説明

乗客コンベアの防塵装置

【課題】 フィルターの目詰まりによるフィルターの交換周期を延長させること。
【解決手段】 制御盤30には、下方に設けられた吸気口32aから気流を吸い込むと共に、該気流を排出する風洞30cと、該風洞30c内に設けられたファン79と、吸気口32aに設けられると共に、吸気口32aに対応する第1部52aとそれ以外の第2部52bとを有し、吸気口32aの面積の少なくとも二倍以上有するフィルター52と、該フィルター52の圧力損失値を検出する圧力損失センサ70と、該圧力損失値に基づいてフィルター52を移動してフィルター52の第2部52bを吸気口32aに対応させると共に、第1部52aを吸気口32aに対応させない位置に移動するソレノイド58と、を備えたものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、乗客コンベアの防塵装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来の防塵装置は、下記特許文献1に記載のように、空気を送り込むファンと、送り込まれる空気から塵を濾し取るフィルターと、ファン風量を検出するセンサにより構成され、フィルター目詰りがなく空気の透過率が高い初期状態ではファン回転数を低く、フィルター目詰りが発生しファン風量が減少した際にはファン回転数を高くなるように制御するものが知られている。
【0003】
防塵装置によれば、フィルター初期状態付近でのフィルター目詰り進行速度を遅くするとともに、フィルター目詰りがある程度進行した後も再度ファンの風量を高くして寿命を改善できる。
【0004】
【特許文献1】特開2001−87612号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記防塵装置を乗客コンベアの制御盤に適用すると、本来、ファンはフィルターを通過した気流を制御盤内部に通過することにより制御盤の内部温度を低下するものであるから、フィルター目詰りがなく空気の透過率が高い初期状態で、ファン回転数を低くすることは、制御盤内の温度が上昇するので、適当でないという課題があった。
【0006】
本発明は、上記のような課題を解決するためになされたもので、制御盤内の換気を適正に維持しながら、フィルターの目詰まりによる交換周期を延長する乗客コンベアの防塵装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
第1の発明に係る乗客コンベアの防塵装置は、乗客コンベアの機械室に設けられた制御盤と、該制御盤によりモータを駆動する乗客コンベアの防塵装置において、前記制御盤には、下方に設けられた吸気口から気流を吸い込むと共に、該気流を排出する風洞と、該風洞内に設けられたファンと、前記吸気口に設けられると共に、前記吸気口に対応する第1部とそれ以外の第2部とを有し、前記吸気口の面積の少なくとも二倍以上有するフィルターと、該フィルターの圧力損失値を検出する検出手段とを備えており、該圧力損失値に基づいて前記フィルターを移動して前記第2部を前記吸気口に対応させると共に、前記第1部を前記吸気口に対応させない位置に移動する移動手段、を備えたことを特徴とするものである。
【0008】
第2の発明に係る乗客コンベアの防塵装置における移動手段は、フィルターの下端部に設けられた略凹状の伝達部材と、該伝達部材を移動するロッドに連結されたソレノイドと、を備えることが好ましい。
これにより、簡易な構成によりソレノイドのロッドが移動してフィルターの第2部を吸気口に対応させると共に、フィルターの第1部を吸気口に対応させない位置に移動できる。
【0009】
第3の発明に係る乗客コンベアの防塵装置は、フィルターでの圧力損失値が予め定めた閾値を越えたら異常信号を発生する比較手段と、該異常信号に基づいてソレノイドのロッドを第1距離に移動することにより伝達部材と、フィルターとを離脱させる第1ソレノイド制御手段と、を備えることが好ましい。
これにより、異常信号に基づいてフィルターが移動してフィルターの第2部が制御盤の吸気口の位置になる。したがって、塵が付着されていないフィルターの第2部を用いて制御盤外の空気を流入できる。
【0010】
第4の発明に係る乗客コンベアの防塵装置におけるロッドは、少なくとも第1距離と前記該第1距離よりも短い第2距離を移動するように形成されており、乗客コンベアが停止している時に、停止信号を発生すると共に、走行しているときに走行信号を発生する信号発生手段と、停止信号に基づいて前記ロッドを第2距離に反復移動する第2ソレノイド制御手段と、を備えることが好ましい。
これにより、フィルターをソレノイドのロッドにより機械的に振動させるので、フィルターに付着した塵を振り落とすことができる。
【0011】
第5の発明に係る乗客コンベアの防塵装置は、停止信号と走行信号とが発生している時間に基づいて前記ファンの回転数を決定する演算手段と、回転数に基づいて前記ファンを駆動するファン駆動手段と、を備えることが好ましい。
これにより、乗客コンベアの走行により機械室の温度が上昇すると、ファン回転数を増加するようにしたので、制御盤内の温度を適正に維持できる。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、制御盤内の換気を適正に維持しながら、フィルターの目詰まりによるフィルターの交換周期を延長させる乗客コンベアの防塵装置を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
実施の形態1.
本発明の一実施の形態を図1から図5によって説明する。図1は本発明の一実施の形態を示す乗客コンベアの全体図、図2は図1に示す制御盤の内部構成図、図3は図2に示す防塵装置の斜視図、図4は図3に示す矢視IV−IV防塵装置の断面図、図5は乗客コンベアの防塵装置の制御ブロック図である。
図1において、乗客コンベア1は、踏段5に取付けられた踏段チェーン7が上下階に配置された主駆動スプロケット9と従動スプロケット11とに巻掛けられている。主駆動スプロケット9に取付けられた主軸13には、被駆動スプロケット15が取付けられており、被駆動スプロケット15と減速機20の駆動スプロケット22とには駆動チェーン17が巻掛けられており、駆動チェーン17を介して減速機20からの動力が主駆動スプロケット9に伝達される。機械室には、モータ24が直結された減速機20と、モータ24の軸に設けられたブレーキ26と、モータ24などを制御する制御盤30とを備えている。
【0014】
図2において、制御盤30には、前側面板32と後側面板33とを有し、仕切り部38により二つに仕切られ、乗客コンベアの1を駆動制御する制御機器部30aと、機械室の空気を吸い込み気流を流す風洞部30cを有している。制御機器部30aには、乗客コンベア1を制御する乗客コンベア制御部40を有しており、乗客コンベア制御部40には、該制御部40により制御されてモータ24などを駆動するインバータ等の発熱部41と、乗客コンベア1が停止している時に、停止信号を発生すると共に、走行しているときに走行信号を発生する信号発生部(信号発生手段)43とを有している。
また、風洞部30cには、発熱部41から発生した熱を放熱フィンで放散させる放熱部43を有すると共に、制御盤30の前側面板32の下部に気流を取り込む吸気口32aが設けられている。制御盤30には、中央上部の前側面板32に該気流を排出する排出口32cが設けられており、吸込み口32aの側部を覆う下防塵板34が設けられ、排出口32cの側部を覆う上防塵板36が設けられている。
【0015】
図2から図4において、防塵装置50は、板状のフィルター52と、天部が塞がれて内部が四角筒状で、該フィルター52の上部を覆うと共に、フィルター52の上下方向を案内するガイド部54と、フィルター52の下部を載せると共に、柱状で側面視凹形状の溝56Uを有する伝達部材56と、伝達部材56の側面中央部にロッド58aが固定されると共に、第1距離と該第1距離よりも短い2距離をロッド58aが移動するソレノイド58とを備えている。
フィルター52は、中央から下部に吸気口32aに対応する第1部52aと、中央から上部の第2部52bとを有し、吸気口32aの面積の少なくとも二倍以上有している。
伝達部材56の溝56uの先端部内側56aは、滑らかに形成されている。これは、ソレノイド58のロッド58aが第1距離移動した際に、伝達部材56からフィルター52の第1部52a下端が外れるようにするためである。そして、フィルター52の下部に塵dを受ける受け皿60を有している。
フィルター52の第1部52aでの圧力損失の値を検出する検出手段としての圧力損失センサ70が設けられている。
【0016】
図4において、防塵装置50は、ソレノイド58のロッド58aを第1距離移動させると、伝達部材56の溝56uからからフィルター52が外れてフィルター52がガイド部54に案内されて落下して受け皿60で停止して、ガイド部54により覆われていたフィルター52の第2部52bが吸込み口32aの位置に移動するように形成されている。
また、ガイド部54とフィルター52との間に隙間54gが設けられている。これは、ソレノイド58のロッド58aを、第2距離を反復移動することによりフィルター52を図4において左右に振動させることによりフィルター52に付着した塵dを払うために設けられている。
【0017】
図5において、防塵装置50は、圧力損失センサ70からの圧力損失値と予め定められた閾値とを比較して圧力損失値が閾値を超えると異常信号を発生する比較部72と、異常信号により異常が生じたことを表示する報知器80とを有している。
乗客コンベア制御部40からの停止信号をカウントして停止信号の積算が10回に達すると、ソレノイド58のロッド58aを第2距離往復して伝達部材56を水平方向に往復動作をしてフィルター52の下端部を振動してフィルター52に付着した塵dを落下させるソレノイド制御部74を有している。
ソレノイド制御部74は異常信号が発生すると、停止信号が発生するまで待ってソレノイド58のロッド58aを第1距離収縮して伝達部材56の溝56uからフィルター56の第1部58a下端を外し、フィルター52をガイド部54に沿って略垂直に落下してフィルター52の第1部58a下端を受け皿60に当接するように形成されている。
【0018】
図5において、停止信号と走行信号とから走行信号の割合が高いと、吸気ファン79の回転数を高くする回転信号を発生するデュテイ演算部76と、回転信号により吸気ファン79の回転数を制御して駆動するファン駆動部78とを有している。
なお、モータ24の電流を検出して電流検出値が高くなると、吸気ファン79の回転数を高くしても良い。
【0019】
上記のように構成された乗客コンベアの動作を図1から図6を参照して説明する。図6は図1に示す乗客コンベアの防塵装置のタイムチャートである。
いま、乗客コンベア1が走行と停止とを繰り返して時間t1で、ソレノイド制御部74が停止信号を積算して10回をカウントすると、ソレノイド58のロッド58aを第2距離往復して伝達部材56を水平方向に往復動作をしてフィルター52の下端部を振動してフィルター52の第1部52aに付着した塵dを落下して受け皿60に入れる。
このように、停止信号を10回カウント毎にフィルター52の下端部を振動してフィルター52に付着した塵dを落下する。フィルター52の塵dを清掃する。
【0020】
時間が随分経過して時間t2で、フィルター50に塵dが相当付着すると、比較部72は、圧力損失センサ70からの圧力損失値と予め定められた閾値とを比較して圧力損失値が閾値を超えると異常信号を発生して、ソレノイド制御部74は異常信号が発生すると、停止信号が発生してまで待ってソレノイド58のロッド58aを第1距離収縮して伝達部材56の溝56uからフィルター56の第1部52a下端を外し、フィルター52をガイド部56に沿って略垂直に落下してフィルター52の第1部52a下端を受け皿60に当接する。これにより、塵dが付着していないフィルター52の第2部52bを吸気口32aに対応させて、該第2部52bから空気を流入させる。
【0021】
上記実施形態の乗客コンベアの防塵装置は、乗客コンベアの機械室に設けられた制御盤30と、該制御盤30によりモータ24を駆動する乗客コンベアの防塵装置において、制御盤30には、下方に設けられた吸気口32aから気流を吸い込むと共に、該気流を排出する風洞30cと、該風洞30c内に設けられたファン79と、吸気口32aに設けられると共に、吸気口32aに対応する第1部52aとそれ以外の第2部52bとを有し、吸気口32aの面積の少なくとも二倍以上有するフィルター52と、該フィルター52の圧力損失値を検出する圧力損失センサ70と、該圧力損失値に基づいてフィルター52を移動してフィルター52の第2部52bを吸気口32aに対応させると共に、第1部52aを吸気口32aに対応させない位置に移動するソレノイド58と、を備えたものである。
【0022】
これにより、ソレノイド58を、該圧力損失値に基づいてフィルター52を移動してフィルター52の第2部52bを吸気口32aに対応させると共に、第1部52aを吸気口32aに対応させない位置に移動する。したがって、制御盤30内の換気を適正に維持しながら、制御盤30内の換気を適正に維持しながら、フィルター52の目詰まりによる交換周期を延長できる。
【0023】
また、上記実施形態の乗客コンベアの防塵装置は、フィルター52の第1部52aの下端部に設けられた略凹状の伝達部材56と、該伝達部材56を移動するロッド58aに連結されたソレノイド58とを備えることが好ましい。
これにより、簡易な構成によりソレノイド58のロッド58aが移動してフィルター52の第2部52bを吸気口32aに対応させると共に、フィルター52の第1部52aを吸気口32aに対応させない位置に移動できる。
【0024】
また、上記実施形態の乗客コンベアの防塵装置は、圧力センサ70の圧力損失値が予め定められた閾値を超えたら異常信号を発生する比較部72と、該異常信号に基づいてロッド58aを第1距離に移動することにより伝達部材56とフィルター52の下端部とを離脱させるソレノイド制御部74とを備えることが好ましい。
これにより、異常信号に基づいてフィルター52がガイド部54に沿って略垂直に落下してフィルター52の第2部52bが制御盤30の吸気口32aの位置になる。したがって、塵dが付着されていないフィルター52の第2部52bを用いて制御盤30外の空気を流入できる。
【0025】
また、上記実施形態の乗客コンベアの防塵装置におけるレノイド58のロッド58aは、少なくとも第1距離と該第1距離よりも短い第2距離を移動するように形成されており、乗客コンベアが停止している時に、停止信号を発生すると共に、走行しているときに走行信号を発生する信号発生部43と、停止信号に基づいてソレノイド58のロッド58aを第2距離に反復移動するソレノイド制御部74とを備えることが好ましい。
これにより、フィルター52をソレノイド58のロッド58aにより機械的に振動させるので、フィルター52に付着した塵dを振り落とすことができる。
【0026】
また、上記実施形態の乗客コンベアの防塵装置は、信号発生部43からの停止信号と走行信号とが発生している時間に基づいて吸気ファン79の回転数を決定するデュテイ演算部76と、回転数に基づいて吸気ファン79を駆動するファン駆動部78とを備えることが好ましい。これにより、乗客コンベア1の走行により機械室の温度が上昇すると、ファン回転数を増加するようにしたので、制御盤30内の温度を適正に維持できる。
【産業上の利用可能性】
【0027】
本発明は、乗客コンベアの防塵装置に適用できる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】本発明の一実施の形態を示す乗客コンベアの全体図である。
【図2】図1に示す制御盤の内部構成図である。
【図3】図2に示す防塵装置の斜視図である。
【図4】図3に示す矢視IV−IV防塵装置の断面図である。
【図5】乗客コンベアの防塵装置の制御ブロック図である。
【図6】図5に示す乗客コンベアの防塵装置のタイムチャートである。
【符号の説明】
【0029】
1 乗客コンベア、24 モータ、30 制御盤、32a 吸気口、43 信号発生部、50 防塵装置、52 フィルター、56 伝達部材、58 ソレノイド、58a ロッド、70 圧力損失センサ、79 吸気ファン。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
乗客コンベアの機械室に設けられた制御盤と、該制御盤によりモータを駆動する乗客コンベアの防塵装置において、
前記制御盤には、下方に設けられた吸気口から気流を吸い込むと共に、該気流を排出する風洞と、
該風洞内に設けられたファンと、
前記吸気口に設けられると共に、前記吸気口に対応する第1部とそれ以外の第2部とを有し、前記吸気口の面積の少なくとも二倍以上有するフィルターと、
該フィルターの圧力損失値を検出する検出手段とを備えており、
該圧力損失値に基づいて前記フィルターを移動して前記第2部を前記吸気口に対応させると共に、前記第1部を前記吸気口に対応させない位置に移動する移動手段、
を備えたことを特徴とする乗客コンベアの防塵装置。
【請求項2】
前記移動手段は、前記フィルターの下端部に設けられた略凹状の伝達部材と、
該伝達部材を移動するロッドに連結されたソレノイドと、
を備えたことを特徴とする請求項1に記載の乗客コンベアの防塵装置。
【請求項3】
前記圧力損失値が予め定めた閾値を越えたら異常信号を発生する比較手段と、
該異常信号に基づいて前記ロッドを前記第1距離に移動することにより前記伝達部材と前記フィルターとを離脱させる第1ソレノイド制御手段と、
を備えたことを特徴とする請求項1に記載の乗客コンベアの防塵装置。
【請求項4】
前記ロッドは、少なくとも前記第1距離と前記該第1距離よりも短い第2距離を移動するように形成されており、
前記乗客コンベアが停止している時に、停止信号を発生すると共に、走行しているときに走行信号を発生する信号発生手段と、
前記停止信号に基づいて前記ロッドを第2距離に反復移動する第2ソレノイド制御手段と、
を備えたことを特徴とする請求項2又は3に記載の乗客コンベアの防塵装置。
【請求項5】
前記停止信号と前記走行信号とが発生している時間に基づいて前記ファンの回転数を決定する演算手段と、
前記回転数に基づいて前記ファンを駆動するファン駆動手段と、
を備えたことを特徴とする請求項4に記載の乗客コンベアの防塵装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2009−107737(P2009−107737A)
【公開日】平成21年5月21日(2009.5.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−279085(P2007−279085)
【出願日】平成19年10月26日(2007.10.26)
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【Fターム(参考)】