱用の加熱空気を吐出する構成である。
【0040】
製造方法の第1段階として、糸束1が通し孔から加工テーブル2の上に所定量押し出される。第2段階として、図9に示すように、糸束1の上にエア管7が位置する。エア管7は吐出空気を加熱するエア加熱装置8を備えており、80〜120℃に加熱された空気を真下に吐出する。これにより糸束1の突出部は周囲へ開く。次に、第3段階として、図10に示すように、周囲へ開いた糸束1を糸押さえ9により加工テーブル2に押し付ける。糸押さえ9はエア管7の周囲に同心状に設けられた環状の超音波振動子からなり、その下降により糸束1の開放をスムーズに行う。糸束1は加熱空気により予熱されているので、糸押さえ9による成形性は良好である。そして次に、第4工程として、図10に示すように、加工テーブル2の通し孔の真上に熱溶着棒10が位置し、下降する。
【0041】
熱溶着棒10は円柱状の本体と、本体の先端面から突出した小径軸部とを有している。本体の外径は通し孔の内径と同じかこれよりやや大きく、小径軸部の外径は通し孔の内径より小である。この熱溶着棒10はヒーター10aにより糸束1の溶融温度、具体的には融点である約230℃より若干高い温度に加熱されている。
【0042】
熱溶着棒10の下降により小径軸部が、周囲へ開いた糸束1の中心部に挿入される。また小径軸部周囲の本体端面により挿入部周囲が上から押圧される。これにより、周囲へ開いた糸束1の中心部が円筒状に溶着される。ここでは、超音波は糸束1の開放に使用され、溶着には熱溶着棒10が使用されている。熱溶着の長所は以下のとおりである。
【0043】
熱溶着棒10の加熱温度が一定であるので、溶着温度を一定に維持することができる。このため、溶着の際にナイロン樹脂の物性変化が皆無となる。よって溶着部の強度上の心配が完全に払拭される。低コストである。高速の溶着の場合も、表面処理(テフロン加工、フッ素加工)をすることによって溶着面に対するトラブルを解決できる。短所として糸束を整列させる機能に劣ることがあるが、超音波式の糸押さえ9の併用によりこれを解決できる。
【図面の簡単な説明】
【0044】
【図1】丸ブラシ素子を製造するときの加熱温度変化を示すグラフである。
【図2】本発明の丸ブラシ素子の製造方法の実施に適した製造装置の構成図である。
【図3】本発明の丸ブラシ素子の製造方法の実施に適した別の製造装置の構成図である。
【図4】本発明の丸ブラシ素子の製造方法の実施に適した更に別の製造装置の構成図である。
【図5】本発明の丸ブラシ素子の製造方法の実施に適した更に別の製造装置の構成図である。
【図6】本発明の丸ブラシ素子の製造方法の実施に適した更に別の製造装置の構成図である。
【図7】同製造装置の要部の構造説明図である。
【図8】同製造装置の要部の構造説明図であるである。
【図9】同装置による製造方法を段階的に示す工程説明図である。
【図10】同装置による製造方法を段階的に示す工程説明図である。
【図11】同装置による製造方法を段階的に示す工程説明図である。
【符号の説明】
【0045】
1 糸束
2 テーブル
2a ヒーター
3 超音波式の溶着ホーン
4 エア加熱装置
5 ホーン加熱装置
6 糸束上下装置
6a ヒーター
7 エア管
8 エア加熱装置
9 超音波式の押さえ板
10 熱溶着棒
10a ヒーター

【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定本数の糸材を束ねた糸束をガイド孔を通してテーブル上へ突出させる工程と、糸束をテーブル上で周囲へ放射状に開く工程と、テーブル上で放射状に開いた糸束の中心部を溶着して丸ブラシ素子となす工程と、丸ブラシ素子を糸束から分離する工程とを含む丸ブラシ素子の製造方法において、前記テーブル上で放射状に開いた糸束の中心部を溶着する前に、前記糸束を予熱することを特徴とする丸ブラシ素子の製造方法。
【請求項2】
請求項1に記載の丸ブラシ素子の製造方法において、前記糸束の予熱温度が、その糸束を構成する糸材の構成材料の軟化点以上、融点未満である丸ブラシ素子の製造方法。
【請求項3】
請求項1に記載の丸ブラシ素子の製造方法において、テーブル上で放射状に開いた糸束の中心部溶着に、超音波方式の溶着ホーン、又は熱溶着棒を使用する丸ブラシ素子の製造方法。
【請求項4】
請求項3に記載の丸ブラシ素子の製造方法において、前記テーブル上で放射状に開いた糸束の中心部を、前記溶着ホーンの先端面又は熱溶着棒の先端面にて円板状に溶着する丸ブラシ素子の製造方法。
【請求項5】
請求項3に記載の丸ブラシ素子の製造方法において、前記溶着ホーン又は熱溶着棒は、前記テーブルのガイド孔の内径よりも小さい外径で外周面が加熱面とされた小径棒体を先端部に有しており、前記テーブル上で放射状に開いた糸束の中心部分に前記小径棒体を挿入して、ガイド孔内の糸束を棒体外周面により中心側から円筒形状に溶着する丸ブラシ素子の製造方法。
【請求項6】
請求項1に記載の丸ブラシ素子の製造方法において、前記糸束を予熱するために、溶着用具の加熱、前記テーブルの加熱、テーブル下の糸束上下装置の加熱、前記糸束を放射状に開くために糸束の中心部に向けて吹き付けるガスの加熱の何れか一つ、又は複数の組み合わせを用いる丸ブラシ素子の製造方法。
【請求項7】
請求項6に記載の丸ブラシ素子の製造方法において、前記加熱ガスを溶着ホーンの中心部から吐出する丸ブラシ素子の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2008−173427(P2008−173427A)
【公開日】平成20年7月31日(2008.7.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−38519(P2007−38519)
【出願日】平成19年1月22日(2007.1.22)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.テフロン
【出願人】(504157079)株式会社鳴門屋 (7)
【Fターム(参考)】