説明

乾燥魚肉食品

【課題】魚肉の風味を有し、おかきとしての食感がある新規かまぼこ食品の提供を目的とする。
【解決手段】魚肉のすり身に対して3〜20質量%の米粉と1〜10質量%のでん粉を混練したものを成形するステップと、成形したものを蒸気で蒸す又は焙焼するステップと、次に冷却後に乾燥するステップと、次に加熱又は油で揚げるステップとを有することを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は魚肉のすり身を主な原料とし、乾燥及び加熱(焼く)又は油で揚げた新規食品に関する。
【背景技術】
【0002】
白身魚等の魚肉はすり身にし、その後に各種練り製品として食されている。
代表的なものとして、蒸して加熱したかまぼこや焼いて加熱したちくわ、焼きかまぼこ等がある。
また、茹でたはんぺんや揚げたさつま揚げ等もある。
いずれにしてもこれらは従来のすり身をゲル化した範囲にとどまり、軟らかい食感を有するものであった。
これに対して本願発明者らは、新たな食感の食品として展開すべく、例えばチップス風の食感が得られないか誠意検討した。
歴史的には戦前、日持ちの悪かったかまぼこを乾燥させることで日持ちさせ、削り食したといわれる削りかまぼこが愛媛県で知られているが、かまぼこを単に乾燥したものにとどまり、それ以上のものではなかった。
【0003】
特許文献1には種実とすり身とを混合した菓子を開示し、特許文献2には魚肉すり身入りドーナツを開示するが、本発明はこれらとも異なる新規かまぼこ食品を提供するものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平9−9871号公報
【特許文献2】特開2007−236229号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、魚肉の風味を有し、おかきとしての食感がある新規かまぼこ食品の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る乾燥魚肉食品の製造方法は、魚肉のすり身に対して3〜20質量%の米粉と1〜10質量%のでん粉を混練したものを成形するステップと、成形したものを蒸気で蒸す又は焙焼するステップと、次に冷却後に乾燥するステップと、次に加熱する又は油で揚げるステップとを有することを特徴とする。
ここで魚肉のすり身とは、主に白身魚の白身の部分をすり身にしたものをいい、
魚としては、スケソウダラ、エソ、グチ、ハモ、トビウオ、アジ、タチウオ、ヒラメ、イトヨリダイ等が代表例であるが、スケソウダラの冷凍すり身が入手しやすい。
本発明において用いる魚肉のすり身とは、例えば原料としての冷凍すり身のみならず、例えば、塩、馬鈴薯でんぷん(2〜10%)、小麦でんぷん(0.5〜3%)等を加えたかまぼこ用のすり身であってもよい。
これらかまぼこに用いられるすり身は、質量%で35〜45%の水分が含まれる(以下全て質量%)。
水としては天然水を用いてもよく、特に5〜10%の海洋深層水を加えると多くのミネラル分が含まれる。
例えば、富山湾の海洋深層水は300m以深に存在する日本海固有水と称され、一般生菌数が表層水の1/1000〜1/10000と少なく、環境ホルモンなども検出されず、ミネラルが豊富である。
【0007】
これら、蒸すとかまぼこになるすり身に対して米粉を3〜20%と加えることで蒸して乾燥した後に加熱するとおかきのように膨らみ、膨張剤として作用する。
しかし、米粉だけでは成形後乾燥させた際にコーナー部等部分的に異常乾燥し、加熱した際に均一に膨れない問題があった。
そこで、本発明は保水性向上を目的に1〜10%のでんぷんを加えたものである。
加えるでんぷんとしては、サゴでんぷん、馬鈴薯でんぷん、コーンスターチ、小麦でんぷん、甘藷でんぷん等でもよいが、一般的に保水性の高いといわれるタピオカでんぷんが好ましい。
タピオカでんぷんは、トウダイグサ科のキャッサバの根茎からとれるでんぷんをいう。
【0008】
本発明で米粉は膨張剤として添加するものであり、食品形状により添加量を調整するのがよく、上記3〜20%の範囲が好ましく、望ましくは5〜15%、さらには8〜12%レベルがよい。
また、タピオカでんぷん等は成形後に部分的に異常乾燥するのを抑えるためのもので、上記1〜10%の範囲にて調整され、好ましくは3〜8%である。
混練した材料は各種の食品形状に成形した後に中心温度が85℃以上になるように約90℃にて蒸気にて蒸す。
あるいは、火で焙ってもよい。
蒸した後あるいは焙焼した後に冷却し、約50〜70℃にて3〜5時間乾燥し、その後に電子レンジ(600W)にて30〜60秒加熱するとおかきが焼き上がるように膨れる。
なお、加熱手段は電子レンジに限らない。
また、油で揚げてもよい。
【0009】
本発明においては、さらに各種具材を加えることができる。
具材としては、しろえび、こんぶ、紅花、ウコン、ヨモギ等が例として挙げられる。
【0010】
このようにして製造された乾燥魚肉食品はチップス感覚の食感があり、出来上がった食品は、乾燥質量において魚肉のすり身に対して5〜30%の米粉と1.5〜15%のタピオカでんぷん等が含まれる。
また、水分活性Awの値が0.2〜0.4の範囲にあり、保存性に優れる。
【発明の効果】
【0011】
本発明に係る新規食品は、従来のかまぼこを単に乾燥したものと異なり、魚肉の風味を活かしつつ、新たな食感が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】略うす形長方形に成形した例の食品形状を示す。
【図2】加熱前の食材の形状例を示す。
【図3】食品Aのアンケート結果を示す。
【図4】食品B(本発明品)のアンケート結果を示す。
【図5】食品C(従来のかまぼこ)のアンケート結果を示す。
【図6】電子レンジで加熱した場合のアンケート比較結果を示す。
【図7】油で揚げた場合のアンケート比較結果を示す。
【図8】食品Bの評価結果を示す。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明の実施例を以下説明する。
サイレントカッターで砕いた冷凍すり身に馬鈴薯でんぷん約5%、小麦でんぷん約1.3%及び適量の水(すり身中の水分量として約40%、そのうち海洋深層水約7%)を加えて混練した。
このすり身に対して米粉10%、タピオカでんぷん5%を加えてさらに混練した。
次に例えばうす形長方形の形状に成形した後に90℃の水蒸気を用いて中心温度が85℃以上になるまで蒸した。
冷却した後に乾燥機を用いて60℃×4時間乾燥した状態を図2に乾燥品1として模式的に示した。
この乾燥品1を600Wの電子レンジで約40秒加熱したものを図1に食品10として模式的に示す。
これにより全体が均一に膨れ、焼き上がった新規のかまぼこ食品が得られた。
なお、大きさ30mm×20mm,厚み約1mmの乾燥品を上記のように電子レンジで加熱すると、45mm×33mm,厚み約2mmの大きさに膨れ、サラダ油を用いて150〜160℃にて揚げると40mm×30mm,厚み約3mmの大きさに膨れた。
電子レンジで焼き上げた本発明に係る食品の水分活性Awを測定すると、Aw=0.28であった。
【0014】
本発明に係る食品は略長方形に限らず、各種食品形状に製造することが可能であり、新規食品として大きな広がりが期待される。
【0015】
次に本発明に係る乾燥魚肉食品の食感についてアンケート調査した。
(1)調査対象にした食品
A:魚肉のすり身に対して10%の米粉が含まれるもの
B:魚肉のすり身に対して10%の米粉と10%のタピオカでん粉が含まれるもの
C:従来のかまぼこ
以下のアンケート結果において、上記A,B,Cの食品を電子レンジ5000W×2分間加熱したものを「レンジ」と表現し、150〜160℃のサラダ油で揚げたものを「フライ」と表現する。
(2)一般人14人に食してもらい、アンケートに答えていただいた。
(20才代:3人、30才代:3人、40才代:6人、不明:2人)
図3に食品Aのアンケート結果、図4に食品B(本発明)のアンケート結果、図5に食品C(従来のかまぼこ)のアンケート結果をそれぞれ示す。
また、図6に電子レンジで加熱したもの、図7にサラダ油で揚げたものについて食品A,B,Cを比較した結果を示す。
この結果、従来のかまぼことは異なる食感を有し、スナック感覚があることが確認でき、食品Bに対しては図8にまとめたような評価結果になった。
【符号の説明】
【0016】
1 乾燥品
10 食品

【特許請求の範囲】
【請求項1】
魚肉のすり身に対して3〜20質量%の米粉と1〜10質量%のでん粉を混練したものを成形するステップと、
成形したものを蒸気で蒸す又は焙焼するステップと、
次に冷却後に乾燥するステップと、
次に加熱又は油で揚げるステップとを有することを特徴とする乾燥魚肉食品の製造方法。
【請求項2】
でん粉はタピオカでん粉であることを特徴とする請求項1記載の乾燥魚肉食品の製造方法。
【請求項3】
魚肉のすり身に対してさらに具材を混合したことを特徴とする請求項1又は2記載の乾燥魚肉食品の製造方法。
【請求項4】
乾燥質量において、魚肉のすり身に対して5〜30質量%の米粉と1.5〜15質量%でん粉が含まれていることを特徴とする乾燥魚肉食品。
【請求項5】
さらに具材が混合されていることを特徴とする請求項4記載の乾燥魚肉食品。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2011−193753(P2011−193753A)
【公開日】平成23年10月6日(2011.10.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−61722(P2010−61722)
【出願日】平成22年3月18日(2010.3.18)
【出願人】(506252598)株式会社新湊かまぼこ (2)
【出願人】(500405945)
【出願人】(500405923)
【Fターム(参考)】