説明

乾燥チーズ及びその製造方法

【課題】 凍結乾燥前に加工適性があり、凍結乾燥後、湯戻り性に優れ、糸曳き性を有している乾燥チーズ類及びその製造方法を提供すること。
【解決手段】 原料であるナチュラルチーズに溶融塩および水を添加し、乳化釜で攪拌しながら加熱してチーズ類を調製する際に、得られるチーズ類の水分を50〜60重量%で、なおかつFIDM(チーズ類の固形分中の脂肪分)を30%以下に調整する。冷却後、得られたチーズ類を加工(切断、シュレッド、粉砕)し、凍結した後、凍結乾燥する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は即席麺、即席スープ等の具材として利用できる、湯戻り性が良好で、湯戻り時に糸曳き性のある乾燥チーズ類で、凍結乾燥したものに関する。
【背景技術】
【0002】
乾燥チーズで、湯戻り性や糸曳き性の良好でないものは本出願前に公知であって、その製造方法も知られている。例えば、そのまま食してもきしみのない軽い食感の凍結乾燥チーズについては本出願人会社の技術で公知である(特許文献1)。この技術は凍結乾燥チーズを直接食したときに生じるきしみを低減させる技術である。
【0003】
また湯戻りチーズの製造方法としては、溶融塩としてポリリン酸ナトリウムとメタリン酸ナトリウムを加え、製品水分を45〜50重量%に調整したチーズを緩慢凍結して組織のポーラス化にし、湯戻し性を向上したものが知られている(特許文献2)。この技術は特別な設備なしで、湯戻りチーズを製造するもので、糸曳き性については特に言及されていない。
【0004】
その他に凍結乾燥後の湯戻し性及び湯戻し後の糸曳き性の両方を満たした凍結乾燥チーズについても公知である(特許文献3、特許文献4)。特許文献3は原料チーズ類を低速で攪拌しながら加熱し、気体を通気して含気させるため、特殊な製造設備を必要としている。
特許文献4は熟度指数を20%以下に調整した原料ナチュラルチーズと溶融塩を使用することを特徴とするチーズ類およびそのチーズを凍結乾燥させたチーズ類であり、水分が45%付近である。通常水分が高いほうが湯戻りはしやすいため、より高水分にすることが好ましいが、その後の加工適性がなくなるため、あまり高水分にできない。
【特許文献1】特開2004-290087
【特許文献2】特許第3581976号
【特許文献3】特公平7-114629
【特許文献4】特開2007-252339
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
凍結乾燥前のチーズ類の水分は、なるべく高いほうが凍結乾燥後湯戻りしやすくなるが、凍結乾燥前のチーズ類の水分が高いと体質が軟弱になり、加工適性がなくなる。そこで高水分でなおかつ加工適性のあるチーズ類を提供することを課題とする。また前記のチーズ類を凍結乾燥することで得られる乾燥チーズ類が湯戻り性かつ糸曳き性を有することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の課題を達成するために、本発明は、ナチュラルチーズに溶融塩および水を添加し、乳化釜で攪拌しながら加熱してチーズ類を調製する際に、チーズ類の水分を50〜60重量%で、かつFIDMを30%以下に調整することを特徴としている(FIDM(Fat In Dry Matter)とは固形分中の脂肪分のことで、チーズ製造時の重要な指標である。FIDM=脂肪分÷(100−水分)×100)。
【0007】
さらにここで得られたチーズ類を任意の形状にカットして、凍結し、さらに凍結乾燥することを特徴としている。ここでいうチーズ類とはプロセスチーズ、チーズフード、乳等を主要原料にする食品をいう。凍結乾燥後、表面積が大きいほうが、湯戻りしやすいため、カットサイズはシュレッド(長さ10〜40 mm、幅6〜8 mm、厚さ0.5〜2 mm 程度)やサイズの小さい立方体(3 mm角、5 mm角)が好ましい。
【0008】
一般的なプロセスチーズの水分値は40〜50重量%であり、水分値が50〜60重量%のチーズ類はかなり高水分である。凍結乾燥前のチーズ類を50〜60重量%という高水分に調整することで、凍結乾燥後のチーズ類の湯戻り性を期待することができる。
【0009】
一般的なプロセスチーズのFIDMは45〜60%であるが、FIDMが30%以下である本発明のチーズ類は、かなり低脂肪、高たんぱく質である(五訂日本食品標準成分表に記載されているプロセスチーズの水分は45重量%で、FIDMを計算すると47.3%になる)。チーズ類のFIDMを30%以下にすることで、凍結乾燥前のチーズ類に加工適性を付与し、凍結乾燥後のチーズ類の湯戻り時に糸曳き性を期待することができる。一般的にFIDMが低いチーズ、すなわち低脂肪で高タンパク質のチーズは苦味が問題になるが、この場合、後に凍結乾燥させ、湯戻りさせるため、苦味は全く気にならなくなる。
【0010】
本発明において使用できるチーズを乳化する装置としては、通常の縦型チーズ乳化釜(クスナー・クッカー等)、横型クッカー(ダムロー・クッカー等)、高速剪断乳化釜(ステファン・クッカー等)等が挙げられる。これらの乳化釜は特別なものではなく、通常のプロセスチーズの製造に使用されているものである。
【0011】
本発明において、ナチュラルチーズに溶融塩および水を添加し、乳化釜で攪拌しながら加熱してチーズ類を調製する際に、チーズ類の FIDMを調整することが重要であり、FIDMを調整するために原料チーズとして低脂肪のナチュラルチーズを用いることになる。FIDMおよび水分を調整できれば、原料として使用できるナチュラルチーズはチェダーチーズ、ゴーダチーズ、モザレラチーズ、エメンタールチーズなどを単独または2種類以上を混合して用いることができ、ナチュラルチーズの種類には限定されない。
【0012】
また乳タンパク質を添加することでFIDMを調整することも可能である。ここでいう乳タンパク質とは牛乳中のタンパク質を濃縮し乾燥した粉末状のタンパク質(TMP(Total Milk Protein:牛乳にカルシウムを添加して得られる沈澱物を乾燥粉末化したもの)、MPC(Milk Protein Concentrate:牛乳を膜処理して得られる濃縮物を乾燥粉末化した乳蛋白質濃縮物))を指している。
【0013】
本発明において使用する溶融塩としては、オルソリン酸塩、ピロリン酸塩、ポリリン酸塩、クエン酸塩、酒石酸塩等が挙げられ、これらは単独もしくは2種類以上の組合せで使用可能である。また湯戻り性および加工適性(シュレッド適性、カット適性)の観点では、オルソリン酸塩単独もしくはオルソリン酸塩およびポリリン酸塩の混合が最適である。
【0014】
本発明において溶融塩の添加量は、使用する原料チーズ、調製するチーズ類の水分およびFIDMにより適宜検討しなければならないが、添加量が少なすぎると乳化が悪くなり、多すぎると湯戻り性、糸曳き性が悪くなるため、最終製品に対して0.5〜1.5重量%、好ましくは0.5〜1.0重量%である。
【0015】
また調製するチーズ類は50〜60重量%の高水分のチーズ類であるため、離水を生じる恐れがあるが、その場合安定剤を添加することで離水を抑制することができ、より安定した工程管理を期待することができる。またゲル化性のある安定剤を添加することでしっかりした物性に保持することができ、加工適性を付与する点で有効である。安定剤の種類は限定されないが、チーズ類の製造によく使用される安定剤としてはローカストビーンガム、寒天、グアーガム、ゼラチン、ペクチン、デンプン、加工デンプン、カラギーナン等が挙げられ、これらは単独もしくは2種類以上の組合せで使用可能である。
【0016】
安定剤の添加量は、使用する安定剤、調製するチーズ類の水分およびFIDM、溶融塩の添加量により適宜検討しなければならないが、概ね最終製品に対して0.1〜5.0重量%、好ましくは0.5〜2.5重量%である。
【0017】
また調製するチーズ類はFIDMが30%以下であるため、タンパク質含量が高いチーズ類であるが、乳化剤を併用することでタンパク質をやわらかくすることができ、より安定した工程管理を期待することができる。乳化剤としては、グリセリン脂肪酸エステル、レシチン類、ショ糖脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、プロピレングリコール脂肪酸エステル等が挙げられ、これらは単独もしくは2種類以上の組合せで添加できる。
【0018】
乳化剤の添加量は、使用する乳化剤、調製するチーズ類の水分およびFIDM、溶融塩の添加量により適宜検討しなければならないが、添加量が多すぎると乳化処理時に油分離(オイルオフ)を起こすため、最終製品に対して0.01〜3.0重量%、好ましくは0.05〜1.5重量%である。
【0019】
以下に試験例を示し、本発明を詳しく説明する。
【0020】
〔試験例1:FIDMの影響〕
(試験目的)
凍結乾燥前のチーズ類のFIDMがどの程度であれば、凍結乾燥前に加工適性があり、凍結乾燥後、湯戻り性に優れ、糸曳き性を有しているのかを調べるために以下の試験を行った。
【0021】
(試料の調製)
凍結乾燥前のチーズ類の水分を57%になるように、さらにFIDMをそれぞれ43%、36%、28%、19%になるように原料チーズを配合し、溶融塩として第2リン酸ナトリウム、安定剤としてローカストビーンガム、乳化剤としてグリセリン脂肪酸エステル、および水を添加して、乳化釜(東北大江工業製)を用いて回転数を120 rpmで、直接蒸気を投入して85℃まで昇温させ、乳化してチーズ類を調製した。配合は表1に示した。得られたチーズ類をカルトンに充填し、5℃の冷蔵庫で冷却後、シュレッド(長さ10〜40 mm、幅6〜8 mm、厚さ0.5〜2 mm 程度)した。つづいて−20℃の冷凍庫で一晩凍結させた。この凍結させたチーズ類を凍結乾燥機(東京理化器械株式会社)を使用して、真空度2.0Paで24時間乾燥し水分を除去した。
【0022】
【表1】

【0023】
この操作で得られた乾燥チーズ類の湯戻り性および湯戻り時の糸曳き性を調べた。結果は表2に示した。
【0024】
【表2】

【0025】
(評価方法)
表に示した記号の意味を次に記した。以下の試験例はすべてこの評価方法を使用した。
【0026】
(1)乳化状態
乳化状態とは、「ナチュラルチーズに安定剤、乳化剤等を添加して加熱溶融した後、チーズ類を乳化釜から取り出したときの乳化状態を目視で観察した結果」を示す。乳化状態が良好な場合はチーズの表面に油分離(オイルオフ)や離水が生じず、乳化状態が不良な場合はチーズの表面に油分離(オイルオフ)や離水が生じる。各記号の意味は次のとおりである。
◎:乳化良好。○:やや良好。△:やや不良。×:乳化不良。
【0027】
(2)湯戻り試験
凍結乾燥チーズ5 gに90℃の湯を100 ml加えて、3分間放置した後、芯があるかどうか調べた。
◎:完全に湯戻りする。○:湯戻りするが、一部芯がある場合がある。△:湯戻りするが、かなり芯がある。×:湯戻りしない。
【0028】
(3)糸曳き性
凍結乾燥チーズ5 gに90℃の湯を100 ml加えて、3分間放置した後、スパーテル(薬さじ)でチーズを垂直に持ち上げるとき、糸の長さを測定した。
◎:20 cm以上糸曳きする。○:10 cm以上糸曳きする。△:糸曳きするが10 cm以下で、すぐ切れる。×:全く糸曳きしない。
【0029】
(4)硬さの測定
硬さはクリープメーター(ヤマデン社製の商品名「レオナー」)を使用して測定した。チーズをコルクボーラーで直径2 cm、高さ1.5 cmにくりぬき、20℃の水槽に30 分間保温した後に圧縮試験を行った。直径40 mmのプランジャーを用い、試料台上昇速度1.0 mm/秒、80%圧縮試験を行い、歪率40%のときの応力(単位:g重)を測定した。測定は5回行い、平均値を硬さの指標として用いた。
【0030】
(5)加工適性
加工適性は料理用のチーズグレイターでチーズをシュレッド(長さ10〜40 mm、幅6〜8 mm、厚さ0.5〜2 mm 程度)したときの状態で判断した。
◎:シュレッドできる。○:シュレッドできるが、少しカスが生じる。△:シュレッドすると、ダンゴになるものが多い。×:軟らかくて、シュレッドできない。
【0031】
(6)総合評価
○:凍結乾燥前に加工適性があり、かつ凍結乾燥チーズは湯戻り性、糸曳き性を有している。
×:凍結乾燥前に加工適性がない、または/および凍結乾燥チーズは湯戻り性、糸曳き性を有していない。
【0032】
表2から明らかなように、配合3、4のようにFIDMが30%以下に調製したチーズ類は加工適性(シュレッド適性)があり、凍結乾燥後、湯戻り性と糸曳き性を有していた。FIDMが30%以上に調製したチーズ類は、硬さが410g重で、やわらかすぎて、加工適性がなくなった。表2から凍結乾燥前のチーズ類の硬さが500g重以下では、加工適正がないことがわかる。このことから、FIDMは30%以下が好ましい。
【0033】
〔試験例2:水分の影響〕
(試験目的)
凍結乾燥前のチーズ類の水分がどの程度であれば、凍結乾燥前に加工適性があり、凍結乾燥後、湯戻り性に優れ、糸曳き性を有しているのかを調べるために以下の試験を行った。
【0034】
(試料の調製)
凍結乾燥前のチーズ類のFIDMを19%になるように、さらに水分をそれぞれ50%、55%、60%、65%になるように原料チーズを配合し、溶融塩として第2リン酸ナトリウム、安定剤としてローカストビーンガム、乳化剤としてグリセリン脂肪酸エステル、および水を添加して、乳化釜(東北大江工業製)を用いて回転数を120 rpmで、直接蒸気を投入して85℃まで昇温させ、乳化してチーズ類を調製した。配合は表3に示した。得られたチーズ類をカルトンに充填し、5℃の冷蔵庫で冷却後、シュレッドした。つづいて−20℃の冷凍庫で一晩凍結させた。この凍結させたチーズ類を、凍結乾燥機(東京理化器械株式会社)を使用して、真空度2.0Paで24時間乾燥し水分を除去した。
【0035】
【表3】

【0036】
この操作で得られた乾燥チーズ類の湯戻り性および湯戻り時の糸曳き性を調べた。結果は表4に示した。
【0037】
【表4】

【0038】
表4から明らかなように、配合5、6、7のように水分を50〜60重量%に調製したチーズ類は加工適性(シュレッド適性)があり、凍結乾燥後、湯戻り性と糸曳き性を有していた。水分を65重量%に調製したチーズ類は、硬さが450 g重で、やわらかすぎて、加工適性がなくなった。表4から凍結乾燥前のチーズ類の硬さが500 g重以下では、加工適性がないことがわかる。水分を50重量%より少なくすると、湯戻り性が悪くなるが、FIDMを30%以下に調整しようとすると水分はおのずと高くなり、50重量%以下にすることは難しくなる。このことから水分は50〜60重量%が好ましい。
【発明の効果】
【0039】
水分を50〜60重量%およびFIDMを30%以下に調整した凍結乾燥前のチーズ類は加工適性を有しており、凍結乾燥して得られる乾燥チーズ類は、湯戻り性かつ糸曳き性を有しているので、即席麺、即席スープ等の具材として利用するのに最適のものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0040】
次に実施例を示して本発明をさらに詳細を説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【実施例1】
【0041】
凍結乾燥前のチーズフードのFIDMが19%、水分が56重量%になるように原料チーズとして低脂肪チェダーチーズを配合し、溶融塩として第2リン酸ナトリウム、および水を添加して、乳化釜(ステファン社製)を用いて回転数を1000 rpmで、直接蒸気を投入して85℃まで昇温させ、乳化してチーズフードを調製した。配合は表5に示した。得られたチーズフードをカルトンに充填し、5℃の冷蔵庫で冷却後、3 mm角にカットした。つづいて−20℃の冷凍庫で一晩凍結させた。この凍結させたチーズフードを、凍結乾燥機(東京理化器械株式会社)を使用して、真空度2.0Paで24時間乾燥し水分を除去した。
【0042】
【表5】

【0043】
乾燥前のチーズフードの硬さは2810 g重で切断適性があった。凍結乾燥したチーズフードは湯戻り性を有しており、糸曳き性(28 cm)があるものであった。
【実施例2】
【0044】
凍結乾燥前のチーズフードのFIDMが19%、水分が58重量%になるように原料チーズとして低脂肪チェダーチーズを配合し、溶融塩として第2リン酸ナトリウム、安定剤としてローカストビーンガム、および水を添加して、乳化釜(東北大江工業社製)を用いて回転数を120 rpmで、直接蒸気を投入して85℃まで昇温させ、乳化してチーズフードを調製した。配合は表6に示した。得られたチーズフードをカルトンに充填し、5℃の冷蔵庫で冷却後、シュレッド(長さ10〜30 mm、幅7 mm、厚さ0.5〜2 mm 程度)した。つづいて−20℃の冷凍庫で一晩凍結させた。この凍結させたチーズフードを、凍結乾燥機(東京理化器械株式会社)を使用して、真空度2.0Paで24時間乾燥し水分を除去した。
【0045】
【表6】

【0046】
乾燥前のチーズフードの硬さは950 g重でシュレッド適性があった。凍結乾燥したチーズフードは湯戻り性を有しており、糸曳き性(14 cm)があるものであった。
【実施例3】
【0047】
凍結乾燥前のチーズフードのFIDMが19%、水分が55重量%になるように原料チーズとして低脂肪チェダーチーズを配合し、溶融塩として第2リン酸ナトリウム、乳化剤としてグリセリン脂肪酸エステル、および水を添加して、乳化釜(ステファン社製)を用いて回転数を1000 rpmで、直接蒸気を投入して85℃まで昇温させ、乳化してチーズフードを調製した。配合は表7に示した。得られたチーズフードをカルトンに充填し、5℃の冷蔵庫で冷却後、シュレッド(長さ10〜30 mm、幅7 mm、厚さ0.5〜2 mm 程度)した。つづいて−20℃の冷凍庫で一晩凍結させた。この凍結させたチーズフードを、凍結乾燥機(東京理化器械株式会社)を使用して、真空度2.0Paで24時間乾燥し水分を除去した。
【0048】
【表7】

【0049】
乾燥前のチーズフードの硬さは2050 g重で切断適性があった。凍結乾燥したチーズフードは湯戻り性を有しており、糸曳き性(19 cm)があるものであった。
【実施例4】
【0050】
凍結乾燥前のチーズフードのFIDMが27%、水分が58重量%になるように原料チーズとして低脂肪チェダーチーズおよびチェダーチーズを配合し、溶融塩として第2リン酸ナトリウム、安定剤としてローカストビーンガムおよび寒天、乳化剤としてグリセリン脂肪酸エステル、および水を添加して、乳化釜(東北大江工業製)を用いて回転数を120 rpmで、直接蒸気を投入して85℃まで昇温させ、乳化してチーズフードを調製した。配合は表8に示した。得られたチーズフードをカルトンに充填し、5℃の冷蔵庫で冷却後、シュレッド(長さ10〜30 mm、幅7 mm、厚さ0.5〜2 mm 程度)した。つづいて−20℃の冷凍庫で一晩凍結させた。この凍結させたチーズフードを、凍結乾燥機(東京理化器械株式会社)を使用して、真空度2.0Paで24時間乾燥し水分を除去した。
【0051】
【表8】

【0052】
乾燥前のチーズフードの硬さは2780 g重でシュレッド適性があった。凍結乾燥したチーズフードは湯戻り性を有しており、糸曳き性(15 cm)があるものであった。
【実施例5】
【0053】
凍結乾燥前のチーズフードのFIDMが27%、水分が58重量%になるように原料チーズとして低脂肪チェダーチーズおよびモザレラチーズを配合し、溶融塩として第2リン酸ナトリウム、安定剤としてグアーガムおよび寒天、乳化剤としてグリセリン脂肪酸エステル、および水を添加して、乳化釜(東北大江工業製)を用いて回転数を120 rpmで、直接蒸気を投入して80℃まで昇温させ、乳化してチーズフードを調製した。配合は表9に示した。得られたチーズフードをカルトンに充填し、5℃の冷蔵庫で冷却後、シュレッド(長さ10〜30 mm、幅7 mm、厚さ0.5〜2 mm 程度)した。つづいて−20℃の冷凍庫で一晩凍結させた。この凍結させたチーズフードを、凍結乾燥機(東京理化器械株式会社)を使用して、真空度2.0Paで24時間乾燥し水分を除去した。
【0054】
【表9】

【0055】
乾燥前のチーズフードの硬さは2820 g重でシュレッド適性があった。凍結乾燥したチーズフードは湯戻り性を有しており、糸曳き性(17 cm)があるものであった。
【実施例6】
【0056】
凍結乾燥前のチーズフードのFIDMが19%、水分が57重量%になるように原料チーズとして低脂肪チェダーチーズを配合し、溶融塩として第2リン酸ナトリウムおよびトリポリリン酸ナトリウム、安定剤としてローカストビーンガム、乳化剤としてグリセリン脂肪酸エステル、および水を添加して、乳化釜(東北大江工業製)を用いて回転数を120 rpmで、直接蒸気を投入して85℃まで昇温させ、乳化してチーズフードを調製した。配合は表10に示した。得られたチーズフードをカルトンに充填し、5℃の冷蔵庫で冷却後、シュレッド(長さ10〜30 mm、幅7 mm、厚さ0.5〜2 mm 程度)した。つづいて−20℃の冷凍庫で一晩凍結させた。この凍結させたチーズフードを、凍結乾燥機(東京理化器械株式会社)を使用して、真空度2.0Paで24時間乾燥し水分を除去した。
【0057】
【表10】

【0058】
乾燥前のチーズフードの硬さは2580 g重でシュレッド適性があった。凍結乾燥したチーズフードは湯戻り性を有しており、糸曳き性(17 cm)があるものであった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
原料であるナチュラルチーズに溶融塩および水を添加して、加熱、攪拌し、水分が50〜60重量%で、なおかつFIDMが30%以下に調整したチーズ類を冷却後、任意の形状にカットして、さらに凍結乾燥することを特徴とする湯戻り性かつ糸曳き性を有する乾燥チーズ類の製造方法。
【請求項2】
溶融塩がオルソリン酸塩類、またはオルソリン酸塩類およびポリリン酸塩類の混合物である請求項1記載の乾燥チーズ類の製造方法。
【請求項3】
溶融塩の添加量が0.5〜1.5重量%である請求項2記載の乾燥チーズ類の製造方法。
【請求項4】
凍結乾燥前のチーズ類の硬さが500g重以上である請求項1または請求項2または請求項3記載の乾燥チーズ類の製造方法。
【請求項5】
溶融塩および水とともに、さらに安定剤を添加した請求項1記載の乾燥チーズ類の製造方法。
【請求項6】
安定剤の添加量が0.1〜5.0重量%である請求項5記載の乾燥チーズ類の製造方法。
【請求項7】
溶融塩および水とともに、さらに乳化剤を添加した請求項1記載の乾燥チーズ類の製造方法。
【請求項8】
乳化剤の添加量が0.01〜3.0重量%である請求項7記載の乾燥チーズ類の製造方法。
【請求項9】
溶融塩および水とともに、さらに安定剤および乳化剤を添加した請求項1記載の乾燥チーズ類の製造方法。
【請求項10】
安定剤の添加量が0.1〜5.0重量%で、乳化剤の添加量が0.01〜3.0重量%である請求項9記載の乾燥チーズ類の製造方法。
【請求項11】
原料であるナチュラルチーズに溶融塩および水を添加して、加熱、攪拌し、水分が50〜60重量%で、なおかつFIDMが30%以下に調整したチーズ類を冷却後、任意の形状にカットして、さらに凍結乾燥することを特徴とする湯戻り性および糸曳き性を有する乾燥チーズ類。

【公開番号】特開2010−154810(P2010−154810A)
【公開日】平成22年7月15日(2010.7.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−335423(P2008−335423)
【出願日】平成20年12月27日(2008.12.27)
【出願人】(000252182)六甲バター株式会社 (6)
【Fターム(参考)】