説明

乾燥機ファブリック

複数のCD糸を備えるCD糸システムと、MD糸システムとを含む製紙機のファブリック。MD糸システムは、互いに垂直に積み重なる関係とされるMD糸第1サブシステムとMD糸第2サブシステムとを更に備える。MD糸第1サブシステムは、実質的に類似する縦横比を伴う少なくとも2つのMD糸を有するシェドを備える。MD第2サブシステム内のMD糸の縦横比は、MD第1サブシステム内のMD糸のそれより大きい。MD第1及び第2サブシステムの全ての糸は繰り返しの織りパターンにおいてCD糸システムのCD糸と織り合わされる。最後に、MD第1サブシステムからのMD糸だけを用いて縫い目ループが形成される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は製紙技術に関する。より詳しくは、本発明は、シングル・ラン乾燥機セクションのような抄紙装置の乾燥機セクションにおいて用いるための、製紙機の又は乾燥機のファブリックである。
【背景技術】
【0002】
製紙プロセスの間、セルロース繊維織物は、製紙装置の形成セクションの可動形成ファブリック上に、繊維状スラリー、すなわちセルロース繊維の水性分散体を堆積させることによって形成される。大量の水が形成ファブリックを通してスラリーから排出され、形成ファブリックの表面上にセルロースの繊維織物が残存する。
【0003】
新たに形成されたセルロース繊維は、形成部から、一連の加圧ニップを含む加圧セクションへ進む。セルロース繊維織物は、加圧ファブリックによって、又は、往々にして、そのような加圧ファブリックの2つの間に支持されて加圧ニップを通過する。加圧ニップの中で、セルロース繊維織物には圧縮力が課され、これによりそこから水が絞られると共に織物内のセルロース繊維が互いに接着されて、そのセルロース繊維織物が紙シートとなる。水は、単一又は複数の加圧ファブリックに受け入れられて、理想的には紙シートに戻らない。
【0004】
織物、つまり、現在の紙シートは、最後に乾燥機セクションへ進み、そこには少なくともの一連の回転可能な乾燥ドラム又はシリンダが含まれており、それらは蒸気によって内部的に加熱されている。新たに形成された紙シートは、ドラムの表面に対して紙シートを保つ一つ以上の乾燥機ファブリックによって、一連のドラムのそれぞれの周囲における蛇行通路の内部において連続的に方向付けられる。加熱されたドラムは、蒸発により望ましいレベルにまで紙シートの含水量を減少させる。
【0005】
形成、加圧、及び乾燥機ファブリックは、全て、製紙装置上で無端ループの形をとってコンベヤとして機能することは、理解されるべきである。更に、製紙が、相当な速度で進行する連続工程であることも認識されるべきである。換言すれば、繊維質スラリーは形成セクションにおいて形成ファブリックの上に連続的に堆積され、その一方で、新たに製造された紙シートは乾燥機セクションから出た後、ロール上に連続的に巻取られる。
【0006】
本発明は、主として、製紙装置の乾燥機セクションにおいて用いられる乾燥機ファブリックに関する。乾燥機セクションにおいて、乾燥機シリンダは、最上及び最下の列又は段に配置することとしてもよい。最下段のそれらは、最上段のそれらに関して、厳密な垂直の関係にあるよりはむしろ、ずらして配置されていてもよい。シートは、乾燥機セクションを進むに連れて、最上及び最下の段の間を交互に通過することとしてもよく、最初にそれら2つの段のうちの一つにある乾燥機シリンダの周囲を追加し、次いで、他方の段にある乾燥機シリンダの周囲を通過し、そのようにして連続的に乾燥機セクションを通過する。図1aに示すように、乾燥機セクションにおいて、乾燥シリンダの最上94及び最下96の段は、別々の乾燥機ファブリック99で個々に覆われていてもよい。こうした状況では、乾燥している紙シート98は、各乾燥機シリンダと他の段上の次の乾燥機シリンダとの間において、支持されていない状態で、空間又は「ポケット」を横断的に通過する。
【0007】
単一段乾燥機セクションにおいては、多数の回転シリンダ又はロールを伴うシリンダの単一列を用いることができる。回転ロールは、中身が詰まったもの(solid)でも、或いは管状のもの(vented)でもよい。図1bに示すような単一段乾燥機セクションにおいて、紙シート198は、最上及び最下の段の乾燥機シリンダ200付近の蛇行通路に連続的に従う単一の乾燥機ファブリック199を用いることにより搬送される。
【0008】
生産性を高めてシートの乱れを最小化するために、乾燥したシートの高速搬送にはシングル・ラン乾燥機セクションが用いられる。シングル・ラン乾燥機セクションにおいては、単一乾燥機ファブリックが、最上及び最下の段における乾燥機シリンダの周囲で連続的に蛇行通路を辿る。
【0009】
シングル・ラン乾燥機セクションにおいて、乾燥機ファブリックは、二つの段のうちの一つ、典型的には最上段における乾燥機シリンダに対して乾燥した紙シートを直接的に保持するが、最下段の乾燥機シリンダの周囲でその紙シートの搬送をも行う。ファブリックは、最上の乾燥機シリンダの上を通って帰還する。一方で、シングル・ラン乾燥機セクションの中には、最下段における乾燥機シリンダに対して乾燥した紙シートを直接的に保持し、最上段の乾燥機シリンダの周囲ではその紙シートの搬送も行うという、反対の構成を有するものもある。この場合、ファブリックは、最下の乾燥機シリンダの下を通って帰還する。いずれの場合でも、圧縮ウェッジは、可動乾燥機ファブリックが乾燥機シリンダに接近することで空間が狭くなる箇所で、可動乾燥機ファブリックの裏側表面に伴って運ばれてくる空気により形成される。その結果として圧縮ウェッジにおいて生ずる空気圧の増加は、乾燥ファブリックを通して空気を外部に流通させる。この空気の流れは、次に、紙シートを乾燥機ファブリックの表面から離れさせてしまい、「ドロップ・オフ」として現象が知られている。「ドロップ・オフ」は、端部裂けを引き起こし、また、シートの破れも引き起こし得ることにより、そして、それは装置の効率を低下させてしまうのだが、製造紙の品質を低下させることがある。
【0010】
多くの製紙工場では、下層の乾燥機シリンダに溝を機械加工することにより、或いは、それらの乾燥機シリンダに負圧源を追加することにより、この課題に対処している。両者共に高価ではあるが、これらの対策は、何れも、それらがなければ圧縮ウェッジに捕らえられてしまう空気を、乾燥機ファブリックを通過させることなく取り除くことができる。更に、シート模様が無いこと、及び乾燥機シリンダ表面とのシート接触は、良好な耐摩耗性及び寸法安定性と同様に要件である。
【0011】
既に述べた通り、形成、加圧、及び乾燥機ファブリックの全てが、製紙装置上で無端ループの形をとってコンベヤとして機能することは理解されるべきである。製紙装置への取り付けの間に、ファブリックを無端形状に閉じるために用いることができる縫い目のような縫い目は、そのファブリックの均一構造に不連続性を与える。このため、縫い目を使用すると、乾燥工程の間にセルロース繊維織物に模様がついてしまう可能性が極めて高くなる。
【0012】
このため、縫い目は通常、縫い目のあるファブリックの重要部分であり、その理由は、均一な紙品質、低い模様付け性、ファブリックの優れた走行性が、厚さ、構造、強度、等価性などの特性に関してファブリックの残部と可能な限り同じである縫い目を要求するからである。従って、製造される紙製品の縫い目領域による一時的な模様を防ぐために、使用可能な装置上で縫い合わせ可能なファブリックの縫い目領域は、如何なるものも、ファブリック本体と類似した振る舞いをしなければならず、かつ、水蒸気及び空気に対してファブリックの残部と不維持の透過性を有していなければならない。
【0013】
これらの要件により与えられる相当な技術的な障壁にもかかわらず、この種のファブリックは製紙装置に容易かつ安全に取り付けることができることから、装置上で縫い合わせ可能なファブリックを開発することは、強く望まれ続けていた。更に、乾燥機セクションにおいては、取り付けを可能とするために、ファブリックが縫い目を有していなければならない。最終的に、これらの障壁は、ファブリックの二つの端部の横方向エッジに縫い目ループを提供することで形成した縫い目を有するファブリックによって克服された。縫い目ループ自体は、ファブリックの縦方向(MD)糸により形成される。縫い目は、構造の2つの端で縫い目ループを互いに嵌合することにより、かつ、ファブリックの二つの端を一つにロックするために、上記の嵌合された縫い目ループによって定められた通路を通して所謂ピンまたはピントルを導くことにより、ファブリックの二つの端をまとめることによって形成される。言うまでもなく、装置上で縫い合わせが可能なファブリックを製紙装置に取り付けることは、無端ファブリックを取り付けることに比べて遙かに容易であり、また、遙かに時間を要しない。
【0014】
この種の縫い目により製紙装置に組み合わせることが可能なファブリックを製造する一つの方法は、ファブリックを平らに織ることである。この場合、縦糸は、ファブリックの縦方向(MD)糸である。縫い目ループを形成するために、ファブリックの端部における縦糸は、折り返されて、縦糸と平行な方向にある程度の長さだけファブリック本体の中に織り返される。
【0015】
場合によっては、例えば、ファブリックの各端部において、ピン又は他のCD(クロスマシン方向)本体糸を介して、螺旋縫い目コイルの個々のターンを縫い目ループに嵌合させることにより、かつ、その螺旋縫い目コイルをファブリックの端に接続するために、嵌合された糸と縫い目ループによって形成された通路を通してピントルを導くことにより、ファブリックの端部において螺旋縫い目コイルを縫い目ループに取り付けることとしてもよい。次いで、ファブリックの各先端にある縫い目コイルの個々のターンを互いに嵌合させることにより、かつ、ファブリックの二つの端を互いに接続するために、嵌合された縫い目コイルによって形成された通路を通してもう一つのピントルを導くことにより、ファブリックを無端ループの形状に接続することとしてもよい。当業者に知られているように、工業的ファブリックの多数の種類は、種々の機材に取り付けられる段階で無端形状に閉じられるように設計されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
乾燥機ファブリックの他に、コルゲータベルト、パルプ形成ファブリック、及びスラッジ脱水ベルトのような他の工業的ファブリックは、同様の手法で継ぎ合わされており、或いは継ぎ合わされることが可能である。これらのファブリックでは、やはりMD糸が縫い目ループであり、ループを形成するために、糸が、特に単一の単繊維が小さな半径で曲げられることによって、ループ領域の糸が応力を受けて弱められてしまうことが広く知られている。従って、全ての縫い目は、実用に於いて、主たるファブリック本体より弱くなっている。縫い目ループは、使用されている間、荷重を受け、かつ、繰り返し曲げられる(場合によっては圧縮される)ものであるため、装置の不調は、如何なるものであっても、尚早な縫い目異常及びファブリック脱落に繋がり得る。
【0017】
製紙装置上でファブリックを縫い合わせる際に重要な態様はファブリックを横断して均一な張力が存在していることである。均一な張力が達成できず、ファブリックの一部が他より強く引かれる場合は、ファブリックは泡だったような状態、或いは、ファブリックの全幅に渡ってうねったような状態になり得る。
【0018】
ファブリックの縫い合わせについての他の態様は、ファブリック本体へのダメージを防ぐことである。取り付け時におけるファブリックへのダメージの機会を避け、又は最小化するためには、縫い目それ自身において不均一な張力、重量及び圧力を避けなければならない。ファブリック、特に非常に長いものの縫い合わせについての更なる態様は、ファブリックが真の縦方向に沿って案内され、振動したり装置の一方を追跡したりしないように、ファブリック本体を装置の内部に適切に配置することである。ファブリックの案内や追跡が良好でないと、製紙装置の支持枠体との接触が生じ得て、その結果ファブリックがダメージを被る。
【0019】
従って、製紙装置上での従来の乾燥機ファブリックの縫い合わせは、困難であり、また、長い時間を要する退屈な処理であった。このため、取り付け及び縫い合わせが迅速且つ容易に行える乾燥機ファブリックの要求が存在する。取り付けが容易かつ迅速であることに加えて、本乾燥機ファブリックは、耐久性があって、かつ、ファブリック本体及び縫い目領域の双方において滑らかなシート接触表面を提供し、その結果、その上で製造される紙シートの模様を減らし、品質を向上させる。
【課題を解決するための手段】
【0020】
そこで、本発明の主たる目的は、製紙装置上で容易に取り付けることのできる乾燥機ファブリックを提供することである。
本発明の更なる目的は、耐久性があると共に、先行技術のそれらより良質なシート接触表面を有する乾燥機ファブリックを提供することである。
更にもう一つの本発明の目的は、装置上で縫い合わせが可能な乾燥機ファブリックであり、その上で形成される紙に模様を付けない縫い目を有するものを提供することである。
本発明の更なる目的は、粗い裏側面と良質なシート接触側面を有する乾燥機ファブリックを提供することにある。
【0021】
これらの、そしてまた他の目的及び効果は、本発明によって提供される。この点に関して、一実施形態によれば、本発明は、製紙機のファブリック及び製紙機のファブリックを形成する方法に、そして、より詳しくは、乾燥機ファブリックに向けられている。製紙機のファブリックは、複数のCD糸を含むCD糸システムと、MD糸システムとを備えている。MD糸システムは、更に、互いに垂直に積み重ねられた関係にあるMD糸第1サブシステムと、MD糸第2サブシステムとを備える。MD糸第1サブシステムは、実質的に類似した、或いは、同一でさえある縦横比を有する少なくとも2つのMD糸を備えるシェド(sheds)を含んでいる。MD糸第2サブシステムのMD糸の縦横比は、MD糸第1サブシステムのMD糸のそれよりも大きい。MD糸第1及び第2サブシステムの糸の全ては、繰り返しの織パターンにおいてCD糸システムから、CD糸に織り込まれる。最後に、縫い目ループは、MD糸第1サブシステムからMD糸だけを用いて形成される。
【0022】
本発明を特徴づける様々な新規な特徴は、この開示の一部を形成する添付の請求項において特に指し示される。本発明、その動作上の効果、及びそれらの使用によって達成される特定の目的をより深く理解するため、添付の開示事項が参照され、そこには、本発明の好ましい実施形態が添付の図面に描かれており、その中で、対応する要素は同一の参照符号によって特定されている。
【図面の簡単な説明】
【0023】
以下の詳細な記述は、例示の手法で与えられ、本発明をそれらだけに限定することを意図したものではなく、同様の参照符号が同様の要素及び部分を指している添付の図面との関連において最も理解されると思われる。
【図1a】製紙機の2段乾燥機セクションの模式図である。
【図1b】製紙機の1段乾燥機セクションの模式図である。
【図2a】本発明の一実施形態にかかる製紙機のファブリックの織パターンである。
【図2b】図2aに示すファブリック織パターンの、裏又は装置側の縦糸だけのための織パターンである。
【図2c】図2aに示すファブリック織パターンの、対になった(paired)シート接触側の縦糸だけのための織パターンである。
【図3】図2に示す織パターンの幅方向における側面図である。
【図4】本発明の一実施形態に係る製紙機のファブリックのシート接触側の表層写真である。
【図5】本発明の一実施形態に係る製紙機のファブリックの裏又は装置側の表層写真である。
【図6】本発明の一実施形態に係る製紙機のファブリックのための縫い目の織パターンの幅方向の側面図である。
【図7a】図6に示す織パターンを有する製紙機のファブリック用の縫い目の装置側の表層写真である。
【図7b】図6に示す織パターンを有する製紙機のファブリック用の縫い目領域の裏側面の表層写真である。
【図8a】本発明の一実施形態にかかる製紙機のファブリックの織パターンである。
【図8b】図8aに示すファブリック織パターンの、裏又は装置側の縦糸だけのための織パターンである。
【図8c】図8aに示すファブリック織パターンの、対になった(paired)シート接触側の縦糸だけのための織パターンである。
【図9】本発明の一実施形態に係る製紙機のファブリックの表層写真である。
【図10】本発明の一実施形態に係る製紙機のファブリックの縫い目の表層写真である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明の好ましい実施形態を示した添付の図面を参照して、本発明をより完全に説明する。本発明は、しかしながら、多くの異なる形式で実施することができ、かつ、ここに表された例示の実施形態に限定されるものとして解釈されてはならない。むしろ、これらの例示の実施形態は、完全で完結したものであり、当業者に対して発明の技術的範囲を完全に伝えるものである。
【0025】
本発明は、製紙装置の乾燥機セクションにおいて用いられるフルワイズ、フルレングスの縫い合わせ無端製紙ファブリックに関する。本発明の一実施形態に係る製紙機のファブリックは、縦糸又は縦方向(「MD」)糸のシステムと、シュート糸または幅方向(「CD」)糸のシステムとを備えている。縦糸システムの全ての縦糸は、丸くない、或いは実質的に矩形の(平坦な)横断面を有している。シュート又はCD糸は、丸や、実質的な矩形や、或いは他の任意の形状の断面を有している。シュート糸が丸い場合、典型的にはそれらは0.70mm〜0.80mmの直径を有することができる。シュート糸の全てが同じ形状を有する必要がない点に注意することが重要である。また、同じファブリックの中で異なる直径のシュート糸を用いることが可能である。
【0026】
本発明のファブリックを構成する糸は、製紙装置布のためのこの種の糸の製造において用いられる合成高分子樹脂の何れかからなる単繊維糸であってもよい。ポリエステル及びポリアミドは、この種の材料のほんの2つの例である。しかしながら、商標名RYTONの下で商業的に入手が可能であるポリフェニレンサルファイド(PPS)や、参照によりその内容がこの明細書に組み込まれる共有米国特許第5,169,499に様々に開示されており、かつ、THERMONETICSの商標の下でアルバニー・インターナショナル・コーポレーションによって販売される乾燥機ファブリックにおいて用いられる、修正された、熱、加水分解、及び汚染に対して耐性のあるポリエステルのような他のポリマーは、この種の材料の付加的な例である。更に、ポリ(シクロヘキサンジメチレン・テレフタル酸エステル・イソフタル酸エステル)(PCTA)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)その他のような材料も用いることができる。MD及びCD糸の双方は、同じ、又は異なる材料で形成することができる。
【0027】
ここで使用しているように、上層、上層縦糸、微細な縦糸、シート接触側又はフェイス側表面縦糸、及び縦糸の第1サブシステムの用語は、交換可能に用いられており、本発明の使用を制限する意味を有していない。加えて、ここで用いられているように、下層、下層縦糸、粗い縦糸、裏側、ロール側又は装置側表面縦糸、及び縦糸の第2サブシステムの用語は、交換可能に用いられており、本発明の使用を制限する意味を有していない。最後に、ここで用いられているように、MD糸及び縦糸の用語は交換可能に用いられており、かつ、CD糸、横糸、シュート又はシュート糸、及び充填糸の用語は交換可能に用いられており、本発明の使用を制限する意味を有していない。以下の説明では、全ての図面に渡って、同様の参照符号は同様又は対応する部分を示す。
【0028】
本ファブリックは平織りであり、従って、縦糸は長手方向の又はMD糸であり、かつ、シュート又は横糸はCD糸である。縦糸又はMD糸のシステムは、更に、縦糸又はMD糸の二つのサブシステムを備えている。縦糸の第1サブシステムは上層又はシート接触側縦糸を含んでおり、また、縦糸の第2サブシステムは、下層又は裏若しくは装置側縦糸を含んでいる。装置側の縦糸は個々の縦糸を備える織りシェド(shed)パターンを含んでおり、また、シート接触側の縦糸は、横に並んだ関係にある少なくとも二つの縦糸を備える織りシェドパターンを含んでいる。結果として生じたファブリック織りにおいて、縦糸の第1及び第2サブシステムは、一方が他方の上に垂直に積み重ねられている。第1サブシステム又は上層の縦糸における個々の縦糸の幅は、第2サブシステムの縦糸の幅よりも微細或いは細く、各シェドにおける上層縦糸の結合幅は、単一の装置側又は最下層縦糸の幅と基本的に等しい。つまり、上層縦糸は微細又は狭い糸であり、かつ、最下層縦糸は粗い又は太い糸である。従って、縦糸の第1サブシステムの個々の糸のアスペクト比(各個別糸の幅に対する高さの比率)は、縦糸の第2サブシステムにおける個々の糸のアスペクト比と異なる値を有する。例えば、微細な上層の縦糸の寸法は、幅0.58mmに対して高さ0.31mmであってもよく、また、粗い最下層の縦糸の寸法は幅1.16mmに対して高さ0.28mmであってもよい。
【0029】
ここで図を参照して、図2aは、本発明の第1実施形態に係る製紙機用ファブリックのための織パターン又はデザインを表す。縦方向及び幅方向が図中に示されており、その結果、MD糸が織パターンの最上部に沿って同定されており、シュート又はCD糸が織パターンの左側に沿って同定されている。ここでの議論のために、我々は、縦糸の第1サブシステムにおける各シェドが、縦糸の第2サブシステムにおける一の縦糸の幅と本質的に等しい結合幅を有する一対の横に並んだ縦糸を備えていえるものと仮定する。
【0030】
図2aは、製紙機用ファブリックの織パターンの一つの繰り返しを示しており、そこでは、縦糸の上層における一のシェド中の一対の微細縦糸の一つである縦糸1が、シュート糸40の下方、及びシュート糸10,20及び30の上方を織り進んでいる。縦糸1に隣接して対をなす縦糸の上層のシェド中の微細縦糸である縦糸2は、シュート糸40の上方、シュート糸30の下方、及びシュート糸10,20の上方を織り進んでいる。下層の粗い縦糸3は、シュート糸20,30,40の上方、及びシュート糸10の下方を織り進んでいる。縦糸の上層における隣接対の微細縦糸対の一つである縦糸4は、シュート糸20、30及び40の上方におけるファブリックのシート接触側の上、及びシュート糸10の下側を織り進んでいる。縦糸4に隣接する対である縦糸の上層における微細縦糸である縦糸5は、シュート糸30及び40の上方、シュート糸20の下方及びシュート糸10の上方を織り進んでいる。最後に、繰り返しにおいて、下層の粗い縦糸6は、シュート糸40の上方、シュート糸30の下方、及びシュート糸10及び20の上方を織り進んでいる。ファブリックは、また、例えば、4つ又は6つのハーネスの繰り返しのような追加のハーネス繰り返し配列を用いて織ることとしてもよい。全ての場合において、シート側のMD糸対は、単一のより大きな裏側のMD糸の上方に垂直に積み重ねられる。この実施形態において上層の縦糸又はMD糸の対は、「ずらされて」おり、つまり、それらは、CD糸の上方及び下方を同じパターンでは織り進んでいない。その代わりに、図2a、2b及び2cに詳細が示されているように、対の中の個々の縦糸は異なるCD糸の下方を織り進んでいる。
【0031】
図2aに示す織構造に従って織られたファブリックは、ファブリックの装置側の粗い縦糸に起因して、より耐久性に優れたファブリックをもたらし、かつ、非常に滑らかなファブリック又はシート接触表面を有するという追加の効果を有する。このため、このタイプのファブリックは、その上に形成されるシートに模様を付けないことから、例えば30gsm以上の紙等級に対して用いることが可能である。
【0032】
ファブリックの装置側及びシート接触側のための織りデザインは、ファブリックの装置側及びシート接触側上の縦糸充填量を比較して示すために、図2b及び2cにそれぞれ別個に表している。例えば、装置側の粗い縦糸の幅は、微細なシート接触の各縦糸の幅の2倍に大凡等しく、或いは、少なくともシート接触側縦糸の各対の幅に等しくなり得る。図2bは、各々が縦糸の下層における分離された一つのシェドの中にある粗い糸3及び6を示しており、その一方で、図2cは、縦糸の上層内の2つのシェドを示しており、その一方は上層縦糸1及び2を備えており、その他方が上層縦糸4及び5を備えている。
【0033】
図2a、2bおよび2cに示す織りパターンは、上方の縦糸が下方の粗い縦糸と隣接するファブリックの裏側の縫い目領域内の部分を除いて、ファブリック構造のフェイス側の全域にわたって見ることができる。縫い目ループを形成する縫い合わせ領域におけるファブリック構造は、後に説明する。
【0034】
対となって垂直に積み重ねられる縦糸を有する本発明のシステムを用いる様々な追加の織りパターンは、本発明の技術的範囲の中で構成することができる。例えば、用途によっては、4つ以上のCD又は横糸の上方に、上層縦糸のためのMD又は縦糸表面フロートを有することが望まれることがある。この種のファブリックは、本発明の開示に従って容易に構成される。
【0035】
図3は、図2aに示すファブリックのための織りパターンの横方向における側面図である。図3中に見えるように、ファブリックはMD又は縦糸の2層を含んでいる。前述のように、ファブリックは平織りであり縫い合わせによって実質的に無端に結合されているため、CD糸は横糸または充填糸であり、かつ、MD糸は縦糸である。MD糸の第1セット、上層又はシート接触側縦糸は、微細MD又は縦糸1、2、4、5を含んでおり、その一方で、MD糸の第2セット、装置側の縦糸は、粗いMD又は縦糸3及び6を含んでいる。図2a、2b、2c及び3において明らかであるように、これらの2セット中の縦糸は、垂直関係において一方が他方の上に積み重ねられている。更に、図3において、CD糸は構造10、20、30及び40により表されている。
【0036】
ここで図2a、2b及び2cに戻り、縦糸1〜6は、実質的に矩形の横断面を有する平坦な単繊維糸であってもよい。微細なシート接触側縦糸の平坦で実質的に矩形な形状は図4中に見ることができ、ここには、本発明の第1実施形態に従って構成されたファブリック50のシート接触縦糸が示されている。また、図4中に見ることができるように、微細で実質的に矩形のシート接触側縦糸は、2つのグループに配置されており、そこでは、2つの上方縦糸が対となってCD糸と織られている。最後に、図4中に見ることができるように、一対の上層の横糸は縦方向において「ずらされている」。すなわち、それらは、各CD糸の上方及び下方で同じパターン内に一緒に織られてはいない。その代わりに、対をなす各縦糸は縦方向における隣接CD糸の下方を織り進んでいる。このため、上層における縦糸対は、縦方向にずれたパターンを形成する。
【0037】
図5は、本発明の第1実施形態に従って織られたファブリック50の装置側縦糸を示しており、円形の横糸54と共に織られた装置側の粗い縦糸52を表している。図5から、ファブリック50が、その裏又は装置側に100%の縦糸充填量を有することが観察できる。しかしながら、本発明の技術的範囲の中で、縦糸充填量の他のパーセンテージを達成することは可能である。
【0038】
本発明の他の実施形態に従って構成されたファブリックは、シート接触側又は装置側の面上に縦方向の「溝」を含んでいてもよく、その結果、ファブリック上での溝が付けられた擬似縦糸レール(runner)又は空気チャンネル効果の形成がもたらされる。これらの溝は、ファブリックの同じ側で、厚み又は高さの異なる実質的に矩形の糸を用いることにより形成することができる。例えば、ファブリックの装置側表面上の粗い縦糸は、空気の取り扱いを改善するために、ファブリックが、その装置側に、溝の付けられた面を有するように、厚み又は高さが変わる糸を交互に備えることができる。ファブリックの縫い目の一端における溝やリブは、縫い合わされるファブリックの他端上の溝やリブと位置合わせされていることが望ましい。更に、MD糸の対は、「溝面」を形成するために、互いに離れて間隔が空けられていてもよく、同様に、底側層のMD糸は、隣接するMD糸と間隔が空けられて、或いは非連続的であってもよい。
【0039】
図6は、本発明に係るファブリックを縫い合わせるための縫い目構造の一実施形態を示す。図6は、縫い目の形成を示しており、ここでは、ファブリック50のシート接触側上の微細な上層縦糸がファブリックの端で縫い目ループを形成しており、これによりファブリックの端が一緒に結合されて無端ループが形成されている。縫い目ループを形成するために、シートに接触する縦糸対における、或いは、縦糸の第1サブシステム内のシェドからの縦糸の一つが、上方の縦糸対の下に横たわるシュート又は横糸が除去されることによって、ファブリックの端を超えて延ばされる。上方の縦糸対の下に横たわる裏側又は装置側の粗い縦糸のそれぞれが、次に、ファブリックの端から所望の距離だけ遡って取り除かれる。今やファブリックの端を超えて延びている上層の縦糸は、次に、自身の上に折り返されて、裏側の粗い縦糸が取り除かれたことにより空けられたスペースにおいて、ファブリックの裏側に再び織り込まれる。上層の微細な縦糸が、かつて下層の粗い縦糸によって占められていたスペースに織り返されると、それらのひだや織りパターンが下方の粗い縦糸のパターンに整合して、その結果、もたらされた縫い目ループが適切な位置にロックされる。
【0040】
同様に、縫い目ループの形成に用いられなかった、上方の縦糸の対における、或いは、縦糸の第1サブシステム内のシェドからの残された上方縦糸も、また、取り除かれた下層の粗い縦糸によってかつて占められていたスペースにおいて、ファブリックの裏又は装置側の面に織り返される。この上方の縦糸は、ファブリックの端に残存している最後の横糸又はCD糸の周辺で、ファブリックの装置側表面にきつく織り込まれる。これにより、ファブリックの他端に形成されたループが、ループを形成しない上方の縦糸によって提供されるスペースの内部で嵌め合い又は噛み合うことができ、その嵌め合わされた縫い目ループを通して挿入されるピントルを介して、ファブリックが縫い合わされる。
【0041】
上層の縦糸をファブリックの本体に織り返す前に、同じシェドからの上方の縦糸は、互いに「対に」され(1つの糸として一緒に織ることができるように互いに対にされる)、裏側の粗い縦糸が取り除かれたことにより空けられたスペースにおいて、ファブリックの裏側面に織り返される。同じシェドからの上方の微細な上方縦糸対を対にまとめて一つの糸として織ることにより、縫い目におけるパターンを、ファブリックの本体における裏側の粗い縦糸の織りパターンに整合させることができる。
【0042】
この実施形態に従って形成された縫い目の例が図6に示されており、そこでは、交互に配置された上層の微細な縦糸2及び5が、ファブリックの端部に縫い目ループを形成するために用いられており、その結果、ファブリックの端が無端ループに一緒に結合されている。上層の縦糸対1、2、4及び5の下に横たわるCD又は横糸が取り除かれたことにより、上層の微細な縦糸1、2、4及び5がファブリックの端を超えて延ばされる。装置側の粗い糸3及び6のそれぞれが、次に、上層の微細な縦糸1、2、4及び5を織り込むためのスペースを形成するために、ファブリックの端から所望距離だけ遡って取り除かれる。上層の微細な縦糸1、2、4及び5は、次に、自身の上に織り返され、互いに対にまとめられ、裏側の粗い縦糸3及び6を取り除いたことによって空けられたスペースの中で、一つの糸としてファブリックの裏側面の中に織り返される。対とされた上層の或いはシートに接触する縦糸が、装置側の粗い縦糸3及び6によってかつて占められていたスペースの中に織り返されると、それらの波形及び織りパターンが、粗い装置側の縦糸3及び6のパターンと整合する。例えば、上層縦糸1及び2の波形は、装置側の粗い縦糸3に整合し、また、上層縦糸4及び5の波形は、装置側の粗い縦糸6に整合し、それにより、結果として形成されるループが適正な位置にロックされる。
【0043】
図6中に更に見ることができるように、交互に配置された上方の縦糸1及び4は、ファブリックの端に残存している最後の横糸又はCD糸の周辺で、ファブリックの装置側表面にきつく織り込まれており、これにより、ファブリックの他端に形成されたループが、ループを形成しない上方の微細な縦糸によって提供されるスペースの内部で噛み合うことができ、その嵌め合わされた縫い目ループを通して挿入されるピントルを介して、ファブリックが縫い合わされる。ファブリックのシート接触側面上の縫い目領域に結果として生じるファブリック構造を図7aに示す。図7bは、縫い目領域60におけるファブリック50の裏側の表層写真であり、ここには、微細面側の縦糸56が、縫い目ループを形成し、互いに対にされて、裏側の粗い縦糸52のパターンと整合する波形及び織りパターンを伴ってファブリック50の裏側においてファブリック本体に織り込み返された後に、裏側の粗い縦糸52と「隣接」している様子が示されている。図7a中に見ることができるように、対をなす微細なフェイス側の縦糸は、先に記述した通り「ずらされて」いる一方で、図7においては、対にされてファブリック本体に織り返されるフェイス側の縦糸56の双方が、裏側の粗い縦糸52の織りパターンと同様に、同じ織りパターンを有している。
【0044】
上層又はシートに接触する側の微細な縦糸と、きめの粗い装置側の縦糸とが、垂直な関係において一方が他方の上に積み重ねられているため、つまり、縦糸の各サブシステムにおけるシェドが、一方が他方の上に積み重ねられているため、結果として発生する縫い目ループはファブリック表面の平面に対して垂直であり、如何なる捻れも有していない。従来の織り返し技術において、ループを定める糸は、時としてその糸自身に隣接するスペースにおいてファブリックの中に織り返される。この種の従来のループは本質的に捻れ及び/又はトルクを縫い目ループに与えるが、この捻れは、ファブリックの他端における噛み合わせを困難にし、それにより縫い合わせのプロセスの妨げとなるため、好ましいものではない。
【0045】
加えて、縫い目ループが、微細な上層の縦糸から形成されるため、ファブリックのシートに接触する側には非常に微細な縫い目の面が形成される。その結果、シートへの模様付けが低減されてより高い品質の紙がもたらされる。従って、本発明に従って作られるファブリックは、例えば25〜30gsm、若しくはそれより高い紙等級の製造に用いることができる。
【0046】
図8aは、本発明の他の実施形態に従って構成されるファブリックのための織りパターンを示す。ファブリック50のための第1実施形態と同様に、ファブリック100は縦糸の2つのサブシステムと、横糸またはシュート糸の1つのシステムを備えている。縦糸の両方のサブシステムは、ポリエステル、ポリアミド又は他の如何なる公知高分子樹脂からも作られる平坦で実質的に矩形の糸である。シュート糸は、平坦(実質的に矩形)であっても丸くてもよく、ポリエステル、ポリアミド又は他の如何なる公知高分子樹脂からも作ることができる。シートに接触する側の縦糸又は第1サブシステムの縦糸は微細な糸であり、また、装置側の縦糸又は第2サブシステムの縦糸はきめの粗い幅の広い縦糸である。すなわち、第1サブシステムの実質的に矩形の縦糸は、第2サブシステムの実質的に矩形の粗い縦糸より幅が狭く、その結果として、各サブシステムの縦糸は異なる縦横比を有している。例えば、微細な上層の縦糸の寸法は幅0.58mmに対して高さ0.31mmとなることがあり、きめの粗い装置側の縦糸の寸法は幅1.16mmに対して高さ0.28mmとなることがある。シートに接触する側の縦糸は、第1実施形態について開示したものと同様に、対となっており、各シェド内で並んでおり、装置側の縦糸のシェド内の単一の粗い糸に垂直の関係において積み重ねられている。
【0047】
図8aは、本発明の他の実施形態に従って構成されるファブリック100のための織りパターンを表す。図8aには、縦方向と横方向が示されている。図8aは、ファブリック100の織りパターンの1つの繰り返しを示しており、そこでは、ファブリックのシートに接触する表面上の実質的に矩形の糸である上昇の縦糸1及び2が、シュート糸40,30及び20の上方、及びシュート糸10の下方に織られている。上方の縦糸4及び5は、シュート糸40の上方、シュート糸30の下方、及びシュート糸20及び10の上方で織られている。最後に、この繰り返しにおいては、装置側の縦糸6が、シュート糸40の上方、シュート糸30の下方、及びシュート糸20及び10の上方で織られている。ファブリック50のための第1実施形態とは異なり、この実施形態において、上層の縦糸又はMD糸の対は、「ずらされて」いない。その代わりに、上方の縦糸は単一の糸として一緒に織られており、その結果、対をなす各糸が同じ織りパターンを有している。ファブリック100は、6つのハーネスの繰り返し配列において織られてもよい。或いは、ファブリック100は他のハーネス繰り返し配列で、例えば、4つのハーネスの繰り返し配列で織られてもよい。
【0048】
ファブリックのシート接触側及び装置側における縦糸の充填量を比較して表すために、ファブリックのシート接触側及び装置側の織りデザインを、それぞれ図8b及び8cに示す。例えば、実質的に矩形の最下層の粗い縦糸の幅は、上層の実質的に矩形の微細な縦糸の各々の幅の2倍にほぼ等しい。図8aに示す織りパターンは、上方の縦糸が下方の粗い縦糸に隣接するファブリックの裏側における縫い目領域内の部分を除いて、ファブリック構造の表面全体にわたって見ることができる。ファブリック100のピン縫い目は、ファブリック50のピン縫い目を形成するための上記方法に従って形成される。或いは、ファブリック50及び100は、背景において説明したように、螺旋縫い目を用いて形成することもできる。
【0049】
本発明の、対をなして積み重ねられた織り構造を使用する様々な他の織りパターンは、本発明の技術的範囲内で構成することができる。例えば、用途によっては、4つ以上のCD糸の上方に、MD糸表面フロートを有することが望まれることがある。この種のファブリックは、本発明の開示に従って容易に構成される。
【0050】
図9および10に示すように、本発明の本実施形態によって達成されるシート接触側の面及び縫い目の外形は、ファブリック50のそれと類似している。図10中に見ることができりょうに、裏側の面の中に織り返された微細な装置側の縦糸は、その微細な装置側の縦糸の織りパターンがきめの粗い裏側の糸の織りパターンに類似するように、織られる前に互いに対に纏められる。
【0051】
ファブリック50及び100は、シングル・ラン又は単一層乾燥機セクションで用いることとしても良い。或いは、ファブリック50及び/又は100は、図laに示すような、他の形式の乾燥機セクションで用いることとしてもよい。理解されているように、この種の状況においては、ファブリック99がファブリック50又は100に置き換えられる。
【0052】
加えて、MD糸及びCD糸は、MDとCD糸のナックルが、実質的に同じ平面に置かれるように織り合わされてもよい。この種の配列は、比較的滑らかな表面を提供することができる。或いは、MD糸及びCD糸は、CD糸のナックルがMDのナックルより高い面(又は表面の近く)に置かれるように織り合わされてもよい。特に、本発明に係るファブリックの織りパターンは、モノ・プレーン、ディファレンシャル・プレーン、縦糸ランナー又はシュート・ランナー構造、又はこれらの構造の組み合わせとなることができる。縦糸ランナー構造は裏側上に長い縦糸ナックルを有しており、また、シュート・ランナー構造はファブリックの裏側上に、長いCDフロートを伴うものである。加えて、フェイス側のMD糸は、図4、7、9及び10に示すように隣接することが可能であり、又は、対として、又は全ての糸の間において、間隔を置いて配置することが可能であり、但し、シート側の糸の対を装置側の糸の上方に垂直に重ねる位置は維持したままとなり、装置側の糸には従って間隔が空く。
【0053】
本発明の技術的範囲を超えるように発明を変更することなく、上記を変更する態様は、当業者にとって明らかである。例えば、ファブリック50及び100は、抄紙機の乾燥機セクションにおいて用いるために平織りして無端に結合することとしても良い一方で、ファブリック50及び/又は100は、無端織りによって生産することも可能であり、この場合には、織布のプロセスの間、MD糸が横糸又はシュート糸となり、かつ、CD糸が縦糸となる。以下に続くクレームは、この種の状況をカバーするように解釈されなければならない。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のCD糸を備えるCD糸システムと、
MD糸第1サブシステムとMD糸第2サブシステムとを更に備えるMD糸のシステムであって、前記MD糸第1及び第2サブシステムが互いに垂直に重ねられた関係にあるMD糸システムと、を備え、
前記MD糸第1サブシステムは、少なくとも2つのMD糸を有するシェドを備え、前記MD糸第1サブシステムの前記シェド内の前記少なくとも2つのMD糸は、実質的に類似した縦横比を有し、
前記MD糸第2サブシステムの前記MD糸は、前記MD糸第1サブシステムの中の前記MD糸より大きな縦横比を有し、
前記MD糸第1及び第2サブシステムは、繰り返しの織りパターンにおいて前記CDシステム内の前記CD糸と織り合わされており、
前記MD糸第1サブシステムの前記MD糸だけが縫い目ループを形成している製紙機のファブリック。
【請求項2】
前記MD糸第1サブシステムの前記MD糸は、前記CD糸システム内の少なくとも2つの連続するCD糸の上方に、前記繰り返しパターン内でそれらと織り合わされるときに、浮いている請求項1に記載の製紙機のファブリック。
【請求項3】
前記MD及びCDは、ポリアミド糸、ポリエステル糸、ポリフェニレンサルファイド糸、修正された、熱、加水分解、及び汚染に対して耐性のあるポリエステル糸、ポリ(シクロヘキサンジメチレン・テレフタル酸エステル・イソフタル酸エステル)糸、及びポリエーテルエーテルケトン糸、からなる糸のグループから選択される請求項1に記載の製紙機のファブリック。
【請求項4】
少なくとも前記CD糸のいくつかは、円形の断面形状か実質的に矩形の断面形状を有する単繊維糸である請求項1に記載の製紙機のファブリック。
【請求項5】
前記ファブリックは乾燥機ファブリックである請求項1に記載の製紙機のファブリック。
【請求項6】
前記MD第2サブシステムは、ファブリックの裏側又は装置側に配置される請求項1に記載の製紙機のファブリック。
【請求項7】
前記MD第1サブシステムは、ファブリックのシート接触側に配置される請求項1に記載の製紙機のファブリック。
【請求項8】
前記MD第1サブシステムの前記MD糸は、各シェドの中で横並びの関係で対をなしている請求項1に記載の製紙機のファブリック。
【請求項9】
前記MD糸とCD糸が異なる材質で作られている請求項3に記載の製紙機のファブリック。
【請求項10】
前記MD糸第1サブシステムの前記MD糸の対をなす各糸が、異なる織りパターンを有する請求項8に記載の製紙機のファブリック。
【請求項11】
前記MD糸第1サブシステムの前記MD糸の対をなす各糸が、互いの関係においてずらされている請求項10に記載の製紙機のファブリック。
【請求項12】
前記MD糸第1サブシステムの前記MD糸の対をなす各糸が、同じ織りパターンを伴うものとして織られている請求項8に記載の製紙機のファブリック。
【請求項13】
前記織りパターンは、モノ・プレーン、縦糸ランナー、及びシュート・ランナー構造の一つを形成する請求項1に記載の製紙機のファブリック。
【請求項14】
前記MD糸第2サブシステムの前記MD糸の幾つかは、同じ幅であるが異なる厚みを有する請求項1に記載の製紙機のファブリック。
【請求項15】
前記縫い目は、ピン縫い目であるか螺旋縫い目である請求項1に記載の製紙機のファブリック。
【請求項16】
複数のCD糸を備えるCD糸システムを提供するステップと、
MD糸第1サブシステムとMD糸第2サブシステムとを更に備えるMD糸のシステムであって、前記MD糸第1及び第2サブシステムが互いに垂直に重ねられた関係にあるMD糸システムを提供するステップと、
前記MD糸第1及び第2サブシステムを、繰り返しの織りパターンにおいて前記CDシステムと織り合わすステップと、
前記MD糸第1サブシステムの前記MD糸だけから縫い目ループを形成するステップとを備え、
前記MD糸第1サブシステムは、少なくとも2つのMD糸を有するシェドを備え、前記MD糸第1サブシステムの前記シェド内の前記少なくとも2つのMD糸は、実質的に類似した縦横比を有し、
前記MD糸第2サブシステムの前記MD糸は、前記MD糸第1サブシステムの中の前記MD糸より大きな縦横比を有する製紙機のファブリックの形成方法。
【請求項17】
前記MD糸第1サブシステムの前記MD糸は、前記CD糸システム内の少なくとも2つの連続するCD糸の上方に、前記繰り返しパターン内でそれらと織り合わされるときに、浮いている請求項16に記載の方法。
【請求項18】
前記MD及びCDは、ポリアミド糸、ポリエステル糸、ポリフェニレンサルファイド糸、修正された、熱、加水分解、及び汚染に対して耐性のあるポリエステル糸、ポリ(シクロヘキサンディメチレン・テレフタル酸エステル・イソフタル酸エステル)糸、及びポリエーテルエーテルケトン糸、からなる糸のグループから選択される請求項16に記載の方法。
【請求項19】
少なくとも前記CD糸のいくつかは、円形の断面形状か実質的に矩形の断面形状を有する単繊維糸である請求項16に記載の方法。
【請求項20】
前記ファブリックは乾燥機ファブリックである請求項16に記載の方法。
【請求項21】
前記MD第2サブシステムは、ファブリックの裏側又は装置側に配置される請求項16に記載の方法。
【請求項22】
前記MD第1サブシステムは、ファブリックのシート接触側に配置される請求項16に記載の方法。
【請求項23】
前記MD第1サブシステムの前記MD糸は、各シェドの中で横並びの関係で対をなしている請求項16に記載の方法。
【請求項24】
前記MD糸とCD糸が異なる材質で作られている請求項18に記載の方法。
【請求項25】
前記MD糸第1サブシステムの前記MD糸の対をなす各糸が、異なる織りパターンで織られている請求項23に記載の方法。
【請求項26】
前記MD糸第1サブシステムの前記MD糸の対をなす各糸が、互いの関係においてずらされている請求項25に記載の方法。
【請求項27】
前記MD糸第1サブシステムの前記MD糸の対をなす各糸が、同じ織りパターンを伴うものとして織られている請求項23に記載の方法。
【請求項28】
前記織りパターンは、モノ・プレーン、縦糸ランナー、及びシュート・ランナー構造の一つを形成する請求項16に記載の方法。
【請求項29】
前記MD糸第2サブシステムの前記MD糸の幾つかは、同じ幅であるが異なる厚みを有する請求項16に記載の方法。
【請求項30】
前記縫い目は、ピン縫い目であるか螺旋縫い目である請求項16に記載の方法。
【請求項31】
前記MD第1システムの前記対をなすMD糸は、ファブリックの裏側表面内に織り返される前に互いに対に纏められる請求項23に記載の方法。
【請求項32】
前記MD糸第1サブシステムの前記対に纏められるMD糸は、MD第2サブシステムのMD糸と同じ又は類似した織りパターンで、ファブリックの裏側表面の中に織り返される請求項31に記載の方法。

【図1a】
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【図1b】
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【図2a】
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【図2b】
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【図2c】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7a】
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【図7b】
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【図8a】
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【図8b】
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【図8c】
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【図9】
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【図10】
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【公表番号】特表2009−544864(P2009−544864A)
【公表日】平成21年12月17日(2009.12.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−521751(P2009−521751)
【出願日】平成19年7月10日(2007.7.10)
【国際出願番号】PCT/US2007/015287
【国際公開番号】WO2008/013653
【国際公開日】平成20年1月31日(2008.1.31)
【出願人】(591097414)アルバニー インターナショナル コーポレイション (110)
【氏名又は名称原語表記】ALBANY INTERNATIONAL CORPORATION
【Fターム(参考)】