説明

乗用溝切機

【課題】水田の溝切作業において操縦可能で、旋回時も溝をきれいに形成することの出来る乗用溝切機を提供する。
【解決手段】エンジン(1)、遠心クラッチ(2)、駆動車輪(8)を含む走行駆動系及び操舵用ハンドル(9)が設けられた前フレーム(12)が後フレーム(20)との回転可能な継ぎ手(11)より前方に配置され、継ぎ手後方に着座位置を変更できる着座シート(19)と回転体(25)と回転体の側面の泥または土を進行方向に対し側方に排除する作用をもつ泥除け板(26)(29)と回転体に付着する泥または土を掻き落とす作用のある泥きり板(27)で構成された溝切部を持ち、ハンドル操作による操縦が可能で直進時や旋回時でもきれいな溝を作ることが可能なことを特徴とする乗用溝切機である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、乗車したまま水田の溝切作業ができ、進行方向を変化させても円滑に溝を作れる溝切機に関するものである。
【背景技術】
【0002】
溝切作業機の中で、乗用型は、4輪車の移動体の後部に溝切板を設置したもの(特許文献1)や、駆動輪と溝切板の間に作業者用の着座シートを設け、作業者が乗車するもの(特許文献2)が実用化されている。
【0003】
又、実用化されていないが、乗車したまま進行方向を自由に変えられるもの(特許文献3)もある。
【0004】
【特許文献1】特開平9−205816号公報
【特許文献2】特開2005−73540号公報
【特許文献3】特開2008−104425号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら特許文献1記載の4輪車は作業面終端での旋回時に4つの駆動輪が同時に旋回するために踏み潰される作物が多く、使用しないときの保管場所も乗用車1台分の面積を必要とする。
【0006】
特許文献2の乗用タイプによる溝切作業は溝切板に作業者の体重がかかり走行に対する地面との抵抗が大きく押さなければ走行できない場合も多い。
【0007】
また、ハンドルは付いているもの操舵機能は無く作業面終端での方向転換では持ち上げなければならず作業者の負担となっている。
【0008】
特許文献3の操舵できる乗用タイプは実用化されていないが、前記同様溝切板に作業者の体重及び動力機器の重さもかかり走行への抵抗が大きく押さなければ走行できない場合も多いと思われる。
【0009】
また、乗車位置の移動により駆動輪と溝きり部へかかる作業者の体重配分を変化させ、溝きり深さを調整する機能はない。
【0010】
そこで本発明は走行性、操縦性に優れ小型で作業者と作物に負担がかからず容易にきれいな溝を作れる乗用溝切機を提案するものである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
前記の目的を達成すべく、本発明に係る乗用溝切機は、エンジン、クラッチ、駆動車輪を含む走行駆動系及び操舵用ハンドルが設けられた前フレームに作業者が搭乗する着座シートと回転体、泥除け板、泥きり板を含む溝切部からなる後フレームを備え、前記前フレームと前記後フレームは回転可能な継ぎ手で結ばれ操縦可能とされていることを特徴としている。
【0012】
また、エンジン、クラッチ、ハンドル、駆動輪の回転中心軸が、前記後フレームに対する前記前フレームの回転中心軸より前方に配置されており回転中心軸より着座位置を進行方向に対し前後に変更できる作業者の着座シートが設置されている。
【0013】
また、後部に回転体と回転体の側面の泥または土を進行方向に対し側方に排除する作用をもつ泥除け板と回転体に付着する泥、または土を掻き落とす作用のある泥きり板で構成された溝切部が装備されている。
【発明の効果】
【0014】
本発明は上記のごとく構成された本発明にかかわる乗用溝切機ではエンジン、クラッチ、駆動車輪を含む走行駆動系及び操舵用ハンドルが設けられた前フレームに作業者が搭乗する着座シートと回転体、泥除け板、泥きり板を含む溝切部からなる後フレームを備え、前記前フレームと前記後フレームは回転可能な継ぎ手で結ばれているので、進行方向の変更をハンドル操作だけで容易に行うことが出来る。
【0015】
駆動車輪の中心軸が、後フレームに対する前フレームの回転中心軸より前方に配置されているので走行時は駆動車輪の牽引力で溝切機の直線性を確保できる。
【0016】
また、エンジン、クラッチ、ハンドルが、後フレームに対する前フレームの回転中心軸より前方に配置されており回転中心軸より着座位置を進行方向に対し前後に変更できる作業者の着座シートが設置されているので駆動車輪と溝切用回転体にかかる作業者の体重配分を容易に変化させ溝の深さ調整ができる。
【0017】
溝切部は回転体と回転体の側面の泥、または土を進行方向に対し側方に排除する作用をもつ泥除け板と回転体に付着する泥、または土を掻き落とす作用のある泥きり板で構成されており、回転体が地面に食い込むことで溝を作り、回転体頭面が地面に接地する事で溝切部に発生する走行に係る抵抗を軽減する。
【0018】
また、回転体側面に設置された泥除け板が回転体側面に付着する泥、又は土を回転体より進行方向に対し、側方に排除し回転体の回転動作を容易なものとするとともに排除された泥、又は土は溝の側壁を作る。
【0019】
また、回転体に付着した泥、または土が溝切機の走行で形成された溝の内部に落下して溝の形成を阻害するのを回転体後方下部に回転体を覆う泥きり板を設置し泥、又は土を回転体底部で掻き落とし形成された溝を守るとともに、溝の底面を形成する。
【0020】
前記の泥よけ板、泥きり板は、地面より垂直線上の回転体外周より回転体の中心軸よりに設置することで、躯体の旋回時に発生する溝切部への横圧を軽減させ、旋回時でも躯体の走行は容易なものとなる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
次に本発明の実施の形態について図面を参照しながら説明する。
【0022】
図1は、本発明にかかわる乗用溝切機の右側面図である。
図2は左側面図である。
図3は前から見た説明図である。
図4は後ろから見た説明図である。
図5は溝切部の斜め後方より拡大した説明図である。
図5は前フレーム骨格のみを下方から見た斜視図である。
【0023】
図1にしめした乗用溝切機は前フレーム(12)に、エンジン(1)、遠心クラッチ(2)、減速機(3)駆動用車輪(8)を取り付け回転軸(10)を介して上部に操作用ハンドル(9)が取り付ける。
回転軸(10)より筒状継ぎ手を介して後フレーム(20)を取り付ける。
上部に着座シートと最後部に軸受け(24)を介して回転体(25)と泥きり板(27)、フレーム(20)と軸受け(24)を介して泥除け板(26)を取り付る。
【0024】
前フレーム(12)は、フレーム(13)、フレーム(15)とで三角形をなし、その一角である1a点に回転軸受け(17)を三角形に対し直角に取り付け回転軸と駆動車輪の中心が一直線上となる1d点に回転軸受け(17)に対し直角に回転軸(10)を溶接し、上部にひらがなのひの字型又はT字型の操縦用ハンドル(9)を取り付ける。
【0025】
前フレーム(12)と、フレーム(13)、フレーム(15)とでなる三角形の1b点には駆動軸(7)が三角形に対し直角となるよう駆動軸受け台座(18)を介して取り付ける。
【0026】
前フレーム(12)と、フレーム(13)、フレーム(15)とでなる三角形の1c点には駆動部台座(16)を三角形に対し直角に取り付けその台座(16)上にエンジン(1)、遠心クラッチ(2)、減速機(3)を取り付ける。
【0027】
減速機側歯車(4)と駆動軸側歯車(5)はチェーン(6)により結ばれ安全のため全体を覆うカバー(14)を取り付ける。
【0028】
駆動軸(7)へは駆動車輪(8)を取り付ける。
【0029】
後フレームの骨格構造は自転車と類似し、前フレームの回転軸(10)より回転可能な筒状継ぎ手を返して後フレーム(20)と支持フレーム(21)長い着座シート(19)で三角構造とし、必要により補助材を取り付ける。
【0030】
後フレーム(20)とフレーム(21)の接合点にフレーム(22)とフレーム(31)を回転体(25)の幅分あけて後方に取り付ける。
補助材として着座シート(19)とフレーム(21)との接合点とフレーム(22)の終端に補助フレーム(23)を取り付ける。
同様に着座シート(19)とフレーム(21)との接合点とフレーム(31)の終端に補助フレーム(28)を取り付け、回転体の支えとする。
【0031】
フレーム(22)の後部に回転体(25)の回転軸を支える回転体軸受け台座(24)を取り付ける。
同様にフレーム(31)の後部に回転体(25)の回転軸を支える回転体軸受け台座(30)を取り付け、これにより回転体(25)の軸受けとなる。
【0032】
回転体軸受け台座(24)より斜め下方に向け回転体を覆う形で泥きり板(27)を反対側回転体軸受け台座(30)にかけて取り付ける。
【0033】
フレーム(22)と回転体軸受け台座(24)下部に掛け斜めに泥除け板支持板(32)を取り付ける。
泥除け板(26)をねじ止めし、反対側も同様にフレーム(31)と回転体軸受け台座(30)下部に掛け斜めに泥除け板支持板を取り付け泥除け板(29)を取り付ける。
【0034】
回転体(25)ホイール内の泥を掻き出すため、泥除け板(26)、右泥除け板(29)は中間点2bから下方点2aにかけを回転体(25)のホイールに近づけて取り付ける。
【0035】
以上の構造により動力の伝達は、エンジン(1)の回転が遠心クラッチ(2)を通して減速機(3)に伝達され、又は遮断される。
【0036】
減速機(3)に伝達された回転は回転速度を落とすとともに歯車を介して回転方向が直角に変化し減速機側歯車(4)に伝えられ、チェーン(6)を介して駆動軸側歯車(5)を回転させ、駆動軸(7)への回転力となり、よって駆動車輪(8)は回転し、溝切機は走行する。
【0037】
走行駆動系の牽引力は回転継ぎ手(11)を介して後フレームに伝えられ、溝切部が牽引され溝を形成する。
【0038】
走行駆動系の牽引力は回転する回転継ぎ手(11)を介して後フレームに伝えられるため、ハンドル(9)の操作で駆動輪の向きを変化させることにより、進行方向を変化させることが容易である。
【0039】
また、溝切部の地面への接地は回転体(25)が主体のため、走行に係る抵抗を軽減される。
【0040】
また、駆動輪と溝切部回転体にかかる作業者の体重配分調整を着座位置の変更できる着座シート(19)の着座位置を変えることで容易に調整できるため溝深さの調整が容易である。
【0041】
溝切部では回転体で溝切機を支えて泥除け板(26)、右泥除け板(29)で溝の側壁を作り、泥きり板(27)で溝の底面を作るので直進時及び旋回時においても容易にきれいな溝が形成される。
【0042】
また、本実施形態は自転車タイプで、駆動輪は1つであるので駆動輪が作物を踏み潰さないことに注意すれば4輪型の溝切機に比べ直進時、旋回時でも作物の被害は少なく、かつ使用しないときの保管にも場所を取らない。
【図面の簡単な説明】
【0043】
【図1】本発明の乗用溝切機の右側面図である。
【図2】本発明の乗用溝切機の左側面図である。
【図3】本発明の乗用溝切機の前から見た説明図である。
【図4】本発明の乗用溝切機の後ろから見た説明図である。
【図5】本発明の乗用溝切機の溝切部の斜め後方より拡大した説明図である。
【図6】本発明の前フレームの骨格部分のみ斜め下方より見た説明図である。
【符号の説明】
【0044】
1 駆動部(エンジン)
2 遠心クラッチ
8 駆動輪
9 操作用ハンドル
10 回転軸
11 回転継ぎ手
12 前フレーム
19 着座シート
20 後フレーム
25 回転体
26 左泥除け板
27 泥きり板
29 右泥除け板

【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転体(25)と回転体の側面の泥または土を側方に排除する作用をもつ板(26)、右板(29)と回転体に付着する泥、または土を掻き落とす作用のある板(27)とで構成された溝切装置
【請求項2】
駆動部(1)、駆動車輪(8)を含む走行駆動系及び操舵用ハンドル(9)を設けた前フレーム(12)に作業者が搭乗する着座シート(19)と、請求項1に記載の溝切装置からなる後フレーム(20)を備え、前記前フレーム(12)と前記後フレーム(20)は回転可能な継ぎ手(11)で結び、ハンドル(9)の操作で操縦可能なことを特徴とする乗用溝切機。
【請求項3】
駆動部(1)、クラッチ(2)、及び操舵用ハンドル(9)が回転可能な継ぎ手(11)より前方に配置されていることを特徴とする請求項2に記載の乗用溝切機。
【請求項4】
前記前フレーム(12)と前記後フレーム(20)とを結ぶ回転可能な継ぎ手(11)より後部に着座位置を前後に変更することの出来る着座シートを持つ請求項2又は3に記載の乗用溝切機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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