説明

乳房検診用放射線断層撮影装置

【課題】乳房を検出器リングに確実に導入することにより、適切な診断ができる乳房検診用放射線撮影装置を提供する。
【解決手段】本発明の構成によれば、被検体Mの乳房Bを挟み込んだ状態で回転し被検体の乳房Bを検出器リング12の内部に導入させる一対のローラ6を備えている。このローラ6により、被検体の乳房Bは確実に検出器リング12の内部に送り出され、乳房Bの付け根が放射線断層撮影装置9の撮影視野に導入される。これにより、がん検診の重要な部分である腋かリンパ節を含んで断層画像を生成することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被検体から放射される消滅放射線を検出して、被検体内の放射線薬剤分布のイメージングを行う乳房検診用放射線断層撮影装置に係り、特に、がん検診用の乳房検診用放射線断層撮影装置に関する。
【背景技術】
【0002】
医療機関には、放射線薬剤の分布をイメージングする放射線断層撮影装置が配備されている。この様な放射線断層撮影装置の具体的な構成について説明する。従来の放射線断層撮影装置は、に示すように、放射線を検出する放射線検出器(特許文献1参照)が円環状に並んで構成される検出器リングが備えられている。この検出器リングは、被検体内の放射性薬剤から照射される互いに反対方向となっている一対の放射線(消滅放射線対)を検出する。
【0003】
この様な放射線断層撮影装置の一種として、乳房検診用の放射線断層撮影装置がある。この乳房検診用放射線撮影装置について具体的に説明する。図17は、従来の乳房検診用放射線撮影装置について説明する図である。従来の乳房検診用放射線撮影装置51では、検査に際し、被検体の乳房の片側が検出器リング62に導入される。この状態で、検出器リング62は、被検体から照射される消滅放射線対を検出する。
【0004】
検出器リング62は、乳房から発せられた消滅放射線対の発生源を特定して、この位置情報を基に放射性薬剤の分布が生成される。放射性薬剤は、がん組織に集積する性質があるので、放射性薬剤の分布図を診断すれば、乳がんの検診が行える。
【0005】
被検体に投与された放射性薬剤は、被検体の全身を巡っている。従って、消滅放射線対は、被検体の乳房以外の部分からも発生している。この乳房以外の部分から発生した消滅放射線対が検出器リング62に入射すると、乳房における放射性薬剤のイメージングの邪魔となる。
【0006】
そこで、従来の乳房検診用放射線撮影装置は、被検体の乳房以外の部分と検出器リング62とに挟まれる位置に、リング状の遮蔽板63が設けられている。この遮蔽板63は、被検体の乳房以外の部分から発生し検出器リング62に入射しようとする放射線を吸収する。これにより、乳房検診用放射線撮影装置は、乳房における放射性薬剤の分布を的確に捉えることができるようなっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2004−279057
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、従来構成の乳房検診用放射線撮影装置には次のような問題点がある。すなわち、従来の乳房検診用放射線撮影装置によれば、被検体の乳房を十分に検出器リング62に導入することができないという問題点がある。被検体の乳房を検出器リング62に十分に導入できないと、装置がイメージングできる乳房の部分が限られてしまう。
【0009】
乳がん検診において、乳房の付け根の部分を検査することが重要となる。この部分には、がん化しやすい腋かリンパ節が存しているからである。この部分を撮影しようとしても、検出器リング62に導入された被検体の乳房をこれ以上内部に誘導する手段がなく、検出器リング62にうまく乳房が導入されるまで乳房の誘導作業を何度もやり直すことになる。
【0010】
しかも、従来の乳房検診用放射線撮影装置においては被検体の乳房以外の部分と検出器リング62とに挟まれる位置に、リング状の遮蔽板63が設けられているのであるから、これが検出器リング62に乳房を深くまで導入するときに邪魔となってしまう。この様に、従来構成においては、乳がん検診で診断したい乳房の付け根を撮影することは困難なのである。
【0011】
本発明はこの様な事情に鑑みてなされたものであって、その目的は、乳房を検出器リングに確実に導入することにより、適切な診断ができる乳房検診用放射線撮影装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明は上述の課題を解決するために次のような構成をとる。
すなわち、本発明に係る乳房検診用放射線撮影装置は、放射線を光に変換するシンチレータと光を検出する光検出器とを備えた放射線検出器が弧状に配列され被検体の乳房を導入させる検出器リングと、検出器リングにおける被検体の乳房が導入される内穴に設けられた一対のローラと、ローラを回転させるローラ回転手段と、ローラ回転手段を制御するローラ回転制御手段とを備え、一対のローラは、被検体の乳房を挟み込んだ状態で回転し、被検体の乳房を検出器リングの内部に導入させることを特徴とするものである。
【0013】
[作用・効果]本発明の構成によれば、被検体の乳房を挟み込んだ状態で回転することにより被検体の乳房を検出器リングの内部に導入させる一対のローラを備えている。このローラにより、被検体の乳房は確実に検出器リングの内部に送り出され、乳房の付け根が乳房検診用放射線撮影装置の撮影視野に導入される。これにより、がん検診の重要な部分である腋かリンパ節を含んで断層画像を生成することができる。
【0014】
また、上述の乳房検診用放射線撮影装置において、ローラは、その長手方向が検出器リングの中心軸と直交するように配置され、ローラにおける長手方向の一端側にのみローラを回転自在に支持する支持部材が設けられていればより望ましい。
【0015】
[作用・効果]上述の構成は、本発明をより具体的に示したものとなっている。すなわち、ローラの一端側のみが支持部材によって支持されているのである。この様にすることで、支持部材が被検体の乳房に干渉することを防ぐことができる。
【0016】
また、上述の乳房検診用放射線撮影装置において、被検体を載置する天板を更に備え、天板および一対のローラに対して検出器リングを検出器リングの中心軸方向に移動させる検出器リング移動手段と、検出器リング移動手段を制御する検出器リング移動制御手段とを備えればより望ましい。
【0017】
[作用・効果]上述の構成は、検出器リングがローラに対して検出器リングの中心軸方向に移動する構成となっている。この様にすることで、検出器リングを被検体に近づけることにより、ローラに挟まれている乳房を検出器リングに導入させることができる。このようにすることで、乳房をローラに確実に挟み込んだ状態を確認した後に検査を開始することができるので、より操作性に優れた乳房検診用放射線撮影装置が提供できる。
【0018】
また、上述の乳房検診用放射線撮影装置において、生検用の針と、針を移動させる針移動手段と、針移動手段を制御する針移動制御手段とを備えればより望ましい。
【0019】
[作用・効果]上述は、本発明を生検ができる構成に適応した構成を示している。がん検診の重要な部分である腋かリンパ節を含んで生成された断層画像を参照して生検を行えるようにすれば、より診断の確実性が高い乳房検診用放射線撮影装置が提供できる。
【0020】
また、上述の乳房検診用放射線撮影装置において、ローラにおける被検体の乳房に接触する表面は、被検体の乳房を送り出す程度に十分な摩擦係数を有する材料で構成されればより望ましい。
【0021】
また、上述の乳房検診用放射線撮影装置において、ローラにおける被検体の乳房に接触する表面は、被検体の乳房を送り出す程度に十分な粘着性を有する材料で構成されればより望ましい。
【0022】
[作用・効果]上述は、ローラの表面の構成を示している。上述のように、ローラの表面を十分な摩擦係数を有する材料、または十分な粘着性を有する材料で生成すれば、ローラは確実に被検体の乳房を送り出すことができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】実施例1に係る放射線断層撮影装置の構成を説明する機能ブロック図である。
【図2】実施例1に係るローラの構成を説明する斜視図である。
【図3】実施例1に係る光検出器の構成を説明する斜視図である。
【図4】実施例1に係る放射線断層撮影装置の動作を説明するフローチャートである。
【図5】実施例1に係るローラの動作を説明する断面図である。
【図6】実施例1に係るローラの動作を説明する断面図である。
【図7】実施例1に係るローラの動作を説明する断面図である。
【図8】実施例2に係る放射線断層撮影装置の構成を説明する機能ブロック図である。
【図9】実施例2に係る放射線断層撮影装置の動作を説明する断面図である。
【図10】実施例3に係る放射線断層撮影装置の構成を説明する機能ブロック図である。
【図11】実施例3に係る放射線断層撮影装置の動作を説明する断面図である。
【図12】実施例3に係る放射線断層撮影装置の動作を説明する断面図である。
【図13】実施例3に係る放射線断層撮影装置の動作を説明する断面図である。
【図14】本発明の1変形例に係る構成を説明する斜視図である。
【図15】本発明の1変形例に係る構成を説明する平面図である。
【図16】本発明の1変形例に係る構成を説明する斜視図である。
【図17】従来構成のX線撮影装置の動作を説明する模式図である。
【実施例1】
【0024】
<放射線断層撮影装置の構成>
以下、本発明に係る放射線断層撮影装置の実施例を図面を参照しながら説明する。実施例1におけるγ線は本発明の放射線の一例である。なお、実施例1の構成は、乳房検診用のマンモグラフィー装置となっている。図1は、実施例1に係る放射線断層撮影装置の具体的構成を説明する機能ブロック図である。実施例1に係る放射線断層撮影装置9は、被検体Mの乳房Bをz方向から導入させるガントリ11と、ガントリ11の内部に設けられた被検体Mの乳房Bをz方向から導入させるリング状の検出器リング12とを備えている。検出器リング12に設けられた内穴は、z方向に伸びた円筒形(正確には、正8角柱)となっている。したがって、検出器リング12自身もz方向に伸びている。なお、検出器リング12の内穴の領域が、放射線断層撮影装置9の断層画像が生成できる撮影視野となっている。z方向は、検出器リング12の中心軸の伸びる方向に沿っている。
【0025】
検出器リング12における被検体Mの乳房Bが導入される内穴には、一対の円筒形のローラ6が設けられている。このローラ6は、z方向と直交する方向に伸びており、被検体Mの乳房Bを挟み込む目的で設けられている。図1においては、2つのローラ6が紙面に向かう軸に沿って両側から挟み込んでいるところを図示しているので、乳房Bの奥側に位置するローラ6は、図1において描かれてはいない。支持部材7は、z方向に伸びており、ローラにおける長手方向の一端側に接続されており、ローラ6を回転自在に支持する。これによりローラ6は、支持部材7に対して、円筒形となっているローラ6の中心軸を中心に回転することができる。
【0026】
ローラ回転機構14は、ローラ6を支持部材7に対して回転させる目的で設けられている。そして、ローラ回転制御部15は、ローラ回転機構14を制御する目的で設けられている。ローラ回転機構14は、本発明のローラ回転手段に相当する。
【0027】
このローラ6についてより具体的に説明する。放射線断層撮影装置9には、図2に示すように伸びる方向を同じくした2本のローラ6が設けられており、支持部材7は、ローラ6ごと設けられている。ローラ回転機構14によりローラ6は、図2の矢印に示すように回転することができる。2本の支持部材7は、z軸方向、およびローラ6の伸びる方のいずれにも直交する方行に伸びた基材8に接続されている。支持部材移動機構7aは、支持部材7を移動させるための手段で、支持部材7を基材8の伸びる方向に往復移動させる。支持部材移動制御部7bは、支持部材移動機構7aを制御するための制御手段である。実施例1において、基材8と検出器リング12との位置関係は変更されることはない。
【0028】
遮蔽プレート13は、タングステン等で構成される。放射性薬剤は、被検体Mの乳房B以外の部分にも存在するので、そこからも消滅γ線対が発生している。しかし、この様な関心部位以外から発生する消滅γ線対が検出器リング12に入射すると、断層画像撮影の邪魔となる。そこで、検出器リング12のz方向における被検体Mに近い側の一端を覆うようにリング状の遮蔽プレート13が設けられているのである。
【0029】
クロック19は、検出器リング12にシリアルナンバーとなっている時刻情報を送出する。検出器リング12から出力される検出データには、γ線をどの時点で検出したかという時刻情報が付与され、後述のフィルタ部20に入力される。
【0030】
検出器リング12の構成について説明する。検出器リング12は、8個の放射線検出器1がz方向(中心軸方向)に垂直な平面上の仮想円に配列されることで、1つの単位リングが形成される。この単位リングがz方向に3個配列されて検出器リング12が構成される。
【0031】
放射線検出器1の構成について簡単に説明する。図3は、実施例1に係る放射線検出器の構成を説明する斜視図である。放射線検出器1は、図3に示すように放射線を光に変換するシンチレータ2と、光を検出する光検出器3とを備えている。そして、シンチレータ2と光検出器3との介在する位置には、光を授受するライトガイド4が備えられている。
【0032】
シンチレータ2は、シンチレータ結晶が3次元的に配列されて構成されている。シンチレータ結晶は、Ceが拡散したLu2(1−X)2XSiO(以下、LYSOとよぶ)によって構成されている。そして、光検出器3は、どのシンチレータ結晶が光を発したかという光の発生位置を特定することができるようになっているとともに、光の強度や、光の発生した時刻をも特定することができる。また、実施例1の構成のシンチレータ2は、採用しうる態様の例示にすぎない。したがって、本発明の構成は、これに限られるものではない。
【0033】
同時計数部21(図1参照)には、後述のフィルタ部20を経由して検出器リング12から出力された検出データが送られてきている。検出器リング12に同時に入射した2つのγ線は、被検体内の放射性薬剤に起因する消滅γ線対である。同時計数部21は、検出器リング12を構成するシンチレータ結晶のうちの2つの組み合わせ毎に消滅γ線対が検出された回数をカウントし、この結果を断層画像生成部22に送出する。同時計数におけるシンチレータ結晶の位置関係は、消滅γ線対が検出器リング12に入射した位置と入射した方向を示すものであり、放射性薬剤のマッピングに必要な情報である。シンチレータ結晶の組合せ毎に記憶される消滅γ線対検出の回数および消滅放射線のエネルギー強度は、被検体内における消滅γ線対の発生のバラツキを示すものであり、放射性薬剤のマッピングに必要な情報である。なお、同時計数部21による検出データの同時性の判断は、クロック19によって検出データに付与された時刻情報が用いられる。
【0034】
フィルタ部20は、検出器リング12における無用なデータを同時計数部21に送出させない目的で設けられている。同時計数部21は、膨大なデータを扱わなければならないので、負荷がかかりやすい。フィルタ部20は、同時計数部21の負荷を軽減するように検出データを間引くことができる。例えば、被検体Mが検出器リング12の内部に挿入されていないときの検出データは、全てフィルタ部20が破棄して、同時計数部21に入力されない。
【0035】
断層画像生成部22は、同時計数部21が出力する消滅γ線対の発生位置と放射線強度に関するデータを受け取って、消滅放射線の発生位置が空間的にマッピングされた断層画像を生成する。このときの断層画像としては、例えば、被検体Mの乳房Bを輪切りにするようなアキシャル画像となっている。
【0036】
表示部36は、断層画像生成部22が生成した断層画像を表示させるものであり、操作卓35は、術者が放射線断層撮影装置9に対して行う諸操作を入力させるものである。記憶部37は、検出器リング12が出力する検出データ、同時計数部21が生成する同時計数データ、断層画像等、各部の動作によって生じるデータ、および各部の動作に際して参照されるパラメータの一切を記憶するものである。
【0037】
なお、放射線断層撮影装置9は、各部を統括的に制御する主制御部41を備えている。この主制御部41は、CPUによって構成され、各種のプログラムを実行することにより、各部19,20,21,22を実現している。なお、上述の各部はそれらを担当する制御装置に分割されて実現されてもよい。
【0038】
<放射線撮影装置の動作>
次に、実施例1に係る放射線断層撮影装置の動作について説明する。乳房検診を行うには、図4に示すように、乳房Bが検出器リング12に挿入され(乳房挿入ステップS1),乳房Bを検出器リング12の内部に送り出す(乳房送り出しステップS2)。そして、断層画像が生成される(断層画像生成ステップS4)。これらの各ステップについて順を追って説明する。なお、検出器リング移動ステップS3は、実施例2の構成に関係しているので、実施例2で説明する。生検ステップS5は、実施例3の構成に関係しているので、実施例3で説明する。
【0039】
<乳房挿入ステップS1>
まず、被検体Mに放射性薬剤が注射される。この時点から所定の時間が経過した時点で、被検体Mの乳房Bが検出器リング12に挿入される。図5は、この動作が終了した状態を示している。乳房Bは鉛直下向きの方向から検出器リング12に導入される。このとき、一対のローラ6は、離間しており、乳房Bには接していないものとする。この時点で、乳房Bの付け根に存する腋かリンパ節Lは、検出器リング12の内穴に入り込んでおらず、このままでは腋かリンパ節Lを撮影することはできない。
【0040】
<乳房送り出しステップS2>
術者が操作卓35を操作して乳房Bの挟み込みの指示を与えると、支持部材7が互いに近づくように移動される(図5の矢印参照)。この時点で、乳房Bは一対のローラ6に挟み込まれる(図6参照)。次に、術者が操作卓35を操作して乳房Bの検出器リング12への導入の指示を与えると、一対のローラ6は、回転を開始する。このとき、ローラ6の回転は、検出器リング12における乳房Bを挿入される開口から見て、ローラ6の表面が検出器リング12の内側に向かうように回転される(図6の矢印参照)。従って、一対のローラ6の回転は、互いに逆回転となっている。
【0041】
乳房Bはローラ6の回転により下側に移動され、検出器リング12の内部へと送り込まれる。この乳房Bの移動に伴って、腋かリンパ節Lも検出器リング12の内部へと移動し、最終的には、腋かリンパ節Lは、図7に示すように、検出器リング12の内穴に存することになる。放射線断層撮影装置は、検出器リング12の内穴の空間について放射性薬剤の分布をマッピングできる。ローラ6により乳房Bが検出器リング12の内部に送り込まれた結果、腋かリンパ節Lが放射線断層撮影装置の視野範囲に収まったのである。
【0042】
<断層画像生成ステップS4>
術者が操作卓35を通じて、消滅γ線対の検出を指示すると、検出器リング12は、フィルタ部20に検出データの送出を開始する。このとき送出される検出データは、放射線の検出器リング12における入射位置と、エネルギーと、入射時間とが連関したデータセットとなっている。
【0043】
同時計数部21は、検出データに同時計数を行い、この結果を断層画像生成部22に送出する。断層画像生成部22は、被検体Mの乳房Bを輪切りにするような断層画像を生成し、これが表示部36に表示される。こうして、実施例1における放射線断層撮影装置の動作は終了となる。
【0044】
以上のように、実施例1の構成によれば、被検体Mの乳房Bを挟み込んだ状態で回転することにより被検体Mの乳房Bを検出器リング12の内部に導入させる一対のローラ6を備えている。このローラ6により、被検体Mの乳房Bは確実に検出器リング12の内部に送り出され、乳房Bの付け根が放射線断層撮影装置9の撮影視野に導入される。これにより、がん検診の重要な部分である腋かリンパ節を含んで断層画像を生成することができる。
【0045】
また、ローラ6の一端側のみが支持部材7によって支持されている。この様にすることで、支持部材7が被検体Mの乳房Bに干渉することを防ぐことができる。
【0046】
上述のように、ローラ6の表面を十分な摩擦係数を有する材料、または十分な粘着性を有する材料で生成すれば、ローラ6は確実に被検体Mの乳房Bを送り出すことができる。
【実施例2】
【0047】
続いて、実施例2に係る放射線断層撮影装置の構成について説明する。実施例2の構成は、実施例1に係る放射線断層撮影装置の構成に図8に示すように、検出器リング12の上側に設けられているとともに被検体Mを載置する目的で設けられた天板22と、検出器リング12を上下に移動させる検出器リング移動機構23とこれを制御する検出器リング移動制御部24とを備えている。主制御部41は、各部19,20,21,22と同様に検出器リング移動制御部24をも実現する。検出器リング移動機構23は、本発明の検出器リング移動手段に相当し、検出器リング移動制御部24は、本発明の検出器リング移動手段に相当する。
【0048】
天板22は、腹ばいとなっている被検体Mを載置する目的で設けられており、被検体Mの乳房Bを下方に挿通させる穴が設けられている。また、被検体Mの体勢を楽なものとする目的で、被検体Mと天板22との間に穴を設けたカバー台を設ける構成としてもよい。この場合、乳房Bは、カバー台に設けられた穴に挿通されることになる。天板22には、検出器リング12を通過させるための穴が設けられており、検出器リング12が被検体Mに近づく際には、検出器リング12は、天板22の穴を通過して、このカバー台に近づくことになる。
【0049】
検出器リング移動機構23は、検出器リング12とこれに付属する遮蔽プレート13とを検出器リング12の中心軸方向(z方向:鉛直方向)に移動させる目的で設けられている。検出器リング移動機構23により、検出器リング12は、被検体Mに対して進退自在となっている。検出器リング移動制御部24は、検出器リング移動機構23を制御する目的で設けられている。なお、検出器リング移動機構23によっても天板22とローラ6との位置関係は変化しない。検出器リング12は、天板22および一対のローラ6に対してz方向に移動するのである。
【0050】
<放射線撮影装置の動作>
次に、実施例2に係る放射線断層撮影装置の動作について説明する。乳房検診を行うには、まず、被検体Mに放射性薬剤が注射される。この時点から所定の時間が経過した時点で、被検体Mの乳房Bが天板22の穴に挿入される。このとき、検出器リング12は、被検体Mから遠ざけられている。
【0051】
術者が、操作卓35を通じてローラ回転制御部15,支持部材移動制御部7bに対し乳房Bを検出器リング12に近づけるように指示を与えると、図5,図6,図7で説明したように、乳房Bが天板22の下側に送り込まれる。術者はその様子を目視することができる。検出器リング12が乳房Bの下側に位置しているからである。ローラ回転制御部15は、本発明のローラ回転制御手段に相当する。
【0052】
<検出器リング移動ステップS3>
この状態で、術者が、操作卓35を通じて、検出器リング12を上側に移動するように指示を与えると、検出器リング12が天板22に向けて移動し(図9の矢印参照),検出器リング12と被検体Mの位置関係が図7に示すような状態となる。術者が操作卓35を通じて、消滅γ線対の検出を指示すると、やがて断層画像が表示部36に表示される。この動作は実施例1で示したとおりである。
【0053】
以上のように実施例2に係る放射線断層撮影装置9は、検出器リング12がローラ6に対して検出器リング12の中心軸方向(Z方向)に移動する構成となっている。この様にすることで、検出器リング12を被検体Mに近づけることにより、ローラ6に挟まれている乳房Bを検出器リング12に導入させることができる。このようにすることで、乳房Bをローラ6に確実に挟み込んだ状態を確認した後に検査を開始することができるので、より操作性に優れた放射線断層撮影装置9が提供できる。
【実施例3】
【0054】
続いて、実施例3に係る放射線断層撮影装置の構成について説明する。実施例3の構成は、実施例2に係る放射線断層撮影装置の構成に図10に示すように、生検用装置を備えた構成となっている。言い換えれば、実施例3は、実施例1に係る放射線断層撮影装置に検出器リング12を移動させる機構、および生検用装置を備えた構成となっている。
【0055】
生検用装置は、具体的には、生検用の針31と、針を移動させる針移動機構33と、針移動機構33を制御する針移動制御部34とを備えている。検出器リング12が被検体Mから離反された場合において、針31は、天板22と検出器リング12との間に位置している。主制御部41は、各部19,20,21,22,24と同様に針移動制御部34をも実現する。針移動機構33は、本発明の針移動手段に相当し、針移動制御部34は、本発明の針移動制御手段に相当する。
【0056】
針移動機構33は、針31を三次元的に移動させる機構であり、針31の角度も調整することができるようになっている。
【0057】
<放射線撮影装置の動作>
次に、実施例3に係る放射線断層撮影装置の動作について説明する。まず実施例2の動作と同じ要領で断層像が撮影される。断層像には、乳房Bにおける放射性薬剤が集中している部分を表しているものとする。この集中部は、がん化している可能性がある部分であり、生検により、より確実な診断を行う必要があるものとする。図11は、断層像の撮影が終了した直後の放射線断層撮影装置9を示している。図11における点Pは、放射性薬剤の集中部を示している。
【0058】
<生検ステップS5>
術者が操作卓35を通じて、点Pについての生検を開始する旨の指示を行うと、検出器リング12が被検体Mから離反される。これによって、被検体Mの乳房Bは検出器リング12から露出する。放射線断層撮影装置9は、断層画像を基に針31を移動させ、針31の先端を乳房Bに突き刺す。その後も針31は、乳房Bの内部を突き進み、針31の先端を点Pまで移動させる(図12参照)。
【0059】
放射線断層撮影装置9は、点Pの位置に存する組織を取り出す。この方法について簡単に説明する。図13は、針31の先端を説明する断面図である。針31は、図13(a)に示すように、円筒形の鞘31aの内部に軸心31bが挿通された構造となっている。軸心31bには、軸心31bの一部が切り欠かれることにより構成されている肉薄部31cが設けられており、肉薄部31cは、軸心31bのZ方向下側に位置する先端部とZ方向上側に位置する基端部とを架橋している。このようにして、軸心31bには、切り欠きが設けられている。Z方向とは軸心31bの伸びる方向である。
【0060】
図13(b)は、組織を採取する前の針31の先端を示している。肉薄部31cは、鞘31aから露出しており、肉薄部31cの周りの組織は、軸心31bの切り欠きに入り込むように膨出する。この状態で、術者が操作卓35を通じて採取の指示を行うと、鞘31aがZ方向下向きに移動して、肉薄部31cを被覆する。すると、図13(c)に示すように、切り欠きに存していた組織の一部が鞘31aによって切断されて切り欠きに取り残される。このときの切り欠きは、開口が鞘31aによって覆われており、切り欠きに取り残された組織の一部は、その場で捕獲された状態となる。この状態で針31を被検体Mの乳房Bから引き抜けば、針31の先端には、点Pの組織の一部が採取されていることになる。採取された組織の一部は、顕微鏡観察検査用として保存されて、検査は終了となる。
【0061】
以上のように、実施例3に係る放射線断層撮影装置9は、実施例1の構成を生検ができる構成に適応した構成を示している。がん検診の重要な部分である腋かリンパ節を含んで生成された断層画像を参照して生検を行えるようにすれば、より診断の確実性が高い放射線断層撮影装置9が提供できる。
【0062】
本発明は、上述の構成に限られることなく、下記のように変形実施をすることができる。
【0063】
(1)実施例1の構成に加えて、支持部材7をz方向に伸縮自在としてもよい。この様にすることで、被検体Mの体格に適合した自由度の高い乳房Bの送り出しを行うことができる。本変形例においては、図14に示すように、支持部材7を伸縮させる支持部材伸縮機構7cと、これを制御する支持部材伸縮制御部7dとを有している。支持部材伸縮機構7cにより支持部材7が伸縮すると、基材8とローラ6との距離が調節される。また、2本の支持部材7は、個別に支持部材伸縮機構7cを有しており、支持部材7は、個別に伸縮できるようになっている。
【0064】
(2)実施例1の構成に加えて、基材8を検出器リング12の中心軸を中心に回転させるようにしてもよい。これにより、術者は、被検体Mの乳房Bを挟みやすい方向を選択して乳房Bの送り出しを行うことができる。本変形例においては、図15に示すように基材を回転させる基材回転機構8aと、これを制御する基材回転制御部8bとを備えている。
【0065】
(3)実施例1の構成に加えて、乳房Bの可撓性を一時的に失わせる構成を備えていてもよい。これにより、断層撮影から生検検査まで確実に乳房Bの位置を一定とすることができるので、乳房Bにおける放射性薬剤が集中している部分に針31の先端を確実に位置させることができる。本変形例においては、図16に示すように支持部材7は、2つのアームを有するU形状となっている。このアームの各々には、z方向およびローラ6の延伸方向のいずれにも直交する方向に伸びたネジ穴を有する耳部7eを有している。
【0066】
グリッドトレイ40は、乳房Bを面で押さえ込む目的で形成されている。このグリッドトレイ40は、z方向、およびローラ6の延伸方向に伸びた平面状であり、ローラ6の延伸方向に伸びた長穴40aを複数有している。グリッドトレイ40の周縁部には、グリッドトレイ40を支持部材7に固定させる目的で設けられたネジ穴を有している。このネジ穴の延伸方向は、耳部7eに設けられたネジ穴の延伸方向と同一の方向である。
【0067】
実施例3の動作において、図5,図6,図7で説明した乳房送り出しステップS2の後、検出器リング移動ステップS3の前にグリッドトレイ40が支持部材7にネジ止めされる。この様にすれば、被検体Mの乳房Bは面で押さえられて一時的に可撓性を失う。なお、放射線撮影撮影装置において支持部材7は、2つ設けられているので、これらに装着できるように2枚のグリッドトレイが必要となる。
【0068】
この様なグリッドトレイ40は、実施例3のような生検に有効である。すなわち、グリッドトレイ40は、断層撮影が行われた後、生検を実行しようとしたときに、被検体Mの乳房Bの位置がズレてしまうことを抑制することができる。なお、長穴40aは生検用の針31を乳房側に通過させる目的で設けられている。
【0069】
(4)上述した各実施例のいうシンチレータ結晶は、LYSOで構成されていたが、本発明においては、その代わりに、GSO(GdSiO)などの他の材料でシンチレータ結晶を構成してもよい。本変形例によれば、より安価な放射線検出器が提供できる放射線検出器の製造方法が提供できる。
【0070】
(5)上述した各実施例において、光検出器は、光電子増倍管で構成されていたが、本発明はこれに限らない。光電子増倍管に代わって、フォトダイオードやアバランシェフォトダイオードや半導体検出器などを用いていもよい。
【0071】
(6)上述した各実施例において、検出器リング12は、O型のリング状であったがこれに代えてC型の円弧状としてもよい。検出器リング12を円弧状とすれば、検出器リング12の検出器が設けられていない切り欠き部を通じて、針31の導入が可能である。また、切り欠き部に被検体Mの腕を挿通させることもできる。
【符号の説明】
【0072】
1 放射線検出器
6 ローラ
7 支持部材
12 検出器リング
14 ローラ回転機構(ローラ回転手段)
15 ローラ回転制御部(ローラ回転制御手段)
22 天板
23 検出器リング移動機構(検出器リング移動手段)
24 検出器リング移動制御部(検出器リング移動手段)
31 針
33 針移動機構(針移動手段)
34 針移動制御部(針移動制御手段)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
放射線を光に変換するシンチレータと光を検出する光検出器とを備えた放射線検出器が弧状に配列され被検体の乳房を導入させる検出器リングと、
前記検出器リングにおける被検体の乳房が導入される内穴に設けられた一対のローラと、
前記ローラを回転させるローラ回転手段と、
前記ローラ回転手段を制御するローラ回転制御手段とを備え、
一対の前記ローラは、被検体の乳房を挟み込んだ状態で回転し、被検体の乳房を前記検出器リングの内部に導入させることを特徴とする乳房検診用放射線撮影装置。
【請求項2】
請求項1に記載の乳房検診用放射線撮影装置において、
前記ローラは、その長手方向が前記検出器リングの中心軸と直交するように配置され、
前記ローラにおける長手方向の一端側にのみ前記ローラを回転自在に支持する支持部材が設けられていることを特徴とする乳房検診用放射線撮影装置。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の乳房検診用放射線撮影装置において、
被検体を載置する天板を更に備え、
前記天板および一対の前記ローラに対して前記検出器リングを前記検出器リングの中心軸方向に移動させる検出器リング移動手段と、
前記検出器リング移動手段を制御する検出器リング移動制御手段とを備えることを特徴とする乳房検診用放射線撮影装置。
【請求項4】
請求項1ないし請求項3のいずれかに記載の乳房検診用放射線撮影装置において、
生検用の針と、
前記針を移動させる針移動手段と、
前記針移動手段を制御する針移動制御手段とを備えることを特徴とする乳房検診用放射線撮影装置。
【請求項5】
請求項1ないし請求項4のいずれかに記載の乳房検診用放射線撮影装置において、
前記ローラにおける被検体の乳房に接触する表面は、被検体の乳房を送り出す程度に十分な摩擦係数を有する材料で構成されることを特徴とする乳房検診用放射線撮影装置。
【請求項6】
請求項1ないし請求項4のいずれかに記載の乳房検診用放射線撮影装置において、
前記ローラにおける被検体の乳房に接触する表面は、被検体の乳房を送り出す程度に十分な粘着性を有する材料で構成されることを特徴とする乳房検診用放射線撮影装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【公開番号】特開2011−220771(P2011−220771A)
【公開日】平成23年11月4日(2011.11.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−88757(P2010−88757)
【出願日】平成22年4月7日(2010.4.7)
【出願人】(000001993)株式会社島津製作所 (3,708)
【Fターム(参考)】