説明

乗用型農作業機

【課題】簡易な構造の乗用型農作業機において、エンジンの排気が作業者に向かうの防止しつつ簡単な構成で進路変更が可能な乗用型農作業機を提供する。
【解決手段】この乗用型水田溝切り機は、エンジン2により回転駆動される1つの駆動用車輪4と、駆動用車輪4に支持されるフレーム8と、このフレーム8に設けられた座席19および溝切り刃16とを備え、作業者が座席19に跨って乗り作業する。乗用型農作業機は、座席19とフレーム8と溝切り刃16が一体とされる。駆動用車輪4、減速機3、伝動軸が内蔵される伝動軸用パイプ1、エンジン2、ハンドル5が一体とされた駆動ユニット11を有する。駆動ユニット11は、フレーム8に回転自在に取り付けられる。駆動ユニット11のエンジン2は、座席19より後方でかつ下方に配置される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、乗用型の水田溝切り機、水田中耕除草機あるいは水田施肥機等の乗用型農作業機に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、水田溝切り機として、一輪の乗用型水田溝切り機が知られている(例えば、特許文献1、2参照)。この乗用型水田溝切り機においては、前後方向に延びる伝動軸用パイプ(本体フレーム)の後端部および前端部にそれぞれ、エンジンおよび減速機が取り付けられている。エンジンの回転動力は、伝動軸用パイプ内の伝動軸を介して減速機へ伝達される。減速機の出力軸には1つの駆動用車輪が取り付けられている。伝動軸用パイプには、ステーを介して座席(サドル)および溝切り刃(溝切板、溝切体)が取り付けられている。座席は、駆動用車輪の中心の後方斜め上方に設けられ、溝切り刃(バイド板)は、座席の後方斜め下方に設けられている。
【0003】
そして、この乗用型水田溝切り機を用いて、水田等の圃場において溝切りを行うには、作業者は座席に跨って乗り、エンジンの回転駆動力により駆動用車輪を回転させて、この駆動用車輪により溝切り機を前進させる。そうすると、作業者の体重が駆動用車輪と溝切り刃とにより支持されるので、溝切り刃が加圧され、溝切り刃が所定深さに保持されて溝切り機が前進する。
【0004】
ここで、水田においては田植えが直線的に行われる。しかしながら、幾つかの要因により直線性が保たれないこともあり、苗の株に沿って行われる溝切り作業においての作業性が損われている。
そこで、水田溝切り機に操舵機能を付与することが考えられるが、水田溝切り機はコストを抑えるために極めて簡単な構造とされており、車輪は基本的に座席の前に配置される駆動用車輪が1つだけの構成となっている。
【0005】
したがって、自転車やバイク等のように駆動されない前輪を操舵輪としてハンドルに直結するような簡単な構造の操舵機構を採用することができない。
そこで、前記特許文献1においては、座席の後方側で地面としての泥の中に配置される溝切り刃とハンドルとをそれぞれ略鉛直方向に沿った軸回りに回転自在にフレームに接続する構成とするとともに、ハンドルと溝切り刃が連動して回転するように、リンク機構でハンドルと溝切り刃とを連結する。
【0006】
なお、溝切り刃は、前側に回転軸を配置して、後部が左右に移動する状態とする
、水田溝切り機の後部で泥中にある溝切り刃が左右いずれかに回転移動した場合に、前進する水田溝切り機の後部の左右で前進に対する抵抗が異なるものとなる。そして、船の舵と同様に、溝切り刃が右に触れると、水田溝切り機が右に曲がり、溝切り刃が左に触れると水田溝切り機が左に曲がることになる。
【0007】
また、特許文献2においては、駆動用車輪にハンドルと原動機と原動機から駆動用車輪に動力を伝達する伝動手段とを前フレームで支持し、座席および溝切り刃を後ろフレームで支持し、そして、後ろフレームの前側に前フレームを回転自在に接続している。このような構成とすれば、駆動用車輪であっても、駆動用車輪と駆動源とが一つの前フレームに支持され、当該フレームを回転自在とすることにより、駆動用車輪を操舵する構成となっていても、駆動用車輪と原動機と伝動手段とが一体に回転することで、駆動用車輪と伝動手段との間での回転移動を可能とする複雑な構成を必要とせず、駆動されない前輪を操舵する自転車やバイクとほぼ同様に簡単な操舵機構とすることができる。
【0008】
【特許文献1】特許4032109号公報
【特許文献2】特開2008−104425号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
ところで、前記特許文献1に記載の溝切り刃を左右に振ることで操舵する操舵方法では、自転車のようにハンドルに前輪を接続して回転自在とするような簡単な構造とならず、ハンドルと溝切り刃とをそれぞれ別の回転軸回りに回転可能とし、かつ、これらを連動して回転可能とするリンク機構が必要となる。したがって、簡単な構造であった水田溝切り機の構造が煩雑になるとともに重量の増加を招くことになる。なお、重量の増加は、手で持ち運ぶこともある乗用型農作業機において、操作性や取り扱い安さを損うことになる。
【0010】
また、リンク機構がハンドルから水田溝切り機の最後部の下端部となる溝切り刃に至るように配置されることからサドルにまたがった人の下肢に前記リンク機構が緩衝する可能性があり、水田溝切り機の取り扱い性が悪化する可能性がある。
また、前記特許文献2に記載のようにハンドルと駆動用車輪とその駆動源とを一体化して座席の前に配置した場合に、例えば、駆動源としてのエンジンが車輪の車軸より上でハンドルより下となる位置に配置される可能性が高い。すなわち、水田溝切り機のサドルに跨って乗っている作業者の前の比較的高い位置にエンジンがあることになる。
【0011】
この場合に、エンジンからの排気がその温度により上昇するとともに、水田溝切り機の前進により水田溝切り機に対して相対的に後方に移動し、作業者側に向かってしまう虞があり、作業者が排気を吸ってしまったり、排気の臭いに嫌悪感を持ったりすることになる。
【0012】
本発明は、前記事情に鑑みて為されたもので、簡易な構造で操舵を可能とするとともに、作業者に排気が向かうのを防止できる乗用型農作業機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
前記目的を達成するために、請求項1に記載の乗用型農作業機は、原動機(2)と、当該原動機(2)により回転駆動される1つの駆動用車輪(4)と、当該原動機(2)から駆動用車輪(4)に駆動力を伝達する伝動手段(1,3)と、地面側に配置される作業部(16)と、座席(19)と、ハンドル(5)とを備えた乗用型農作業機械において、前記駆動用車輪(4)、前記ハンドル(5)、前記伝動手段(1,3)および前記原動機(2)を一体化した駆動ユニット(11,11a,11b,11c)と、前記座席(19)および前記作業部(16)とを接続するフレーム(8,8a,8b)とを備え、当該フレーム(8,8a,8b)に、前記駆動ユニット(11,11a,11b,11c)を回転自在に接続することで操舵可能とし、前記伝動手段(1,3)を前記座席(19)の下で前後方向に沿って配置し、当該伝動手段(1,3)に接続される前記原動機(2)の位置を前記座席(19)より後方でかつ前記座席(19)より下方としたことを特徴とする。
【0014】
請求項1に記載の発明においては、駆動用車輪(4)と、当該駆動用車輪(4)を回転駆動するための原動機(2)および伝動手段(1,3)が一体化されるとともに、それに加えてハンドル(5)を一体化したものが駆動ユニット(11,11a,11b,11c)とされる。そして、これを座席(19)および作業部(16)(例えば、溝切り刃(16))とを接続するフレーム(8,8a,8b)に回転自在に取り付けることで、駆動用車輪(4)を操舵輪として、ハンドル(5)と一体に回転させることができ、操舵用の構造として自転車と同様の簡単な構造を採用可能となる。
【0015】
また、伝動手段(1,3)を座席の下で前後方向に沿って配置し、この伝動手段(1,3)に接続される原動機(2)を座席(19)より後方で、かつ当該座席(19)より下方に配置することにより、前進する乗用型農作業機において、作業者側に原動機(2)の排気が向かうのを防止することができる。
すなわち、駆動用車輪(4)とハンドル(5)と伝動手段(1,3)と原動機(2)を一体化して駆動ユニット(11,11a,11b,11c)とするとともに操舵用に回転自在とする際に、全体をコンパクトにまとめることなく、敢えて原動機(2)を駆動用車輪(4)から位置的に離して、座席(19)の後方で下側となる配置としたので、原動機(2)が座席(19)にすわる作業者の後方でかつ下側となり、原動機(2)の排気が作業者に向かうのを防止することができる。
なお、駆動用車輪(4)を有する駆動ユニット(11,11a,11b)を一体に回転して乗用型農作業機の操舵を行う場合に、例えば、駆動用車輪(4)の前後の略中央部で、かつ、略鉛直方向に沿った回転軸回りに駆動用車輪(4)を回転可能とし、ハンドル(5)を左右に回転するように操作して進行方向を変更する方法がある。
また、別の方法としては、駆動ユニット(11c)の前記フレーム(8b)に対する回転軸を略鉛直ではなく略水平として、ハンドル(5)を左右に倒すように操作することで、駆動用車輪(4)を左もしくは右に傾け、右もしくは左に傾いた駆動用車輪(4)により、乗用型農作業機の進行方向を左右に操舵可能とするものがある。
【0016】
請求項2に記載の乗用型農作業機は、請求項1に記載の発明において、前記駆動ユニット(11,11a,11b)を略鉛直方向に沿った軸回りに回転自在とし、かつ、前記駆動ユニット(11,11a,11b)の回転範囲を前記原動機(2)が前記座席(19)より前とならない範囲以下に規制する回転規制手段を備えることを特徴とする。
【0017】
請求項2に記載の発明においては、上述のようにハンドル(5)を左右に回すことで、乗用型農作業機の進行方向を左右に変更することが可能となる。また、ハンドル(5)および駆動用車輪(4)側に回転中心を配置した場合に、座席(19)の後方にある原動機(2)が広い範囲で回転移動することになり、ハンドル(5)を大きくきると例えば原動機(2)が座席(19)より前になってしまう虞があるが、回転規制手段により原動機(2)が大きく移動するのを防止することができる。
また、原動機(2)と駆動用車輪(4)とを接続する部分が大きく移動すると、フレーム(8,8a)や作業者の足などに緩衝する虞があるので、回転範囲を原動機(2)が座席(19)より前に移動する回転範囲よりも小さな回転範囲に規制することが好ましい。
【0018】
請求項3に記載の乗用型農作業機は、請求項1に記載の発明において、前記駆動ユニット(11c)を略水平方向に沿った軸回りに回転自在としたことを特徴とする。
【0019】
請求項3に記載の発明においては、ハンドル(5)を左右に倒すように傾けて、駆動用車輪(4)を左右に傾けることにより乗用型農作業機械の進行方向を左右に変更することが可能となる。この場合に座席(19)より後ろ側に配置された原動機(2)が左右に大きく移動することはなく、左右に傾くか、傾きながら左右に僅かに移動する程度なので、ハンドル(5)を大きく左右いずれかに傾けても原動機(2)や原動機(2)と駆動用車輪(4)とを繋ぐ部分がフレーム(8b)や作業者の足に緩衝することがない。したがって、原動機(2)が座席(19)の前側に移動することもない。なお、バランスを崩さないように、駆動ユニット(11c)の回転範囲を規制するものとしてもよい。
【0020】
請求項4に記載の乗用型農作業機は、請求項3に記載の発明において、略水平方向に沿った軸回りに回転自在な前記駆動ユニット(11d)から前記ハンドル(5)を分離するとともに当該ハンドル(5)を略鉛直方向に沿った軸回りに回転自在とし、前記ハンドル(5)の略鉛直方向に沿った軸回りの回転を前駆駆動ユニット(11d)の略水平方向に沿った軸回りの回転に変換する回転方向変換手段(9j)を備えたことを特徴とする
【0021】
請求項4に記載の発明においては、請求項3の記載に発明において、略水平方向に沿って軸回りに回転自在な前記駆動ユニット(11c)の一部としてハンドル(5)を略水平な軸回りに回転させて左右に傾けることにより操舵が可能となるが、ハンドル(5)だけを左右に傾けることで操舵することから、通常の二輪車と異なる操舵感覚となるが、この発明によれば、ハンドル(5)を略垂直な軸回りに左右に回転することで操舵が可能となり二輪車に近い操舵方法となり、初めて使用する使用者にも操舵し易いものとなる。
【発明の効果】
【0022】
本発明の乗用型農作業機によれば、簡単な構成で、乗用型農作業機の進行方向を左右に変更する操舵機能を実現することができるとともに、このような操舵機構を設けたことにより原動機の排気が作業者側に向かうのを防止することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
以下、本発明の実施の形態を図面を参照して説明する。
図1(a),(b)は、本発明の第1の実施の形態に係る乗用型農作業機としての乗用型水田溝切り機を示す図であって、図1(a)は要部正面図であり、図1(b)は側面図である。なお、図1(b)においては、後述の駆動用車輪4の一部、減速機3、出力軸3a、前外筒パイプ6、回転内筒パイプ7、ハンドル支持パイプ9の一部等を図示し、その他のエンジン2、座席19、溝切り刃16等の図示を省略している。
また、後述の図3(b)、図4(b)においても、ほぼ同様に一部の図示を省略している。
【0024】
この乗用型水田溝切り機(乗用型農作業機)は、後方側が少し高くなって斜めに前後方向に延びる伝動軸用パイプ1を備えている。この伝動軸用パイプ1の後端部および前端部にはそれぞれ、エンジン(原動機)2および減速機3が取り付けられている。エンジン2の回転動力は、伝動軸用パイプ1内の伝動軸(図示せず)を介して減速機3へ伝達される。
【0025】
なお、この伝動軸用パイプ1と当該伝動軸用パイプ1内の伝動軸と減速機3とにより伝動手段が構成されている。減速機3の出力軸(駆動軸)3aは、減速機3のケースから進行方向右側(後側から見て右側)に水平に突出しており、この出力軸3aには、駆動用車輪4が1つ取り付けられている。なお、この出力軸3aが駆動用車輪4の車軸を兼ねている。この駆動用車輪4は、減速機3を介して減速されて伝達されるエンジン2からの回転動力により回転駆動される。
【0026】
また、上述の構成により、減速機3の部分で、駆動用車輪4は、片持ち状態で支持されることになる。この例では、駆動用車輪4にハンドル5を接続するとともに回転自在に前外筒パイプ6に支持される回転内筒パイプ7が鉛直方向に沿って直線状に出力軸3aを備える減速機3のケースに接続され、かつ、駆動用車輪4が片持ち状態となるので、この駆動用車輪4を左右に回転自在に支持する部分が極めて簡単な構成となる。但し、後述のように駆動用車輪4の左右への回転の回転中心が駆動用車輪4の前後左右の中心に対して進行方向左側に偏芯した状態となる。
【0027】
減速機3の上部には、鉛直方向上側に向かって延びる回転内筒パイプ7が取り付けられている。この回転内筒パイプ7は、後述するフレーム8の一部となる前外筒パイプ6内に同軸上に配置された状態で挿入されている。そして、回転内筒パイプ7は、前外筒パイプ6内でこれらパイプの軸方向回りに回転自在に挿入されている。したがって、回転内筒パイプ7は、鉛直方向に沿った中心軸回りに回転自在とされている。
また、前外筒パイプ6と回転内筒パイプ7との間には例えば軸受が配置されているとともに、前外筒パイプ6に対して回転内筒パイプ7は、その軸方向に沿った移動が規制されている。
【0028】
なお、前外筒パイプ6および回転内筒パイプ7の軸方向は、完全に鉛直方向に沿っている必要はなく、前傾もしくは後傾することにより、鉛直方向から少しずれていてもよい。また、この例では、駆動用車輪4に対して減速機3が進行方向左に偏芯した位置に配置され、当該減速機3から上方に上る回転内筒パイプ7と、当該回転内筒パイプ7が挿入される前外筒パイプ6とが同様に駆動用車輪4に対して偏芯した位置に配置される。
また、回転内筒パイプ7および前外筒パイプ6は、駆動用車輪4の前後方向の中央部に配置されるが、左右方向は上述のように偏芯して、中央より進行方向左側に配置され、後述のように操舵のために駆動用車輪4を左右に回転させる際の回転軸が、駆動用車輪4に対して左にオフセット(偏芯)された状態となっている。
【0029】
そして、回転内筒パイプ7の上端部にはハンドル支持パイプ9が前傾した状態で取り付けられている。なお、ハンドル支持パイプ9の基端部には、進行方向左側に突出する取付パイプ9aが接続されており、この左側に突出する取付パイプ9aの部分に左右二枚の取付板9b,9bが接合され、この左右2枚の取付板9b,9bの間に回転内筒パイプ7の上端部が挟まれた状態でボルトにより回転内筒パイプ7が2枚の取付板9b,9bに締結された状態となっている。
【0030】
取付パイプ9aを介して駆動用車輪4に対して進行方向左側に偏芯している回転内筒パイプ7に接続されることで、ハンドル支持パイプ9は、駆動用車輪4の左右の略中央に配置される。
そして、このハンドル支持パイプ9の上端部には、左右に水平に延びるパイプからなるハンドル5が次のように取り付けられている。
すなわち、ハンドル支持パイプ9の上端部近傍に支持金具10が固定され、この支持金具10にハンドル5が固定されている。
【0031】
ハンドル5には、スロットルレバー(図示せず)が取り付けられており、このスロットルレバーによりエンジン2のスロットル開度、すなわちエンジン2の出力を調整する。また、ハンドル5には、ストップスイッチ(図示せず)が取り付けられており、このストップスイッチによりエンジン2の点火プラグへの電流の流れをショートさせ、エンジン2の駆動を停止させる。
【0032】
以上の構成により、駆動用車輪4、駆動用車輪4の車軸となる出力軸3aを備える減速機3、当該減速機3の伝動軸用パイプ1および伝動軸を介して接続されるエンジン2、減速機3に接続される回転内筒パイプ7、回転内筒パイプ7に接続されるハンドル支持パイプ9、ハンドル支持パイプ9に接続されるハンドル5が一体化され、駆動ユニット11を構成している。
【0033】
また、前記前外筒パイプ6には、その上端部から後方に延出する上フレームパイプ13が接続され、かつ、当該前外筒パイプ6の下端部から後方に延出する下フレームパイプ14が接続されている。
そして、上フレームパイプ13の後端部と下フレームパイプ14の後端部とがこれらの間を上下に延在する後ろフレームパイプ15の上下端部にそれぞれ接続されている。
これにより、前側で上下に延在する前外筒パイプ6と、上フレームパイプ13と、下フレームパイプ14と、後ろフレームパイプ15とから前後に長い四角枠状のフレーム8が構成されている。
また、このフレーム8には、作業部のうちの一種としての溝切り刃(バイド板)16を固定するための斜めフレームパイプ17がフレーム8の右側に接続されている。
【0034】
斜めフレームパイプ17は、その上端部が上フレームパイプ13の中央部の右側に接続され、中央部が下フレームパイプ14の後端部と後ろフレームパイプ15の下端部との接合部の右側に接続され、おおよそ45度程度の傾斜で後斜め下方に延出している。そして、斜めフレームパイプ17の後端部の高さ位置は、駆動用車輪4の中央の高さ位置より僅かに下の位置となっている。そして、斜めフレームパイプ17の下端部には、溝切り刃16の前端部上部に設けられた取付部材16aが取り付けられている。この溝切り刃16は、その前端側が後端側より高くなるように傾斜して取り付けられている。溝切り刃16の高さおよび傾斜角度は、溝切り刃16の取り付け位置を変えることにより、変えることができるようになっている。なお、溝切り刃16の下端部は、駆動用車輪4の下端部の高さ位置より僅かに低い位置となっている。溝切り刃16の左右方向中心部は、後述の座席19の左右方向中心部と一致している。
【0035】
フレーム8の上側には、上下に長い概略四角板状で上部にクッションが配置された座席(サドル)19が次のように取り付けられている。すなわち、フレーム8の上フレームパイプ13には、矩形枠状の四角枠21が固定され、一方座席19の下部には、前側の左右2箇所および後ろ側の中央部1箇所に下方に延びる取付板19a,19aが固定されており、これらの取付板19a,19aがそれぞれ、四角枠21の前側の左右および後ろ側の中央部にボルトにより固定されている。取付板19a,19aには、上下に間隔をおいて複数個の取付孔が形成されており、ボルトが挿入される取付孔の位置を選択することにより座席19の取付高さを変えることができるようになっている。
【0036】
四角枠21は、進行方向左側において水平に前後方向に直線状に延びる部分が上フレームパイプ13に固定されており、したがって四角枠21は前後方向に沿って上下に延びるフレーム8より進行方向右側に水平に突き出ている。なお、フレーム8の前外筒パイプ6、上フレームパイプ13、下フレームパイプ14、後ろフレームパイプ15は、駆動用車輪4の進行方向左側にあり、上フレームパイプ13に対して座席19が進行方向右側に突き出すことで、駆動用車輪4の左右の中心と座席19の左右の中心とを近づけることができる。この座席19は、駆動用車輪4の後方斜め上方に位置している。
【0037】
以上の構成により、座席19、溝切り刃16がフレーム8により一体に接合され、本体ユニット20を構成している。
そして、本体ユニット20のフレーム8の前外筒パイプ6内に駆動ユニット11の回転内筒パイプ7が上下に貫通して挿入されていることで、本体ユニット20と駆動ユニット11とが連結された状態となっている。
この状態で、伝動軸用パイプ1の後端部にあるエンジン2は、座席19の後方で、かつ、座席19より下方となっている。
ここで、ハンドル5を左右に略水平な状態で回転させると、駆動用車輪4の車軸としての出力軸3aと直交する方向が左右に向きを変更することになり、駆動用車輪4の転動方向が変更され、乗用型農作業機の進行方向が変更される。
【0038】
ここで、本体ユニット20の各部材と、駆動ユニット11の各部材との配置は、駆動用車輪4の中心、当該駆動用車輪4の前後の中央にある回転内筒パイプ7、当該回転内筒パイプ7から前傾して上方に延出されるハンドル支持パイプ9およびハンドル5は、座席19より前に配置され、ハンドル支持パイプ9が座席19の高さ位置から上方に延出した状態で、ハンドル5は、座席より上方に配置される。
また、駆動用車輪4および回転内筒パイプ7は、座席19より下に配置される。
【0039】
また、フレーム8は、その前外筒パイプ6内に回転内筒パイプ7が挿入された状態なので、フレーム8の前端部となる前外筒パイプ6が駆動用車輪4の上下の中央部より上で、減速機3より上の位置から上方に延出した状態で配置されるとともに駆動用車輪4の前後の中央部に配置される。
そして、フレーム8は、駆動用車輪4の上端部の高さ位置から上に配置され、かつ、駆動用車輪4の前後の中央部から後方に延出して配置されるとともに、後端部は、駆動用車輪4の後端部より後方となっている。
【0040】
また、駆動用車輪4の上下および前後の中央部に配置される減速機3から後方斜め上方に延びる伝動軸用パイプ1は、斜めフレームパイプ17を除くフレーム8より下側に配置され、斜めフレームパイプ17を除くフレーム8と緩衝しないようになっている。
また、伝動軸用パイプ1は、その後端部のエンジン2の僅かに前側が斜めフレームパイプ17と緩衝する位置に配置される。
【0041】
ここで、伝動軸用パイプ1は、進行方向左側に配置され、斜めフレームパイプ17を除くフレーム8と略左右位置が一致するが、斜めフレームパイプ17は、当該斜めフレームパイプ17を除くフレーム8の進行方向右側に配置されており、進行方向左側の伝動軸用パイプ1と、斜めフレームパイプ17とは、左右に離れて配置された状態となっている。
したがって、ハンドル5の操作により、駆動用車輪4をその前後の中部で左右に回転した際に伝動軸用パイプ1も左右に振れることになるが、ハンドル5を進行方向左側にきった際に、伝動軸用パイプ1が斜めフレームパイプ17に当たるまで、駆動用車輪4を進行方向左側に回せることになる。
【0042】
また、進行方向右側にハンドル5を切った場合は、伝動軸用パイプ1が斜めフレームパイプ17に緩衝することがなく、180度以上回転させることも可能となってしまう。
このような状態だと、ハンドル5を進行方向左側に切った場合に、伝動軸用パイプ1が斜めフレームパイプ17に当たって衝撃を生じる虞がある。
また、ハンドル5を進行方向右側に必要以上に切った場合に、伝動軸用パイプ1が、乗用型農作業機に乗っている作業者の下肢に当たったり、エンジン2が座席19(作業者)より前になったりする可能性がある。
【0043】
そこで、乗用型農作業機には、ハンドルを備える駆動ユニットの回転範囲を規制する回転規制手段(図示略)が設けられている。
この例の回転規制手段は、図2に示すように、前外筒パイプ6に設けられた左右に長い長穴61と、回転内筒パイプ7に設けられ、回転内筒パイプ7の外周面に設けられ、当該外周面から前外筒パイプ6の長穴61内に突出し、長穴61内を当該長穴61の範囲内で左右に移動可能となる突起71とからなる。
【0044】
ここで、ハンドル5をきってハンドル5とともに回転内筒パイプ7が回った際に、突起71が長穴61の右端部もしくは左端部に移動すると、それ以上右もしくは左に移動できなくなり、駆動ユニット11の回転範囲が規制されることになる。この際に規制範囲は、エンジン2が座席19より前に回転しない状態であるが、それよりも小さな回転範囲で回転を規制することが好ましく、例えば、駆動ユニット11を進行方向左に回した際に、伝動軸用パイプ1が作業部としての溝切り刃16を支持する斜めフレームパイプ17に接触するより僅かに前となる角度で規制し、進行方向右に駆動ユニット11を回した際には、上述の右への回転を規制する角度と、反対方向の左へ同じ角度で回転が抑制されるように規制することが好ましい。
【0045】
これにより、エンジン2が座席19にすわる作業者より前になることがなく、さらに伝動軸用パイプ1が座席19にすわる作業者の下肢に当たることがない。また、伝動軸用パイプ1が斜めフレームパイプ17に当たるのを防止することができる。
なお、回転規制手段は、上述のものに限られるものではなく、例えば、フレーム8の下側から下方の伝動軸用パイプ1まで延出するコ字状の規制部材で、伝動軸用パイプ1を挟んだ状態とし、このコ字状の部材の間隔分だけ伝動軸用パイプ1を左右に回転移動できる状態に規制するものであってもよいし、ハンドル支持パイプ9の回転範囲を規制するような部材であってもよい。
以上のような乗用型農作業機によれば、エンジン2の排気が作業者に向かうのを防止することができるとともに、自転車と同様の外筒内で内筒を回転させるだけの簡単な構成で、駆動力の伝動手段を有する駆動用車輪を容易に左右に回して進路変更が可能となる。
【0046】
図3(a),(b)は、本発明の第2の実施の形態に係る乗用型農作業機としての乗用型水田溝切り機を示す図であって、図3(a)は要部正面図であり、図3(b)は側面図である。
第2の実施の形態の乗用型農作業機は、第1の実施形態の乗用型農作業機において、駆動用車輪が片持ち支持しで、かつ、駆動用車輪の左右への回転中心が進行方向左側に偏芯していたものを駆動用車輪を両持ちで支持し、かつ、駆動用車輪の左右の回転中心を駆動用車輪の左右前後の中心に配置したものである。
【0047】
第2の実施形態において、基本的な構成は、第1の実施の形態と同様であるが、フレームの形状およびフレームを構成する前外筒パイプの形状の変更と、回転内筒パイプの形状と回転内筒パイプの部分が自転車のフロントフォークのような形状への変更とが行われているが、その他の構成要素は、基本的に第1の実施の形態と同様であり、第1の実施の形態と同様の構成要素には、図3(a),(b)に第1の実施の形態と同じ符号を付してその説明を省略する。
【0048】
第2の実施の形態においては、フレーム8aの前端部を構成する前外筒パイプ6aの上下長さが短くされている。また、前外筒パイプ6aの上端部の高さ位置は、第1の実施の形態と同様であり、下端部の高さ位置が第1の実施の形態の場合より高くされている。
そして、フレーム8aにおいて、前外筒パイプ6aには、後方斜め下方側に向かって延出する上側斜めフレームパイプ17bの前端部が接続されている。そして、上側斜めフレームパイプ17bの上端部より僅かに後ろの位置から略水平に後方に向かって延出する上フレームパイプ13aの前端部が接続されている。また、上側斜めフレームパイプ17bの後端部と、上フレームパイプ13aの後端部との間には、上下に延在する後ろフレームパイプ15aが架け渡されている。
【0049】
したがって、フレーム8aは、第1の実施の形態で概略四角枠状だったのに対して、下側の辺が斜めとなる直角三角形枠状に構成されている。なお、座席19は、第1実施例と同様に四角枠21を介して取り付けられるが、この例では上フレームパイプ13aが左右の略中央に配置されるので、座席19の左右中央と、フレーム8aの上フレームパイプ13aの略中央とが一致するように四角枠21が上フレームパイプ13aに接続される。
また、上側斜めフレームパイプ17bの下側には、溝切り刃16が下端部に取り付けられる下側斜めフレームパイプ17aが接続されている。そして、これらフレーム8a、座席19、溝切り刃16から本体ユニット20aが構成される。
【0050】
そして、駆動ユニット11aにおいては、回転内筒パイプ7aの上下長さが前外筒パイプ6aの長さに対応して短くされるとともに、その下に逆U字状のフォークパイプ7bが接続されている。フォークパイプ7bは、左右でそれぞれ上下に延在する2本のフォーク部7c、7dと、これらフォーク部7c、7dの上端部を接続する左右に延在した接続部7eとを有する。そして、接続部7eの左右の中央部が回転内筒パイプ7aに接続されている。
【0051】
そして、左右のフォーク部7c、7dのうちの進行方向左側のフォーク部7cが減速機3に接続されている。また、進行方向右側のフォーク部7dは、左側のフォーク部7cより長くされて下側にさらに延出した状態とされている。そして、進行方向右側のフォーク部7dの下端部の左側の側面には、減速機3から水平に右側に延出して駆動用車輪4に固定されるとともに駆動用車輪4を貫通した状態の出力軸3aの先端部を回転自在に支持する軸受3cが設けられている。
【0052】
以上のような構成により、駆動用車輪4の回転中心が駆動用車輪4の前後左右の中心と一致し、かつ、駆動用車輪4を両持ちする状態となって、乗用型農作業機の剛性を高めることができる。但し、第1の実施の形態よりも重量およびコストが高くなる可能性がある。
図4(a),(b)は、本発明の第3の実施の形態に係る乗用型農作業機としての乗用型水田溝切り機を示す図であって、図4(a)は要部正面図であり、図4(b)は側面図である。
【0053】
第3の実施の形態の乗用型農作業機は、第2の実施の形態の乗用型農作業機におけるフォークパイプ7bのうちの進行方向右側のフォーク部7dがない状態として第1の実施の形態と同様に駆動用車輪4を片持ちとしたものである。但し、第1の実施の形態において、駆動用車輪4の左右への回転移動する際の回転中心が駆動用車輪の前後左右の中心から左右にずれていたのに対して、第3の実施の形態では、基本的な形状が第2の実施の形態と同様となっており、駆動用車輪4の左右への回転中心が、駆動用車輪4の前後左右の中心と一致するようになっている。
【0054】
そして、フォークパイプ7bの進行方向右側のフォーク部7dと、当該フォーク部7dの下端部に設けられた軸受3cが無いこと以外の構成は、基本的に第2の実施の形態と同様であり、第2の実施の形態と同様の構成要素には、図4(a),(b)に第2の実施の形態と同じ符号を付してその説明を省略する。なお、第2の実施形態でも説明が省略されている第3の実施の形態の部分は、第1の実施の形態と同様である。
【0055】
そして、第3の実施の形態において、フォークパイプ7fは、上述のように第2の実施の形態のフォークパイプ7bから進行方向右側のフォーク部7dがなくなった形状となっている。したがって、フォークパイプ7fは、短い回転内筒パイプ7aの下端部から左に延出した後に下方に屈曲して延出する構成となっている。ここで、フォークパイプ7fを備える駆動ユニット11bは、フォークパイプ7f以外の部分が、第2の実施の形態の駆動ユニット11aと同じとなっている。
これにより、駆動用車輪4は、片持ちとなり、第2の実施の形態の乗用農作業機械より軽量化を図ることができる。また、第1の実施の形態の場合より駆動用車輪4の回転中心が偏芯していないので、よりバランスが優れたものとなっている。
【0056】
図5は、本発明の第4の実施の形態に係る乗用型農作業機としての乗用型水田溝切り機を示す側面図である。
第4の実施の形態の乗用型農作業機は、第1の実施の形態の農作業機が、駆動用車輪4を左右に回転すること、すなわち、ほぼ鉛直方向に沿った回転軸回りに駆動用車輪4を左右に回すことで、進行方向を変更する操舵機能を付与していたのに対して、駆動用車輪4を左右に傾けること、すなわち、略水平方向に沿った回転軸回りに駆動用車輪4を回すことで、進行方向を変更する操舵機能を付与している。
【0057】
第4の実施形態において、基本的な主要構成要素は、第1の実施の形態と同様であるが、駆動ユニット11cを回転させる際の回転軸が略垂直な状態から略水平な状態とされたことにより、細部の構造が異なるものとなっているので、第1の実施の形態と同様の構成要素には、図5(a),(b)に第1の実施の形態と同じ符号を付してその説明を省略もしくは簡略化する。
第4の実施の形態において、駆動ユニット11cは、第1の実施の形態の回転内筒パイプ7aが存在せず、その代わりにハンドル支持パイプ9dがハンドル5の取付位置から下方の減速機3まで延在し、減速機3に接続されている。
【0058】
なお、この例において、ハンドル支持パイプ9dは、その下端が減速機3に接続され、かつ、上下二箇所の屈曲部9f、9gがあり、減速機3から下の屈曲部9fまでが鉛直方向に沿ったものとされ、下の屈曲部9fから上の屈曲部9gまでが右斜め前に傾いたものとされ、上の屈曲部9gから上端までが再び鉛直方向に沿ったものとされている。
【0059】
減速機3、伝動軸用パイプ1a、伝動軸およびエンジン2は、基本的に第1の実施の形態と同様の構成となっているが、伝動軸用パイプ1aが、フレーム8bの下外筒フレームパイプ14a内に、当該下外筒フレームパイプ14aに対して同軸上となるように挿入されるとともに貫通した状態で配置されている。そして、伝動軸用パイプ1aが概略水平な下外筒フレームパイプ14a内で左右に傾くように回転可能となっている。なお、下外筒フレームパイプ14aおよび伝動軸用パイプ1aは、後方斜め上方向に延出した状態に配置されている。
また、フレーム8bは、水平な上フレームパイプ13bと、当該上フレームパイプ13bの前端部から下方に延出する前フレームパイプ6dと、当該上フレームパイプ13bの後端部から下方に延出する後ろフレームパイプ15bとを備えている。
【0060】
そして、前フレームパイプ6dの下端部が下外筒フレームパイプ14aの前端部に接続され、後ろフレームパイプ15bの下端部が下外筒フレームパイプ14aの後端部に接続されている。
また、前フレームパイプ6dの上下の中央部から下外筒フレームパイプ14aの後端部で後ろフレームパイプ15bより前の位置まで第1斜めフレームパイプ17cが配置され、下外筒フレームパイプ14aの後端部から後斜め下に向かって第2斜めフレームパイプ17dが接続されている。そして、第2斜めフレームパイプ17dに第1の実施の形態の斜めフレームパイプ17の場合と同様に溝切り刃16が取り付けられている。
【0061】
また、上フレームパイプ13bには、第1の実施の形態と同様に四角枠21を介して座席19が取り付けられている。
したがって、第4の実施の形態においても、座席19と作業部としての溝切り刃16とがフレーム8bにより一体に接合された状態となっており、これらから本体ユニット20bが構成されている。
そして、下外筒フレームパイプ14a内に軸受を介して回転自在に伝動軸用パイプ1aを挿入した状態とする。なお、伝動軸用パイプ1aは、下外筒フレームパイプ14a内において、これらの軸方向に沿った方向の移動が規制され、回転だけが可能となっている。
【0062】
このような構成の第4の実施形態の乗用型農作業機によれば、ハンドル5を左右いずれかに倒すように回転させることで、駆動用車輪4が左もしくは右に傾くことになる。
この際に進行方向左側に駆動用車輪4を傾けると傾いた駆動用車輪4に対応して進行方向を左に変更することができ、逆に操作することで進行方向を右に変更することができ、操舵機能が付与されたことになる。
【0063】
この第4の実施の形態の場合には、ハンドル5の操作量が、第1〜第3の実施の形態の場合に比較して大きくなる可能性があるが、ハンドル5を大きく操作してもエンジン2はその前後位置を変えることがなく、また、座席19上の作業者の下肢に伝動軸用パイプ1aが緩衝することがない。すなわち、駆動ユニット11cにおいて、駆動用車輪4からハンドル5までの上下に長い部分は、大きく左右に移動して傾くが、エンジン2および伝動軸用パイプ1aは、左右前後に位置を大きく変えることがない。特に、伝動軸用パイプ1aは、その軸心を中心に回転するだけなので、回転するだけで左右に位置を変えることがない。したがって、回転範囲を小さく規制する必要はない。なお、過度の操作を防止するために、回転範囲を第1の実施の形態と同様の方法で規制してもよい。
【0064】
第4の実施の形態では、駆動用車輪4が片持ちとされているが、第2の実施の形態のように逆U字状のフォークパイプ7bを用いて駆動用車輪を両持ちとしてもよい。
【0065】
図6は、本発明の第5の実施の形態に係る乗用型農作業機としての乗用型水田溝切り機を示す側面図である。
第5の実施の形態の乗用型農作業機では、第4の実施の形態の農作業基のハンドル支持パイプ9dが、その屈曲部9gより僅かに上の部分で、下側の車輪傾斜動作パイプ9hと、上側のハンドルポスト9iとに分離し、かつ、互いに連動する構成とされている。そして、このハンドル5から減速機3に至る部分以外は、基本的に第4の実施の形態と同様の構成となっており、第4の実施の形態と同様の構成については、図6に第4の実施の形態と同じ符号を付してその説明を省略する。
【0066】
この例において、ハンドル5は直管状のハンドルポスト9iの上端部に支持金具10で接続されている。
ハンドルポスト9iは、座席19の前側に設けられたポスト回転支持部材19bにより当該ハンドルポスト9iの軸方向回りに回転自在に支持されている。
このポスト回転支持部材19bは、座席19の全面側に固定されるとともに、軸受けとしてハンドルポスト9iを所定角度範囲内で回転自在に支持するとともに、ハンドルポスト9iを抜け止めした状態で回転可能としている。そして、ハンドルポスト9iは、支持金具10で当該ハンドルポスト9iに固定されたハンドル5と一体に回転可能となっている。
【0067】
ハンドルポスト9iは、その軸方向が鉛直方向に対して僅かに前傾した状態となっているが、ほぼ鉛直方向に沿ったものとなっており、ハンドルポスト9iと一体にハンドルポスト9iの軸方向回りに回転するハンドル5は、略鉛直方向に沿った軸回りに回転自在となっている。
また、ハンドルポスト9iの下端部には、前方に延出する2本の棒状部材を備えたフォーク9jが固定されており、当該フォーク9jがハンドルポスト9iと一体に回転可能に設けられている。
【0068】
なお、ハンドルポスト9iの前後位置は、車輪傾斜動作パイプ9hの右側に屈曲して再び上側に延出した状態の上端部より後方となっている。そして、フォーク9jの先端部が車輪傾斜動作パイプ9hの前後位置となっており、フォーク9jの前側に延出する2本の棒状部材の間に車輪傾斜動作パイプ9hの上端部が遊びを持った状態で挟まれた状態となっている。
車輪傾斜動作パイプ9hは、基本的に第4の実施の形態のハンドル支持パイプ9dの上の屈曲部より僅かに上の部分までと同様の構成を有するもので、下の屈曲部9fから上の屈曲部9gまで右斜め前に傾斜し、上の屈曲部9gより上となる車輪傾斜動作パイプ9hの上端部が右に傾くことなくほぼ鉛直方向に沿っているが僅かに前傾した状態となっている。
【0069】
そして、この上端部が上述のようにフォーク9jに挟まれた状態となっている。また、この車輪傾斜動作パイプ9hは、駆動ユニット11dに含まれるものである。なお、駆動ユニット11dは、第4の実施の形態の駆動ユニット11cからハンドル5およびハンドル支持パイプ9dを除き、その代わりに車輪傾斜動作パイプ9hを加えたものとなっている。そして、駆動ユニット11dは、駆動ユニット11cと同様に、伝動軸用パイプ1aが概略水平な下外筒フレームパイプ14a内で左右に傾くように回転可能となっていることにより、略水平な軸回りに回転可能となっている。
【0070】
以上のような第5の実施の形態の乗用型水田溝切り機によれば、第4の実施の形態と同様に駆動用車輪4を駆動ユニット11dと一体に左右いずれかに傾けることにより操舵が可能となる。この際に第4の実施の形態のように駆動ユニット11cに含まれるハンドル5を左右いずれかに傾けることで駆動用車輪4を傾けるのではなく、駆動ユニット11dから分離されたハンドル5を略鉛直方向に沿った軸回りに左右いずれかに回転することにより、回転方向変換手段としてのフォーク9jを一体に左右いずれかに回転することになり、このフォーク9jの先端に遊びを持って挟まれた状態の車輪傾斜動作パイプ9hが、当該車輪傾斜動作パイプ9hおよび駆動用車輪4を含む駆動ユニット11dごと左右いずれかに傾けられることになる。
【0071】
これにより、ハンドル5を右に回すと、駆動用車輪4が右に傾いて乗用型水田溝切り機の進行方向が右に曲がり、ハンドル5を左に回すと、駆動用車輪4が左に傾いて乗用型水田溝切り機の進行方向が左に曲がる。
このように操舵の操作が第4の実施の形態のようにハンドル5を左右に傾けるのではなく、左右に回転させるように操作すること、すなわち、二輪車のハンドル操作に近いことから、例えば、乗用型農作業機の操作に慣れていない使用者でも操舵を容易に行うことが可能となる。
【0072】
また、上述の実施の形態では、本発明を乗用型水田溝切り機に適用した場合について説明したが、本発明はこれに限らず、乗用型水田中耕除草機あるいは乗用型水田施肥機等にも適用することができる。この場合、作業部としての溝切り刃が除草部あるいは施肥部等に代えられる。
【図面の簡単な説明】
【0073】
【図1】本発明の第1の実施の形態に係る乗用型水田溝切り機を示す図であって、(a)が要部正面図、(b)が側面図である。
【図2】前記乗用水田溝切り機の回転規制手段を示す斜視図である。
【図3】本発明の第2の実施の形態に係る乗用型水田溝切り機を示す図であって、(a)が要部正面図、(b)が側面図である。
【図4】本発明の第3の実施の形態に係る乗用型水田溝切り機を示す図であって、(a)が要部正面図、(b)が側面図である。
【図5】本発明の第4の実施の形態に係る乗用型水田溝切り機を示す側面図である。
【図6】本発明の第5の実施の形態に係る乗用型水田溝切り機を示す側面図である。
【符号の説明】
【0074】
1 伝動軸用パイプ(伝動手段)
2 エンジン(原動機)
3 減速機(伝動手段)
4 駆動用車輪
5 ハンドル
8 フレーム
8a フレーム
8b フレーム
9j フォーク(回転方向変換手段)
11 駆動ユニット
11a 駆動ユニット
11b 駆動ユニット
11c 駆動ユニット
11d 駆動ユニット
16 溝切り刃(作業部)
19 座席
61 長穴(回転規制手段)
71 突起(回転規制手段)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
原動機(2)と、当該原動機(2)により回転駆動される1つの駆動用車輪(4)と、当該原動機(2)から駆動用車輪(4)に駆動力を伝達する伝動手段(1,3)と、地面側に配置される作業部(16)と、座席(19)と、ハンドル(5)とを備えた乗用型農作業機械において、
前記駆動用車輪(4)、前記ハンドル(5)、前記伝動手段(1,3)および前記原動機(2)を一体化した駆動ユニット(11,11a,11b,11c)と、前記座席(19)および前記作業部(16)とを接続するフレーム(8,8a,8b)とを備え、
当該フレーム(8,8a,8b)に、前記駆動ユニット(11,11a,11b,11c)を回転自在に接続することで操舵可能とし、
前記伝動手段(1,3)を前記座席(19)の下で前後方向に沿って配置し、
当該伝動手段(1,3)に接続される前記原動機(2)の位置を前記座席(19)より後方でかつ前記座席(19)より下方としたことを特徴とする乗用型農作業機。
【請求項2】
前記駆動ユニット(11,11a,11b)を略鉛直方向に沿った軸回りに回転自在とし、
かつ、前記駆動ユニット(11,11a,11b)の回転範囲を前記原動機(2)が前記座席(19)より前とならない範囲以下に規制する回転規制手段を備えることを特徴とする請求項1に記載の乗用型農作業機。
【請求項3】
前記駆動ユニット(11c)を略水平方向に沿った軸回りに回転自在としたことを特徴とする請求項1に記載の乗用型農作業機械。
【請求項4】
略水平方向に沿った軸回りに回転自在な前記駆動ユニット(11d)から前記ハンドル(5)を分離するとともに当該ハンドル(5)を略鉛直方向に沿った軸回りに回転自在とし、
前記ハンドル(5)の略鉛直方向に沿った軸回りの回転を前駆駆動ユニット(11d)の略水平方向に沿った軸回りの回転に変換する回転方向変換手段(9j)を備えたことを特徴とする請求項3に記載の乗用型農作業機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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