説明

乗用型田植機の苗植付装置

【課題】 乗用型田植機の苗植付装置において、横送り軸に縦送りアームを備えた場合、右及び左の入力部が縦送りアームにより駆動される際に、横送り軸に大きな負荷が掛からないようにする。
【解決手段】 横送り軸33の右及び左側部を支持部材28,30,31により回転自在に支持して、横送り軸33が回転駆動されることにより、送り部材34,35が横送り軸33に沿って往復横送り駆動されて、苗のせ台22が往復横送り駆動されるように構成する。右及び左の支持部材28,30,31から右及び左の外側に突出した横送り軸33の部分に縦送りアーム56を固定して、苗のせ台22の縦送り機構の入力部を苗のせ台22の右及び左側部に備え、右及び左の縦送りアーム56の右及び左の横外側に右及び左の入力部を配置する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、乗用型田植機の苗植付装置の構造に関する。
【背景技術】
【0002】
乗用型田植機の苗植付装置において、苗のせ台を所定のストロークで往復横送り駆動する構造及び苗のせ台の縦送り機構を駆動する構造に関し、例えば特許文献1に開示されているように、横送り軸を回転自在に支持して、横送り軸に送り部材を取り付け、送り部材を苗のせ台に接続して、横送り軸が回転駆動されることにより、送り部材が所定のストロークで横送り軸に沿って往復横送り駆動されて、苗のせ台が所定のストロークで往復横送り駆動されるように構成したものがある。
特許文献1の構造では、横送り軸の左端部に1つの縦送りアームを固定し、苗のせ台に備えられた縦送り機構の入力部を苗のせ台に2つ備えて、苗のせ台が所定のストロークの右又は左の端部に達すると、右又は左の入力部が縦送りアームの位置に達し縦送りアームにより駆動されて、苗のせ台の縦送り機構が駆動されるように構成されている。
【0003】
【特許文献1】実用新案登録第2548430号(段落番号[0009]、図3)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
乗用型田植機の苗植付装置において、苗のせ台を所定のストロークで往復横送り駆動する構造及び苗のせ台の縦送り機構を駆動する構造に関し、特許文献1の構造では、横送り軸の左端部の1つの縦送りアームにより、苗のせ台の右及び左の入力部が駆動される構造となっている。これにより、例えば右の入力部が縦送りアームに達していると、次に苗のせ台が所定のストロークだけ右方に横送り駆動されて、左の入力部が縦送りアームに達することになる。
【0005】
前述のように苗のせ台が右方に横送り駆動されると、右の入力部が横送り軸の左端部(縦送りアーム)から横送り軸の左右中央側に移動する状態となるので、右の入力部が横送り軸の支持部材に干渉しないように、横送り軸の左端部(縦送りアーム)と横送り軸の支持部材とを充分に離す必要がある。しかしながら、このように構成すると、横送り軸の支持部材から横送り軸を充分に長く片持ち状に突出させる必要があるので、右及び左の入力部が縦送りアームにより駆動される際に、横送り軸に大きな負荷が掛かる。
本発明は乗用型田植機の苗植付装置において、横送り軸に縦送りアームを備えた場合、右及び左の入力部が縦送りアームにより駆動される際に、横送り軸に大きな負荷が掛からないように構成することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
[I]
(構成)
本発明の第1特徴は、乗用型田植機の苗植付装置において次のように構成することにある。
回転駆動される横送り軸の右及び左側部を支持部材により回転自在に支持して、右及び左の支持部材の間の横送り軸の部分に送り部材を取り付け、送り部材を苗のせ台に接続する。横送り軸が回転駆動されることにより、送り部材が所定のストロークで横送り軸に沿って往復横送り駆動されて、苗のせ台が所定のストロークで往復横送り駆動されるように構成する。右及び左の支持部材から右及び左の外側に突出した横送り軸の部分に縦送りアームを固定して、苗のせ台に備えられた縦送り機構の入力部を苗のせ台の右及び左側部に備え、右及び左の縦送りアームの右及び左の横外側に右及び左の入力部が位置するように構成する。苗のせ台が所定のストロークの右又は左の端部に達すると、右又は左の入力部が右又は左の縦送りアームの位置に達し右又は左の縦送りアームにより駆動されて、縦送り機構が駆動されるように構成する。
【0007】
(作用)
本発明の第1特徴によると、例えば右の入力部が右の縦送りアームに達している状態で左の入力部は左の縦送りアームから左の横外側に位置している。この状態から、苗のせ台が所定のストロークだけ右方に横送り駆動されて、左の入力部が左の縦送りアームに達するのであり、右の入力部は右の縦送りアームから右の横外側に離れる。
【0008】
従って、本発明の第1特徴によると、苗のせ台が所定のストロークで往復横送り駆動されるのに伴って、右及び左の入力部が右及び左の縦送りアームに右及び左の横外側から接近する状態となり、右及び左の入力部が右及び左の縦送りアームを越えて横送り軸の左右中央側に移動する状態は生じない。これにより、横送り軸の右及び左側部を支持部材により回転自在に支持した場合、右及び左の支持部材から横送り軸を大きく突出させる必要はなく、右及び左の入力部が右及び左の支持部材に干渉するような状態は生じない。
【0009】
本発明の第1特徴によると、横送り軸の右及び左側部を支持部材により回転自在に支持して、右及び左の支持部材の間の横送り軸の部分に送り部材を取り付け、送り部材を苗のせ台に接続している。
これにより、右及び左の支持部材により安定して支持された横送り軸の部分に送り部材が取り付けられた状態となっているので、苗のせ台の往復横送り駆動が安定して行われるようになる。
【0010】
(発明の効果)
本発明の第1特徴によると、乗用型田植機の苗植付装置において、横送り軸の右及び左側部を支持部材により回転自在に支持し、横送り軸に縦送りアームを備えた場合、右及び左の支持部材から横送り軸を大きく突出させる必要がなくなり、右及び左の入力部が右及び左の縦送りアームにより駆動される際に、横送り軸に大きな負荷が掛からないようにすることができて、横送り軸の耐久性を向上させることができた。
本発明の第1特徴によると、右及び左の支持部材により安定して支持された横送り軸の部分に送り部材が取り付けられた状態となり、苗のせ台の往復横送り駆動が安定して行われるようになって、苗植付装置の植付性能の向上を図ることができた。
【0011】
[II]
(構成)
本発明の第2特徴は、本発明の第1特徴の乗用型田植機の苗植付装置において次のように構成することにある。
合成樹脂製のブッシュを介して、横送り軸を前記右及び左の支持部材に回転自在に支持する。
【0012】
(作用)
本発明の第2特徴によると、本発明の第1特徴と同様に前項[I]に記載の「作用」を備えており、これに加えて以下のような「作用」を備えている。
本発明の第2特徴によると、合成樹脂製のブッシュを介して横送り軸を右及び左の支持部材に回転自在に支持しているので、横送り軸の回転駆動が滑らかに行われる。樹脂製のブッシュは泥等が付着しても、これに関係なく横送り軸を回転自在に支持することができる。
【0013】
(発明の効果)
本発明の第2特徴によると、本発明の第1特徴と同様に前項[I]に記載の「発明の効果」を備えており、これに加えて以下のような「発明の効果」を備えている。
本発明の第2特徴によると、合成樹脂製のブッシュを介して横送り軸を右及び左の支持部材に回転自在に支持することにより、泥等の付着に関係なく横送り軸の回転駆動が滑らかに行われるようになり、苗のせ台の往復横送り駆動が安定して行われるようになって、苗植付装置の植付性能の向上を図ることができた。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
[1]
図1及び図2に示すように、左右に操向操作自在な前輪1及び後輪2で支持された機体の後部にリンク機構3が連結され、リンク機構3を昇降駆動する油圧シリンダ4が備えられており、リンク機構3に3条植型式の苗植付装置5が連結されて、乗用型田植機が構成されている。
【0015】
図1,2,3に示すように、苗植付装置5は、回転駆動される3つの植付アーム21、所定のストロークで往復横送り駆動される苗のせ台22、苗のせ台22に載置された苗を下方に送る縦送り機構23、及び整地フロート24を備えて構成されている。
【0016】
[2]
次に苗植付装置5の支持構造及び植付アーム21の回転駆動構造について説明する。
図3,4,7(イ)に示すように、リンク機構3は右及び左の上リンク3a、右及び左の下リンク3bによって構成されており、上リンク3a及び下リンク3bの後部に、板金材を折り曲げて構成された支持部材6が取り付けられている。支持部材6の下部にボス部材7が固定されて、ボス部材7に苗植付装置5が支持されている。丸パイプで構成された支持フレーム8が左右方向に配置され、支持フレーム8に支持軸9が前後方向に固定されており、支持軸9がボス部材7に回転自在に支持されている。これにより、苗植付装置5がボス部材7の前後軸芯P1周りにローリング自在に支持されている。
【0017】
図4及び図7(イ)に示すように、支持軸9の右及び左側において、支持フレーム8にアーム10が固定されて前方に延出されており、右及び左のアーム10に硬質ゴム製の規制部材10aが備えられている。これにより、図7(イ)に示すように、苗植付装置5を下降させている状態で、右及び左の下リンク3bが右及び左のアーム10の規制部材10aから離れており、苗植付装置5が支障なく前後軸芯P1周りにローリングする。図7(ロ)に示すように、苗植付装置5を上昇させると右及び左の下リンク3bが、右及び左のアーム10の規制部材10aに接当する状態となって、苗植付装置5が前後軸芯P1周りにローリングしないように固定される。
【0018】
図3及び図4に示すように、鋳物製で左右2分割構造の伝動ケース11が、支持フレーム8の左端部に連結されて後方に延出されている。伝動ケース11に入力軸12が前後方向に備えられており、機体から延出されたPTO軸13がユニバーサルジョイント14を介して入力軸12に接続されている。伝動ケース11の内部に出力軸15が左右方向に備えられて、出力軸15のベベルギヤ15aが入力軸12のベベルギヤ12aに咬合している。伝動ケース11の後部に駆動軸16が左右方向に備えられており、駆動軸16のスプロケット16aと出力軸15のスプロケット15bとに亘って伝動チェーン17が巻回されている。
【0019】
図3及び図4に示すように、駆動軸16が伝動ケース11の後部から右及び左に突出しており、駆動軸16の右及び左の端部に駆動アーム18が固定され、駆動アーム18に植付アーム21が回転自在に支持されている。板材をコ字状に折り曲げて構成された支持部材45が伝動ケース11の後部に固定され、支持部材45の後部に右及び左のアーム19が前後に揺動自在に支持されており、伝動ケース11の右及び左の植付アーム21に、右及び左のアーム19が回転自在に接続されている。
【0020】
図4に示すように、板金製(板金材)の角パイプにより支持フレーム20が構成されており、支持フレーム20が支持フレーム8の右端部に連結されて後方に延出されている。板金製(板金材)の丸パイプにより支持フレーム25が構成されており、支持フレーム25が支持フレーム20の後端に左右方向に固定されている。支持フレーム20に伝動軸26が支持されて、伝動ケース11の右の植付アーム21に延出されており、伝動軸26の左の端部に駆動アーム18が固定されて、伝動ケース11の右の植付アーム21に駆動アーム18が回転自在に支持されている。伝動軸26の右の端部に駆動アーム18が固定され、駆動アーム18に植付アーム21が回転自在に支持されている。板材をL字状に折り曲げて構成された支持部材27が支持フレーム25の後部に固定され、支持部材27の後部にアーム19が前後に揺動自在に支持されており、支持フレーム20,25の植付アーム21にアーム19が回転自在に接続されている。
【0021】
以上の構造により、図3及び図4に示すように、機体からの動力がPTO軸13、入力軸12、出力軸15及び伝動チェーン17を介して駆動軸16に伝達されて、伝動ケース11の右及び左の植付アーム21が回転駆動されるのであり、伝動ケース11の右の植付アーム21を介して伝動軸26に動力が伝達されて、支持フレーム20,25の植付アーム21が回転駆動される。これにより、伝動ケース11の右及び左の植付アーム21、支持フレーム20,25の植付アーム21が、苗のせ台22の下部(後述する支持レール46の苗取り出し口46a)から苗を取り出して田面に植え付ける。
【0022】
[3]
次に、苗のせ台22の往復横送り駆動の構造について説明する。
図3,4,5に示すように、伝動ケース11の前部の左部に、平板状の支持部材28が固定されて上方に延出されており、丸パイプ状の支持部材29が支持部材28に固定されて上方に延出されている。支持フレーム20の前部に、丸パイプ状の支持部材30が固定されて上方に延出されており、平面視でL字状に折り曲げられた支持部材31が、支持部材30に固定されている。支持部材28,31に合成樹脂製のブッシュ32が取り付けられて、右及び左のブッシュ32に横送り軸33の右及び左側部が回転自在に支持されている。
【0023】
図3,4,5に示すように、出力軸15の端部にスプロケット15cが固定されて、横送り軸33の左の端部にスプロケット33bが固定されており、出力軸15のスプロケット15cと横送り軸33のスプロケット33bとに亘って、伝動チェーン37が巻回されている。出力軸15のスプロケット15c、横送り軸33のスプロケット33b及び伝動チェーン37を覆うカバー38が備えられて、カバー38が支持部材28に固定されている。
【0024】
図5に示すように、横送り軸33の外周部に螺旋溝33aが形成されて、円筒状の第1送り部材34が横送り軸33に回転自在に外嵌され、第1送り部材34に支持された第2送り部材35の先端が、横送り軸33の螺旋溝33aに挿入されている。苗のせ台22と第1送り部材34とが接続部材36によって接続されており、伸縮自在なゴム製のカバー39が第1送り部材34と右及び左のブッシュ32とに亘って接続され、カバー39により横送り軸33が覆われている。
【0025】
図4,8,9に示すように、伝動ケース11及び支持フレーム20に支持レール46が支持されて、苗のせ台22の下部が支持レール46に横移動自在に支持されている。図3及び図4に示すように、苗のせ台22の上部が支持部材29,30の上部に横移動自在及び上下に位置変更自在に支持されている。
以上の構造により、図5に示すように、横送り軸33が回転駆動されると、横送り軸33の螺旋溝33aに沿って第1及び第2送り部材34,35が、所定のストロークで往復横送り駆動されて、苗のせ台22が所定のストロークで往復横送り駆動される。
【0026】
図4,8,9に示すように、支持レール46に支持ロッド41が固定されて、コ字状のブラケット42が伝動ケース11及び支持フレーム20に固定されており、支持ロッド41がブラケット42に挿入されている。ブラケット42の下部にボス部材43が回転自在に支持され、ボス部材43の端部にロッド43bが固定されて、ボス部材43を下方に付勢するバネ44が備えられており、ボス部材43の貫通孔43a(雌ネジが形成されている)に、支持ロッド41の雄ネジ部41aが挿入されている。
【0027】
以上の構造により、図8及び図9に示すように、伝動ケース11及び支持フレーム20において、ボス部材43のロッド43bを持ってボス部材43を回転操作すると、支持ロッド41の位置が上下に変更される。これにより、前項[2]に記載のように、一定の軌跡で回転駆動される植付アーム21に対し、苗のせ台22の下部(支持レール46の苗取り出し口46a)の位置を上下に変更して、苗のせ台22の下部から植付アーム21が取り出す苗の量を変更することができる。
【0028】
この場合、図8及び図9に示すように支持ロッド41に備えられた溝状の目印41bとブラケット42との位置により、苗のせ台22の下部から植付アーム21が取り出す苗の量を把握することができる。バネ44によりボス部材43が下方に付勢されることによる摩擦によって、振動等によりボス部材43が回転してしまうような状態が防止される。
【0029】
[4]
次に、苗のせ台22に備えられた縦送り機構23の構造について説明する。
図1及び図2に示すように、苗のせ台22は3つの苗のせ面22aが備えられて、3つの苗のせ面22aの各々に縦送り機構23が備えられている。図6に示すように、苗のせ台22の略全幅に亘る支持軸47が苗のせ台22の中間部に支持され、支持軸47に回転自在に支持された従動ローラー53が、苗のせ面22aに形成された開口22bに臨んでいる。
【0030】
図3及び図6に示すように、苗のせ台22の略全幅に亘る断面六角状の駆動軸48が苗のせ台22の下部に配置され、苗のせ台22の裏面に固定された右及び左のブラケット50に、駆動軸48が回転自在に支持されている。駆動軸48に駆動ローラー51が固定され、駆動ローラー51が苗のせ面22aに形成された開口22cに臨んでおり、表面に多数の突起を備えた縦送りベルト52が駆動及び従動ローラー51,53に亘って巻回されている。駆動軸48の右及び左の端部にワンウェイクラッチ54が外嵌され、ワンウェイクラッチ54に入力アーム54aが備えられており、入力アーム54aが所定位置に戻るように付勢するバネ55が備えられている。図3及び図5に示すように、横送り軸33の右及び左の端部に、縦送りアーム56が固定されている。
【0031】
以上の構造により図3,5,6に示すように、右及び左の縦送りアーム56の右及び左の横外側に右及び左の入力アーム54aが位置しており、右及び左の縦送りアーム56は横送り軸33と一緒に回転駆動されている。これにより、前項[3]に記載のように、苗のせ台22が右に横送り駆動されると、右の入力アーム54aは右の縦送りアーム56から右の横外側に離れていくのであり、左の入力アーム54aは左の縦送りアーム56の左の横外側から左の縦送りアーム56に接近していく。従って、苗のせ台22が右のストロークエンドに達すると、左の入力アーム54aが左の縦送りアーム56の位置に達して、左の縦送りアーム56により左の入力アーム54aが所定位置から上方に駆動されて、左のワンウェイクラッチ54により駆動軸48及び縦送りベルト52が回転駆動され(苗のせ面22aの各々の縦送り機構23が駆動され)、苗のせ台22に載置された苗が下方(支持レール46)に送られる。
【0032】
苗のせ台22が左に横送り駆動されると、左の入力アーム54aは左の縦送りアーム56から左の横外側に離れていくのであり、右の入力アーム54aは右の縦送りアーム56の右の横外側から右の縦送りアーム56に接近していく。これにより、苗のせ台22が左のストロークエンドに達すると、右の入力アーム54aが右の縦送りアーム56の位置に達して、右の縦送りアーム56により右の入力アーム54aが所定位置から上方に駆動されて、右のワンウェイクラッチ54により駆動軸48及び縦送りベルト52が回転駆動され(苗のせ面22aの各々の縦送り機構23が駆動され)、苗のせ台22に載置された苗が下方(支持レール46)に送られる。
【0033】
[5]
次に、右及び左のマーカー57の構造について説明する。
図2及び図4に示すように、支持部材28,30から右及び左の横外側に支持フレーム58が延出されており、図12及び図13に示すように、支持フレーム58の端部の前後軸芯P2周りに、ブラケット59が揺動自在に支持され、ブラケット59にマーカー57が支持ピン60を介して固定されている。
【0034】
図7(イ)及び図12に示すように、支持部材6のブラケット6aに、右及び左のワイヤ61のアウター61aの一方の端部が固定されて、右及び左のワイヤ61のインナー61bの一方の端部が、右及び左の下リンク3bに接続されている。図12及び図14に示すように、右及び左の支持フレーム58に固定されたブラケット58aに、右及び左のワイヤ61のアウター61aの他方の端部が固定されて、右及び左のワイヤ61のインナー61bの他方の端部が、右及び左のマーカー57の支持ピン60に接続されている。
【0035】
これにより苗植付装置5を上昇駆動すると、図7(イ)及び図12から図7(ロ)及び図13に示すように、支持部材6と右及び左の下リンク3bとの位置関係の変化により、右及び左のワイヤ61のインナー61bが右及び左の下リンク3bに引き操作されて、右及び左のマーカー57が作業姿勢(図12に示す状態)から格納姿勢(図13に示す状態)に操作される。苗植付装置5を下降駆動すると、支持部材6と右及び左の下リンク3bとの位置関係の変化によって、右及び左のワイヤ61のインナー61bが右及び左のマーカー57に戻し操作される。
【0036】
図12及び図14に示すように、支持フレーム58の端部の前後軸芯P3周りに、正面視L字状の保持部材62が揺動自在に支持され、保持部材62と支持フレーム58のブラケット58aとに亘ってバネ63が接続されて、保持部材62が下方(格納姿勢のマーカー57への係合側)に付勢されている。保持部材62に解除操作ロッド64が接続されており、図1及び図2に示すように解除操作ロッド64が上方に延出されている。
【0037】
図13に示す状態は苗植付装置5が上昇駆動されて、マーカー57が格納姿勢に操作された状態であり、マーカー57の支持ピン60に保持部材62の凹部62aが係合して、マーカー57が格納姿勢に保持された状態である。この状態で苗植付装置5を下降駆動すると、前述のように右及び左のワイヤ61のインナー61bが右及び左のマーカー57に戻し操作されるが、保持部材62によりマーカー57は格納姿勢に保持されている。
【0038】
苗植付装置5が下降駆動された状態で解除操作ロッド64の上部を持ち上方に引き上げると、保持部材62がマーカー57の支持ピン60から外し操作されて、マーカー57が自重によって下方に揺動し、マーカー57の支持ピン60が支持フレーム58に乗って、図12に示すようにマーカー57の先端が田面に突入する作業姿勢となる。次に解除操作ロッド64から手を離すと、バネ63の付勢力より保持部材62が下方に揺動し、保持部材62の端部がマーカー57の支持ピン60の上方から接当して、バネ63の付勢力により保持部材62の端部がマーカー57の支持ピン60を上方から押圧する。これにより、マーカー57の作業姿勢からの浮き上がりが抑えられる。
【0039】
図12に示すように、マーカー57が作業姿勢の状態において、苗植付装置5が上昇駆動されると、右及び左のワイヤ61のインナー61bが右及び左の下リンク3bに引き操作されるので、バネ63の付勢力に抗して保持部材62と一緒に、図13に示すように、マーカー57が格納姿勢に操作されるのであり、マーカー57が格納姿勢に達すると、バネ63の付勢力によりマーカー57の支持ピン60に保持部材62の凹部62aが係合して、マーカー57が格納姿勢に保持された状態となる。
【0040】
[6]
次に、整地フロート24の構造について説明する。
図1及び図3に示すように、右及び左の後輪2の間隔よりも少し広い横幅を備えて、整地フロート24が構成されている。図10(イ)及び図11に示すように、整地フロート24の後部左右の2箇所に支持ブラケット65が固定されて、整地フロート24の前部左右中央の1箇所に支持ブラケット66が固定されており、支持ブラケット65に3個の連結孔65a(丸孔)が形成されている。
【0041】
図10(イ)及び図11に示すように、伝動ケース11の後部下部に支持ブラケット(図示せず)が備えられ、支持フレーム20の後部下部に支持ブラケット20aが固定されており、着脱自在な連結ピン67により、支持ブラケット65(所望の連結孔65a)が支持ブラケット20aに取り付けられている。これにより、連結ピン67周りに、整地フロート24の前部が上下に揺動自在に支持された状態となる。
【0042】
図10(イ)(ロ)及び図11に示すように、細長い板材を逆L字状に折り曲げて構成された案内部材68が、連結ピン71を介して前後に揺動自在に支持ブラケット66に支持されている。案内部材68の上部に、ワイヤ69のアウター69aの一方の端部が固定され、ワイヤ69のインナー69bの一方の端部に、コイル状のバネ70が取り付けられている。バネ70の下端にリング状の取付部70aが備えられ、案内部材68に長孔68aが形成されており、バネ70の上端部70bが案内部材68の長孔68aに挿入されている。右のアーム10に固定されたピン10bが案内部材68の長孔68aに挿入されており、バネ70の取付部70aが右のアーム10のピン10bに取り付けられている。
【0043】
[7]
次に、苗植付装置5の昇降制御について説明する。
図1,3,15に示すように、右及び左の後輪2を支持するミッションケース72の前部に制御弁73が備えられ、ワイヤ69のインナー69bの他方の端部が制御弁73に接続されており、位置保持及び位置変更自在な感度調節レバー74にワイヤ69のアウター69aの他方の端部が固定されている。昇降レバー75が備えられており、苗植付装置5に動力を伝動及び遮断自在自在な植付クラッチ(図示せず)及び制御弁73を、昇降レバー75によって操作する。
【0044】
以上の構造により昇降レバー75を上昇位置に操作すると、植付クラッチが遮断側に操作された状態で、制御弁73から油圧シリンダ4に作動油が供給されて油圧シリンダ4が収縮作動し、苗植付装置5が上昇駆動される。昇降レバー75を中立位置に操作すると、植付クラッチが遮断側に操作された状態で、制御弁73が中立位置に操作されて油圧シリンダ4が停止し、苗植付装置5がその位置で停止する。昇降レバー75を下降位置に操作すると、植付クラッチが遮断側に操作された状態で、油圧シリンダ4から作動油が排出されて油圧シリンダ4が伸長作動し、苗植付装置5が下降駆動される。
【0045】
整地フロート24が田面に接地した状態で昇降レバー75を植付位置に操作すると、植付クラッチが伝動側に操作されて、前項[2][3][4]に記載のように、苗のせ台22が所定のストロークで往復横送り駆動されながら、植付アーム21が回転駆動されて、苗が田面に植え付けられる。これと同時に、植付アーム21による苗の植付深さが設定値に維持されるように、苗植付装置5の昇降制御が以下のように行われる。
【0046】
田面に接地追従する整地フロート24に対して苗植付装置5が上下動すると、図10(イ)(ロ)に示すように連結ピン67周りに整地フロート24の前部が上下に揺動することになり、案内部材68によりワイヤ69のアウター69aの一方の端部が上下動操作され、ワイヤ69のインナー69bの一方の端部が押し引き操作された状態となって、ワイヤ69のインナー69bにより制御弁73が操作される。これにより、制御弁73から油圧シリンダ4に作動油が供給及び排出されて、油圧シリンダ4が収縮及び伸長作動し、苗植付装置5が田面から設定高さ(植付アーム21による苗の植付深さが設定値)に維持されるように、苗植付装置5が自動的に昇降駆動される。
【0047】
図10(イ)に示すように、連結ピン67を支持ブラケット65から取り外して、支持ブラケット65の異なる連結孔65aに取り付けることにより、苗植付装置5(伝動ケ−ス11及び支持フレーム20)に対する整地フロート24の後部の高さを変更する。この場合、整地フロート24の姿勢が少し上向き又は少し下向きになるので、図15に示すように感度調節レバー74を操作して、ワイヤ69のアウター69aの他方の端部の位置を変更することにより、ワイヤ69のインナー69bの一方の端部の出る量を変更して、苗植付装置5(伝動ケ−ス11及び支持フレーム20)に対して整地フロート24が平行になるようにする。これにより、苗植付装置5(伝動ケ−ス11及び支持フレーム20)に対する整地フロート24の高さを変更することができるのであり、前述のように苗植付装置5が維持される田面からの設定高さを変更して、植付アーム21による苗の植付深さを変更することができる。
【0048】
前述のように、苗植付装置5(伝動ケ−ス11及び支持フレーム20)に対して整地フロート24を平行にした状態において、図15に示すように、感度調節レバー74を操作して、ワイヤ69のアウター69aの他方の端部の位置を変更し、ワイヤ69のインナー69bの一方の端部の出る量を変更して、整地フロート24の姿勢を少し上向き又は少し下向きに変更する。整地フロート24の姿勢が上向きになると、整地フロート24が田面に接地する面積が小さくなって、整地フロート24の前部の上下の揺動が鈍感なものとなり、前述の苗植付装置5の昇降制御が鈍感になる。逆に整地フロート24の姿勢が下向きになると、整地フロート24が田面に接地する面積が大きくなって、整地フロート24の前部の上下の揺動が敏感なものとなり、前述の苗植付装置5の昇降制御が敏感になる。
【0049】
[発明の実施の別形態]
図4に示す構造において、支持フレーム25に右及び左の植付アーム21を回転自在に支持して、苗植付装置5を4条植型式に構成してもよい。入力軸12から駆動軸16に伝動チェーン17を介して動力を伝達するのではなく、入力軸12から駆動軸16に伝動軸(図示せず)を介して動力を伝達するように構成してもよい。伝動ケース11が右側に配置され、支持フレーム20が左側に配置されるように構成してもよい。
図12及び図13に示す構造において、右及び左のマーカー57を格納姿勢(図13に示す状態)から作業姿勢(図12に示す状態)に付勢するバネ(図示せず)を、備えるように構成してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0050】
【図1】乗用型田植機の全体側面図
【図2】乗用型田植機の全体平面図
【図3】苗植付装置の側面図
【図4】苗植付装置の伝動ケース及び支持フレーム、植付アームの付近の平面図
【図5】苗植付装置の横送り軸の付近の平面図
【図6】苗植付装置の苗のせ台及び縦送り機構の付近の正面図
【図7】リンク機構の後部の付近の側面図
【図8】苗植付装置の支持レール及び支持ロッドの付近の側面図
【図9】苗植付装置の支持レール及び支持ロッドの付近の背面図
【図10】整地フロートの側面図及び案内部材の付近の正面図
【図11】整地フロートの平面図
【図12】作業姿勢のマーカーの付近の正面図
【図13】格納姿勢のマーカーの付近の正面図
【図14】作業姿勢のマーカーの付近の平面図
【図15】ミッションケース、制御弁及び感度調節レバーの付近の側面図
【符号の説明】
【0051】
22 苗のせ台
23 縦送り機構
28,30,31 右及び左の支持部材
32 ブッシュ
33 横送り軸
34,35 送り部材
54a 入力部
56 縦送りアーム

【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転駆動される横送り軸の右及び左側部を支持部材により回転自在に支持して、前記右及び左の支持部材の間の横送り軸の部分に送り部材を取り付け、前記送り部材を苗のせ台に接続して、
前記横送り軸が回転駆動されることにより、前記送り部材が所定のストロークで前記横送り軸に沿って往復横送り駆動されて、前記苗のせ台が所定のストロークで往復横送り駆動されるように構成すると共に、
前記右及び左の支持部材から右及び左の外側に突出した前記横送り軸の部分に縦送りアームを固定して、前記苗のせ台に備えられた縦送り機構の入力部を苗のせ台の右及び左側部に備え、前記右及び左の縦送りアームの右及び左の横外側に前記右及び左の入力部が位置するように構成して、
前記苗のせ台が所定のストロークの右又は左の端部に達すると、前記右又は左の入力部が前記右又は左の縦送りアームの位置に達し前記右又は左の縦送りアームにより駆動されて、前記縦送り機構が駆動されるように構成してある乗用型田植機の苗植付装置。
【請求項2】
合成樹脂製のブッシュを介して、前記横送り軸を前記右及び左の支持部材に回転自在に支持してある請求項1に記載の乗用型田植機の苗植付装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公開番号】特開2006−174846(P2006−174846A)
【公開日】平成18年7月6日(2006.7.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−84690(P2006−84690)
【出願日】平成18年3月27日(2006.3.27)
【分割の表示】特願2002−344170(P2002−344170)の分割
【原出願日】平成14年11月27日(2002.11.27)
【出願人】(000001052)株式会社クボタ (4,415)
【Fターム(参考)】