説明

乗員拘束装置

【課題】乗員拘束用の左右のラップベルト及び左右のショルダーベルトを、リトラクタから引出し可能な乗員拘束装置において、リトラクタの配設位置の自由度を高めると共に、乗員に対するラップベルト及びショルダーベルトの装着位置を適正化できるようにすることを目的とする。
【解決手段】リトラクタ22,24,26,28が、左右一対のラップベルト14,16及び左右一対のショルダーベルト18,20の各々の巻取り側端部に配設されている。各ベルトを引き出すと、リトラクタモータ32,34,36,38(検出手段)により各ベルトの繰出し長が検出される。この繰出し長に基づいて、ECU40(制御手段)が各リトラクタモータ32,34,36,38(駆動手段)を作動させることで、左右のラップベルト14,16における繰出し長の差及び左右のショルダーベルト18,20における繰出し長の差を、夫々減少させることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、乗員拘束装置に関する。
【背景技術】
【0002】
4点式シートベルトの左右のラップベルトを巻き取るラップ側リトラクタとして、互いに平行とされラップベルトを互いに相反する回転方向に巻き付ける巻取り軸と、両巻取り軸に互いにかみ合うように夫々設けられた一対の歯車と、ラップベルトを巻き取る向きに一方の巻取り軸を弾発付勢するねじりばねとを有し、両ラップベルトの巻取りを同期させることで、該両ラップベルトの繰出し量が同一になるようにした構造が開示されている(特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2004−330977号公報
【特許文献2】特開2004−330975号公報
【特許文献3】特開2000−16234号公報
【特許文献4】特開平10−278738号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、上記した従来例では、左右のラップベルトの巻取りを同期させるべく、両巻取り軸に、互いにかみ合う一対の歯車を有する構成となっているため、両巻取り軸を互いに近接させて配設する必要があり、両巻取り軸の配設位置が制限される。
【0004】
本発明は、上記事実を考慮して、乗員拘束用の左右のラップベルト及び左右のショルダーベルトを、リトラクタから引出し可能な乗員拘束装置において、リトラクタの配設位置の自由度を高めると共に、乗員に対するラップベルト及びショルダーベルトの装着位置を適正化できるようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
請求項1の発明は、車両用シートに着座した乗員の腰部に対応する左右一対のラップベルトと、該ラップベルトに夫々連結され、前記乗員の胸部に対応する左右一対のショルダーベルトと、前記ラップベルト及び前記ショルダーベルトの各々の巻取り側端部に配設され、該ラップベルト及び該ショルダーベルトを夫々巻取り可能に構成され、かつ駆動手段により該ラップベルト及び該ショルダーベルトを夫々少なくとも巻取り方向に駆動可能なリトラクタと、前記ラップベルト及び前記ショルダーベルトの繰出し長を夫々検出可能な検出手段と、該検出手段により検出された前記ラップベルト及び前記ショルダーベルトの繰出し長に基づいて、左右の前記ラップベルトにおける繰出し長の差及び左右の前記ショルダーベルトにおける繰出し長の差が夫々減少するように各々の前記駆動手段を作動させる制御手段と、を有している。
【0006】
請求項1に記載の乗員拘束装置では、乗員拘束用の左右一対のラップベルト及び左右一対のショルダーベルトを、リトラクタから夫々引出し可能である。このリトラクタは、左右一対のラップベルト及び左右一対のショルダーベルトの各々の巻取り側端部に配設されているので、該リトラクタの配設位置の自由度を高めることができる。
【0007】
車両用シートに着座した乗員は、左右一対のラップベルト及び左右一対のショルダーベルトを装着する際に、該ラップベルト及びショルダーベルトを各々のリトラクタから引き出すことができる。このとき、検出手段により、各ラップベルト及び各ショルダーベルトの繰出し長が夫々検出される。この検出された繰出し長に基づいて、制御手段がリトラクタの駆動手段を作動させることで、左右のラップベルトにおける繰出し長の差及び左右のショルダーベルトにおける繰出し長の差が夫々減少する。乗員拘束用の左右のラップベルト及び左右のショルダーベルトを、リトラクタから引出し可能な乗員拘束装置において、乗員に対するラップベルト及びショルダーベルトの装着位置を適正化することができる。
【0008】
請求項2の発明は、請求項1に記載の乗員拘束装置において、前記制御手段が、前記検出手段により検出された左右の前記ラップベルトの繰出し長が等しくなり、かつ前記検出手段により検出された左右の前記ショルダーベルトの繰出し長が等しくなるように各々の前記駆動手段を作動させる。
【0009】
請求項2に記載の乗員拘束装置では、左右一対のラップベルト及び左右ショルダーベルトがリトラクタから引き出されると、検出手段により、各ラップベルト及び各ショルダーベルトの繰出し長が夫々検出される。制御手段は、検出手段により検出された左右のラップベルトの繰出し長が等しくなり、かつ検出手段により検出された左右のショルダーベルトの繰出し長が等しくなるように各々の駆動手段を作動させる。このため、乗員に対するラップベルト及びショルダーベルトの装着位置を適正化することができる。
【0010】
請求項3の発明は、請求項1に記載の乗員拘束装置において、前記制御手段が、前記検出手段により検出された左右の前記ラップベルト及び左右の前記ショルダーベルトの繰出し長に基づいて、前記乗員の体格を推定し、該ラップベルトの繰出し長及び該ショルダーベルトの繰出し長が、夫々前記体格に対応する適正長さとなるように、各々の前記駆動手段を作動させる。
【0011】
請求項3に記載の乗員拘束装置では、左右一対のラップベルト及び左右ショルダーベルトがリトラクタから引き出されると、検出手段により、各ラップベルト及び各ショルダーベルトの繰出し長が夫々検出される。制御手段は、検出手段により検出された左右のラップベルト及び左右のショルダーベルトの繰出し長に基づいて、乗員の体格を推定し、該ラップベルトの繰出し長及び該ショルダーベルトの繰出し長が、夫々体格に対応する適正長さとなるように、各々の駆動手段を作動させる。このため、乗員に対するラップベルト及びショルダーベルトの装着位置を、該乗員の体格に対応して適正化することができる。
【発明の効果】
【0012】
以上説明したように、本発明に係る請求項1に記載の乗員拘束装置によれば、乗員拘束用の左右のラップベルト及び左右のショルダーベルトを、リトラクタから引出し可能な乗員拘束装置において、リトラクタの配設位置の自由度を高めると共に、乗員に対するラップベルト及びショルダーベルトの装着位置を適正化できるようにすることができる、という優れた効果が得られる。
【0013】
請求項2に記載の乗員拘束装置によれば、乗員に対するラップベルト及びショルダーベルトの装着位置を適正化することができる、という優れた効果が得られる。
【0014】
請求項3に記載の乗員拘束装置によれば、乗員に対するラップベルト及びショルダーベルトの装着位置を、該乗員の体格に対応して適正化することができる、という優れた効果が得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づき説明する。図1において、本実施の形態に係る乗員拘束装置10は、車両用シート12に設けられる所謂4点式のシートベルト装置であり、図3に示されるように、左右一対のラップベルト14,16と、左右一対のショルダーベルト18,20と、リトラクタ22,24,26,28と、検出手段の一例たるリトラクタモータ32,34,36,38と、制御手段の一例たるECU(Electronic Control Unit)40とを有している。
【0016】
左右一対のラップベルト14,16は、車両用シート12に着座した乗員42の腰部42W(図2)に対応する非伸長性の帯状体であり、例えば車両用シート12におけるシートクッション44の両側部から夫々引出し可能に構成されている。車両右側のラップベルト14の先端には、例えばバックル装置50が連結されている。車両左側のラップベルト16の先端には、例えばタングプレート46が連結されている。図2に示されるように、乗員42がラップベルト14,16及びショルダーベルト18,20を装着する際には、タングプレート46をバックル装置50に差し込んで固定する。バックル装置50には、該タングプレート46の固定を検出可能なバックルスイッチ(図示せず)が設けられており、タングプレート46がバックル装置50に正しく差し込まれた際に、該バックル装置50から例えばECU40にバックル固定信号が伝達されるようになっている。
【0017】
図1において、左右一対のショルダーベルト18,20は、ラップベルト14,16に夫々連結され、乗員42の胸部42C(図2)に対応する非伸長性の帯状体であり、例えば車両用シート12におけるシートバック48の上部から夫々引出し可能に構成されている。具体的には、車両右側のショルダーベルト18の先端は、バックル装置50に連結され、車両左側のショルダーベルト20の先端は、タングプレート46に連結されている。シートバック48の上部には、該シートバック48の内部から外部へのショルダーベルト18,20の出入りを可能とする貫通孔30,31が形成されている。
【0018】
リトラクタ22,24,26,28は、ラップベルト14,16及びショルダーベルト18,20の各々の巻取り側端部に配設され、該ラップベルト14,16及び該ショルダーベルト18,20を夫々巻取り可能に構成され、かつ駆動手段の一例たるリトラクタモータ32,34,36,38により、該ラップベルト14,16及び該ショルダーベルト18,20を夫々少なくとも巻取り方向に駆動可能に構成されている。
【0019】
リトラクタ22,24は、例えば車両用シート12におけるシートクッション44の下側後部に、車幅方向に離間して配設されている。リトラクタ22は、車両右側のラップベルト14の巻取り側端部に対応する車両右側に配設され、リトラクタ24は、車両左側のラップベルト16の巻取り側端部に対応する車両左側に配設されている。
【0020】
一方、リトラクタ26,28は、例えば車両用シート12におけるシートバック48内の上部に、車幅方向に離間して配設されている。リトラクタ26は、車両右側のショルダーベルト18の巻取り側端部に対応する車両右側に配設され、リトラクタ28は、車両左側のショルダーベルト20の巻取り側端部に対応する車両左側に配設されている。
【0021】
リトラクタ22内には、車両右側のラップベルト14を巻取り可能なスプール52と、該スプール52を少なくともラップベルト14の巻取り方向に駆動可能なリトラクタモータ32とが配設されている。スプール52の回転軸には歯車54が取り付けられ、リトラクタモータ32の回転軸には歯車55が取り付けられている。歯車54,55は、直接的又は間接的に互いに噛み合っており、これによってリトラクタモータ32の駆動力がスプール52に伝達されるようになっている。本実施形態では、リトラクタモータ32は、スプール52を、ラップベルト14の巻取り方向だけでなく、該ラップベルト14の繰出し方向にも駆動可能に構成されている。
【0022】
リトラクタ24内には、車両左側のラップベルト16を巻取り可能なスプール56と、該スプール56を少なくともラップベルト16の巻取り方向に駆動可能なリトラクタモータ34とが配設されている。スプール56の回転軸には歯車58が取り付けられ、リトラクタモータ34の回転軸には歯車60が取り付けられている。歯車58,60は、直接的又は間接的に互いに噛み合っており、これによってリトラクタモータ34の駆動力がスプール56に伝達されるようになっている。本実施形態では、リトラクタモータ34は、スプール56を、ラップベルト16の巻取り方向だけでなく、該ラップベルト16の繰出し方向にも駆動可能に構成されている。
【0023】
リトラクタ26内には、車両右側のショルダーベルト18を巻取り可能なスプール62と、該スプール62を少なくともショルダーベルト18の巻取り方向に駆動可能なリトラクタモータ36とが配設されている。スプール62の回転軸には歯車64が取り付けられ、リトラクタモータ36の回転軸には歯車66が取り付けられている。歯車64,66は、直接的又は間接的に互いに噛み合っており、これによってリトラクタモータ36の駆動力がスプール62に伝達されるようになっている。本実施形態では、リトラクタモータ36は、スプール62を、ショルダーベルト18の巻取り方向だけでなく、該ショルダーベルト18の繰出し方向にも駆動可能に構成されている。
【0024】
そしてリトラクタ28内には、車両左側のショルダーベルト20を巻取り可能なスプール68と、該スプール68を少なくともショルダーベルト20の巻取り方向に駆動可能なリトラクタモータ38とが配設されている。スプール68の回転軸には歯車70が取り付けられ、リトラクタモータ38の回転軸には歯車72が取り付けられている。歯車70,72は、直接的又は間接的に互いに噛み合っており、これによってリトラクタモータ38の駆動力がスプール68に伝達されるようになっている。本実施形態では、リトラクタモータ38は、スプール68を、ショルダーベルト20の巻取り方向だけでなく、該ショルダーベルト20の繰出し方向にも駆動可能に構成されている。
【0025】
リトラクタモータ32,34は、単なる駆動手段ではなく、ラップベルト14,16の繰出し長を夫々検出可能な検出手段をも兼ねている。またリトラクタモータ36,38は、単なる駆動手段ではなく、ショルダーベルト18,20の繰出し長を夫々検出可能な検出手段をも兼ねている。リトラクタモータ32を例に挙げて説明すると、乗員42がラップベルト14を引き出すと、リトラクタ22のスプール52が回転する。このスプール52の回転が、歯車54,55を介してリトラクタモータ32に伝達され、該リトラクタモータ32の回転軸が従動することとなる。この回転軸の回転角度を検出することで、ラップベルト14の繰出し長を算出できるようになっている。リトラクタモータ34,36,38についても同様である。これによって、リトラクタモータ32,34,36,38は、ラップベルト14,16及びショルダーベルト18,20の繰出し長を夫々検出可能となっている。
【0026】
ECU40は、検出手段の一例たるリトラクタモータ32,34,36,38により検出されたラップベルト14,16及びショルダーベルト18,20の繰出し長に基づいて、左右のラップベルト14,16における繰出し長の差及び左右のショルダーベルト18,20における繰出し長の差が夫々減少するように各々の駆動手段の一例たるリトラクタモータ32,34,36,38を作動させるように構成されている。
【0027】
具体的には、ECU40は、検出手段の一例たるリトラクタモータ32,34,36,38により検出された左右のラップベルト14,16及び左右のショルダーベルト18,20の繰出し長に基づいて、乗員42の体格を推定し、該ラップベルト14,16の繰出し長及び該ショルダーベルト18,20の繰出し長が、夫々体格に対応する適正長さとなるように、各々の駆動手段を作動させる。またこのとき、ECU40は、左右のラップベルト14,16の繰出し長が等しくなり、かつ左右のショルダーベルト18,20の繰出し長が等しくなるように各々の駆動手段を作動させる。
【0028】
この他、車両用シート12には、乗員42の着座を検知可能な乗員検知センサ(図示せず)が設けられている。また図示しない例えばメータパネルには、シートベルト(ラップベルト14,16及びショルダーベルト18,20)の繰出し長が調整中であるときに点灯するシートベルトメータランプ(図示せず)が配設されている。
【0029】
(作用)
本実施形態は、上記のように構成されており、以下その作用について説明する。図1において、本実施形態に係る乗員拘束装置10では、乗員拘束用の左右一対のラップベルト14,16及び左右一対のショルダーベルト18,20を、各々のリトラクタ22,24,26,28から夫々引出し可能である。このリトラクタ22,24,26,28は、左右一対のラップベルト14,16及び左右一対のショルダーベルト18,20の各々の巻取り側端部に配設されているので、該リトラクタ22,24,26,28の配設位置の自由度を高めることができる。即ち、本実施形態では、各リトラクタ22,24,26,28を独立させることで、各々の配置の自由度を高めている。
【0030】
(通常装着の場合の制御)
次に、図1,図3において、車両用シート12に着座した乗員42(図2)が、ラップベルト14,16及びショルダーベルト18,20を装着する際(通常装着時)における、ECU40による制御方式について説明する。
【0031】
図3のフローチャートに示されるように、ステップ80においては、ECU40によりリトラクタ22,24,26,28の初期位置、即ちスプール52,56,62,68の初期の角度位置が夫々認識される。次のステップ82においては、乗員検知センサが、車両用シート12における乗員42の着座を検知する。次のステップ84においては、シートベルト(ラップベルト14,16及びショルダーベルト18,20)の繰出し長が調整中であることを乗員42に示すために、ショルダーベルトメータランプが点灯する。ステップ86において、乗員42がタングプレート46をバックル装置50に差し込むと、バックルスイッチがこれを検出して、バックル固定信号がバックル装置50からECU40へ伝達される。これにより、乗員42によるラップベルト14,16及びショルダーベルト18,20の装着が完了したことが認識される。
【0032】
次に、ステップ88において、各ベルト(ラップベルト14,16及びショルダーベルト18,20)の装着時における各々の繰出し長が認識される。具体的には、図1において、車両右側のラップベルト14がリトラクタ22から引き出される際には、該リトラクタ22内のスプール52が回転する。該スプール52の回転は、該スプール52の回転軸に設けられた歯車54から、リトラクタモータ32の回転軸に設けられた歯車55へ伝達される。このとき、リトラクタモータ32の回転軸はスプール52の回転に従動し、リトラクタモータ32における回転軸の回転角度がECU40に伝達される。ECU40は、該回転角度に基づいてラップベルト14の繰出し長を算出する。
【0033】
また車両左側のラップベルト16がリトラクタ24から引き出される際には、該リトラクタ24内のスプール56が回転する。該スプール56の回転は、該スプール56の回転軸に設けられた歯車58から、リトラクタモータ34の回転軸に設けられた歯車60へ伝達される。このとき、リトラクタモータ34の回転軸はスプール56の回転に従動し、該回転軸の回転角度がECU40に伝達される。ECU40が、該回転角度に基づいてラップベルト16の繰出し長を算出する。
【0034】
一方、車両左側のショルダーベルト18がリトラクタ26から引き出される際には、該リトラクタ26内のスプール62が回転する。該スプール62の回転は、該スプール62の回転軸に設けられた歯車64から、リトラクタモータ36の回転軸に設けられた歯車66へ伝達される。このとき、リトラクタモータ36の回転軸はスプール62の回転に従動し、該回転軸の回転角度がECU40に伝達される。ECU40は、該回転角度に基づいてショルダーベルト18の繰出し長を算出する。
【0035】
そして車両左側のショルダーベルト20がリトラクタ28から引き出される際には、該リトラクタ28内のスプール68が回転する。該スプール68の回転は、該スプール68の回転軸に設けられた歯車70から、リトラクタモータ34の回転軸に設けられた歯車72へ伝達される。このとき、リトラクタモータ34の回転軸はスプール68の回転に従動し、該回転軸の回転角度がECU40に伝達される。ECU40が、該回転角度に基づいてショルダーベルト20の繰出し長を算出する。このようにして、左右のラップベルト14,16及び左右のショルダーベルト18,20の装着時における各々の繰出し長が認識される。またこのとき、ECU40は、左右のラップベルト14,16及び左右のショルダーベルト18,20の繰出し長に基づいて、乗員42の体格を推定し、各ベルト長の適正長さ(適正繰出し長)を算出する。この各ベルトの適正長さは、ECU40に記憶される。
【0036】
ベルト装着時のバランスを考慮して、タングプレート46及びバックル装置50を、シート幅方向中央に位置させるためには、左右のラップベルト14,16の繰出し長を、等しくすることが望ましい。従って、ラップベルト14,16の適正長さは、乗員42の体格に対応した一定値となる。同様に、ベルト装着時のバランスを考慮して、ショルダーベルト18,20の適正長さも、乗員42の体格に対応した一定値となる。なお、各ベルトの適正長さを厳密な一定値とせず、ある程度の幅を持った適正値範囲を設定するようにしてもよい。
【0037】
次に、ステップ90において、各ベルトの繰出し長が適正値となっているかどうかが判断される。具体的には、図6(A)において、ラップベルト14,16を夫々ベルトA,Bとし、ショルダーベルト18,20を夫々ベルトC,Dとする。ここで、ベルトAの繰出し長がベルトA,Bの適正長さよりも短く、ベルトBの繰出し長が該適正長さよりも長かったとする。またベルトCの繰出し長がベルトC,Dの適正長さよりも短く、ベルトDの繰出し長が該適正長さよりも長かったとする。
【0038】
この場合、図3のステップ90において、各ベルトの繰出し長が適正値となっていないと判断され、続くステップ92において、各リトラクタモータの作動による各ベルトの繰出し長の調整が行われる。図1において、ラップベルト14については、リトラクタモータ32の作動により、スプール52が該ラップベルト14の繰出し方向に回動し、図6(B)に示されるように、該ラップベルト14(ベルトA)が、ベルトA,Bの適正長さとなるまで繰り出される。ラップベルト16については、リトラクタモータ34の作動により、スプール56が該ラップベルト16の巻取り方向に回動し、該ラップベルト16(ベルトB)が、ベルトA,Bの適正長さとなるまで巻き取られる。
【0039】
一方、ショルダーベルト18については、リトラクタモータ36の作動により、スプール62が該ショルダーベルト18の繰出し方向に回動し、該ショルダーベルト18(ベルトC)が、ベルトC,Dの適正長さとなるまで繰り出される。ショルダーベルト20については、リトラクタモータ38の作動により、スプール68が該ショルダーベルト20の巻取り方向に回動し、該ショルダーベルト20(ベルトD)が、ベルトC,Dの適正長さとなるまで巻き取られる。調整が完了すると、ステップ94において、シートベルトメータランプが消灯する。乗員42は、該シートベルトメータランプの消灯により、ベルト繰出し長の調整が完了したことを知ることができる。
【0040】
このようにして、ラップベルト14,16(ベルトA,B)の繰出し長が等しくなり、ショルダーベルト18,20(ベルトC,D)の繰出し長も等しくなる。このため、乗員42に対するラップベルト14,16及びショルダーベルト18,20の装着位置を、該乗員42の体格に対応して適正化することができる。
【0041】
なお、ステップ90において、各ベルトの繰出し長が何れも適正値である場合には、ベルト長の調整が不要と判断され、図3におけるステップ94において、シートベルトメータランプが消灯する。
【0042】
(調整完了後にベルトが引き出された場合の制御)
一旦各ベルト長の調整が完了しても、その後の乗員42の動作により、何れかのベルトが再度引き出されることが有り得る。そこで、図4のフローチャートにおいて、各ベルト長の調整完了後に、何れかのベルトが引き出された場合のECU40の制御方式について説明する。
【0043】
ステップ100において、何れかのベルトの繰出し長が適正値範囲から外れたことが認識されると、ステップ102において、乗員42にベルト繰出し長の調整中であることを示すために、シートベルトランプが再び点灯する。ステップ104では、乗員42の動作により各ベルトの繰出し長が変化中であることを検知している。ステップ106において、例えば各ベルトの繰出し長の変化が少なくなる、或いは各ベルトの繰出し長の変化が止まると、乗員42の姿勢が安定したと判断される。そしてステップ108において、各リトラクタモータにより、各ベルトの繰出し長が、ECU40に記憶されている先回調整値(各ベルトの適正長さ)に調整される。この調整が完了すると、ステップ110において、シートベルトメータランプが消灯する。乗員42は、該シートベルトメータランプの消灯により、ベルト繰出し長の調整が完了したことを知ることができる。
【0044】
(ベルト装着後にタングプレートをバックル装置から外し、かつ降車しない場合の制御)
車両の非走行時に、シートベルト(ラップベルト14,16及びショルダーベルト18,20)の装着していた乗員42が、該シートベルトを非装着状態とするために、タングプレート46をバックル装置50から外し、かつ降車しないで車両用シート12に着座している場合が有り得る。そこで、図5のフローチャートにおいて、このような場合のECU40の制御方式について説明する。
【0045】
バックル装置50のバックルスイッチにより、タングプレート46がバックル装置50から離脱したことを検出すると、ステップ120において、乗員検知センサからの信号により、乗員42が降車したかどうかが判断される。乗員42が降車したと判断された場合には、図3のフローチャート(通常装着の場合の制御)に戻る。
【0046】
一方、乗員42が降車していないと判断された場合には、ステップ122においてシートベルトメータランプが点灯する。乗員42が再度タングプレート46をバックル装置50に差し込むと、ステップ124においてバックルスイッチがこれを検出して、バックル固定信号がバックル装置50からECU40へ伝達される。これにより、乗員42によるラップベルト14,16及びショルダーベルト18,20の装着が完了したことが認識される。そしてステップ126において、各リトラクタモータにより、各ベルトの繰出し長が、ECU40に記憶されている先回調整値(各ベルトの適正長さ)に調整される。この調整が完了すると、ステップ128において、シートベルトメータランプが消灯する。
【0047】
なお、制御方式はこれらに限られるものではなく、想定される様々な使用条件を考慮して、制御方式を適宜変更又は追加してもよい。
【0048】
このように、本実施形態に係る乗員拘束装置10では、乗員拘束用の左右のラップベルト14,16及び左右のショルダーベルト18,20を、リトラクタ22,24,26,28から夫々引き出すことができ、かつ乗員42に対するラップベルト14,16及びショルダーベルト18,20の装着位置を、該乗員42の体格に対応して適正化することができる。またリトラクタ22,24,26,28が夫々独立して作動可能であるので、各ベルトの引出し操作時における違和感を抑制でき、良好な引出し操作性を確保することができる。
【0049】
なお、上記実施形態では、車両右側のショルダーベルト18を巻取り可能なリトラクタ26と、車両左側のショルダーベルト20を巻取り可能なリトラクタ28とが、何れもシートバック48内に配設されているものとしたが、これらのリトラクタ26,28を、例えばシートバック48の車両後方の車体部(アッパバックパネル等)に設けるようにしてもよい。またリトラクタモータ32,34,36,38が、検出手段及び駆動手段を兼ねるものとしたが、該リトラクタモータ32,34,36,38とは別に、検出手段として、ピックアップコイル、光センサ、静電容量センサ、ロータリーエンコーダ等を用いてもよい。
【0050】
更に、上記制御方式では、ECU40が、左右のラップベルト14,16及び左右のショルダーベルト18,20の繰出し長に基づいて、乗員42の体格を推定するものとしたが、体格の推定を行わない制御方式としてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0051】
【図1】乗員拘束装置を有する車両用シートを示す模式図である。
【図2】車両用シートに着座した乗員が、ラップベルト及びショルダーベルトを夫々適正長さで装着した状態を示す正面図である。
【図3】ラップベルト及びショルダーベルトの通常の装着時における、ECUの制御方式を示すフローチャートである。
【図4】一端各ベルトの繰出し長が調整された後に、更に何れかのベルトが引き出された場合における、ECUの制御方式を示すフローチャートである。
【図5】ラップベルト及びショルダーベルトの装着後、タングプレートをバックル装置から離脱させた場合における、ECUの制御方式を示すフローチャートである。
【図6】(A)各ベルトの装着後、繰出し長の調整が行われる前の段階における各ベルトの繰出し長の一例を示す線図である。(B)ECUにより各ベルトの繰出し長が調整され、左右のラップベルトの繰出し長、及び左右のショルダーベルトの繰出し長が夫々等しくなった状態を示す線図である。
【符号の説明】
【0052】
10 乗員拘束装置
12 車両用シート
14 ラップベルト
16 ラップベルト
18 ショルダーベルト
20 ショルダーベルト
22 リトラクタ
24 リトラクタ
26 リトラクタ
28 リトラクタ
32 リトラクタモータ(検出手段,駆動手段)
34 リトラクタモータ(検出手段,駆動手段)
36 リトラクタモータ(検出手段,駆動手段)
38 リトラクタモータ(検出手段,駆動手段)
42 乗員
42C 胸部
42W 腰部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両用シートに着座した乗員の腰部に対応する左右一対のラップベルトと、
該ラップベルトに夫々連結され、前記乗員の胸部に対応する左右一対のショルダーベルトと、
前記ラップベルト及び前記ショルダーベルトの各々の巻取り側端部に配設され、該ラップベルト及び該ショルダーベルトを夫々巻取り可能に構成され、かつ駆動手段により該ラップベルト及び該ショルダーベルトを夫々少なくとも巻取り方向に駆動可能なリトラクタと、
前記ラップベルト及び前記ショルダーベルトの繰出し長を夫々検出可能な検出手段と、
該検出手段により検出された前記ラップベルト及び前記ショルダーベルトの繰出し長に基づいて、左右の前記ラップベルトにおける繰出し長の差及び左右の前記ショルダーベルトにおける繰出し長の差が夫々減少するように各々の前記駆動手段を作動させる制御手段と、
を有する乗員拘束装置。
【請求項2】
前記制御手段は、前記検出手段により検出された左右の前記ラップベルトの繰出し長が等しくなり、かつ前記検出手段により検出された左右の前記ショルダーベルトの繰出し長が等しくなるように各々の前記駆動手段を作動させる請求項1に記載の乗員拘束装置。
【請求項3】
前記制御手段は、前記検出手段により検出された左右の前記ラップベルト及び左右の前記ショルダーベルトの繰出し長に基づいて、前記乗員の体格を推定し、該ラップベルトの繰出し長及び該ショルダーベルトの繰出し長が、夫々前記体格に対応する適正長さとなるように、各々の前記駆動手段を作動させる請求項1に記載の乗員拘束装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate


【公開番号】特開2010−58679(P2010−58679A)
【公開日】平成22年3月18日(2010.3.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−226747(P2008−226747)
【出願日】平成20年9月4日(2008.9.4)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】