説明

乗客コンベア用オイルパン清掃装置

【課題】1個の踏段を外しただけで、円滑な清掃の実行を可能にする乗客コンベア用オイルパン清掃装置の提供。
【解決手段】上記課題は、オイルパン上面に接触する清掃部材2と、踏段の前輪軸に固定する固定部材3と、この固定部材3と清掃部材2とを連結する連結部材4とを備え、踏段を移動させることで、オイルパン上の塵埃を掃き集める乗客コンベア用オイルパン清掃装置において、連結部材4を、固定部材3が踏段の前輪軸に固定した際、清掃部材2が固定部材3の後方に位置するところの後方踏段の後端下方に位置する長さとなるように設定すると共に、清掃部材2の高さを、後方踏段とオイルパンとの間の間隙Gより小さく設定し、しかも、連結部材4の中央部分及び清掃部材4が連結される一端側部分に、屈曲手段9、9Aを設けた構成とすることで、達成できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、乗客コンベア用オイルパン清掃装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の乗客コンベア用オイルパン清掃装置としては、乗客コンベアのオイルパン上面に接触する清掃部材と、乗客コンベアの複数個の踏段うち、外した踏段用の前輪軸に固定する固定部材と、この固定部材と前記清掃部材とを連結する連結部材とを、少なくとも備え、乗客コンベアの踏段を移動させることで、オイルパンの上面の塵埃を清掃部材によって掃き集めることにより、オイルパンの清掃を行うようにしたものが知られていた(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2002−20072号公報(段落番号0012〜段落番号0014、図1〜図2)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、上記特開2002−20072号公報などに記載された乗客コンベア用オイルパン清掃装置を、上部水平面部、緩傾斜面部、急傾斜面部及び下部水平面部からなるオイルパンに使用した場合、次のような問題があった。
【0004】
すなわち、図8に示すように、上記特開2002−20072号公報の乗客コンベア用オイルパン清掃装置100は、オイルパン60の緩傾斜面部60Bにおいては、踏段の前輪軸80と緩傾斜面部60Bとの間の距離が最大となり、かつ、固定部材30から清掃部材20までの長さが短いため、清掃部材20が緩傾斜面部60Bから離れた状態で移動してしまうので、緩傾斜面部60B上の塵埃をかき集めることができなくなってしまう。
【0005】
そこで、清掃部材20が緩傾斜面部60Bに接触するように、固定部材と清掃部材とを連結する連結部材40を長くすると、オイルパン60の急傾斜面部60Cから下部水平面部60Dに変わる部分で、図9に示すように、乗客コンベア用オイルパン清掃装置200が引掛かかってしまい、その乗客コンベア用オイルパン清掃装置200全体を下部水平面部60D上方に移動させることができなくなってしまう。なお、図8及び図9において、符号70Aは、後方踏段を、かつ、符号70Nは、先行踏段を、それぞれ表しており、同一符号は同一内容を表している。
【0006】
本発明は、上述した従来技術における実状からなされたもので、その目的は、急傾斜面部があるオイルパンであっても、そのオイルパンの清掃を円滑に行わせることを可能にする乗客コンベア用オイルパン清掃装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、本発明は、乗客コンベアのオイルパン上面に接触する清掃部材と、乗客コンベアの複数個の踏段うち、外した踏段用の前輪軸に固定する固定部材と、この固定部材と前記清掃部材とを連結する長尺状の連結部材とを、少なくとも備え、前記踏段を移動させて前記オイルパンの上面を前記清掃部材が移動することで、前記オイルパンの清掃を行う乗客コンベア用オイルパン清掃装置において、前記連結部材を、前記固定部材が前記踏段の前輪軸に固定した際、前記清掃部材が前記固定部材の後方に位置するところの後方踏段の後端下方に位置する長さとなるように設定すると共に、前記清掃部材の高さを、前記後方踏段と前記オイルパンとの間の間隙より小さく設定し、しかも、前記連結部材には、その連結部材の中央部分と前記清掃部材が連結される一端側部分とに、それぞれ屈曲手段を設けたことを特徴としている。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、上部水平面部、緩傾斜面部、急傾斜面部及び下部水平面部からなるオイルパンであつても、そのオイルパン上を、清掃部材がオイルパン上面から大きく離れることなく、円滑に移動して、そのオイルパン上の塵埃を下部水平面部に掃き集める作業を、1個の踏段を外しただけで、可能にした乗客コンベア用オイルパン清掃装置がえられる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下、本発明の一実施形態に係る乗客コンベア用オイルパン清掃装置を、図1〜図7に基づいて、詳説する。図1は、本発明の一実施形態に係る乗客コンベア用オイルパン清掃装置の正面図である。図2は、本発明の一実施形態に係る乗客コンベア用オイルパン清掃装置の上面図である。図3は、本発明の一実施形態に係る乗客コンベア用オイルパン清掃装置の側面図である。図4は、本発明の一実施形態に係る乗客コンベア用オイルパン清掃装置によって清掃されるところのオイルパンと踏段との関係を示す図である。図5は、本発明の一実施形態に係る乗客コンベア用オイルパン清掃装置によるオイルパンの緩傾斜面部分の清掃状態説明図である。図6は、本発明の一実施形態に係る乗客コンベア用オイルパン清掃装置によるオイルパンの急傾斜面部分の清掃状態説明図である。図7は、本発明の一実施形態に係る乗客コンベア用オイルパン清掃装置によるオイルパンの下部水平面部分の清掃状態説明図である。
【0010】
図1〜図3に示す乗客コンベア用オイルパン清掃装置1は、熊手状の清掃部材2と、固定部材3と、長尺板状の連結部材4とから、少なくとも構成されている。清掃部材2は、後述する乗客コンベア5のオイルパン6上面の塵埃を掃き集める機能を有している。固定部材3は、後述する乗客コンベア5の複数個の踏段7〜7Nうち、外した踏段7の前輪軸8を挟持する断面コ字状の挟持部3Aと、この挟持部3Aを前輪軸8に締結する締結具3Bとからなっている。複数個の踏段7〜7Nは、いずれも、同一形状同一寸法としてある。
【0011】
連結部材4は、固定部材3と清掃部材2とを連結する機能を有している。連結部材4には、図2に示すように、その連結部材4の一端側4Aに清掃部材2が連結部材4の長手方向に対して直角となるように固定され、かつ、その連結部材4の他端側4Bに固定部材3が固定されている。連結部材4には、図1及び図2などに示すように、その連結部材4の中央部分4Cと清掃部材2が連結される一端側4A部分に、それぞれ屈曲手段9、9Aが設けられている。そのために、連結部材4は、屈曲手段9の左右及び屈曲手段9Aの左右で、折れ曲がった状態にすることができる。清掃部材2の長さは、一回の清掃作業で、オイルパン6上の塵埃が集められるようにするために、オイルパン6の横幅寸法と略同じくなるように設定されている。
【0012】
上記乗客コンベア用オイルパン清掃装置1によって清掃されるところの乗客コンベア5は、鋼板製のオイルパン6と、踏段7とを有している。オイルパン6は、図4に示すように、上部水平面部6A、緩傾斜面部6B、急傾斜面部6C及び下部水平面部6Dからなっている。踏段7〜7Nは、踏段チェーン(図示せず)によって連結されており、図4の矢印P方向に回転移動するように、オイルパン6の上方に配設されている。踏段チェーンには、踏段7〜7Nのそれぞれの前輪軸8〜8Nが取り付けられている。
【0013】
連結部材4の長さは、固定部材3を前輪軸8に固定した際、清掃部材2が、踏段7〜7Nうちの外した踏段7の後方に位置するところの踏段7A(以下、後方踏段7Aと称す)の後端部下方に略位置する長さとなるように設定する。そのためには、乗客コンベア用オイルパン清掃装置1の全長(清掃部材2から固定部材3までの長さ)L1が、踏段7の踏面の長さL2の約2倍となるようにしてある。清掃部材2の高さ寸法Hと、踏段7〜7Nとオイルパン6との間の間隙Gとの関係が、H<Gとなるように、清掃部材2の高さが設定されている(図6参照)。
【0014】
上記構成の乗客コンベア用オイルパン清掃装置1による清掃は、次のようにして、行われる。
【0015】
まず、踏段7を外した後、清掃部材2をオイルパン6に接触させた状態にすると共に、固定部材3の挟持部3Aを前輪軸8に締結具3Bで締結することによって、踏段7〜7Nの移動によりオイルパン6の上面を清掃部材2が移動するように、乗客コンベア用オイルパン清掃装置1を設置する。
【0016】
その後、踏段チェーンを、図示しない駆動装置によって移動させることにより、オイルパン6上を、上部水平面部6A―緩傾斜面部6B―急傾斜面部6C―下部水平面部6Dの順で、乗客コンベア用オイルパン清掃装置1を移動させる。このように、乗客コンベア用オイルパン清掃装置1を移動させることにより、オイルパン6上の塵埃を、オイルパン6の下部水平面部6Dに向って掃き集めることで、オイルパン6の清掃が行われる。
【0017】
その場合、オイルパン6の緩傾斜面部6Bにおいては、図5に示すように、前輪軸8と緩傾斜面部6Bとの距離が最も大きくなるが、乗客コンベア用オイルパン清掃装置1の全長L1が、固定部材3を踏段7の前輪軸8に固定した状態で清掃部材2が固定部材3の後方に位置するところの後方踏段7Aの後端下方に位置する長さとなるように設定されているので、乗客コンベア用オイルパン清掃装置1の清掃部材2が緩傾斜面部6Bを離れることなく、その清掃部材2によって緩傾斜面部6B上の塵埃が円滑に掃き集められる。
【0018】
また、オイルパン6の緩傾斜面部6Bから急傾斜面部6Cに変わる部分おいては、図6に示すように、前輪軸8及び後方踏段7Aの前輪軸8Aと急傾斜面部6Cとの距離が最も小さくなるが、清掃部材2の高さHが後方踏段7Aとオイルパン6との間の間隙Gより小さく設定されているので、清掃部材2が後方踏段7Aに衝突することないため、乗客コンベア用オイルパン清掃装置1がオイルパン6の急傾斜面部6C上を円滑に移動して、緩傾斜面部6B上の塵埃と一緒に急傾斜面部6C上の塵埃が円滑に掃き集められる。
【0019】
また、オイルパン6の急傾斜面部6Cから下部水平面部6Dにおいては、図7に示すように、連結部材4の中央部分4Cが屈曲手段9により折れて、連結部材4の一端側4A側が急傾斜面部6Cに沿い、かつ、連結部材4の他端側4B側が下部水平面部6Dに沿う状態となると共に、連結部材4の清掃部材2が連結される一端側4A部分が屈曲手段9Aにより折れて、清掃部材2が後方踏段7Aに接触することがないので、乗客コンベア用オイルパン清掃装置1が、急傾斜面部6Cから下部水平面部6Dへと円滑に移動して、オイルパン6の上部水平面部6A、緩部6B傾斜面及び急傾斜面部6Cの上の塵埃並びに下部水平面部6D上の塵埃と一緒に、下部水平面部6Dに集められる。
【0020】
下部水平面部6Dに集められた塵埃は、掃除機などによって、吸引することで、オイルパン6から取り除く。その後、乗客コンベア用オイルパン清掃装置1を前輪軸8から外して、外した踏段7を前輪軸8に取り付けることにより、清掃作業が終了する。
【0021】
以上のように、上記乗客コンベア用オイルパン清掃装置1によれば、上部水平面部6A、緩傾斜面部6B、急傾斜面部6C及び下部水平面部6Dからなっているオイルパン6であっても、1個の踏段7を外しただけで、乗客コンベア用オイルパン清掃装置1を設置することができ、かつ、乗客コンベア用オイルパン清掃装置1を後方踏段7Aに衝突させることなく、円滑に移動させることができ、清掃作業性が向上する。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明の一実施形態に係る乗客コンベア用オイルパン清掃装置の正面図である。
【図2】本発明の一実施形態に係る乗客コンベア用オイルパン清掃装置の上面図である。
【図3】本発明の一実施形態に係る乗客コンベア用オイルパン清掃装置の側面図である。
【図4】本発明の一実施形態に係る乗客コンベア用オイルパン清掃装置によって清掃されるところのオイルパンと踏段との関係を示す図である。
【図5】本発明の一実施形態に係る乗客コンベア用オイルパン清掃装置によるオイルパンの緩傾斜面部分の清掃状態説明図である。
【図6】本発明の一実施形態に係る乗客コンベア用オイルパン清掃装置によるオイルパンの急傾斜面部分の清掃状態説明図である。
【図7】本発明の一実施形態に係る乗客コンベア用オイルパン清掃装置によるオイルパンの下部水平面部分の清掃状態説明図である。
【図8】従来例に係る乗客コンベア用オイルパン清掃装置によるオイルパンの緩傾斜面部分の清掃状態説明図である。
【図9】従来例に係る乗客コンベア用オイルパン清掃装置によるオイルパンの下部水平面部分の清掃状態説明図である。
【符号の説明】
【0023】
1 乗客コンベア用オイルパン清掃装置
2 清掃部材
3 固定部材
3A 挟持部
3B 締結具
4 連結部材
4A 一端側
4B 他端側
4C 中央部分
5 乗客コンベア
6 オイルパン
6A 上部水平面部
6B 緩傾斜面部
6C 急傾斜面部
6D 下部水平面部
7〜7N 踏段
8〜8N 前輪軸
9、9A 屈曲手段
H 清掃部材の高さ寸法
G 間隙
L1 乗客コンベア用オイルパン清掃装置の全長
L2 踏段の長さ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
乗客コンベアのオイルパン上面に接触する清掃部材と、乗客コンベアの複数個の踏段うち、外した踏段用の前輪軸に固定する固定部材と、この固定部材と前記清掃部材とを連結する長尺状の連結部材とを、少なくとも備え、前記踏段を移動させて前記オイルパンの上面を前記清掃部材が移動することで、前記オイルパンの清掃を行う乗客コンベア用オイルパン清掃装置において、
前記連結部材を、前記固定部材が前記踏段の前輪軸に固定した際、前記清掃部材が前記固定部材の後方に位置するところの後方踏段の後端下方に位置する長さとなるように設定すると共に、前記清掃部材の高さを、前記後方踏段と前記オイルパンとの間の間隙より小さく設定し、しかも、前記連結部材には、その連結部材の中央部分と前記清掃部材が連結される一端側部分とに、それぞれ屈曲手段を設けたことを特徴とする乗客コンベア用オイルパン清掃装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2007−63008(P2007−63008A)
【公開日】平成19年3月15日(2007.3.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−255055(P2005−255055)
【出願日】平成17年9月2日(2005.9.2)
【出願人】(000232955)株式会社日立ビルシステム (895)
【Fターム(参考)】