説明

乱数生成装置および乱数生成方法

【課題】 簡単な構成で不規則性の高い乱数を生成することができる乱数生成装置および乱数生成方法を提供する。
【解決手段】 送信ユニット20から送られるエネルギーを非接触で受信する受信機構101を有し、当該受信機構101で受信したエネルギーを受信電圧VINに変換する受信ユニット100と、受信電圧VINに基づいて、発振する出力信号CKINを出力する電圧制御発振器110と、電圧制御発振器110の出力信号CKINの発振周波数に応じて変動する擬似乱数を生成する擬似乱数生成器120とを備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、乱数生成装置および乱数生成方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ICカード、非接触通信などの通信機器に使用されるID(識別番号)に乱数を使用することが知られている。このようなIDに乱数を使用する場合には、不規則性の高い乱数が要求される。このような要求に対し、負荷回路へ一定の出力電圧を供給する安定化電源において、基準電圧に対する出力電圧の変動分を増幅して生成した制御信号を用いて乱数を生成する構成が知られている(例えば特許文献1参照)。
【0003】
図17は従来の乱数生成装置の構成を示す回路図である。図17に示すように、特許文献1のような乱数生成装置は、レギュレータ900と、電圧制御発振器(VCO)930と、乱数生成部940とを有している。レギュレータ900は、負荷回路920の電源として一定の出力電圧Voutを供給するために、基準電圧Vrefと帰還電圧S93との誤差をアンプ91で増幅して制御電圧S91を生成し、これに基づいて出力電圧Voutを調整している。VCO930は、制御電圧S91の電圧レベルの変動に応じて発振周波数の周波数を変化させた出力信号CLKを出力する。乱数生成部940は、VCO930の出力信号CLKに基づいて擬似乱数を生成する。このように、乱数生成部940で生成される擬似乱数は、VCO930の発振周波数に応じて変化する(すなわちレギュレータ900の制御電圧S91に応じて変化する)ため、制御電圧S91が常時変動する限り、不規則性の高い乱数を生成することができる。
【0004】
また、特許文献2にも、VCOの制御端子に入力される制御電圧の電圧レベルの変動に応じて異なる擬似乱数を生成させる構成が示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2007−122560号公報
【特許文献2】特開平10−340183号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記のような乱数生成装置において、不規則性の高い乱数を得るためには、VCOの制御電圧の変動が大きいことが必要である。特許文献1においては負荷の増減や電源電圧の変動によって制御電圧が変化することが前提とされているが、負荷の増減が少なく電源電圧が安定している場合には制御電圧の変化はほとんどなくなってしまう。制御電圧の変化が少ないとVCOの出力電圧における発振周波数の変動も小さくなるため、乱数の不規則性が低くなる。また、特許文献2においてもVCOの制御電圧として電圧変化の大きい電源を用いる旨記載されているが、具体的な電源の態様は開示されていない。
【0007】
本発明は、このような従来の課題を解決するものであり、簡単な構成で不規則性の高い乱数を生成することができる乱数生成装置および乱数生成方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明のある形態に係る乱数生成装置は、送信ユニットから送られるエネルギーを非接触で受信する受信機構を有し、当該受信機構で受信したエネルギーを受信電圧に変換する受信ユニットと、前記受信電圧に基づいて、発振する出力信号を出力する電圧制御発振器と、前記電圧制御発振器の出力信号の発振周波数に応じて変動する擬似乱数を生成する擬似乱数生成器とを備えている。
【0009】
上記構成によれば、電圧制御発振器が出力する出力信号の発振周波数が、送信ユニットから送られるエネルギーを非接触で受信する受信ユニットの受信電圧に応じて変動する。受信電圧は、送信ユニットと受信ユニットとの間の距離に応じて変動するため、当該距離を変化させることにより、受信電圧を大きく変化させることができる。このように大きく変動する受信電圧に基づいて擬似乱数を生成することができるため、簡単な構成で不規則性の高い乱数を生成することができる。
【0010】
前記受信ユニットの受信電圧を所定の電圧範囲に制限するリミッタ回路を備えてもよい。これにより、電圧制御発振器に入力される電圧(受信電圧に基づいた電圧)を電圧制御発振器の動作範囲内とすることができる。
【0011】
前記リミッタ回路は、温度に応じて出力される電圧値が変動する温度依存特性を有していてもよい。これにより、温度変化によっても電圧制御発振器に入力される電圧が変動するため、より不規則性の高い乱数を生成することができる。
【0012】
前記受信機構は、前記送信ユニットからの電磁波を非接触で受信するコイルを含んでいてもよい。これにより、送信ユニットと受信ユニットとの間の距離に応じてコイルに発生する誘導起電力が容易に変動する。しかも、コイルに発生した誘導起電力を受信ユニットの電源として容易に使用することができる。
【0013】
前記受信機構は、前記送信ユニットからの光を非接触で受信する受光素子を含んでいてもよい。これにより、送信ユニットと受信ユニットとの間の距離に応じて受光素子が受光する光量が容易に変動する。
【0014】
前記電圧制御発振器は、前記受信電圧に基づいた前記出力信号を出力するオン期間と所定の電圧レベルに固定して出力するオフ期間とを動作信号に基づいて切り替えるよう構成されており、前記擬似乱数生成器は、前記オン期間に入力された出力信号の波数に基づいて変動する擬似乱数を生成するよう構成されていてもよい。これにより、受信電圧の変動が大きい期間をオン期間として設定することができるため、受信電圧の変動が大きい期間に基づいて擬似乱数を生成することができ、その結果、乱数の不規則性をより高めることができる。
【0015】
前記擬似乱数生成器は、シフトレジスタと排他的論理和ゲートとを有するM系列のビット列演算部を備えてもよい。これにより、簡単な構成で、複雑な擬似乱数列を容易に生成することができる。
【0016】
また、本発明の他の形態に係る乱数生成方法は、送信ユニットからのエネルギーを非接触で受信し、当該受信したエネルギーを受信電圧に変換する受信ステップと、前記受信電圧に基づいて、発振する出力信号を出力する電圧制御発振ステップと、前記出力電圧の発振周波数に応じて変動する擬似乱数を生成する擬似乱数生成ステップとを含んでいる。
【0017】
上記方法によれば、出力信号の発振周波数が、送信ユニットから非接触で受信したエネルギーを変換した受信電圧に応じて変動する。受信電圧は、送信ユニットとの間の距離に応じて変動するため、当該距離を変化させることにより、受信電圧を大きく変動させることができる。このように大きく変動する受信電圧に基づいて擬似乱数を生成することができるため、簡単な構成で不規則性の高い乱数を生成することができる。
【発明の効果】
【0018】
本発明は以上に説明したように構成され、簡単な構成で不規則性の高い乱数を生成することができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】図1は本発明の第1実施形態に係る乱数生成装置の概略構成例を示す回路図である。
【図2】図2は図1に示す乱数生成装置における受信ユニットの具体的構成例を示す回路図である。
【図3】図3は図1の乱数生成装置における受信ユニットと送信ユニットとの間の距離に応じた受信電圧の変化を示すグラフである。
【図4】図4は図1に示す乱数生成装置における擬似乱数生成器の具体的構成例を示す回路図である。
【図5】図5は本発明の第1実施形態の変形例に係る乱数生成装置の概略構成例を示す回路図である。
【図6】図6は本発明の第2実施形態に係る乱数生成装置の概略構成例を示す回路図である。
【図7】図7は図6に示す乱数生成装置の電圧制御発振器の制御電圧に対する発振周波数特性を示すグラフである。
【図8】図8は図6に示すリミッタ回路の具体的な構成例を示す回路図である。
【図9】図9は図8に示すリミッタ回路の入出力電圧特性のシミュレーション結果を示すグラフである。
【図10】図10は図8に示すリミッタ回路の温度に対する出力電圧特性のシミュレーション結果を示すグラフである。
【図11】図11は本発明の第2実施形態の変形例に係る乱数生成装置の概略構成例を示す回路図である。
【図12】図12は図11に示すリミッタ回路の入出力電圧特性のシミュレーション結果を示すグラフである。
【図13】図13は図11に示すリミッタ回路の温度に対する出力電圧特性のシミュレーション結果を示すグラフである。
【図14】図14は本発明の第3実施形態に係る乱数生成装置における受信ユニットの概略構成例を示す回路図である。
【図15】図15は本発明の一実施形態に係る乱数生成装置が適用された通信機器の構成例を示す回路図である。
【図16】図16は一次側コイルと二次側コイルとの関係例を示す模式図である。
【図17】図17は従来の乱数生成装置の構成を示す回路図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の実施の形態を、図面を参照しながら説明する。なお、以下では全ての図を通じて同一または相当する要素には同一の参照符号を付して、その重複する説明を省略する。
【0021】
<第1実施形態>
まず、本発明の第1実施形態に係る乱数生成装置について説明する。図1は本発明の第1実施形態に係る乱数生成装置の概略構成例を示す回路図である。
【0022】
図1に示すように、本実施形態における乱数生成装置10は、送信ユニット20から送られるエネルギーを非接触で受信する受信機構101を有し、当該受信機構101で受信したエネルギーを受信電圧VINに変換する受信ユニット100と、受信電圧VINに基づいて、発振する出力信号CKINを出力する電圧制御発振器(VCO)110と、電圧制御発振器110の出力信号CKINの発振周波数に応じて変動する擬似乱数(pseudorandom numbers)を生成する擬似乱数生成器120とを備えている。
【0023】
受信ユニット100は、送信ユニット20から非接触でエネルギーが送られると、これを受信機構101で受信し、当該エネルギーを受信電圧VINに変換する。電圧制御発振器110には、受信電圧VINに基づく制御電圧VCOINが入力される。なお、本実施形態において制御電圧VCOINは受信電圧VINに等しい。電圧制御発振器110は、入力された制御電圧VCOINに基づいて発振する出力信号(クロック信号)CKINを出力する。擬似乱数生成器120は、電圧制御発振器110の出力信号CKINに応じて変動する擬似乱数列を生成し、当該擬似乱数列の擬似乱数を各ビットごとに出力する。本実施形態においては、20個の出力端子S1〜S20を有し、20ビットの擬似乱数からなる擬似乱数列を生成している。
【0024】
上記構成によれば、電圧制御発振器110が出力する出力信号CKINの発振周波数が、送信ユニット20から送られるエネルギーを非接触で受信する受信ユニット100の受信電圧VINに応じて変動する。受信電圧VINは、送信ユニット20と受信ユニット100との間の距離に応じて変動するため、当該距離を変化させることにより、受信電圧VINを大きく変動させることができる。このように大きく変動する受信電圧VINに基づいて擬似乱数を生成することができるため、簡単な構成で不規則性の高い乱数を生成することができる。
【0025】
図2は図1に示す乱数生成装置における受信ユニットの具体的構成例を示す回路図である。図2に示すように、本実施形態における送信ユニット20は、電源(図示せず)から供給される電力に基づいた電圧が印加されるコイル(一次側コイル)L2を有している。これに対応して、本実施形態における受信ユニット100は、受信機構101として、送信ユニット20からのエネルギーとして電磁波を非接触で受信するコイル(二次側コイル)L1を含んでいる。これにより、送信ユニット20のコイルL2と受信ユニット100のコイルL1との間で電磁誘導によりエネルギーの授受が可能となる。したがって、送信ユニット20のコイルL2から受信ユニット100のコイルL1に非接触で電磁波によるエネルギーが伝達されることにより受信ユニット100のコイルL1に誘導起電力Eが発生する。このように、受信ユニット100のコイルL1には非接触によって誘導起電力Eが発生するため、送信ユニット20と受信ユニット100との間の距離に応じてコイルL1に発生する誘導起電力Eが容易に変動する。この結果、受信電圧VINが容易に変動する。しかも、コイルL1に発生した誘導起電力Eを乱数生成装置10の電源として使用することも容易である。
【0026】
さらに、受信ユニット100は、受信機構101のコイルL1で受信した誘導起電力Eを整流する整流回路102を備えている。具体的には、整流回路102は、4つのダイオードD1〜D4をブリッジ型に接続したダイオードブリッジ回路により構成されている。コイルL1の一端にダイオードD1のアノードおよびダイオードD3のカソードが接続され、コイルL1の他端にダイオードD2のアノードおよびダイオードD4のカソードが接続される。また、ダイオードD1およびダイオードD2のカソードは互いに接続され、ダイオードD3およびダイオードD4のアノードは互いに接続されている。この整流回路102により、受信機構101のコイルL1で受信した誘導起電力Eが全波整流される。
【0027】
また、受信ユニット100は、整流回路102で整流された誘導起電力Eを安定化させるための容量素子C1を備えている。容量素子C1の一端には、ダイオードD1,D2のカソードが接続され、容量素子C1の他端には、ダイオードD3,D4のアノードが接続されている。容量素子C1の他端はグランドに接続されており、容量素子C1の一端の電圧が受信ユニット100の受信電圧VINとして出力される。
【0028】
ここで、受信ユニット100のコイルL1と送信ユニット20のコイルL2との間の距離dと受信ユニット100のコイルL1に発生する誘導起電力Eとの関係について説明する。図16は一次側コイルと二次側コイルとの関係例を示す模式図である。以下の説明においては、送信ユニット20のコイルL2を単に一次側コイルL2と称し、受信ユニット100のコイルL1を二次側コイルL1と称する。図16においては、一次側コイルL2および二次側コイルL1が円形コイルとして示されているが、他の形状のコイルでも同様である。
【0029】
図16に示すように、一次側コイルL2と二次側コイルL1との間の距離(コイル間距離)をdとし、各コイルL1,L2の半径をaとする。このとき、相互インダクタンスMは、ノイマン(Neumann)の公式を用いてM=μa(log(8a/d)−2)で表される。なお、μは真空の透磁率を示す。このように、相互インダクタンスMは、コイル間距離dに応じて変化することが理解できる。また、一次側コイルL2の交流電源P1からの交流電流Iは、電流の最大値(振幅)Iを用いてI=Isinωtと表せる。このとき、二次側コイルL1で発生する誘導起電力eは、e=−M(dI/dt)=−MIωcosωtとなり、e=MIωとおくと、e=−ecosωtとなる。
【0030】
発生する誘導起電力eの実効値Eは最大値の1/√2に等しいため、E=e/√2=MIω/√2=(μaIω/√2)・(log(8a/d)−2)となり、定数であるμaIω/√2をCとおくとE=C(log(8a/d)−2)となる。このように、二次側コイルL1で発生する誘導起電力eの実効値Eはコイル間距離dに応じて変化することが理解できる。したがって、二次側コイルL1で発生する誘導起電力eの実効値Eに基づいて定められる受信電圧VINも同様に一次側コイルL2と二次側コイルL1との間の距離dに応じて変化することが理解できる。
【0031】
図3は図1の乱数生成装置における受信ユニットと送信ユニットとの間の距離に応じた受信電圧の変化を示すグラフである。図3の例においては、一次側コイルL2の交流電源P1からの交流電流Iの最大電流I=100mA、周波数f=ω/2π=100kHz、一次側コイルL1および二次側コイルL2の巻き数N1=N2=30、一次側コイルL1および二次側コイルL2の半径a1=a2=30mmとしている。
【0032】
図3に示されるように、コイル間距離dが大きくなるほど(すなわち、送信ユニット20と受信ユニット100とが離間するほど)受信電圧VINは減少し、コイル間距離dが小さくなるほど(すなわち、送信ユニット20と受信ユニット100とが近接するほど)受信電圧VINは増加する。このように、送信ユニット20のコイル(一次側コイル)L2と受信ユニット100のコイル(二次側コイル)L1との間の距離dが変化すると、相互インダクタンスMが変化することにより、誘導起電力eの大きさが大きく変動するため、受信電圧VINも大きく変動する。したがって、送信ユニット20と受信ユニット100との間の距離に応じて大きく変動する受信電圧VINに基づいて擬似乱数を生成することにより、不規則性の高い乱数を生成することができる。
【0033】
電圧制御発振器110は、特に限定されないが、例えばリングオシレータ型の電圧制御発振器などが適用できる。リングオシレータ型の電圧制御発振器110は、図示しないが、受信電圧VINに基づく制御信号VCOINが入力され、制御信号VCOINの電圧レベルを電流に変換する電圧電流変換回路と、変換された電流値に基づいて出力信号CKINの周波数クロックを設定するインバータチェーン回路とを有している。インバータチェーン回路は、複数のインバータが連続して接続されて構成されており、変換された電流値が増大するほど遅延が小さくなり(出力信号CKINの周波数が高くなり)、変換された電流値が減少するほど遅延が大きくなる(出力信号CKINの周波数が低くなる)ように出力信号CKINが出力される。
【0034】
図4は図1に示す乱数生成装置における擬似乱数生成器の具体的構成例を示す回路図である。図4に示すように、本実施形態における擬似乱数生成器120は、シフトレジスタ122と排他的論理和(XOR)ゲート123とを有するM系列のビット列演算部を備えている。本実施形態において、シフトレジスタ122は、複数(図4の例においては20個)のレジスタ121が順次接続されることにより複数ビット(図4の例においては20ビット)の出力を有するシフトレジスタとして構成されている。
【0035】
各レジスタ121は、例えばDフリップフロップ回路で構成されている。各レジスタ121のクロック入力端子には、電圧制御発振器110の出力信号CKINが入力される。また、1段目のレジスタ121の入力端子には、XORゲート123の出力信号が入力される。その他の段の各レジスタ121の入力端子には、前段の出力信号が入力される。したがって、各レジスタ121は、電圧制御発振器110の出力信号CKINのクロックパルスが入力される毎に入力端子から入力される信号レベル(Lレベルおよびそれよりも高いHレベルのいずれか)を後段のレジスタ121へ出力する。また、各レジスタ121の出力は、擬似乱数生成器120の出力端子S1〜S20から出力され、電圧制御発振器110の出力信号CKINの波数(クロックパルスの数)に応じて異なる20ビットの擬似乱数が生成される。
【0036】
また、XORゲート123の入力端子には、所定の段(図4の例においては17段目)のレジスタ121の出力信号と最終段(図4の例においては20段目)のレジスタ121の出力信号とが入力される。
【0037】
なお、XORゲート123の入力端子に接続されるレジスタ121は、以下のようにして設定される。すなわち、本実施形態の擬似乱数生成器120において適用されるM系列のビット列は、以下の線形漸化式で表されるビット数列となる。
【0038】
=(Xn−p)XOR(Xn−q) ただし、p>q>0
このように示されるM系列のビット列の周期は、2−1で示される。図4の例においては、p=20、q=17となり、周期は、220−1=1048575となる。p,qの値は必要に応じて適宜設定することができるため、それに合わせてXORゲート123の入力端子に接続されるレジスタ121も変更され得る。
【0039】
ここで、擬似乱数生成器120のシフトレジスタ122に入力される電圧制御発振器110の出力信号CKINの予め定められた期間における波数(クロックパルスの数)は、送信ユニット20と受信ユニット100との間の距離に応じてコイルL1に発生する誘導起電力が容易に変動することにより、変動する。
【0040】
このように、本実施形態における乱数生成装置10においては、擬似乱数生成器120への出力信号CKINの入力期間が一定であっても、擬似乱数生成器120に入力される出力信号CKINの波数が変動するため、擬似乱数生成器120によって生成される擬似乱数は大きく変動し、不規則性の高い乱数を出力することができる。擬似乱数生成器120への出力信号CKINの入力期間は、後述するように電圧制御発振器110を動作させるか否かによって定められることとしてもよいし、所定の期間のみ電圧制御発振器110の出力端子が擬似乱数生成器120の入力端子に接続されることとしてもよい。また、所定のタイミングにおける擬似乱数生成器120の出力端子S1〜S20の出力値を取得する構成を有していてもよい。
【0041】
ここで、電圧制御発振器110が所定の動作信号に応じて出力信号CKINを出力する態様例について説明する。図5は本発明の第1実施形態の変形例に係る乱数生成装置の概略構成例を示す回路図である。図5の例の乱数生成装置10Bにおいて、電圧制御発振器110Bは、受信電圧VINに基づいた出力信号CKINを出力するオン期間T1と所定の電圧レベルに固定して出力するオフ期間T2とを動作信号VCOONに基づいて切り替えるよう構成されている。さらに、擬似乱数生成器120は、オン期間T1に入力された出力信号CKINの波数に基づいて異なる擬似乱数を生成するよう構成されている。
【0042】
動作信号VCOONは、特に限定されないが、オン期間T1が一定の信号であってもよいし、オン期間T1がその都度異なる期間となる信号であってもよい。オン期間T1が一定の信号となる場合、動作信号VCOONは、例えば送信ユニット20が受信ユニット100の受信機構101に近接することにより受信電圧VINが所定の第1電圧以上になってから所定の時間が経過するまでの間オン期間T1となる信号であってもよい。また、オン期間T1がその都度異なる期間となる場合、動作信号VCOONは、例えば受信電圧VINが所定の第1電圧以上になってから受信電圧VINが第1電圧より高い所定の第2電圧以上になるまでの間オン期間T1となる信号であってもよい。このような動作信号VCOONは、乱数生成装置10B内で生成されてもよいし、外部で生成されたものが入力されることとしてもよい。
【0043】
これにより、受信電圧VINの変化が大きい期間をオン期間T1として設定することができるため、受信電圧VINの変化が大きい期間に基づいて擬似乱数を生成することができ、その結果、乱数の不規則性をより高めることができる。
【0044】
次に、このような乱数生成装置において受信ユニット100の受信機構101で生じた誘導起電力Eの変動によって電圧制御発振器110Bの出力信号CKINにおいてどの程度波数が変化するかについて説明する。ここでは、オン期間T1は一定(50ms)であり、電圧制御発振器110Bの周波数ゲインG(詳しくは後述)は20MHz/Vとする。
【0045】
電圧制御発振器110Bに入力される制御信号VCOINの電圧V1が例えば後述する図9に示されるように受信電圧VIN=2Vに対して0.83Vであったとすると、出力信号CKINの発振周波数f1は、f1=G・V1=16.6MHzとなる。したがって、オン期間T1における発振周波数f1の波数(クロックパルスの数)n1は、n1=T1/(1/f1)=830000となる。ここで、電圧制御発振器110Bに入力される制御信号VCOINの電圧がV1に対して1mV変化した場合(V2=V1+0.001V=0.831Vの場合)、出力信号CKINの発振周波数f2は、f2=G・V2=16.62MHzとなる。したがって、オン期間T1における発振周波数f2の波数n2は、n2=T1/(1/f2)=831000となる。
【0046】
以上より、制御信号VCOINの電圧が0.1mV変化すると、擬似乱数生成器120に入力される波数の差は、n2−n1=1000(≧1)だけ変化することとなる。波数が1以上異なれば、当然に異なる擬似乱数が生成されるため、出力される乱数は不規則なものとなる。このように、オン期間T1が一定でもオン期間T1となる毎に擬似乱数生成器120に入力される出力信号CKINの波数が変動するため、簡単な構成で、不規則な乱数を容易に生成することができる。
【0047】
なお、動作信号VCOONがオフ期間T2になると、電圧制御発振器110に入力される制御信号VCOINの変動に拘わらず、擬似乱数生成器120に入力される出力信号CKINの電圧レベルが所定の電圧レベル(擬似乱数生成器120が動作しないLレベル)となるため、擬似乱数生成器120の各出力端子S1〜S20の出力はオン期間T1経過時の状態に保持される。このため、後述するように、動作信号VCOONがオフ期間T2に変化した後も生成された乱数を通信機器などの識別番号IDに利用することができる。また、オフ期間T2においては、電圧制御発振器110および擬似乱数生成器120は停止状態となるため、省電力化を図ることができる。
【0048】
<第2実施形態>
次に、本発明の第2実施形態に係る乱数生成装置について説明する。図6は本発明の第2実施形態に係る乱数生成装置の概略構成例を示す回路図である。本実施形態において第1実施形態と同様の構成については同じ符号を付し説明を省略する。本実施形態の乱数生成装置10Cが第1実施形態と異なる点は、受信ユニット100の受信電圧VINを所定の電圧範囲に制限するリミッタ回路130を備えていることである。
【0049】
図7は図6に示す乱数生成装置の電圧制御発振器の制御電圧に対する発振周波数特性を示すグラフである。図7に示すように、電圧制御発振器110は、制御電圧VCOINに対して所定の電圧範囲までは出力信号CKINの発振周波数が線形に変化することが知られている。図7の例においては、制御電圧VCOINが0〜2.0Vの範囲では線形変化しているが、2.0Vを超えると電圧制御発振器110の回路特性などにより発振周波数が上限値に近づくため、制御電圧VCOINの増加に対する発振周波数の増加率が低くなる。したがって、2.0Vを超えるような電圧を制御電圧VCOINとして入力すると電圧制御発振器110の出力信号CKINの発振周波数があまり変動しなくなり、擬似乱数の不規則性が低下するため好ましくない。
【0050】
そこで、本実施形態においては、電圧制御発振器110と受信ユニット100との間に、受信ユニット100の受信電圧VINを所定の電圧範囲(例えば図7の例においては0〜2.0Vの範囲)に制限するリミッタ回路130を備えている。これにより、電圧制御発振器110に入力される電圧(受信電圧VINに基づいた電圧)を電圧制御発振器110の動作範囲内(0〜2.0Vの範囲内)とすることができる。なお、図7の例において、電圧制御発振器110の線形領域(制御電圧VCOINが0〜2.0Vの範囲)における周波数ゲイン(1Vあたりの周波数変化量)Gは、G=40MHz/2.0V=20(MHz/V)となる。
【0051】
図8は図6に示すリミッタ回路の具体的な構成例を示す回路図である。図8に示すように、本実施形態におけるリミッタ回路130は、入力電圧である受信電圧VINが入力される入力端子と所定の電圧源(図8の例においてはグランド)との間に直列接続された抵抗R1,R2およびダイオードD5を備えている。ダイオードD5はアノードが抵抗R2に接続され、カソードがグランドに接続されている。出力端子は、抵抗R1,R2間に設けられ、抵抗R1,R2によって分圧された電圧を出力電圧(制御電圧VCOIN)として出力するよう構成されている。その上で、分圧出力である制御電圧VCOINが電圧制御発振器110の電圧範囲内となるように、抵抗R1と抵抗R2との分圧比が設定されている。
【0052】
このようなリミッタ回路130の動作について説明する。ダイオードD5に印加される電圧がダイオードD5のI−V特性が大きく変わる領域(いわゆるオン電圧を意味し、例えばシリコンダイオードで約0.6V付近)より小さい電圧である場合には、ダイオードD5に印加される電圧に対してダイオードD5に流れる順方向電流が非常に少ない。このため、出力端子から出力される制御電圧VCOINは、入力端子に印加される受信電圧VINの変化に応じて比較的大きく変化する。これに対し、入力される受信電圧VINがより大きくなってダイオードD5に印加される電圧がオン電圧より高い電圧となった場合には、ダイオードD5に印加される電圧に対してダイオードD5に流れる順方向電流が非常に多くなる。したがって、出力端子から出力される制御電圧VCOINは、入力端子に印加される受信電圧VINに比して上昇率が小さく抑えられる。以上より、所望の電圧範囲の上限値に近い電圧が出力端子に印加される際に、ダイオードD5に印加される電圧がオン電圧となるように、抵抗R1,R2の値を設定することにより、最適なリミッタ回路130を容易に形成することができる。
【0053】
図9は図8に示すリミッタ回路の入出力電圧特性のシミュレーション結果を示すグラフである。図9は、図8に示すリミッタ回路130の抵抗R1の抵抗値を1000kΩ、抵抗R2の抵抗値を2kΩとし、標準動作温度を25℃とした場合の入出力電圧特性を示している。図9に示されるように、入力電圧である受信電圧VINが2.0Vを超えても出力電圧である制御電圧VCOINの上昇は抑えられるため、電圧制御発振器110の電圧範囲を超えない範囲に制御電圧を設定することができる。
【0054】
なお、本実施形態においては、リミッタ回路120をダイオードD5を用いて構成したが、I−V特性が非線形である整流素子であればこれに限られず、例えばダイオードD5の代わりに、ショットキーバリアダイオードやツェナーダイオードなどを用いることも可能である。ショットキーバリアダイオードの場合はダイオードD5と同様に、抵抗R2から所定の電圧源に向かう方向が順方向となるように接続され、ツェナーダイオードの場合は、所定の電圧源から抵抗R2に向かう方向が順方向となるように接続される。
【0055】
さらに、上記のようなリミッタ回路120は、温度に応じて出力される電圧値が変動する温度依存特性を有していてもよい。図10は図8に示すリミッタ回路の温度に対する出力電圧特性のシミュレーション結果を示すグラフである。図10は、図8に示すリミッタ回路130の抵抗R1の抵抗値を1000kΩ、抵抗R2の抵抗値を2kΩとし、入力電圧である受信電圧VINを(A)VIN=8V、(B)VIN=4V、(C)VIN=2Vとしたときに、リミッタ回路130の動作温度を−20℃〜100℃の間で変化させたときの出力電圧である制御電圧VCOINの電圧変化を示している。
【0056】
図10に示すように、入力電圧である受信電圧VINが同じ電圧であっても、温度が変化するに伴って出力電圧である制御電圧VCOINが変動する。図10の例においては、温度が高くなるに伴って制御電圧VCOINが低下する。すなわち、図10の例においては、リミッタ回路130は、回路全体で負の温度係数を有している。なお、リミッタ回路全体で正の温度係数を有するようにリミッタ回路を構成してもよい。このような温度依存性は、リミッタ回路130を構成する抵抗R1,R2およびダイオードD5の温度特性に応じて生じるものである。リミッタ回路130全体で所望の温度特性が得られるように各構成要素の温度特性を組み合せることにより、所望の温度依存性を得ることができる。これにより、温度変化によっても電圧制御発振器110に入力される電圧(制御電圧VCOIN)が変動するため、より不規則性の高い乱数を生成することができる。
【0057】
<第2実施形態の変形例>
次に、本発明の第2実施形態の変形例に係る乱数生成装置について説明する。図11は本発明の第2実施形態の変形例に係る乱数生成装置の概略構成例を示す回路図である。本変形例において第2実施形態と同様の構成については同じ符号を付し説明を省略する。本変形例の乱数生成装置(図11には乱数生成装置全体は図示せず)が第2実施形態と異なる点は、リミッタ回路130Dの構成が第2実施形態のリミッタ回路130とは異なることである。具体的には、リミッタ回路130Dは、図11に示すように、入力端子と所定の電圧源(図11の例においてはグランド)との間に直列接続された抵抗R3,R4と、当該抵抗R3と抵抗R4との間にアノードが接続され、カソードに所定の電圧源(図11の例においてはグランド)が接続されたダイオードD6とを備えている。抵抗R3と抵抗R4との間には、出力端子が接続されている。
【0058】
このような構成によれば、入力端子に印加される受信電圧VINが抵抗R3,R4によって分圧され、分圧された電圧がダイオードD6に印加される。ダイオードD6に印加される電圧が出力端子から出力される制御電圧VCOINとなる。ダイオードD6に印加される電圧がダイオードD6のオン電圧より小さい電圧である場合には、ダイオードD6に印加される電圧に対してダイオードD6に流れる順方向電流が非常に少ない。このため、出力端子から出力される制御電圧VCOINは、入力端子に印加される受信電圧VINの変化に応じて比較的大きく変動する。これに対し、入力される受信電圧VINがより大きくなってダイオードD6に印加される電圧がオン電圧より高い電圧となった場合には、ダイオードD6に印加される電圧に対してダイオードD6に流れる順方向電流が非常に多くなる。したがって、出力端子から出力される制御電圧VCOINは、入力端子に印加される受信電圧VINに比して上昇率が小さく抑えられる。以上より、所望の電圧範囲の上限値に近い電圧が出力端子に印加される際に、ダイオードD6に印加される電圧がオン電圧となるように、抵抗R3,R4の値を設定することにより、最適なリミッタ回路130Dを容易に形成することができる。
【0059】
図12は図11に示すリミッタ回路の入出力電圧特性のシミュレーション結果を示すグラフである。図12は、図11に示すリミッタ回路130Dの抵抗R3および抵抗R4の抵抗値をいずれも1000kΩとし、標準動作温度を25℃とした場合の入出力電圧特性を示している。本変形例においても、図12に示されるように、入力電圧である受信電圧VINが2.0Vを超えても出力電圧である制御電圧VCOINの上昇は抑えられるため、電圧制御発振器110の電圧範囲を超えない範囲に制御電圧VCOINを設定することができる。
【0060】
なお、本変形例においてもダイオードD6の代わりに、ショットキーバリアダイオードやツェナーダイオードを用いてもよい。
【0061】
また、本変形例のリミッタ回路130Dにおいても温度依存特性を有するように構成してもよい。図13は図11に示すリミッタ回路の温度に対する出力電圧特性のシミュレーション結果を示すグラフである。図13は、図11に示すリミッタ回路130Dの抵抗R3,R4の抵抗値をそれぞれ1000kΩとし、入力電圧である受信電圧VINを(A)VIN=8V、(B)VIN=4V、(C)VIN=2Vとしたときに、リミッタ回路130Dの動作温度を−20℃〜100℃の間で変化させたときの出力電圧である制御電圧VCOINの電圧変化を示している。
【0062】
本変形例においても図13に示すように、入力電圧である受信電圧VINが同じ電圧であっても、温度が変化するに伴って出力電圧である制御電圧VCOINが変動する。これにより、温度変化によっても電圧制御発振器110に入力される電圧(制御電圧VCOIN)が変動するため、より不規則性の高い乱数を生成することができる。
【0063】
<第3実施形態>
次に、本発明の第3実施形態に係る乱数生成装置について説明する。図14は本発明の第3実施形態に係る乱数生成装置における受信ユニットの概略構成例を示す回路図である。本実施形態において第1実施形態と同様の構成については同じ符号を付し説明を省略する。本実施形態の乱数生成装置が第1実施形態と異なる点は、受信ユニット100Eの受信機構101Eが、送信ユニット20Eからのエネルギーとして光を非接触で受信する受光素子PD1を含んでいることである。受信ユニット100E以外の構成については第1実施形態と同様であるので図14においては図示を省略している。
【0064】
本実施形態において、送信ユニット20Eは、一次側電源VCC1と、一次側電源VCC1の電力により発光する発光ダイオードLED1と、発光ダイオードLED1を駆動するLEDドライバ21とを備えている。受信ユニット100Eの受光素子PD1は、送信ユニット20Eの発光ダイオードLED1の発光によるエネルギーを受信(受光)するように構成されている。受光素子PD1は、例えばフォトダイオードにより構成される。また、受信ユニット100Eは、受光素子PD1に逆バイアスを印加するための二次側電源VCC2と、保護抵抗R5と、受光素子PD1で検出された電流を電圧に変換して受信電圧VINを出力する電流電圧変換回路103とを備えている。受光素子PD1は、カソードが保護抵抗R5(二次側電源VCC2側)に接続され、アノードが電流電圧変換回路103に接続されている。
【0065】
また、電流電圧変換回路103は、反転入力端子に受光素子PD1で検出された電流が入力され、非反転入力端子にグランドが接続されるオペアンプ104と、オペアンプ104の反転入力端子と出力端子との間の帰還経路に設けられた帰還抵抗R6とを備えている。
【0066】
このような構成において、受光素子PD1に、二次側電源VCC2により逆バイアスが印加された状態で、送信ユニット20Eの発光ダイオードLED1からの光が入射されると、受光素子PD1には逆方向に光電流が流れる。受光素子PD1を流れる光電流は、受光素子PD1において受光した光の感度に応じて変動する。送信ユニット20Eの発光ダイオードLED1の発光強度は、LEDドライバ21からの制御指令に応じて変動する。したがって、発光ダイオードLED1の発光強度の変動に応じて受信ユニット100Eの受光素子PD1が受光する光量は変動する。また、発光ダイオードLED1の発光強度が同じであっても、送信ユニット20Eと受信ユニット100Eとの間の距離に応じて受光素子PD1が受光する光量が容易に変動する。以上のように、受光素子PD1を流れる電流は、受光素子PD1が受光する光量に応じて様々に変動する。そして、受光素子PD1を流れる光電流は、オペアンプ104の非反転入力端子に入力される。オペアンプ104の非反転入力端子と反転入力端子との間は、イマジナリーショートされているため、オペアンプ104の出力端子から出力される電圧(すなわち受信電圧)VINは、非反転入力端子に入力される電流値に帰還抵抗R6の抵抗値を掛けた値となる。以上より、本実施形態のような構成においても、送信ユニット20Eおよび受信ユニット100Eの距離に応じて大きく変動する受信電圧VINを得ることができる。したがって、本実施形態においても大きく変動する受信電圧VINに基づいて擬似乱数を生成することができるため、簡単な構成で不規則性の高い乱数を生成することができる。
【0067】
なお、本実施形態において、受信ユニット100Eを構成する素子が温度依存性を有するように構成されてもよいし、第2実施形態と同様に、温度依存性を有するリミッタ回路を備えることとしてもよい。これにより、温度変化によっても電圧制御発振器110に入力される電圧(制御電圧VCOIN)が変動するため、より不規則性の高い乱数を生成することができる。
【0068】
本実施形態においては、電流電圧変換回路103としてオペアンプ104を用いた構成を例示したが、受光素子PD1に流れる電流を電圧に変換することが可能な構成であれば、これに限られず、例えば、受光素子PD1のアノードに直接抵抗が接続されるような構成としてもよい。
【0069】
また、受光素子PD1に光を照射する送信ユニット20Eの構成として発光ダイオードLED1を用いた例を示したが、本発明は受光素子PD1が受光可能な光を照射する構成であればこれに限られない。例えば白熱電球や赤外線ランプなどであってもよい。
【0070】
<乱数生成装置の適用例>
次に、上記実施形態の乱数生成装置の適用例について説明する。ここでは、非接触通信などの通信機器に使用されるID(識別番号)を生成するために通信機器に乱数生成装置が設けられた例について説明する。図15は本発明の一実施形態に係る乱数生成装置が適用された通信機器の構成例を示す回路図である。
【0071】
本適用例における乱数生成装置10Fは、第2実施形態における乱数生成装置10C(図6)において電圧制御発振器110を動作信号VCOONが入力される動作入力端子を備えた構成(図5における電圧制御発振器110B)に置き換えた構成を有している(図14においては本適用例における電圧制御発振器を改めて110Fと表記している)。また、本適用例においては、受信ユニット100の受信機構101としてコイルL1を採用し、受信ユニット100のその他の構成もそれに好適な回路構成(図2と同様の回路構成)を有している。本適用例における通信機器30は、受信ユニット100から出力される受信電圧VINを、通信機器30を構成する各装置の電源として使用可能に構成されている。
【0072】
本適用例における通信機器30は、上記構成の乱数生成装置10Fと、乱数生成装置10Fの擬似乱数生成器120で生成された擬似乱数列に基づいて生成されたIDを格納するID格納部140とを備えている。ID格納部140は、通信機器30の内部メモリ等により構成され、擬似乱数生成器120で生成された20ビットの出力端子S1〜S20から出力される乱数データをIDデータとして格納する。ID格納部140に格納されたIDデータは、受信ユニット100のコイルL1から送信ユニット20のコイルL2へ送信することが可能である。このように、送信ユニット20は、コイルL2から受信ユニット100のコイルL1へ電磁誘導により電力を供給する電源として機能するとともに、通信機器30のID認証を行うための通信インターフェイスとしても機能する。
【0073】
上記実施形態において説明したとおり、電圧制御発振器110Fは、動作信号VCOONがオン期間T1の間、受信ユニット100のコイルL1に生じた誘導起電力に基づいた発振周波数を有する出力信号VCOINを出力する。擬似乱数生成器120は、出力信号VCOINの発振周波数に含まれる波数(クロックの数)に基づいて20ビットの擬似乱数を生成し、出力端子S1〜S20に出力する。すなわち、動作信号VCOONがオン期間T1となる毎に擬似乱数生成器120は、擬似乱数を生成し、乱数データとして出力する。出力された乱数データは、ID格納部140に送られ、IDデータとして格納される。すなわち、擬似乱数生成器120から出力される乱数データがID格納部140に送られる毎に、ID格納部140に格納されるIDデータが更新される。電圧制御発振器110Fの動作信号VCOONがオフ期間T2にある場合、出力信号CKINは固定出力(波数0)となるため、ID格納部140に格納されているIDデータは、更新されず、前回のオン期間T1において生成されたIDデータが保持される。
【0074】
なお、本適用例においては、ID格納部140にIDデータが格納されるタイミングは動作信号VCOONのオン期間T1が終わった後(すなわちオフ期間T2におけるある時刻)として説明したが、オン期間T1内において擬似乱数生成器120によってそのときまでの出力信号CKINの発振周波数に含まれる波数に基づいて擬似乱数を生成し、ID格納部140にIDデータとして格納することとしてもよい。
【0075】
このような構成を有する通信機器30によれば、通信機器30を送信ユニット20に近づけると通信機器30に電力が供給され、通信機器30の受信ユニット100と送信ユニット20との間の距離に応じた誘導起電力が受信ユニット100のコイルL1に発生する。電圧制御発振器110Fの動作信号VCOONがオン期間T1となることにより、コイルL1に発生した誘導起電力に基づいて擬似乱数生成器120が乱数データを生成し、これがIDデータとしてID格納部140に格納される。特に、動作信号VCOONのオン期間T1を通信機器30が送信ユニット20に近づいているときを含む期間とすることにより、擬似乱数生成器120で生成される乱数データの不規則性をより高くすることができる。格納されたIDデータを受信ユニット100のコイルL1を介して送信ユニット20へ送ることにより、送信ユニット20において通信機器30の認証が行われ、当該認証後、種々の通信が行われる。このように、不規則性の高い乱数データを用いて、通信機器30の認証を行うことにより、より高い安全性を確保することができる。なお、ID格納部140に格納されているIDデータは、送信ユニット20との通信とは別の処理において用いられることとしてもよい。
【0076】
なお、本適用例においては、擬似乱数生成器120の出力端子S1〜S20から出力される20ビットの乱数データをすべて使用することとしたが、本発明はこれに限られない。例えば、20ビットの出力端子S1〜S20のうちの所定のいくつかのビット(例えばS1〜S3の3ビット)のみをIDデータとして取得し、ID格納部140に格納することとしてもよい。
【0077】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲内で種々の改良、変更、修正が可能である。例えば、複数の上記実施形態および変形例における各構成要素を任意に組み合わせることとしてもよい。また、上記実施形態においては擬似乱数生成器120としてM系列のビット列演算部を有する構成について説明したが擬似乱数を生成可能であれば、他の態様の擬似乱数生成器を用いてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0078】
本発明の乱数生成装置および乱数生成方法は、簡単な構成で不規則性の高い乱数を生成するために有用である。
【符号の説明】
【0079】
10,10B,10C,10D,10F 乱数生成装置
20,20E 送信ユニット
21 LEDドライバ
30 通信機器
100,100E 受信ユニット
101,101E 受信機構
102 整流回路
103 電流電圧変換回路
104 オペアンプ
110,110B,110F 電圧制御発振器
120 擬似乱数生成器
121 レジスタ
122 シフトレジスタ
123 XORゲート
130,130D リミッタ回路
140 ID格納部
C1 容量素子
D1,D2,D3,D4,D5,D6 ダイオード
L1,L2 コイル
LED1 発光ダイオード
PD1 受光素子
R1,R2,R3,R4,R5,R6 抵抗
VCC1 一次側電源
VCC2 二次側電源

【特許請求の範囲】
【請求項1】
送信ユニットから送られるエネルギーを非接触で受信する受信機構を有し、当該受信機構で受信したエネルギーを受信電圧に変換する受信ユニットと、
前記受信電圧に基づいて、発振する出力信号を出力する電圧制御発振器と、
前記電圧制御発振器の出力信号の発振周波数に応じて変動する擬似乱数を生成する擬似乱数生成器とを備えた、乱数生成装置。
【請求項2】
前記受信ユニットの受信電圧を所定の電圧範囲に制限するリミッタ回路を備えた、請求項1に記載の乱数生成装置。
【請求項3】
前記リミッタ回路は、温度に応じて出力される電圧値が変動する温度依存特性を有している、請求項2に記載の乱数生成装置。
【請求項4】
前記受信機構は、前記送信ユニットからの電磁波を非接触で受信するコイルを含んでいる、請求項1に記載の乱数生成装置。
【請求項5】
前記受信機構は、前記送信ユニットからの光を非接触で受信する受光素子を含んでいる、請求項1に記載の乱数生成装置。
【請求項6】
前記電圧制御発振器は、前記受信電圧に基づいた前記出力信号を出力するオン期間と所定の電圧レベルに固定して出力するオフ期間とを動作信号に基づいて切り替えるよう構成されており、
前記擬似乱数生成器は、前記オン期間に入力された出力信号の波数に基づいて変動する擬似乱数を生成するよう構成されている、請求項1に記載の乱数生成装置。
【請求項7】
前記擬似乱数生成器は、シフトレジスタと排他的論理和ゲートとを有するM系列のビット列演算部を備える、請求項1に記載の乱数生成装置。
【請求項8】
送信ユニットからのエネルギーを非接触で受信し、当該受信したエネルギーを受信電圧に変換する受信ステップと、
前記受信電圧に基づいて、発振する出力信号を出力する電圧制御発振ステップと、
前記出力電圧の発振周波数に応じて変動する擬似乱数を生成する擬似乱数生成ステップとを含む、乱数生成方法。



【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【公開番号】特開2012−220649(P2012−220649A)
【公開日】平成24年11月12日(2012.11.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−85036(P2011−85036)
【出願日】平成23年4月7日(2011.4.7)
【特許番号】特許第4983991号(P4983991)
【特許公報発行日】平成24年7月25日(2012.7.25)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】