説明

乗用田植機

【課題】操作性の良いアーム体を備える乗用田植機を提供すること。
【解決手段】走行部の前端部にアーム体を設け、そのアーム体を介して走行部の前部の浮き上がりを防止可能にした乗用田植機において、アーム体の基部を略上下方向に設け、アーム体は略水平方向に回動自在に取り付けられ、その回動によって、先端部を走行部の前方に離隔させて配置した使用位置と、先端部を走行部の前側方に離隔させて配置した使用位置と、先端部を走行部に近接させて後方に配置した収納位置とに位置変更自在であり、先端部を走行部の前側方に離隔させて配置した使用位置では、アーム体を上下に変動可能なように構成した。
また走行部の前端部の前記アーム体は、乗用田植機の左右両前端部に設けても良い。
前記アーム体に機体走行開始及び走行停止するための部材を設け、機体走行開始及び走行停止するための部材を掴む又は離す動作と連動させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、乗用田植機の走行部の前端部にアーム体を設け、そのアーム体を介して走行部の前部の浮き上がりを防止可能にしたものに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、乗用田植機の一形態として、走行部の後方位置に植付部を昇降可能に連結し、同走行部の前端部にはアーム体を取り付けたものがある。
そして、アーム体は、前方へ突出状に配置した使用位置と、上方へ立ち上げ状に配置した不使用位置との間で回動自在として、例えば、機体を圃場から脱出させるべく畦越えさせる際には、オペレータは機体から降りて畦上に移動すると共に、アーム体を使用位置に回動させて、同アーム体を下方へ押圧させることにより、機体の前部が浮き上がるのを防止することができるようにしていた。
これに関連する技術は、例えば下記特許文献1,2に開示されている。
これを改良したものが下記特許文献3に記載のものであり、アーム体は、その基端部を略上下方向にして略水平方向に回動自在に取り付けられ、その回動によって、先端部を走行部の前方に離隔させて配置した使用位置と、先端部を走行部に近接させて配置した収納位置とに位置変更自在であり、更に、アーム体基端部の回動支点を上下方向より傾斜して設け、アーム体が使用位置より収納位置において、アーム体の把持片を下方に位置させることが特徴である。
【特許文献1】特開2000−135009号
【特許文献2】特開2000−127983号
【特許文献3】特願2003−419893号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ところが、前記特許文献1等の乗用田植機では、アーム体を下方へ押圧させることにより、機体の前部が浮き上がるのを防止することはできるものの、機体を圃場から脱出させる際に、アーム体を介して機体の前部を上方へ引き上げようとすると、同アーム体が上方に回動するために、同アーム体を介した機体の引き上げ操作が困難になっていた。
又、トラック積み卸し時にトラック荷台長さが短く、作業者が機体前側から同アーム体を操作できるスペースが無い場合に機体の横に回っても操作ができなかった。
そこで、本発明は、乗用田植機の機体前部の横方向からも、浮き上がり防止操作及び引き上げ操作等が可能なアーム体を備える乗用田植機を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明の乗用田植機は、走行部の後方に植付部を昇降可能に連結し、その走行部の前端部にアーム体を設け、そのアーム体を介して走行部の前部の浮き上がりを防止可能にした乗用田植機において、アーム体の基部を略上下方向に設け、アーム体は略水平方向に回動自在に取り付けられ、その回動によって、先端部を走行部の前方に離隔させて配置した使用位置と、先端部を走行部の前側方に離隔させて配置した使用位置と、先端部を走行部に近接させて後方に配置した収納位置とに位置変更自在であり、先端部を走行部の前側方に離隔させて配置した使用位置では、アーム体を上下に変動可能なように構成したことを特徴とするものである。
また走行部の前端部の前記アーム体は、乗用田植機の左右両前端部に設けても良い。
前記アーム体に機体走行開始及び走行停止するための部材を設け、機体走行開始及び走行停止するための部材を掴む又は離す動作と連動して、乗用田植機を走行させたり停止させたり出来るようにしても良い。
【発明の効果】
【0005】
本発明の請求項1によると、アーム体が単独で回動自在に走行部前端側部に設けられ、使用位置と収納位置とに位置変更自在なアーム体を用いることで、機体の前部を下方へ押し下げたり上方へ引き上げる作業を簡単かつ確実に行うことができる。
特に、アーム体の先端部を走行部の前側方に離隔させて配置した使用位置では、横方向からの田植機の持ち上げや押し下げ作業が出来、特にトラックへの田植機の積み卸し作業時、田植機の前方に人が入るスペースが無く、アーム体の操作が困難であれば、田植機前側部の横方向から、田植機の機体の横方向の回動が可能で有り、又トラックの下方からの操作も可能である。
又、アーム体の先端部を走行部の前側方に離隔させて配置した使用位置に上下に回動できれば、たとえ作業者の作業高さが変化しても、機体側方側から田植機機体の浮き上がり防止のため、上から下に押し下げたり、或いは下から引き上げたり、又、トラックの積み卸し作業で、作業者と田植機機体の高さが変化しても、当該作業に対応できる。
また本発明の請求項2では、走行部の前端部の前記アーム体は、乗用田植機の左右両前端部に設ければ、機体の左右どちら側からも操作が可能となり、操作の適応性が広がる。
更に本発明の請求項3によれば、アーム体に機体走行開始及び走行停止するための部材を設け、機体走行開始及び走行停止するための部材を掴む又は離す動作と連動して、乗用田植機を走行させたり停止させたり出来るようにすれば、例えば作業者がアーム体から手を離した場合又は掴んだ場合には機体が停止し、前記機体停止に係る手の掴み離し動作とは逆の動作で機体が走行するので、更に取扱性が向上する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0006】
以下に、本発明の実施例を、図面により説明する。
図1に示すAは、本発明に係る、乗用田植機であり、同乗用田植機Aは、走行部1の後方位置に昇降機構3を介して植付部2を昇降可能に連結している。
【0007】
走行部1は、図1に示すように、機体フレーム4上において、前部に原動機部5を設け、同原動機部5の後方位置に運転部6を設ける一方、機体フレーム4の下方位置に前後方向に伸延して原動機部5のエンジンEと連動連結したミッションケース7を配置し、同ミッションケース7の前部にフロントアクスルケース21,21を介して左右一対の前車輪8,8を連動連結すると共に、同ミッションケース7の後部に左右一対の後車輪9,9を連動連結している。
【0008】
機体フレーム4は、図1に示すように、前後方向に伸延する左右一対の前後伸延フレーム形成片10,10と、各前後伸延フレーム形成片10,10の後端部よりミッションケース7の左右側後部へ向けて傾斜状に伸延する傾斜フレーム形成片11,11と、両傾斜フレーム形成片11,11の上端部間に横架した左右伸延フレーム形成片12とを具備しており、前後伸延フレーム形成片10,10の後部10a,10aは、後上方へ向けて伸延させて傾斜状となしている。
【0009】
運転部6は、図1に示すように、原動機部5の直後方位置にステアリングコラム13を設け、同ステアリングコラム13よりステアリング支軸14を立設し、同ステアリング支軸14の上端部にステアリングホイール15を取り付け、同ステアリングホイール15の後方位置に座席16を配置している。
【0010】
そして、ステアリングコラム13の左側方位置に、走行部1の変速操作を行うための変速レバー17と、機体の外部からもクラッチ操作及びブレーキ操作が行えるようにしたクラッチ・ブレーキレバー18とをそれぞれ前後方向に揺動操作可能に設ける一方、座席16の右側方位置に、植付部2の昇降操作を行うための植付昇降レバー19とデフロックレバー20とをそれぞれ前後方向に揺動操作可能に設けている。
【0011】
また、ステアリング支軸14の下端部と、フロントアクスルケース21,21の先端部との間にはステアリング機構22を介設している(図2参照)。
すなわち、ステアリング機構22は、左右一対の前後伸延フレーム形成片10,10の前部とミッションケース7の前端部との間に介設した支持枠体23に、ステアリング操作アーム24の中途部を上下方向に軸線を向けたアーム枢軸25により回動自在に枢支し、同ステアリング操作アーム24の後部に、上記アーム枢軸25を中心とする円弧状の内歯歯車26を連設し、同内歯歯車26にステアリング支軸14の下端部に取り付けた小歯車27を噛合させている。
そして、ステアリング操作アーム24の前端左右側部と、フロントアクスルケース21,21の先端部にそれぞれ設けたナックルアーム28,28との間に、左右一対のタイロッド29,29を介設している。
【0012】
このようにして、ステアリング機構22では、ステアリングホイール15の回動操作に連動してステアリング操作アーム24がアーム支軸25を中心に回動され、同ステアリング操作アーム24に連動して左右一対のタイロッド29,29が押し引きされて、ナックルアーム28,28を介してフロントアクスルケース21,21の先端部が回動され、左右一対の前車輪8,8のステアリング操作がなされるようにしている。
【0013】
ミッションケース7は、図9に示すように、前部に左右方向に軸線を向けた左右一対の前車輪駆動軸30,30を設け、両前車輪駆動軸30,30の内側端部間にデフ機構31を介設し、同デフ機構31の近傍位置にデフロック機構32を配置して、同デフロック機構32に設けた操作軸33の下端部33aをミッションケース7より下方へ突出させ、同下端部33aに、左右方向に伸延する連動レバー44の中途部を連結し、同連動レバー44の−側端部に連動ワイヤ45を介して運転部6に設けたデフロックレバー20を連動連結している。
【0014】
また、ミッションケース(7)の変速室の上部には、左右方向に入力軸(156)が軸支されている。
図7で示すように、入力軸(156)の左端部が外側に突出されて従動プーリー(155)が固設され、エンジンEの左側面より側方に突出されている出力軸(152)に固設された駆動プーリー(153)からの動力が、ベルト(154)を介してミッションケース(7)内に入力される。ベルト(154)はテンションアーム(157)の先端に取り付けられたテンションローラー(158)によって緊張されるように構成されており、主クラッチペダル(174)の踏み込み操作やクラッチ・ブレーキレバー(18)のシフト操作に連動して動力の断接が行われるようになっている。
【0015】
また、上記したように、主クラッチペダル(174)やクラッチ・ブレーキレバー(18)の操作によって、エンジンEからミッションケース(7)内へ動力を伝達するベルト(154)のテンションを「切」状態にできるように構成されている。すなわち、図7で示すように、主クラッチペダル(174)を踏み込むと、ペダル支柱(174a)に固設されたL字型ブラケット(144)に取り付けられたピンなどの押圧部材(145)が、テンションアーム(157)の回動軸(159)に固定されたカム(146)を押してテンションアーム(157)を下方に回動させ、ベルトテンションを「切」状態にすることができる。
【0016】
そして、図7で示すように、クラッチ・ブレーキレバー(18)の回動支軸(141)に設けられたブラケット(142)に枢支されている連動ロッド(140)には長孔(140a)が穿設され、ベルトテンションを「入」・「切」するテンションアーム(157)に突設されたピンなどの嵌入部材(143)がその長孔(140a)に挿通している。したがって、クラッチ・ブレーキレバー(18)を後方に向けて図示の矢印方向に回動操作すると、連動ロッド(140)が下方に向かって移動し、長孔(140a)に挿通された嵌入部材(143)を介してテンションアーム(157)を下方に回動して、テンションアーム(157)に取り付けられているテンションローラー(158)をベルト(154)から離し、ベルトテンションを「切」状態にすることができる。なお、主クラッチペダル(174)を踏み込んでもテンションアーム(157)の嵌入部材(143)が連動ロッド(140)に穿設された長孔(140a)内を移動するだけなので、クラッチ・ブレーキレバー(18)には何の影響も与えないし、クラッチ・ブレーキレバー(18)を操作しても主クラッチペダル(174)には何の影響も与えない。
【0017】
また、テンションアーム(157)には、図7に示すように、ミッションケース(7)側の従動プーリー(155)の回転を停止させるブレーキ部材(147)が固設されており、このブレーキ部材(147)は、テンションアーム(157)が下方に向かって回動することによって従動プーリー(155)を押圧するように構成されている。ブレーキ部材(147)の押圧部分は、バネ(148)などで従動プーリー(155)側に向けて付勢されたゴムなどの弾性体(149)で構成されており(図8参照)、押圧側より後退可能に構成されている。このように、ブレーキ部材(147)の弾性体(149)が従動プーリー(155)を押圧することによって回転を停止させ、機体全体にブレーキがかかるように構成すると、坂道でも走行車両(1)を停止させることができる。
【0018】
前記のようにブラケット(142)に枢支されている連動ロッド(140)が下方に向かって移動し、長孔(140a)に挿通された嵌入部材(143)を介してテンションアーム(157)を下方に回動して、テンションアーム(157)に取り付けられているテンションローラー(158)をベルト(154)から離し、ベルトテンションを「切」状態にすることができる(図7参照)。
なおテンションアーム(157)は上方に回動するようにバネで付勢されているが、クラッチ・ブレーキレバー(18)にはストッパーが付加されているので、この状況でテンションアーム(157)が上昇することはない。
【0019】
そして、ブラケット(142)には、揺動ピン(192)を軸支した揺動部材(190)が上部に設けられており、ブラケット(142)には、横穴(142h)が設けられている。揺動ピン(192)には、ワイヤ(200)が張設されており、ワイヤ(200)は本発明のアシストアームに接続されている。このワイヤ(200)を引っ張ることにより、揺動部材(190)に軸支された揺動ピン(192)は、図面上右方向に横穴(142h)に沿って移動し、連動ロッド(140)は右傾斜して、長孔(140a)に挿通された嵌入部材(143)も右上に上昇する。
これによりテンションアーム(157)も上方に回動し、ベルトテンションが「入」の状態となる。又、テンションアーム(157)が上方に回動するので、従動プーリー(155)を押圧していたブレーキ部材(147)は、押圧側より後退し、従動プーリー(155)の回転の停止を解除し、回転力が伝わるようになる。
なお、ローラー(202)は、ワイヤ(200)を張設するためのものであり、バネ(194)は、揺動ピン(192)を軸支した揺動部材(190)に敷設されており、揺動部材(190)に軸支された揺動ピン(192)が右方向に移動する場合に、左方向に戻ろうとするバネ力が付勢されている。
【0020】
他方、逆にワイヤのテンションを緩めれば、ベルトテンションが「切」の状態となる。
即ち、揺動ピン(192)は、本発明のアシストアームに接続されたワイヤ(200)の引張力を緩めると、バネ(194)により、揺動ピン(192)を軸支した揺動部材(190)は、図面上左方向に横穴(142h)に沿って左に移動して、元に位置に復帰する。これにより連動ロッド(140)は右傾斜を解除され、元に位置に復帰し、長孔(140a)に挿通された嵌入部材(143)も下降して、元に位置に戻る。
これによりテンションアーム(157)も下方に回動し、ベルトテンションが「切」の状態となる。又、テンションアーム(157)が下方に回動するので、ブレーキ部材(147)は、元の状態に復帰し、従動プーリー(155)を押圧し、従動プーリー(155)の回転を停止する。
【0021】
なお、以上の実施例は、本発明のアシストアームに接続されたワイヤ(200)を引張力を作用させると、ベルトテンションが「入」の状態及び従動プーリー(155)の回転の停止解除になり、本発明のアシストアームに接続されたワイヤ(200)の引張力を緩めると、ベルトテンションが「切」の状態及び従動プーリー(155)の回転の停止状態になる。
しかしながら、以上の構成とは逆に、この本発明のアシストアームに接続されたワイヤ(200)の引張力を解除すると、ベルトテンションが「入」の状態及び従動プーリー(155)の回転停止が解除になり、本発明のアシストアームに接続されたワイヤ(200)を引張力を作用させると、ベルトテンションが「切」の状態及び従動プーリー(155)の回転の停止状態になるような構成も可能である。
その構成は、バネ(194)と揺動ピン(192)を軸支した揺動部材(190)が図7の構成では、横穴(142h)との関係では左に配置し、ワイヤ(200)を右から引張ったのに対し、その逆に、バネ(194)と揺動ピン(192)を軸支した揺動部材(190)を、横穴(142h)との関係では右に配置し、ワイヤ(200)を左から引張ったものである。
即ち、引張力を解除している時は、ベルトテンションが「入」の状態及び従動プーリー(155)の回転の停止解除状態である。この状態では、揺動ピン(192)は横穴(142h)の右端に位置し、バネ(194)で引張られている。そして、ワイヤ(200)の引張力を左方向から作用させると、揺動ピン(192)が左方向に移動し、テンションアーム(157)が下方に回動し、ブレーキ部材(147)が従動プーリー(155)を押圧し、ベルトテンションも「切」の状態になる。なおこの場合、バネ(194)は、ベルトテンションが「入」に付勢されている。
【0022】
以上の作用は、テンションアーム(157)の回動と、ブレーキ部材(147)の従動プーリー(155)を押圧動作が連動した実施例であるが、ブレーキ部材(147)の従動プーリー(155)への押圧動作のみでも、機体の走行又は停止が可能である。
即ち、ブレーキ部材(147)の押圧部分は、バネ(148)により従動プーリー(155)側に向けて付勢されたゴムなどの弾性体(149)で構成されていて、具体的にはブレーキ部材(147)は中心にコアロッド(184)が設けられ、後端側に円筒部材(188)が設けられ、円筒部材(188)より先端側のコアロッド(184)にバネ(148)が巻回されており、先端には、弾性体(149)が設けられている。
この円筒部材(188)及びバネ(148)を電磁バネに置き換えて、本発明のアシストアームからのワイヤの引張力を電気的に転換して、電磁バネを作動させ、バネの押圧を解除させ、或いは引張力消滅により電磁バネの電磁力を消滅させて、バネの押圧力を復帰させることが可能である。これにより、ブレーキ部材(147)の従動プーリー(155)への押圧動作により、機体の停止、押圧解除動作により、機体の走行が可能である。
この場合に、引張力及び引張力解消に関して、電磁バネの作動を反対にしても良い。
【0023】
植付部2は、図1に示すように、植付ミッションケース35上に苗載台36を配置し、同苗載台36上に苗マット(図示せず)を載置して、同苗マットを植付ミッションケース35に連動連結した植付爪37により苗ブロックに切削して、同苗ブロックを圃場に植え付けるようにしている。38はフロートである。
そして、植付ミッションンケース35より前方へ入力軸39を突設し、同入力軸39と前記したミッションケース7に設けたPTO軸40とを伝動シャフト41を介して連動連結している。
【0024】
昇降機構3は、図1に示すように、トップリンク42と左右一対のロアリンク43,43と、これらのリンク42,43,43を昇降回動作動させる昇降シリンダ(図示せず)とを具備して、昇降シリンダを伸縮作動させることにより植付部2を走行部1の後方位置にて昇降させることができるようにしている。
【0025】
本発明は、走行部1の前端及び前側部を回動するアーム体80を設けるもので、図1に図示されている。アーム体80は、走行部1の前端側部に基部80A(図3参照)を回動自在に取り付けて、図2に示すように、アーム体80の先端部80Dを走行部1の前方に離隔させて配置した使用位置(イ)と、アーム体80の先端部80Dを走行部1の前方側部に離隔させて配置した使用位置(ロ)と、アーム体80の先端部80Dを走行部1に添接させて、前記使用位置(イ)(ロ)より後方に配置した収納位置(ハ)とに位置変更自在としてある(図2参照)。なお、アーム体80は、走行部1の前側部の左右に設けても良い。
【0026】
すなわち、図2、3に示すように、アーム体80は棒状に形成され、枢軸82にその基部80Aが軸支されている。枢軸82は、連結部材82Aにより枢軸84に遊嵌自在に軸支されている。又枢軸82は、カム部材82Bを内装している。枢軸84の中心には、中心軸86が設けられ、枢軸84と一体になっている。枢軸84はカム部材84Aを外装しており、図3の位置より(使用位置(イ))アーム体80が反時計回りに90度回転すると(使用位置(ロ))、カム部材84Aは、カム部材82Bに接合押圧し、枢軸84を反時計回りに回動するように構成されている(収納位置(ハ))。
そして、中心軸86と前端中央軸90の軸心92及び連結ピン62間は、ワイヤ94が張設されている。
中心軸86の反時計回りの回動により、ワイヤ94が引っ張られ、連結ピン62は、前方位置へと移動する。
【0027】
アーム体80は、図2、図3に図示されているように、走行部1の前端側部に基部を枢軸82に回動自在に取り付けており、図3に図示された位置は、使用位置(イ)の状態であり、使用位置(ロ)から収納位置(ハ)にかけて、中心軸86のワイヤ94を図3に図示されている矢印方向に引っ張るように作用する。
なお、この実施例のアーム体80は、図5に図示されているように側面視クランク状であり、基部80Aからの横片80B、立片80C、先端部80Dから構成されている。
【0028】
アーム体80と連結ピン62の前方位置と後方位置の関係について、少し詳しく説明すると、本発明は、図4に図示されているように、走行部1の前端中央軸90の軸心92から、ワイヤ94は連結ピン62まで張設されている。連結ピン62は前後動自在である。
即ち各枢軸52,52の下端部には支点越えアーム体58,58の中途部を同軸的に枢支しており、両支点越えアーム体58,58の前部間には左右方向に伸縮する引張スプリング61を介設する一方、両支点越えアーム体58,58の後部同士を連結ピン62を介して連結している。支点越えアーム体58,58は連結ピン62が、前後動する毎に回動する。
図2に図示されたものは、両支点越えアーム体58,58の後方位置に連結ピン62がある。即ち、アーム体80は、使用位置(イ)及び(ロ)にある状態である。
そして、一方の支点越えアーム体58の後部には連結用溝63を形成し、同連結用溝63を介して両支点越えアーム58,58の後部同士を上下重合状態にて連結ピン62により連結している。
【0029】
他方の支点越えアーム体58には、前端部に補助操作レバー64の基端部を連設すると共に、後部にデフロック連動ロッド65の前端部を連結し、同デフロック連動ロッド65の後端部を、図9に示すように、デフロック機構32の操作軸33の下端部33aに設けた連動レバー44の他側端部に連結している。66は緩衝スプリング、67はスプリング支持片である。
【0030】
このようにして、走行部1の前方位置にてオペレータが、補助操作レバー64を枢軸52を中心に外側方へ回動操作(デフロック解除操作)すると、両支点越えアーム体58,58が回動されて、両支点越えアーム体58,58の後端部同士を前方へ回動変位させることができると共に、デフロック機構32をデフロック解除状態となすことができるようにしている。従って、連結ピン62も前方に移動する。これによりワイヤ94は、中心軸86が反時計方向にバネで付勢されているので、中心軸86に巻き取られる。この結果、アーム体80は、使用位置(イ)又は(ロ)から、収納位置(ハ)に移動する。
【0031】
一方、走行部1の前方位置にてオペレータが、補助操作レバー64を枢軸52を中心に内側方へ回動操作(デフロック操作)すると、両支点越えアーム体58,58の後端部同士を後方へ回動変位させることができると共に、デフロック機構32をデフロック状態となすことができるようにしている。
この際、両支点越えアーム体58,58の回動動作に連動して、引張スプリング61が両枢軸52,52の前方位置と後方位置とに支点越えして移動し、いずれかの位置にて両支点越えアーム体58,58に引張弾性付勢力を付与して、両支点越えアーム体58,58の姿勢を保持するようにしている。
これにより、両支点越えアーム体58,58は後方位置に移動し、連結ピン62も後方に移動し、これによりワイヤ94は、時計方向に引っ張られ、中心軸86は時計周りに回動する。これにより、アーム体80は、収納位置(ハ)から、使用位置(ロ)に移動する。
【0032】
また、両支点越えアーム体58,58と、前記したステアリング操作アーム24との間には、ステアリングロック体70を配置しており、しかもこのステアリングロック体70の中央部には、前後方向に伸延する前後摺動ガイド孔74を形成し、同前後摺動ガイド孔74中に下方より取付ボルト75を挿通して、同取付ボルト75により、ステアリングロック体70を前後摺動自在に取り付けている。
【0033】
このようにして、補助操作レバー64をデフロック操作すると、両支点越えアーム体58,58の後部が後方へ回動変位されて、ステアリングロック体70を後方へ押圧する。そのため、ステアリングロック体70は後方へ摺動され、ステアリング操作アーム24に押圧状態にて当接し、同ステアリング操作アーム24をロック(回動規制)するようにしている。
従って、補助操作レバー64のデフロック操作により、デフロック機構32をデフロック状態となすことができると共に、ステアリング機構22をステアリング操作アーム24を介してロック状態となすことができる。
【0034】
以上のような実施例の使用法は、使用位置(イ)では、アーム体80を走行部1の前側部の左右に設れば、各アーム体80を両手で持ち田植機本体の持ち上げが可能である。
即ち、同使用位置(イ)にてアーム体80の把持片80Dを把持することにより、てこの原理を利用して、機体の前部を下方へ押し下げる作業も、また、上方へ引き上げる作業も、簡単にかつ確実に行うことができる。
従って、機体を圃場から脱出させるべく畦越えさせる際等において、機体の前部を下方へ押し下げたり、上方へ引き上げたりする作業を適宜効率良く行うことができる。
使用位置(ロ)では、横方向からの田植機の持ち上げや押し下げ作業が出来、特にトラックへの田植機の積み卸し作業時、田植機の前方に人が入るスペースが無く、操作が困難であった。そこで田植機前部の横方向から、田植機の機体の横方向の回動が可能で有れば、トラックの下方からの操作も可能であり、色々な状況に対応可能である。
又、後述するように使用位置(ロ)において各アーム体80を上下に回動できれば、たとえ作業者の作業高さが変化しても、機体側方側から田植機機体の浮き上がり防止のため、上から下に押し下げたり、或いは下から引き上げたり、
又、トラックの積み卸し作業で、作業者と田植機機体の高さが変化しても、当該作業に対応できる。
収納位置(ハ)は、アーム体80を機体の脇に収納できる利点がある。
【0035】
図6(A)(B)は、アーム体80とは別の実施例である。アーム体100は、棒状のロッドであり、左右の回動支点100Aと上下方向変動支点100B(左右の回動支点100Aより、先端側)からなる。左右の回動支点100Aにより、アーム体100は、ガイド体102の十字のガイド孔に沿って移動できる。使用位置(イ)、使用位置(ロ)、収納位置(ハ)の関係は、前記アーム体80と同様である。使用位置(ロ)では、アーム体100の上下方向変動支点100Bにより、アーム体100が上下方向に変動可能である。この構成により、使用位置(ロ)において、アーム体100を上下に回動できるので、たとえ作業者の作業高さが変化しても、機体側方側から田植機機体の浮き上がり防止のため、上から下に押し下げたり、或いは下から引き上げたり、又、トラックの積み卸し作業で、作業者と田植機機体の高さが変化しても、当該作業に対応できる。
【0036】
アーム体100には、更にレバー104が設けられており、レバー104を掴むことにより、レバー104に接続されているワイヤ(200)を引っ張り、ワイヤ(200)に張設された揺動ピン(192)は横穴(142h)に沿って右に移動し、連動ロッド(140)は右傾斜して、長孔(140a)に挿通された嵌入部材(143)も右上に上昇し、テンションアーム(157)を上方に回動させ、ベルトテンションを「入」状態にすることができる。又、テンションアーム(157)が上方に回動するので、従動プーリー(155)を押圧していたブレーキ部材(147)は、押圧側より後退し、従動プーリー(155)の回転の停止を解除し、回転力が伝わるようになる。
【0037】
他方、逆にレバー104を離せば、ベルトテンションが「切」の状態になり、ブレーキ部材(147)は、元の状態に復帰して従動プーリー(155)を押圧し、従動プーリー(155)は回転を停止する。
即ち、揺動ピン(192)は、本発明のアシストアームに接続されたワイヤ(200)の引張力を緩めると、バネ(194)により、揺動ピン(192)が横穴(142h)に沿って左の元に位置に移動して、連動ロッド(140)は元に位置に復帰し、長孔(140a)に挿通された嵌入部材(143)も下降して、元に位置に戻る。
これによりテンションアーム(157)も下方に回動し、ベルトテンションが「切」の状態となる。又、テンションアーム(157)が下方に回動するので、ブレーキ部材(147)は、元の状態に復帰し、従動プーリー(155)を押圧し、従動プーリー(155)の回転を停止するのである。
これにより、アーム体100のレバー104を操作することで、ベルトテンションを「入」状態及び従動プーリー(155)への回転の停止を解除した状態と、逆にベルトテンションを「切」状態及び従動プーリー(155)への回転の停止の状態の相互に変更できる。ここで、ベルトテンションを「入」状態及び従動プーリー(155)への回転の停止を解除した状態で機体は走行を開始し、ベルトテンションを「切」状態及び従動プーリー(155)への回転の停止の状態で機体は走行を停止する。
従ってここでのレバー104は、機体走行開始及び走行停止するための部材であり、レバーに限定されない。
以上の実施例の逆にレバーを離せば、ベルトテンションを「入」状態に、掴めば、ベルトテンションを「切」状態にすることも可能である。
【0038】
図10、11は、アーム体80とは別の実施例である。アーム体110は、L字状のロッドであり、左右の回動支点は、枢軸52,52である。上下方向変動支点110B(左右の回動支点52、52より、先端側)からなる。112はガイドであり、アーム体110はガイド112に沿って移動する。
使用位置(イ)、使用位置(ロ)、収納位置(ハ)の関係は、前記アーム体80と同様である。使用位置(ロ)では、アーム体110の上下方向変動支点110Bにより、アーム体110が上下方向に変動可能である。この構成により、使用位置(ロ)において、アーム体110を上下に回動できるので、たとえ作業者の作業高さが変化しても、機体側方側から田植機機体の浮き上がり防止のため、上から下に押し下げたり、或いは下から引き上げたり、又、トラックの積み卸し作業で、作業者と田植機機体の高さが変化しても、当該作業に対応できる。
この実施例では、枢軸52,52は使用位置(イ)、使用位置(ロ)では移動しない。即ち両支点越えアーム体58,58の連結ピン62は後方位置にある。アーム体110は、使用位置(イ)から使用位置(ロ)まで移動し、移動はガイド112による。アーム体110の使用位置(イ)から使用位置(ロ)の移動は、枢軸52の回動によるが、枢軸52の回動は例えば回動にロック手段を利用したものを使用する。これにより各使用位置での固定が可能である。そして、使用位置(ロ)から収納位置(ハ)への移動は、枢軸52,52の回動とともに、両支点越えアーム体58,58を回動し、連結ピン62を前方位置に移動させることで、デフロックの解除動作等を行う。
【産業上の利用可能性】
【0039】
本発明の乗用田植機は、上述のように、収納性と操作性の優れたアーム体を備えるので、田植え作業に有用に用いられる。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【図1】本発明に係る乗用田植機の側面図。
【図2】本発明の第1実施例の平面図。
【図3】図2の詳細図。
【図4】図2の前方位置の説明平面図。
【図5】図2の側面説明図。
【図6】本発明の第2実施例であり、(A)は一部断面を含む平面図、(B)は斜視図。
【図7】主クラッチレバー及び主クラッチペダルの側面図。
【図8】図7の主クラッチレバー及び主クラッチペダルの平面図。
【図9】デフロックの機構の説明図。
【図10】本件発明の第3実施例の平面図。
【図11】図10の側面図。
【符号の説明】
【0041】
A 乗用田植機
E エンジン
1 走行部
2 植付部
3 昇降機構
4 機体フレーム
5 原動機部
6 運転部
7 ミッションケース
8 前車輪
9 後車輪
31 デフ機構
32 デフロック機構
40 PTO軸
41 伝動シャフト
42 トップリンク
43 ロアリンク
44 連動レバー
45 連動ワイヤ
58 支点越えアーム体
60 ボス部
61 引張スプリング
62 連結ピン
63 連結用溝
64 補助操作レバー
64a アーム体係合部
65 デフロック連動ロッド
66 緩衝スプリング
67 スプリング支持片
70 ステアリングロック体
71 ロック本片
80 アーム体
100 アーム体
110 アーム体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
走行部の後方に植付部を昇降可能に連結し、その走行部の前端部にアーム体を設け、そのアーム体を介して走行部の前部の浮き上がりを防止可能にした乗用田植機において、
アーム体の基部を略上下方向に設け、アーム体は略水平方向に回動自在に取り付けられ、その回動によって、先端部を走行部の前方に離隔させて配置した使用位置と、先端部を走行部の前側方に離隔させて配置した使用位置と、先端部を走行部に近接させて後方に配置した収納位置とに位置変更自在であり、先端部を走行部の前側方に離隔させて配置した使用位置では、アーム体を上下に変動可能なように構成したことを特徴とする乗用田植機。
【請求項2】
走行部の前端部の前記アーム体は、乗用田植機の左右両前端部に設けた請求項1記載の乗用田植機。
【請求項3】
前記アーム体に機体走行開始及び走行停止するための部材を設け、機体走行開始及び走行停止するための部材を掴む又は離す動作と連動して、乗用田植機を走行させたり停止させたり出来る請求項1記載の乗用田植機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2006−81454(P2006−81454A)
【公開日】平成18年3月30日(2006.3.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−269000(P2004−269000)
【出願日】平成16年9月15日(2004.9.15)
【出願人】(000006781)ヤンマー株式会社 (3,810)
【Fターム(参考)】