説明

乗客コンベアのスカートガード着脱治具

【課題】スカートガードを強固に保持し、スカートガードの着脱や運搬等の各種作業を容易に実施することができる乗客コンベアのスカートガード着脱治具を提供する。
【解決手段】一端部に固定側挟み部17が、他端部に固定側グリップ部18が設けられた基部15に、その長手に沿ってスライド自在となるようにスライド部16を設ける。また、基部15にフック部22を設けるとともに、スライド部16の一端部に可動側挟み部20を、他端部に可動側グリップ部21を設ける。そして、作業者は、固定側グリップ部18と可動側グリップ部21とを一緒に握ってスライド部16をスライドさせ、固定側挟み部17と可動側挟み部20とによってスカートガード6の突出部材を挟み込む。また、この時、スカートガード6の端部をフック部22の開口内に配置して、スカートガード6が倒れることを防止する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、乗客コンベアのスカートガードを着脱する際に使用されるスカートガード着脱治具に関するものである。
【背景技術】
【0002】
エスカレーターや動く歩道といった乗客コンベアでは、保守や点検、改修等を行う際に、ステップの側方に設けられたスカートガードを取り外すことがある。
【0003】
スカートガードの着脱時に使用される着脱治具の従来技術として、例えば、下記特許文献1に記載されたものがある。この着脱治具は、作業者が把持するための把持部と湾曲状のフック部とを備えており、上記フック部をスカートガードの裏面補強に引っ掛けることによって、スカートガードを保持するように構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007−230700号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載された着脱治具では、スカートガードを保持している間、フック部が裏面補強に引っ掛かっているだけであり、その保持力が弱いという問題があった。このため、スカートガードの着脱時や運搬時にスカートガードが着脱治具から外れ易く、作業者は、着脱治具を持っている手とは反対の手によってスカートガードを支えなければならなかった。
また、スカートガードの着脱や運搬に複数の作業者が必要になり(特許文献1の図7参照)、作業性が悪化するといった問題もあった。
【0006】
この発明は、上述のような課題を解決するためになされたもので、その目的は、スカートガードを強固に保持し、スカートガードの着脱や運搬等の各種作業を容易に実施することができる乗客コンベアのスカートガード着脱治具を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この発明に係る乗客コンベアのスカートガード着脱治具は、乗客コンベアのスカートガードを着脱する際に使用されるスカートガード着脱治具であって、所定の長さを有する基部と、基部に設けられ、基部の長手に沿ってスライド自在なスライド部と、基部の一端部に設けられた固定側挟み部と、スライド部の一端部に設けられ、固定側挟み部に対向して配置されるとともに、スライド部が基部に対して一側にスライドすることにより、固定側挟み部に接近して、固定側挟み部とによってスカートガードの裏面に設けられた突出部材を挟み込むことが可能な可動側挟み部と、基部の他端部に設けられた固定側グリップ部と、スライド部の他端部に設けられ、作業者が固定側グリップと共に握ることにより、スライド部を基部に対して一側にスライドさせる可動側グリップ部と、基部に設けられ、基部の一端部側に開口するとともに、固定側挟み部及び可動側挟み部によって突出部材が挟み込まれた際に、スカートガードの端部が開口内に配置されるフック部と、を備えたものである。
【発明の効果】
【0008】
この発明によれば、スカートガードを強固に保持し、スカートガードの着脱や運搬等の各種作業を容易に行うことができるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】乗客コンベアの全体構成を示す側面図である。
【図2】図1のA−A矢視を示す図である。
【図3】この発明の実施の形態1における乗客コンベアのスカートガード着脱治具を示す正面図である。
【図4】この発明の実施の形態1における乗客コンベアのスカートガード着脱治具を示す側面図である。
【図5】この発明の実施の形態1における乗客コンベアのスカートガード着脱治具の使用方法を説明するための図である。
【図6】この発明の実施の形態1における乗客コンベアのスカートガード着脱治具の使用方法を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
この発明をより詳細に説明するため、添付の図面に従ってこれを説明する。なお、各図中、同一又は相当する部分には同一の符号を付しており、その重複説明は適宜に簡略化ないし省略する。
【0011】
実施の形態1.
図1は乗客コンベアの全体構成を示す側面図、図2は図1のA−A矢視を示す図である。先ず、図1及び図2に基づき、乗客コンベアの具体的な構成について説明する。また、以下においては、乗客コンベアの一例として上下階床間の移動の際に利用されるエスカレーターについて具体的に説明し、動く歩道等の他の例については、その説明を省略する。
【0012】
図1及び図2において、1は上下階床間に架け渡されたエスカレーターの主枠、2はエスカレーターの利用者が上下階床間を移動する際に乗るステップ、3はステップ2と同期するように駆動される移動手摺、4はガラスパネル等からなる内側板(欄干)、5はステップ2や移動手摺3を駆動するための駆動電動機である。
【0013】
6はスカートガードであり、利用者が乗る往路側のステップ2の両側方に設けられている。このスカートガード6は、例えば、ステンレスパネル等の板状部材からなり、移動するステップ2の各側面とそれぞれ僅かな間隙を有して対向するように立設される。また、スカートガード6は、複数枚がステップ2の走行方向に合わせて連続的に配置されることにより、上下乗降口間に渡って設置される。
【0014】
各スカートガード6には、その裏面(ステップ2に対向する側面とは反対側の側面)に、補強部材7とクリップ8とが設けられている。
補強部材7は、板状からなるスカートガード6の補強用及び固定用に備えられたものであり、例えば、横断面コ字状を呈する長尺の金属部材から構成される。この補強部材7は、溶接等によってスカートガード6の裏面に固定されている。また、補強部材7は、スカートガード6の裏面から水平方向に突出する上縁部(突出部材)が、主枠1に固定された取付金9に、ボルト及びナット等からなる固定手段10を用いて固定されている。
【0015】
クリップ8は、スカートガード6の固定用に備えられたものである。このクリップ8は、例えば、弾性変形が可能な板状部材からなり、その上端部がスカートガード6の裏面に溶接等によって固定されている。即ち、主枠1には、取付金11を介してL字金12が固定されており、上記クリップ8は、このL字金12の上向き端部をスカートガード6と共に挟み込む(スカートガード6側に押し付ける)ことにより、スカートガード6の下部を主枠1に対して固定する。なお、クリップ8は、補強部材7よりも下方に配置されている。
【0016】
また、図2に示す13はスカートガード6の上端部と内側板4との間を覆うインナーデッキ、14は内側板4の外側に配置された主枠1等の部材を覆うアウターデッキである。インナーデッキ13及びアウターデッキ14は、例えば、化粧材等によって構成される。
【0017】
次に、図3乃至図6も参照し、上記構成を有するスカートガード6を着脱するための着脱治具について具体的に説明する。なお、図3はこの発明の実施の形態1における乗客コンベアのスカートガード着脱治具を示す正面図、図4はこの発明の実施の形態1における乗客コンベアのスカートガード着脱治具を示す側面図、図5及び図6はこの発明の実施の形態1における乗客コンベアのスカートガード着脱治具の使用方法を説明するための図である。
【0018】
図3及び図4に示す着脱治具は、エスカレーターの保守や点検、改修時に、作業者が、スカートガード6を着脱及び運搬するために使用するものである。この着脱治具は、基部15とスライド部16とによりその要部が構成されている。
【0019】
基部15は、例えば、その要部が所定の長さを有する部材からなり、一端部に固定側挟み部17が、他端部に固定側グリップ部18が設けられている。固定側挟み部17は、スカートガード6を保持する際に、スカートガード6の裏面から突出する部材(本実施の形態においては、補強部材7の上縁部)に接触する部分であり、少なくとも上記突出部材に接触する部分がゴム製で構成される。また、上記固定側グリップ部18は、スカートガード6を保持する時に作業者が握る部分の一部を構成する。
【0020】
スライド部16は、その要部が所定の長さを有する部材からなり、基部15の長手に沿ってスライド自在となるように、基部15に設けられている。このスライド部16は、基部15の一側面に設けられたスライド案内部19により、そのスライド方向が案内されている。
【0021】
また、上記スライド部16には、一端部に可動側挟み部20が、他端部に可動側グリップ部21が設けられている。可動側挟み部20は、スカートガード6を保持する際に、スカートガード6の突出部材に対して固定側挟み部17の反対側から接触する部分である。この可動側挟み部20は、固定側挟み部17に対して外側から対向するように配置されており、スライド部16が基部15の他端部側にスライドすることにより、固定側挟み部17との間隔が狭まるように、即ち、固定側挟み部17に接近するように移動する。なお、可動側挟み部20は、少なくとも上記突出部材に接触する部分がゴム製で構成されている。
【0022】
可動側グリップ部21は、スカートガード6を保持する際に作業者が握る部分の他部を構成し、固定側グリップ部18よりも基部15の一端部側に配置されている。即ち、作業者が固定側グリップ部18と共に可動側グリップ部21を握ることにより、固定側グリップ部18に接近するように可動側グリップ部21が移動し、スライド部16が基部15に対してその他端部側にスライドする。
【0023】
また、22は基部15に設けられたフック部である。フック部22は、例えば、横断面L字状の所定の幅を有する板状部材からなり、基部15の一端部側に開口するように、基部15の他側面に固定されている。このフック部22は、スカートガード6を保持する際に、スカートガード6の所定の端部を係止する機能を有している。即ち、フック部22は、上記突出部分が固定側挟み部17と可動側挟み部20とによって挟み込まれた際に、スカートガード6の端部が上記開口内に配置されるように、その取付位置及び取付向き等が設定されている。
【0024】
次に、エスカレーターの保守時に、作業者が上記構成の着脱治具を使用してスカートガード6を着脱する際の動作について説明する。
ステップ2の側方に立設されたスカートガード6(図2参照)を取り外す場合、作業者は、先ず、ステップ2上からインナーデッキ13を取り外し、補強部材7と取付金9との固定を解除する。次に、インナーデッキ13を取り外したことによって形成された空間から上記構成の着脱治具を挿入し、固定側挟み部17を補強部材7の上縁部上面に接触させる。この時、可動側挟み部20が補強部材7の上縁部の下方に配置されるようにする。また、スカートガード6の上端部が、フック部22の開口内に下方から配置されるようにする。
【0025】
着脱治具を上記状態に配置した後、作業者は、固定側グリップ部18と可動側グリップ部21とを一緒に握り締め、着脱治具をスカートガード6に固定する。即ち、スライド部16が基部15に対して他端部側に移動することにより、可動側挟み部20が上方に移動して、可動側挟み部20の上面が補強部材7の上縁部下面に接触する。そして、かかる状態から作業者が更に力を加えて握り締めることにより、補強部材7の上縁部が固定側挟み部17と可動側挟み部20とによって上下から挟み込まれ、着脱治具がスカートガード6に固定される。なお、作業者は、固定側挟み部17が補強部材7の上縁部上面に押し付けられるように力を加えながら上記操作を行うことにより、フック部22がスカートガード6の上端部から外れることなく、着脱治具をスカートガード6に固定することができる。
【0026】
着脱治具をスカートガード6に固定した後、作業者は、固定側グリップ部18と可動側グリップ部21とを一緒に握り締めたまま、着脱治具を上方に移動させる。すると、上記操作によってクリップ8がL字金12から外れ、スカートガード6全体を主枠1から取り外すことができる。
【0027】
なお、スカートガード6を主枠1に取り付ける場合は、上記と逆の手順によって作業を行えば良い。
【0028】
この発明の実施の形態1によれば、上記着脱治具によってスカートガード6を強固に保持することができ、エスカレーターの保守や点検、改修等を行う際に、スカートガード6の着脱や運搬等の各種作業を容易に行うことができるようになる。
【0029】
即ち、上記構成の着脱治具であれば、固定側挟み部17と可動側挟み部20とによって補強部材7の上縁部を上下から強固に挟み込むことができ、その運搬中に、スカートガード6が着脱治具からずり落ちたりすることを確実に防止できる。なお、固定側挟み部17と可動側挟み部20とをゴム製で構成することにより、上記効果を確実なものとすることができる。また、固定側挟み部17と可動側挟み部20とによって補強部材7の上縁部を挟持した際に、スカートガード6の上端部がフック22に引っ掛かった状態となるため、その運搬中にスカートガード6が傾いて着脱治具を持つ作業者に無理な力が作用したり、スカートガード6が落下したりすることも確実に防止できる。
【0030】
なお、上記構成の着脱治具を使用すれば、スカートガード6の着脱や運搬を一人で実施することも可能である。このため、上記着脱治具は、作業領域を確保し難い幅狭(1人乗り)エスカレーターにおいて保守等を行う場合に、特に有効な手段となり得る。
【符号の説明】
【0031】
1 主枠
2 ステップ
3 移動手摺
4 内側板
5 駆動電動機
6 スカートガード
7 補強部材
8 クリップ
9、11 取付金
10 固定手段
12 L字金
13 インナーデッキ
14 アウターデッキ
15 基部
16 スライド部
17 固定側挟み部
18 固定側グリップ部
19 スライド案内部
20 可動側挟み部
21 可動側グリップ部
22 フック部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
乗客コンベアのスカートガードを着脱する際に使用されるスカートガード着脱治具であって、
所定の長さを有する基部と、
前記基部に設けられ、前記基部の長手に沿ってスライド自在なスライド部と、
前記基部の一端部に設けられた固定側挟み部と、
前記スライド部の一端部に設けられ、前記固定側挟み部に対向して配置されるとともに、前記スライド部が前記基部に対して一側にスライドすることにより、前記固定側挟み部に接近して、前記固定側挟み部とによって前記スカートガードの裏面に設けられた突出部材を挟み込むことが可能な可動側挟み部と、
前記基部の他端部に設けられた固定側グリップ部と、
前記スライド部の他端部に設けられ、作業者が前記固定側グリップと共に握ることにより、前記スライド部を前記基部に対して一側にスライドさせる可動側グリップ部と、
前記基部に設けられ、前記基部の一端部側に開口するとともに、前記固定側挟み部及び前記可動側挟み部によって前記突出部材が挟み込まれた際に、前記スカートガードの端部が前記開口内に配置されるフック部と、
を備えたことを特徴とする乗客コンベアのスカートガード着脱治具。
【請求項2】
ステップの側方に立設されたスカートガードを取り外す場合に、
前記固定側挟み部は、前記突出部材に上方から接触し、
前記可動側挟み部は、前記突出部材に下方から接触し、
前記フック部は、前記開口内に、前記スカートガードの上端部が下方から配置される
ことを特徴とする請求項1に記載の乗客コンベアのスカートガード着脱治具。
【請求項3】
前記固定側挟み部及び前記可動側挟み部は、前記突出部材に接触する部分がゴム製であることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の乗客コンベアのスカートガード着脱治具。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2011−98796(P2011−98796A)
【公開日】平成23年5月19日(2011.5.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−253304(P2009−253304)
【出願日】平成21年11月4日(2009.11.4)
【出願人】(000236056)三菱電機ビルテクノサービス株式会社 (1,792)
【Fターム(参考)】