説明

乾燥フキの製造方法及び該方法により製造された乾燥フキ

【課題】生のフキの茎部を用いて、複雑な製造工程を採用せずに、また、特殊な薬液を使用することもなく、簡便な方法で緑色の乾燥フキを製造する方法を提供する。
【解決手段】生のフキの茎部を原料として用い、小片に切断後、減圧下において、マイクロ波加熱及び遠赤外線加熱を連続的にあるいは間歇的に行うことにより乾燥させ、さらに、必要に応じて、得られた乾燥フキを、気流と真空による切断により粉砕して粉末食品とすることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、乾燥フキの製造方法、特に、原料に生のフキの茎部を用いて、乾燥フキを製造する方法、及び該方法により製造された乾燥フキ、並びに該乾燥フキからなる粉末食品に関する。
【背景技術】
【0002】
フキは、キク科の多年草で、北海道から九州の山野に自生し、食用に栽培もされている植物である。フキには、フキノール酸、フキ酸、クロロゲン酸、ジカフェオイルキナ酸などの抗酸化作用をもつポリフェノールが豊富に含まれており、多くの疾病の原因とされている酸化的傷害の予防になると考えられている。また、フキには、セスキテルペンの一種であるフキノンが含まれており、このフキノンに抗アレルギー作用があり、花粉症などへの効果が期待されている。
【0003】
通常フキは、生の状態で葉の部分を除去した茎の部分を湯がき、味付けして食用としているが、生の状態では腐敗しやすく、冷凍保存すると香りや風味が落ちるため、収穫期のみ食用に供されてきた。
そこで、廃棄されていた葉部を乾燥し粉末化することにより、原料として通年供給を可能とすることが提案されている(特許文献1)。この方法は、収穫し、洗浄したフキを茎部と葉部に分離し、葉部のみを、塩水で湯がいた後、色及び風味を損なわないように陰干しをし、かつその後加熱により乾燥し、これを機械的に微細に粉砕するものであるが、茎部については全く触れられていない。
【0004】
本発明者は、杜仲及び桑の生葉の面倒な保管手段や、複雑な製造工程を採用せずに、しかも、特殊な薬液を用いることなく簡便な方法で緑色の杜仲茶及び/又は桑茶を製造する方法を見出し、提案している(特許文献2)。
この提案による製造方法は、杜仲及び/又は桑の生葉を原料として用い、少なくとも、300〜350℃で炒る炒り工程と、棚式乾燥機などを用いた高温乾燥工程とを経ることにより、緑色を維持したままの乾燥茶葉を製造することができるというものである。
【0005】
本発明者は、杜仲や桑の生葉と同様に、生のフキの茎部についても、緑色を損なわずに、きれいな緑色を維持したままの乾燥フキを得るべく、上記の方法を試みたところ、フキの茎部は、含水率が高く、炒り工程で乾燥度を7%から下に落とすのに時間を要するばかりでなく、フキの茎が太いために発酵がとまりにくく、そのために炒り工程の次の乾燥工程で、色が黒くなってしまうことが判明した。
また、生のフキの茎部を乾燥して得られた乾燥フキを粉砕して粉末食品とする場合、従来の気流式粉砕では摩擦熱等で70〜80℃以上の熱を発生するために、粉砕後すぐに冷蔵庫等で冷やす必要があることが判明した。
【0006】
一方、顆粒薬に残存する溶剤や、茶葉、コーヒ豆、ブラックペッパーなどの液体低率含有物質の水分を除去するのに、マイクロ波と遠赤外線を用いることにより、酸化が極めて少ない効率的な加熱が可能であることが知られている(特許文献3)。しかしながら、生のフキの茎部のように、水分含有量が90%と高い、生の野菜や山菜等の乾燥への適用については何ら言及されていない。
また、食品、化学成品、肥料、鉱物又は金属物等の固形物原料を、小さい熱影響下で粉砕して粉末化する方法として、粉砕機内に発生した気流をブレードにより加速して形成された高速の旋回流及び渦流と、部分的に真空となった真空部とによって行う方法が知られているが(特許文献4)、食品として例示されているものは大豆等の豆類だけである。
【特許文献1】特開2003−47428号公報
【特許文献2】特開2007−135580号公報
【特許文献3】特開2001−54730号公報
【特許文献4】特開2006−247526号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明者は、生のフキの茎部を、年間を通じて食すことを可能にすることについて研究を重ねたところ、緑色を出来るだけ保持させるばかりでなく、できるだけ低温で乾燥させてフキがもつ成分を維持したまま乾燥させる方法を見いだすことが必要であることが判明した。
本発明は、以上のような事情に鑑みてなされたものであって、生のフキの茎部から、鮮やかな緑色を呈するとともに、酸化がきわめて少ない高品質の乾燥フキを得る方法を提供するとともに、年間を通して保存食として利用できる乾燥フキを提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者は、上記の問題を解決すべく検討した結果、水分含有量が90%と高い生のフキの茎部であっても、上記特許文献3に記載された加熱方法を採用することにより、低温乾燥でフキの生の茎が有する成分を維持したまま乾燥できるという知見を得た。
また、乾燥後のフキの粉砕方法として、特定の粉砕方法を採用することにより、低温でしかも更に微粉砕で、自己破裂型の粉砕の形で水分を吸収しやすく、溶けやすいものにすることができることも判明した。
さらに、乾燥フキを粉砕したものに、コラーゲンの粉末を添加することにより、健康食品を提供しうるという知見も得た。
【0009】
本発明は、これらの知見に基づいて完成されたものであり、以下の発明を提供するものである。
(1)生のフキの茎部を、減圧下において、マイクロ波加熱及び遠赤外線加熱を連続的にあるいは間歇的に行うことにより乾燥することを特徴とする乾燥フキの製造方法。
(2)前記乾燥の前に、低温による予備乾燥を行うことを特徴とする(1)に記載の乾燥フキの製造方法。
(3)(1)又は(2)に記載の方法により製造したことを特徴とする乾燥フキ。
(4)(1)又は(2)に記載の製造方法で得られた乾燥フキを、粉砕して粉末にする工程を含むことを特徴とする粉末食品の製造方法。
(5)前記粉砕を、粉砕機内に発生した気流をブレードにより加速して形成された高速の旋回流及び渦流と、部分的に真空となった真空部とによって行うことを特徴とする(4)に記載の粉末食品の製造方法。
(6)(4)又は(5)に記載の方法により製造したことを特徴とする乾燥フキからなる粉末食品。
(7)(6)に記載された乾燥フキからなる粉末食品に、コラーゲンの粉末を加えたことを特徴とする粉末食品。
【発明の効果】
【0010】
本発明の製造方法により、鮮やかな緑色を呈するとともに、酸化がきわめて少ない高品質の乾燥フキを得ることができるとともに、本発明の粉砕方法によれば、低温での粉砕が可能となり、得られたものは、水分を吸収しやすく、溶けやすいものとなる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、本発明について詳しく説明する。
本発明においては、生のフキの茎部を原料として用い、これを小片にカットしてから、乾燥する。
本発明においては、この乾燥方法として、減圧下において、マイクロ波加熱及び遠赤外線加熱を連続的にあるいは間歇的に行う方法を用いることを1つの特徴とするものである。
該乾燥方法は、前記特許文献3に記載された方法であって、減圧による作用と、マイクロ波加熱による作用と、遠赤外線加熱による作用とを同時に行うものである。すなわち、減圧により無酸素環境を作りだし、フキの茎部に含まれる水分の沸騰点を下げた状態で乾燥する。また、マイクロ波加熱によりフキの茎部内部の水分を茎の外部に押し出し、遠赤外線加熱により、茎部表面の水分を瞬時に除去するものである。そして、茎部葉は自らの気化熱によりクーリングされるとともに、その温度は真空度によってコントロールされるものである。
【0012】
上記のようにして乾燥された本発明の乾燥フキは、無酸素環境において低温で乾燥が行われるため、鮮やかな緑色を呈しているばかりでなく、酸化の極めて少ない高品質なフキを得ることができる。また、1回の工程が30〜120分程度の短い時間で乾燥することができるために、エネルギーコストの低い合理的な乾燥が実現できるものである。
【0013】
本発明においては、前記乾燥の前に、低温による予備乾燥を行うこともできる。この低温による予備乾燥は、乾燥機により70℃以下で25〜40分行うことが好ましく、乾燥機としては再乾機を用いることができる。
【0014】
前述のとおり、本発明の方法で得られたフキの茎部は、鮮やかな緑色を呈しており、お味噌汁湯に入れると、そのまま味噌汁として食することができる。
また、この乾燥フキを粉砕することにより、乾燥フキの鮮やかな緑色を維持したまま粉末状の緑色の粉末を得ることができる。
【0015】
本発明におけるフキの粉砕は、粉砕機内に発生した気流をブレードにより加速して形成された高速の旋回流及び渦流と、部分的に真空となった真空部とによって行うことが好ましい。
すなわち、該粉砕方法は、粉砕室に旋回流を発生させるとともに該旋回流を乱す気流を発生させることにより、該粉砕室に導入された乾燥フキを攪拌しながらの衝突による粉砕とともに、気流の一部に発生する大きな負圧により膨爆に似た状態(いわゆる「かまいたち」状態)による粉砕とによって粉砕されることを特徴とするものであり、粉砕室内の真空の発生した部分では、投入された乾燥フキに切断する力が加わり、徐々に細かくなっていく(特許文献4参照)。
該粉砕方法を採用した場合には、気流と真空による刃で粉砕を行うために、粉砕時においてほとんど温度上昇することなく、フキ成分の劣化及びダメージを与えずに粉砕することが可能となる。
また、粉砕されたフキは、上記粉砕方法で得られる独特の形状を有しており、水に対する浸透力に優れており、特に後述する粉末食料とする際には、水に溶けやすくなるという利点を有している。
【0016】
本発明において、上記のようにして乾燥されたフキの茎部を食品とした場合、あるいはそれを粉砕して粉末状にして粉末食品とした場合は、抽出したものではなく、フキそのものを食べることになるので、フキの特殊成分だけでなく、植物繊維やあらゆるビタミン、ミネラルが、体に総合的な良い作用を促すこととなる。
【0017】
さらには、本発明の方法により得られた粉末状の乾燥フキと、コラーゲンの粉末を混合することにより、粉末食品とすることができる。このようにして粉末状フキと粉末状コラーゲンを混合した粉末食品は、コラーゲンの添加により、ミネラルの吸収を助け、フキに含まれる成分を吸収しやすくした健康食品を提供することができる。
【実施例】
【0018】
以下、本発明を実施例によってさらに具体的に説明するが、本発明はこれら実施例により何ら限定されるものではない。
(実施例1)
2cmに輪切りした生のフキの茎部(含水率90%)1053gを、減圧下において、マイクロ波加熱及び遠赤外線加熱を連続的にあるいは間歇的に行う、日本バイオコン株式会社製 ハイパードライ(HD)を用いて乾燥させた。乾燥時間は128分で、乾燥後の重量は70g、含水率7%であった。
得られた乾燥フキは鮮やかな緑色を呈していた。
この乾燥フキを、煮干と共に煮出して味噌を入れただけで、簡単にフキの味噌汁とすることがでた。そして、煮出した後も、フキは鮮やかな緑色のままであった。
【0019】
(実施例2)
2cmに輪切りした生のフキの茎部(含水率90%)1053gを、乾燥時間を141分とした以外は、実施例1と同様にして乾燥させた。乾燥後の重量は46.4gで、含水率は4%であった。
得られた乾燥フキは鮮やかな緑色を呈しており、実施例1と同様に煮出した後もそのままであった。
【0020】
(実施例3)
2cmに輪切りした生のフキの茎部(含水率90%)1053gを、乾燥時間を108分とした以外は、実施例1と同様にして乾燥させた。乾燥後の重量は49.3gで、含水率は5%であった。
得られた乾燥フキは鮮やかな緑色を呈しており、実施例1と同様に煮出した後もそのままであった。
【0021】
(実施例4)
実施例1ないし3で得られた乾燥フキをそれぞれ、気流と真空による刃で粉砕する、有限会社バーリー・ジャパン製 微粉砕機STAYを用いて粉砕し、それぞれの乾燥フキ葉の粉末を得た。
得られた乾燥フキの粉末5g(50重量%)及びコラーゲンの粉末5g(50重量%)を混合して粉末食品とした。
【産業上の利用可能性】
【0022】
本発明は、フキの生の茎部を乾燥したものであるから、これを食品とした場合には、抽出したものではなく、フキそのものを食べることになるので、フキの特殊成分だけでなく、植物繊維やあらゆるビタミン、ミネラルを含む健康食品を提供することができ、また、本発明の方法により得られた粉末状の乾燥フキと、コラーゲンの粉末を混合することにより得らえた粉末食品は、コラーゲンの添加により、ミネラルの吸収を助け、フキに含まれる成分を吸収しやすくした健康食品を提供することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
生のフキの茎部を、減圧下において、マイクロ波加熱及び遠赤外線加熱を連続的にあるいは間歇的に行うことにより乾燥することを特徴とする乾燥フキの製造方法。
【請求項2】
前記乾燥の前に、低温による予備乾燥を行うことを特徴とする請求項1に記載の乾燥フキの製造方法。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の方法により製造したことを特徴とする乾燥フキ。
【請求項4】
請求項1又は2に記載の製造方法で得られた乾燥フキを、粉砕して粉末にする工程を含むことを特徴とする粉末食品の製造方法。
【請求項5】
前記粉砕を、粉砕機内に発生した気流をブレードにより加速して形成された高速の旋回流及び渦流と、部分的に真空となった真空部とによって行うことを特徴とする請求項4に記載の粉末食品の製造方法。
【請求項6】
請求項4又は5に記載の方法により製造したことを特徴とする乾燥フキからなる粉末食品。
【請求項7】
請求項6に記載された乾燥フキからなる粉末食品に、コラーゲンの粉末を加えたことを特徴とする粉末食品。


【公開番号】特開2009−22231(P2009−22231A)
【公開日】平成21年2月5日(2009.2.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−190251(P2007−190251)
【出願日】平成19年7月21日(2007.7.21)
【出願人】(505390956)有限会社 碧山園 (7)
【Fターム(参考)】