説明

乗務員運用計画作成支援システム

【課題】列車の経由に関する経由情報を利用することで、実態に即した乗務員運用計画を少ない演算負荷で作成できるようにするための乗務員運用計画作成支援システムを提供する。
【解決手段】運行情報及び経由情報並びに乗務員の基地駅に関する基地駅情報が記憶されたデータベース2からデータを読み込む読込み手段30と、経由情報に基づいて列車を複数の経由グループに分類する経由グループ作成手段31と、経由グループのそれぞれに基地駅を設定する基地駅設定手段32と、経由グループに含まれる列車の運行情報を、それぞれの基地駅の運行として割り当てる運行割当手段33と、基地駅に割り当てられた運行を乗務員の仕業を作成するための行程断片に設定する行程断片設定手段34とを備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、列車の運行に対して運転士や車掌などの乗務員を割り当てる乗務員運用計画の作成を支援させるための乗務員運用計画作成支援システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
例えば1年に一度、列車ダイヤが見直されて改正されると、それに合わせて乗務員の運用計画も作成し直す必要がある。この作業は、従来、長い日数と多大な労力をかけて手作業でおこなわれていた。これに対して、近年、コンピュータを使った乗務員の運用計画を作成する装置が開発されている(特許文献1,2参照)。
【0003】
ところが、一つの列車ダイヤに対して考えられる乗務員運用計画(解)は無数にあるため、高性能の演算能力を備えたコンピュータが存在する今日においても、総当り的な計算では実用的に解を得ることは難しい。また、その中から最適な解を探索することはさらに困難である。このため、コンピュータ化をおこなうに際しては、様々な工夫がなされている。
【0004】
特許文献1に開示された乗務行路計画装置は、乗務員の待ち時間の長さを基礎コストとして捉え、基礎コストの総和が小さくなる行路(仕業)が残存していくように演算を進める装置となっている。
【0005】
また、特許文献2には、操作者がマウスを操作して修正をおこなうことが可能な乗務交番作成装置が開示されている。このような装置であれば、コンピュータで処理させ難い部分を、操作者の判断によって補うことで演算負荷を減らすことができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2007−188222号公報
【特許文献2】特許第2597077号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
このように従来からコンピュータを使って乗務員運用計画を作成するための処理の工夫がおこなわれているが、最適な処理手法が確立されているとは言い難いのが現状である。
【0008】
また、乗務員はいずれかの機関区(「基地駅」と表現する場合もある。)に所属することになるが、列車は機関区を跨って運行されており、いずれの機関区に所属する乗務員が乗務してもいいような場合がある。そのような場合に、適切な処理がおこなわれなければ、実態に合わない解が求められたり、問題が大きくなって解けなくなったりするおそれがある。
【0009】
そこで、本発明は、列車の経由に関する経由情報を利用することで、実態に即した乗務員運用計画を少ない演算負荷で作成できるようにするための乗務員運用計画作成支援システムを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
前記目的を達成するために、本発明の乗務員運用計画作成支援システムは、列車の運行に対して乗務員を割り当てる乗務員運用計画を作成するための乗務員運用計画作成支援システムであって、列車の運行に関する運行情報及び列車の経由に関する経由情報並びに乗務員の勤務の開始地点及び終了地点を示す基地駅に関する基地駅情報が記憶されたデータ記憶手段からデータを読み込む読込み手段と、前記読込み手段によって読み込まれた前記経由情報に基づいて列車を複数の経由グループに分類する経由グループ作成手段と、前記経由グループのそれぞれに前記基地駅を設定する基地駅設定手段と、前記基地駅に割り当てられた経由グループに含まれる列車の運行情報を、それぞれの基地駅の運行として割り当てる運行割当手段と、前記基地駅に割り当てられた運行を前記乗務員の仕業を作成するための行程断片に設定する行程断片設定手段とを備えたことを特徴とする。
【0011】
ここで、前記行程断片設定手段によって設定された行程断片から仕業を作成する仕業作成手段を備え、前記仕業作成手段は、前記経由グループに一つずつ前記基地駅が設定されている場合は、基地駅毎に仕業を作成し、一つの経由グループに複数の基地駅が設定されたものが存在する場合は、基地駅が重複する経由グループを併せて仕業を作成する、又は経由グループ毎に仕業を作成して一つの基地駅に複数の仕業の組が生成されるようにすることができる。
【発明の効果】
【0012】
このように構成された本発明の乗務員運用計画作成支援システムは、列車の運行情報を列車の経由に関する経由情報を使って各基地駅に分配する。すなわち、経由情報に基づいて列車を複数の経由グループに分類し、各経由グループに設定された基地駅の乗務員の仕業を構成する行程断片に、分配された運行を設定する。
【0013】
このように列車の経由に関する経由情報を利用することで、複数の機関区で使用される駅を通る列車の乗務員運用計画問題を適切に分割することができる。この結果、組み合わせが発散して解が得られなくなることがなくなり、実態に即した乗務員運用計画が少ない演算負荷で作成できるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の実施の形態の乗務員運用計画作成支援システムの構成を説明するブロック図である。
【図2】本発明の実施の形態の乗務員運用計画作成支援システムの処理の流れを説明するフローチャートである。
【図3】経由情報を説明するための模式的な路線図であって、(a)は一部が重なっている経由を説明する図、(b)は異なる経路を通った後に合流する経由を説明する図である。
【図4】列車の運行情報を説明するための模式的な列車ダイヤである。
【図5】乗務員の仕業を説明するための模式的な説明図である。
【図6】実施例を説明するための模式的な路線図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照して説明する。図1は、本実施の形態の乗務員運用計画作成支援システムとしての列車機関区分配システム1の構成を説明するブロック図である。
【0016】
本実施の形態の列車機関区分配システム1は、データ記憶手段としてのデータベース2と、処理部3と、出力手段4とを主に備えている。ここで説明する列車機関区分配システム1の処理部3は、後述する各種手段を実行させるコンピュータプログラムがインストールされたコンピュータによって主に構成される。
【0017】
そして、本実施の形態の列車機関区分配システム1は、列車の運行に対して運転士などの乗務員を割り当てる乗務員運用計画を作成するための前処理をおこなうシステムである。
【0018】
この列車機関区分配システム1を作動させる前提として、まず、図4に模式的に示したような列車ダイヤ(又は列車運行計画)が作成されていることが条件となる。
【0019】
この図4の列車ダイヤには、4本の列車の運行に関する情報が示されている。ここで、列車1、列車2、列車3、列車4は、各列車の列車番号を示す。また、各列車の駅間の斜線上に記載された小文字のアルファベットは、各列車の運行情報を示す。さらに、横軸は時間の経過を示す。
【0020】
例えば、列車1は、A駅を出発してC駅に終着する列車であり、A駅からB駅までの運行aとB駅からC駅までの運行cという運行情報を有している。同様に、列車2は、D駅を出発してB駅に終着する列車であり、D駅からC駅までの運行bとC駅からB駅までの運行dという運行情報を有している。
【0021】
続いて、列車の経由に関する経由情報について、図3の模式的な路線図を使って説明する。この図3(a)の路線図には、実線で繋がれたA駅、B駅、C駅、E駅を通る経由と、破線で繋がれたF駅、B駅、C駅、D駅を通る経由とが示されている。この各経由には、A駅からE駅方向に向かう列車、E駅からA駅方向に向かう列車、F駅からD駅方向に向かう列車、D駅からF駅方向に向かう列車などが走行する。
【0022】
そして、経由情報とは、列車が停車又は通過する駅の集合によって特徴付けられる情報をいう。例えば、図3(a)に示された2つの経由は、両方ともB駅とC駅とを通過するため、経由情報として(B駅,C駅)だけを登録すると、実線の経由と破線の経由との区別がつかなくなる。また、同じ駅を通ることだけで、異なる方向に向かう2つの経由を同じ機関区に配分すると、実態に即さない乗務員運用計画が作成されるおそれがある。
【0023】
これに対して、例えば実線の経由の経由情報を(A駅,B駅,C駅,E駅)とし、破線の経由の経由情報を(F駅,B駅,C駅,D駅)とすることで2つの経由を区別することができるようになる。
【0024】
一方、列車は、上り列車、下り列車というようにA駅から出てE駅に向かう列車と、E駅から出てA駅に向かう列車とは、走行方向が逆になり区別できるが、経由情報では(A駅,B駅,C駅,E駅)と同じに扱う。よって、F駅から出てD駅に向かう列車と、D駅から出てF駅に向かう列車も、走行方向は逆になるが、経由情報は(F駅,B駅,C駅,D駅)と同じになる。
【0025】
また、経由情報には、図3(b)に示すような始点側及び終点側では合流するが、途中で経路が分かれる場合がある。すなわち、図3(b)に示した路線図には、実線で繋がれたG駅、H駅、I駅、J駅を通る経由と、破線で繋がれたG駅、K駅、L駅、J駅を通る経由とが示されている。そして、実線の経由の経由情報は(G駅,H駅,I駅,J駅)となり、破線の経由の経由情報は(G駅,K駅,L駅,J駅)となる。
【0026】
ここで、運転士などの乗務員が所属する機関区には、勤務の開始駅(開始地点)及び終了駅(終了地点)となる基地駅がある。乗務員の勤務は、勤務の開始駅と勤務の終了駅とが同じ駅、すなわち同じ基地駅になる必要がある。
【0027】
このような「行って戻ってくる」という乗務員の勤務の性質を考慮すると、同一経路を辿る運行同士を仕業に組み込む方が乗務員の運用計画を立て易くなる。そこで、後述するように経由情報に基づいて列車を分類する処理をおこなう。
【0028】
以上に述べた情報は、図1に示すようにデータ記憶手段としてのデータベース2に記憶される。データベース2には、ハードディスク、ROM(Read Only Memory)などの各種記憶媒体が使用できる。
【0029】
そして、データベース2には、列車運行データ21、経由情報22、運転士データ23などが記憶される。また、列車運行データ21には、列車番号に関する列車番号情報21aと運行情報21bとが含まれる。さらに、経由情報22には、上述した経由情報に関するデータが含まれる。そして、運転士データ23には、運転士が所属する基地駅を示す基地駅情報23aなどが含まれる。
【0030】
処理部3は、データベース2に記憶された各種データを読み込む読込み手段30と、経由情報に基づいて列車を分類する経由グループ作成手段31と、各経由グループの基地駅を設定する基地駅設定手段32と、各経由グループに分配された列車の運行を基地駅に割り当てる運行割当手段33と、割り当てられた運行を運転士の行程断片に設定する行程断片設定手段34とを主に備えている。
【0031】
この処理部3は、上記した各種手段の演算をおこなうためのCPU(Central Processing Unit)、一時記憶領域としてのRAM(Random Access Memory)などのハード部と、各種手段を実行させるためにインストールされたコンピュータプログラム(ソフト部)とによって主に構成される。
【0032】
経由グループ作成手段31では、読込み手段30によってデータベース2から読み込まれた経由情報22に基づいて、同じく読込み手段30によってデータベース2から読み込まれた列車運行データ21に記憶された列車を複数の経由グループに分類する処理をおこなう。
【0033】
例えば、経由情報22からABC経由グループ(A駅,B駅,C駅,E駅)と、BCD経由グループ(F駅,B駅,C駅,D駅)という2種類の情報が読み込まれた場合、経由グループ作成手段31によって列車を2つの経由グループに分類する。
【0034】
例えば、図4に示すように列車1の経由駅はA駅とB駅とC駅であるため、列車1をABC経由グループに入れる。また、列車3の経由駅は、C駅とB駅とA駅であるため、列車1と同じくABC経由グループに入れる。
【0035】
他方、列車2の経由駅はD駅とC駅とB駅であるため、列車2はBCD経由グループに入れる。また、列車4の経由駅は、B駅とC駅とD駅であるため、列車2と同じくBCD経由グループに入れる。
【0036】
そして、列車の列車番号情報21aに紐付けられた運行情報21bは、各経由グループの運行情報として組み込まれる。例えば、ABC経由グループには、列車1の運行a,cと列車3の運行e,fとが登録される。また、BCD経由グループには、列車2の運行b,dと列車4の運行g,hとが登録される。
【0037】
また、基地駅設定手段32では、各経由グループに基地駅を設定する。読込み手段30によって運転士データ23の基地駅情報23aを読み込むと、A駅とD駅とが基地駅であるという情報が得られる。一方、ABC経由グループにはA駅が含まれることから、基地駅設定手段32によってABC経由グループの基地駅をA駅に設定する。また、BCD経由グループにはD駅が含まれることから、BCD経由グループの基地駅をD駅に設定する。
【0038】
さらに、運行割当手段33では、各経由グループに登録された列車の運行を、基地駅設定手段32で設定された各基地駅に割り当てる。すなわち、運行割当手段33によって、基地駅AにABC経由グループの運行a,c,e,fが割り当てられ、基地駅DにBCD経由グループの運行b,d,g,hが割り当てられる。
【0039】
そして、行程断片設定手段34では、各基地駅に割り当てられた運行を行程断片に設定する。ここで、「行程断片」とは、運転士の仕業(1回の勤務、「行路」と呼ぶ場合もある。)を構成する単位である。一つの仕業に含まれる同一列車の運行の連続を行程といい、行程は運転士の乗り換えが可能な駅で分割でき、その分割された行程を行程断片と呼ぶ。例えば、図4,5を使って説明すると、仕業1に含まれる列車1の運行a,cが一つの行程(a,c)となる。この行程(a,c)は、停車駅であるB駅で分割されて行程断片aと行程断片cとなる。同様に、仕業1に含まれる列車3の運行e,fが一つの行程(e,f)となり、この行程(e,f)は行程断片eと行程断片fとに分割できる。そして、複数の行程断片(例えば、行程断片a,c,e,f)を連結していくことで一つの仕業(仕業1)を作成することができる。このため、列車の運行情報21bは、行程断片として使用可能な単位でデータベース2に記憶されている。
【0040】
出力手段4は、行程断片設定手段34で設定された行程断片を基地駅ごとに出力させる手段であって、演算結果をデータとして記憶させる記憶媒体、紙に印刷させるプリンタ、画面に表示させるモニタのいずれの形態であってもよい。
【0041】
次に、本実施の形態の列車機関区分配システム1の処理の流れについて、図2を主に参照しながら説明する。
【0042】
まず、ステップS1において、読込み手段30によって列車運行データ21に含まれる列車番号情報21aと運行情報21bとを読み込ませる。また、ステップS2において、読込み手段30によって経由情報22を読み込ませる。
【0043】
そして、読み込まれた列車運行データ21と経由情報22とに基づいて、経由グループ作成手段31によって列車を複数の経由グループに分類する(ステップS3)。
【0044】
図3(a)に示した図で説明すると、ABC経由グループ(A駅,B駅,C駅,E駅)と、BCD経由グループ(F駅,B駅,C駅,D駅)という経由情報22が読み込まれたとする。これらの経由情報22と、図4に示された列車1,列車2,列車3,列車4のそれぞれの停車駅とを比較すると、列車1と列車3は(A駅,B駅,C駅)が一致するため、ABC経由グループに分類される。また、列車2と列車4は(B駅,C駅,D駅)が一致するため、BCD経由グループに分類される。
【0045】
このように経由情報22を利用して列車を分類する理由としては、例えばB駅とC駅とを経由駅とする列車であっても、A駅を経由する列車とD駅を経由する列車とではその先の経路が異なるため、「基地駅から出発して同じ基地駅で終了する」という運転士の仕業の性質を考慮すれば、同じ経路となる列車の運行を割り当てる方が問題を解きやすくなるためである。よって、B駅とC駅を通る列車は、列車によって異なる機関区の運転士の乗務となる可能性がある。
【0046】
また、ステップS4では、基地駅設定手段32によって各経由グループの基地駅を設定する。ABC経由グループは、基地駅であるA駅を経由駅に含んでいるため、A駅をABC経由グループの基地駅に設定する。BCD経由グループは、基地駅であるD駅を経由駅に含んでいるため、D駅をBCD経由グループの基地駅に設定する。
【0047】
さらに、ステップS5では、各経由グループに分類された列車を、運行割当手段33によって基地駅設定手段32で設定した各基地駅に割り当てる。基地駅Aには、ABC経由グループに分類された列車1,3の運行a,c,e,fを割り当てる。また、基地駅Dには、BCD経由グループに分類された列車2,4の運行b,d,g,hを割り当てる。
【0048】
そして、ステップS6では、各基地駅に割り当てられた運行を、行程断片設定手段34によって運転士の行程断片に設定する。続いて、ステップS7において、設定された行程断片を組み合わせて仕業作成手段(図示省略)によって運転士の仕業を作成する。例えば図5に示すように、基地駅Aの運転士には、運行aと運行cと運行eと運行fとを繋いだ仕業1(実線)を作成する。また、基地駅Dの運転士には、運行bと運行dと運行gと運行hとを繋いだ仕業2(破線)を作成する。
【0049】
次に、本実施の形態の列車機関区分配システム1の作用について説明する。
【0050】
このように構成された本実施の形態の列車機関区分配システム1は、列車の運行情報を列車の経由に関する経由情報を使って各基地駅に分配する。すなわち、経由情報に基づいて列車を複数の経由グループに分類し、各経由グループに設定された基地駅の運転士の仕業を構成する行程断片に、分配された運行を設定する。
【0051】
このように列車の経由に関する経由情報を利用することで、複数の機関区で使用される駅を通る列車の乗務員運用計画問題を適切に分割することができる。この結果、組み合わせが発散して解が得られなくなることがなくなり、実態に即した乗務員運用計画が少ない演算負荷で作成できるようになる。すなわち、乗務員運用計画を作成する際の演算負荷は、駅の数や運行の数などの問題の大きさの2乗やそれ以上のオーダーで増加するため、問題を分割して演算負荷を減すことで、解を得られやすくすることができる。
【0052】
また、この分割方法によれば、複数の経由が通っている区間において一つの経由で災害等による運休があったとしても、残りの経由は影響を受けないため、外部要因の影響を受けにくい乗務員運用計画を作成できる。例えば、ABC経由グループの区間ABで運休が発生した場合、ABC経由グループ内の列車の乗務員運用計画だけを再作成すればよく、ABC経由グループの区間BCを同じく通るBCD経由グループ内の列車の乗務員運用計画は影響を受けずにそのまま運用を続けることができる。
【実施例】
【0053】
以下、前記した実施の形態の列車機関区分配システム1とは別の形態の乗務員運用計画作成支援システムの実施例について、図6を参照しながら説明する。なお、前記実施の形態で説明した内容と同一乃至均等な部分の説明については同一符号を付して説明する。
【0054】
前記実施の形態では、一つの経由グループに一つの基地駅のみが含まれる場合について説明したが、一つの経由グループに複数の基地駅が含まれる場合がある。このような場合は、仕業作成手段(図示省略)によってそれらの基地駅の運転士の仕業を併せて作成することになるため、この実施例で説明する。
【0055】
仕業を併せて作成する場合には、「すべて併せて作成する方法」と「組を分けて作成する方法」とがあり、業務上の要請などによっていずれかの方法を任意に選択できる構成にしておけばよい。
【0056】
まず、「すべて併せて作成する方法」について説明すると、複数の基地駅が含まれる経由グループがあった場合に、それらの基地駅のいずれかが一致するすべての経由グループを同一の仕業の作成単位とする。
【0057】
例えば、図6に示すように、I駅とII駅とIII駅とIV駅とV駅とを通る区間があり、I-II経由グループとII-IV経由グループとIV-V経由グループとに分かれていたとする。
【0058】
ここで、I-II経由グループの基地駅はII駅、II-IV経由グループの基地駅はII駅とIV駅、IV-V経由グループの基地駅はIV駅である。すなわち、II-IV経由グループには複数の基地駅が含まれている。
【0059】
このような場合に、いずれかの基地駅が一致するすべての経由グループを同一の仕業の作成単位とする。すなわち、II-IV経由グループの基地駅はII駅とIV駅であるため、II駅を基地駅とするI-II経由グループと、IV駅を基地駅とするIV-V経由グループとを、II-IV経由グループと併せて仕業の作成単位にする。
【0060】
複数の行程断片を連結して仕業を作成する処理(図2のステップS7参照)においては、連結するためのコスト(行程断片間の待ち時間、前にくる行程断片の到着駅から後にくる行程断片の出発駅までの便乗(移動のための勤務を伴わない乗務))を計算して、コストが最も小さくなるように基地駅の割り当てをおこなう。
【0061】
このため、3つの経由グループを併せて仕業の作成単位にした場合は、経由グループごとにそれぞれ仕業を作成した場合には組み込まれない基地駅に設定された行程断片が、仕業に組み込まれる可能性がある。例えば、I-II経由グループの基地駅ではないIV駅の乗務員の仕業に、I-II経由グループの行程断片が組み込まれる可能性がある。しかしながら、この場合の行程断片の連結はコストに基づいておこなわれているため、そのような仕業が作成されたとしてもコスト面では有利な仕業といえる。
【0062】
一方、「組を分けて作成する方法」では、複数の基地駅が含まれる経由グループ(II-IV経由グループ)があった場合に、それぞれの基地駅と基地駅が一致する経由グループのみを同一の仕業の作成単位にする。この方法では、基地駅が複数の経由グループに属する場合は、一つの基地駅に複数の組(複数の仕業を組み合わせた勤務の単位。「交番組」とも呼ばれる。)が作成されることになる。
【0063】
例えば、図6を使って説明すると、基地駅IIにはI-II経由グループの行程断片とII-IV経由グループの行程断片とが分配される。また、基地駅IVにはII-IV経由グループの行程断片とIV-V経由グループの行程断片とが分配される。
【0064】
このため、基地駅IIでは、I-II経由グループの行程断片を組み合わせて作成された仕業による交番組と、II-IV経由グループの行程断片を組み合わせて作成された仕業による交番組との二つの組が作成される。また、基地駅IVでは、II-IV経由グループの行程断片を組み合わせて作成された仕業による交番組と、IV-V経由グループの行程断片を組み合わせて作成された仕業による交番組との二つの組が作成される。
【0065】
このように基地駅の中で組を分けて作成する方法で処理すると、基地駅に所属する乗務員への割り当ては事前に決定された通りに守られるが、コスト面では不利となる場合もある。
【0066】
なお、他の構成及び作用効果については、前記実施の形態と略同様であるので説明を省略する。
【0067】
以上、図面を参照して、本発明の実施の形態を詳述してきたが、具体的な構成は、この実施の形態に限らず、本発明の要旨を逸脱しない程度の設計的変更は、本発明に含まれる。
【0068】
例えば、前記実施の形態では、データベース2と処理部3と出力手段4とを備えた列車機関区分配システム1について説明したが、これに限定されるものではなく、前記実施の形態で説明した処理部3の各種手段を実行させるコンピュータプログラム又はそのようなコンピュータプログラムがインストールされたコンピュータが本発明の乗務員運用計画作成支援システムであってもよい。
【符号の説明】
【0069】
1 列車機関区分配システム(乗務員運用計画作成支援システム)
2 データベース(データ記憶手段)
21 列車運行データ
21a 列車番号情報
21b 運行情報
22 経由情報
23 運転士データ
23a 基地駅情報
3 処理部
30 読込み手段
31 経由グループ作成手段
32 基地駅設定手段
33 運行割当手段
34 行程断片設定手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
列車の運行に対して乗務員を割り当てる乗務員運用計画を作成するための乗務員運用計画作成支援システムであって、
列車の運行に関する運行情報及び列車の経由に関する経由情報並びに乗務員の勤務の開始地点及び終了地点を示す基地駅に関する基地駅情報が記憶されたデータ記憶手段からデータを読み込む読込み手段と、
前記読込み手段によって読み込まれた前記経由情報に基づいて列車を複数の経由グループに分類する経由グループ作成手段と、
前記経由グループのそれぞれに前記基地駅を設定する基地駅設定手段と、
前記基地駅に割り当てられた経由グループに含まれる列車の運行情報を、それぞれの基地駅の運行として割り当てる運行割当手段と、
前記基地駅に割り当てられた運行を前記乗務員の仕業を作成するための行程断片に設定する行程断片設定手段とを備えたことを特徴とする乗務員運用計画作成支援システム。
【請求項2】
前記行程断片設定手段によって設定された行程断片から仕業を作成する仕業作成手段を備え、
前記仕業作成手段は、前記経由グループに一つずつ前記基地駅が設定されている場合は、基地駅毎に仕業を作成し、
一つの経由グループに複数の基地駅が設定されたものが存在する場合は、基地駅が重複する経由グループを併せて仕業を作成する、又は経由グループ毎に仕業を作成して一つの基地駅に複数の仕業の組が生成されるようにすることを特徴とする請求項1に記載の乗務員運用計画作成支援システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2013−11974(P2013−11974A)
【公開日】平成25年1月17日(2013.1.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−143232(P2011−143232)
【出願日】平成23年6月28日(2011.6.28)
【出願人】(593230202)株式会社エヌ・ティ・ティ・データ・セキスイシステムズ (9)
【出願人】(000230696)日本貨物鉄道株式会社 (14)
【Fターム(参考)】