説明

乾式メタン発酵残渣脱水システム

【課題】夾雑物が含まれる原料を用いても、一定の汚泥濃度を維持して効率よく乾式メタン発酵を行うことが可能であり、安定した脱水処理能力で脱水装置を運転し得る乾式メタン発酵残渣脱水システムを提供すること。
【解決手段】本発明の乾式メタン発酵残渣脱水システムは、有機性廃棄物を乾式メタン発酵させるメタン発酵槽;該有機性廃棄物の発酵残渣に含まれる夾雑物を分離する夾雑物分離手段;該夾雑物が分離された発酵残渣を脱水する脱水手段;および脱水後の脱水汚泥を、該メタン発酵槽に返送する脱水汚泥返送手段;を備え、該メタン発酵槽で生じる該有機性廃棄物の発酵残渣が該夾雑物分離手段に供給され、該夾雑物が分離された発酵残渣が該脱水手段に供給され、そして該脱水手段により回収された該脱水汚泥の少なくとも一部が、該脱水汚泥返送手段によって該メタン発酵槽に返送されるように構成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、乾式メタン発酵残渣の脱水システムおよび脱水方法に関する。
【背景技術】
【0002】
家庭、事務所、事業所などからの廃棄物をメタン発酵に供する場合、廃棄物は収集時あるいは処理前に分別・選別され、有機性廃棄物(生ごみなど)と生分解性を有さない物質(プラスチック、布類、金属などの夾雑物)とに選別される。選別された有機性廃棄物はメタン発酵の原料として使用され、一方、夾雑物は焼却などにより処理されることが多い。
【0003】
有機性廃棄物のメタン発酵により得られるメタンは、バイオガスとして燃料などに使用されている。一方、メタン発酵後に生じるメタン発酵残渣は脱水され、汚泥と排水とに分離される。
【0004】
一般的に、メタン発酵としては、乾式メタン発酵および湿式メタン発酵が挙げられる。簡易な選別で処理できる、対象物が幅広い、高濃度の原料を低動力で処理できるなどの利点から、固型状の廃棄物を対象とする場合、乾式メタン発酵が好ましく行われている。従来、図1に示す構成の乾式メタン発酵残渣脱水システム10により、メタン発酵槽11で生じる乾式メタン発酵残渣は、脱水手段12で脱水され、脱水汚泥と排水とに分離されている。
【0005】
ところで、乾式メタン発酵は、上記のような特性を有するため、発酵前に簡易な選別が行われ得る。簡易選別では比較的大きなプラスチックなどの夾雑物を除去し得るが、全ての夾雑物が除去されるわけではない。また、分別収集を行う場合においても、必ずしも排出源で完全な分別が行われる訳ではない。したがって、夾雑物を含む状態で乾式メタン発酵が行われ、その結果、乾式メタン発酵残渣には、夾雑物が含まれることになる。
【0006】
発酵槽11内において、汚泥濃度が一定に維持されている場合、夾雑物と汚泥とは、分離せず混合状態にある。しかし、発酵槽11内の汚泥濃度が低下した場合、夾雑物と汚泥とが分離し、夾雑物が発酵槽11内の下部に沈殿する。さらに、プラスチックのような比重の小さい夾雑物が大量に含まれると、発酵槽11内の上部に浮遊する。このような夾雑物の浮遊または沈殿を防ぐためには、発酵槽11内の汚泥濃度を高めればよい。汚泥濃度を高めるためには、原料を希釈する希釈水の量を減らすことが考えられる。しかし、アンモニア阻害を防止するためには、所定量の希釈水が必要であり、希釈水を必要量以下に減らすことはできない。
【0007】
そのため、発酵後の残渣を発酵槽11内に返送することが有効である(非特許文献1)。しかし、夾雑物を含む残渣を発酵槽11内に返送すると、かえって発酵槽11内の夾雑物含有量を増加させることになる。
【0008】
さらに近年では、特許文献1および特許文献2に記載のように、乾式メタン発酵後の発酵残渣が、園芸用の腐食土の添加物、堆肥などに使用されている。しかし、乾式メタン発酵残渣に夾雑物が含まれていると、そのままではコンポスト(堆肥)などとして用いることができない。
【0009】
そこで、乾式メタン発酵残渣から夾雑物を有効に除去するシステムが望まれている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開平4−231395号公報
【特許文献2】特開平6−319526号公報
【非特許文献】
【0011】
【非特許文献1】第13回廃棄物学会研究発表会講演論文集2002「有機系廃棄物再資源化実証プラントの運転報告(その3)」
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明は、プラスチック、布類、金属などの夾雑物が含まれる原料を用いても、一定の汚泥濃度を維持して効率よく乾式メタン発酵を行うことが可能であり、安定した脱水処理能力で脱水装置を運転し得る乾式メタン発酵残渣脱水システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明は、乾式メタン発酵残渣脱水システムを提供し、該乾式メタン発酵残渣脱水システムは、有機性廃棄物を乾式メタン発酵させるメタン発酵槽;該有機性廃棄物の発酵残渣に含まれる夾雑物を分離する夾雑物分離手段;該夾雑物が分離された発酵残渣を脱水する脱水手段;および脱水後の脱水汚泥を、該メタン発酵槽に返送する脱水汚泥返送手段;を備え、該メタン発酵槽で生じる該有機性廃棄物の発酵残渣は該夾雑物分離手段に供給され、該夾雑物が分離された発酵残渣は該脱水手段に供給され、そして該脱水手段により回収された該脱水汚泥の少なくとも一部は、該脱水汚泥返送手段によって該メタン発酵槽に返送されるように構成されている。
【0014】
1つの実施態様では、上記夾雑物分離手段と上記脱水手段との間に、凝集剤添加手段が備えられている。
【0015】
1つの実施態様では、上記有機性廃棄物の発酵残渣は、上記メタン発酵槽の上部または下部から引き抜かれて上記夾雑物分離手段に供給される。
【0016】
ある実施態様では、上記夾雑物分離手段は、スクリュープレスである。
【0017】
さらなる実施態様では、上記脱水手段は、スクリュープレス、遠心脱水機、ロータリープレス、またはベルトプレスである。
【0018】
さらに、本発明は、乾式メタン発酵残渣を脱水する方法を提供し、該方法は、有機性廃棄物をメタン発酵槽に供給する工程;該有機性廃棄物を乾式メタン発酵させて発酵残渣を得る工程;該発酵残渣に含まれる夾雑物を分離する工程;該夾雑物が分離された発酵残渣を脱水し、脱水汚泥を得る工程;および該脱水汚泥の少なくとも一部を、該メタン発酵槽に返送する工程;を包含する。
【0019】
1つの実施態様では、上記夾雑物を分離する工程の後に、さらに、上記夾雑物が分離された発酵残渣に凝集剤を添加する工程を包含する。
【0020】
1つの実施態様では、上記有機性廃棄物の発酵残渣は、上記メタン発酵槽の上部または下部から引き抜かれて上記夾雑物を分離する工程に供される。
【0021】
ある実施態様では、上記夾雑物を分離する工程において、該夾雑物は、スクリュープレスにより分離される。
【0022】
さらなる実施態様では、上記脱水汚泥を得る工程において、上記夾雑物が分離された発酵残渣は、スクリュープレス、遠心脱水機、ロータリープレス、またはベルトプレスにより脱水される。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、夾雑物が含まれる原料を用いても、一定の汚泥濃度を維持して効率よく乾式メタン発酵を行うことが可能であり、安定した脱水処理能力で脱水装置を運転し得る。さらに、本発明によれば、脱水後に得られる脱水汚泥は夾雑物を含まないため、そのまま堆肥などの原料として利用できる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】従来の乾式メタン発酵残渣脱水システムの実施態様を示す系統図である。
【図2】本発明の乾式メタン発酵残渣脱水システムの一実施態様を示す系統図である。
【図3】本発明の乾式メタン発酵残渣脱水システムの他の実施態様を示す系統図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
本発明の乾式メタン発酵残渣脱水システムおよび乾式メタン発酵残渣の脱水方法を、添付の図面を参照して説明する。
【0026】
A.乾式メタン発酵残渣脱水システム
図2に、本発明の乾式メタン発酵残渣脱水システムの一実施態様を示す。この乾式メタン発酵残渣脱水システム20は、有機性廃棄物を乾式メタン発酵させるメタン発酵槽21;有機性廃棄物の発酵残渣に含まれる夾雑物を分離する夾雑物分離手段23;夾雑物が分離された発酵残渣を脱水する脱水手段22;および脱水後の脱水汚泥を、メタン発酵槽21に返送する脱水汚泥返送手段24;を備える。このメタン発酵槽21で生じる有機性廃棄物の発酵残渣は、夾雑物分離手段23に供給され、夾雑物が分離された発酵残渣は脱水手段22に供給され、そして脱水手段22により回収された脱水汚泥の少なくとも一部は、脱水汚泥返送手段24によってメタン発酵槽21に返送されるように構成されている。
【0027】
(メタン発酵槽)
メタン発酵槽21は、家庭、事務所、事業所などからの廃棄物を簡易選別して得られる有機性廃棄物または分別収集された有機性廃棄物を、乾式メタン発酵させる。メタン発酵槽21は、特に限定されず、横型円筒形の発酵槽などの一般的な発酵槽が用いられる。
【0028】
メタン発酵槽21では、乾式メタン発酵が行われる。乾式メタン発酵は、メタン発酵槽内の汚泥濃度が15〜40質量%程度の高濃度で行われ得る。したがって、乾式メタン発酵は、上記のように、簡易な選別で処理できる、対象物が幅広い、高濃度の原料を低動力で処理できるなどの利点を有する。なお、本発明において「汚泥濃度」とは、汚泥のみの濃度ではなく、汚泥に含まれる微小な紙片および繊維片も含めた濃度のことをいう。
【0029】
(夾雑物分離手段)
廃棄物の簡易選別では、全ての夾雑物を分離することができない。また、分別収集された有機性廃棄物にも夾雑物が含まれる。したがって、夾雑物を含む状態で発酵を行うため、乾式メタン発酵残渣(有機性廃棄物の発酵残渣)には夾雑物が含まれる。夾雑物分離手段23は、乾式メタン発酵残渣に含まれる夾雑物を分離する目的で備えられている。
【0030】
夾雑物分離手段23としては、スクリュープレス、細目スクリーン、リンクチェーン式脱水機、バースクリーン、ドラム型スクリーン、除塵機などが挙げられる。これらの中でも、スクリュープレスが好ましい。
【0031】
夾雑物分離手段23により分離された夾雑物は、ごみピットなどに回収され、焼却などによって処理される。一方、夾雑物が分離された乾式メタン発酵残渣は、脱水手段22に供給される。
【0032】
(脱水手段)
脱水手段22は、夾雑物が分離された乾式メタン発酵残渣を、脱水汚泥と排水とに分離する。
【0033】
脱水手段22は、夾雑物分離手段23よりも固液分離面の目が細かいものを用い得る。例えば、スクリュープレス、遠心脱水機、ロータリープレス、ベルトプレスなどが挙げられる。これらの中でも、スクリュープレスが好ましい。
【0034】
例えば、夾雑物分離手段23としてスクリュープレスを用いた場合、脱水手段22として、好ましくは、固液分離面の目がより細かいスクリュープレス、遠心脱水機、ロータリープレス、またはベルトプレスが用いられ得る。
【0035】
本発明の乾式メタン発酵残渣脱水システムは、必要に応じて、脱水手段22の後段に二次脱水手段(図示せず)を備えてもよい。例えば、夾雑物分離手段23としてバースクリーン、ドラム型スクリーン、または除塵機を用いた場合、脱水手段22としてスクリュープレスを用い、二次脱水手段として、固液分離面の目がより細かいスクリュープレスを用いてもよい。
【0036】
脱水手段22(または二次脱水手段)によって分離された脱水汚泥の少なくとも一部は、メタン発酵槽21に返送される。このように脱水汚泥の少なくとも一部を、メタン発酵槽21に返送することにより、メタン発酵槽21内の汚泥濃度が低下した場合、汚泥濃度を高めることができ、メタン発酵槽21内の汚泥濃度を一定に維持し得る。したがって、メタン発酵槽21内における夾雑物と汚泥との分離を防止し得る。
【0037】
(脱水汚泥返送手段)
脱水汚泥返送手段24は、上記脱水手段22(または二次脱水手段)によって分離された脱水汚泥の少なくとも一部を、メタン発酵槽21に返送する。脱水汚泥は、必ずしもメタン発酵槽21に直接返送される必要はない。すなわち、脱水汚泥はメタン発酵槽21に供給されればよく、メタン発酵槽21の前段、例えば、原料を貯蔵する中間貯槽(図示せず)、原料の希釈槽(図示せず)、中間貯槽あるいは希釈槽とメタン発酵槽21とを連結する原料供給ライン(図示せず)などに返送してもよい。
【0038】
脱水汚泥返送手段24としては、例えば、ピストンポンプ、スクリューコンベア、ベルトコンベアなどが挙げられる。
【0039】
次に、本発明の乾式メタン発酵残渣脱水システムの他の実施態様を図3に示す。この乾式メタン発酵残渣脱水システム30は、有機性廃棄物を乾式メタン発酵させるメタン発酵槽31;有機性廃棄物の発酵残渣に含まれる夾雑物を分離する夾雑物分離手段33;夾雑物が分離された発酵残渣を脱水する脱水手段32;脱水後の脱水汚泥を、メタン発酵槽31に返送する脱水汚泥返送手段34;および凝集剤添加手段35;を備える。このメタン発酵槽31で生じる有機性廃棄物の発酵残渣は、夾雑物分離手段33に供給され、夾雑物が分離された発酵残渣は脱水手段32に供給され、脱水手段32により回収された脱水汚泥の少なくとも一部は、脱水汚泥返送手段34によってメタン発酵槽31に返送されるように構成されており、そして凝集剤添加手段35は、夾雑物分離手段33と脱水手段32との間に備えられている。
【0040】
メタン発酵槽31、夾雑物分離手段33、脱水手段32、および脱水汚泥返送手段34は、上述の乾式メタン発酵残渣脱水システム20におけるメタン発酵槽21、夾雑物分離手段23、脱水手段22、および脱水汚泥返送手段24と同様であり得る。
【0041】
(凝集剤添加手段)
凝集剤添加手段35は、夾雑物が分離された乾式メタン発酵残渣に、必要に応じて、凝集剤を添加し得る。
【0042】
凝集剤添加手段35は、例えば、機械制御により凝集剤が添加される手段、手動で添加する手段などであり得る。なお、凝集剤については後述する。
【0043】
本発明の乾式メタン発酵残渣脱水システムでは、乾式メタン発酵残渣が、メタン発酵槽21、31から夾雑物分離手段23、33に供給される場合、乾式メタン発酵残渣は、好ましくはメタン発酵槽21、31の上部または下部から引き抜かれるように構成されている。
【0044】
例えば、メタン発酵槽21、31と夾雑物分離手段23、33とを連通するラインのメタン発酵槽21、31側が分岐し、分岐した一方の端部がメタン発酵槽21、31の上部に接続され、残りの端部がメタン発酵槽21、31の下部に接続される。分岐点とメタン発酵槽21、31の上部および下部の接続部との間に、開閉手段(例えば、バルブなど)が設けられる。バルブなどの開閉手段は、手動式であってもよく、機械制御など自動式であってもよい。
【0045】
ここで「メタン発酵槽の上部」とは、メタン発酵槽内に存在する乾式メタン発酵残渣の上層付近から、乾式メタン発酵残渣を引き抜くことができる位置のことをいい、必ずしも、メタン発酵槽21、31の最上部などである必要はない。
【0046】
もし、夾雑物が浮遊したとしても、メタン発酵槽21、31の上部から乾式メタン発酵残渣を引き抜くことにより、夾雑物をメタン発酵槽21、31から優先的に除去し得る。
【0047】
一方、「メタン発酵槽の下部」とは、メタン発酵槽内の底部付近、例えばメタン発酵槽21、31の底部から4分の1程度の高さまでのことをいい、必ずしも、メタン発酵槽21、31の最下部(底部)である必要はない。
【0048】
もし、夾雑物が沈殿したとしても、メタン発酵槽21、31の下部から乾式メタン発酵残渣を引き抜くことにより、夾雑物をメタン発酵槽21、31から優先的に除去し得る。
【0049】
B.乾式メタン発酵残渣の脱水方法
本発明の乾式メタン発酵残渣の脱水方法(以下、単に「脱水方法」と記載する場合がある)は、有機性廃棄物をメタン発酵槽に供給する工程(有機性廃棄物供給工程);該有機性廃棄物を乾式メタン発酵させて発酵残渣を得る工程(乾式メタン発酵工程);該発酵残渣に含まれる夾雑物を分離する工程(夾雑物分離工程);該夾雑物が分離された発酵残渣を脱水し、脱水汚泥を得る工程(脱水工程);および該脱水汚泥の少なくとも一部を、該メタン発酵槽に返送する工程(返送工程);を包含する。本発明の脱水方法は、例えば、図2に示すような乾式メタン発酵残渣脱水システムにおいて行われ得る。以下、各工程を、図2を参照して説明する。
【0050】
(有機性廃棄物供給工程)
本発明の脱水方法において、有機性廃棄物は、メタン発酵槽21に供給される。有機性廃棄物は、上記のように、家庭、事務所、事業所などからの廃棄物から簡易選別してまたは分別収集によって得られる。
【0051】
有機性廃棄物の供給方法は、特に限定されず、一般的な供給方法によって、メタン発酵槽21に供給される。
【0052】
(乾式メタン発酵工程)
メタン発酵槽21に供給された有機性廃棄物は嫌気的に乾式メタン発酵され、乾式メタン発酵残渣およびメタンガスを生じる。メタン発酵槽21では、メタン生産菌により、乾式メタン発酵が行われる。
【0053】
上記乾式メタン発酵残渣は、夾雑物分離工程に供される。本発明の脱水方法では、乾式メタン発酵残渣を夾雑物分離工程に供する場合、乾式メタン発酵残渣は、好ましくはメタン発酵槽21の上部または下部から引き抜かれる。
【0054】
一方、メタンガスは、メタン発酵槽21に設けられたメタンガス回収装置(図示せず)によって回収され、バイオガスとして使用される。
【0055】
(夾雑物分離工程)
簡易選別では、全ての夾雑物を分離することができず、また分別収集した廃棄物にも夾雑物が含まれるため、乾式メタン発酵残渣にはプラスチックなどの夾雑物が残存している。このような夾雑物は、夾雑物分離手段23を用いて分離し得る。
【0056】
夾雑物分離手段23としては、例えば、上述のスクリュープレス、細目スクリーン、リンクチェーン式脱水機、バースクリーン、ドラム型スクリーン、除塵機などが用いられ、乾式メタン発酵残渣から夾雑物のみが分離される。
【0057】
(脱水工程)
上記夾雑物分離工程において、夾雑物が分離された乾式メタン発酵残渣は、脱水工程に供される。
【0058】
夾雑物が分離された乾式メタン発酵残渣は、脱水手段22によって脱水汚泥と排水とに分離される。
【0059】
夾雑物が分離された乾式メタン発酵残渣は、夾雑物分離手段23よりも固液分離面の目が細かいものを用い得る。例えば、上述のスクリュープレス、遠心脱水機、ロータリープレス、ベルトプレスなどを用いて脱水される。これらの中でも、好ましくはスクリュープレスを用いて脱水される。
【0060】
本発明の脱水方法では、脱水工程の前に凝集剤を添加する工程を包含してもよい。例えば、図3に示すように、凝集剤添加手段35によって、夾雑物が分離された乾式メタン発酵残渣に凝集剤が添加される。凝集剤を添加することにより、大きな汚泥フロックが形成されるため、汚泥濃度が低い場合でも、安定して脱水することが可能となる。
【0061】
凝集剤としては、例えば、アルミニウム系の無機凝集剤、鉄系の無機凝集剤、高分子凝集剤などが挙げられる。凝集剤は、夾雑物が分離された乾式メタン発酵残渣に対して、好ましくは0.1質量%〜1.5質量%、より好ましくは0.4質量%〜0.6質量%の割合で添加される。
【0062】
脱水工程において分離された脱水汚泥の少なくとも一部は、後述の返送工程においてメタン発酵槽21に返送され得、残りの脱水汚泥は、堆肥などの原料として利用され得る。
【0063】
一方、分離された排水は処理されて、下水道、河川など自然界に排出され得る。
【0064】
脱水工程の後、必要に応じて二次脱水工程を包含してもよい。
【0065】
(返送工程)
脱水工程によって分離された脱水汚泥の少なくとも一部は、脱水汚泥返送手段24によってメタン発酵槽21に返送される。
【0066】
脱水汚泥は、メタン発酵槽21から引き抜かれた乾式メタン発酵残渣と脱水汚泥とが、好ましくは100:1〜100:30、より好ましくは100:3〜100:20の容量比となるように、メタン発酵槽21に返送される。
【実施例】
【0067】
以下に、実施例を挙げて本発明を説明するが、本発明は以下の実施例に制限されない。
【0068】
(実施例1)
図3に示す本発明の乾式メタン発酵残渣脱水システムを用いて、乾式メタン発酵残渣の脱水を行った。
【0069】
メタン発酵槽31に有機性廃棄物を供給し、乾式メタン発酵を行った。メタン発酵槽31から発酵残渣を抜き出し、夾雑物分離手段33(スクリュープレス)に供して発酵残渣中のプラスチック、布類などの夾雑物を除去した。夾雑物を除去した発酵残渣に、凝集剤添加手段35によって高分子凝集剤(発酵残渣の固形分に対して約0.4質量%の割合)を添加し、大きな汚泥フロックを形成させた。次いで、夾雑物分離手段33として用いたスクリュープレスよりも目が細かいスクリュープレスを脱水手段32として用い、発酵残渣の脱水を行った。
【0070】
脱水後の発酵残渣(脱水残渣)中の含水率を測定すると約60%であり、発酵残渣の脱水に要した電力(消費電力)は、約3.0kWであった。
【0071】
(比較例1)
図1に示す従来の乾式メタン発酵残渣脱水システムを用いて、乾式メタン発酵残渣の脱水を行った。
【0072】
メタン発酵槽11に有機性廃棄物を供給し、乾式メタン発酵を行った。メタン発酵槽11から発酵残渣を抜き出し、1.5mmφのスクリュープレスで脱水後、ろ液に高分子凝集剤(発酵残渣に対して約1.0質量%の割合)を添加し、大きな汚泥フロックを形成させ、遠心脱水機を脱水手段12として用い、発酵残渣の脱水を行った。
【0073】
脱水後の発酵残渣(脱水残渣)中の含水率を測定すると約80%であり、発酵残渣の脱水に要した電力(消費電力)は、約14.7kWであった。
【0074】
本発明の乾式メタン発酵残渣脱水システムにおいては、従来の乾式メタン発酵残渣脱水システムの約20%の電力しか消費しないにもかかわらず、脱水残渣中の含水率は、従来の乾式メタン発酵残渣脱水システムよりも約20%も少ないことがわかった。したがって、本発明の乾式メタン発酵残渣脱水システムは、非常に効率よく発酵残渣の脱水を行い得る。
【産業上の利用可能性】
【0075】
本発明によれば、夾雑物が含まれる原料を用いても、一定の汚泥濃度を維持して効率よく乾式メタン発酵を行うことが可能であり、安定した脱水処理能力で脱水装置を運転し得る。したがって、家庭系、事務系などの廃棄物を処理する分野において有用である。さらに、本発明によれば、脱水後に得られる脱水汚泥は夾雑物を含まないため、そのまま堆肥などの原料としても利用できる。
【符号の説明】
【0076】
10、20、30 乾式メタン発酵残渣脱水システム
11、21、31 メタン発酵槽
12、22、32 脱水手段
23、33 夾雑物分離手段
24、34 脱水汚泥返送手段
35 凝集剤添加手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
乾式メタン発酵残渣脱水システムであって、
有機性廃棄物を乾式メタン発酵させるメタン発酵槽;
該有機性廃棄物の発酵残渣に含まれる夾雑物を分離する夾雑物分離手段;
該夾雑物が分離された発酵残渣を脱水する脱水手段;および
脱水後の脱水汚泥を、該メタン発酵槽に返送する脱水汚泥返送手段;
を備え、
該メタン発酵槽で生じる該有機性廃棄物の発酵残渣が該夾雑物分離手段に供給され、該夾雑物が分離された発酵残渣が該脱水手段に供給され、そして該脱水手段により回収された該脱水汚泥の少なくとも一部が、該脱水汚泥返送手段によって該メタン発酵槽に返送されるように構成されている、システム。
【請求項2】
前記夾雑物分離手段と前記脱水手段との間に、凝集剤添加手段が備えられている、請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
前記有機性廃棄物の発酵残渣が、前記メタン発酵槽の上部または下部から引き抜かれて前記夾雑物分離手段に供給される、請求項1または2に記載のシステム。
【請求項4】
前記夾雑物分離手段が、スクリュープレスである、請求項1から3のいずれかの項に記載のシステム。
【請求項5】
前記脱水手段が、スクリュープレス、遠心脱水機、ロータリープレス、またはベルトプレスである、請求項1から4のいずれかの項に記載のシステム。
【請求項6】
乾式メタン発酵残渣を脱水する方法であって、
有機性廃棄物をメタン発酵槽に供給する工程;
該有機性廃棄物を乾式メタン発酵させて発酵残渣を得る工程;
該発酵残渣に含まれる夾雑物を分離する工程;
該夾雑物が分離された発酵残渣を脱水し、脱水汚泥を得る工程;および
該脱水汚泥の少なくとも一部を、該メタン発酵槽に返送する工程;
を包含する、方法。
【請求項7】
前記夾雑物を分離する工程の後に、さらに、前記夾雑物が分離された発酵残渣に凝集剤を添加する工程を包含する、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記有機性廃棄物の発酵残渣が、前記メタン発酵槽の上部または下部から引き抜かれて前記夾雑物を分離する工程に供される、請求項6または7に記載の方法。
【請求項9】
前記夾雑物を分離する工程において、該夾雑物が、スクリュープレスにより分離される、請求項6から8のいずれかの項に記載の方法。
【請求項10】
前記脱水汚泥を得る工程において、前記夾雑物が分離された発酵残渣が、スクリュープレス、遠心脱水機、ロータリープレス、またはベルトプレスにより脱水される、請求項6から9のいずれかの項に記載の方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate


【公開番号】特開2011−143326(P2011−143326A)
【公開日】平成23年7月28日(2011.7.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−3721(P2010−3721)
【出願日】平成22年1月12日(2010.1.12)
【出願人】(000133032)株式会社タクマ (308)
【Fターム(参考)】