説明

乗用型移植機

【課題】運転座席に座ったままの姿勢であっても、整地装置の作業高さ調節を容易に行うことができるようにする。
【解決手段】植付作業機5の前方に整地装置6を備える乗用型田植機1において、運転座席2の後方に、整地装置6の昇降操作具と整地クラッチの入り/切り操作具とを兼ねる操作レバー21を設けるにあたり、該操作レバー21を、運転座席2に座った姿勢で操作可能な位置であって、かつ、機体の左右中心に対して一側方に偏倚した位置に配置すると共に、操作レバー21の操作方向を左右方向とし、該レバー操作領域の機体外方側に、整地クラッチを切りとし、かつ、整地装置6を格納高さまで上昇させる格納操作領域R1を設ける一方、レバー操作領域の機体内方側に、整地クラッチを入りとし、かつ、整地装置6の作業高さを調節する作業操作領域R2を設ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、植付作業機の前方に整地装置を備える乗用型田植機などの乗用型移植機に関する。
【背景技術】
【0002】
植付作業機の前方に整地装置を備える乗用型移植機が知られている(例えば、特許文献1参照)。この種の乗用型移植機では、植付けと同時に整地ができるので、植付精度や作業効率の向上を図ることができ、特に、機体旋回によって圃場面が荒れやすい枕地では、整地装置による整地効果が顕著であり、植付精度を大幅に改善することができる。
【0003】
また、特許文献1に示される乗用型移植機は、運転座席の後方(植付作業機の前面部)に、整地装置昇降用の操作レバーを備えており、該操作レバーを操作することにより、整地装置の作業高さを任意に調節したり、整地装置を格納高さまで上昇させることができるようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2006−304647号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1の乗用型移植機が備える操作レバーは、機体の左右中心に対して一側方に偏倚した位置に配置されると共に、レバー操作方向が左右方向となっているので、運転座席に座ったままの姿勢で操作可能と思われる。しかしながら、整地装置の作業高さ調節は、細かなレバー操作が要求されるので、運転座席に座ったままの姿勢では調節操作が難しいという問題があった。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、上記の如き実情に鑑みこれらの課題を解決することを目的として創作されたものであって、運転座席を備える走行機体と、該走行機体の後部に連結される植付作業機と、該植付作業機の前方に配置される整地装置と、該整地装置の動力を入り/切りする整地クラッチとを備える乗用型移植機において、前記運転座席の後方に、整地装置の昇降操作具と整地クラッチの入り/切り操作具とを兼ねる操作レバーを設けるにあたり、該操作レバーを、運転座席に座った姿勢で操作可能な位置であって、かつ、機体の左右中心に対して一側方に偏倚した位置に配置すると共に、操作レバーの操作方向を左右方向とし、該レバー操作領域の機体外方側に、整地クラッチを切りとし、かつ、整地装置を格納高さまで上昇させる格納操作領域を設ける一方、レバー操作領域の機体内方側に、整地クラッチを入りとし、かつ、整地装置の作業高さを調節する作業操作領域を設けたことを特徴とする。
また、前記整地装置を上昇側に付勢するスプリングを備え、操作レバーが格納操作領域側に位置するとき、スプリングの付勢力が整地装置の荷重と釣り合うことを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
請求項1の発明によれば、整地クラッチを入りとし、かつ、整地装置の作業高さを調節する作業操作領域を、運転座席に近い機体内方側に設けたので、運転座席に座ったままの姿勢であっても、整地装置の作業高さ調節を容易に行うことができる。
また、請求項2の発明によれば、整地装置を上昇側に付勢するスプリングを備え、操作レバーが格納操作領域側に位置するとき、スプリングの付勢力が整地装置の荷重と釣り合うようにしたので、運転座席から遠い格納操作領域側への操作を、スプリングの付勢力で補助することができる。また、運転座席に近い作業操作領域側への操作は、力が入り易い引き操作となるので、細かなレバー操作が要求される整地装置の作業高さ調節を精度良く行うことができる。また、作業操作領域では、操作レバーが上昇側に付勢されるので、レバー位置をノッチとの係合で保持する場合、ノッチ内でのガタツキを防止し、整地装置の作業高さを一定に保つことができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】乗用型田植機の全体側面図である。
【図2】乗用型田植機の要部斜視図である。
【図3】乗用型田植機の要部正面図である。
【図4】乗用型田植機の要部平面図である。
【図5】乗用型田植機の要部拡大斜視図である。
【図6】乗用型田植機の要部拡大正面図である。
【図7】乗用型田植機の整地クラッチ操作部を示す拡大斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の実施の形態について、図面に基づいて説明する。図1において、1は乗用型田植機(乗用型移植機)であって、該乗用型田植機1は、運転座席2を備える走行機体3と、該走行機体3の後部に昇降リンク機構4を介して昇降自在に連結される植付作業機5と、該植付作業機5の前方に配置される整地装置6とを備えて構成されている。
【0010】
図1〜図4に示すように、植付作業機5は、ローリング支軸7を介して昇降リンク機構4に連結される作業機フレーム8と、該作業機フレーム8に立設される苗載台支持ステー9と、該苗載台支持ステー9で横送り自在に支持される苗載台10と、作業機フレーム8から後方に延出する複数のプランタケース11と、各プランタケース11の後端部に設けられる植付爪機構12と、田面を滑走するフロート13とを備えており、苗載台10に載置された苗を植付爪機構12で掻取って田面に植付けるように構成されている。
【0011】
走行機体3は、機体前部に図示しないエンジンを備えており、該エンジンから出力される動力がミッションケース14に入力される。そして、ミッションケース14内で変速された動力は、図示しないフロントアクスルケースを介して前輪15に伝動されると共に、リヤアクスルケース16を介して後輪17に伝動され、さらには、図示しない植付用伝動軸を介して植付作業機5に伝動されるようになっている。
【0012】
整地装置6の動力は、リヤアクスルケース16に設けられる整地クラッチケース18から取り出され、整地用伝動軸19を介して整地装置6に伝動される。整地クラッチケース18には、図示しない整地クラッチが内装されており、該整地クラッチの操作にもとづいて、整地装置6への動力が入り/切りされるようになっている。
【0013】
図2及び図7に示すように、本実施形態では、整地クラッチケース18の外部にクラッチレバー20を設けると共に、該クラッチレバー20の操作にもとづいて、整地クラッチを入り/切り操作するにあたり、クラッチレバー20に二つのクラッチ操作系を連結している。第一のクラッチ操作系は、後述する操作レバー21の操作に応じて、整地クラッチを入り/切りさせるためのものであり、操作レバー21をクラッチレバー20に連結する連結ワイヤ22を用いて構成されている。
【0014】
一方、第二のクラッチ操作系は、植付作業機5の所定高さ以上の上昇動作に応じて、整地クラッチを自動的に切るためのものであり、昇降リンク機構4をクラッチレバー20に連結する連結ロッド23を用いて構成されている。尚、連結ロッド23には、植付作業機5の下降時に、操作レバー21による整地クラッチの入り/切り操作を許容するための融通手段23a(例えば、長孔)が設けられている。
【0015】
本実施形態の整地装置6は、整地用伝動軸19から動力を入力する入力ケース24と、該入力ケース24から左右両側方に延出するロータ軸25と、該ロータ軸25に沿って並設される複数の整地ロータ26と、該整地ロータ26の上方を覆うロータカバー27と、ロータ軸25の左右両側を回転自在に支持する左右一対の軸受部材28とを備えて構成されており、入力ケース24に入力された動力で整地ロータ26を所定方向に回転させることにより、植付作業機5の前方で圃場面の整地を行うようになっている。
【0016】
整地装置6は、植付作業機5の前面側に昇降自在に設けられている。例えば、本実施形態の乗用型田植機1では、植付作業機5の作業機フレーム8に左右一対の整地装置ブラケット29を設けると共に、該整地装置ブラケット29で整地装置6の軸受部材28を上下スライド自在に支持することにより、植付作業機5に対する整地装置6の昇降を可能にしている。
【0017】
さらに、植付作業機5の前面側には、操作レバー21の操作に応じて整地装置6を昇降させる昇降操作機構30が設けられている。本実施形態の昇降操作機構30は、操作レバー21の操作に応じて回動するリフトアーム軸31と、該リフトアーム軸31の左右両端部に一体的に設けられる左右一対のリフトアーム32と、各リフトアーム32を整地装置6の軸受部材24に連結させる左右一対のリフトプレート33とを備えて構成されている。つまり、リフトプレート33を介して整地装置6をリフトアーム32で吊持すると共に、該リフトアーム32を操作レバー21の操作に応じて上下方向に回動させることにより、整地装置6を昇降させるようになっている。
【0018】
次に、本発明の要部である操作レバー21について、図2〜図6を参照して詳細に説明する。
【0019】
操作レバー21は、苗載台支持ステー9に設けられるレバーブラケット34に対し、レバー支軸35を介して回動自在に設けられており、レバーガイド36のレバーガイド孔36aに沿う方向の回動操作が許容されている。また、操作レバー21は、レバーガイド孔36aに沿う方向の回動操作に加え、レバーガイド孔36aと直交する方向の回動操作(第二支軸37を支点とする回動)が許容されている。これにより、操作レバー21に設けられる凸部21aを、レバーガイド孔36aの一側に複数形成されるノッチ36bに選択的に係合させて、操作レバー21を所望の操作位置に保持することが可能になる。尚、操作レバー21は、ノッチ36bと係合する方向にスプリング38で付勢されている。
【0020】
操作レバー21は、整地装置6の昇降操作具と整地クラッチの入り/切り操作具とを兼ねており、そのレバー操作領域には、整地クラッチを切りとし、かつ、整地装置6を格納高さまで上昇させる格納操作領域R1と、整地クラッチを入りとし、かつ、整地装置6の作業高さを調節する作業操作領域R2とが含まれている。そして、作業操作領域R2には、所定の間隔を存して複数のノッチ36bが形成されており、係合させるノッチ36bの選択により、整地装置6の作業高さが調節される。
【0021】
操作レバー21は、運転座席2に座った姿勢で操作可能な位置に配置されている。具体的には、図3に示すように、植付作業機5を上昇させたとき、運転座席2に座った姿勢で手が届くように、機体の左右中心に対して一側方に偏倚した位置に操作レバー21を配置すると共に、操作レバー21の操作方向を左右方向としている。
【0022】
本発明の実施形態に係る乗用型田植機1では、上記のように操作レバー21を配置するにあたり、レバー操作領域の機体外方側に格納操作領域R1を設ける一方、レバー操作領域の機体内方側に作業操作領域R2を設けている。つまり、整地装置6の作業高さ調節は、細かなレバー操作が要求されるので、運転座席2に座ったままの姿勢では調節操作が困難になる可能性があるが、本発明では、整地装置6の作業高さ調節を行う作業操作領域R2を、運転座席2に近い機体内方側に設けたので、運転座席2に座ったままの姿勢であっても、整地装置6の作業高さ調節を容易に行うことが可能になる。
【0023】
また、本発明の実施形態に係る乗用型田植機1は、整地装置6を上昇側に付勢する左右一対のスプリング39を備え、該スプリング39の付勢力で操作レバー21の上昇方向の操作力を軽減させている。例えば、本実施形態のスプリング39は、引張コイルスプリングからなり、リフトアーム軸31と吊持部材28との間に介設されることにより、整地装置6を上昇側に付勢している。
【0024】
スプリング39の付勢力は、操作レバー21が格納操作領域R1に位置するとき、整地装置6の荷重と釣り合うように設定されている。このようにすると、運転座席2から遠い格納操作領域R1側への操作を、スプリング39の付勢力で補助することができるので、操作レバー21の格納操作が容易になる。また、運転座席2に近い作業操作領域R2側への操作は、力が入り易い引き操作となるので、細かなレバー操作が要求される整地装置6の作業高さ調節を精度良く行うことができる。また、作業操作領域R2では、操作レバー21が上昇側に付勢されるので、レバー位置をノッチ36bとの係合で保持する本実施形態では、ノッチ36b内でのガタツキを防止し、整地装置6の作業高さを一定に保つことができる。
【0025】
尚、整地クラッチが入り側に付勢されている場合は、整地クラッチの入り側付勢力を加味してスプリング39の付勢力を設定することが好ましい。また、本実施形態では、操作レバー21が格納操作領域R1に位置するとき、スプリング39の付勢力が整地装置6の荷重と釣り合うようにしているが、作業操作領域R2の最上昇位置よりも上昇側で釣り合うようにすれば、ノッチ36b内でのガタツキを防止するという効果は得られる。
【0026】
叙述の如く構成された本実施形態によれば、運転座席2を備える走行機体3と、該走行機体3の後部に連結される植付作業機5と、該植付作業機5の前方に配置される整地装置6と、該整地装置6の動力を入り/切りする整地クラッチとを備える乗用型田植機1において、運転座席2の後方に、整地装置6の昇降操作具と整地クラッチの入り/切り操作具とを兼ねる操作レバー21を設けるにあたり、該操作レバー21を、運転座席2に座った姿勢で操作可能な位置であって、かつ、機体の左右中心に対して一側方に偏倚した位置に配置すると共に、操作レバー21の操作方向を左右方向とし、該レバー操作領域の機体外方側に、整地クラッチを切りとし、かつ、整地装置6を格納高さまで上昇させる格納操作領域R1を設ける一方、レバー操作領域の機体内方側に、整地クラッチを入りとし、かつ、整地装置6の作業高さを調節する作業操作領域R2を設けたので、運転座席2に座ったままの姿勢であっても、整地装置6の作業高さ調節を容易に行うことができる。
【0027】
また、整地装置6を上昇側に付勢するスプリング39を備え、操作レバー21が格納操作領域R1側に位置するとき、スプリング39の付勢力が整地装置6の荷重と釣り合うようにしたので、運転座席2から遠い格納操作領域R1側への操作を、スプリング39の付勢力で補助することができる。また、運転座席2に近い作業操作領域R2側への操作は、力が入り易い引き操作となるので、細かなレバー操作が要求される整地装置6の作業高さ調節を精度良く行うことができる。また、作業操作領域R2では、操作レバー21が上昇側に付勢されるので、レバー位置をノッチ36bとの係合で保持する場合、ノッチ36b内でのガタツキを防止し、整地装置6の作業高さを一定に保つことができる。
【符号の説明】
【0028】
1 乗用型田植機
2 運転座席
3 走行機体
5 植付作業機
6 整地装置
18 整地クラッチケース
20 クラッチレバー
21 操作レバー
30 昇降操作機構
36 レバーガイド
36a レバーガイド孔
36b ノッチ
39 スプリング
R1 格納操作領域
R2 作業操作領域

【特許請求の範囲】
【請求項1】
運転座席を備える走行機体と、該走行機体の後部に連結される植付作業機と、該植付作業機の前方に配置される整地装置と、該整地装置の動力を入り/切りする整地クラッチとを備える乗用型移植機において、
前記運転座席の後方に、整地装置の昇降操作具と整地クラッチの入り/切り操作具とを兼ねる操作レバーを設けるにあたり、該操作レバーを、運転座席に座った姿勢で操作可能な位置であって、かつ、機体の左右中心に対して一側方に偏倚した位置に配置すると共に、操作レバーの操作方向を左右方向とし、該レバー操作領域の機体外方側に、整地クラッチを切りとし、かつ、整地装置を格納高さまで上昇させる格納操作領域を設ける一方、レバー操作領域の機体内方側に、整地クラッチを入りとし、かつ、整地装置の作業高さを調節する作業操作領域を設けたことを特徴とする乗用型移植機。
【請求項2】
前記整地装置を上昇側に付勢するスプリングを備え、操作レバーが格納操作領域側に位置するとき、スプリングの付勢力が整地装置の荷重と釣り合うことを特徴とする請求項1記載の乗用型移植機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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