説明

乗客コンベア

【課題】主枠の加工が容易であり、また主枠に対するオイルパンの幅方向の寸法誤差に対する適応性が向上した乗客コンベアを得る。
【解決手段】この発明に係るエスカレータは、主枠1と、この主枠1の内側に設けられ駆動鎖歯車及び従動鎖歯車に巻き掛けされた無端状の踏段鎖と、この踏段鎖に連結され駆動鎖歯車及び従動鎖歯車の回転により、主枠1内を循環移動する複数の踏段と、この踏段の下側全域に設けられ前記踏段鎖に供給された潤滑油を受け止め、貯留するオイルパン14とを備えた乗客コンベアにおいて、オイルパン14は、前記循環移動の方向に対して垂直方向の両側縁部に立上がり部15が形成されており、この立上がり部15は、主枠1の下部に形成されたねじ座19にボルト20を用いて固定されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、主枠の底部に設けられ潤滑油を受け止めるオイルパンを備えた乗客コンベアに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、オイルパンの幅方向の縁部を主枠の底面側に設けた弦材の水平辺に重合して配置し、また弦材の主枠幅の中心寄りの縁部に上向きフランジを設けた乗客コンベアが知られている(例えば、特許文献1参照)。
この乗客コンベアでは、オイルパンは、弦材の上向きフランジの両側外側に設けられた取付座にボルトを螺着することで主枠に固定されている。
この乗客コンベアでは、主枠内の踏段等に供給した潤滑油の滴下は、オイルパン及び弦材の水平辺と上向きフランジにより形成した溝状部を通じて主枠の下端部に誘導される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2004−35168号公報(図2)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記乗客コンベアでは、主枠の弦材において上向きフランジを取付座の高さに合わせて形成しなければならず、弦材の加工に手間がかかるという問題点があった。
また、オイルパンを主枠に固定する際には、オイルパンに形成された孔と取付座に形成されたねじ孔とを一致させなければならないが、オイルパンの幅方向の対向した一対間の孔の距離が所定の誤差を超えた場合には、オイルパンの設置現場で迅速に対応することができないという問題点もあった。
【0005】
この発明は、上記のような問題点を解決することを課題とするものであって、主枠の加工が容易であり、また主枠に対するオイルパンの幅方向の寸法誤差に対する適応性が向上した乗客コンベアを得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この発明に係る乗客コンベアは、主枠と、この主枠の内側に設けられ駆動鎖歯車及び従動鎖歯車に巻き掛けされた無端状の踏段鎖と、この踏段鎖に連結され駆動鎖歯車及び従動鎖歯車の回転により、前記主枠内を循環移動する複数の踏段と、この踏段の下側全域に設けられ前記踏段鎖に供給された潤滑油を受け止め、貯留するオイルパンとを備えた乗客コンベアにおいて、前記オイルパンは、前記循環移動の方向に対して垂直方向の両側縁部に立上がり部が形成されており、この立上がり部は、前記主枠の下部に形成された取付座に締結部材を用いて固定されている。
【発明の効果】
【0007】
この発明に係る乗客コンベアによれば、オイルパンの両側縁部に形成された立上がり部が、主枠の下部に形成された取付座に締結部材を用いて固定されているので、主枠の加工が容易であり、また主枠に対するオイルパンの幅方向の寸法誤差に対する適応性が向上するという効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】この発明の実施の形態1のエスカレータの全体構成図である。
【図2】図1のA−A線に沿った断面の主枠底部の拡大図である。
【図3】図2のイの部位の拡大図である。
【図4】図3の矢印ロから主枠を視たときの図である。
【図5】図1のオイルパンが主枠に固定された一態様を示す図である。
【図6】図1のオイルパンが主枠に固定された別の態様を示す図である。
【図7】この発明の実施の形態2のエスカレータの要部拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、この発明の各実施の形態のエスカレータについて図に基づいて説明するが、各図において同一、または相当部材、部位については同一符号を付して説明する。
【0010】
実施の形態1.
図1はこの発明の実施の形態1のエスカレータを示す全体構成図、図2は図1のA−A線に沿った断面の主枠1底部の拡大図、図3は図2のイの部位の拡大図、図4は図3の矢印ロから主枠を視たときの図である。
乗客コンベアであるエスカレータでは、主枠1は、水平に配置された上トラス2と、上トラス2から下側に傾斜して延びた傾斜トラス3と、この傾斜トラス3の端部から水平に延びた下トラス4とから構成されている。主枠1は、断面Lの字形状の対向した弦材6と、各弦材6の内側に固定された垂直材7とを有している。
【0011】
上トラス2の上側には、駆動鎖歯車8が設けられ、下トラス4の上側には、従動鎖歯車9が設けられている。駆動鎖歯車8及び従動鎖歯車9には、無端状の踏段鎖10が巻き掛けられている。駆動鎖歯車8は、巻掛伝動機構5を介して駆動装置11と接続されている。
踏段鎖10には複数の踏段12が連結されている。この踏段12は、上トラス2、傾斜トラス3及び下トラス4に沿って平行に延びて設けられた踏段レール13により案内されて移動する。
【0012】
主枠1内の踏段12の下側全域には、踏段鎖10に供給された潤滑油を受け止め、貯留するオイルパン14が設けられている。
オイルパン14は、踏段12の循環移動の方向に対して垂直方向(幅方向)の両側縁部にそれぞれ全域にわたって起立した立上がり部15が形成されている。両立上がり部15には、踏段12の循環移動方向に沿って等間隔で対向した孔16がそれぞれ形成されている。また、オイルパン14の上端部及び下端部にも立上がり部17が形成されている。下端部の立上がり部17側では、潤滑油貯留部22が形成されている。
主枠1の弦材6の立上がり部18には、雌ねじが形成された、取付座であるねじ座19が溶接により固定されている。このねじ座19にオイルパン14の孔16を合わせ、締結部材であるボルト20を螺着することで、オイルパン14は主枠1の弦材6に固定される。
【0013】
上記構成のエスカレータでは、駆動鎖歯車9が駆動装置11によって駆動されて回転し、この回転により踏段鎖10が移動して連結された複数の踏段12が主枠1内を循環移動する。
移動する踏段鎖10、手摺駆動鎖21等には潤滑油が定期的に供給される。供給されて滴下する潤滑油は、飛散して、直接または踏段レール13、垂直材7を経てオイルパン14で受け止められ、オイルパン14を流下して潤滑油貯留部22に集められる。
【0014】
この実施の形態1のエスカレータによれば、薄板のステンレス鋼板製のオイルパン14は、踏段12の循環移動の方向に対して垂直方向の両側縁部に立上がり部15が形成されており、この立上がり部15は、主枠1の下部に形成されたねじ座19でボルト20を用いて固定されている。
従って、弦材に上向きフランジを形成した従来のエスカレータと比較して、主枠1の構成が簡単である。
また、主枠1に対するオイルパン14の固定は、エスカレータの現場での据付作業の際に、併せてボルト20の締結作業を行えばよく、また例えば保守点検の際に、オイルパン14の多少の移動をしなければならないときには、ボルト20を緩めることで対応することができる。
また、図5に示すように、オイルパン14の幅方向の寸法が所定の寸法よりも幾分大きい誤差寸法で形成されている場合でも、立上がり部15の根元部では屈曲変形して誤差寸法は吸収される。
また、図6に示すように、オイルパン14の幅方向の寸法が所定の寸法よりも幾分小さい誤差寸法で形成されている場合でも、立上がり部15の根元部では屈曲変形して誤差寸法は吸収される。
即ち、主枠1に対するオイルパン14の幅方向の寸法誤差に対する適応性が向上する。
【0015】
実施の形態2.
図7はこの発明の実施の形態2のエスカレータの要部拡大図である。
この実施の形態では、ボルト20の周縁部にはコーキング処理されたコーキング部23が形成されている。
他の構成は、実施の形態1と同じである。
この実施の形態では、実施の形態1と同様の効果を得ることができるとともに、ボルト20の周縁部にはコーキング部23が形成されているので、オイルパン14の孔16から潤滑油が洩れるのを防止することができる。
【0016】
なお、上記各実施の形態では、乗客コンベアであるエスカレータについて説明したが、動く歩道にも、この発明は適用することができる。
また、締結部材としてボルト20を用いた場合について説明したが、例えばねじであってもよい。
【符号の説明】
【0017】
1 主枠、8 駆動鎖歯車、9 従動鎖歯車、10 踏段鎖、12 踏段、14 オイルパン、15 立上がり部、16 孔、19 ねじ座(取付座)、20 ボルト(締結部材)、23 コーキング部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
主枠と、
この主枠の内側に設けられ駆動鎖歯車及び従動鎖歯車に巻き掛けされた無端状の踏段鎖と、
この踏段鎖に連結され駆動鎖歯車及び従動鎖歯車の回転により、前記主枠内を循環移動する複数の踏段と、
この踏段の下側全域に設けられ前記踏段鎖に供給された潤滑油を受け止め、貯留するオイルパンとを備えた乗客コンベアにおいて、
前記オイルパンは、前記循環移動の方向に対して垂直方向の両側縁部に立上がり部が形成されており、
この立上がり部は、前記主枠の下部に形成された取付座に締結部材を用いて固定されていることを特徴とする乗客コンベア。
【請求項2】
前記締結部材はボルトであり、このボルトが前記取付座に形成されたねじ孔に螺着されていることを特徴とする請求項1に記載の乗客コンベア。
【請求項3】
前記ボルトの周縁部にはコーキング処理が施されていることを特徴とする請求項2に記載の乗客コンベア。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2011−26017(P2011−26017A)
【公開日】平成23年2月10日(2011.2.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−170207(P2009−170207)
【出願日】平成21年7月21日(2009.7.21)
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【Fターム(参考)】