説明

乾燥納豆食品の製造方法

【課題】製品の生産性および呈味に優れ、その製品の食品加工や調理加工の際の加工適性に優れた乾燥納豆食品の製造方法を提供する。
【解決手段】本発明に係る乾燥納豆食品の製造方法は、納豆菌を接種した蒸し大豆を容器に所定の高さに均して充填し、容器内から蒸し大豆を移動させずに雰囲気温度38〜42℃で10〜20時間の発酵を行い、連続して熟成を行って納豆を製造する納豆製造工程S10と、容器を真空凍結乾燥室に移動し、真空凍結乾燥して凍結乾燥納豆を製造する真空凍結乾燥工程S20と、凍結乾燥納豆に、焙煎機を用いて常圧下、120〜280℃、1〜6分間の加熱処理を施す加熱工程S30とを含むことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、納豆を真空凍結乾燥させた、食品加工や調理加工に用いられ、健康食品としても用いられる乾燥納豆食品の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
乾燥納豆食品は、大豆の糸引納豆(以下、適宜納豆)を乾燥させたもので、そのままあるいは調味等の加工を施して食品加工や調理加工に用いられ、健康食品としても流通している。また、その態様は、納豆粒の形状を生かしたもの、粒同士を所定の形状に固めたもの、粉末状やフレーク状に破砕されたもの等がある。そして、特許文献1には、納豆粒の形状を生かした凍結乾燥納豆の製造方法が記載されている。具体的には、納豆を1hr程風乾して表面の水分をある程度除いてから0℃で軽く凍結することで、一粒ずつほぐし易い状態にして、ほぐしてから真空凍結乾燥を行って凍結乾燥納豆を製造することが記載されている。また、特許文献2には、粉末状の乾燥納豆粉末の製造方法が記載されている。具体的には、納豆を70℃以下の温度で含水量約40%以下に乾燥して乾燥納豆を製造し、次いで、得られた乾燥納豆を微粉砕して乾燥納豆粉末を製造することが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特公昭49−21783号公報
【特許文献2】特開2009−247304号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載された凍結乾燥納豆は、凍結乾燥によって香り、味等が凝縮または増大され、加水時に粘性が増加するため、食品加工や調理加工の際の加工適性が低下すると共に、喫食した際に口の中に納豆臭や粘質物による不快感が生じるため、製品の呈味が低下するという問題がある。
【0005】
特許文献2に記載された乾燥納豆粉末は、加熱乾燥の際に、納豆の粘性によって粒同士が粘着するため、加熱装置内で納豆がダマ状態になり易い。その結果、乾燥状態にばらつきが生じ、製品の生産性および呈味が低下するという問題がある。
【0006】
本発明は前記問題に鑑みてなされたものであり、製品の生産性および呈味に優れ、その製品の食品加工や調理加工の際の加工適性に優れた乾燥納豆食品の製造方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記課題を解決するために、本発明に係る乾燥納豆食品の製造方法は、納豆菌を接種した蒸し大豆を容器に所定の高さに均して充填し、前記容器内から前記蒸し大豆を移動させずに雰囲気温度38〜42℃で10〜20時間の発酵を行い、連続して熟成を行って納豆を製造する納豆製造工程と、前記容器を真空凍結乾燥室に移動し、真空凍結乾燥して凍結乾燥納豆を製造する真空凍結乾燥工程と、前記凍結乾燥納豆に、焙煎機を用いて常圧下、120〜280℃、1〜6分間の加熱処理を施す加熱工程とを含むことを特徴とする。
【0008】
このように、蒸し大豆を所定高さに均して充填し、所定の発酵を行なって納豆を製造し、発酵から真空凍結乾燥までを同じ容器に充填した状態で、容器内から蒸し大豆または納豆を移動させずに処理することで、蒸し大豆の粒の最初の充填状態が保持されて、真空凍結乾燥後は凍結乾燥納豆が確実に一粒ずつにほぐし易く、またその際に粒が割れたり砕けることを減らすことができる。その結果、加熱工程において、凍結乾燥納豆の粒が揃うため、均一に加熱処理される。そして、凍結乾燥納豆は、ポーラスな組織を有するため、粒中心まで平均的に短時間で熱が入る。それによって、加熱工程における生産性が向上する。また、加熱処理を行うことによって、喫食時や加水時の納豆臭が抑制されると共に、粘性の増加が抑制され、納豆由来の豊富なアミノ酸も有しているため、製品の呈味が向上すると共に、食品加工や調理加工の際の加工適性が向上する。さらに、加熱処理を行うことによって、凍結乾燥納豆が適度に炒られるため、製品の香味が高まり、製品の呈味が向上する。
【0009】
本発明に係る乾燥納豆食品の製造方法は、前記真空凍結乾燥工程と前記加熱工程との間に、前記凍結乾燥納豆を所定の大きさに粉砕して乾燥納豆粉末を製造する粉砕工程をさらに含み、かつ、前記加熱工程では、前記乾燥納豆粉末に前記加熱処理を施すことが好ましい。
【0010】
このように、真空凍結乾燥工程と加熱工程との間に粉砕工程を含むことによって、粉末状の乾燥納豆食品が得られるため、食品加工や調理加工の際の加工適性がさらに向上する。
【0011】
本発明に係る乾燥納豆食品の製造方法は、前記加熱工程では、前記乾燥納豆粉末に120〜230℃で1〜6分間の加熱処理を施して浅炒り粉末を製造すると共に、前記乾燥納豆粉末に150〜280℃で1〜6分間の加熱処理を施して深炒り粉末をそれぞれ製造し、かつ、前記加熱工程の後に、前記浅炒り粉末と前記深炒り粉末とを所定の割合で混合する混合工程をさらに含むことが好ましい。
【0012】
このように、浅炒り粉末と深炒り粉末を所定の割合で混合する混合工程を含むことによって、製品の香味が適度に調整されるため、製品の呈味がさらに向上する。
【0013】
本発明に係る乾燥納豆食品の製造方法は、前記加熱工程の後に、前記加熱処理された凍結乾燥納豆を所定の大きさに粉砕して乾燥納豆粉末を製造する粉砕工程をさらに含むことが好ましい。
【0014】
このように、加熱工程の後に凍結乾燥納豆を所定の大きさに粉砕する粉砕工程を含むことによって、粉末状の乾燥納豆食品が得られるため、食品加工や調理加工の際の加工適性がさらに向上する。
【0015】
本発明に係る乾燥納豆食品の製造方法は、前記加熱工程では、前記凍結乾燥納豆に120〜230℃で1〜6分間の加熱処理を施して浅炒り納豆を製造すると共に、前記凍結乾燥納豆に150〜280℃で1〜6分間の加熱処理を施して深炒り納豆をそれぞれ製造し、かつ、前記粉砕工程では、前記浅炒り納豆および前記深炒り納豆を所定の大きさに粉砕して浅炒り粉末および深炒り粉末をそれぞれ製造し、かつ、前記粉砕工程の後に、前記浅炒り粉末と前記深炒り粉末とを所定の割合で混合する混合工程をさらに含むことが好ましい。
【0016】
このように、浅炒り粉末と深炒り粉末とを所定の割合で混合する混合工程を含むことによって、製品の香味が適度に調整されるため、製品の呈味がさらに向上する。
【0017】
本発明に係る乾燥納豆食品の製造方法は、納豆菌を接種した蒸し大豆を容器に所定の高さに均して充填し、前記容器内から前記蒸し大豆を移動させずに雰囲気温度38〜42℃で10〜20時間の発酵を行い、連続して熟成を行って納豆を製造する納豆製造工程と、前記容器を真空凍結乾燥室に移動し、真空凍結乾燥して凍結乾燥納豆を製造する真空凍結乾燥工程と、前記凍結乾燥納豆に、前記真空凍結乾燥工程で用いた真空凍結乾燥機を用いて、減圧下、80〜120℃、4〜8時間の加熱処理を施す加熱工程とを含むことを特徴とする。
【0018】
このように、蒸し大豆を所定高さに均して充填し、所定の発酵を行なって納豆を製造し、発酵から真空凍結乾燥までを同じ容器に充填した状態で、容器内から蒸し大豆または納豆を移動させずに処理することで、蒸し大豆の粒の最初の充填状態が保持されて、真空凍結乾燥後は凍結乾燥納豆が一粒ずつにほぐし易く、またその際に粒が割れたり砕けることを減らすことができる。その結果、加熱工程において、凍結乾燥納豆の粒が揃うため、均一に加熱処理される。そして、凍結乾燥納豆は、ポーラスな組織を有するため、粒中心まで平均的に短時間で熱が入る。それによって、加熱工程における生産性が向上する。また、加熱処理を行うことによって、喫食時や加水時の納豆臭が抑制されると共に、粘性の増加が抑制されるため、製品の呈味が向上すると共に、食品加工や調理加工の際の加工適性が向上する。また、加熱処理を行うことによって、凍結乾燥納豆が適度に炒られるため、製品の香味が高まり、製品の呈味が向上する。さらに、加熱工程が、真空凍結乾燥機を用いて、凍結乾燥納豆に所定条件の加熱処理を施すものであることによって、真空凍結乾燥工程と加熱工程とが同一装置で行われるため、製品の生産性がさらに向上する。
【0019】
本発明に係る乾燥納豆食品の製造方法は、前記加熱工程の後に、前記加熱処理された凍結乾燥納豆を所定の大きさに粉砕して乾燥納豆粉末を製造する粉砕工程をさらに含むことが好ましい。
【0020】
このように、加熱工程の後に凍結乾燥納豆を所定の大きさに粉砕する粉砕工程を含むことによって、粉末状の乾燥納豆食品が得られるため、食品加工や調理加工の際の加工適性がさらに向上する。
【発明の効果】
【0021】
本発明に係る乾燥納豆食品の製造方法によれば、製品の生産性に優れ、新たな旨味および風味が得られる等の優れた呈味を有し、その製品の食品加工や調理加工の際の加工適性に優れると共に、納豆由来のポリグルタミン酸、ポリアミン、イソフラボン、ビタミンK、食物繊維等の栄養成分の損失も少ない乾燥納豆食品を製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明に係る乾燥納豆食品の製造方法のフローチャートである。
【図2】本発明に係る乾燥納豆食品の他の製造方法のフローチャートである。
【図3】本発明に係る乾燥納豆食品の製造方法の充填工程において、大豆の充填の状態を説明する模式図であり、(a)は大豆を均す方法を説明する部分断面斜視図、(b)はシートを敷いた状態を示す斜視図、(c)は断面図である。
【図4】本発明に係る乾燥納豆食品の製造方法の発酵工程〜真空凍結乾燥工程における、大豆または納豆の充填・収納状態を説明する側面図である。
【図5】発酵工程における発酵室および大豆の温度推移を示すグラフであり、(a)は本発明に係る形態、(b)は糸引納豆の製造に係る形態である。
【図6】加熱工程の前に行う凍結乾燥納豆の粒をほぐす作業(分別工程)を説明する側面図である。
【図7】本発明に係る乾燥納豆食品の製造方法の加熱工程で用いられる焙煎機の一例を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明に係る乾燥納豆食品の製造方法について説明する。
図1に示すように、本発明に係る製造方法の第1の実施形態は、大別して、蒸し大豆を納豆に製造する納豆製造工程S10と、得られた納豆を真空凍結乾燥して凍結乾燥納豆を製造する真空凍結乾燥工程S20と、得られた凍結乾燥納豆に焙煎機を用いて加熱処理を施す加熱工程S40とからなる。
【0024】
〔納豆製造工程〕
納豆製造工程S10は、基本的には通常の納豆(糸引納豆)の製造方法と同様に、大豆を蒸煮する蒸煮工程S11、蒸煮された大豆に納豆菌を接種する納豆菌接種工程S12、納豆菌を接種した大豆を容器に充填する充填工程S13、大豆を発酵させる発酵工程S14、および熟成させる熟成工程S15からなる。
【0025】
(蒸煮工程)
蒸煮工程S11は、原料の生の大豆(乾燥大豆)を、十分に水分を含有させて加熱し、粒の中心部まで「火の通った」状態に柔らかくする工程である。詳しくは、原料の大豆を必要に応じて選別(粒の大きさ、疵の有無等)、洗浄し、水に数〜20hr程度浸漬して十分に水を含有させてから、水切りして釜に投入して加熱して蒸煮する。加熱条件(温度、時間等)は大豆の量や粒の大きさ等に応じて設定すればよく、また圧力釜を使用して加熱時間を短縮してもよい。
【0026】
原料の大豆は特に限定されないが、大きさについて、大粒または極大粒(大粒は7.3mm以上8.3mm未満の篩目の篩で、極大粒は8.3mm以上の篩目の篩でふるった際に、70%以上の大豆が篩の上に残る大きさ)のものが好ましい。このような粒が大きい大豆は、充填された状態で隙間の体積が大きいため、発酵工程S14において粒のそれぞれの表面に酸素が行き渡り易く、納豆菌による発酵が好適に進行する。さらに、納豆となった後も、表面における他の粒との接触領域の間隔が空いているので互いの密着性が強くなく、真空凍結乾燥工程S20完了後に、一粒ずつにほぐし易い。また、原料の大豆の粒が大きいと、得られる凍結乾燥大豆の粒も大きくなる。このような大豆の好ましい品種として「つるの子」や「とよまさり」が挙げられる。もちろん、小粒や中粒(小粒は5.8mm以上6.4mm未満の篩目の篩で、中粒は6.4mm以上7.3mm未満の篩目の篩でふるった際に、70%以上の大豆が篩の上に残る大きさ)、引き割り大豆(3.0mm以上6.0mm未満の篩目の篩で70%以上の大豆が篩の上に残る大きさ)でもよく、また品種や産地も限定されず、種類についても黄大豆、白大豆、黒大豆、緑大豆、または赤大豆のいずれでも適用できる。また、発芽大豆を適用してもよい。
【0027】
一般的な糸引納豆においては、粒の柔らかい食感が要求されることが多い。また、納豆は、発酵により大豆のタンパク質等が分解されていったんは柔らかくなるが、発酵が進行すると、水分が蒸発したり、発酵生成物(糸)に水分が移行することで、粒から水分が失われるため、発酵前の蒸し大豆よりも粒が硬くなる傾向がある。具体的には、後記の粒への荷重について、発酵前の1.2〜1.4倍程度の硬さとなる。したがって、糸引納豆を製造するための蒸し大豆は、一般的に、完成後の納豆よりもさらに柔らかくなるように蒸煮され、また、粒の中身だけでなく表皮(種皮)まで十分に柔らかくする。しかし、納豆の柔らかい食感は真空凍結乾燥により消失するので、凍結乾燥納豆用の納豆においては糸引納豆の柔らかさは要求されず、また、表皮の硬さが食感を損ねることもないので表皮を柔らかくする必要がない。さらに、本発明に係る乾燥納豆食品の製造方法においては、後記するように発酵工程S14の時間が短く、水分の減少による硬化が開始する前または硬化が少ないうちに終了させるため、硬さの変化が小さく、あるいは発酵前よりも柔らかい納豆となる場合がある。その結果、一般的な糸引納豆の仕様で蒸煮された大豆では柔らか過ぎて、凍結乾燥納豆としたときに粒が脆く割れ易くなる。また、このような納豆は、水分が多いために凍結乾燥工程S22に時間がかかる。したがって、真空凍結乾燥前の納豆の硬さは糸引納豆と同程度あるいは糸引納豆より硬いことが好ましく、そのために、発酵前の蒸し大豆については糸引納豆用の蒸し大豆に対してさらに硬いことが好ましい。
【0028】
蒸し大豆や納豆の硬さは、レオメータやデジタルフォースゲージを用いて、粒に荷重を漸増させながら加えて、潰れた時点または破断した時点の荷重(応力)にて測定できる。例えばレオメータにて、10mmφのアダプタを粒の中心部に向けて速度6cm/minで押し込んで粒が潰れた時点の荷重で測定する。大豆の品種や粒の大きさにもよるが、品種「つるの子」の極大粒の大豆を蒸し大豆にした場合、本発明においては、120〜160g程度の荷重で潰れる硬さとなるように蒸煮されることが好ましい。一方、糸引納豆を製造するための蒸し大豆は、一般的に50〜110g程度の荷重で潰れる硬さである。なお、蒸し大豆や納豆の硬さは、納豆試験法(納豆試験法研究会、農林水産省食品総合研究所編、「納豆試験法」、株式会社光琳)に準拠する方法でも測定、管理できる。詳しくは、ピークホールド機能付上皿天秤に粒を載置して、指の腹等で押下して、粒が潰れた瞬間の荷重を測定する。
【0029】
このような硬さに大豆を蒸煮するために、圧力釜を使用する場合は、一例として、内部のゲージ圧力1.3〜2.2kg/cm2(約0.13〜0.22MPa)で20〜40分間加熱後、速やかに内部の圧力を開放すればよい。なお、糸引納豆を製造するための蒸煮の条件は、例えばゲージ圧力1.0〜1.5kg/cm2で45〜60分間の加熱である。蒸煮条件については、大豆の品種や粒の大きさ等に応じて、適宜設定すればよい。
【0030】
(納豆菌接種工程)
納豆菌接種工程S12は、蒸煮工程S11で蒸煮された大豆(蒸し大豆)が熱いうちに(80〜95℃)、それぞれの粒の表面にまんべんなく納豆菌を植え付ける工程である。その方法の一例として、納豆菌を水(蒸留水)で希釈したものを、スプレーガンにて蒸し大豆に吹き付ける。本工程S12においては、専用の撹拌用の装置(容器)を設けてもよいが、蒸煮工程S11で使用した釜から充填工程S13で使用する充填機の材料投入口へと蒸し大豆を掻き出しながら、納豆菌を吹き付けてもよい。
【0031】
納豆菌は、例えばバチルスナットウ属に属する菌株や、これら菌株に由来する特定遺伝子を取り込んだ枯草菌が挙げられるが、ポリグルタミン酸(PGA)を産出する酵素産出菌であれば特に制限はない。また、藁に付着する天然の納豆菌が使用されてもよい。
【0032】
(充填工程)
納豆菌接種工程S12が完了したら、速やかに充填工程S13にて、容器1に、納豆菌を接種された蒸し大豆を所定の高さに均して充填する。このとき、時間がかかり過ぎると蒸し大豆に接種された納豆菌による発酵可能な温度域に冷却されて、蒸し大豆表面に粘性の高い発酵生成物が生成して粒同士が付着し易くなって、容器1への充填のような蒸し大豆の移動(移し替え)が困難となる。したがって、充填工程S13は、蒸煮工程S11および納豆菌接種工程S12での大豆の処理速度に適応できるものであれば特に限定されず、例えばスコップで行ってもよいが、計量可能な充填機によることが好ましい。また、所定の高さに均すとは、蒸し大豆の高さ(容器1内に充填された厚さ)を所定の高さの一定に近付けることであり、例えば表面の凹凸が蒸し大豆の粒の大きさ程度までとなるようにする(図3(c)参照)。ただし、充填率(粒の密集の程度)は高くならないようにし、蒸し大豆の粒同士の間に隙間があった方が、発酵(工程S14)や真空凍結乾燥(工程S21,S22)の効率がよいので好ましい。容器1に投入した蒸し大豆を上から押さえ付けて表面の凹凸や内部の空洞を埋めようとすると充填率が高くなるだけでなく、蒸し大豆の粒が潰れたり、他の粒との接触面積が増えて互いの密着性が高くなってしまう。したがって、充填された蒸し大豆は、例えば図3(a)に示すように、表面をへら等で軽く均す程度にすることが好ましい。目安としては、厚さ20〜25mmの範囲で蒸し大豆を充填したとき、平面視50mm×70mm(35cm2)の領域に、引き割り:400〜600粒、小粒:88〜90粒、中粒:60〜65粒、極大粒:30〜35粒が収容されている状態である。
【0033】
容器1に充填される蒸し大豆の層の厚さ(高さ)は30mm以下が好ましい。これは、蒸し大豆の粒を重ねた段数に換算すると、引き割り:7〜10粒以下、小粒:5〜7粒以下、中粒:5〜6粒以下、極大粒:3〜5粒以下に相当する。蒸し大豆の層が厚いと、発酵工程S14において、層の表面から取り込まれる酸素が容器1の底の方に充填されている蒸し大豆の粒の表面に十分に行き渡らなくなって、発酵の進行にムラを生じる虞がある。また、真空凍結乾燥工程S20では、容器1中の納豆の層の中心部において、予備凍結工程S21にて納豆が十分な冷却速度で凍結しなかったり、また次の凍結乾燥工程S22にて納豆の水分が昇華するまでに時間がかかり、水分が完全に除去されるための処理時間を長く要する。なお、蒸し大豆の層の厚さの下限は特に規定しないが、薄すぎると容器1の充填量が少なくなって生産性が低下するため、15mm以上が好ましい。
【0034】
(容器)
ここで、本発明に係る乾燥納豆食品の製造方法に適用される容器1の構成を説明する。容器1の形状は、図3に示すように、上方が開口した箱形状であればよく、内側における高さが、前記の充填工程S13にて充填される蒸し大豆の層の厚さ(高さ)より高ければよい。ただし、容器1の高さがあり過ぎて(深過ぎて)も、蒸し大豆の充填できる厚さには上限があるので、容器1の容積に対する収容量が少なくなって生産性が低下する。一方、底面の大きさ(面積)および形状(平面視形状)は特に規定しないが、発酵工程S14等において容器1を複数収納する際の効率上、長方形等の矩形が好ましい。したがって、容器1は、幅および奥行き(底面積)に対して側面の高さが短い薄型の直方体または上方(開口部)が拡がった四角錐台のいわゆるトレイの形状が好ましい。したがって、本明細書では、容器1は単位を「枚」として記載する。また、特に後記するように容器1が金属製である場合は、底面等の各面に、蒸し大豆の粒に対して十分小さいパンチ孔を形成して、通気性を付与してもよい。さらに、持ち運びを容易とするために、取っ手等を備えてもよい。
【0035】
本発明に係る乾燥納豆食品の製造方法においては、納豆を製造する後記の発酵および熟成(S14,S15)において使用する容器と、真空凍結乾燥(S20)において使用する容器とを共通とすることで、これらの工程間(工程S14〜S20)で容器を共用し、移し替える工程を省略している。そのため、容器1は、真空凍結乾燥工程S20における冷却、特に予備凍結工程S21の急速冷却を妨げないように、断熱性の低い材料からなるものが選択される。すなわち、糸引納豆の小売用容器として一般的に用いられているPSP等は好ましくなく、食品の使い切り容器として広く流通している厚さ1mm以下のラミネート加工された紙製容器やプラスチック(ポリエチレン、ポリプロピレン等)製容器を用いる。
【0036】
あるいは、容器1は、真空凍結乾燥工程S20における冷却が効率的に行われるように、特に予備凍結工程S21にて急速冷却されるように、熱伝導性のよい金属製とすることが好ましい。また、強度が高いため、容器1を大型化して(幅および奥行きを長くして)容積を大きくすることができ、また繰り返し使用が可能である。金属の中でも特に熱伝導性に優れて軽量なアルミニウム合金製が好ましく、このような金属製の容器1は、例えば一般または食品加工業向けに流通している、表面にアルマイト処理を施したアルミニウム合金製容器が好適に使用され、特に、真空凍結乾燥工程S20で適用する真空凍結乾燥室(真空凍結乾燥機)に使用される専用容器を流用することが好ましい。
【0037】
金属製の容器1は、通気性を有するシート2(以下、適宜シート)を内側に敷いて使用してもよい。シート2を敷いた上に蒸し大豆を充填すれば、真空凍結乾燥工程S20の完了後に容器1から凍結乾燥大豆を容易に取り出せる。また、容器1の内側表面の汚れが少なく、製造完了後に次の蒸し大豆を充填する前の洗浄が簡易化できる。シート2は、容器1から蒸し大豆(納豆)への熱伝導を妨げないように十分に薄く、1回使用後の処分が可能な安価なものが好ましく、例えば、食品の包装用として広く流通している厚さ0.01mm程度のショーレックス(中低圧法高密度ポリエチレン)製のシートに、通気用の多数の孔(図3(c)参照)を空けたものが適用できる。通気用の孔は、円形等に打ち抜いても切込みだけでもよいが、蒸し大豆の粒に対して十分小さい孔とする。図3(b)に示すように、通気性を有するシート2は、容器1の底面の大きさに対して十分に大きいサイズに裁断されたものとして、充填工程S13にて蒸し大豆を充填した後、シート2の余った部分で蒸し大豆の表面を覆って使用してもよい。
【0038】
(発酵工程)
発酵工程S14は、納豆菌を接種された蒸し大豆を、その納豆菌を活性化させることで発酵を促進させる工程である。具体的には、温度および湿度を一定に管理可能な処理室(発酵室)に、新鮮な空気(酸素)を取り込んで、蒸し大豆を充填された容器1を所定時間安置する。発酵室は、温度等の管理手段の他、ファン等による送風手段を備えて酸素濃度や温度の均一な空気を効率的に容器1の周囲に行き渡らせるようにしてもよい。発酵の方法は納豆の製造における公知のもので特に限定されないが、発酵室内の温度すなわち雰囲気温度(室温)は38〜42℃の範囲における所定温度、湿度は90%程度に設定し、処理時間(発酵時間)は蒸し大豆の粒の大きさや充填状態、また発酵室の仕様等により異なるが、10〜20hrの範囲で調整する。
【0039】
また、発酵室の処理能力(容積)および発酵時間から、蒸し大豆を充填された容器1(以下、単に容器1という)を複数枚、発酵室に収納して、同時に発酵、さらに熟成させる(熟成工程S15)バッチ処理が好ましい。ただし、容器1同士で納豆菌接種工程S12の完了からの経過時間が大きく異なると、発酵の程度に差が生じ、また発酵工程開始までに時間をかけると蒸し大豆が発酵に好適な温度よりも冷めてしまうので、納豆菌接種工程S12からの進行に応じて同時に発酵工程S14を行う容器1の枚数を設定する。本実施形態においては、作業性よく多数の容器1を発酵室に収納可能とするために、図4に示すように複数枚の容器1を棚状に上下の間隔を空けて積み重ねて搭載(収納)可能な台車10を適用する。垂直方向に重ねた容器1,1の間隔、すなわち下に搭載された容器1に充填された蒸し大豆の層の表面から、上に搭載された容器1の底面までの間隔を十分に空けることで、容器1に充填された蒸し大豆の層の内部へ表面から酸素が十分に取り込まれる。具体的には、容器1に充填された蒸し大豆の表面から高さ20mm以上の空間があることが好ましい。ただし、この高さの空間を確保していても、蒸し大豆の層の厚さに対して容器1の高さ(深さ)が大きい場合等、容器1,1の間隔が狭いと、蒸し大豆の上の空間への通気口が、容器1の側面に塞がれる形で狭くなって酸素の取り込み効率が低下する。なお、容器1に充填された蒸し大豆の層の表面の上の間隔の上限は特に規定しないが、50mmを超えても効果が飽和し、また、間隔を広くするほど一度にバッチ処理できる量が少なくなるので、後記するように、台車10の仕様に応じて容器1を搭載する。
【0040】
図4に示すように、本実施形態において、台車10は、台車部分の上に、水平方向(図4の手前−奥方向)に延設された、金属製の容器1をその底部で支持するための断面形状L字型の枠を、上下に一定の間隔を空けて支柱に取り付けられて備える構成である。なお、台車10に備えられた枠の上下の間隔により、搭載される容器1,1の間隔が小さくなる場合は、発酵工程S14においては図4に実線で示すように、枠の1〜数段おき(図4は1段おき)に容器1を搭載することで、容器1の上下の間隔を十分に空けて搭載することができる。さらに、図4に示すように、容器1を水平方向に複数枚(図4では2枚)ずつ搭載できるような台車であれば、容器1同士が水平方向で隣り合わないように段違いに搭載して側面の間隔も空けることが好ましい。また単に容器1の搬送を行う場合は、間隔を空けずに多数の容器1を搭載して(図4に破線で示す)、効率的に搬送できる。また、台車10は、枠に代えて、容器1を載置する棚板を備えてもよい。特に容器1が紙製やプラスチック製である場合は、その底面全体を支持できる棚板とすることが好ましい。このような構成の台車10を、特に真空凍結乾燥工程S20にも使用する場合は、棚板を熱伝導性のよい金属製とすることが好ましい。
【0041】
ここで、本発明に係る乾燥納豆食品の製造方法における発酵工程での納豆菌の活動について説明する。一般的な大豆(納豆)の発酵において、納豆菌の活動は次のように進行する。納豆菌は、通常、40〜45℃にて2hr以内に発芽し、この発芽温度となってから8hr程度までを誘導期として発芽、増殖し、さらに4hr程度の対数期で著しく分裂、増殖する。この納豆菌の活動により、大豆のタンパク質や糖質が分解されて消化吸収され易い性質に変化し、またポリグルタミン酸等のアミノ酸やナットウキナーゼのような酵素を生成する。納豆菌が最大まで増殖して大豆から得る栄養が欠乏すると増殖が停止し、次の定常期でポリグルタミン酸、すなわち発酵生成物(糸)を生成する。そのため、糸引納豆として十分な糸の引き具合を要求される場合は、定常期において十分な時間、例えば4〜6hr程度、発酵開始からの経過時間にして15〜20hr程度まで納豆菌を活動させて、十分な量の発酵生成物を得る。なお、さらに発酵が進行すると、アミノ酸が分解されてアンモニアが生成する、いわゆる過発酵に至るため、その前に室温を下げて大豆(納豆)を強制冷却することにより納豆菌を活動停止に(休眠)させて、さらに後続の熟成工程に好適な温度、すなわち5〜2℃まで冷却する。しかし、乾燥納豆食品用の納豆については、発酵生成物が多いと、納豆の粒と粒の隙間を埋めるように発酵生成物が介在し、粒同士の密着性が増大する。また、粒の表面に発酵生成物が厚い膜を形成しても、真空凍結乾燥されると粒から剥離し易く、却ってポリグルタミン酸のような栄養成分が失われるため、凍結乾燥納豆においては、発酵生成物は糸引納豆ほど多量には要しない。したがって、本発明に係る乾燥納豆食品の製造方法においては、発酵を、納豆の粒の成分(タンパク質等)は糸引納豆と同程度に変化し、かつ発酵生成物の少ない、納豆菌の定常期における初期〜前半程度で終了させる。すなわち発酵工程の時間を12〜14hrとすることが好ましい。なお、本発明において、発酵工程の時間(発酵時間)は、発酵室にて、蒸し大豆の発酵が開始してから室温を常温を超える温度に制御しているまでの時間を指す。また、本発明においては、過発酵を除外するものではなく、過発酵状態の納豆であってもよい。
【0042】
納豆菌の増殖に好適な温度は38〜42℃であり、室温を例えば40℃に設定すれば、誘導期完了までは蒸し大豆の温度(品温)も前記適温である同程度の温度に保持されるが、対数期における納豆菌の急激な増殖およびその活動に伴い、室温を誘導期と同じ40℃に保持していても、品温は上昇して40℃よりも高くなる。具体的には、図5(b)に示すように、一般的な糸引納豆のようにPSP製容器に充填された蒸し大豆を、室温を40℃に保持して発酵させた場合、品温は、対数期において50℃程度まで上昇し、定常期にはほぼ一定となる。なお、断熱性の高いPSP製容器に充填されている場合は、室温の切替えによる品温の温度変化は緩やかなものとなる。したがって、発酵(定常期)完了時まで品温が50℃であっては、速やかに品温が冷却されて納豆菌を休眠させることができず、過発酵となるため、図5(b)においては、定常期の中盤から終盤にかけて室温を段階的に数℃下げて(予冷)、納豆菌の活動を抑制しない程度に品温を下げている。
【0043】
一方、本発明においては、容器1を熱伝導性に優れた金属製として蒸し大豆の層の厚さを抑える等により、充填された蒸し大豆は、その全体に熱が行き渡り易い構成となっている。そのため、図5(a)に示すように、誘導期の終盤に相当する6hr経過時から品温が上昇し始め、さらに対数期における品温の上昇速度は速く、室温を40℃に保持したままでは破線で示すように品温が高くなり過ぎて、大豆(納豆)に熱焼を生じて変質し、また納豆菌の活動が抑制される。そこで、本発明においては、7〜11hr経過時の対数期における品温の上昇に対応して室温を2〜5℃下げることにより、品温の推移が糸引納豆の発酵における温度範囲と同等になるように制御する。室温の温度切替えは、品温のピークが58℃を超えないで推移するように、発酵室の仕様や蒸し大豆の充填状態等に応じて設定すればよく、特に規定しないが、例えば対数期開始直後の発酵時間8.5hr経過時に2℃、さらに納豆菌の増殖のピークとなる10hr経過時に2℃、と段階的に室温を下げてもよい(図5(a)参照)。あるいは室温を所定の降下速度で漸減させる設定としてもよい。さらに、納豆菌が活発に活動している定常期の初期〜前半で発酵を打ち切ることから、品温が速やかに冷却されるように、PSP製容器による糸引納豆の製造と同様に、発酵終了時の1〜2hr前にさらに数℃室温を下げることで発酵を抑制しない程度に品温を下げてもよい(予冷)。予冷については、発酵室の冷却能力や蒸し大豆の収納量等に応じて設定、実施すればよく、例えば図5(a)においては、発酵時間12hr経過時に6℃下げて室温を30℃としている。
【0044】
また、納豆の製造において、発酵は、蒸し大豆の蒸煮による高温の予熱により開始し、詳しくは、納豆菌を接種された高温の蒸し大豆が放熱により45℃程度まで冷却されて発芽温度域に到達した時点から誘導期が開始する。断熱性の高いPSP製容器を用いた場合は、45℃程度の蒸し大豆を発酵室に収納した時の室温を常温(25℃程度)として、それから0.5hr程度かけて発芽・増殖温度(40℃)まで上昇させることで、品温が40℃程度まで降下(冷却)し、そのまま室温の40℃近傍を保持する。しかしながら、本発明においては品温の冷却速度も速いため、このような室温設定では、図5(a)に破線で示すように、室温が上昇するまでに品温が低くなり過ぎて発芽温度域を下回る虞がある。そのため、例えば予め室温を40℃とした発酵室に蒸し大豆を収納することで、いったん発酵室が開放されて室温が数℃だけ降下するようにすることで、品温が40℃程度に降下するまでに室温も40℃に回復しているようにすることが好ましい。このように、本発明に係る乾燥納豆食品の製造方法においては、糸引納豆と同様に、発酵工程における品温が納豆としての品質を決定するので、容器1に充填された蒸し大豆の層に温度センサ(温度計)を差し込む等して設置し、品温の推移を観測しながら室温を制御することが好ましい。あるいは、温度センサにて所定の温度を検知したら、室温を切り替えるような自動制御機能を発酵室に備えてもよい。
【0045】
発酵におけるそれ以外の条件については、一般的な糸引納豆の製造方法を適用でき、前処理として、容器1に充填された蒸し大豆を低酸素雰囲気に1〜数hr安置した後、酸素を供給して発酵させてもよい。詳しくは、前記発酵条件と同程度の室温(38〜42℃)および湿度に設定した発酵室に、台車10に搭載された容器1(蒸し大豆)を搬入して、品温が発芽温度域まで冷却される前に発酵室内に二酸化炭素を充満させる。二酸化炭素雰囲気(低酸素雰囲気)で室温(品温)および湿度を適切な条件とすることで、納豆菌は発芽せずに胞子を形成する。所定時間経過後、酸素(外気)の供給開始と共に、十分に増えた胞子がいっせいに発芽し、さらに増殖する。このような前処理を行うことで発酵開始(発芽)前から胞子を増やしておけるので、対数期にはさらに納豆菌が増殖して、最終的に十分な菌数を得られる。
【0046】
(熟成工程)
熟成工程S15は、発酵工程S14における所定時間の経過後、発酵した大豆(熟成前の納豆)を、容器1に充填したまま、さらに台車10に搭載された状態で冷蔵室に移送して、納豆菌の休眠状態を維持し、かつ雑菌が繁殖しない室温2〜5℃で、30〜48hr程度安置して熟成させて、納豆とする工程である。なお、発酵した大豆を発酵室に安置したまま、室温を前記熟成温度に降下させて熟成することもできる。発酵した大豆は、容器1に厚さを抑えてかつ均一に充填されているので、発酵工程S14の完了後、速やかに冷却されて発酵の進行が停止し、発酵ムラの少ない納豆が得られる。
【0047】
このようにして製造された納豆は、一般的な糸引納豆よりも発酵生成物(糸)が少ないものとなる。さらに前記の蒸し大豆と同じ品種「つるの子」の極大粒について同様にレオメータにて測定した場合に、粒が110〜150g程度の荷重で潰れる硬さとなる。これは、発酵前と同等の硬さあるいは0.9倍程度の硬さに柔らかくなったものであり、一般的な糸引納豆の硬さ(荷重)70〜140g程度と比較して同程度または硬いものとなる。納豆は、容器1に充填されたまま、次の真空凍結乾燥工程S20のための処理室(真空凍結乾燥室)に移送される。その際、前記熟成温度を保持可能な冷蔵車等で異なる工場間(例えば納豆の製造工場と凍結乾燥食品の製造工場)で移送してもよく、この移送時間を熟成工程S15に充ててもよい。また、移送前(発酵工程S14完了後)には、凍結乾燥用の納豆としての検査を実施してもよい。検査は、例えば抜き取りによる官能検査で、糸引納豆と同様に色、におい、硬さ、味、粉のかぶり具合、糸の引き具合を評価する。
【0048】
〔真空凍結乾燥工程〕
真空凍結乾燥工程S20は、納豆を急速冷却して凍結させる予備凍結工程S21と、減圧して凍結した納豆の水分を昇華させて除去する凍結乾燥工程S22からなる。真空凍結乾燥工程S20は、公知の真空凍結乾燥法を適用でき、前記の通り、予備凍結工程S21と、凍結乾燥工程S22を連続して行う。このような処理工程S21,S22は、通常、冷凍設備、減圧設備(真空ポンプ)、水分(氷)の昇華を促進する加熱手段、およびコールドトラップを備えた密閉可能な公知の真空凍結乾燥処理用の処理室(真空凍結乾燥室、真空凍結乾燥機)で一貫して行われる。あるいは、急速冷凍可能な冷凍設備のみ備えた予備凍結室と、扉を隔てて、減圧設備、加熱手段、およびコールドトラップを備えた密閉可能な凍結乾燥室の、連続処理の可能な2室で構成された真空凍結乾燥機でもよい。また、これらの処理室にも、発酵室と同様に送風手段を備えて冷気を効率的に容器1の周囲に行き渡らせるようにすることが好ましい。そして、本実施形態において、これらの工程S21,S22は、被処理体の納豆が、発酵、熟成工程S14,S15から引き続き、容器1に充填、さらに台車10に搭載されたまま、真空凍結乾燥室に移送されて行われる。なお、台車10の枠または棚板の上下の間隔が短い場合は、発酵工程S14と同様に、容器1を1〜数段おきに搭載して、上下の間隔を空けるようにしてもよい(図4参照)。容器1,1の間隔を空けることで、予備凍結工程S21において、冷気の容器1の上下への回り込みがよくなって冷却効率が向上する。
【0049】
(予備凍結工程)
予備凍結工程S21では、納豆を−20〜−40℃の低温に急速に冷却して凍結する。このとき、冷却速度が遅いと、納豆の粒の中の水分が大きな氷の結晶となって納豆の組織を破壊し、栄養成分が失われたり好ましい食感が得られない。納豆の冷却速度は0.7〜1.0℃/minとなることが好ましく、特に容器1内に充填された納豆の中心部においてもこのような冷却速度になるように真空凍結乾燥室の温度設定を制御するか、前記の納豆製造工程S10における充填工程S13にて納豆の層の厚さを調整する。納豆が熱伝導性のよい容器1内に所定の厚さで均一に充填され、さらに容器1が上下の間隔を空けて載置された状態であるので、冷気が容器1の外側全体に回り込んで当該容器1内の納豆が急速に冷却され、短時間で納豆が層の中心部まで完全に凍結される。また、容器1が金属製である場合は、容器1自体が冷却されてその熱(冷気)によって、さらに短時間で納豆が完全に凍結される。
【0050】
(凍結乾燥工程)
そして、すべての納豆が完全に凍結した後、すなわち予備凍結工程S21の完了後、連続して凍結乾燥工程S22を行う。納豆の凍結状態を保持したまま、真空凍結乾燥室内を真空ポンプで排気して13.3〜333.2Pa(0.1〜2.5Torr)に減圧する。減圧雰囲気となることで、凍結された納豆に含有される水分(氷)が昇華して、納豆から分離されてコールドトラップに集められる。また、減圧雰囲気下で、加熱手段により緩やかに昇温することで水分の昇華を促進させてもよい。納豆が容器1に所定の厚さで均一に充填され、さらに容器1が上下の間隔を空けて載置された状態であるので、納豆の層の表面における減圧雰囲気が均一となり易く、さらに層の底部まで早期に減圧されて納豆の水分が昇華し易く、さらに気化した水分の逃げ口として納豆の層の表面上の空間が十分に確保されているので、水分が納豆から分離され易く、20〜24hr程度で容器1に充填された納豆の層の底部まで完全に水分が除去される。
【0051】
すべての納豆から水分が完全に除去されたら凍結乾燥工程S22を完了して、真空凍結乾燥室内の減圧雰囲気を開放して常圧に戻し、また、加熱手段により温度も常温近傍まで上昇する。以上の工程を行うことにより、凍結乾燥納豆が製造される。得られた凍結乾燥納豆は、容器1から取り出し(シート2を敷いた場合はシート2ごと取り出せる)、図6に示すように凍結乾燥納豆の粒の大きさに応じた篩目31aの粗さの篩31で揺する等による軽い衝撃で、容易に一粒ずつ分離される。その後、凍結乾燥納豆は、例えば粒の形状が要求される場合は篩目32aの細かい篩32等で割れた破片や粉末を取り除く分別工程S23を行ってもよい。
【0052】
〔加熱工程〕
加熱工程S40は、焙煎機を用いて、凍結乾燥納豆に常圧下、120〜280℃、1〜6分間の加熱処理を施す工程である。ここで、120〜280℃は品温であることが好ましい。加熱工程S40を行なうことによって、凍結乾燥納豆に香味が付与された乾燥納豆食品(製品)が得られる。
【0053】
焙煎機は、従来公知に焙煎機を用い、その構成は特に限定されるものではないが、例えば、以下に示すようなドラム型の焙煎機を用いる。図7に示すように、焙煎機40は、表面に多数の空孔41aが形成され、投入口41cから内部に凍結乾燥納豆または後記する乾燥納豆粉末を収納する円筒状のドラム41と、そのドラム41を回転させるモータ42と、モータ42によって回転するドラム41を加熱する加熱手段(図示せず)とを備える。また、空孔41aは、その径がドラム41の内側に向って細く(細径)になっているものが好ましい。そして、焙煎機40は、加熱方法によって直火式、半熱風式、熱風式の3つに分類される。直火式は、加熱手段としてバーナーの炎を用い、ドラムの外表面を直接加熱する構造となっているものである。半熱風式は、加熱手段としてバーナーの炎を用い、直火式と基本的な構造は変わらないが、ドラムの外側に遮炎用筒または遮炎用板41bを備え、炎が直接ドラムに当たらない構造となっているものである。熱風式は、加熱手段として熱した空気(熱風)を用い、熱風を強制的にドラム41の中に送り込む構造となっているものである。また、半熱風式では、加熱手段としてバーナーの炎ではなく遠赤外線を用いてもよい。なお、焙煎機40は、図示しないが、ドラム41を冷却する冷却器と、ドラム41で発生する煙を強制的に排煙する排煙装置とをさらに備えてもよい。また、排煙装置は、排煙機能に加えて集塵機能を有するものが好ましい。そして、品温が120〜280℃になるように、ドラム表面温度を調整する。
【0054】
加熱工程S40は、その加熱条件としての加熱温度が120℃未満、または、加熱時間が1分間未満である場合には、凍結乾燥納豆の加熱処理が不十分であるため、製造される製品の香味が不十分となる。また、加熱温度が280℃超え、または、加熱時間が6分間超えの場合には、加熱処理が過剰となるため、製品が苦味の強いものとなる。したがって、加熱工程S40の加熱処理は、120〜280℃、1〜6分間行う。また、用途目的によっては、例えば、130〜200℃、1〜2分間のすばやい加熱処理を行う場合には、熱風式の加熱手段を用いることが好ましい。なお、加熱処理は、焙煎機40を用いるため、常圧下で行う。
【0055】
加熱工程S40では、製品の香味を喫食者の好みに合わせるために、加熱条件を調整することが好ましい。具体的には、香味によって製品を浅炒り納豆と深炒り納豆に区別し、香味の弱い製品(浅炒り納豆)を製造するためには、凍結乾燥納豆に120〜230℃、1〜6分間の加熱処理を施す。また、香味の強い製品(深炒り納豆)を製造するためには、凍結乾燥納豆に150〜280℃、1〜6分間の加熱処理を施す。
【0056】
このような本発明に係る凍結乾燥納豆の製造方法により、真空凍結乾燥後は凍結乾燥納豆が一粒ずつにほぐし易く、またその際に粒が割れたり砕けることを減らすことができる。その結果、加熱工程において、凍結乾燥納豆の粒が揃うため、均一に加熱処理される。そして、凍結乾燥納豆は、ポーラスな組織を有するため、粒中心まで平均的に短時間で熱が入る。それによって、加熱工程における生産性が向上する。また、加熱処理を行うことによって、納豆臭が抑制されると共に、喫食時や加水時の粘性の増加が抑制されるため、製品の呈味が向上すると共に、食品加工や調理加工の際の加工適性が向上する。さらに、加熱処理を行うことによって、凍結乾燥納豆が適度に炒られるため、製品の香味が高まり、製品の呈味が向上する。そして、第1の実施形態での最終製品は、加熱工程S40を経て製造された納豆粒の形状を保持した粒状の納豆加熱製品である。
【0057】
図1に示すように、本発明に係る製造方法の第2の実施形態は、第1の実施形態の製造工程(納豆製造工程S10、真空凍結乾燥工程S20、加熱工程S40)に加えて、真空凍結乾燥工程S20と加熱工程S40との間に粉砕工程S30をさらに含むものである。粉砕工程S30を含むことによって、粉末状の乾燥納豆食品(乾燥納豆粉末)を製造することができ、食品加工や調理加工の際の加工適性がさらに向上する。納豆製造工程S10、真空凍結乾燥工程S20は、第1の実施形態と同様であるので、説明を省略する。
【0058】
(粉砕工程)
粉砕工程S30は、真空凍結乾燥工程S20で製造された凍結乾燥納豆を所定の大きさに粉砕して乾燥納豆粉末を製造する工程である。ここで、乾燥納豆粉末の大きさは、特に限定されるものではないが、喫食者の好みに合わせて用途別に16〜400メッシュの範囲内で設定することが好ましい。また、粉砕に使用する粉砕機は、従来公知の粉砕機を使用する。なお、蒸し大豆として引き割り大豆を使用し、大豆の形態で前記粉末の大きさを満足している場合には、粉砕工程S30を行わなくてもよい。
【0059】
なお、第2の実施形態の加熱工程S40は、前記粉砕工程S30の後に行い、凍結乾燥納豆を粉砕した乾燥納豆粉末で行う以外は、第1の実施形態の加熱工程S40と同様であるので、説明は省略する。なお、加熱処理工程S40において、用途目的によっては、例えば、130〜200℃、1〜2分間のすばやい加熱処理を行う場合には、熱風式の加熱手段を用いることが好ましい。そして、第2の実施形態での最終製品は、粉砕工程S30、加熱工程S40を経て製造された粉末状の納豆加熱製品である。
【0060】
本発明に係る製造方法の第3の実施形態は、第2の実施形態の製造工程に加えて、混合工程S50をさらに含むものである。混合工程S50を含むことによって、喫食者の香味の好みに合わせた乾燥納豆粉末を製造することができる。納豆製造工程S10、真空凍結乾燥工程S20は、第1の実施形態と同様、粉砕工程S30は第2の実施形態と同様であるので、説明は省略する。
【0061】
第3の実施形態の加熱工程S40は、前記粉砕工程S30の後に行い、香味によって区別される浅炒り粉末と深炒り粉末とを製造する。そして、乾燥納豆粉末に120〜230℃で1〜6分間の加熱処理を施して香味の弱い浅炒り粉末を製造すると共に、乾燥納豆粉末に150〜280℃で1〜6分間の加熱処理を施して香味の強い深炒り粉末を製造すること以外は、第1の実施形態と同様であるので、説明を省略する。
【0062】
(混合工程)
混合工程S50は、前記加熱工程S40で製造された浅炒り粉末と深炒り粉末とを所定の割合で混合する工程である。ここで、浅炒り粉末と深炒り粉末との混合割合は、特に限定されるものではないが、喫食者の好みに合わせて、浅炒り粉末:深炒り粉末=10:90〜60:40(質量比)の範囲内で設定することが好ましく、浅炒り粉末:深炒り粉末=30:70がさらに好ましい。また、混合に使用する混合装置は、従来公知の混合機を使用する。なお、混合工程S50の後に、従来公知の顆粒方法(装置)で製品(混合粉末)の顆粒化を行ってもよい。
【0063】
混合工程S50では、浅炒り粉末と深炒り粉末の混合に加えて、きな粉、チーズ粉末、前記真空凍結乾燥工程S20(分別工程S23)で取り除かれた凍結乾燥納豆の割れた破片や粉末、第2の実施形態において粉砕工程S30の後の加熱工程S40を行なわないで製品化した高ポリアミン、高繊維であって、ビタミンKおよびビタミンKを多量に含有する納豆粉末パウダー、発酵乳製品粉末等を所定量混合してもよい。前記物質の混合によって、製品(乾燥納豆食品)の呈味がさらに向上するとともに、食品加工や調理加工の際の加工適性がさらに向上する。そして、第3の実施形態での最終製品は、粉砕工程S30、加熱工程S40、混合工程S50を経て製造された混合粉末状または混合顆粒状の納豆加熱製品である。
【0064】
図2に示すように、本発明に係る製造方法の第4の実施形態は、第1の実施形態の製造工程に加えて、加熱工程S40の後に粉砕工程S30をさらに含むものである。粉砕工程S30を含むことによって、粉末状の乾燥納豆食品(乾燥納豆粉末)を製造することができ、食品加工や調理加工の際の加工適性がさらに向上する。納豆製造工程S10、真空凍結乾燥工程S20、加熱工程S40は、第1の実施形態と同様であるので、説明を省略する。
【0065】
第4の実施形態の粉砕工程S30は、前記加熱工程S40の後に行い、加熱処理された凍結乾燥納豆を粉砕すること以外は、第2の実施形態の粉砕工程S30と同様であるので、説明は省略する。なお、粉砕工程S30の後に、従来公知の顆粒方法(装置)で製品(乾燥納豆粉末)の顆粒化を行ってもよい。そして、第4の実施形態での最終製品は、加熱工程S40、粉砕工程S30を経て製造された粉末状または顆粒状の納豆加熱製品である。
【0066】
本発明に係る製造方法の第5の実施形態は、第4の実施形態の製造工程に加えて、混合工程S50をさらに含むものである。混合工程S50を含むことによって、喫食者の香味の好みに合わせた乾燥納豆粉末を製造することができる。納豆製造工程S10、真空凍結乾燥工程S20は、第1の実施形態と同様であるので、説明は省略する。
【0067】
第5の実施形態の加熱工程S40は、前記真空凍結乾燥工程S20の後に行い、凍結乾燥納豆に120〜230℃で1〜6分間の加熱処理を施して香味の弱い浅炒り納豆を製造すると共に、凍結乾燥納豆に150〜280℃で1〜6分間の加熱処理を施して香味の強い深炒り納豆を製造すること以外は、第1の実施形態と同様であるので、説明を省略する。
【0068】
第5の実施形態の粉砕工程S30は、前記加熱工程S40の後に行い、浅炒り納豆および深炒り納豆を所定の大きさに粉砕すること以外は、第2の実施形態と同様であるので、説明は省略する。
【0069】
第5の実施形態の混合工程S50は、第3実施形態の混合工程S50と同様であるので説明は省略する。なお、混合工程S50の後に、従来公知の顆粒方法(装置)で製品(混合粉末)の顆粒化を行ってもよい。そして、第5の実施形態での最終製品は、加熱工程S40、粉砕工程S30、混合工程S50を経て製造された混合粉末状または混合顆粒状の納豆加熱製品である。
【0070】
図1に示すように、本発明に係る製造方法の第6の実施形態は、第1の実施形態の製造方法において、加熱工程S40を、前記真空凍結乾燥工程S20で用いた真空凍結乾燥機を用いて、凍結乾燥納豆に減圧下、80〜120℃、4〜8時間の加熱処理を施す工程とするものである。納豆製造工程S10、真空凍結乾燥工程S20は、第1の実施形態と同様であるので、説明を省略する。
【0071】
このような加熱工程S40を行なうことによって、製品の香味が向上すると共に、真空凍結乾燥工程S20と加熱工程S40とが同一の真空凍結乾燥機で行われるため、凍結乾燥納豆の加熱装置への搬送および移し替えが省略でき、製品の生産性がさらに向上する。なお、製品の製造を24時間で終了する場合には、前記真空凍結乾燥工程S20を15〜18時間で終了することが好ましい。
【0072】
加熱工程S40は、その加熱条件としての加熱温度が80℃未満、または、加熱時間が4時間未満である場合には、凍結乾燥納豆の加熱処理が不十分であるため、製造される製品の香味が不十分となる。また、加熱温度が120℃超え、または、加熱時間が8時間超えの場合には、加熱処理が過剰となるため、製品が苦味の強いものとなる。したがって、加熱工程S40の加熱処理は、80〜120℃、4〜8時間行う。なお、加熱処理は、真空凍結乾燥機を用いるため、減圧(13.3〜333.2Pa(0.1〜2.5Torr))下で行う。そして、第6の実施形態での最終製品は、加熱工程S40を経て製造された粒状の納豆加熱製品である。
【0073】
図2に示すように、本発明に係る製造方法の第7実施形態は、第6の実施形態の製造工程に加えて、加熱工程S40の後に粉砕工程S30をさらに含むものである。粉砕工程S30を含むことによって、粉末状の乾燥納豆食品(乾燥納豆粉末)を製造することができ、食品加工や調理加工の際の加工適性がさらに向上する。納豆製造工程S10、真空凍結乾燥工程S20、加熱工程S40は、第1の実施形態と同様であるので、説明を省略する。
【0074】
第7の実施形態の粉砕工程S30は、前記加熱工程S40の後に行い、加熱処理された凍結乾燥納豆を粉砕する工程で、第4の実施形態の粉砕工程S30と同様であるので、説明は省略する。なお、粉砕工程S30の後に、従来公知の顆粒方法(装置)で製品(乾燥納豆粉末)の顆粒化を行ってもよい。そして、第7の実施形態での最終製品は、加熱工程S40、粉砕工程S30を経て製造された粉末状または顆粒状の納豆加熱製品である。
【0075】
第7の実施形態において、前記粉砕工程S30は、前記加熱工程S40の前に行ってもよい。具体的には、真空凍結乾燥機で製造された凍結乾燥納豆を粉砕機で粉砕して乾燥納豆粉末とし、その乾燥納豆粉末を真空凍結乾燥機の内部に戻し、真空凍結乾燥機を用いて加熱処理を行ってもよい。
【0076】
第7の実施形態は、前記粉砕工程S30に加えて、前記混合工程S50をさらに含んでもよい。そして、粉砕工程S30で粉砕する浅炒り納豆または深炒り納豆は、前記加熱工程S40において、加熱温度(80〜120℃)および加熱時間(4〜8時間)は同様で、真空凍結乾燥機の台車10に収容される容器1内に充填される納豆の量を調整することによって製造される。また、混合工程S50は、第5の実施形態の混合工程S50と同様であるので、説明を省略する。なお、混合工程S50の後に、従来公知の顆粒方法(装置)で製品(混合粉末)の顆粒化を行ってもよい。
【符号の説明】
【0077】
1 容器
2 シート
10 台車
S10 納豆製造工程
S11 蒸煮工程
S12 納豆菌接種工程
S13 充填工程
S14 発酵工程
S15 熟成工程
S20 真空凍結乾燥工程
S21 予備凍結工程
S22 凍結乾燥工程
S23 分別工程
S30 粉砕工程
S40 加熱工程
S50 混合工程

【特許請求の範囲】
【請求項1】
納豆菌を接種した蒸し大豆を容器に所定の高さに均して充填し、前記容器内から前記蒸し大豆を移動させずに雰囲気温度38〜42℃で10〜20時間の発酵を行い、連続して熟成を行って納豆を製造する納豆製造工程と、
前記容器を真空凍結乾燥室に移動し、真空凍結乾燥して凍結乾燥納豆を製造する真空凍結乾燥工程と、
前記凍結乾燥納豆に、焙煎機を用いて常圧下、120〜280℃、1〜6分間の加熱処理を施す加熱工程とを含むことを特徴とする乾燥納豆食品の製造方法。
【請求項2】
前記真空凍結乾燥工程と前記加熱工程との間に、前記凍結乾燥納豆を所定の大きさに粉砕して乾燥納豆粉末を製造する粉砕工程をさらに含み、かつ、
前記加熱工程では、前記乾燥納豆粉末に前記加熱処理を施すことを特徴とする請求項1に記載の乾燥納豆食品の製造方法。
【請求項3】
前記加熱工程では、前記乾燥納豆粉末に120〜230℃で1〜6分間の加熱処理を施して浅炒り粉末を製造すると共に、前記乾燥納豆粉末に150〜280℃で1〜6分間の加熱処理を施して深炒り粉末をそれぞれ製造し、かつ、
前記加熱工程の後に、前記浅炒り粉末と前記深炒り粉末とを所定の割合で混合する混合工程をさらに含むことを特徴とする請求項2に記載の乾燥納豆食品の製造方法。
【請求項4】
前記加熱工程の後に、前記加熱処理された凍結乾燥納豆を所定の大きさに粉砕して乾燥納豆粉末を製造する粉砕工程をさらに含むことを特徴とする請求項1に記載の乾燥納豆食品の製造方法。
【請求項5】
前記加熱工程では、前記凍結乾燥納豆に120〜230℃で1〜6分間の加熱処理を施して浅炒り納豆を製造すると共に、前記凍結乾燥納豆に150〜280℃で1〜6分間の加熱処理を施して深炒り納豆をそれぞれ製造し、かつ、
前記粉砕工程では、前記浅炒り納豆および前記深炒り納豆を所定の大きさに粉砕して浅炒り粉末および深炒り粉末をそれぞれ製造し、かつ、
前記粉砕工程の後に、前記浅炒り粉末と前記深炒り粉末とを所定の割合で混合する混合工程をさらに含むことを特徴とする請求項4に記載の乾燥納豆食品の製造方法。
【請求項6】
納豆菌を接種した蒸し大豆を容器に所定の高さに均して充填し、前記容器内から前記蒸し大豆を移動させずに雰囲気温度38〜42℃で10〜20時間の発酵を行い、連続して熟成を行って納豆を製造する納豆製造工程と、
前記容器を真空凍結乾燥室に移動し、真空凍結乾燥して凍結乾燥納豆を製造する真空凍結乾燥工程と、
前記凍結乾燥納豆に、前記真空凍結乾燥工程で用いた真空凍結乾燥機を用いて、減圧下、80〜120℃、4〜8時間の加熱処理を施す加熱工程とを含むことを特徴とする乾燥納豆食品の製造方法。
【請求項7】
前記加熱工程の後に、前記加熱処理された凍結乾燥納豆を所定の大きさに粉砕して乾燥納豆粉末を製造する粉砕工程をさらに含むことを特徴とする請求項6に記載の乾燥納豆食品の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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