説明

乗客コンベア

【課題】照明源の交換作業やメンテナンス作業を簡単かつ短時間で行うことができ、また、透光性の照明カバーに切り欠き等の加工を行う必要がなくなり、この照明カバーの加工形状を簡素化することができる乗客コンベアを提供すること。
【解決手段】乗客コンベアは、踏段33の移動経路を形成する一対の対向するスカートガード10と、一対の対向する欄干パネル11とを備えている。デッキ13は照明カバー12および欄干パネル11に対して着脱自在となっている。照明ケース本体15の欄干パネル11側の開口部を覆うよう照明ケース蓋部材16が当該照明ケース本体15に対して着脱自在に設けられている。照明源17はこの照明ケース蓋部材16に取り付けられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一対の対向する欄干パネル間の照射領域を照射する照射源を備えた乗客コンベアに関し、とりわけこの照明源の交換作業やメンテナンス作業を簡単かつ短時間で行うことができる乗客コンベアに関する。
【背景技術】
【0002】
一般的な乗客コンベアの構成について、図6を用いて説明する。図6は、乗客コンベア全体の概略的な構成を示す概略構成図である。
図6に示すように、乗客コンベアは、電動機および減速機からなる駆動装置40と、この駆動装置40により回転駆動される駆動輪31と、駆動輪31に対向して設置される従動輪32と、駆動輪31および従動輪32に巻き掛けられ、無端状に連結されて循環移動する複数の踏段33と、各踏段33を案内するガイドレール34とを備えている。各踏段33の循環移動領域の両側方にはスカートガード41が設けられている。また、スカートガード41の上方には欄干パネル36が設けられており、各踏段33と同期して循環移動する無端状の手摺ベルト35がこの欄干パネル36により支持されている。スカートガード41には内デッキ37および外デッキ38が取り付けられており、欄干パネル36の下端部分がこの内デッキ37と外デッキ38との間に挟まれることにより当該欄干パネル36が立位状態で固定されている。乗客コンベアの欄干パネル36、デッキ37、38、スカートガード41等は本体フレーム39によって支持されている。
【0003】
従来の乗客コンベアにおいては、一対の対向する欄干パネル36間の照射領域を照射する照明ランプ等の照明源は、一般的には欄干パネル36の上部における手摺ベルト35の近傍に取り付けられている(例えば特許文献1等参照)。しかしながら、近年ではデザイン性を向上させたり、足元の確認性を向上させてより一層の安全性を確保したりするために、各踏段33の両側方にあるスカートガード41に照明源を設ける場合がある。
スカートガード41に照明源を設置する場合、まず照明源を照明ケースの底部または側面部にランプホルダーを介して取り付ける。そして、この照明源が取り付けられた照明ケースをスカートガード41の外側面、すなわち踏段33が設けられていない側の面に取り付けるとともに当該スカートガード41に透光性の照明カバーを設け、照明源から発せられた光はこの照明カバーを通過して一対の欄干パネル36間の照射領域に照射されるようにする(例えば、特許文献2、3等参照)。
【0004】
図7を用いて従来の乗客コンベアの照明源について一例を用いてより詳細に説明する。図7は、従来の乗客コンベアの照明源の構成を説明するための説明用縦断面図である。
図7に示すように、スカートガード41には、踏段33と反対側に突出し断面がいわゆる「コの字」形状となっている照明ケース42が設けられている。また、このスカートガード41において照明ケース42の近傍部分には透光性の照明カバー43が設けられている。そして、照明ケース42において透光性の照明カバー43と対向する側面42aにはランプホルダー44が取り付けられており、このランプホルダー44がランプ45を側方から保持するようになっている。
【0005】
【特許文献1】特開平5−97370号公報
【特許文献2】特開平11−193193号公報
【特許文献3】特開2002−87749号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、図7に示すように、一般的には欄干パネル36を支持する支持部46とスカートガード41との間にあるスペースは非常に狭く、作業者がこのスペースに手を入れて作業を行うことは困難である。ここで、図7に示すような乗客コンベアにおいては、このスペースにランプ45および照明ケース42が挿入されている。このため、ランプ45の取り付けや取り外し等の交換作業、あるいはメンテナンス作業を行う際には、スカートガード41全体を取り外したり、あるいは特殊な工具を使用して照明カバー43を取り外したりしなければならないという問題がある。
【0007】
また、透光性の照明カバー43をスカートガード41に取り付けて固定するためには、当該照明カバー43の周縁部に対して複数の切り欠き部を設け、この照明カバー43の各切り欠き部の位置をスカートガード41に設けられた各スタッドの位置に対応させる必要がある。このように、照明カバー43に対して切り欠き加工を行わなければならないことにより、当該加工に要する手間が大幅に増え、製造コストが高くなってしまうという問題がある。
【0008】
本発明は、このような点を考慮してなされたものであり、照明源の交換作業やメンテナンス作業を簡単かつ短時間で行うことができ、このことにより現場における作業効率を向上させることができ、また、透光性の照明カバーの加工形状を簡素化することができ、このことにより製造コストを下げることができるとともに当該照明カバーの強度を大きくすることができる乗客コンベアを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、移動経路を形成する一対の対向するスカートガードと、前記一対のスカートガード間の移動経路に設けられ、無端状に連結されて循環移動する複数の踏段と、一対の対向する欄干パネルと、前記スカートガードに一端が設けられた透光性の照明カバーと、前記照明カバーの他端および前記欄干パネルに着脱自在に設けられたデッキと、前記照明カバーに対して前記踏段と反対側に設けられ、踏段側および欄干パネル側に開口部を有する照明ケース本体と、前記照明ケース本体の欄干パネル側の開口部を覆うよう、この照明ケース本体に対して着脱自在に設けられた照明ケース蓋部材と、前記照明ケース本体内に収容されるよう前記照明ケース蓋部材に取り付けられた照明源と、を備えたことを特徴とする乗客コンベアである。
このような乗客コンベアによれば、デッキは照明カバーおよび欄干パネルに対して着脱自在となっており、照明ケース本体の欄干パネル側の開口部を覆うよう照明ケース蓋部材が着脱自在に設けられており、照明源はこの照明ケース蓋部材に取り付けられている。このため、照明源の交換作業やメンテナンス作業を行う際には、まずデッキを取り外し、次に照明ケース蓋部材を照明ケース本体から取り外すだけで、この照明ケース蓋部材に取り付けられた照明源を照明ケース本体から取り外すことができ、このため照明ケース蓋部材からの照明源の取り外し等を外部の広い作業スペースで行うことができるようになるので、当該照明源の交換作業やメンテナンス作業を簡単かつ短時間で行うことができる。また、この際に透光性の照明カバーの着脱を行う必要がないので、この照明カバーに切り欠き等の加工を行う必要がなくなり、当該照明カバーの加工形状を簡素化することができる。
【0010】
本発明の乗客コンベアにおいては、溝を有する取付部材が前記照明カバーの他端に取り付けられ、前記照明ケース蓋部材の端縁部および前記デッキの端縁部が前記取付部材の溝にそれぞれ挿入され、当該照明ケース蓋部材およびデッキが各々前記照明カバーに固定されることが好ましい。
このような乗客コンベアによれば、照明ケース蓋部材およびデッキはそれぞれ端縁部を取付部材の溝に挿入することによりこれらの照明ケース蓋部材およびデッキの照明カバーに対する取り付けを行っているので、当該照明ケース蓋部材およびデッキの着脱を容易に行うことができる。
【0011】
本発明の乗客コンベアにおいては、前記照明ケース蓋部材は前記踏段に対して遠位側にある平板状の端縁部を有し、当該照明ケース蓋部材の平板状の端縁部の表面および前記照明ケース本体の表面が当接するよう、この照明ケース蓋部材が照明ケース本体に取り付けられることが好ましい。
このような乗客コンベアによれば、照明ケース蓋部材の平板状の端縁部の表面を照明ケース本体の表面に当接させながらこの照明ケース蓋部材の照明ケース本体に対する取り付けを行っているので、照明ケース蓋部材の着脱を容易に行うことができる。
【0012】
本発明の乗客コンベアにおいては、前記スカートガードと前記照明ケース本体との間には支持部材が配設され、当該支持部材により前記スカートガードと前記照明ケース本体との間に形成された間隙に前記照明カバーの端縁部が挿入されながら、当該照明カバーおよび前記照明ケース本体が前記スカートガードに固定されることが好ましい。
このような乗客コンベアによれば、照明カバーの端縁部がスカートガードと照明ケース本体との間に挟まれることにより当該照明カバーが固定されるので、照明カバーのスカートガードへの取り付け作業を簡単かつ安定的に行うことができる。また、照明カバーにおけるスカートガードの近傍部分に切り欠き等の特殊な加工を行う必要がなくなる。
また、この乗客コンベアにおいては、前記照明カバーの端縁部は前記支持部材に当接するようになっていることがさらに好ましい。
このような乗客コンベアによれば、スカートガードと照明ケース本体との間に配設された支持部材によって照明カバーの位置決めを容易に行うことができる。
【0013】
本発明の乗客コンベアにおいては、前記照明カバーの欄干パネル側の端縁部は長手方向において段差形状となっているとともに、前記取付部材は当該照明カバーの欄干パネル側の端縁部の段差形状と適合する段差形状となっていることが好ましい。
このような乗客コンベアによれば、取付部材によって照明カバーの位置決めを容易に行うことができる。
【0014】
本発明の乗客コンベアにおいては、前記取付部材は、前記照明カバーの照明源側の側面と当接する突出部を更に有することが好ましい。
このような乗客コンベアによれば、取付部材の突出部が照明カバーの照明源側の側面と当接することにより、照明カバーに踏段側から横方向に作用される力に対して当該照明カバーの板厚全体でこの力を受けることができ、このことにより照明カバーの強度をより大きくすることができる。
【0015】
本発明の乗客コンベアにおいては、前記照明カバーにおける照明源側の表面と、前記デッキの踏段側の端縁部とが略同一面上に位置するよう当該照明カバーおよびデッキが配設されることが好ましい。
このような乗客コンベアによれば、照明カバーからデッキの踏段側の端縁部が略同一面上で延伸するようになるので、当該照明カバーを安定的にデッキの下方に設けることができる。
【0016】
本発明の乗客コンベアにおいては、前記照明ケース本体の外部にある電源から前記照明源に電力を供給するための電線を更に備え、前記照明ケース蓋部材は貫通開口を有し、外部の電源に接続された前記電線は、前記照明ケース蓋部材における照明源とは反対側の表面に沿って配線されるとともに前記貫通開口を通って前記照明源に接続されることが好ましい。
このような乗客コンベアによれば、照明源の交換作業等を行う際にこの照明源が取り付けられた照明ケース蓋部材を照明ケース本体から取り外す場合であっても、照明源に電力を供給するための電線は照明ケース蓋部材の表面に沿って配設されて貫通開口により当該照明源に接続されているため、この電線が照明ケース蓋部材の取り外し工程や取り付け工程において邪魔となることはない。このため、照明ケース蓋部材の取り外しおよび取り付けをより簡単に行うことができる。
【発明の効果】
【0017】
本発明の乗客コンベアによれば、照明源の交換作業やメンテナンス作業を簡単かつ短時間で行うことができ、また、透光性の照明カバーに切り欠き等の加工を行う必要がなくなり、この照明カバーの加工形状を簡素化することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態について説明する。図1乃至図5は、本実施の形態による乗客コンベアを示す図である。
このうち図1は、本実施の形態の乗客コンベアの構成を示す縦断面図であり、図2は、図1の乗客コンベアにおける照明源近傍の構成を示す拡大縦断面図である。また、図3は、図2の乗客コンベアにおける領域Aの拡大縦断面図であり、図4は、図2の乗客コンベアにおける領域Bの拡大縦断面図である。また、図5は、本実施の形態の乗客コンベアにおける照明源近傍の構成を示す斜視図である。
【0019】
本実施の形態による乗客コンベアは、図6、7に示す乗客コンベアと比較して照明源近傍の構成が改善されている点が異なるのみであり、他の構成については実質的に図6に示す乗客コンベアと同様の構成となっている。図1乃至図5に示す本実施の形態において、図6に示す乗客コンベアと同一部分には同一符号を付して詳細な説明は省略する。
【0020】
本実施の形態の乗客コンベアは、移動経路を形成する一対の対向するスカートガード10と、これらのスカートガード10間の移動経路に設けられ、無端状に連結されて循環移動する複数の踏段33とを備えている。また、図1に示すように、スカートガード10の上方には欄干パネル11が立位状態で配設されている。スカートガード10の上端には透光性の照明カバー12が設けられており、この照明カバー12の上端には内デッキ13が着脱自在に設けられている。内デッキ13の外方(踏段33が設けられていない側、すなわち図1における左方)には外デッキ14が設けられており、この内デッキ13と外デッキ14との間には欄干パネル11の下端部分が挟まれて保持されている。内デッキ13は欄干パネル11に対しても着脱自在となっている。
内デッキ13の下方において照明カバー12の外方(図1の左方)には照明ケース本体15が設けられている。この照明ケース本体15は上方および内方(踏段33が設けられている側、すなわち図1における右方)に開口しており、照明ケース蓋部材16が照明ケース本体15の上方の開口部を覆うよう設けられている。そして、この照明ケース蓋部材16の下面には照明源保持部材18を介して照明源17が取り付けられている。
以下、このような構成からなる乗客コンベアの各構成要素について詳述する。
【0021】
スカートガード10は、薄板状の部材からなり、前述のように踏段33の循環移動領域の両側方にそれぞれ立位状態で設けられている。スカートガード10は、図1に示すように踏段33からわずかに離間するようスカートガード保持部材24により保持されて位置固定となっている。
【0022】
照明カバー12は、ガラス等の透光性の部材から形成されており、スカートガード10の上方において立位状態で設けられている。この照明カバー12の踏段33側の表面とスカートガード10の踏段33側の表面は、略同一面上に位置するようになっている。図2に示すように、照明カバー12の下方の端縁部は、当該照明カバー12の長手方向(図2の上下方向)において2段階の段差形状となっており、この照明カバー12の上方の端縁部も、当該照明カバー12の長手方向において2段階の段差形状となっている。すなわち、照明カバー12の下方の端縁部において、踏段33に対する遠位側の一部12aが更に下方に突出しており、一方、照明カバー12の上方の端縁部において、踏段33側の一部12bが更に上方に突出している。
【0023】
欄干パネル11は、例えば薄板状のガラス等から形成されており、スカートガード10の上方に離間して立位状態で配設されている。欄干パネル11は、その下端部分が欄干パネル保持部材22により保持されることにより位置固定となっている。欄干パネル保持部材22の下方には本体フレーム39が設けられており、この本体フレーム39に欄干パネル保持部材22が取り付けられている。
【0024】
内デッキ13、外デッキ14はそれぞれ薄板状の部材からなり、内デッキ13は欄干パネル11よりも内方(踏段33側)に設けられている。一方、外デッキ14は欄干パネル11よりも外方(踏段33に対する遠位側)に設けられている。図1に示すように、内デッキ13および外デッキ14により欄干パネル11を挟持してこの欄干パネル11を保持するようになっている。
内デッキ13はその踏段33側の一端13aが取付部材20(後述)を介して照明カバー12に対して着脱自在となっている。また、内デッキ13の他端13bはボルト13cにより欄干パネル11に連結されており、このことにより欄干パネル11に対して着脱自在となっている。内デッキ13の一端13aおよび他端13bをそれぞれ脱状態とした場合には、当該内デッキ13を取り外すことができるようになる。一方、外デッキ14はその踏段33側の一端が欄干パネル11に対して固定されている。
【0025】
ここで、内デッキ13の踏段33側の端縁部13aと、照明カバー12における照明源17側の表面とが略同一面上に位置するよう照明カバー12と内デッキ13との位置関係が定められている。このことにより、照明カバー12を安定的に内デッキ13の下方に設けることができる。
【0026】
照明ケース本体15は、薄板状の部材からなり、内デッキ13の下方において照明カバー12の外方の位置に配設されている。この照明ケース本体15は、上方および踏段33側に開口しており、断面がいわゆるL字形状となっている。図2に示すように、照明ケース本体15は踏段33側の一端15aが上方に折れ曲がっており、この一端15aが後述する支持部材21(挟圧用サポート)を介してスカートガード10に取り付けられている。
【0027】
照明ケース蓋部材16は、薄板状の部材からなり、照明ケース本体15の上方の開口部を覆うよう設けられている。この照明ケース蓋部材16の下面には例えばランプホルダーからなる照明源保持部材18が取り付けられており、当該照明源保持部材18により例えばランプからなる照明源17が保持されている。照明源17から発せられた光は、透光性の照明カバー12を通過して一対の欄干パネル11間の照射領域を照らすようになっている。
【0028】
照明ケース蓋部材16の長さピッチ(図1の紙面に対して垂直な方向における長さ)は、照明源17の長さピッチとほぼ同じ大きさとなっており、この照明ケース蓋部材16の継目も照明源17の継目に合わせられている。なお、照明ケース蓋部材16の継目部分については、照明源17からの光漏れを防ぐため、図1の紙面に対して垂直な方向において隣接する他の照明ケース蓋部材16を少しだけ重層させている。
【0029】
図2に示すように、照明ケース蓋部材16は、その踏段33側の端縁部16aが一旦上方に折れ曲がってから先端近傍において下方に折れ曲がっている。また、照明ケース蓋部材16における踏段33に対する遠位側の端縁部16bは上方に折れ曲がった構造となっている。そして、図2に示すように、照明ケース蓋部材16における平板状の端縁部16bの表面と照明ケース本体15の表面とを当接させ、ボルト19により照明ケース蓋部材16を照明ケース本体15に連結させている。
【0030】
照明カバー12の上端には取付部材20が取り付けられている。図3に示すように、この取付部材20の上面には溝20aが設けられており、当該溝20aには照明ケース蓋部材16の踏段33側の端縁部16aおよび内デッキ13の踏段33側の端縁部13aが挿入可能となっている。照明ケース蓋部材16の端縁部16aおよび内デッキ13の端縁部13aが取付部材20の上面側にある溝20aに挿入されることにより、この取付部材20に照明ケース蓋部材16および内デッキ13が固定されるようになっている。
図3に示すように、取付部材20の下方の端縁部は長手方向(上下方向)において段差形状となっている。ここで、取付部材20の下方の端縁部に係る段差形状は、前述の照明カバー12の上方の端縁部に係る段差形状と適合するようになっている。具体的には、図3に示すように、取付部材20の下面20bは照明カバー12の上面に当接するようになっており、さらに取付部材20の下面側にある溝20cに照明カバー12の突出部12bが挿入されるようになっている。
照明カバー12の欄干パネル11側の端縁部が長手方向において段差形状となっているとともに、取付部材20はこの段差形状と適合する段差形状となっているので、当該取付部材20によって照明カバー12の位置決めを容易に行うことができる。
【0031】
また、取付部材20は、下方の端縁部において下面20bからさらに下方に突出する突出部20dを有している。そして、この突出部20dが照明カバー12の照明源17側の側面と当接するようになっている。このような突出部20dが設けられていることにより、照明カバー12に踏段33側から横方向に作用される力に対して当該照明カバー12の板厚全体でこの力を受けることができ、このことにより照明カバー12の強度をより大きくすることができる。
【0032】
図4に示すように、照明ケース本体15の一端15aとスカートガード10との間には支持部材(挟圧用サポート)21が配設されている。この支持部材21は、薄板状の部材からなり、図2に示すように中央で折れ曲がって二層に積層された状態で設けられている。この支持部材21はスカートガード10に取り付けられている。また、この支持部材21における照明源17側の側面には、照明ケース本体15の一端15aがスタッドボルト25およびナット26により固定されている。また、この支持部材21によりスカートガード10と照明ケース本体15との間に形成された間隙に、照明カバー12の下方の突出部12aが挿入されている。このようにして、照明カバー12および照明ケース本体15がスカートガード10に固定されている。
このような支持部材21を設けることによって、照明カバー12のスカートガード10への取り付け作業を簡単かつ安定的に行うことができるようになる。また、照明カバー12は挟持されることにより位置固定されるので、この照明カバー12におけるスカートガード10の近傍部分に切り欠き等の特殊な加工を行う必要がなくなる。
【0033】
ここで、図4に示すように、照明カバー12の端縁部12aは支持部材21における踏段33側の層の上面と当接している。このことにより、支持部材21によって照明カバー12の位置決めを容易に行うことができる。
【0034】
図5に示すように、照明ケース本体15の外部にある電源(図示せず)から照明源17へ電力を供給するための電線27が設けられている。
具体的に説明すると、照明ケース蓋部材16には、照明源17の端部近傍において電線27を通過させるための貫通孔16hが設けられている。外部の電源に接続された電線27は、まず照明ケース蓋部材16の上面(すなわち、照明源17とは反対側の表面)に沿って配線され、次に貫通孔16hを通過して照明ケース蓋部材16の下方に延び、そして照明源17の端部に接続されるようになっている。
【0035】
図5に示すような構成により、照明源17の交換作業等を行う際にこの照明源17が取り付けられた照明ケース蓋部材16を照明ケース本体15から取り外す場合であっても、前述のように電線27は照明ケース蓋部材16の表面に沿って配設されて貫通孔16hにより照明源17に接続されているため、この電線27が照明ケース蓋部材16の取り外し工程や取り付け工程において邪魔となることはない。このため、照明ケース蓋部材16の取り外しおよび取り付けを簡単に行うことができるようになる。
【0036】
次に、このような構成からなる本実施の形態の作用について説明する。
具体的には、照明源17の交換作業やメンテナンス作業を行う際における、この照明源17の取り外し方法および取り付け方法について説明する。
【0037】
最初に、図1に示すように照明源17がスカートガード10の近傍に設置された状態からこの照明源17を取り外す方法について以下に説明する。
まず、内デッキ13の一端13aを取付部材20の溝20aから引き抜き、さらに内デッキ13の他端13bに設けられたボルト13cの取り外しを行うことによりこの他端13bを欄干パネル11から取り外す。このようにして、内デッキ13を照明カバー12および欄干パネル11から取り外す。
【0038】
次に、照明ケース蓋部材16の端縁部16aを取付部材20の溝20aから引き抜き、さらにこの照明ケース蓋部材16を照明ケース本体15に固定しているボルト19の取り外しを行う。このようにして、照明源17が取り付けられた照明ケース蓋部材16を照明カバー12および照明ケース本体15から取り外す。
そして、この取り外された照明ケース蓋部材16を外部の広い作業スペースに運び、この照明ケース蓋部材16に設けられた照明源保持部材18から照明源17を取り外す。このようにして照明源17の交換作業等を行うことができる。
【0039】
次に、以上のようにして照明ケース蓋部材16から照明源17の取り外し等を行った後、再び照明源17をスカートガード10の近傍に設置された状態に戻す方法について以下に説明する。
【0040】
まず、照明源17を照明ケース蓋部材16の照明源保持部材18に取り付け、次に、この照明ケース蓋部材16の端縁部16aを取付部材20の溝20aに挿入する。一方、照明ケース蓋部材16の平板状の端縁部16bを照明ケース本体15の内方側面(踏段33側の側面)に当接させ、ボルト19によりこの照明ケース蓋部材16を照明ケース本体15に固定する。このようにして、照明ケース蓋部材16を照明カバー12および照明ケース本体15に取り付ける。
【0041】
最後に、内デッキ13の一端13aを取付部材20の溝20aに挿入し、また、この内デッキ13の他端13bをボルト13cにより欄干パネル11に固定する。このようにして、内デッキ13を照明カバー12および欄干パネル11に取り付ける。
このようにして、照明源17をスカートガード10の近傍に設置された状態に戻すことができる。
【0042】
以上のように本実施の形態の乗客コンベアによれば、内デッキ13が照明カバー12および欄干パネル11に対して着脱自在となっており、照明ケース本体15の欄干パネル11側の開口部を覆うよう照明ケース蓋部材16が着脱自在に設けられており、照明源17はこの照明ケース蓋部材16に取り付けられている。このため、照明源17の交換作業やメンテナンス作業を行う際には、まず内デッキ13を取り外し、次に照明ケース蓋部材16を照明ケース本体15から取り外すだけで、この照明ケース蓋部材16に取り付けられた照明源17を照明ケース本体15から取り外すことができ、このため照明ケース蓋部材16からの照明源17の取り外し等を外部の広い作業スペースで行うことができるようになるので、当該照明源17の交換作業やメンテナンス作業を簡単かつ短時間で行うことができる。また、この際に透光性の照明カバー12の着脱を行う必要がないので、この照明カバー12に切り欠き等の加工を行う必要がなくなり、当該照明カバー12の加工形状を簡素化することができる。
【0043】
また、照明ケース蓋部材16および内デッキ13はそれぞれ端縁部16a、13aを取付部材20の溝20aに挿入することによりこれらの照明ケース蓋部材16および内デッキ13の照明カバー12に対する取り付けを行っているので、照明ケース蓋部材16および内デッキ13の着脱を容易に行うことができる。
【0044】
また、照明ケース蓋部材16の平板状の端縁部16bの表面を照明ケース本体15の表面に当接させながらこの照明ケース蓋部材16の照明ケース本体15に対する取り付けを行っているので、当該照明ケース蓋部材16の着脱を容易に行うことができる。
【0045】
なお、本発明による乗客コンベアは、上記の態様に限定されるものではなく、様々の変更を加えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0046】
【図1】本実施の形態の乗客コンベアの構成を示す縦断面図である。
【図2】図1の乗客コンベアにおける照明源近傍の詳細な構成を示す拡大縦断面図である。
【図3】図2の乗客コンベアにおける領域Aの拡大縦断面図である。
【図4】図2の乗客コンベアにおける領域Bの拡大縦断面図である。
【図5】本実施の形態の乗客コンベアにおける照明源近傍の詳細な構成を示す斜視図である。
【図6】乗客コンベア全体の概略的な構成を示す概略構成図である。
【図7】従来の乗客コンベアの照明源の構成を説明するための説明用縦断面図である。
【符号の説明】
【0047】
10 スカートガード
11 欄干パネル
12 照明カバー
12a 端縁部
12b 端縁部
13 内デッキ
13a 端縁部(一端)
13b 端縁部(他端)
13c ボルト
14 外デッキ
15 照明ケース本体
15a 一端
16 照明ケース蓋部材
16a 端縁部
16b 端縁部
16h 貫通孔
17 照明源
18 照明源保持部材
19 ボルト
20 取付部材
20a 溝
20b 下面
20c 溝
20d 突出部
21 支持部材
22 欄干パネル保持部材
24 スカートガード保持部材
25 スタッドボルト
26 ナット
27 電線
31 駆動輪
32 従動輪
33 踏段
34 ガイドレール
35 手摺ベルト
36 欄干パネル
37 内デッキ
38 外デッキ
39 本体フレーム
40 駆動装置
41 スカートガード
42 照明ケース
42a 側面
43 照明カバー
44 ランプホルダー
45 ランプ
46 支持部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
移動経路を形成する一対の対向するスカートガードと、
前記一対のスカートガード間の移動経路に設けられ、無端状に連結されて循環移動する複数の踏段と、
一対の対向する欄干パネルと、
前記スカートガードに一端が設けられた透光性の照明カバーと、
前記照明カバーの他端および前記欄干パネルに着脱自在に設けられたデッキと、
前記照明カバーに対して前記踏段と反対側に設けられ、踏段側および欄干パネル側に開口部を有する照明ケース本体と、
前記照明ケース本体の欄干パネル側の開口部を覆うよう、この照明ケース本体に対して着脱自在に設けられた照明ケース蓋部材と、
前記照明ケース本体内に収容されるよう前記照明ケース蓋部材に取り付けられた照明源と、
を備えたことを特徴とする乗客コンベア。
【請求項2】
溝を有する取付部材が前記照明カバーの他端に取り付けられ、
前記照明ケース蓋部材の端縁部および前記デッキの端縁部が前記取付部材の溝にそれぞれ挿入され、当該照明ケース蓋部材およびデッキが各々前記照明カバーに固定されることを特徴とする請求項1記載の乗客コンベア。
【請求項3】
前記照明ケース蓋部材は前記踏段に対して遠位側にある平板状の端縁部を有し、
当該照明ケース蓋部材の平板状の端縁部の表面および前記照明ケース本体の表面が当接するよう、この照明ケース蓋部材が照明ケース本体に取り付けられることを特徴とする請求項1または2記載の乗客コンベア。
【請求項4】
前記スカートガードと前記照明ケース本体との間には支持部材が配設され、
当該支持部材により前記スカートガードと前記照明ケース本体との間に形成された間隙に前記照明カバーの端縁部が挿入されながら、当該照明カバーおよび前記照明ケース本体が前記スカートガードに固定されることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか一項に記載の乗客コンベア。
【請求項5】
前記照明カバーの端縁部は前記支持部材に当接するようになっていることを特徴とする請求項4記載の乗客コンベア。
【請求項6】
前記照明カバーの欄干パネル側の端縁部は長手方向において段差形状となっているとともに、前記取付部材は当該照明カバーの欄干パネル側の端縁部の段差形状と適合する段差形状となっていることを特徴とする請求項2記載の乗客コンベア。
【請求項7】
前記取付部材は、前記照明カバーの照明源側の側面と当接する突出部を更に有することを特徴とする請求項6記載の乗客コンベア。
【請求項8】
前記照明カバーにおける照明源側の表面と、前記デッキの踏段側の端縁部とが略同一面上に位置するよう当該照明カバーおよびデッキが配設されることを特徴とする請求項1乃至7のいずれか一項に記載の乗客コンベア。
【請求項9】
前記照明ケース本体の外部にある電源から前記照明源に電力を供給するための電線を更に備え、
前記照明ケース蓋部材は貫通開口を有し、
外部の電源に接続された前記電線は、前記照明ケース蓋部材における照明源とは反対側の表面に沿って配線されるとともに前記貫通開口を通って前記照明源に接続されることを特徴とする請求項1乃至8のいずれか一項に記載の乗客コンベア。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate


【公開番号】特開2007−191261(P2007−191261A)
【公開日】平成19年8月2日(2007.8.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−10264(P2006−10264)
【出願日】平成18年1月18日(2006.1.18)
【出願人】(390025265)東芝エレベータ株式会社 (2,543)
【Fターム(参考)】