説明

乳酸菌組成物の製造方法

1%から50%(乾燥重量比)の抗酸化剤としてのアスコルビン酸塩またはアスコルビン酸を処方された、少なくとも2kg(乾燥重量)の乳酸菌組成物を製造する方法であって、NH3(アンモニア)を含まない塩基を加えることにより発酵過程の少なくとも大部分の間、そのpHを3から8に制御する前記方法に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、1%から50%(乾燥重量比)の抗酸化剤としてのアスコルビン酸塩またはアスコルビン酸を処方された、少なくとも2kg(乾燥重量)の乳酸菌組成物を製造する方法であって、NH3(アンモニア)を含まない塩基を加えることにより発酵過程の少なくとも大部分の間、そのpHを3から8に制御する前記方法に関する。
【背景技術】
【0002】
乳酸菌はグラム陽性、無芽胞菌属に関する糖類の乳酸発酵を行う。
乳酸菌は、商業的に広く、例えばヨーグルト等のような様々な食品類の製造に使用される。
さらに、多くの乳酸菌は、プロバイオティクス、すなわち適切な量を摂取した場合に宿主(例えばヒト)に健康利益を与える生きた微生物である。
【0003】
乳酸菌製品は、商業的にしばしば乾燥組成物、例えば凍結乾燥組成物として販売される。乾燥組成物は、例えば乾燥ペレットや錠剤(例えば、粉砕された乾燥ペレットから製造される)であってもよい。
【0004】
ヒト用または動物用の乳酸菌(例えば乾燥状態)は、抗酸化剤としてアスコルビン酸やアスコルビン酸塩、例えばアスコルビン酸ナトリウムをしばしば処方され、アスコルビン酸ナトリウムは、例えば、乳酸菌製品の貯蔵安定性を改善する。
【0005】
アスコルビン酸ナトリウムは、アスコルビン酸(ビタミンC)の塩であり通常のE番号、E301(欧州連合食品添加物法参照)である。アスコルビン酸ナトリウムおよびアスコルビン酸の構造は、本明細書の図1に示される。
L. Kurtmann et al., “Storage stability of freeze-dried Lactobacillus acidophilus(La-5)in relation to water activity and presence of oxygen and ascorbate”; Cryobiology(2009), doi:10.1016/j.cryobiol.2008.12.001 の論文は2008年12月にインターネット上に公開されている。
【0006】
当該 L−Kurtmannらの論文は、アスコルビン酸ナトリウムが存在した場合は、貯蔵の間、乾燥したラクトバチルス アシドフィラス(Lactobacillus acidophilus)の組成物やサンプルの表面に、ピンクまたは赤色が観察されたことを述べる(例えば、当該要旨を参照)。
【0007】
このようなピンクまたは赤色は所望するものではない。例えば、このようなピンクまたは赤色は、乾燥乳酸菌製品が不健全である見た目を与えるため、多くの消費者は好まない。
【0008】
発酵の間、乳酸菌は乳酸を生成する。したがって、生成の間、低すぎるpHにならないために、当該pHは、塩基を加えることにより発酵の間、制御される。
【0009】
乳酸菌は一般的に、pH3未満では適切に生育しないため、一般的に当該pHは、発酵過程の少なくとも大部分の間、3から8を保つために制御される。
【0010】
L−Kurtmannらの論文において、Chr. Hansen A/SのL.アシドフィラス(L. acidophilus)(La-5(商標))が使用された。当該論文において、pHは発酵の間、制御されたことが、一般的に述べられている(材料および方法を参照)。どのようにしてpH制御が行われたかについては、言及がされていない。
【0011】
塩基としてのNH3の使用は、工業において乳酸菌製品の、商業的、工業的生産についてかなり普通のことである。事実、「標準」として考慮されているであろう。
【0012】
上記を論じた当該L. Kurtmannの論文の179頁右欄では、菌細胞由来または発酵残渣由来のアミノ基が、所望しないピンク色あるいは赤色の呈色に関与する可能性があることを指摘している。当該論文は、「アスコルビン酸がデヒドロアスコルビン酸に酸化し、そしてアミノ基と反応し当該色素を形成した場合に、赤色化合物が形成される」と示している。
以下にさらに述べるように、事実、L−Kurtmannの論文のこの開示された理論は、本発明(すなわち、NH3を含む塩基を使用していないため)を遠ざける示唆と言ってもよい。
【0013】
EP-A-1038951(Nestle [CH])は菌培養のための培地を開示しており、その培地は、抗酸化剤としてアスコルビン酸およびNa2CO3、KH2PO4のような緩衝液(3頁、請求項3および4を参照)を含む。
段落[0026]において、例えば、アスコルビン酸は、発酵培地に含まれる適切な抗酸化剤の例として、単に供給されることが示されている。
言い換えると、EP-A-1038951は、直接的かつ明確に菌の生産方法を開示しておらず、アスコルビン酸は、回収された菌濃縮物に加えられている。すなわち、以下に述べるように、EP-A-1038951は、明白に、本明細書に述べられた本発明の第一態様(請求項1)の工程(iii)を開示していない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
本発明によって解決される課題は、抗酸化剤としてアスコルビン酸塩またはアスコルビン酸を処方された乳酸菌組成物(例えば、乾燥状態)を生産するための新たな方法であって、当該組成物が貯蔵の間に著しいピンクまたは赤色に顕色しない前記方法を提供することにある。
【0015】
本発明者らは、所望しないピンクまたは赤色顕色は、アスコルビン酸ナトリウムを処方された様々な乳酸菌の培地に関連のあること、すなわち、L−Kurtmannの論文で分析されたラクトバチルス アシドフィラス(Lactobacillus acidophilus)(La-5(商標))組成物またはサンプルが原因のみでないことを同定した。
【0016】
本明細書の実施例に示すように、ピンクまたは赤色は、他の市販の培養物、例えば、ラクトバチルス サーモフィラス(LGG(登録商標))、ストレプトコッカス サーモフィラス(TH-4(商標))およびビフィドバクテリウム アニマリス(BB-12(登録商標))培地にも現れた。
【0017】
これをさらに追求することにより、本発明者らは分析したLa-5(商標)、LGG(登録商標)、TH-4(商標)およびBB-12(登録商標)組成物すべてにおいて、発酵pHを制御するためにNH3が塩基として使用されてきたことを突き止めた。
【0018】
さらにそれと一緒に作用するために、本発明者は塩基としてNaOHをNH3の代わりに使用することによって、アスコルビン酸ナトリウムを処方された乾燥La-5(商標)、LGG(登録商標)、TH-4(商標)およびBB-12(登録商標)組成物であって、当該組成物の貯蔵の間、著しいピンクまたは赤色に顕色しない組成物を生産することが、驚くべきことに可能となった。さらなる詳細については、本明細書の実施例を参照のこと。
したがって、本発明の本質は、NH3を含む塩基を使用しないことにあると思われる。
【0019】
理論に制限されることはないが、NH3の使用に関係するピンクまたは赤色の問題は、次の理論的説明ができると信じられる。
【0020】
アンモニア(NH3)は、アンモニウム(NH4+)と平衡状態にある。当該平衡は9.25のpKaを有し、pH9.25未満ではアンモニウム(NH4+)として大多数が存在し、すなわち、培養物が本発明の第一態様の工程(i)で調節されるpHで、正に荷電していることを意味する(以下を参照)。
アスコルビン酸の2つのOH基のpKaは、それぞれ、4.17および11.6である。これは、4.17のpKaのOH基は、脱プロトン化され、そしてアスコルビン酸塩の負電荷(電子過多)点が存在する。本明細書の図1は、アスコルビン酸ナトリウムおよびアスコルビン酸の構造を示す。
もっともはっきりとしているのは、pH4より上であることが明白である。しかし、当業者に知られている平衡効果のため、pH3より上でもまた関連がある。
【0021】
あまり詳細になりすぎることを避けて、この理論の本質は、正荷電のNH3(すなわち、NH4+)はアスコルビン酸塩分子中の負荷電(電子過多)点を「攻撃」し、そしてこれは、貯蔵の間に、最終的に化合物が所望しないピンクまたは赤色を付与または顕色することをもたらす反応の連鎖を開始する。
【0022】
当業者に自明なように、NaOHは、正電荷反応基であるNH4+と同類ではなく、そしてこれは、理論によれば、NaOHを塩基として使用した場合に、ピンクまたは赤色が見られないことの本質的な理由である。
【0023】
上記を論じたL. Kurtmannの論文の179頁右欄では、菌細胞由来のまたは発酵残渣由来のアミノ基は所望しないピンク色あるいは赤色の呈色に関与する可能性があることを指摘している。この論文は、「アスコルビン酸がデヒドロアスコルビン酸に酸化し、そしてアミノ基と反応し当該色素を形成した場合に、赤色化合物が形成される」と示している。
事実、L−Kurtmannの論文のこの開示された理論は、本発明(すなわち、NH3を含む塩基を使用していない)を遠ざける示唆と言ってもよい。
【0024】
要するに、L−Kurtmannの理論は、アミノ基が所望しないピンクあるいは赤色の呈色に関与しうるという先行技術の示唆に、基づくと言ってもよい。
【0025】
総合的に言えば、先行技術中のアミノ基に基づく理論は、そのアミノ基がデヒドロアスコルビン酸(DHA)のカルボニル炭素を攻撃することを言及している先行技術として要約してもよい。当該カルボニル炭素は、部分的に正荷電(すなわち、σ+帯電)であるため、アミノ基からの孤立電子対は部分的に正荷電された炭素を攻撃することができることを留意することはここで重要である。
先に論じたように、アンモニアは、9.25のpKaを持ち、pHが9.25未満では、大部分がアンモニウム(NH4+)として存在し、すなわち培養物が、本発明の第一態様の工程(i)において調節され、pHにおいて正に荷電されている。
【0026】
当業者に自明なように、正のアンモニアは、DHAの部分的に正電荷のカルボニル炭素を攻撃することができず、アンモニアはL−Kurtmannの論文中に述べられた理論の「機序」の使用により所望しないピンクあるいは赤色の呈色に関与できないことを意味する。
言い換えると、アンモニア(すなわち、本明細書のpHにおいてNH4+)は「危険」なはずがない(すなわち、NH4+は、所望しないピンクあるいは赤色の呈色に関与するはずがない)ことがこのL−Kurtmann理論または機序から、客観的に導けるかまたは理解するといえるため、L−Kurtmannの論文中に述べられている理論または機序に関係するアミノ基は、本発明を遠ざけるものといってもよい。
【0027】
当業者に知られているように、NH3(アンモニア)を含まないNaOH以外の塩基、例えばKOH、Na2CO3を、通常同定してもよい。
【0028】
さらに、当業者に自明なように、上記理論はアスコルビン酸ナトリウムに関連するだけでなく一般的に他のアスコルビン酸塩あるいはアスコルビン酸に関連する。
【0029】
先に論じたように、ピンクまたは赤色は所望するものではない、なぜなら、例えば、このようなピンクまたは赤色は、乳酸菌製品が不健全である見た目を与えうるため、多くの消費者は好まないからである。
したがって、本発明は、乳酸菌組成物の商業的生産に高度に関連し、そしてそれは、工業的に関連し、大規模で通常生産される。
【0030】
したがって、本発明の第一態様は、1%から50%(乾燥重量比)の抗酸化剤としてのアスコルビン酸塩またはアスコルビン酸を処方された、少なくとも2kg(乾燥重量)の乳酸菌組成物を製造する方法であって、以下の工程を含む方法に関する:
(i):少なくとも100Lの発酵培地を含む発酵槽(バイオリアクター)中で、適切な条件下で乳酸菌を発酵させる工程、ここで、pHが、NH3(アンモニア)を含まない塩基を加えることにより発酵過程の少なくとも大部分の間、そのpHを3から8に制御されており;
(ii):乳酸菌を回収して、乳酸菌濃縮物を得る工程;
(iii):アスコルビン酸塩またはアスコルビン酸を乳酸菌濃縮物に加える工程;そして
(iv):アスコルビン酸塩またはアスコルビン酸を含んでいる工程(iii)の濃縮物を適切な方法で処理して、1%から50%(乾燥重量比)の抗酸化剤としてのアスコルビン酸塩またはアスコルビン酸を処方された乳酸菌組成物を、取得する工程。
【0031】
当業者に理解されているように、回収工程(ii)で、加えた塩基のすべてを取り除くわけではない。したがって、加えた塩基に関連する量が、菌濃縮物中に存在し、そうして工程(iii)の濃縮物に例えばアスコルビン酸ナトリウムが加えられた場合にも存在する。
【0032】
上で論じたように、本発明の本質は、NH3(アンモニア)を含む塩基を使用しないこと、すなわち、工程(i)でNH3(アンモニア)を含まない塩基を添加することにあるといえる。
【0033】
第一態様の方法、他のすべての工程は、本質的に、先行技術よってなされた、ありふれた工程であるとみなしてよい。
ありふれた工程とは、例えば、工程(i)の適切な条件下での発酵のように、当業者が、どのようにそのような先行技術のありふれた工程を行うかを通常知っているため、本明細書でさらに詳細に論じなくてもよいものである。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】図1は、アスコルビン酸ナトリウムおよびアスコルビン酸の構造である。
【図2】図2の写真は、発酵の間pH調節のためにNH3を使用する製法において生産されたBB-12(登録商標)のバッチと、発酵の間pH調節のためにNaOHを使用するパイロットプラントで生産された2つのバッチとの色の違いを示す。
【図3】図3の写真は、図2と同様あり、La-5(商標)について示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0035】
乳酸菌
上で論じたように、「乳酸菌」という用語は、グラム陽性、無芽胞菌属に関係する糖類の乳酸発酵を行う。
【0036】
好ましくは、本乳酸菌は、
ラクトバチルス(Lactobacillus)属に属する乳酸菌、例えばラクトバチルス ヘルベティカス(Lactobacillus helveticus)、ラクトバチルス デルブルエッキー サブスピーシーズ ブルガリカス(Lactobacillus delbruekii subsp. Bulgaricus)、ラクトバチルス ファーメンタム(Lactobacillus fermentum)、ラクトバチルス サリヴァリス(Lactobacillus salivarius)または、ラクトバチルス ラムノーサス(Lactobacillus rhamnosus);
ラクトコッカス(Leuconostoc)属に属する乳酸菌、例えばラクトコッカス ラクティス(Lactococcus lactis);
ストレプトコッカス(Streptococcus)属に属する乳酸菌、例えばストレプトコッカス サーモフィラス(Streptococcus thermophilus);
リューコノストック(Leuconostoc)属に属する乳酸菌、例えば、リューコノストック ラクティス(Leuconostoc lactis);
ビフィドバクテリウム(Bifidobacterium)属に属する乳酸菌、例えば、ビフィドバクテリウム ロンガム(Bifidobacterium longum)、ビフィドバクテリウム アニマリス(bifidobacterium animalis)または、ビフィドバクテリウム ブレーベ(Bifidobacterium breve);
プロピオニバクテリア(Propioni bacteria)属に属する乳酸菌;
エンテロコッカス(Enterococcus)属に属する乳酸菌、例えば、エンテロコッカス フェシウム(Enterococcus faecum);
および、ペディオコッカス(Pediococcus)属に属する乳酸菌から成る群から選択される乳酸菌である。
【0037】
ビフィドバクテリウムが「真の」乳酸菌かを理論的に論じている文献もある。本文脈においては、ビフィドバクテリウムは、乳酸菌とする。
【0038】
上の乳酸菌郡の中で、少なくとも1の乳酸菌が、ラクトバチルス(Lactobacillus)属に属する乳酸菌;
ストレプトコッカス(Streptococcus)属に属する乳酸菌;
ビフィドバクテリウム(Bifidobacterium)属に属する乳酸菌;
およびラクトコッカス(Leuconostoc)属に属する乳酸菌から成る群から選択されることが好ましい。
【0039】
なおさらに好ましくは、本乳酸菌は、
ラクトバチルス アシドフィラス(Lactobacillus acidophilus)、ラクトバチルス ラムノーサス(Lactobacillus rhamnosus)、ストレプトコッカス サーモフィラス(Streptococcus thermophilus)およびビフィドバクテリウム アニマリス(Bifidobacterium animalis)から成る群から選択される乳酸菌である。
【0040】
もっとも好ましくは、本乳酸菌は、受託番号DSM13241であるラクトバチルス アシドフィラス(Lactobacillus acidophilus)株;受託番号DMS15954であるビフィドバクテリウム アニマリス(Bifidobacterium animalis)株;および受託番号15957であるストレプトコッカス サーモフィラス(Streptococcus thermophilus)から成る群から選択される乳酸菌である。
【0041】
当該DMS13241株は、本明細書ではLa-5(商標)、当該DSM15954株は、本明細書ではBB-12(登録商標)および当該15957株は、本明細書ではTH-4(商標)と名付けられる。
【0042】
アスコルビン酸またはアスコルビン酸塩
既知の通り、アスコルビン酸塩は、アスコルビン酸の塩である。
本明細書においてアスコルビン酸ナトリウムを適当なアスコルビン酸塩として使用することが好ましいこともある。
アスコルビン酸(アスコルビン酸塩)の他の適当な例として、アスコルビン酸カルシウム、アスコルビン酸マグネシウムあるいは、アスコルビン酸2リン酸3ナトリウムが挙げられる。
アスコルビン酸の使用に関してもよい。しかしながら、その酸効果のため、pH調節関連について鑑みる必要がある。
【0043】
乳酸菌組成物
本乳酸菌組成物は、一つの単一株(例えば、ラクトバチルス アシドフィラス(Lactobacillus acidophilus(La-5(商標)))または異なる株の混合物を含んでもよい。また、乳酸菌以外のもの、例えば、酵母を含んでもよい。
【0044】
組成物の重量は、好ましくは少なくとも5kg(乾燥重量)、より好ましくは少なくとも15kg(乾燥重量)、もっとも好ましくは少なくとも50kg(乾燥重量)である。
【0045】
当業者に知られているように、より多くの重量の組成物は、より大規模の生産に関連し自明の理により有利になるであろう。
【0046】
商業的に、何度も凍結乾燥が使用されている。したがって、もし第一態様の工程(iv)において乾燥が行われたなら、それは、凍結乾燥乳酸菌組成物を得るための、凍結乾燥であってもよい。
【0047】
上で論じたように、乳酸菌組成物は1%から50%のアスコルビン酸塩またはアスコルビン酸(乾燥重量比)を処方される。
【0048】
「乾燥重量比(w/w - dry matter)」という言葉は、当業者によって組成物の乾燥物に基づく重量を意味することが理解されている。
例えば、もし乳酸菌組成物が凍結組成物であれば、例えばアスコルビン酸塩またはアスコルビン酸の10%(乾燥重量比)は、例えば、組成物のサンプルを乾燥し、そして組成物の乾燥物として10%のアスコルビン酸塩またはアスコルビン酸が存在することを測定するものとして理解されたい。
【0049】
乳酸菌組成物は何度も、2%から24%のアスコルビン酸塩またはアスコルビン酸(乾燥重量比)を処方されるかあるいは、5%から15%のアスコルビン酸塩またはアスコルビン酸(乾燥重量比)を処方される。
【0050】
当業者に自明なように、第一態様の工程(iii)で加えられた、例えば、アスコルビン酸ナトリウムの量は、例えば工程(iv)の乾燥後、乳酸菌組成物中の、例えば、アスコルビン酸ナトリウムの量(乾燥重量比)を決定することになる。
【0051】
当業者に自明なように、第一態様の工程(iii)で濃縮物に、他の関連する化合物を加えてもよい。
【0052】
例えば、もし、工程(iv)で凍結乾燥を使用するなら、工程(iii)で、いわゆる凍結保護物質を通常加える。
【0053】
凍結保護物質は、凍結損傷(氷を形成するための損傷)から生体組織を保護するための物質であり、そして適当な凍結保護物質の例は、例えば、スクロース、マルトデキストリン、トレハロースまたはグリセロールである。
【0054】
発酵−第一態様の工程(i)
大規模生産を行うには、どれだけ大きな発酵槽であるかに依存する。発酵槽(バイオリアクター)は、少なくとも500L発酵培地を含むまたは10000Lの発酵培地を含むことができる。
上で論じたように、NH3(アンモニア)を含まない塩基を加えることにより発酵過程の少なくとも大部分の間、そのpHは、3から8に制御されている。
乳酸菌は一般的に、pH3未満では適切に生育しないため、そのpHは、発酵過程の少なくとも大部分の間、3から8を保つために制御される。
乳酸菌の特殊型においては、そのpHは、4から7に制御されることもある。
一般的に言って、当業者は、発酵の間、塩基の適切な量の正確な添加によって、pHを制御する方法を知っている。
本文脈で当業者に自明なように、工程(i)の「大部分(majority)」という用語は、pHは、時々、相対的に短い間、例えば、塩基が連続的に添加されていない場合、追加量の塩基が添加される直前に、例えば、3未満になるかもしれないことと理解されるべきである。
【0055】
NH3(アンモニア)を含まない塩基
上で論じたように、本明細書の実施例では、NaOHは、NH3(アンモニア)を含まない適切な塩基の例として使用されている。
当業者に知られているように、適切な例は、NaOH、KOH、Na2CO3、Na2SおよびNa2Oから成る塩基の群から選択される、少なくとも1以上の塩基であってもよい。
上のリスト中、NaOHまたはKOHは、一般的にもっとも好ましい。
【0056】
第一態様の工程(ii)から(iv)
上で論じたように、第一態様の方法の工程(ii)から(iv)のすべては、本質的に先行技術に従って作られたありふれた工程と言ってもよい。
例えば、当業者に知られているように、乳酸菌を回収し乳酸菌濃縮物を取得すること(工程(ii))は、遠心分離によって行われるであろう。収菌は、また超遠心分離によって行われてもよい。
例えば、当業者に知られているように、例えば、乾燥アスコルビン酸ナトリウムを濃縮物に添加する前に、水に乾燥アスコルビン酸ナトリウムを溶解することにより、アスコルビン酸ナトリウムを乳酸菌濃縮物に添加してもよい(工程(iii))。また、濃縮物中に「直接的に」乾燥アスコルビン酸ナトリウムを添加することもできる。
工程(iv)に関して、処理の具体的方法は、当然、その適応によるであろう。
例えば、仮に、乾燥乳酸菌組成物を所望するならば、工程(iv)の処理は乾燥である。
仮に、凍結乳酸菌組成物を所望するならば、工程(iv)の処理は凍結である。
あるいは、仮に、液体乳酸菌組成物を所望するならば、工程(iii)後のいかなるそれ以上の処理は、現に必要でない。
【実施例1】
【0057】
実施例1:色の測定
ピンクまたは赤色の測定は、本明細書で論じられたL−Kurtmannの論文に述べられたように行った。
その論文の2頁の説明のように、色測定は、以下の方法で行った:
乾燥培養物の表面の色は、L*、a*およびb*座標を有するCIELABカラーシステムを使用して測定し、そしておよび三刺激値測色計(Minolta Chroma Meter CR-300, Osaka, Japan)によって測定した。この研究において、色の変化は、黄色味(+)または青味(−)を測定するb*値、ここで、b*値の増加は、黄色および茶色への色の変化を反映し、並びに赤味(+)または緑味(−)を測定するa*値によって表現される。その値は、乾燥菌サンプルの表面上の異なる10の場所の、それぞれ3測定値の平均により決定した。
【0058】
実施例2:発酵の間のpH調節のためのNH3とNaOHの取替え
Chr. Hansen A/Sの商業的に利用可能な株:
ラクトバチルス アシドフィラス(Lactobacillus acidophilus)(La-5(商標))
ラクトバチルス ラムノーサス(Lactobacillus rhamnosus)(LGG(登録商標))
ビフィドバクテリウム アニマリス(Bifidobacterium animalis)(BB-12(登録商標))
ストレプトコッカス サーモフィラス(Streptococcus thermophilus)(TH-4(商標))
方法:
3株すべてについて本明細書の第一態様の方法に従って、パイロットスケール生産を行った。
それぞれの株について、発酵(第一態様の工程(i))の間pHを制御するためにNaOHを使用した一つの生産および、対象または参照としてpH制御のためにNH3を使用した他の生産が存在した。他のすべてにおいて、例えば、工程(iii)で添加されたアスコルビン酸ナトリウム量は、これらの生産において100%同一のものであった。
すべての生産された乳酸菌組成物は、乾燥製品中、抗酸化剤としておよそ10%アスコルビン酸ナトリウム(乾燥重量比)含んでいた。
凍結乾燥(工程(iv))後、NaOHおよびNH3それぞれによって生産され、そして30℃、相対湿度30%で保存し、凍結乾燥乳酸菌組成物の色の変化を追った。
すべての製品の色は、ミノルタ カラリメーター(実施例1参照)で測定し、そして写真も撮った。
【0059】
結果
図2の写真は、発酵の間pH調節のためにNH3を使用する製法において生産されたBB-12(登録商標)のバッチと、発酵の間pH調節のためにNaOHを使用するパイロットプラントで生産された2つのバッチとの色の違いを示す。
図3の写真は、La-5(商標)について同様に示した図である。
その写真から、NH3からNaOHに取り替えたことによる色の大きな改善(より少ない赤またはピンク色)が見られた。
同様の肯定的な結果は、LGG(登録商標)およびTH-4(商標)でも確認した。
【0060】
結論
本結果は、塩基としてNaOHをNH3の代わりに使用することで、アスコルビン酸ナトリウムを処方された乾燥La-5(商標)、LGG(登録商標)、BB-12(登録商標)および、TH-4(商標)組成物であって、組成物の貯蔵の間、本組成物が、ピンクまたは赤色に著しく呈色しない組成物を生産することができるということを明確に示した。
【0061】
参考文献
L. Kurtmann et al., “Storage stability of freeze-dried Lactobacillus acidophilus(La-5)in relation to water activity and presence of oxygen and ascorbate”; Cryobiology(2009), doi:10.1016/j.cryobiol.2008.12.001
は2008年12月にインターネット上に公開されている。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
1%から50%(乾燥重量比)の抗酸化剤としてのアスコルビン酸塩またはアスコルビン酸を処方された、少なくとも2kg(乾燥重量)の乳酸菌組成物を製造する方法であって、以下の工程:
(i):少なくとも100Lの発酵培地を含む発酵槽(バイオリアクター)中で、適切な条件下で当該乳酸菌を発酵させる工程、ここで、NH3(アンモニア)を含まない塩基を加えることにより当該発酵過程の少なくとも大部分の間、pHを3から8に制御されており;
(ii):当該乳酸菌を回収して、乳酸菌濃縮物を得る工程;
(iii):アスコルビン酸塩またはアスコルビン酸を当該乳酸菌濃縮物に加える工程;及び
(iv):当該アスコルビン酸塩またはアスコルビン酸を含んでいる工程(iii)の濃縮物を適切な方法で処理して、1%から50%(乾燥重量比)の抗酸化剤としてのアスコルビン酸塩またはアスコルビン酸を処方された当該乳酸菌組成物を取得する工程
を含む、前記方法。
【請求項2】
請求項1の工程(iii)においてアスコルビン酸ナトリウムを添加する、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
請求項1の工程(iv)の前記処理が乾燥であり、乾燥乳酸菌組成物を得る、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
請求項1の工程(iv)の前記処理が凍結であり、凍結乳酸菌組成物を得る、請求項1または2に記載の方法。
【請求項5】
前記乳酸菌が、以下の:
ラクトバチルス(Lactobacillus)属に属する乳酸菌、例えばラクトバチルス ヘルベティカス(Lactobacillus helveticus)、ラクトバチルス デルブルエッキー サブスピーシーズ ブルガリカス(Lactobacillus delbruekii subsp. Bulgaricus)、ラクトバチルス ファーメンタム(Lactobacillus fermentum)、ラクトバチルス サリヴァリス(Lactobacillus salivarius)または、ラクトバチルス ラムノーサス(Lactobacillus rhamnosus);
ラクトコッカス(Leuconostoc)属に属する乳酸菌、例えばラクトコッカス ラクティス(Lactococcus lactis);
ストレプトコッカス(Streptococcus)属に属する乳酸菌、例えばストレプトコッカス サーモフィラス(Streptococcus thermophilus);
リューコノストック(Leuconostoc)属に属する乳酸菌、例えば、リューコノストック ラクティス(Leuconostoc lactis);
ビフィドバクテリウム(Bifidobacterium)属に属する乳酸菌、例えば、ビフィドバクテリウム ロンガム(Bifidobacterium longum)、ビフィドバクテリウム アニマリス(bifidobacterium animalis)または、ビフィドバクテリウム ブレーベ(Bifidobacterium breve);
プロピオニバクテリア(Propioni bacteria)属に属する乳酸菌;
エンテロコッカス(Enterococcus)属に属する乳酸菌、例えば、エンテロコッカス フェシウム(Enterococcus faecum);
および、ペディオコッカス(Pediococcus)属に属する乳酸菌から成る群から選択される乳酸菌である、請求項1〜4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記乳酸菌が、
ラクトバチルス(Lactobacillus)属に属する乳酸菌;
ストレプトコッカス(Streptococcus)属に属する乳酸菌;
ビフィドバクテリウム(Bifidobacterium)属に属する乳酸菌;
およびラクトコッカス(Leuconostoc)属に属する乳酸菌から成る群から選択される乳酸菌である、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記乳酸菌が、
ラクトバチルス アシドフィラス(Lactobacillus acidophilus)、ラクトバチルス ラムノーサス(Lactobacillus rhamnosus)、ストレプトコッカス サーモフィラス(Streptococcus thermophilus)およびビフィドバクテリウム アニマリス(Bifidobacterium animalis)から成る群から選択される乳酸菌である、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
工程(iv)の乾燥が凍結乾燥であり、凍結乾燥乳酸菌組成物を得る、請求項3に記載の方法。
【請求項9】
前記乳酸菌組成物が、5%から15%(乾燥重量比)アスコルビン酸塩またはアスコルビン酸を処方された乳酸菌組成物である、請求項1〜8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
請求項1の工程(iii)で凍結保護物質をさらに添加する、請求項8に記載の方法。
【請求項11】
請求項1の工程(i)の発酵槽(バイオリアクター)が少なくとも500Lの発酵培地を含む、請求項1〜10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
請求項1の方法で1%から50%(乾燥重量比)の抗酸化剤としてのアスコルビン酸塩またはアスコルビン酸を処方された、少なくとも5kg(乾燥重量)の乾燥乳酸菌組成物を製造する方法である、請求項1〜11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
前記塩基が、NaOH、KOH、Na2CO3、Na2SおよびNa2Oから成る塩基の群から選択される少なくとも1の塩基であり、好ましくは、当該塩基が、NaOHまたはKOHである、請求項1〜12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
前記塩基がNaOHである、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
請求項1の工程(i)のpHが、4から7に制御される、請求項1〜14のいずれか一項に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公表番号】特表2012−518394(P2012−518394A)
【公表日】平成24年8月16日(2012.8.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−550558(P2011−550558)
【出願日】平成22年2月18日(2010.2.18)
【国際出願番号】PCT/EP2010/052017
【国際公開番号】WO2010/094727
【国際公開日】平成22年8月26日(2010.8.26)
【出願人】(503260310)セーホーエル.ハンセン アクティーゼルスカブ (23)
【Fターム(参考)】