説明

丸太改質方法および丸太改質装置

【課題】本発明は、丸太から建材に加工する前に、材質の均質化を行なうための丸太改質方法および丸太改質装置を提供する。
【解決手段】前記丸太改質方法の第1工程は、加圧された高熱水蒸気、および熱風を加熱処理室内に所定時間送り、前記複数の丸太全体の温度および湿度を上昇させる。第2工程は、その後、加圧された高熱水蒸気のみが、所定時間、前記加熱処理室に送り込まれる。前記丸太は、高温高湿度状態に維持され、リグニンおよびセルロースが溶融されて丸太内部を移動し易い状態になり、丸太全体に平均して行き渡るようになる。第3工程は、熱風のみを前記加熱処理室に送り、前記丸太の芯温度を所定温度になるまで乾燥し、内部の水分を除去し、通常の温度変化および長期間の使用において、変形のない建材とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建材として長年使用した際に、内部応力の不均衡による割れや曲がり等の変形が発生するのを抑え、均質で優れた高級建材として長期間にわたって使用できるように丸太を改質することができる丸太改質方法および丸太改質装置に関するものである。本明細書において、「丸太」とは、表面に皮が付いている状態のもの、および表面の皮をはいだ断面が丸いものをいう。
【背景技術】
【0002】
丸太は、樹木を伐採した後、製材所において、所望の寸法の木材に加工されていた。前記木材は、温度および湿度に応じて水分を吸収または放出することで、木造の建物自体の耐久性を高め、優れた環境を保っている。しかし、前記木材をを加工して建材とした場合は、水分の吸収または放出を行う毎に応力が発生して、割れや曲がりといった変形が生じる。前記変形は、前記丸太における年輪の詰まった部分にリグニンおよびセルロースがより多く含まれており、前記丸太の強度が均一になっていないことが大きな原因の一つになっている。前記のような問題を除去するために、伐採された後の丸太は、所定の大きさの木材として、長時間放置し、変形がある程度収まった後、製材所において、規定の大きさの建材に加工されていた。
【0003】
特開平2−28073号公報に記載されている木材の処理方法は、処理すべき木材に対し、前記木材の発火点以上の温度の熱風を供給する一方、前記木材の下方に冷風を流通させて木材からの水分を凝縮させ、その後、前記熱風より低温の雰囲気下に所定時間放置していた。
【0004】
また、特開平9−277210号公報に記載されている木材処理方法は、木材を密閉雰囲気において、所定の温度および湿度を所定時間維持した後、所定の温度の湯を散布し、さらに、前記木材の含水率が所定値になるまで乾燥して、変形のない耐久性の高い建材としている。
【特許文献1】特開平2−28073号公報
【特許文献2】特開平9−277210号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来の建材は、伐採された樹木を乾燥等が行い易いような形状の木材に加工された後、長期間(木の種類によっては10年以上もかかる場合があった)放置して乾燥し、規定の寸法に加工されている。前記木材は、乾燥のための管理および広い場所を必要とするため、コストが高くなるという問題があった。前記問題を除去するために、前記伐採された樹木は、木材とした後、たとえば、加熱処理室に収納し、水蒸気または熱風を送ることにより、割れや曲がり等の変形が起きないように改質した後、規定の形状の建材となった。
【0006】
しかし、前記加熱処理室において、高温に曝された木材は、常温に戻す過程で、内部応力のバランスが崩れ、事後に割れや曲がり等の変形を誘発する場合が多くあった。従来の改質方法による建材は、品質にバラツキがあり、長期間の使用による変形がない安定した品質のものではなかった。さらに、従来の改質方法による建材は、改質する段階で、木材として加工されているため、予め内部に不均衡が存在するリグニンおよびセルロースを均一になるように移動させることができない場合が多い。
【0007】
また、本願出願人が提案した前記特開平9−277210号公報に記載されている木材処理方法及び装置は、密閉された加熱処理室内に木材を置き、所定の温度および湿度で所定時間維持した後、前記密閉された加熱処理室から木材を取り出して、所定の温度の湯を散布し、さらに、前記木材の含水量が所定値以下になるように乾燥させている。前記発明は、加熱温度を90度Cから100度C近傍にすることにより、木材をかなり改質することができた。しかし、前記発明は、前述のように、長期間にわたっても、内部応力のバランスが良く、割れや曲がり等の変形が発生せずに、品質の安定した耐久性の高い優れた高級建材として十分ではなかった。
【0008】
以上のような課題を解決するために、本発明は、丸太を加工した建材を長期間使用した際に、内部応力の不均衡による割れや曲がり等の発生を抑え、優れた高級建材として使用できるように丸太を改質することができる丸太改質方法および丸太改質装置を提供することを目的とする。また、本発明は、従来、建材として、不適当であった種類の樹木、あるいは、建材として、利用されなかった樹木の部位であっても、良質な建材として利用できる丸太改質方法および丸太改質装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
(第1発明)
第1発明の丸太改質方法は、密閉されている加熱処理室で、複数の丸太を優れた建材として使用できるように改質するものであり、加圧された高熱水蒸気および煙を含む熱風を前記加熱処理室内に所定時間送り、前記丸太内部の温度を高い状態に上昇させた後、同じ温度を維持する工程、その後、加圧された高熱水蒸気のみを所定時間、前記加熱処理室に送り、前記丸太内部を前記と同じ一定の温度に維持する工程、次に、煙を含む熱風のみを前記加熱処理室に送り、前記一定温度を維持し、所定時間後、前記丸太の芯温度が所定温度になるまで降下する工程とから少なくとも構成されていることを特徴とする。
【0010】
(第2発明)
第2発明の丸太改質方法において、第1発明における加熱処理室内の温度上昇率と温度降下率は、一致することを特徴とする。
【0011】
(第3発明)
第3発明の丸太改質方法において、第1発明または第2発明で加圧された高熱水蒸気は、飽和水蒸気で、その温度が90度Cから230度Cであることを特徴とする。
【0012】
(第4発明)
第4発明の丸太改質方法において、第1発明から第3発明で加圧された高熱水蒸気の圧力は、2気圧から10気圧の範囲であることを特徴とする。
【0013】
(第5発明)
第5発明の丸太改質装置は、丸太を優れた建材として使用できるように改質するものであり、複数の前記丸太の周囲に空隙ができるように、載置するとともに、出し入れできる密閉されている加熱処理室と、加圧された高熱水蒸気を作製するとともに、前記加圧された高熱水蒸気を前記加熱処理室内に一定の温度で循環させる熱交換器と、前記加熱処理室内に煙を含む熱風を送る熱風作製手段と、
前記加熱処理室内における複数箇所の温度および前記複数の丸太の芯温度を検出する温度検出手段と、前記温度検出手段によって検出された温度、および予め決められた時間で前記加圧された高熱水蒸気および/または煙を含む熱風を前記加熱処理室内に送るように制御する制御手段とから少なくとも構成されていることを特徴とする。
【0014】
(第6発明)
第6発明の丸太改質装置において、第5発明の加熱処理室は、ファン、加圧された高熱水蒸気供給弁、熱風供給弁が設けられており、これらが前記制御手段によって制御されていることを特徴とする。
【0015】
(第7発明)
第7発明の丸太改質装置において、第5発明または第6発明の加熱処理室は、針葉樹および闊葉樹の樹木名、あるいは前記樹木の部位にしたがって加圧された高熱水蒸気の温度、前記加圧の程度、煙を含む熱風の温度、これらの時間が記憶手段に記憶されており、前記記憶手段に記憶されているデータにしたがって前記制御手段によって制御されていることを特徴とする。
【0016】
(第8発明)
第8発明の丸太改質装置において、第5発明から第7発明の加熱処理室内に配管された加圧された高熱水蒸気および熱風用の開口部は、前記供給部近傍から離れるにしたがって大きくなることを特徴とする。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、従来より高い圧力と温度の水蒸気および熱風を加熱処理室に送ることにより、短時間で丸太を高温および高湿度に保ち、その後、加圧された高熱水蒸気により、所定の時間をかけて丸太の繊維を軟化することにより、一部に集中していたリグニンおよびセルロースを溶融して、前記丸太内部で年輪の断面に沿って移動し易い状態にした後、前記リグニンおよびセルロースが丸太の断面で切って内部を見た場合、全体にわたって均一に分布させることができたため、従来のものと比較して、長期間にわたる使用においても、変形のない良質な高級建材とすることができた。
【0018】
本発明によれば、前記丸太は、表面に皮が付いていても、高い圧力と温度の飽和水蒸気熱により、熱伝導率を良くして、丸太表面の温度および芯温度の差が短時間でなくなり、前記丸太の表面近傍および芯近傍におけるリグニンおよびセルロースの溶融および再結晶がほぼ同じように行われるため、内部応力のバランスが崩れることがなく、場所による不均一がない優れた品質の高級建材にすることができる。
【0019】
本発明によれば、丸太の繊維を軟化するとともに、導管も軟化させて広げ、移動が容易なように溶融していた前記リグニンおよびセルロースが結晶化されることにより、導管が広がった状態で定着するため、建材として水分を吸収しても、直ちに放出するため、寿命を長くすることができる。
【0020】
本発明によれば、加熱処理室内に加圧された高熱水蒸気を供給することで、さらに、丸太内部の不要なヤニ、あるいは、余分な水分を除去することで、優れた品質の建材となる。すなわち、本発明により処理された丸太は、必要最低限のヤニおよび水分を保持しているとともに、燻蒸されているため、長期間にわたっても、内部応力のバランスが良く、割れや曲がり等の変形が発生せずに、品質の安定した耐久性の高い優れた高級建材となる。
【0021】
本発明によれば、高い圧力と温度の高熱飽和水蒸気および熱風を加熱処理室に送ることにより、本来熱伝導率の悪い表皮等があるにもかかわらず、短時間に丸太の表面近傍および芯近傍に温度差がなくなり、リグニンおよびセルロースの溶融および再結晶が均等に行なわれるため、長期間にわたっても、内部応力のバランスが良く、割れや曲がり等の変形が発生せずに、品質の安定した耐久性の高い優れた高級建材となる。
【0022】
本発明によれば、建材として使用できなかった種類の樹木、今までに利用していなかった樹木の場所、間伐材等であっても、丸太の改質により、良質な建材として利用できるようになった。本発明の丸太改質方法および丸太改質装置は、限りある資源を有効に利用できるものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
(第1発明)
第1発明の丸太改質方法は、密閉されている加熱処理室(丸太の出し入れする扉、および圧力調整用弁等を備えている)で、丸太自体の質を改質することにより、複数の丸太を建材として長年使用した際に、割れや曲がり等の発生を抑え、良質な高級建材とするものである。また、前記丸太改質方法は、通常、建材として使用できなかった種類の丸太、あるいは丸太の部位であっても、優れた建材として使用できるように改質することができるものである。前記丸太改質方法の第1工程は、加圧された高熱水蒸気、すなわち、高圧、高熱、飽和水蒸気および煙を含む熱風を前記加熱処理室内に所定時間送り、前記複数の丸太全体の温度を短時間に上昇させることができる。その後、前記所定の高温度は、同じ温度で所定時間維持される。
【0024】
前記加圧された高熱水蒸気および煙を含む熱風を送る時間は、針葉樹、闊葉樹、これらの中の丸太の種類、あるいは丸太の部位によって多少異なっているが、前記丸太が燃焼せずに、繊維等の軟化が可能な時間である。前記第1工程の処理は、前記丸太の繊維を柔らかくして、前記丸太の中に溜まっている結合水を放出し、また、ヤニ袋内の余分なヤニを溶出し、さらに、リグニンおよびセルロースを溶融して、内部で年輪の断面に沿って移動し易い状態にするための準備である。なお、加熱処理室内に載置される複数の丸太は、加圧された高熱水蒸気および煙を含む熱風が平均して全体に行き渡るようにそれぞれの間に空隙ができるように桟が置かれている。
【0025】
前記加熱処理室に送られた煙を含む熱風は、加圧された高熱水蒸気とともに、下方から上方に向かうが、高い圧力のため、下方に戻されて、対流しながら燻煙の一部が丸太に付着し、一部が水蒸気とともにタールとなり、前記加熱処理室の下方から廃液として流される。したがって、煙を含む熱風は、たとえば、加熱処理室に設けられた煙突のフィルタを通して外部に送出されることが少なくなるため、フィルタの目図まりも少ないので、長時間継続して送ることができる。
【0026】
第2工程は、その後、加圧された高熱水蒸気のみが、所定時間、前記加熱処理室に送り込まれ、第1工程と同じ高い一定の温度で維持される。前記丸太は、高温、高圧で、飽和水蒸気の中に維持され、繊維を柔らかくするとともに、リグニンおよびセルロースが溶融されて、丸太の年輪の断面に沿って移動し易い状態になる。このような状態を所定時間続けることにより、前記丸太の年輪の込み入った部分に多く存在していたリグニンおよびセルロースは、丸太全体に平均して行きわたるようになる。
【0027】
前記丸太は、断面の円形を保とうとする応力が働くため、前記リグニンおよびセルロースが前記年輪の断面に沿って移動し、前記丸太のどの部分を切断して建材としても応力が同じになるため、割れあるいは曲がるという変形が生じない。前記改質された丸太は、どのような形状に切断した建材であっても、応力分布が均一であるため、長期間にわたる使用によっても変形のない品質の高い高級建材となる。また、前記丸太内の導管は、前記加圧された高熱水蒸気により、広がった状態を維持するようになる。
【0028】
第3工程は、煙を含む熱風のみを前記加熱処理室に送り、前記と同じ一定温度を維持する。前記丸太は、所定時間乾燥が続けられた後、前記煙を含む熱風の温度を降下させて、芯温度を所定温度になるまで乾燥が続けられ、丸太内部の水分が除去され、通常の使用状態における温度変化および長期間の使用において、変形のない建材となる。前記煙を含む熱風による乾燥は、加熱処理温度を、たとえば、70度C程度に下げることにより、前記リグニンおよびセルロースを再結晶化させて固定化させる。また、前記煙を含む熱風は、第1工程および第2工程によって繊維を軟化しているため、前記丸太の奥深く入り易い。さらに、前記リグニンおよびセルロースの固定は、導管が広がった状態で固定される。広げられた状態で固定された導管は、水分が吸収され易いが、容易に排水もできるようになっているため、優れた建材となる。なお、煙を含む熱風は、前記加熱処理室の湿度が低くなっているため、対流している間に、丸太の繊維等に付着し、残りのものが、たとえば、脱硫装置を介して外部に送出される。
【0029】
第1発明は、第1工程から第3工程を順次処理することにより、丸太の南側および北側における成長の相違に基づくリグニンおよびセルロースの不均一性を均一にするだけでなく、建材として不必要な水分およびヤニ等を除去し、必要最低限のものを残すことができるため、長期間にわたっても、内部応力のバランスが良く、割れや曲がり等の変形が発生せずに、品質の安定した耐久性の高い優れた高級建材となる。前記丸太は、周囲に皮が付いていても、前記高圧、高熱、飽和水蒸気によって、熱伝導率を良好にすることができるため、前記丸太の表面近傍および芯近傍の温度を短時間に、温度差がないように高温にして、リグニンおよびセルロースを軟化するとともに、短時間に温度差がない状態で、前記リグニンおよびセルロースの再結晶化を行なうことができる。
【0030】
(第2発明)
前記加熱処理室は、温度上昇率と温度降下率を一致させることにより、丸太内の繊維等のバランスがくずれることがなく、建材とした際に、品質が安定し、耐久性が高く、変形の発生しない均質な高級建材となるような処理を行なう。前記一致した温度上昇率と温度降下率は、丸太内部の水分の蒸発、軟化の程度、リグニンおよびセルロースの移動等のバランスを良くすることができるために、建材として長期間にわたって割れや曲がり等の変形を発生させない。
【0031】
(第3発明)
前記加熱処理室に送り込む高熱水蒸気は、加圧することにより、高温の飽和水蒸気となり、温度が90度Cから230度Cとすることができる。前記高熱水蒸気は、加圧されているため、短時間で容易に100度C以上に達する。また、前記高熱水蒸気は、加圧されることにより、温度を高くしても、丸太が発火するようなことがないだけでなく、丸太内部の繊維を軟化させ、リグニンおよびセルロースを溶出することにより、年輪の断面に沿ってこれらの移動を容易にすることができる。
【0032】
(第4発明)
第4発明における加圧された高熱水蒸気の気圧は、高温の飽和水蒸気とするために、丸太の種類や部位により多少異なるが、2気圧から10気圧、好ましくは3気圧から8気圧の範囲である。前記丸太は、加圧された高熱水蒸気および熱風により、繊維を軟化することが容易であり、かつ、発火するようなことがない。前記圧力は、10気圧以上にした場合、加熱処理室の費用が高価になるだけでなく、前記丸太の繊維が軟化され過ぎて、内部を移動する溶出されたリグニンおよびセルロースにとっても不適当であった。
【0033】
(第5発明)
第5発明の丸太改質装置は、密閉されている加熱処理室で、複数の丸太における繊維を軟化し、リグニンおよびセルロースを均一な分布状態にして、高級建材として長年使用した際に、内部応力の不均衡による割れや曲がり等の発生を抑え、優れた高級建材として使用できるように改質することができる。前記加熱処理室は、複数の前記丸太の周囲に空隙ができるように、載置するとともに、出し入れでき、加熱および圧力に耐える密閉室である。前記加熱処理室は、前記のように密閉された室であるが、当然、温度を制御するためのファン、圧力を調整するための換気装置等が設けられている。
【0034】
熱交換器は、加圧された高熱水蒸気を作製するとともに、たとえば、加圧ポンプにより、前記加圧された前記高熱水蒸気を前記加熱処理室内で循環させた後、再度加熱および水分を追加して、同じ温度および飽和水蒸気の状態で前記加熱処理室内に送出することができる。熱風作製手段は、前記加熱処理室内に同じ温度の煙を含む熱風を送ることができる。前記熱風作製手段は、廃材等を燃焼することが望ましい。温度検出手段は、前記加熱処理室内における複数箇所の温度および前記複数の丸太の芯温度を検出し、加熱処理室内および複数の丸太の芯温度を同じにするためのものである。
【0035】
制御手段は、前記温度検出手段によって検出された複数の温度、および予め決められた時間で前記加圧された高熱水蒸気および/または煙を含む熱風を前記加熱処理室内に送るように制御する。前記加熱処理室は、加圧された高熱水蒸気および煙を含む熱風を送り、次に、加圧された高熱水蒸気のみを、最後に、煙を含む熱風のみを送るように制御手段によって制御されている。前記制御手段は、飽和水蒸気の圧力、温度を制御するとともに、前記熱風の温度を均一に制御しているため、前記加熱処理室内の複数の丸太の組織が均一になり、建材として加工された後、長期間使用しても、内部応力の不均衡による割れや曲がりが発生しないようにすることができる。
【0036】
(第6発明)
第6発明における加熱処理室は、複数のファン、加圧された高熱水蒸気供給弁、熱風供給弁が設けられており、これらが前記制御手段によって、前記加圧された高熱水蒸気および/または熱風の供給量が制御されている。また、前記加圧された高熱水蒸気供給弁および熱風供給弁は、たとえば、電磁弁であり、制御手段によって正確に制御される。
【0037】
(第7発明)
第7発明における加熱処理は、数日間にわたって行われる。そこで、丸太は、針葉樹および闊葉樹に分けられた樹木名にしたがった加圧された高熱水蒸気の温度、前記加圧の程度、熱風の温度、これらの処理時間等がデータとして記憶手段に記憶されている。前記制御手段は、前記記憶手段に記憶されているデータに基づいて、前記加熱処理が正常にできるように前記熱交換器、熱風作製手段、各供給弁等を制御している。
【0038】
前記熱風作製手段は、燃料を木材として、熱風とともに煙が前記加熱処理室内に送られるようになっている。前記熱風とともに加熱処理室に供給される煙は、丸太内の害虫や害虫の卵を駆除するだけでなく、広がった導管内にも通り、建材として利用された場合に、害虫や害虫の卵が付き難くなり、内部が均質で、内部応力の不均衡がなくなるだけでなく、優れた品質のものとすることができる。
【0039】
(第8発明)
第8発明における加熱処理室内の配管は、前記加熱処理室内の温度を均一にするために、前記加熱処理室を循環させた後、熱交換器に戻り、加熱して加圧された高熱水蒸気が再度、前記加熱処理室内へ供給されるようになっている。前記加熱処理室内を循環している加圧された高熱水蒸気および熱風用の配管における開口部は、加圧された高熱水蒸気および熱風の温度を加熱処理室内で均一にするため、供給部近傍では小さく、前記供給部から離れるにしたがい大きくするようにしている。前記配管の開口部は、一つの孔としても、複数の孔としても、前記条件を満たし、加熱処理室内の温度が均一になれば良い。
【実施例】
【0040】
図1は本発明の実施例で、加熱処理室および加熱処理室に加圧された高熱水蒸気および熱風を送るための模式図で、(イ)が正面図で、(ロ)が平面図である。図1(イ)および(ロ)において、本発明の実施例は、加熱処理室11と、前記加熱処理11に加圧された高熱水蒸気を送る熱交換器12と、前記加熱処理室11に煙を含む熱風を送る熱風作製手段13と、前記加熱処理室11内に出し入れできる台車14と、前記台車14に載せた状態で前記加熱処理室11を出し入れする丸太15とから少なくとも構成されている。
【0041】
前記加熱処理室11は、前記丸太15を出し入れする開閉扉111と、周囲の壁面に配置されている複数のセンサ112および図示されていない丸太15の芯温度を検出する複数のセンサと、前記加熱処理室11における加圧された高熱水蒸気および煙を含む熱風を攪拌する複数のファン113、113′と、前記加圧された高熱水蒸気および前記熱風を所定量排出して、所望の温度にする換気装置114とから少なくとも構成されている。前記加熱処理室11は、前記圧力、温度、湿度に耐える材料で構成されている。
【0042】
前記熱交換器12は、図示されていない加熱装置により水蒸気を加熱する加熱パイプ121と、前記加熱パイプ121内に所定量の水分を加える給水手段122と、前記加熱パイプ121内の高熱水蒸気を加圧して前記加熱処理室11内に送出する加圧ポンプ123と、前記加熱パイプ121によって加熱および加圧された水蒸気を前記加熱処理室11内に循環させる循環パイプ124と、前記加圧された高熱水蒸気の圧力を調整できる第1電磁弁125とから構成されている。また、前記循環パイプ124は、熱交換器12の下方から前記加熱処理室11の床近傍を通り、ほぼ中間の高さで熱交換器12に折り返されている。さらに、前記循環パイプ124′は、前記熱交換器12と別の熱交換器12′に接続されており、前記加熱処理室11の他方の壁面近傍に沿って、前記と同じように配置されている。
【0043】
前記熱風作製手段13は、燃料132を燃焼する燃焼室131と、前記燃料132を燃焼した後の煙を出す煙突133と、前記燃焼室131で作製された煙を含む熱風を前記加熱処理室11に送る配管134と、前記熱風を制御する第2電磁弁135とから少なくとも構成されている。前記燃料132は、廃材等を利用することが望ましい。前記熱風は、前記加熱処理室11の床上に設置された、たとえば、3本の熱風送出パイプ136、137、138から供給される。
【0044】
前記加熱処理室11に丸太15を出し入れする台車14は、下部に車141が設けられており、複数の丸太15が桟材142を挟み、それぞれの丸太15が互いに接することがなく、加圧された高熱水蒸気および煙を振る無熱風に曝され易いようにするとともに、たとえば、バンド143等により固定されている。また、前記台車14は、前記加熱処理室11内を出し入れする際に、レール144の上を移動し易いようになっている。
【0045】
図2は本発明の実施例で、丸太改質装置を説明するためのブロック構成図である。図2において、加熱処理室211は、前述のように、複数の丸太を出し入れできるような構造のものであり、高熱および高圧に耐える構造からなり、加圧された高熱水蒸気作製手段212(図1に示す熱交換器)、および熱風作製手段213から加圧された高熱水蒸気および煙を含む熱風が供給されるように、図1に示す配管で接続されている。また、前記加熱処理室211は、内部の温度を測定するために複数のセンサ217と、複数の丸太の芯温度を検出する複数の芯温度センサ218とが設けられている。さらに、前記加熱処理室211は、少なくとも一つのファン219、および、図示されていない、圧力調整弁等が設けられており、内部の温度および圧力が調整できるようになっている。
【0046】
前記加熱処理室211は、制御手段216の制御の基によって、加圧された高熱水蒸気作製手段212および熱風作製手段213によって作製された所定の温度および圧力に加圧された高熱水蒸気および/または煙を含む熱風が供給される。前記制御手段216は、温度センサ217および芯温度センサ218からの温度、タイマー215に基づいて、前記加圧された高熱水蒸気作製手段212および熱風作製手段213を制御する。また、データ記憶手段214は、樹木の種類や部位によって異なる加圧された高熱水蒸気の温度、圧力および熱風の温度を予め実験によって決められるデータが記憶されている。前記制御手段216は、前記データ記憶手段214に記憶されている最適のデータによって、前記加圧された高熱水蒸気作製手段212および熱風作製手段213等を制御する。
【0047】
図3は本発明の実施例で、加熱処理室内で丸太を処理するステップを説明するためのフローチャートである。図3において、加圧された高熱水蒸気作製手段212および熱風作製手段213は、所定の温度および圧力の高熱水蒸気と、煙を含む熱風を予め作製する(ステップ311)。次に、複数の丸太は、加熱処理室211へ搬入され、それぞれが互いに接触しないように載置される(ステップ312)。前記加熱処理室211には、前記加圧された高熱水蒸気作製手段212から加圧された高熱水蒸気が、また、前記熱風作製手段213から煙を含む熱風が所定時間供給され、内部温度を所望の一定温度に保持できるようにする(ステップ313)。前記丸太は、表面に皮が付いていても、前記加圧された高熱の飽和水蒸気によって、熱伝導率が向上するため、前記丸太表面近傍の温度と、前記丸太の芯近傍の温度とが短時間にほぼ同じ温度に達する。
【0048】
その後、前記加熱処理室211は、前記加圧された高熱水蒸気のみが前記加圧された高熱水蒸気作製手段212から供給され、前記と同じ温度に維持され、この状態で長い時間かけて丸太の繊維を軟化するとともに、リグニンおよびセルロースを溶融状態にして、前記リグニンおよびセルロースが丸太の断面における年輪に沿って移動し易くする。また、前記丸太の導管は、広げられる(ステップ314)。次に、前記加熱処理室211は、熱風作製手段213から煙を含む熱風が供給され、一定温度を継続して前記丸太の内部を乾燥させ、その後、温度がたとえば、70度C程度降下した状態で、前記リグニンおよびセルロース、あるいは、ヤニを溶融状態から再結晶化する(ステップ315)。
【0049】
前記リグニンおよびセルロースの溶融および再結晶化は、前記丸太の表面近傍と芯近傍がほぼ同時に短時間で行なわれるため、応力が分散されることがなく、均質の高級建材とすることができる。また、前記リグニンおよびセルロース、あるいは、ヤニの再結晶は、丸太の導管を広げた状態を固定化するとともに、繊維を締めして、節の部分が抜け出ないように固定化し、建材が通常の温度で使用されている限り、熱変形が防止される。以上により、前記丸太は、全ての処理を終了して、前記加熱処理室211から外部に搬出される(ステップ316、317)。
【0050】
図4は本発明の実施例で、加熱処理室内を循環する循環パイプを説明するための図である。図4において、循環パイプ124および熱風送出パイプ136、137、138は、内部を熱交換器12からの加圧された高熱水蒸気を、また、熱風作製手段13から煙を含む熱風をそれぞれ循環させる。前記循環パイプ124および熱風送出パイプ136、137、138の開口部1241、1242は、供給部から離れるにしたがい、面積を大きくすることで、前記加熱処理室11の温度および水蒸気の量を均一にしている。前記開口部1241、1242は、同じ大きさの孔にして、その数を変えることにより、トータルの面積を大きくすることもできる。
【0051】
図5(イ)は丸太が伐採された状態の断面を説明するための図で、(ロ)は本発明の実施例による丸太改質方法により改質された状態を説明するための図である。図5(イ)において、処理前の丸太51は、南側(図の右側)が日当たりが良いため、年輪511が粗であり、北側(図の左側)が日当たりが悪いため成長が遅く年輪512が密になっている。年輪511は、成長が速いため、リグニンおよびセルロース514が少なく、年輪512は、成長が遅いため、前記リグニンおよびセルロース514が多く存在する。したがって、前記処理前の丸太51は、前記リグニンおよびセルロース514が年輪512の間隔が狭い方に密集し、年輪511の間隔が粗い方に散在しているため、内部応力がかかり易く、長期間にわたると、内部応力のバランスが崩れ、割れや曲がり等の変形が発生して、品質の安定した耐久性の高い建材にならない。
【0052】
図5(ロ)において、本発明の改質後の丸太52は、年輪の密あるいは粗にかかわらず、リグニンおよびセルロース524の密度が芯523の近傍から年輪の粗の部分にわたって一定になっている。すなわち、前記リグニンおよびセルロース524は、丸太が円形を保とうとする応力により、前記丸太の断面における年輪521に沿って移動し易くなるため、均一に分布するようになる。前記のような状態の丸太52は、前記リグニンおよびセルロース524の分布が一定であるため、経年変化によっても、内部応力のバランスが崩れることがなく、割れや曲がり等の変形が発生せずに、品質の安定した耐久性の高い高級建材となる。さらに、前記処理後の丸太52は、導管が図示されていないが、前記処理によって広がり、前記リグニンおよびセルロースおよび脂等が結晶化することにより、広がった状態で固定化されるため、湿気を吸収しても、直ぐに放出し易い状態になっている。
【0053】
図6は本発明の実施例で、闊葉樹および針葉樹、あるいは具体的な樹木の種類による加圧された高熱水蒸気、加熱時間、放置時間の一例を説明するための図である。図6において、闊葉樹は、針葉樹と比較して、高い加圧された高熱水蒸気が必要であるだけでなく、加熱時間も多くかかっていることが判る。図6に示された一例は、これらの樹木の平均的なものであり、伐採されてからの時間、間伐材、今まで利用できなかった部位等によっても異なることはいうまでもない。
【0054】
図7は本発明の実施例で、加圧された高熱水蒸気および/または熱風を加熱処理室に供給する時間と温度を説明するためのものである。本発明の実施例は、加熱処理室に加圧された高熱水蒸気および煙を含む熱風を供給するため、短時間(3時間)に所望の温度に達し、この状態でほぼ24時間経過後、加圧された高熱水蒸気だけで、24時間同じ温度になるような制御を行ない、さらに、煙を含む熱風を同じ温度になるように制御して48時間供給した後、温度を下げながら乾燥(3時間)する。前記加熱処理室11の温度を上昇する割合と、温度を降下する割合は、丸太に不均一な応力が発生しないようにほぼ対照的に行なうことが望ましい。
【0055】
以上、本発明の実施例を詳述したが、本発明は、前記実施例に限定されるものではない。そして、特許請求の範囲に記載された本発明を逸脱することがなければ、種々の設計変更を行うことが可能である。本発明の加熱処理室、熱交換器、熱風作製手段、およびこれらの付属施設は、公知または周知のものを使用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0056】
【図1】本発明の実施例で、加熱処理室および加熱処理室に加圧された高熱水蒸気および熱風を送るための模式図で、(イ)が正面図で、(ロ)が平面図である。(実施例1)
【図2】本発明の実施例で、丸太改質装置を説明するためのブロック構成図である。
【図3】本発明の実施例で、加熱処理室内で丸太を処理するステップを説明するためのフローチャートである。
【図4】本発明の実施例で、加熱処理室内を循環する循環パイプを説明するための図である。
【図5】(イ)は丸太が伐採された状態の断面を説明するための図で、(ロ)は本発明の実施例による丸太改質方法により改質された状態を説明するための図である。
【図6】本発明の実施例で、闊葉樹および針葉樹、あるいは具体的な樹木の種類による加圧された高熱水蒸気、加熱時間、放置時間の一例を説明するための図である。
【図7】本発明の実施例で、加圧された高熱水蒸気および/または熱風を加熱処理室に供給する時間と温度を説明するためのものである。
【符号の説明】
【0057】
11・・・加熱処理室
111・・・開閉扉
112・・・センサ
113、113′・・・ファン
114・・・換気装置
12・・・熱交換器
121・・・加熱パイプ
122・・・給水手段
123・・・加圧ポンプ
124・・・循環パイプ
125・・・第1電磁弁
13・・・熱風作製手段
131・・・燃焼室
132・・・燃料
133・・・煙突
134・・・配管
135・・・第2電磁弁
136、137、138・・・熱風送出パイプ
14・・・台車
141・・・車
142・・・桟
143・・・バンド
144・・・レール
15・・・丸太

【特許請求の範囲】
【請求項1】
密閉されている加熱処理室で、複数の丸太を優れた建材として使用できるように改質する丸太改質方法において、
加圧された高熱水蒸気および煙を含む熱風を前記加熱処理室内に所定時間送り、前記丸太内部の温度を高い状態に上昇させた後、同じ温度を維持する工程、
その後、加圧された高熱水蒸気のみを所定時間、前記加熱処理室に送り、前記丸太内部を前記と同じ一定の温度に維持する工程、
次に、煙を含む熱風のみを前記加熱処理室に送り、前記一定温度を維持し、所定時間後、前記丸太の芯温度が所定温度になるまで降下する工程、
とから少なくとも構成されていることを特徴とする丸太改質方法。
【請求項2】
前記加熱処理室内の温度上昇率と温度降下率は、一致することを特徴とする請求項1に記載された丸太改質方法。
【請求項3】
前記加圧された高熱水蒸気は、飽和水蒸気で、その温度が90度Cから230度Cであることを特徴とする請求項1または請求項2に記載された丸太改質方法。
【請求項4】
前記加圧された高熱水蒸気の圧力は、2気圧から10気圧の範囲であることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか1項に記載された丸太改質方法。
【請求項5】
丸太を優れた建材として使用できるように改質する丸太改質装置において、
複数の前記丸太の周囲に空隙ができるように、載置するとともに、出し入れできる密閉されている加熱処理室と、
加圧された高熱水蒸気を作製するとともに、前記加圧された高熱水蒸気を前記加熱処理室内に一定の温度で循環させる熱交換器と、
前記加熱処理室内に煙を含む熱風を送る熱風作製手段と、
前記加熱処理室内における複数箇所の温度および前記複数の丸太の芯温度を検出する温度検出手段と、
前記温度検出手段によって検出された温度、および予め決められた時間で前記加圧された高熱水蒸気および/または煙を含む熱風を前記加熱処理室内に送るように制御する制御手段と、
とから少なくとも構成されていることを特徴とする丸太改質装置。
【請求項6】
前記加熱処理室は、ファン、加圧された高熱水蒸気供給弁、熱風供給弁が設けられており、これらが前記制御手段によって制御されていることを特徴とする請求項5に記載された丸太改質装置。
【請求項7】
前記加熱処理室は、針葉樹および闊葉樹の樹木名、あるいは前記樹木の部位にしたがって加圧された高熱水蒸気の温度、前記加圧の程度、煙を含む熱風の温度、これらの時間が記憶手段に記憶されており、前記記憶手段に記憶されているデータにしたがって前記制御手段によって制御されていることを特徴とする請求項5または請求項6に記載された丸太改質装置。
【請求項8】
前記加熱処理室内に配管された加圧された高熱水蒸気および熱風用の開口部は、前記供給部近傍から離れるにしたがって大きくなることを特徴とする請求項5から請求項7のいずれか1項に記載された丸太改質装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2007−307711(P2007−307711A)
【公開日】平成19年11月29日(2007.11.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−136013(P2006−136013)
【出願日】平成18年5月16日(2006.5.16)
【出願人】(596062244)有限会社山本家具製作所 (1)
【Fターム(参考)】