説明

乗客コンベアの踏段

【課題】乗客の荷物等が、スカートガードとの間に挟まることを確実に防止できる踏段を得る。
【解決手段】乗客を乗せる踏板31を有する踏段本体30と、踏板31の幅方向の両側に設けられる挟まれ防止装置40とを備え、挟まれ防止装置40のそれぞれは、ガード板挿通穴31cに挿通されて、踏板31の踏面31aに対して所定量延出するガード位置と、ガード解除位置との間を移動可能に配置されるガード板42と、ガード板42を踏面31aから延出させる方向に付勢するスプリング55とを有し、ガード位置にあるガード板42の踏面31aからの延出部は、踏段本体30の進行方向の前端に位置する部位から、踏面31aに対して傾斜するように踏段本体30の進行方向の後ろ側に延在してガード板42の踏面31aからの延出端に至る傾斜部44aを有している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、例えば、エスカレータなどの乗客コンベアに関し、特にスカートガードとの間に隙間を保って走行する踏段に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般に、乗客コンベアの踏段は、その幅方向の両側に設けられたスカートガードとの間に隙間を保って循環走行される。
従来の乗客コンベアの踏段は、乗客が乗降可能な踏面を構成するクリートと、クリートの横幅方向の両側端部及び縦幅方向の前端部に重ねて設けられるデマケーション部材とを備えている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
デマケーション部材は、例えば黄色に色づけすることで、荷物をスカートガードへ近づけないようにする注意喚起が乗客に対してなされ、乗客の荷物が踏段とスカートガードとの間に挟まることが防止されていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2005−298077号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、従来の乗客コンベアの踏段では、全ての乗客に対して、荷物をスカートガードへ近づけさせないように徹底することは困難であり、デマケーション部材に対して注意を払わなかった乗客の荷物が、踏段とスカートガードとの間に挟まってしまうという問題があった。
【0006】
この発明は上記の課題を解決するためになされたものであり、乗客の荷物が、スカートガードとの間に挟まることを確実に防止できる乗客コンベアの踏段を得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この発明に係る踏段は、乗客を乗せる踏板を有し、踏板の幅方向の両側に一方の乗降口から他方の乗降口に至るように設けられたスカートガードとの間に隙間を保ち、一対の乗降口の床部下部の間を循環走行する踏段本体と、踏板の幅方向の両側に設けられる挟まれ防止装置とを備え、踏板の奥行き方向に延在するガード板挿通部が、踏板の幅方向の両側のそれぞれに形成され、挟まれ防止装置のそれぞれは、ガード板挿通部に挿通されて、踏板の踏面に対して所定量延出するガード位置と、踏面から延出される部位がなくなるガード解除位置との間を移動可能に配置されるガード板と、ガード板を踏面から延出させる方向に付勢する付勢部材とを有し、ガード位置にあるガード板の踏面からの延出部は、踏段本体の進行方向の前端に位置する部位から、踏面に対して傾斜するように踏段本体の進行方向の後ろ側に延在してガード板の踏面からの延出端に至る傾斜部を有している。
【発明の効果】
【0008】
この発明に係る踏段によれば、一対の乗降口間を走行するときは、ガード板がガード位置に配置される。これにより、乗客が、荷物をスカートガードに向かって移動させようとしても、ガード板に当たって荷物の移動が規制されることになり、スカートガードと荷物が接触することが回避される。従って、乗客の荷物がガード板とスカートガードの間に挟まることを確実に防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】この発明の一実施の形態に係るエスカレータの模式図である。
【図2】図1のA部拡大図である。
【図3】図2のIII−III矢視要部断面図である。
【図4】この発明の一実施の形態に係るエスカレータの踏段のガード板の斜視図である。
【図5】この発明の一実施の形態に係る踏段まわりの側面図であり、踏段が乗降口の床部の端部下部を移動するときの様子を示している。
【図6】図5のVI−VI矢視断面図である。
【図7】この発明の一実施の形態に係るエスカレータの踏段の動作を説明する断面図であり、乗客の荷物のスカートガード側への移動がガード板により阻止された様子を示している。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、この発明を実施するための最良の形態について、図面を参照して説明する。
【0011】
図1はこの発明の一実施の形態に係るエスカレータの模式図、図2は図1のA部拡大図、図3は図2のIII−III矢視要部断面図、図4はこの発明の一実施の形態に係るエスカレータの踏段のガード板の斜視図、図5はこの発明の一実施の形態に係る踏段まわりの側面図であり、踏段が乗降口の床部の端部下部を移動するときの様子を示している。図6は図5のVI−VI矢視断面図である。
【0012】
図1において、乗客コンベアとしてのエスカレータ1は、上下階床のそれぞれに設けられた乗降口2の間に架設されたトラス3と、トラス3の上階側に設置された上部機械室4Aと、トラス3の下階側に設けられた下部機械室4Bと、上部機械室4Aに配設された電動機5と、上部機械室4Aに配設された駆動スプロケット6と、電動機5と駆動スプロケット6との間を連結し、電動機5の駆動に連動させて駆動スプロケット6を回転させる駆動鎖7とを備えている。
【0013】
また、エスカレータ1は、駆動スプロケット6に同軸に連結され、駆動スプロケット6の回転に連動して回転する上部スプロケット8Aと、下部機械室4Bに配設された下部スプロケット8Bと、上部スプロケット8A及び下部スプロケット8Bに無端状に巻き掛けられ、上部スプロケット8Aの回転により循環走行する踏段鎖10とを備えている。
また、エスカレータ1は、踏段鎖10に連結されて無端状に連なる複数の踏段20と、一方の乗降口2から他方の乗降口2に至るように、踏段20の両側に立設された一対の欄干9と、上部機械室4Aに配設され、電動機5の駆動に連動する踏段20の走行など、エスカレータ1の運転全般を制御するエスカレータ制御盤15とを備えている。
【0014】
踏段20は、一対の乗降口2の床部下部の間を循環する経路を走行する。即ち、踏段20の環経路は、一方の乗降口2から他方の乗降口2に乗客を運ぶための区間を有する往路側区間と、往路側区間の下方に位置する帰路側区間、往路側区間及び帰路側区間を連結する反転部とを有している。
【0015】
一方の乗降口2から他方の乗降口2に乗客を運ぶように踏段20の移動方向を設定した場合、踏段20は以下のように循環走行する。
踏段20は、一方の乗降口2の床部の端部から他方の乗降口2に向かって往路側区間を移動し、他方の乗降口2の床部の端部下部を通過してトラス3内に入り込んだ後、他方の乗降口2側の反転部を移動して反転される。
次いで、反転された踏段20は、一方の乗降口2に向かって帰路側区間を移動して一方の乗降口側の反転部に移動して反転される。反転された踏段20は、往路側区間に入り、一方の乗降口2の床部の端部下部を通過し、再度、他方の乗降口2に向かう。以上のように踏段20が循環走行される。
【0016】
また、欄干9は、図3に示されるように、往路側区間を走行する踏段20の幅方向の端部と隙間をあけて配置されるスカートガード9aを有する。
なお、スカートガード9aは、トラス3に支持されるアングル11に固定されている。
【0017】
次いで、踏段20の詳細な構成について説明する。
図1〜図3において、踏段20は、踏段本体30、及び挟まれ防止装置40を備えている。
踏段本体30は、図2及び図3に示されるように、おもて面が乗客を乗せる踏面31aとして構成され、所定の横幅及び奥行きの矩形平板状の踏板31と、踏板31の裏面に踏板31の幅方向に互いに離間して取り付けられて踏板31を支持する一対のブラケット33と、踏板31の奥行き方向の一端側から裏面側に延出するライザ34とを有する。
【0018】
また、踏段本体30は、軸方向を踏板31の幅方向に一致させてブラケット33に支持されるステップ軸35と、ステップ軸35の両端に回転自在に設けられた一対の駆動ローラ36と、ステップ軸35と平行な軸まわりに回転自在にブラケット33に設けられた一対の追従ローラ37とを備えている。
なお、溝方向が踏板31の縦幅方向に一致する複数のクリート31bが、踏板31の幅方向に所定の間隔で踏面31aに開口するように形成されている。
【0019】
そして、踏板31の幅方向の一端側及び他端側(両側)のそれぞれには、踏板31の奥行き方向の一端近傍から他端近傍に至るガード板挿通部としてのガード板挿通穴31cが形成されている。
【0020】
一対の挟まれ防止装置40のそれぞれが、踏板31の幅方向の両側のそれぞれに、ガード板挿通穴31cを利用して設けられている。
以下、一方の挟まれ防止装置40の構成について説明する。
【0021】
図2及び図3において、挟まれ防止装置40は、ガード板挿通穴31cに挿通されるガード板42、及びガード板42に一体に取り付けられる一対のストッパ45を有する可動部材41と、踏板31の裏面に互いに離間して取り付けられる一対の付勢機構50とを備えている。
【0022】
可動部材41の詳細について説明する。
ガード板42は、ガード板挿通穴31cの幅より僅かに狭い厚さを有し、図4に示されるように、所定の長辺を有する矩形部43、及び矩形部43の一方の長辺を下底として矩形部43から延出する台形部44とを備えている。
台形部44の外形は、上底及び下底を接続する平面により構成される一対の傾斜部44aと、上底により構成される平坦部44bを有する。一対の傾斜部44aは、平坦部44bと逆側の端部から平坦部44bに向かうにつれて、互いの間の距離が漸次近づくように、平坦部44bに対して所定の角度に傾斜している。
【0023】
一対のストッパ45のそれぞれは、矩形平板状に作製されている。
そして、一対のストッパ45は、矩形部43の長辺の長さ方向に互いに離間して、ガード板42の矩形部43の他方の長辺側の端面に固定されている。
このとき、各ストッパ45は、長手方向をガード板42の表裏両面に直交させ、長手方向の中間部を矩形部43に固定されている。これにより、各ストッパ45の一端及び他端は、矩形部43の両側に所定量延出される。各ストッパ45の長手方向の長さは、ガード板挿通穴31cの幅より長くなっている。
以下、矩形部43の長手方向(台形部44の下底の長さ方向)をガード板42の長さ方向とする。
【0024】
次いで、一対の付勢機構50の詳細について説明する。
付勢機構50のそれぞれは、踏板31の裏面に取り付けられる付勢部材支持手段51と、付勢部材支持手段51に支持されてガード板42を踏面31aから延出させる方向に付勢する付勢部材としてのスプリング55とを備えている。
【0025】
付勢部材支持手段51は、長手方向に垂直な断面がコ字状の支持部材52と、支持部材52の底部に挿通される移動規制棒53とを備えている。
支持部材52の底部には、貫通穴52aが形成されており、また、移動規制棒53は、貫通穴52aの直径より僅かに小さな直径を有する円柱状に作製されている。
【0026】
次いで、挟まれ防止装置40の踏段本体30への取り付け構造について説明する。
以下、一方の付勢機構50の踏段本体30への取り付け構造について説明する。
図2及び図3において、支持部材52は、長手方向を踏板31の奥行方向に一致させ、底部をガード板挿通穴31cと相対させて、開口側端面を踏板31の裏面に固定されている。
【0027】
また、可動部材41は、踏板31の裏面側からガード板挿通穴31cにガード板42を挿通させて配置されている。
このとき、支持部材52の底部と踏板31の裏面との間にストッパ45が位置している。また、ストッパ45のガード板42からの延出端側が、ガード板挿通穴31cの周囲を構成する踏板31の壁面と相対している。これにより、可動部材41が、踏板31の裏面側から踏面31a側に向かって付勢されると、ストッパ45が踏板31の裏面に当接されたところで可動部材41の移動が規制される。
【0028】
また、移動規制棒53が、貫通穴52aに挿通されて、移動規制棒53の一端が、ストッパ45に固定されている。また、移動規制棒53の他端は、支持部材52の底部の外壁側に位置している。そして、スプリング55が、移動規制棒53を囲繞するように配置され、支持部材52の底部とストッパ45との間に縮設されている。
【0029】
また、他方の付勢機構50は、一方の付勢機構50に対して、踏板31の奥行方向に位置をずらして、一方の付勢機構50と同様に踏段本体30に取り付けられている。
例えば、一対の付勢機構50は、踏板31の奥行き方向の一端側及び他端側に位置するように取り付けられている。
【0030】
以上のように踏段本体30に取り付けられた挟み込み防止装置40では、可動部材41が、付勢機構50により支持される。また、付勢機構50のスプリング55が、ガード板42の踏面31aからの延出量を増大させる方向に付勢し、可動部材41は、ストッパ45が踏板31の裏面に当接したところで、移動を規制されて安定した状態に維持される。このときのガード板42の位置をガード位置とする。
【0031】
また、ガード位置にあるガード板42の踏面31aからの延出部は、略台形部44により構成されている。即ち、踏面31aから延出されるガード板42の外形は、一対の傾斜部44aと、平坦部44bとにより構成されている。一対の傾斜部44aのそれぞれの基端は、踏板31の両端近傍のそれぞれに位置している。また、傾斜部44aのそれぞれは、基端から平坦部44bの端部に向かって傾斜されている。
なお、ガード板42が、ガード位置にあるときのガード板42の踏面からの所定の延出量は、特に限定されるものではないが、例えば、5〜10cm程度である。
【0032】
これにより、踏段20(踏段本体30)が正逆いずれに循環走行されたときでも、一対の傾斜部44aのうち、踏段20の進行方向の前側に位置する傾斜部44aは、踏面31aに対して傾斜するように踏段本体30の進行方向の前端に位置する部位から踏段本体30の進行方向の後ろ側に延びて延出端(平坦部44b)に至る。
【0033】
なお、他方の挟まれ防止装置40も一方の挟まれ防止装置40と同様に構成されて踏段本体30に取り付けられる。
【0034】
以上のように踏段本体30に設けられる挟まれ防止装置40のそれぞれでは、ガード位置にあるガード板42に対し、スプリング55の付勢力に抗してガード板42の延出部を踏面31aに向かわせる方向の力が働くと、図5及び図6に示されるように、ガード板42の踏面31aからの延出量が減少するように可動部材41が移動される。
【0035】
例えば、ガード位置にあるガード板42の傾斜部44aに対して、踏段20の進行方向の前方から後方に向かう方向に力が加えられた場合、傾斜部44aに加えられる力は、ガード板42の踏面31aからの延出部を踏面31aに向かわせる方向の成分を有している。このため、可動部材41は、スプリング55の付勢力に抗して、ガード板42の踏面31aからの延出量を減少させる方向に移動する。なお、ガード板42の踏面31aからの延出端を構成する平坦部44bが、踏面31aと略同じ高さに配置される、言い換えれば、踏面31aから延出される部位がなくなるガード解除位置まで、可動部材41は移動可能になっている。
【0036】
また、貫通穴52aの壁面と移動規制棒53との間には、略隙間が無いので、移動規制棒53の径方向への移動が規制され、これにより、移動規制棒53の一端に固定された可動部材41の踏面31aに平行な方向への移動が規制される。
【0037】
また、一対の乗降口2の端部を構成する床部は、図5に示されるように、くし板16により構成され、くし板16の裏面側には、乗降口2の幅方向に平行な軸まわりに回転する受け部としてのローラ17が、一方の乗降口2の手前まで搬送された踏段20のガード板42と踏段20の移動方向に相対する位置に取り付けられている。
なお、踏段20がくし板16の部位を通過する際、くし板16と踏板31のクリート31bとが嵌合されるようになっているが、図5,6では、説明の便宜上くし板16とクリート31bとの嵌合の図示は省略している。
【0038】
以上のように構成されたエスカレータ1の踏段20の動作について説明する。
踏段20は、乗客を搬送するための往路側区間を走行する際に、一方の乗降口2から他方の乗降口2に移動するものとする。
図7はこの発明の一実施の形態に係るエスカレータの踏段の動作を説明する断面図であり、乗客の荷物のスカートガード側への移動がガード板により阻止された様子を示している。
【0039】
まず、一対の乗降口2間を移動する踏段20は、図7に示されるように、踏面31aの幅方向の両側に位置するガード板42が、スプリング55の付勢力のより付勢されて踏面31aから所定量延出されたガード位置に配置される。
従って、往路側区間側を走行する踏段本体30に乗客が鞄などの荷物60を持って乗り、荷物60をスカートガード9aに向かって移動させようとした場合、荷物60はガード板42に当接してそれ以上の移動が規制され、スカートガード9aに荷物60が接触することが回避される。
【0040】
また、一方の乗降口2から他方の乗降口2の手前まで踏段20が往路側経路を移動すると、ガード板42の傾斜部44aのうち、踏段20の移動方向の前側に位置する傾斜部44aは、他方の乗降口2の端部の床部を構成するくし板16に取り付けられたローラ17と踏段20の移動方向に相対する。
そして、踏段20が、他方の乗降口2の床部下部に入り込む際、図5に示されるように、ガード板42の傾斜部44aにローラ17の外周面が当接される。ローラ17により加圧されたガード板42は、ガード解除位置に向かって移動して、ローラ17より下方に移動される。つまり、ガード板42がくし板16に衝突して踏段20の移動が妨げられることが回避される。
【0041】
また、踏段20が他方の乗降口2の床部から離れると、ガード板42を加圧する力がなくなるので、ガード板42がガード位置をとるように可動部材41が移動される。
さらに、踏段20が、他方の乗降口2から一方の乗降口2の床部下部まで移動され、ガード板42が床部に当接されると、ガード板42は、床部から受ける加圧力により、ガード解除位置に向かって移動する。そして、踏段20が一方の乗降口2の床部下部を通過すると、ガード板42を加圧する力がなくなるので、ガード板42がガード位置を取るように可動部材41が移動される。
【0042】
この発明に係る踏段20によれば、踏板31の幅方向の両側の部位に設けられる挟まれ防止装置40を有し、挟まれ防止装置40のそれぞれが、踏板31に形成されたガード板挿通穴31cに挿通されて、踏板31の踏面31aに対して所定量延出するガード位置と、踏面31aから延出される部位がなくなるガード解除位置との間を移動可能に配置されるガード板42と、ガード板42を踏面31aから延出させる方向に付勢するスプリング55とを有している。そして、ガード位置にあるガード板42の踏面31aからの延出部は、踏段本体30の進行方向の前端に位置する部位から、踏面31aに対して傾斜するように踏段本体30の進行方向の後ろ側に延在してガード板42の延出端に至る傾斜部44aを有している。
【0043】
踏段20が、一対の乗降口2間を走行するときには、ガード板42がガード位置に配置される。これにより、乗客が、荷物60をスカートガード9aに向かって移動させようとしても、ガード板42に当たって荷物60の移動が規制されることになり、スカートガード9aと荷物60が接触することが回避される。
ここで、ガード板42を有さない踏段では、乗客の荷物がスカートガード9aに向けて移動されると、荷物は移動を規制されることなくスカートガード9aに接触する。この場合、踏段は、スカートガード9aに対して相対移動するので、乗客の荷物がスカートガード9aと踏段との間に挟まれやすくなる。
【0044】
一方、この発明の踏段20では、乗客の荷物60が、スカートガード9aに接触することがガード板42により回避されるので、乗客の荷物60がガード板42とスカートガード9aの間に挟まることを確実に防止できる。
【0045】
なお、上記実施の形態では、ガード板42の傾斜部44aは、台形部44の上底と下底を結ぶ平面により構成されるものとして説明したが、傾斜部は、平面によらず、曲面により構成されるものでもよい。
また、ガード板挿通部は、ガード板挿通穴31cであるとして説明したが、例えば、踏板31の幅方向の両側の部位を、奥行き方向の一端近傍から他端近傍に至るように切り欠いて形成したガード板挿通凹部でもよい。
また、付勢部材はスプリング55であるものとして説明したが、スプリング55によらず、板ばねや、磁石の磁力を利用するなどした磁力発生手段により構成してもよい。
また、乗客コンベアは、エスカレータ1であるものとして説明したが、乗客コンベアとしての動く歩道の踏段にも踏段20の技術を適用できる。
【符号の説明】
【0046】
9a スカートガード、20 踏段、30 踏段本体、31 踏板、31a 踏面、31c ガード板挿通穴(ガード板挿通部)、40 挟まれ防止装置、42 ガード板、44a 傾斜部、55 スプリング(付勢部材)。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
乗客を乗せる踏板を有し、上記踏板の幅方向の両側に一方の乗降口から他方の乗降口に至るように設けられたスカートガードとの間に隙間を保ち、一対の乗降口の床部下部の間を循環走行する踏段本体と、
上記踏板の幅方向の両側に設けられる挟まれ防止装置と
を備え、
上記踏板の奥行き方向に延在するガード板挿通部が、上記踏板の幅方向の両側のそれぞれに形成され、
上記挟まれ防止装置のそれぞれは、
上記ガード板挿通部に挿通されて、上記踏板の踏面に対して所定量延出するガード位置と、上記踏面から延出される部位がなくなるガード解除位置との間を移動可能に配置されるガード板と、
上記ガード板を上記踏面から延出させる方向に付勢する付勢部材と
を有し、
上記ガード位置にある上記ガード板の上記踏面からの延出部は、踏段本体の進行方向の前端に位置する部位から、踏面に対して傾斜するように上記踏段の進行方向の後ろ側に延在して上記ガード板の踏面からの延出端に至る傾斜部を有していることを特徴とする乗客コンベアの踏段。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate


【公開番号】特開2012−136338(P2012−136338A)
【公開日】平成24年7月19日(2012.7.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−290460(P2010−290460)
【出願日】平成22年12月27日(2010.12.27)
【出願人】(000236056)三菱電機ビルテクノサービス株式会社 (1,792)
【Fターム(参考)】