説明

乗用型機械の転倒防止装置、乗用型機械および動力摘採機

【課題】 高重心の乗用型機械が走行中に路面の傾斜や凹凸による急激な姿勢変化による転倒を防ぐことにより、その安全性を向上させることができる転倒防止装置を提供する。
【解決手段】 動力摘採機20に備えられるものであって、上下方向に回動可能な転倒防止バー11を係止する固定装置13と、固定装置13との係止が外れた状態において地面に張り出した転倒防止バー11とを備えており、転倒防止バー11が地面に張り出した状態を固定バー12によって保持する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高重心の乗用型機械の転倒を防止する転倒防止装置ならびにこの転倒防止装置を備えた乗用型機械および動力摘採機に関するものであり、特に茶葉の摘み取り用の動力摘採機に好適に用いられるものである。
【背景技術】
【0002】
高重心の乗用型機械としては、例えば茶葉摘み取り用の動力摘採機がある。この動力摘採機は、バリカン刃で刈り取った茶葉をその近傍に設けられた吹き出し口からの空気の流れによって集めるものであり、作業者の乗車位置の下方において茶木の茶葉を刈り取るものであるから、構造的に重心が高くなる。この動力摘採機の傾斜地の茶畑における作業への導入が進んでいるが、その重心が高いことから傾斜地の作業においては転倒が生じやすい。そして、動力摘採機は、通常、横方向に比べて前後方向の長さが短く構成されているから、特に前後方向への転倒が生じやすく、このことは傾斜地での作業における問題となっている。
また、動力摘採機を用いた茶葉の摘み採り作業は、作業者がその前端付近に座って行うものである。このため、動力摘採機が前方向へ倒れた場合、その外に投げ出された作業者の上に動力摘採機が乗り上げることとなる。このように、動力摘採機が作業中にバランスを崩して転倒することは、作業者の命に関わる大変に危険なことである。しかし、従来の動力摘採機(例えば特許文献1)には、作業時の転倒を防止するための手段を備えたものは存在しない。
また、高重心な乗用型機械としては、動力摘採機の他に建設用機械が挙げられる。建設用機械には転倒を防止するためのアウトリガーを装備したものがあるが(例えば特許文献2)、このアウトリガーは乗用型機械が静止した状態において使用されることが前提となっており、走行している状態における転倒を防止するための装置ではない。
以上のとおり、従来の高重心の乗用型機械では、走行中において、路面の傾斜が急であったり、路面に大きな凹凸が存在していたり、急発進や急停止をしたりした場合の急激な姿勢変化による転倒を防止するための転倒防止装置を備えたものは存在しない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2000−60267号公報
【特許文献2】特開平4−342645号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
そこで、本発明は、高重心の乗用型機械の姿勢変化による転倒を防いで、その安全性を向上させることができる転倒防止装置ならびに、この転倒防止装置を備えた乗用型機械および動力摘採機を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
請求項1に記載されている本発明の乗用型機械の転倒防止装置は、乗用型機械に備えられるものであって、上下方向に回動可能な支持部と、前記支持部を係止する固定部と、前記係止が外れた状態において前記支持部が地面に張り出した状態を保持する保持部とを備えていることを特徴としている。
なお、「上下方向に回動可能」とは、乗用型機械に装備されている状態において支持部の固定部への係止を外して支持部を地面に張り出させることにより、支持部の先端部の高さが低くなることをいう。例えば、支持部の先端部側から見た場合に、支持部を地面に張り出させることにより支持部の先端部が鉛直下方向に変位するものは、「上下方向に回動可能」なものに該当する。ただし、これに限られるものではなく、支持部の先端部の高さが低くなるものであればよいから、支持部の先端部側から見た場合に、支持部を地面に張り出させることにより、支持部の先端部が斜め下方向に変位するものであってもよい。支持部を「係止する」とは、その先端部の高さが、支持部が地面に張り出した状態よりも高い状態を維持することをいう。「地面に張り出した」とは、乗用型機械の転倒を防止できるように、乗用型機械が傾いたとき転倒する前に支持部が地面と接するように、支持部の先端が地面近傍に位置していることをいう。
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の乗用型機械の転倒防止装置において、前記保持部が上下方向に回動可能な突っ支い部を備えており、前記支持部が係止された状態においては、前記支持部が前記突っ支い部を係止し、前記支持部が地面に張り出した状態においては、前記突っ支い部が前記支持部の突っ支いとなることを特徴としている。
請求項3に記載の発明は、請求項2に記載されている乗用型機械の転倒防止装置において、前記支持部と前記突っ支い部とが同一平面上において回動可能であることを特徴としている。
請求項4に記載の発明は、請求項1〜3の何れかに記載されている乗用型機械の転倒防止装置において、前記支持部が前記固定部に係止されている状態において、前記支持部が地面に張り出す方向に前記支持部を付勢する付勢部を備えていることを特徴としている。
請求項5に記載の発明は、請求項1〜4の何れかに記載されている乗用型機械の転倒防止装置において、前記支持部が第1の鋸歯状部を備えており、前記突っ支い部が第2の鋸歯状部を備えており、前記第1の鋸歯状部と前記第2の鋸歯状部とが噛み合うことにより支持部が地面に張り出した状態が保持されることを特徴としている。なお、「鋸歯状」とは、鋸の歯のようにぎざぎざになっており、同一形状の凹凸が一定の同じ幅(ピッチ)で連続して形成されていることをいう。
請求項6に記載の発明は、請求項5に記載されている乗用型機械の転倒防止装置において、前記第2の鋸歯状部が、前記保持部先端に揺動可能に設けられていることを特徴としている。
請求項7に記載の発明は、請求項5または6に記載されている乗用型機械の転倒防止装置において、前記第1の鋸歯状部の長手方向の長さが、前記第2の鋸歯状部の長手方向の長さより長いことを特徴としている。なお、「鋸歯状部の長手方向」とは、同一形状の凹凸が連続して並んでいる方向をいう。
請求項8に記載の発明は、請求項1〜7の何れかに記載されている乗用型機械の転倒防止装置において、前記乗用型機械の傾きを検知する傾き検知部を備えており、前記固定部による前記支持部の係止が、前記傾き検知部の検知結果に基づいて外されることを特徴としている。
請求項9に記載の発明は、請求項1〜8の何れかに記載されている乗用型機械の転倒防止装置において、地面までの距離を計測する深さ検知部を備えており、前記固定部による前記支持部の係止が、前記深さ検知部の検知結果に基づいて外されることを特徴としている。
請求項10に記載の発明は、請求項1〜9の何れかに記載されている乗用型機械の転倒防止装置において、前記支持部の先端部付近に車輪が設けられていることを特徴としている。なお、「支持部の先端部付近に車輪が設けられている」とは、支持部の先端部に車輪が設けられている場合のみではなく、乗用型機械の転倒を防止するために支持部が地面と接するとき、地面と最初に接するのが車輪となる位置に車輪が設けられていることをいう。
【0006】
請求項11に記載の本発明の乗用型機械は、請求項1〜10の何れかに記載されている乗用型機械の転倒防止装置を備えていることを特徴としている。なお、本発明の乗用型機械としては、例えば茶葉の摘み取りに用いられる動力摘採機のような農業用乗用型機械が挙げられる。
【0007】
請求項12に記載の本発明の動力摘採機は、摘採部と、前記摘採部よりも高い位置に設けられた乗車部と、請求項1〜10の何れかに記載されている乗用型機械の転倒防止装置を備えていることを特徴としている。
【発明の効果】
【0008】
本発明の乗用型機械の転倒防止装置は、上下方向に回動可能な支持部を係止する固定部を備えているから、転倒の危険が低い状況においては支持部を上方向に回動させて係止しておくことにより、支持部の地面への張り出しによる作業性の低下や運搬の不都合を防止することができる。また、支持部は上下方向に回動可能であるから、係止を外すことにより重力によって地面に張り出させることができる。そして、保持部によりその状態を保持して、高重心な乗用型機械の姿勢変化による転倒を防止することができる。また、転倒防止装置は、簡単な構成によって構成されているから、従来の乗用型機械に対して容易に取り付けることができる。
本発明の乗用型機械の転倒防止装置は、保持部が上下方向に回動可能な突っ支い部を備え、支持部が係止された状態においては、支持部が突っ支い部を係止し、支持部が地面に張り出した状態においては、突っ支い部が支持部の突っ支いとなる構成とすれば、係合部が支持部を係止することにより同時に突っ支い部をも係止することができるから、転倒防止装置をコンパクトなものとすることができる。このような構成としては、例えば、支持部と突っ支い部とを同一平面上において回動可能としたものが挙げられる。
【0009】
本発明の乗用型機械の転倒防止装置が付勢部を備えた構成とすれば、たとえ、固定部による係止が外れた際、支持部が重力により地面へ張り出すことが困難な状況であったとしても、支持部を付勢して確実に地面に張り出させることができる。なお、支持部が係止された状態において、保持部の突っ支い部を支持部によって係止する構成とする場合、付勢部は突っ支い部を介して支持部を付勢することとなる。
【0010】
支持部が第1の鋸歯状部を備え、突っ支い部が第2の鋸歯状部を備え、第1の鋸歯状部と第2の鋸歯状部とが噛み合うことにより支持部が地面に張り出した状態が保持される構成とすれば、当該状態が複数の歯の噛み合いにより保持されることとなるから、確実かつ強固に支持部が地面に張り出した状態を保持することができる。
この場合、突っ支い部の第2の鋸歯状部を保持部先端に揺動可能に設ける構成とすれば、支持部が張り出した状態における第1の鋸歯状部の傾きに合わせて、第2の鋸歯状部を揺動させることができるから、第1の鋸歯状部と第2の鋸歯状部との噛み合いを確実なものとすることができる。なお、支持部と突っ支い部を同一平面において回動可能な構成とした場合、第2の鋸歯状部の揺動を当該平面と同一平面において回動するものとすることにより、第1の鋸歯状部と第2の鋸歯状部との噛み合いを確実にすることができる。
また、第1の鋸歯状部の長手方向の長さを第2の鋸歯状部の長手方向の長さよりも長くすれば、第1の鋸歯状部と第2の鋸歯状部とが噛み合う範囲を広くすることができる。
【0011】
本発明の乗用型機械の転倒防止装置が傾き検知部および/または深さ検知部を備え、固定部による支持部の係止が傾き検知部および/または深さ検知部の検知結果に基づいて外される構成とすれば、転倒の危険が検知されたときに自動的に支持部を地面に張り出させることができる。これにより、支持部を地面に張り出させていない状態で作業している場合でも、転倒の危険を検知した場合に自動的に支持部を地面に張り出させて乗用型機械が転倒することを未然に防止することができる。
【0012】
本発明の乗用型機械の転倒防止装置が支持部の先端部付近に車輪を備えた構成とすれば、例えば、地面に大きな穴が開いている場合に、車輪を支えとして、穴の上を乗用型機械が通過することが可能となる。また、転倒の危険を検知することにより自動的に支持部を地面に張り出させた場合、支持部の先端部付近の車輪が最初に接地することとなるから、支持部を地面に張り出させたときに支持部が地面に突き刺さって急停止することによる運転者に対する衝撃を緩和することができる。
【0013】
本発明の乗用型機械は本発明の転倒防止装置を備えているから、作業性の低下や運搬時に不都合が生じることを防止しつつ、高重心な乗用型機械の走行路面における傾斜や凹凸による急激な姿勢変化による転倒を防止することができる。
【0014】
本発明の動力摘採機は、摘採部よりも高い位置に設けられた乗車部を備えているから、構造的に重心が高くなるが、本発明の転倒防止装置を備えているから、作業性の低下や運搬時に不都合が生じることを防止しつつ、走行路面の傾斜、凹凸や急制動による急激な姿勢変化による転倒を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の実施の形態1の転倒防止装置が地面に張り出した状態における動力摘採機の概略を示す側面図
【図2】本発明の実施の形態1の転倒防止装置が地面に張り出した状態を示す側面図
【図3】本発明の実施の形態1の転倒防止装置の支持部が固定部に係止された状態における動力摘採機の概略を示す側面図
【図4】本発明の実施の形態1の転倒防止装置が係止された状態を示す側面図
【図5】本発明の実施の形態2の動力摘採機が斜面を移動している状態を示す側面図
【図6】図5の動力摘採機が斜面を移動しているときに転倒防止装置が地面に張り出した状態を示す側面図
【図7】本発明の実施の形態2の動力摘採機が平地を移動している状態を示す側面図
【図8】図7の転倒防止装置が平地を移動しているときに転倒防止装置が窪みを検知して地面に張り出した状態を示す側面図
【図9】本発明の実施の形態3の動力摘採機が斜面を移動している状態を示す側面図
【図10】図9の動力摘採機が斜面を移動しているときに一方の転倒防止装置が地面に張り出した状態を示す側面図
【図11】図9の動力摘採機が斜面を移動しているときに両方の転倒防止装置が地面に張り出した状態を示す側面図
【図12】本発明の実施の形態4の動力摘採機が斜面を移動している状態を示す正面図
【図13】図11の動力摘採機が斜面を移動しているときに一方の転倒防止装置が地面に張り出した状態を示す正面
【図14】図9の動力摘採機が斜面を移動しているときに両方の転倒防止装置が地面に張り出した状態を示す正面図
【図15】本発明の実施の形態4の動力摘採機の転倒防止装置の取り付け位置を説明する側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
(実施の形態1)
高重心の乗用型機械の一例である動力摘採機に本発明の第1の実施の形態の転倒防止装置を装着したものについて、図1〜図4に基づいて以下に説明する。
図1は、転倒防止装置10が地面に張り出した状態における本実施の形態の動力摘採機20の構成の概略を示す側面図である。同図に示すように、動力摘採機20は、転倒防止装置10、バリカン刃21、空気吹出部22、吸入口23、収葉部24、無限軌道25、運転席26および取付部27を備えている。
【0017】
バリカン刃21は茶葉を刈り取るものであり、バリカン刃21により刈り取られた茶葉はその近傍に設けられている空気吹出部22から吹き出された空気の流れによって、吸入口23を通って収葉部24に収容される。空気吹出部22は、横方向に複数の吹き出し口が並んだガンゼキ状の形状(図12参照)をしている。なお、図1では図面手前側から図面奥側が「横方向」になるから、手前側から奥側に複数の吹き出し口が並んでいる。バリカン刃21、空気吹出部22および吸入口23よりなる茶葉の刈取り機構は、茶木の高さに応じて茶葉を刈り取ることができるように、使用に際して上下方向に昇降可能なものとなっている。無限軌道25は、動力摘採機20の両側に1つずつ設けられており、2つの無限軌道25の駆動方向を制御することにより、動力摘採機20の進行方向を制御することができる。例えば、2つの無限軌道25を同方向に駆動することにより、動力摘採機20をその方向に移動することができ、1つの無限軌道25のみを駆動することにより、動力摘採機20の向きを変えることができる。
【0018】
また、本実施の形態の動力摘採機20は、公道走行ができないため、茶畑までの輸送にはトラックを用いる必要がある。また、茶畑での作業における動力摘採機20の旋回時などの取り回しを考慮すると、動力摘採機20の前後方向の長さを極力小さくすることが好ましい。これらの理由から、茶葉刈取り用の動力摘採機20は、無限軌道25の長さを小さくすることにより、前後方向の長さを小さくしている。この結果として、動力摘採機20の前後方向への転倒が生じやすくなる。さらに、茶木を跨いで作業することから、バリカン刃21および空気吹出部22よりも高い位置に運転席26を配置しているため、重心が高くなる。また、茶木の成長に合わせてバリカン刃21を含んだ茶葉の刈取り機構を高くした場合には、動力摘採機20の重心がさらに高くなる。このような理由から、動力摘採機20は構造的にその重心が高くなり、特に斜面に形成された茶畑における作業に用いられる場合に転倒が生じやすい。
【0019】
そこで、本実施の形態の動力摘採機20には、その両側の無限軌道25を覆う部分の前端に設けられた取付部27に転倒防止装置10が取り付けられている。この転倒防止装置10は、転倒防止バー11、固定バー12、固定装置13およびチェーン14を備えており、固定バー12およびチェーン14によって、転倒防止バー11が動力摘採機20の前端から地面に張り出した状態となるように保持される。この転倒防止バー11により、動力摘採機20が前方向に傾くことを防止してその転倒を未然に防ぐことができる。
【0020】
図2は、転倒防止装置10が地面に張り出した状態を示す側面図である。同図に示すように、転倒防止バー11は、その先端部11Aに車輪15を備えている。そして、その基端部11Bにおいて、固定バー12および固定装置13の何れとも係合していない状態において上下方向に回動可能となるように、取付部27下端の取付部27Aに蝶着されている。なお、「蝶着」とは、蝶番のように回動する形で着けられていることをいう。
転倒防止バー11の先端部11Aに車輪15が設けられていることにより、動力摘採機20が前傾したときに車輪15が最初に地面と接して回転するから、転倒防止バー11の先端部11Aが地面と接することによって急停止することを防止できる。なお、車輪15を設ける位置は、先端部11Aに限られるものではなく、動力摘採機20が前傾したときに車輪15が最初に地面と接することができるような位置とすれば、前述したように急停止を防止することができる。
なお、本実施の形態の車輪15は前後方向に回転可能なものであるが、前後方向の他に全方向に回転する構成としてもよい。このようにすれば、動力摘採機20がその前または後ろに進行している場合のみならず、方向転換する際に転倒防止バー11の先端部11Aが地面と接することによる抵抗を車輪15の回転により小さくして、方向転換をスムーズにすることが可能となる。例えば、転倒防止バー11の先端部11Aの地面側に突き出るように枢支された軸に車輪15を設けることにより、車輪15を全方向に回転させることができる。
【0021】
転倒防止バー11は、上下方向に回動可能なように動力摘採機20に蝶着されている。また、転倒防止バー11の先端部11A付近と、取付部27先端付近の固定装置13を取り付ける取付部27C付近とがチェーン14によって連結されているから、転倒防止バー11が重力の作用により移動する下方向の回動範囲を一定範囲として、転倒防止バー11の先端部11Aを所定の範囲内に保持することができる。これにより、転倒防止バー11が下方向に移動する範囲を制限しない場合に生じうる、先端部11Aが低くなりすぎて前方の窪みに落ち込んで転倒防止バー11が転倒防止機能を果たさなくなる問題の発生を防ぐことができる。本実施の形態の転倒防止装置10では、転倒防止バー11が無限軌道25の長手方向と略平行となる長さのチェーン14を用いている。
なお、本実施の形態ではチェーン14を用いているが、転倒防止バー11の回動範囲を制限する手段はこれに限られるものではない。例えば、転倒防止バー11と動力摘採機20との蝶着部に、転倒防止バー11の回動を所定位置で止める部材を設けて、転倒防止バー11の回動範囲を制限することとしてもよい。
【0022】
転倒防止バー11は、地面に張り出した状態において地面と反対となる側に第1の鋸歯状部16を備えている。この第1の鋸歯状部16は、固定バー12の先端部12Aに揺動可能に設けられた第2の鋸歯状部17と噛み合う。この噛み合いにより、転倒防止バー11と固定バー12とが係合し、転倒防止バー11が上方すなわち固定バー12側に動かないよう係止される。すなわち、第1の鋸歯状部16と第2の鋸歯状部17とが噛み合うこと(以下、適宜「噛合」という。)により、固定バー12が転倒防止バー11の突っ支い棒の役割を果たし、転倒防止バー11が上(固定バー12側)方向に動くことができないようになる。
第1の鋸歯状部16は、その形状(幅および深さ)が第2の鋸歯状部17との噛合に適したものとなっている。なお、図2では、説明の便宜のため、第1の鋸歯状部16と第2の鋸歯状部17における鋸歯の間隔(ピッチ)を広く表しているが、両者の噛合を良好なものとするため実際には鋸歯の間隔がより狭いものとなっている。
図2に示すように、チェーン14が張った状態で、第1の鋸歯状部16と第2の鋸歯状部17とが噛合すれば、上方向および下方向の何れの方向にも動かないように転倒防止バー11を所定位置に保持することができる。ただし、チェーン14が張っていない状態においても噛合するように、第1の鋸歯状部16の長手方向(図2では左右方向)の長さが十分に長いものとなっている。そして、チェーン14が張っていない状態であっても、第1の鋸歯状部16と第2の鋸歯状部17とが噛合することで、固定バー12が転倒防止バー11の突っ支い棒の役割を果たすから、転倒防止バー11が上方向に動くことを防止できる。したがって、チェーン14が張っていない状態で第1の鋸歯状部16と第2の鋸歯状部17とが噛合したときでも、転倒防止バー11が地面に張り出した状態を維持して、動力摘採機20の前方向の長さを長くすることができるから、転倒防止装置10によって動力摘採機20の転倒を防止することができる。
【0023】
転倒防止バー11は、先端部11Aの近傍に地面と反対方向に突出する係止部18を備えている。そして、係止部18には、転倒防止バー11を固定装置13に係止するために用いられる孔18Aが、固定装置13の突出部13Aに対応する場所に設けられている。この孔18Aに突出部13Aが嵌ることによって、転倒防止バー11が固定装置13に係止されることにより、転倒防止バー11が下方向に回動しないように維持される(図3、図4参照)。固定装置13としては、例えば、電気的エネルギーを機械的直線運動に変換して、突出部13Aの出し入れを制御するソレノイドを用いることができる。
【0024】
固定バー12の先端部12Aには、第2の鋸歯状部17が遊動可能な状態で設けられている。そして、固定バー12は、転倒防止バー11と係合していない状態において上下方向に回動可能なように、基端部12Bで取付部27の長手方向中程の取付部27Bに蝶着されている。また、固定バー12の回動により形成される平面が、転倒防止バー11の回動により形成される平面と略同一平面となるようにされている。このため、転倒防止バー11が地面に張り出した状態において、固定バー12の先端部12Aに設けられた鋸歯状部17を転倒防止バー11の鋸歯状部16上に位置させることができる。
また、第2の鋸歯状部17も、その遊動により形成される平面が転倒防止バー11の回動により形成される平面と略同一平面となるように設けられている。このため、鋸歯状部17が遊動することにより、鋸歯状部16の長手方向の傾きに適合して、鋸歯状部16に確実に噛合することができる。
【0025】
図3は転倒防止装置10の転倒防止バー11が固定装置13に係止された状態における動力摘採機20の構成の概略を示す側面図である。同図に示すように、転倒防止装置10は、係止部18の孔18Aに突出部13Aを嵌めることにより、転倒防止バー11を固定装置13に係止すると共に、固定バー12を転倒防止バー11に係止することができる。これにより、転倒防止装置10を作動させない状態においては、転倒防止バー11および固定バー12を固定装置13により係止して、転倒防止装置10がコンパクトにたたまれた状態(以下、適宜「非作動状態」という。)を維持することができる。したがって、転倒防止装置10の転倒防止バー11を地面に張り出させた状態では動力摘採機20の取り回しに不都合がある場合や、動力摘採機20を輸送する場合には、転倒防止装置10を非作動状態として動力摘採機20の前後方向の長さを短くすることができる。
【0026】
図4は地面に張り出していない状態の動力摘採機20を示す側面図である。同図に示すように、転倒防止バー11および固定バー12はいずれも、基端部11Bおよび基端部12Bにおいて取付部27に蝶着されており、同一平面上で回動可能となっている。そして、固定バー12は、転倒防止バー11と固定装置13との間に設けられているから、転倒防止バー11を固定装置13により係止することにより、転倒防止バー11により固定バー12を係止することができる。
そして、転倒防止バー11を上方向に回動させて先端部11Aを持ち上げた状態で、係止部18の孔18Aに固定装置13の突出部13Aを嵌めることにより、転倒防止バー11を係止すると共に、第2の鋸歯状部17を転倒防止バー11の車輪15で押さえて係止して、転倒防止バー11と固定装置13との間に固定バー12を係止することができる。
【0027】
また、このように固定バー12が転倒防止バー11によって係止されている状態においては、ばね部19によって地面に張り出す方向に固定バー12が付勢されている。このため、固定装置13による転倒防止バー11の係止を外すと、ばね部19によって固定バー12に加えられた力が、歯状部17および車輪15を介して転倒防止バー11に伝えられる。したがって、突出部13と係止部18との係合を外すことにより、転倒防止バー11および固定バー12を確実に地面に張り出させることができる。
なお、本実施の形態においては固定装置13の突出部13Aの出し入れを手動で行うこととしている。このため、転倒の危険のある斜面における作業の際には、転倒の危険を未然に防止するために、手動により予め転倒防止装置10の転倒防止バー11を地面に張り出させておけばよい。また、平地における作業のように転倒する危険のない作業の際には、動力摘採機20の前後方向の長さが長くなって操作性が低下することを防ぐために、回動させることにより先端部11Aおよび先端部12Aを持ち上げて転倒防止バー11および固定バー12を固定装置13により係止しておけばよい。
【0028】
(実施の形態2)
図5は、本発明の実施の形態の転倒防止装置30を備えた動力摘採機40が斜面を移動している状態の概略を示す側面図である。同図に示すように、本実施の形態の動力摘採機40は、傾斜センサー31、距離計32およびコンピュータ33を備えた転倒防止装置30を備えている点において実施の形態1の動力摘採機20と異なっているが、他の構成は動力摘採機20と共通である。このため、機能が共通する部材については同じ番号を用いて表し、説明を省略する。
【0029】
傾斜センサー31は、動力摘採機40の傾斜を測定するものであり、距離計32は、距離計32から地面までの距離を測定するものである。コンピュータ33は、傾斜センサー31および距離計32の測定結果に基づいて固定装置13を制御するものである。コンピュータ33は、傾斜センサー31、距離計32および固定装置13と有線または無線により電気的な信号を授受するものである。
【0030】
図5に示すように、傾斜センサー31は、動力摘採機40の運転席26付近に設けられており、動力摘採機40の水平面Lに対する傾きRを検知し、検知された傾きRの情報をコンピュータ33に送る。コンピュータ33は、傾斜センサー31から送られた傾きRが所定値以上であると自動的に、図中に破線矢印Aで示したように固定装置13を制御して突出部13Aを引っ込める。これにより、固定装置13の転倒防止バー11および固定バー12に対する係止が外され、図中に破線矢印Bで示したように、重力により転倒防止バー11が地面方向に回動し、動力摘採機40の前方に張り出す。また固定装置13による転倒防止バー11の係止が外れることにより、固定バー12も転倒防止バー11同様に重力により地面方向に回動する。この結果、転倒防止装置30が作動して図6に示した状態となる。
【0031】
図6は、動力摘採機40が斜面を移動しているときに転倒防止装置30が作動した状態を示す側面図である。同図に示すように、固定バー12の先端部12Aに揺動可能に設けられている第2の鋸歯状部17が、転倒防止バー11の第1の鋸歯状部16上でこれと噛合することにより、固定バー12が転倒防止バー11の突っ支い棒として機能する。なお、仮に、転倒防止バー11と固定バー12が回動した最初の時点において、第1の鋸歯状部16と第2の鋸歯状部17とが噛合していない場合も、第2の鋸歯状部17が揺動可能であることから、転倒防止バー11が上方に回動することにより、第1の鋸歯状部16と第2の鋸歯状部17とが容易かつ確実に噛合する。したがって、地面に張り出した転倒防止バー11により動力摘採機40が前方に傾くことを防ぎ、動力摘採機40に乗る作業者の落下および動力摘採機40の転倒を防止することができる。
このように、本実施の形態の動力摘採機40は、傾斜が一定値以上となったことを傾斜センサー31が検知したときに自動的に転倒防止バー11が地面に張り出すものであるから、転倒防止装置30を非作動状態として作業しつつ、転倒の危険を検知した場合に転倒防止装置30を自動的に作動させることにより転倒事故を防止することができる。
【0032】
図7は、本実施の形態の動力摘採機40が平地を移動している状態を示す側面図である。同図に示すように、動力摘採機40は距離計32を備えており、距離計32は無限軌道25を覆う部分の側面に取り付けられている。距離計32は、距離計32と地面との距離Dを検知し、検知された距離Dをコンピュータ33に送る。そして、コンピュータ33は、距離計32から送られた距離Dが所定値以上であると自動的に、図中に破線矢印Aで示したように固定装置13を制御して突出部13Aを引っ込める。これにより、図中に破線Bで示したように、固定装置13の転倒防止バー11および固定バー12に対する係止が外され、重力およびばね部19の力により転倒防止バー11が動力摘採機40の前方に張り出す。この結果、転倒防止装置30が作動して図8に示した状態となる。
【0033】
図8は、動力摘採機40が平面を移動している場合に前方の窪みを検知して転倒防止装置30が作動した状態を示す側面図である。同図に示すように、距離計32が転倒の危険のある窪みを検知した場合には、自動的に地面に転倒防止バー11が張り出すことにより、動力摘採機40が前方に転倒することを未然に防ぐことができる。
また、転倒防止バー11の先端部11Aに車輪15が設けられているから、転倒防止装置30が作動していない状態では動力摘採機40が通過できない窪みの上を通過することができる。
なお、転倒防止バー11および固定バー12は、平地においては、係止部18と固定装置13との係合が外れると、重力により回動するようになっているが、例えば、動力摘採機40が斜面を登っている際、距離計32が窪みを検知した場合のように、重力により転倒防止バー11及び固定バー12が回動することが困難な状況もありえる。しかし、転倒防止バー11および固定バー12は、ばね部19により破線Bの方向に付勢されているから、前述したように重力による回動が困難な状況においても転倒防止バー11を確実に地面に張り出させることができる。
【0034】
前述した実施の形態においては、傾斜センサー31または距離計32が検知した傾斜角Rまたは距離Dが所定の値以上になった場合に、固定装置13による転倒防止バー11の係止を外して転倒防止バー11を地面に張り出させることとしている。しかし、本発明の転倒防止装置は、傾斜センサー31および/または距離計32の検知結果に基づいて、コンピュータ33が転倒の危険があると判断した場合に転倒防止バー11を地面に張り出させるものであればよく、コンピュータ33が転倒の危険があると判断するのは上記の場合に限られるものではない。例えば、傾斜角Rおよび距離Dはいずれも所定の値以上ではないとしても、傾斜角Rと距離Dとの組み合わせに基づいて転倒の危険があると判断することとしてもよい。また、動力摘採機40の制動状況をも考慮して、例えば、急制動がなされたことが検知された場合に転倒の危険があると判断することとしてもよい。
なお、傾斜センサー31、距離計32は何れも公知の傾斜センサー、距離計を用いればよい。距離計32としては、例えば、レーザー式の距離計を用いることができる。
【0035】
前述した実施の形態の動力摘採機は前方に倒れる危険が高い構造のものであったから、動力摘採機の前端両側に転倒防止装置を設けている。しかし、本発明の乗用型機械および動力摘採機において、本発明の転倒防止装置を設ける位置は前記の位置に限られず、使用に際して転倒の危険がある方向への傾きを抑制するために好適な位置に設ければよい。例えば、進行方向の前のみでなく後ろにも倒れる危険がある場合には、乗用型機械および動力摘採機の前後に転倒防止装置を設ければよい。
【0036】
(実施の形態3)
図9は、転倒防止装置30をその前後に備えた本実施の形態の動力摘採機50が斜面を移動している状態の概略を示す側面図である。同図に示すように、本実施の形態の動力摘採機50は、その前後に転倒防止装置30Fおよび転倒防止装置30Bを備えている点において実施の形態2の動力摘採機40と異なっているが、他の構成は動力摘採機40と共通である。このため、機能が共通する部材については同じ番号を用いて表し、説明を省略する。
同図に示すように、コンピュータ33は、傾斜センサー31から送られた傾きRが所定値以上でありかつ後ろ方向への傾きであるときには、自動的に図中に破線矢印Aで示したように、転倒防止装置30Bの固定装置13を制御して突出部13Aを引っ込める。これにより、動力摘採機50の後端部に備え付けられている転倒防止装置30Bの固定装置13の転倒防止バー11および固定バー12に対する係止が外され、図中に破線矢印Bで示したように、重力により転倒防止バー11が地面方向に回動し、動力摘採機50の後方に張り出す。また固定装置13による転倒防止バー11の係止が外れることにより、固定バー12も転倒防止バー11同様に重力により地面方向に回動する。この結果、転倒防止装置30Bが作動して図10に示した状態となる。また、コンピュータ33は、傾斜センサー31から送られた傾きRが所定値以上であり、それが前方向であるときには、実施の形態2同様、自動的に転倒防止装置30Fを作動させる(図5、図6参照)。
なお、コンピュータ33は、傾きRの方向が前方向または後ろ方向の何れであるかに応じて、転倒防止装置30Aおよび転倒防止装置30Bのうち、転倒防止に有効な一方のものを作動させることとすればよい。また、図11に示すように、傾斜センサー31により傾きRが所定値以上であることを検知したときに、その方向の前後に関わらず、転倒防止装置30Fおよび転倒防止装置30Bの両方を作動させることとしてもよい。
【0037】
以上のように、動力摘採機40の前方に転倒防止装置30Fを備えるのみでなく、後方にも転倒防止装置30Bを備え、コンピュータ33が傾きRの方向に応じて、転倒防止装置30Fおよび/または転倒防止装置30Bを作動させることにより、動力摘採機50が前後方向に転倒することを防止することができる。なお、本実施の形態の動力摘採機50には、その両側の無限軌道25を覆う部分の前端および後端に設けられた取付部27に転倒防止装置30Fおよび転倒防止装置30Bが取り付けられている。しかし、これらが取り付けられる位置は、これに限られるものではなく、転倒防止装置30Fおよび転倒防止装置30Bが張り出すことによって、動力摘採機50の前後方向への転倒を効果的に防止することができる位置であればよい。
また、本実施の形態では、転倒の危険を検知した場合に自動的に作動する転倒防止装置30Fおよび転倒防止装置30Bを備えた構成について説明したが、これらの代わりに、実施の形態1において説明した固定装置13の突出部13Aの出し入れを手動で行う転倒防止装置10を備えたものとして構成してもよい。
【0038】
(実施の形態4)
図12は、転倒防止装置30をその左右に備えた本実施の形態の動力摘採機60が斜面を移動している状態の概略を示す正面図である。同図に示すように、本実施の形態の動力摘採機60は、その左右に転倒防止装置30Lおよび転倒防止装置30Rを備えている点において実施の形態2の動力摘採機40と異なっているが、他の構成は動力摘採機40と共通である。このため、機能が共通する部材については同じ番号を用いて表し、説明を省略する。
同図に示すように、コンピュータ33は、傾斜センサー31から送られた横方向の傾きR’が所定値以上であり、かつ運転席26からみて左方向への傾きであるときには、自動的に転倒防止装置30Lの固定装置13を制御して突出部13Aを引っ込める。これにより、動力摘採機60の運転席26から見て左側に備え付けられている転倒防止装置30Lの固定装置13の転倒防止バー11および固定バー12に対する係止が外され、図中に破線矢印Bで示したように、重力により転倒防止バー11が地面方向に回動し、動力摘採機60の左側方に張り出す。また固定装置13による転倒防止バー11の係止が外れることにより、固定バー12も転倒防止バー11同様に重力により地面方向に回動する。この結果、転倒防止装置30Lが作動して図13に示した状態となる。また、コンピュータ33は、傾斜センサー31から送られた傾きR’が所定値以上であり、それが右方向であるときには、前述した転倒防止装置30L同様に、自動的に転倒防止装置30Rを作動させる。
なお、コンピュータ33は、傾きR’の方向に応じて、転倒防止装置30Lおよび転倒防止装置30Rのうち、転倒防止に有効な一方のものを作動させることとすればよいが、図14に示すように、傾斜センサー31により傾きR’が所定値以上であることを検知したときには、転倒防止装置30Lおよび転倒防止装置30Rの両方を作動させることとしてもよい。
【0039】
以上のように、動力摘採機60の左および右方向に張り出す転倒防止装置30Lおよび転倒防止装置30Rを備えておくことにより、動力摘採機60が左右方向に転倒することを防止することができる。
なお、本実施の形態の動力摘採機60は、図15に示したように、転倒防止装置30Lが、動力摘採機60の両側の無限軌道25を覆う部分側面の前後方向の中央付近25Cに設けられた取付部27に取り付けられている。しかし、転倒防止装置30Lの取り付け位置および個数は、これに限られるものではなく、転倒防止装置30Lが張り出すことにより、動力摘採機60の左方向への転倒を効果的に防止することができるものであればよい。たとえば、側面の前端25Fおよび/または側面の後端25Rに1個(合計1個または2個)設けることとしてもよい。また、反対側の転倒防止装置30Rの取り付け位置および個数についても、転倒防止装置30Lについて前述したことと同様、転倒防止装置30Rが張り出すことにより、動力摘採機60の右方向への転倒を効果的に防止することができるものであればよい。
この場合、コンピュータ33は、たとえば、転倒のおそれのある側の複数を同時に作動させたり、転倒防止に有効な一つのみを作動させたり、左右に備えているものの全てを作動させるように制御したりすることにより、動力摘採機60の転倒を防止することができる。
なお、本実施の形態では、転倒の危険を検知した場合に自動的に作動する転倒防止装置30を備えた構成について説明したが、転倒防止装置30の代わりに、実施の形態1において説明した固定装置13の突出部13Aの出し入れを手動で行う転倒防止装置10を備えたものとして構成してもよい。
【0040】
また、本実施の形態として説明した動力摘採機60に、実施の形態3において説明した、転倒防止装置30Fおよび/または転倒防止装置30Bを組み合わせたものとして構成することもできる。これにより、左右方向の転倒に加えて、前および/または後方向の転倒をも防止することができる。
また、実施の形態3として説明した動力摘採機50に、本実施の形態において説明した転倒防止装置30Lおよび/または転倒防止装置30Rを組み合わせたものとして構成することもできる。これにより、前後方向の転倒に加えて、運転席26から見て右および/または左方向の転倒をも防止することができる。
【産業上の利用可能性】
【0041】
本発明の乗用型機械の転倒防止装置は、これまで特に設けられていなかった、動力摘採機等の高重心な乗用型機械の走行路面の傾斜や凹凸による急激な姿勢変化や急発進・急停止による前後方向への転倒を防止するものとして用いることができる。また、現行の機械に対して、その構造を大きく変更することなく装備することができる。
【符号の説明】
【0042】
10、30、30F、30B、30L、30R 転倒防止装置
11 転倒防止バー(支持部)
12 固定バー(保持部、突っ支い部)
13 固定装置(固定部)
14 チェーン(保持部)
15 車輪
16 第1の鋸歯状部
17 第2の鋸歯状部
18 係合部
19 ばね部(付勢部)
20、40、50、60 動力摘採機(乗用型機械)
21 バリカン刃(摘採部)
22 空気吹出部(摘採部)
26 運転席(乗車部)
31 傾斜センサー(傾き検知部)
32 距離計(深さ検知部)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
乗用型機械に備えられるものであって、上下方向に回動可能な支持部と、前記支持部を係止する固定部と、前記係止が外れた状態において前記支持部が地面に張り出した状態を保持する保持部とを備えていることを特徴とする乗用型機械の転倒防止装置。
【請求項2】
前記保持部が上下方向に回動可能な突っ支い部を備えており、前記支持部が係止された状態においては、前記支持部が前記突っ支い部を係止し、前記支持部が地面に張り出した状態においては、前記突っ支い部が前記支持部の突っ支いとなることを特徴とする請求項1に記載の乗用型機械の転倒防止装置。
【請求項3】
前記支持部と前記突っ支い部とが同一平面上において回動可能であることを特徴とする請求項2に記載の乗用型機械の転倒防止装置。
【請求項4】
前記支持部が前記固定部に係止されている状態において、前記支持部が地面に張り出す方向に前記支持部を付勢する付勢部を備えていることを特徴とする請求項1〜3の何れかに記載の乗用型機械の転倒防止装置。
【請求項5】
前記支持部が第1の鋸歯状部を備えており、前記突っ支い部が第2の鋸歯状部を備えており、前記第1の鋸歯状部と前記第2の鋸歯状部とが噛み合うことにより支持部が地面に張り出した状態が保持されることを特徴とする請求項1〜4の何れかに記載の乗用型機械の転倒防止装置。
【請求項6】
前記第2の鋸歯状部が、前記保持部先端に揺動可能に設けられていることを特徴とする請求項5に記載の乗用型機械の転倒防止装置。
【請求項7】
前記第1の鋸歯状部の長手方向の長さが、前記第2の鋸歯状部の長手方向の長さより長いことを特徴とする請求項5または6に記載の乗用型機械の転倒防止装置。
【請求項8】
前記乗用型機械の傾きを検知する傾き検知部を備えており、前記固定部による前記支持部の係止が、前記傾き検知部の検知結果に基づいて外されることを特徴とする請求項1〜7の何れかに記載の乗用型機械の転倒防止装置。
【請求項9】
地面までの距離を計測する深さ検知部を備えており、前記固定部による前記支持部の係止が、前記深さ検知部の検知結果に基づいて外されることを特徴とする請求項1〜8の何れかに記載の乗用型機械の転倒防止装置。
【請求項10】
前記支持部の先端部付近に車輪が設けられていることを特徴とする請求項1〜9の何れかに記載の乗用型機械の転倒防止装置。
【請求項11】
請求項1〜10の何れかに記載されている乗用型機械の転倒防止装置を備えていることを特徴とする乗用型機械。
【請求項12】
摘採部と、前記摘採部よりも高い位置に設けられた乗車部と、請求項1〜10の何れかに記載されている乗用型機械の転倒防止装置を備えていることを特徴とする動力摘採機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公開番号】特開2011−177124(P2011−177124A)
【公開日】平成23年9月15日(2011.9.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−45737(P2010−45737)
【出願日】平成22年3月2日(2010.3.2)
【出願人】(501203344)独立行政法人農業・食品産業技術総合研究機構 (827)
【Fターム(参考)】