説明

乾燥野菜並びに乾燥果物及びその製造方法

【課題】 長期保存性と安全且衛生的で原初の野菜や果物の色や香りを保持し、而も食感と風味に優れる乾燥野菜や果物及びその製造方法を提供する。
【解決手段】
野菜や果物を低濃度の含気オゾン水に接触流動させて予備洗浄のうえ、適宜の寸法形状で且少なくともその比表面積を6cm/g以上に細断のうえ、高濃度の含気オゾン水に接触流動させて殺菌をなしたる後、その温度が25乃至40℃で且湿度が7%以下の乾燥条件下で、残留水分率を8乃至16%に乾燥させる、乾燥野菜並びに乾燥果物及びその製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は乾燥野菜並びに乾燥果物及びその製造方法に係わり、更に詳しくは野菜や果物の色、香り、歯ざわり、旨さ等が長期に亘って保持され、且安全面と衛生面に極めて優れる乾燥野菜並びに乾燥果物及びその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
野菜類や果物類は水分含有率が高く、育成中はもとより収穫後も呼吸や蒸散、生長或いは酸素作用等による生活作用を有するため、短期に変質や褐変及び腐敗にまで至るものであることから、天日乾燥や通風乾燥により水分除去を図り長期に亘る保存性と、軽量減容化に伴う取扱性の至便さとが活用されてきており、更には天日乾燥や通風乾燥では変質の危険もあるものの、長期に亘る乾燥に伴う酵素作用の変化による特有の風味や香りが生成される利点も有するものである。
【0003】
而して高度成長期を経て多様な加工食品の開発や多量消費の動向とも相俟って多量生産が要請されるに至り、これへの対処の一策として高温加熱手段を用いて短時に乾燥を図る所謂人工乾燥が利用されるに至ったが、該人工乾燥では高温度で且短時に乾燥をなすことから、色や香りが熱劣化や熱変性を受け、更には酵素作用も働かず風味にも劣る等の問題を内在している。これがため該人工乾燥においては乾燥に先立ち予措即ちブランチングを施すことにより、色や香りの熱劣化や熱変性を抑制させることもなされているものの、依然原初の色や香り或いは風味を十分に再現するには至っていない。
【0004】
更に近年に至っては食生活の著しい変化に伴うレトルト食品やチルド食品の普及に加え、パスタ類やパン類ばかりかケーキ類やクッキー類の摂取量の増大、及び中食化や外食化への急速な移行とも相俟って、色や香り、歯ざわり、旨み等を保持する乾燥野菜や乾燥果物の要請が富みに高まっている。
【0005】
これがため野菜や果物の原初の色や香り、歯ざわり、旨み等を熱劣化や熱変性或いは酸化変性させることなく再現させる手段として真空凍結乾燥が積極的に利用されているものの、該真空凍結乾燥では比較的原初の色や香り等の熱劣化や熱変性が抑制されるものの、乾燥製品が多孔質となるため吸水復元性には優れるものの食感が悪く、而も多孔質による比表面積が大きなため、乾燥品が容易に酸化され若しくは吸湿されて変性変質され易く、従って乾燥品に対する酸化防止や防湿のための包装や保管手段が強いられる。加えて該真空凍結乾燥は装置的に高価なうえ管理も至難で維持コストも莫大であること等より少品種の乾燥品を多量に生産する以外は利用性も制約される。
【0006】
かかる状況に際して特開2006−132855号公報においては、短時間で食品などの色合い及び風味の劣化をさせることなく乾燥させるために、乾燥室内の温度(具体的明示がないが、明細書からは40℃以下)と湿度を一定にし且一定の時間間隔においてランダム流となるようなランダム風を用いて乾燥させることが公知され、更に特開2006−325403号公報においては、風味があって且濃縮された味の乾燥果物・野菜食品を提供する手段として、可食部分を前処理した対象食品を、ネット或いは多孔板上に並べて、温度30〜45℃湿度8〜10%の乾燥室で含水率が20乃至30%になるまで一次乾燥したうえ乾燥剤入り袋に密封し、含水率20乃至28%になるまで冷暗所で乾燥すること等が公知されている。
【特許文献1】 特開2006−132855号公報
【特許文献2】 特開2006−325403号公報
【0007】
而して今日要請される乾燥野菜や乾燥果物は、長期に亘る保存性はもとより原初の野菜や果物が有する栄養成分や色、香り、歯ざわり、或いは旨みを可能な限り保持させることは無論のこと、高い安全面と衛生面が保持されることが不可欠要件とされている。
そして収穫される原初の野菜や果物には、通常10乃至10個/mlの微生物が付着し、更には塵埃や砂泥等も多数付着しているものであるから、前記先願の如く単に低温度による乾燥を図る技術構成では、却って付着微生物類の繁殖を増長し衛生面はもとより異物混入に伴う安全性すらも確保されない。
【0008】
加えて野菜や果物は含有水分が多く且野菜や果物等の種類によっても異なるばかりか、低温度の乾燥ではその大きさや形状により乾燥条件も著しく変動することとなり歯ざわりや風味をも異にする結果となる。
更に仮令予備洗浄や殺菌処理をなす場合においても、適正な予備洗浄や殺菌処理がなされねば、安全性や衛生面は実現しえず且過剰予備洗浄や過剰殺菌がなされた場合には、原初の野菜や果物の保持する栄養成分や色並びに香りが溶出され若しくは劣化され、乾燥品が形成されたとしても、色、香り、風味等の再現は至難となる。
【0009】
発明者等はかかる乾燥野菜や乾燥果物及び製造方法の問題に鑑み鋭意研究を重ねた結果、収穫された野菜若しくは果物に付着する多量の微生物類並びに塵埃や砂泥を滅菌若しくは洗浄させたうえ、適宜形状に且所要の比表面積割合以上に細断して、含気オゾン水の接触流動により野菜や果実の色や香りを劣化変色させることなく確実な殺菌がなしえること、及びこの殺菌された野菜や果物を25乃至40℃の低温度及び湿度7%以下の低湿度下で含有水分率を8乃至16%割合まで乾燥させることにより、保存性と安全面や衛生面が保持され、且原初の野菜や果実の保持する栄養成分や色、香りを維持し、而も酵素作用による風味並びに旨味に優れた乾燥野菜や乾燥果物が製造可能となることを究明し本発明に至った。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は長期保存性と安全且衛生的で、野菜や果物の色や香りと特有の食感並びに風味を保持した乾燥野菜並びに乾燥果物及びその製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上述の課題を解決するために本発明が用いた技術的手段は、収穫した野菜や果物に多量に付着する微生物類や塵埃及び砂泥の滅菌並びに洗浄除去のため、オゾン濃度が0.1乃至5ppm/mlのオゾン水が70乃至95容量%に空気が5乃至30容量%の含気オゾン水に接触流動させたうえ、適宜の寸法形状で且その比表面積が少なくとも6cm/gに細断し、而してそのオゾン濃度が5乃至10ppm/mlのオゾン水が70乃至95容量%に空気が5乃至30容量%の含気オゾン水に接触流動させて殺菌したうえ、その温度が25乃至40℃で且湿度が7%以下の乾燥条件下において、その残留水分率が8乃至16重量%に乾燥させてなる乾燥野菜若しくは乾燥果物に存するものであり、加えてこの乾燥野菜若しくは乾燥果物を、適宜形状及び大きさに粉砕させてなる粉砕乾燥野菜若しくは粉砕乾燥果物に存する。
【0012】
更にかかる乾燥野菜若しくは乾燥果物の製造手段としては、収穫された野菜若しくは果物を、密閉区画内においてそのオゾン濃度が0.1乃至5.0ppm/mlのオゾン水が70乃至95容量%に空気が5乃至30容量%の含気オゾン水を接触流動させて微生物の減菌と塵埃及び砂泥の洗浄をなす予備洗浄工程と、予備洗浄された野菜や果物を適宜寸法及び形状で且その比表面積が少なくとも6cm/g以上に細断させる細断工程と、この細断された野菜若しくは果物を密閉区画内において、オゾン濃度が5.0乃至10.0ppm/mlのオゾン水が70乃至95容量%に空気が5乃至30容量%の含気オゾン水を、被殺菌野菜若しくは果物容量に対して2.5乃至6.0倍相当のオゾン水量l/minを以って短時間に接触流動させて殺菌する殺菌工程と、この殺菌された細断野菜若しくは果物を、密閉区画内においてその温度が25乃至40℃で且湿度が7%以下に保持された乾燥条件下で残留水分率を8乃至16%に乾燥させる乾燥工程とからなることを特徴とする、乾燥野菜並びに乾燥果物の製造方法に存するものである。
【0013】
更には粉砕状の乾燥野菜並びに乾燥果物の製造に際しては、前記乾燥野菜若しくは乾燥果物を、その温度が40℃以下に保持された所望の粉砕機を用い、適宜の形状及び大きさに粉砕させる粉砕工程を用いる製造方法に存する。
【発明の効果】
【0014】
本発明は上述の如き構成を用いてなるもので、収穫に際して多量に付着する微生物類や塵埃及び砂泥も、その予備洗浄においてそのオゾン濃度が0.1乃至5ppm/mlのオゾン水が75乃至95容量%に空気が5乃至30容量%の含気オゾン水が接触流動されるため、微生物類は少なくとも10乃至10個/ml以上の滅菌が短時になしえ且低濃度の含気オゾン水のため、野菜や果物の色素や香り成分の酸化分解や劣化が防止されるばかりか、微生物の繁殖も抑制されて鮮度維持効果が著しく高められる。加えて野菜類とりわけ葉菜類ではその外表面に繊毛構造や微細凹凸構造を有するものも多く、オゾン水のみでは該繊毛構造の揆水作用により、繊毛内部に潜む微生物類の滅菌や殺菌が十分になしえぬものであるが、本発明では5乃至30容量%の空気を含む含気オゾン水により微細間隙内まで侵入し確実な滅菌がなしえる。
加えて該予備洗浄により農薬類はもとより塵埃及び砂泥も洗浄除去されるため、引続いてなされる細断工程における細断刃を損傷させる危険が防止されるとともに砂泥等の異物混入も著しく抑制される。
【0015】
そして予備洗浄された野菜並びに果物は、細断工程において適宜の寸法形状に且その比表面積が少なくとも6cm/g以上の比表面積割合を以って細断されるため、引続く殺菌工程における含気オゾン水による殺菌も短時間で全面に亘って確実な殺菌がなされ、極めて衛生的に保持されるとともに細断された野菜や果物の色素や香り成分の酸化分解や劣化も著しく抑制される。
加えて該殺菌工程後になされる低温度で低湿度の乾燥工程においても水分蒸散面が大きく形成されてなるため、低温度低湿度で短時間内に乾燥が能率的になしえることとなる。
【0016】
更に殺菌工程においては、そのオゾン濃度が5乃至10ppm/mlのオゾン水が70乃至95容量%に空気が5乃至30容量%割合の含気オゾン水を用い、被殺菌野菜や果物の容量に対し2.5乃至6.0倍相当量の含気オゾン水量l/minを以って短時間の接触流動をなすため、確実な殺菌処理がなされ極めて衛生的となり、且仮令異物が付着していてもかかる殺菌工程で確実に洗浄除去されて安全性も著しく高まる。而も短時間の接触流動であるから色素や香り成分の酸化分解や劣化も最小限に抑制される。
【0017】
かくして殺菌工程において殺菌された細断野菜や果物は、密閉区画内においてその温度が25乃至40℃及び湿度が7%以下に保持された乾燥条件下で、比較的長時間に亘って、その残留水分率が8乃至16%重量にまで乾燥されるものであるから、水分蒸散が緩やかになされ組織の破壊や多孔質化が抑制され、栄養成分や色及び香り成分の逸失が少なくなるとともに、粘性も維持され歯ざわり感も良好に保持され、而も低温度で長時間の乾燥によるため酵素の変性作用による特有の風味も創出される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
収穫された野菜や果物を予備洗浄工程においてオゾン濃度が0.1乃至5ppm/mlのオゾン水が70乃至95容量%に空気が5乃至30容量%割合の含気オゾン水を接触流動させて滅菌と塵埃及び砂泥の洗浄除去をなしたうえ、細断工程において適宜の寸法形状で、且その比表面積が少なくとも6cm/g以上の比表面積に細断したうえ、殺菌工程においてオゾン濃度が5乃至10ppm/mlのオゾン水が70乃至95容量%に、空気が5乃至30容量%割合の含気オゾン水を、被殺菌野菜や果物容量に対し2.5乃至6.0倍相当の含気オゾン水量l/minを以って短時間に接触流動させて殺菌をなし、而して密閉区画内でその温度が25乃至40℃及び湿度が7%以下の乾燥条件下で、残留水分率が8乃至16%に乾燥させる。
【実施例1】
【0019】
以下に本発明実施例を、本発明の製造方法について図とともに詳細に説明すれば、図1は本発明製造方法の工程図であって、本発明は長期に亘る保存性とともに安全で衛生的なうえ、原初の野菜や果物の保持する栄養成分や色、香り、食感並びに風味を十分に再現しえる乾燥野菜や乾燥果物を製造することにあり、更にはその粉砕物を製造するものである。
【0020】
そして使用すべき野菜や果物は、所望の乾燥がなされて形成される乾燥野菜若しくは乾燥果物の使用途により要請される特性、即ち栄養成分や色、香り、歯ざわり等の食感或いは風味等により多種多様なものが選択されるものであるから、野菜類の例示としては葉菜類ではネギ、ほうれん草、ブロッコリー、ニラ、パセリ等が根菜類としてはワサビ、ショウガ、ニンニク等が、更に果菜類としてはトマト、ピーマン、ゴーヤ、カボチャ等が挙げられ、且果実類ではサクランボ、イチゴ、桃、ブドウ、レモン、柑橘、柿、メロン等に加えて、マンゴーやパイン、パパイヤ等の所謂トロピカルフルーツ類も積極的に使用される。
【0021】
当然の事ながら、これら野菜や果物は収穫後の新鮮なものの使用が望まれるものであるが、一方収穫される野菜類や果物類には残留農薬はもとより、大腸菌群を主体とする微生物類が略10乃至10個/ml程度に多量に付着しており、且野菜類や果物類は水分率も略85乃至95%と高く、時間経過とともに該微生物類の繁殖により急速な鮮度低下とともに非衛生的ともなる。加えて野菜類には塵埃と砂泥も付着している。
【0022】
本発明においては衛生的且安全な乾燥野菜並びに乾燥果物を製造するものであることから、収穫された野菜や果物は速やかに多量に付着する微生物類の滅菌若しくは殺菌と、且付着する塵埃や砂泥の洗浄除去を図るため、予備洗浄工程1において予備洗浄がなされる。この予備洗浄における滅菌や殺菌には、塩素や次亜塩素酸ソーダ等が専ら使用されていたが残留塩素の危険が指摘されている。
これがため近年に至っては安全性とともに優れた滅菌性若しくは殺菌性を保持するオゾンの利用が推奨されているが、該オゾンは滅菌若しくは殺菌すべき対象物の特性によって著しく滅菌若しくは殺菌効果が異なる問題を抱えている。
【0023】
即ちオゾンはオゾンガス状態で生成させる手段とオゾン水として生成する手段とが存在し、建物区画内や適宜区画内に浮遊混在する微生物類の滅菌や殺菌には、所要濃度のオゾンガスを区画内空気中に混合拡散させることで容易になしえる。反面本発明においては野菜類や果物等の固形物の滅菌若しくは殺菌には、オゾンガスでは付着する微生物と十分な接触圧を以って接触がなされず、滅菌性や殺菌性に著しく劣ることから、オゾン水による使用が推奨されている。
然るに被滅菌若しくは殺菌される対象物が均質で且その外表面も平滑なものであればオゾン水に浸漬接触させるのみで滅菌や殺菌も可能となるが、本発明においては野菜類や果物類を対象とするものであって例えばブロッコリーやパセリ等では外形上多量且微細空隙の構造や、或いは桃の如き外表面に微細な繊毛構造を有するものでは揆水作用が働き、微細空隙内や繊毛構造内に潜む微生物類の滅菌や殺菌が十分になしえない。
【0024】
そこで発明者等は、かかる微細空隙並びに繊毛構造の揆水作用を消除せしめ、有効な滅菌若しくは殺菌をなさしめるために多くの実験を重ねた結果から、オゾン水濃度が0.1乃至5.0ppm/mlのオゾン水に対し、5乃至30容量%の空気を混在させてなる含気オゾン水を接触流動させることにより、表1に示す如き良好な滅菌が可能となった。
【0025】
【表1】

【0026】
かかる滅菌に際してはオゾン水濃度が少なくとも0.1ppm/ml以上が要請されるものであるが、オゾン水濃度が必要以上に高濃度となると強度の酸化分解力により栄養成分や色素、香り成分等の酸化分解や劣化が促進される危険もあるため、最大でも5.0ppm/ml以下に制約すべきで、且この予備洗浄も可能な限り短時間での処理が望ましく、通常においてはせいぜい3乃至6分程度で可能である。
加えて留意すべきは、該含気オゾン水を被減菌野菜や果物全体に亘って接触流動させてやることで、該接触流動させることで付着する麈埃や砂泥の洗浄除去も可能となる。
【0027】
この含気オゾン水の接触流動は、被滅菌対象物たる野菜や果実の全面に亘って含気オゾン水をくまなく接触させて滅菌をなすとともに、野菜や果実を損傷を与えぬ程度の接触圧を以って流動させることにより、付着した塵埃や砂泥の洗浄除去を図るうえから望まれるもので、具体的にはバブリングやシャワーリング或いは含気オゾン水中の揺動等が挙げられる。
【0028】
図2はバブリングによる接触流動10の説明図であって、開閉自在な密閉区画10A内には所要容量の野菜若しくは果実11を収納しえ、且含空オゾン水10Bが自在に流通しえる素材により形成された収納バケット10Cが装脱自在に係止しえる係止縁10Dが設けられてなり、而もこの係止される収納バケット10Cの下部位には、含気オゾン水放出管10Eが設けられるとともに、この含気オゾン水放出管10Eには電解オゾン水供給管10F及び送気管10Gが連結され、該電解オゾン水供給管10Fからの所要濃度の電解オゾン水量と送気管10Gからの送気量との割合により、含気オゾン水10Bが形成され、而して含気オゾン水放出管10Eからバブル状に放出させて収納バケット10C内に収納された野菜や果実11と接触流動させるものであって、予備洗浄させた含気オゾン水10Bを排出させる排出管10Hが密閉区画10Aの下部位に設けられた構成のものである。
【0029】
かくして予備洗浄により滅菌並びに塵埃及び砂泥の洗浄除去がなされたうえは細断工程2において細断がなされる。
この細断に供する細断機については、既に多種多様なものが上市されておりこれらの中から適宜に選択しえるものであるが、細断の寸法や形状等は使用目的に合せて角切り、短冊切り、線切り、ミジン切り、或いは輪切りや三日月切り等により細断される。
図3には細断形状の例示が示されてなり、同図3のAには短冊切り20Aが、同図3のBにはミジン切り20Bが、更に同図3のCにはリンゴや桃等の大型果実に用いられる三日月切り20Cが示されている。そして該細断に際して肝要なことは原初の野菜や果実11の保持する栄養成分や色素及び香り成分をなるべく流失させたり酸化分解や劣化をさせぬうえからは、体積当たりの表面割合所謂比表面積を少なく形成させる反面、低温度及び低湿度条件において十分な乾燥を短時間でなすうえからは、大きな比表面積が要請される二律背反の要件を満足させる必要がある。これがためには数多の実験結果からも、その比表面積としては6cm/g以上が望まれるものであるが、最大でもその比表面積は10cm/g程度で十分である。
【0030】
かくして所要の寸法形状で且その比表面積が6cm/g以上に細断されてなる細断野菜若しくは果物21は、殺菌工程3において殺菌処理がなされる。この殺菌処理においては衛生的な乾燥野菜若しくは果物31を形成するうえから、大腸菌群においても10個以下に殺菌させることが引続いてなされる低温度及び低湿度条件における長時の乾燥工程4における乾燥処理の際の微生物類の繁殖を防止するうえからも重要であって、かかる殺菌処理においても前記予備洗浄工程1において用いた含気オゾン水10Bの接触流動が好適であることから、前記予備洗浄と同様な手段を用いることが可能となる。
【0031】
而しながら殺菌処理においては確実な殺菌処理を実現するうえで、その含気オゾン水10Bのオゾン濃度としては5.0乃至10pm/mlのオゾン水が70乃至95容量%に空気が5乃至30容量%の、ややオゾン濃度の高い含気オゾン水30Bの使用が望まれるものの、オゾン濃度が高くなる程栄養成分や色素及び香り成分の酸化分解や劣化が強く働くものであるから、含気オゾン水30Bの効率的接触流動と短時間の殺菌処理が不可欠となり、これがためには細断野菜若しくは果物21の容量に対して2.6乃至6.0倍相当量の含気オゾン水量l/minでの接触流動と、且望ましくはその殺菌処理時間も略3乃至6分程度に留めることにある。そして接触流動手段としては、予備洗浄において用いたバブリングの他に多方向からの含気オゾン水30Bのシャワーリング或いは含気オゾン水30B中で、前記収納バケット10Cに収納させた細断野菜や果物21を揺動させること等が挙げられる。当然のことながら、仮令細断時に異物が混入した場合でも該殺菌処理における含気オゾン水30日の接触流動により洗浄除去もなされる。
【0032】
殺菌処理工程3で殺菌処理された細断野菜や果物21は、乾燥処理工程4において乾燥処理がなされる。
この乾燥処理は、原初の野菜や果実11が保持する栄養成分を初め、色素や香り成分の流失や加熱分解若しくは劣化を最小限に抑制し、且十分な殺菌と異物の洗浄除去のなされた細断野菜や果物21を、密閉区画内においてその温度が25乃至40℃の低温度で且湿度も7%以下に保持された乾燥条件下で、比較的長時間に亘って残留水分率を8乃至16%にまで乾燥させることにより乾燥野菜や果物31となすものである。即ちかかる低温度と低湿度による比較的長時間の乾燥により、原初の野菜や果実11の保持する栄養成分や色素或いは香り成分等を加熱変性させたり加熱逸散されることを防止するとともに、水分蒸散を緩やかになすことで組織の破壊や多孔質化をも抑制して良好な食感の保持と、更には長時間に亘る乾燥時間により酵素の変性による特有の風味を創出させることにある。
【0033】
この乾燥処理も多様な方法が考えられるが、発明者等の研究結果からは図4に示す乾燥処理手段が提案されるもので、開閉自在な密閉区画40A内にはその上部一側に25乃至40℃の温度で且その湿度が7%以下の乾燥空気40Bを送風するファン40Cが設けられ、且該乾燥空気40Bは送風ガイド40Dにより一旦密閉区画40Aの底部40Eに誘導させる。他方密閉区画40Aの中央部位には、適宜間隔を以って支持縁40Fが所要の間隔を以って対向する位置に設けられており、この対向配設された支持縁40F、40F間には、乾燥空気40Bを自在に流通しえ且強剛なネット素材からなる乾燥棚40Gが装脱自在に跨渡支持されている。更に密閉区画40Aの他側には、細断野菜や果物21からの水分蒸散に伴い多湿化した乾燥空気40Bを凝縮させて水分除去を図り、再び乾燥空気40Bとして再送風させる凝縮器40Hが設けられ、且その下部位には除去水分を排出するドレーンパイプ40Iが設けられた構成のものである。
【0034】
従って、乾燥には細断野菜や果物21を乾燥棚40G上に所要収納量を分散配位させたうえ密閉し、乾燥空気40Bをその収納量に合せた送風量を以って送風させることにより、該乾燥空気40Bは適宜数段に跨渡支持された乾燥棚40Gを流通し、細断野菜や果物21が乾燥され且多湿化された乾燥空気40Bは凝縮器40Hで水分除去され、再び乾燥空気40Bとして再送風利用される構成のものである。
【0035】
かかる乾燥手段において乾燥野菜や果物31を形成させるための乾燥時間は、細断野菜や果物21の組織や含有水分率、比表面積の大小、或いは乾燥する残留水分率等によって異なる。そして本発明では原初の野菜や果実11の栄養成分や色素、香り成分の保持に加えて、優れた食感と風味の付加された乾燥野菜や果物31を形成するため、その残留水分率が8乃至16%で乾燥させることにある。
そこで組織の硬軟や含有水分の異なる野菜及び果実を選択のうえ、それぞれその比表面積を6cm/gとなるよう細断し温度35℃湿度6%の乾燥空気40Bを30m/minの送風量により、残留水分率10%となるまでの乾燥時間は表2の通りである。
【0036】
【表2】

【0037】
かくして形成された乾燥野菜や果物31は、このままの状態でも使用に供されるものであるが、近年ではパン類や麺類への配合はもとより健康補助食品としての顆粒や錠剤等への再加工の需要も極めて多く、更に微細に粉砕させた粉砕状乾燥野菜や果物41の要請が強い。
これがためには、粉砕工程5を付加せしめて粉砕処理を施すことが望まれる。この粉砕処理に際しては既に多種多様な粉砕機50が開発上市されてなるため、適宜の粉砕機50を使用できるものの、本発明において肝要なことは、折角原初野菜や果実11の保持する栄養成分や色、香り成分を保持させ且優れた食感や風味を創出せしめた乾燥野菜や果物31を、該粉砕処理において熱変性や熱劣化により滅失させぬ配慮が必要であって、これがためには粉砕処理に際して最大でも40℃以下の温度で粉砕をなすことにある。
【0038】
図5には粉砕工程5における好ましい粉体処理が例示されてなるものであって、適宜に選択された粉体機50のホッパー51より乾燥野菜や果物31を投入することにより、その下方に配設された粉砕刃52により所要の大きさに粉砕がなされたうえ、下部の排出口53より粉砕乾燥野菜や果物41が形成され排出されるもので、かかる粉砕時の粉砕熱が40℃以上の高温とならぬよう保冷するため、冷水等を循環させるための冷却部54が設けられた構成のものである。
【0039】
本発明の乾燥野菜や果物31は、上述の如き製造方法により形成されるもので、本発明乾燥野菜や果物31と、従来の高温乾燥並びに真空凍結乾燥による乾燥野菜や果物との、原初の野菜及び果物との色、香り、並びに食感や風味について、味覚評価テストを以下に述べる。
味覚評価テストに用いた野菜としてはピーマン、ニンジン、小ねぎ、パセリと、果物としてイチゴ及び桃を用いた。
味覚評価テストに用いた試料は、野菜及び果物を略同一の寸法形状に細断のうえ、本発明により乾燥させたものと、従来からの80℃程度の温度による高温乾燥させたもの、及び真空凍結乾燥させた物を用いた。
味覚評価テスト方法は、味覚評価者として成人男子15名及び成人女子15名計30名に、それぞれの野菜及び果物につき色、香り、食感、風味の評価基準に従って評価し、評価基準毎評価者数を以って判定したもので結果は表3の通りである。
【0040】
【表3】

【産業上の利用可能性】
【0041】
予備洗浄工程、細断工程、殺菌工程及び乾燥工程と、粉砕工程を設けることにより、多種に亘る野菜や果物より乾燥野菜や果物、及びその粉砕状乾燥野菜や果物を形成できる。
【図面の簡単な説明】
【0042】
【図1】 本発明製造方法の工程図である。
【図2】 バブリングによる接触流動の説明図である。
【図3】 細断形状の例示図である。
【図4】 乾燥処理手段の説明図である。
【図5】 粉砕処理手段の説明図である。
【符号の説明】
【0043】
1 予備洗浄工程
2 細断工程
3 殺菌工程
4 乾燥工程
5 粉砕工程
10 接触流動
10A 予備洗浄における密閉区画
10B 含気オゾン水
10C 収納バケット
10D 係止縁
10E 含気オゾン水放出管
10F 電解オゾン水供給管
10G 送気管
10H 排出管
11 野菜や果実
20A 短冊切り
20B ミジン切り
20C 三日月切り
21 細断野菜や果物
30B オゾン濃度の高い含気オゾン水
31 乾燥野菜や果物
40A 乾燥手段における密閉区画
40B 乾燥空気
40C ファン
40D 送風ガイド
40E 密閉区画の底部
40F 支持縁
40G 乾燥棚
40H 凝縮器
40I ドレーンパイプ
41 粉砕乾燥野菜や果物
5 粉砕工程
50 粉砕機
51 ホッパー
52 粉砕刃
53 排出口
54 冷却部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
野菜や果物に低濃度の含気オゾン水を接触流動させ、滅菌と付着物を洗浄除去のうえ、適宜寸法形状で且少なくともその比表面積が6cm/g以上に細断した後、高濃度含気オゾン水を接触流動させて殺菌し、その温度が25乃至40℃及び湿度7%以下の乾燥条件下で、残留水分率が8乃至16%に乾燥させてなることを特徴とする乾燥野菜並びに乾燥果物。
【請求項2】
滅菌と洗浄除去をなす低濃度含気オゾン水が、0.1乃至5ppm/mlのオゾン水が70乃至95容量%に空気が5乃至30容量%割合からなる、請求項1記載の乾燥野菜並びに乾燥果物。
【請求項3】
殺菌に用いる高濃度含気オゾン水が、5乃至10ppm/mlのオゾン水が70乃至95容量%に空気が5乃至30容量%割合からなる、請求項1記載の乾燥野菜並びに乾燥果物。
【請求項4】
その温度が40℃以下に保持された粉砕機で、請求項1記載の乾燥野菜若しくは乾燥果物を粉砕させてなる、粉砕乾燥野菜並びに粉砕乾燥果物。
【請求項5】
野菜や果物を、そのオゾン濃度が0.1乃至5ppm/mlのオゾン水が70乃至90容量%に空気が5乃至30容量%割合の含気オゾン水を接触流動させて、滅菌と付着物の洗浄除去をなす予備洗浄工程と、予備洗浄された野菜並びに果物を、適宜の寸法形状で且少なくともその比表面積が6cm/g以上に細断する細断工程と、この細断された野菜や果物をそのオゾン濃度が5乃至10ppm/mlのオゾン水が70乃至95容量%に空気が5乃至30容量%割合の含気オゾン水を野菜や果物の容量に対し2.5乃至6.0倍相当量の含気オゾン水量l/minで接触流動させて殺菌する殺菌工程と、この殺菌された野菜や果物を温度が25乃至40℃湿度が7%以下の乾燥条件下で、残留水分率が8乃至16%に乾燥させる乾燥工程とからなる、乾燥野菜並びに乾燥果物の製造方法。
【請求項6】
予備洗浄工程並びに殺菌工程における含気オゾン水の接触流動が、バブリングやシャワーリング若しくは含気オゾン水中での揺動手段からなる、請求項5記載の乾燥野菜若しくは乾燥果物の製造方法。
【請求項7】
乾燥工程により乾燥された乾燥野菜若しくは乾燥果物を、その温度が40℃以下に保持された適宜粉砕機で粉砕させて粉砕乾燥野菜若しくは粉砕乾燥果物となす粉砕工程が付加されてなる、請求項5記載の乾燥野菜並びに乾燥果物の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2009−291179(P2009−291179A)
【公開日】平成21年12月17日(2009.12.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−167903(P2008−167903)
【出願日】平成20年6月2日(2008.6.2)
【出願人】(503448077)株式会社渡辺商店 (1)
【Fターム(参考)】