説明

乗用野菜苗株移植機

【課題】搭載した潅水タンクが作業者の邪魔になることなく、かつ、貯留量の変化に伴う重量バランスの変動を最小限度に抑えることができる乗用野菜苗株移植機を提供する装置を提供する。
【解決手段】乗用野菜苗株移植機は、機体の一端にエンジン(1)を搭載してその周りを作業フロア(8)とし、この作業フロア(8)上のオペレータによって投入された野菜苗株を植付部(6,7)によって圃場に植付け可能に構成され、上記作業フロア(8)には、その下面側に潅水タンクとしての貯留容器(11)を一体に形成するとともに、給水口(12)および通水口(13)を設け、この通水口(13)を上記植付部(6,7)と連通することにより、植付ける苗に灌水する灌水装置を構成したものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、作業フロアのオペレータにより投入された野菜苗株を植付部によって植付けする乗用野菜苗株移植機に関するものである。
【背景技術】
【0002】
特許文献1の例に示すように、機体の一端にエンジンを搭載してその周りを作業フロアとし、この作業フロアのオペレータにより投入された野菜苗株を植付部によって植付けする乗用野菜苗株移植機が知られている。この乗用野菜苗株移植機は、作業フロアの両側部に潅水タンクを配置して配水管を植付部に接続し、作業フロアに設けた作業座席からの苗株投入操作により、植付部に潅水供給を受けつつ野菜苗株を圃場に移植することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009−131177号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、潅水タンクは、作業フロアの両側部に配置され、その大きさ故に、作業フロアに対する乗降動作および植付部に対する苗株投入操作上の制約となり、また、植付け作業の経過に伴う貯留重量変化によって機体の前後および左右の重量バランスの変動を招くという問題を避けることができなかった。
【0005】
本発明の目的は、機体の一端にエンジンを搭載し、その周りを作業フロアとする乗用野菜苗株移植機において、搭載した潅水タンクが作業者の邪魔になることなく、かつ、貯留量の変化に伴う重量バランスの変動を最小限度に抑えることができる乗用野菜苗株移植機を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1に係る発明は、機体の一端にエンジンを搭載してその周りを作業フロアとし、この作業フロア上のオペレータによって投入された野菜苗株を植付部によって圃場に植付けする乗用野菜苗株移植機において、上記作業フロアには、その下面側に潅水タンクとしての貯留容器を一体に形成するとともに、給水口および通水口を設け、この通水口を上記植付部と連通することにより、植付ける苗に灌水する灌水装置を構成したことを特徴とする。
【0007】
上記潅水タンクは、作業フロアの下面に形成され、また、機体中央部に集約配置される作業フロアの範囲内に限定される。
【0008】
請求項2に係る発明は、請求項1の構成において、前記作業フロアには、機体の一端に及ぶ低位の乗降ステップを設け、この乗降ステップに接する段差部に前記給水口を配置したことを特徴とする。
機体の一端に及ぶ乗降ステップと接する段差部に潅水タンクの給水口を形成することにより、機体の一端から潅水タンクへの給水が可能となる。
【0009】
請求項3に係る発明は、請求項1の構成において、前記通水口には、2方向に切替え可能な切替弁を備えて一方側に配水管を接続して植付部と連通し、他方側を側方の車輪に臨んで配置したことを特徴とする。
植付け終了時は、切替弁の操作によりタンク内の残留水が切替ポートから車輪に排出される。
【発明の効果】
【0010】
請求項1の発明の乗用野菜苗株移植機は、作業フロアの下面に潅水タンクを形成することにより、潅水タンクが作業者の乗降動作や苗株投入操作の際に邪魔になることがなく、また、機体中央部を中心に配置される作業フロアの範囲内にタンク位置が限定されることから、その貯留量の変化によっても重量バランスの変動を最小限度に抑えることができる。
【0011】
請求項2に係る発明は、請求項1の効果に加え、機体の一端に及ぶ乗降ステップと接する段差部に給水口を形成することにより、潅水タンクへの給水が機体の一端から容易に実施することができる。
【0012】
請求項3に係る発明は、請求項1の効果に加え、植付け終了時は、切替弁の操作によりタンク内の残留水が切替弁の切替ポートから車輪に排出されることから、潅水タンクの排水とともに、車輪に付着した泥土の洗浄が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】乗用野菜苗株移植機の平面図
【図2】乗用野菜苗株移植機の側面図
【図3】可動そりの上位置状態(a)と下位状態(b)
【図4】苗株移送機構の要部拡大図
【図5】セミクローラ構成例の野菜苗株移植機の側面図
【図6】畦中央傾き装置の要部正面図
【図7】別例の野菜苗株移植機の側面図
【図8】後輪のトレッドについての要部平面図
【発明を実施するための形態】
【0014】
上記技術思想に基づいて具体的に構成された実施の形態について以下に図面を参照しつつ説明する。
本発明に係る野菜苗株移植機は、その側面図および平面図をそれぞれ図1、図2に示すように、エンジン1および変速伝動用の走行ミッション2を一体に構成するとともに案内用の前輪4,4および駆動用の後輪5,5を備えて走行可能に支持された機体と、その走行ミッション2のケ−ス後部から延設され歩行操縦するための後部ハンドル3a、3aを取付けたハンドルフレーム3と、左右に長いループ軌跡で周回する複数のカップ状の苗収容体22…によって投入苗株を所定位置まで移送する周回移送式の苗株移送機構6および昇降と開閉の動作によって植付けをする植付機構7により投入苗株を圃場に順次植付けする植付部と、この植付部6,7の前側位置で苗株を投入するオペレータのための作業座席6aおよびエンジン周りの作業フロア8等を備えて構成される。
【0015】
上記走行ミッション2には、アーム状の左右の伝動支持部であるチェーンケース5a,5aを回動可能に備え、この左右のチェーンケース5a,5aを介して左右の後輪5,5を支持するとともに、機体中央に配置した伸縮駆動部と連結して機体高さと左右高さを調整可能に構成し、植付部6,7を走行系と同期して伝動する。
【0016】
この野菜苗株移植機における作業フロア8は、貯留容器11と一体にその上面に形成し、この貯留容器11に給水口12および通水口13を設けて作業フロア8と一体の潅水タンクを構成する。その前端部には低位の乗降ステップ14を機体の前端部まで張り出し、この乗降ステップ14に接する段差部15に給水口12を配置する。
【0017】
貯留容器11の両側部は、深さ寸法Dを大きくとり、その底位置に通水口13,13を配置するとともに、2方向に切替え可能な切替弁16,16を設け、それぞれ一方側に潅水ポンプ17に連通する配水管17aを接続して植付機構7と連通することにより潅水装置を構成し、他方側の切替ポート16aを側方の後輪5に臨む位置に配置する。
【0018】
上記構成の野菜苗株移植機は、潅水タンクとしての貯留容器11と一体にその上面に作業フロア8を形成することにより、潅水タンクが作業者の乗降動作や苗株投入操作の際に邪魔になることがなく、また、タンク位置が機体中央部に集約配置される作業フロアの範囲内に限定されることから、その貯留量の変化によっても重量バランスの変動を最小限度に抑えることができる。
【0019】
潅水タンクへの給水は、作業フロア8から機体前端に及ぶ低位の乗降ステップ14に面する段差部15にある給水口12から容易に実施することができる。植付け終了時は、機体をリフトして切替弁16の操作によりタンク内の残留水が切替ポート16aによって車輪に案内されることから、潅水タンクの排水とともに、車輪5に付着した泥土の洗浄が可能となる。
【0020】
(前輪)
左右の前輪4,4については、それぞれ半円カバー状の可動そり21を軸支し、タイヤ下位置とタイヤ上位置にピン21aで切替え可能に構成する。タイヤ下位置では前輪4を滑走支持し、図3(a)の可動そりの上位置状態に示すように、タイヤ上位置では、泥除け用のフェンダーとして機能する。
【0021】
(苗株移送機構)
苗株移送機構6の苗収容体22は、図4の要部拡大図に示すように、深さ変更可能なバネ付き蛇腹体による弾性スリーブに鍔22aを設けて構成し、この鍔22aと係合してその高さ位置を制御する深さ制御用のガイド23を設け、作業座席6aの側を低くして苗株の投入を容易にし、奥側を高くして苗株を直立姿勢に保持する。また、ガイド23の支持部23aは、例えば、枝豆のような長い苗は高く、ブロッコリーのような短い苗は低く、支持高さ位置を調節可能に構成する。
【0022】
(セミクローラ構成)
次に、セミクローラ構成の野菜苗株移植機については、図5の側面図に示すように、歩行操作用の操縦ハンドル31をエンジン1の側に設けて植付部6,7を前進方向とし、クローラ32と前輪33との間に作業座席34を配置する。また、畦感知ローラ35,35を植付け位置に設けて畦中央を感知する畦中央傾き装置を構成し、その要部正面図を図6に示すように、2本のアーム35a,35aの角度差が一定になるように傾斜シリンダを傾斜ケーブル37によって制御する。
【0023】
(トレッド)
また、図7の側面図に示す野菜苗株移植機の例では、歩行操作用の操縦ハンドル41をエンジン1の側に設けて植付部6,7を前進方向とし、前後輪4,5の間に作業座席42を配置する。後輪5については、図8の要部平面図に示すように、走行ミッション2とチェーンケース5aの間にカウンタケース44を介設して回転方向を逆転し、このカウンタケース44とエンジン1の側面に後輪5を配置することにより、畝幅の狭い45cmトレッドBが可能となる。
【符号の説明】
【0024】
1 エンジン
2 走行ミッション
4 前輪
5 後輪
5a チェーンケース
6 苗株移送機構(植付部)
6a 作業座席
7 植付機構(植付部)
8 作業フロア
11 貯留容器(潅水タンク)
12 給水口
13 通水口
14 乗降ステップ
15 段差部
16 切替弁
16a 切替ポート
17a 配水管

【特許請求の範囲】
【請求項1】
機体の一端にエンジン(1)を搭載してその周りを作業フロア(8)とし、この作業フロア(8)上のオペレータによって投入された野菜苗株を植付部(6,7)によって圃場に植付けする乗用野菜苗株移植機において、
上記作業フロア(8)には、その下面側に潅水タンクとしての貯留容器(11)を一体に形成するとともに、給水口(12)および通水口(13)を設け、この通水口(13)を上記植付部(6,7)と連通することにより、植付ける苗に灌水する灌水装置を構成したことを特徴とする乗用野菜苗株移植機。
【請求項2】
前記作業フロア(8)には、機体の一端に及ぶ低位の乗降ステップ(14)を設け、この乗降ステップ(14)に接する段差部(15)に前記給水口(12)を配置したことを特徴とする請求項1記載の乗用野菜苗株移植機。
【請求項3】
前記通水口(13)には、2方向に切替え可能な切替弁(16)を備えて一方側に配水管(17a)を接続して植付部(6,7)と連通し、他方側を側方の車輪(5)に臨んで配置したことを特徴とする請求項1記載の乗用野菜苗株移植機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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