説明

主軸アタッチメント装置

【課題】主軸頭の端面にアタッチメント本体の取付面を着脱するに際し、アタッチメント本体を安定姿勢で回転させる。
【解決手段】主軸アタッチメント装置は、主軸頭22に主軸軸線周りに回転自在に連結されかつ回転工具Tを装備可能であるアタッチメント本体52と、アタッチメント本体の主軸軸線周りの回転を拘束するように主軸頭にアタッチメント本体を結合している結合機構51と、主軸頭にアタッチメント本体を主軸軸線方向に押圧させるようにアタッチメント本体に弾性力を作用させている弾性手段107と、結合機構の結合を解除するように弾性手段の弾性力に抗して主軸頭からアタッチメント本体を離隔させる方向にアタッチメント本体をプレスするプレス手段42と、主軸21の回転を、常時、アタッチメント本体に装備した回転工具に伝達し、かつ、主軸の回転を、結合機構の結合を解除したときに、アタッチメント本体に伝達する伝達手段53とを備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、工作機械に用いられる回転工具を主軸装置に取付けるための主軸アタッチメント装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の装置としては、主軸頭の端面に着脱自在に取付られる取付面を有するアタッチメント本体と、アタッチメント本体を主軸軸線方向に移動させることによって、主軸頭に対するアタッチメント本体の主軸軸線を中心とする回転を規制解除自在に規制しうるように主軸頭およびアタッチメント本体を互いに係合する係合手段とを備えており、アタッチメント本体にプルスタッドがその軸方向に移動自在に支持されており、主軸軸線にプルスタッド軸線を一致させた状態で、プルスタッドが、主軸軸孔に挿入されて、ドローバーと連結された状態で、アタッチメント本体が自重によって下降させられかつその状態で、主軸頭からプルスタッドによってアタッチメント本体が吊下げられるようになされており、この状態で、主軸の回転をアタッチメント本体に伝達する伝達手段を備えているものが知られている(例えば、特許文献1参照。)。
【0003】
この従来装置においては、係合手段の係合を解除して、アタッチメント本体を回転させる際、アタッチメント本体は、主軸頭から吊下げられた状態となっており、その回転姿勢が極めて不安定である。したがって、その回転後に、アタッチメント本体を上昇させて、係合手段を係合させる場合、この係合動作が容易で無い。
【0004】
さらに、係合手段を係合させた後に、回転時のアタッチメント本体の姿勢が不安定であることにより、主軸頭およびアタッチメント本体を嵌合させる必要があることがある。その場合、回転時のアタッチメント本体の姿勢が不安定であることにより、その嵌合スキマを大きくする必要があるが、そのようにすると、そのスキマから異物が主軸頭に侵入する可能性がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開昭59−219129号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
この発明の目的は、主軸頭の端面にアタッチメント本体の取付面を着脱するに際し、アタッチメント本体を安定姿勢で回転させることのできる主軸アタッチメント装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この発明による主軸アタッチメント装置は、主軸頭に主軸軸線周りに回転自在に連結されかつ回転工具を装備可能であるアタッチメント本体と、アタッチメント本体の主軸軸線周りの回転を拘束するように主軸頭にアタッチメント本体を結合している結合機構と、主軸頭にアタッチメント本体を主軸軸線方向に押圧させるようにアタッチメント本体に弾性力を作用させている弾性手段と、結合機構の結合を解除するように弾性手段の弾性力に抗して主軸頭からアタッチメント本体を離隔させる方向にアタッチメント本体をプレスするプレス手段と、主軸の回転を、常時、アタッチメント本体に装備した回転工具に伝達し、かつ、主軸の回転を、結合機構の結合を解除したときに、アタッチメント本体に伝達する伝達手段とを備えているものである。
【0008】
この発明による主軸アタッチメント装置では、アタッチメント本体を回転させる際、弾性手段のばね力に抗して、プレス手段によって、アタッチメント本体にプレス圧を作用させることができる。したがって、主軸頭にアタッチメント本体を着脱するに際し、アタッチメント本体を安定姿勢で回転させることができる。
【0009】
さらに、アタッチメント本体に保持筒が主軸軸線と同心状に支持されており、保持筒の軸線上をプルスタッド軸がのびており、プルスタッド軸の先端に、ドローバーのコレットにクランプされたプルスタッドが設けられており、プルスタッド軸の基端にばね受けが設けられており、保持筒の内面に、プルスタッド軸の長さの中程を取り囲んで環状ばね押えが設けられており、弾性手段は、ばね受けおよびばね押え間に介在させられている圧縮ばねよりなると、弾性手段として、圧縮ばねのばね力を有効利用することができる。
【0010】
また、保持筒の外面に駆動歯車が設けられており、駆動歯車に噛み合わされた従動歯車が、回転工具を回転させるためのアタッチメント軸に設けられており、主軸孔周面と合致させられた外面を有する筒状アーバーが、プルスタッド軸に軸方向相対的移動自在かつ保持筒に主軸軸線周りの回転は拘束するが、主軸軸線方向の相対的移動は自由とするように連結されており、アーバは、円環状フランジを有しており、フランジに、ドライブキー溝および旋回キーがフランジ周方向に間隔をおいて形成されており、伝達手段は、主軸の先端面に設けられかつドライブキー溝に常時はめ入れられているドライブキーと、アタッチメント本体に設けられかつ結合機構の結合を解除したときに、旋回キーをはめ入れる旋回キー溝とを備えていると、伝達手段を、極めてシンプルな構造でもって構成することができる。
【発明の効果】
【0011】
この発明によれば、アタッチメント本体をプレス手段によって強制的に押圧することができ、主軸頭にアタッチメント本体を着脱するに際し、アタッチメント本体を安定姿勢で回転させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】この発明による結合機構結合時のアタッチメント装置の垂直縦断面図である。
【図2】図1の要部拡大断面図である。
【図3】この発明による結合機構結合解除時の図2相当断面図である。
【図4】同アタッチメント装置のアーバおよびその周辺の平面図である。
【図5】同アタッチメント装置の溝板の平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
図1を参照すると、大型立形複合加工機の主軸装置11と、回転工具Tを装備しているアタッチメント装置12とが示されている。
【0014】
図2は、アタッチメント装置12の使用時を、図3は、アタッチメント装置12の回転角度割出時をそれぞれ示すものである。
【0015】
主軸装置11は、垂直状主軸21と、主軸21を支持している主軸頭22とよりなる。
【0016】
主軸21は、軸孔31を有している。軸孔31の下端部には下向きテーパ孔32が形成されている。軸孔31にはドローバー33が収容されている。ドローバー33の下端部にはコレット34が備えられている。主軸21下端面の、主軸軸線を中心とする円周上に2つのドライブキー35が周方向に等間隔で固定されている(図4参照)。
【0017】
主軸頭22の下端面は、主軸21の下端面より上方レベルに位置させられている。主軸頭22下端面上方に横断面リング状シリンダ41が主軸軸線と同心状に形成されている。シリンダ41には筒状ピストン42がはめ入れられている。ピストン42は、シリンダ41内に収容されている上部ピストン42aと、上部ピストン42a下端に連なって、シリンダ41底壁に貫通させられて主軸頭22下端面の下方に突出させられかつ主軸21を取り囲んでいる下部ピストン42bとよりなる。下部ピストン42bの下端面内縁部にガイド筒43が垂下状に設けられている。
【0018】
アタッチメント装置12は、主軸頭22に結合機構51を介して結合されているアタッチメント本体52と、アタッチメント本体52内に収容されかつ主軸21の回転を回転工具Tおよびアタッチメント本体52にそれぞれ伝達する伝達機構53とを備えている。
【0019】
図2および図3に詳細に示すように、結合機構51は、主軸頭22に備えられた第1結合機構61と、アタッチメント本体52に備えられた第2結合機構62とよりなる。
【0020】
第1結合機構61は、多数ずつの下向き第1噛合歯61Aおよび第1クランプ爪61Bよりなる。第1噛合歯61Aは、ピストン22の外側を、主軸頭12の下端面上を主軸頭12軸線を中心とする円周上に一定ピッチで一列に配列されている。第1クランプ爪61Bは、ピストン22外面下端部と一体化されかつ第1噛合歯61Aのなす列の内側にそって、これと同心状に一定ピッチで配列されている。
【0021】
第2結合機構62は、多数ずつの上向き第2噛合歯62Aおよび第2クランプ爪62Bよりなる。第2噛合歯62Aは、アタッチメント本体52の上端面周縁部にそって、第1噛合歯61Aの配列と同一配列で並べられている。第2クランプ爪62Bは、第2噛合歯62Aの下側から内方に突出させられて、第1クランプ爪61Bの配列と同一配列で並べられている。
【0022】
アタッチメント本体52は、主軸軸線と同心状である上方開放垂直筒状上部チャンバ71および主軸軸線と直交させられた両端開放水平筒状下部チャンバ72よりなる。上部チャンバ71の内面上端部には、ピストン42の下端面を当接させた肩部73が設けられている。上部チャンバ71内面の肩部73下方の部分に、ガイド筒43を回転自在にはめ入れたガイド溝74が形成されている。ガイド溝74の下方の、上部チャンバ71内面には、上下に重ね合わされた水平状ストッパ板75および溝板76が固定されている。図5を参照すると、溝板76には2つの旋回キー溝77が等間隔で形成されている。
【0023】
伝達機構53は、上部チャンバ71内に主軸軸線と同心状に回転自在に支持されている垂直状保持筒81と、保持筒81の軸線上をのびておりかつコレット34にクランプされたプルスタッド82が上端に設けられているプルスタッド軸83と、テーパ孔32の内面に押当られたテーパ面84を外面に有しかつプルスタッド軸83に軸方向に摺動自在にはめ被せられている垂直筒状アーバ85と、下部チャンバ72内に同心状に収容されているアタッチメント軸86とを備えている。
【0024】
保持筒81の内面高さの中程には、ばね押え兼ばね受けの機能を果たす内向き環状下フランジ91が設けられている。保持筒81の外面上部にはスプライン92が設けられている。保持筒81の外面下端部には駆動歯車93が設けられている。
【0025】
プルスタッド軸83には、上から順次、大径部101、中径部102および小径部103が設けられている。大径部101および中径部102の境界に、アーバ85の上限を規制する上限ストッパ104が設けられている。中径部102および小径部103の境界に、プルスタッド軸83の下限を規制する下限ストッパ105が設けられている。プルスタッド軸83の下端部にはばね受け106が固定されている。下フランジ91およびばね受け106間には、小径部103を取り囲んで圧縮皿ばね107が介在させられている。
【0026】
保持筒81の内面高さの中程には内向き環状上フランジ111が設けられている。アーバ85の内面下端よりには大径穴とされ穴底は段差部85aとされている。段差部85aおよび上フランジ111間には、中径部102を取り囲んで圧縮コイルばね112が介在されている。アーバ85の大径穴内面には、スプライン92に噛み合わされたスプライン溝113が形成されている。テーパ面84下方の、アーバ85外面には外フランジ114が設けられている。外フランジ114には、図4に示すように、ドライブキー35をそれぞれはめ入れた2つのドライブキー溝115が等間隔で形成されている。さらに、外フランジ114には、2つの旋回キー116が等間隔で外フランジ半径方向に突出させられるように設けられている。
【0027】
アタッチメント軸86には、駆動歯車93と噛み合わされた従動歯車121が固定されている。
【0028】
図1において、第1噛合歯61Aおよび第2噛合歯62Aは、互いに噛み合わされている。この状態で、第1クランプ爪61Bおよび第2クランプ爪62B相互の回転方向の位相は一致させられていて、第1クランプ爪61Bは、第2クランプ爪62Bに下側から係合させられかつこれを下側から押圧している。このときに、シリンダ21内におけるピストン22の下側スペースには圧油が供給されており、ピストン22は、その昇降ストロークの上限近くに位置させられている。
【0029】
図2を参照すると、旋回キー116は、溝板76よりも下方レベルに位置させられている。主軸21の回転は、順次、ドライブキー35、アーバ85、保持筒81、駆動歯車93、従動歯車121およびアタッチメント軸86に伝達される。アタッチメント軸86は、回転工具Tを回転させる。
【0030】
図2に示す状態から、図3に示すように、ピストン22の上側スペースには圧油を供給し、ピストン22を降下させる。降下させられるピストン22の下端面がアタッチメント本体52の肩部73上面を押圧する。皿ばね107のばね力に抗して、アタッチメント本体52は、距離Xだけ降下させられる。ピストン22の下端面およびアタッチメント本体52の肩部73上面間には、皿ばね107のばね力からアタッチメント装置12の自重を差し引いた力で、同両面が接触状態に保持される。
【0031】
アタッチメント本体52の降下にしたがって、第1噛合歯61Aおよび第2噛合歯62Aの噛合が解除されかつ第1クランプ爪61Bの降下により、第1クランプ爪61Bと第2クランプ爪62Bの噛合が解除される。
【0032】
一方、アタッチメント本体52が降下させられると、アタッチメント本体52とともにストッパ板75および溝板76が降下させられる。溝板76とともに旋回キー溝77が降下して、旋回キー116および旋回キー116溝77が噛み合わされる。同時に、ストッパ板75の下面が旋回キー116の上面が当接させられる。このときに、コイルばね112によって、アーバ85が押上げられようとするが、ストッパ板75がアーバ85の上昇を規制する。これにより、テーパ孔32周面およびアーバテーパ面84間にはスキマδが生じさせられている。
【0033】
旋回キー116および旋回キー溝77の噛み合いにより、アーバ85の回転がアタッチメント本体52に伝達可能となる。主軸21を回転させてアーバ85を回転させると、アーバ85とともにアタッチメント本体52が回転させられる。アタッチメント本体52は、所望の割出角度に回転させられる。
【0034】
主軸装置11からアタッチメント装置12を取外す際は、アタッチメント本体52を回転させて、第1クランプ爪61Bおよび第2クランプ爪62B相互の回転方向の位相をずらし、隣り合う2つの第1クランプ爪61B間に、1つの第2クランプ爪62Bを位置させると、前者の間を後者が素通りすることが可能となる。
【産業上の利用可能性】
【0035】
この発明による主軸アタッチメント装置は、工作機械に用いられる回転工具を主軸装置に取付けることを達成するのに適している。
【符号の説明】
【0036】
21 主軸
22 主軸頭
51 結合機構
52 アタッチメント本体
53 伝達手段
107 弾性手段
T 回転工具

【特許請求の範囲】
【請求項1】
主軸頭に主軸軸線周りに回転自在に連結されかつ回転工具を装備可能であるアタッチメント本体と、
アタッチメント本体の主軸軸線周りの回転を拘束するように主軸頭にアタッチメント本体を結合している結合機構と、
主軸頭にアタッチメント本体を主軸軸線方向に押圧させるようにアタッチメント本体に弾性力を作用させている弾性手段と、
結合機構の結合を解除するように弾性手段の弾性力に抗して主軸頭からアタッチメント本体を離隔させる方向にアタッチメント本体をプレスするプレス手段と、
主軸の回転を、常時、アタッチメント本体に装備した回転工具に伝達し、かつ、主軸の回転を、結合機構の結合を解除したときに、アタッチメント本体に伝達する伝達手段と、
を備えている主軸アタッチメント装置。
【請求項2】
アタッチメント本体に保持筒が主軸軸線と同心状に支持されており、保持筒の軸線上をプルスタッド軸がのびており、プルスタッド軸の先端に、ドローバーのコレットにクランプされたプルスタッドが設けられており、プルスタッド軸の基端にばね受けが設けられており、保持筒の内面に、プルスタッド軸の長さの中程を取り囲んで環状ばね押えが設けられており、弾性手段は、ばね受けおよびばね押え間に介在させられている圧縮ばねよりなる請求項1に記載の主軸アタッチメント装置。
【請求項3】
保持筒の外面に駆動歯車が設けられており、駆動歯車に噛み合わされた従動歯車が、回転工具を回転させるためのアタッチメント軸に設けられており、主軸孔周面と合致させられた外面を有する筒状アーバーが、プルスタッド軸に軸方向相対的移動自在かつ保持筒に主軸軸線周りの回転は拘束するが、主軸軸線方向の相対的移動は自由とするように連結されており、アーバは、円環状フランジを有しており、フランジに、ドライブキー溝および旋回キーがフランジ周方向に間隔をおいて形成されており、伝達手段は、主軸の先端面に設けられかつドライブキー溝に常時はめ入れられているドライブキーと、アタッチメント本体に設けられかつ結合機構の結合を解除したときに、旋回キーをはめ入れる旋回キー溝とを備えている請求項1または2に記載の主軸アタッチメント装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−135831(P2012−135831A)
【公開日】平成24年7月19日(2012.7.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−289591(P2010−289591)
【出願日】平成22年12月27日(2010.12.27)
【出願人】(000149066)オークマ株式会社 (476)
【Fターム(参考)】