説明

乾麺類の製造方法

【課題】特徴のある食感、例えば、うどんにおいてはもちもち感を有し、パスタにおいては生パスタ風食感を有し、かつ小麦粉の風味および美味しさを保持する乾麺類を製造しうる乾麺類の製造方法を提供すること。
【解決手段】生麺を調湿乾燥処理により水分含量15質量%以下に乾燥して乾麺類を製造する方法において、麺の水分含量が24〜17質量%になるまでは、マイクロ波照射処理と調湿乾燥処理とを併用して生麺を乾燥させる。好ましくは、マイクロ波照射処理を、マイクロ波の出力が、生麺1kgに対して0.5〜1.5kWで行い、マイクロ波照射処理併用時の調湿乾燥処理を、温度25〜50℃、相対湿度60〜85%で行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、乾麺類の製造方法、詳しくは、特徴のある食感を有し、かつ小麦粉の風味および美味しさを保持する乾麺類を製造しうる乾麺類の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
麺類の乾燥方法としては、調湿乾燥処理が一般に行われている。また、従来より、麺類の乾燥方法としてマイクロ波照射処理も知られている。例えば、特許文献1には、生麺を、真空度20〜100トルの雰囲気中で出力2〜4.5KWのマイクロ波照射処理することにより乾燥する乾麺類の製造方法が記載されている。また、特許文献2には、蒸し麺をマイクロ波加熱処理することにより乾燥膨化し、ノンフライ即席麺を製造する方法が記載されている。
一般に、乾麺類は、生麺に比べて小麦粉の風味および美味しさが失われており、また食感も低下する傾向にある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開昭60−126039号公報
【特許文献2】特開昭60−141246号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の目的は、特徴のある食感を有し、かつ小麦粉の風味および美味しさを保持する乾麺類を製造しうる乾麺類の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは、種々検討した結果、調湿乾燥処理による生麺の乾燥工程において、一定の水分含量になるまで、調湿乾燥処理とマイクロ波照射処理とを併用して生麺を乾燥させることにより、上記目的を達成する乾麺類が得られることを知見し、斯かる知見に基づいて本発明を完成した。
【0006】
即ち、本発明は、生麺を調湿乾燥処理により水分含量15質量%以下に乾燥して乾麺類を製造する方法において、麺の水分含量が24〜17質量%になるまでは、マイクロ波照射処理と調湿乾燥処理とを併用して生麺を乾燥させることを特徴とする乾麺類の製造方法を提供するものである。
【発明の効果】
【0007】
本発明の乾麺類の製造方法によれば、特徴のある食感、例えば、うどんにおいてはもちもち感を有し、パスタにおいては生パスタ風食感を有し、かつ小麦粉の風味および美味しさを保持する乾麺類を製造することができる。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本発明の乾麺類の製造方法について詳細に説明する。
本発明に用いられる生麺としては、その種類の如何を問わず、例えば、パスタ類(スパゲッティ、マカロニなど)、うどん、ひやむぎ、そうめん、平めん、日本蕎麦、中華麺、ビーフンなどが挙げられ、特に、パスタ類(スパゲッティ、マカロニなど)やうどんが好ましい。生麺の中でも、うどんは麺線が太いため、うどんを用いた場合、従来の方法では、乾燥時間が長くなるか、あるいは強いて乾燥時間を短縮すると、麺の食感や風味が失われてしまうが、本発明の方法によれば、うどんであっても、乾燥時間を短縮できると共に、麺の食感や風味も損なわれない。
斯かる生麺は、如何なる製麺方法により得られたものでもよく、例えば、生地原料から麺生地を作製した後、得られた麺生地から麺帯を作製し、更に麺線を作製することにより得られる。
【0009】
生地原料としては、主成分としての穀粉が挙げられ、穀粉の種類は特に限定されず、例えば、強力粉、準強力粉、中力粉、薄力粉、デュラム小麦粉;蕎麦粉;米粉などが挙げられる。これらの穀粉は、麺の種類に応じて、単独でまたは2種以上組み合わせて使用することができる。例えば、パスタ類にはデュラム小麦粉、中華麺には準強力粉、うどんやそうめんには中力粉などを主として用いるとよい。
【0010】
生地原料には、上記穀粉の他、任意成分として、食塩、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、乳酸カルシウム、ポリリン酸カリウム、カンスイ;大豆油、菜種油、バター、マーガリンなどの動植物性油脂;グリセリン脂肪酸エステルなどの乳化剤;トウモロコシ澱粉、タピオカ澱粉などの生澱粉類やそれらにリン酸架橋などを施した化工澱粉;食物繊維;卵白などの卵製品;脱脂粉乳やその他の乳製品;小麦粉グルテンなどの蛋白強化剤;グアガム、キサンタンガム、カラギーナンなどの増粘剤;ショ糖などの糖質;クエン酸、酢酸などの酸味料;ビタミン、ミネラル、アミノ酸などの栄養強化剤;保存剤;酵素剤;pH調整剤;酵母エキスなどを用いることができる。これらの任意成分は、単独でまたは2種以上組み合わせて使用することができる。
【0011】
麺生地の作製方法は、特に限定されないが、例えば、生地原料に水を適宜添加しながらミキシングによって麺生地を作製する方法などが挙げられる。ミキシングによって麺生地を作製する場合、水が生地原料に十分混合され、作製される麺生地がそぼろ状になればよい。例えば、うどんの場合、15〜30分程度ミキシングを行えばよい。このとき、必要に応じて脱気しながらミキシングを行ってもよい。
【0012】
麺線の作製方法も、特に限定されないが、例えば、上記麺生地をロール圧延機や減圧押出し機などにて麺帯を作製した後、得られた麺帯を切刃を用いて切り出すことによって麺線を作製する方法、あるいは押出し機にて上記麺生地を押出しすることによって麺線を作製する方法などが挙げられる。
【0013】
このように作製される生麺(麺線)の水分含量は、通常、30〜50質量%程度であり、35〜40質量%とするのが、作業効率の向上などの点から好ましい。
【0014】
本発明は、斯かる生麺にマイクロ波照射処理と調湿乾燥処理とを併用して、麺の水分含量が24〜17質量%、好ましくは22〜19質量%になるまで乾燥させる。
マイクロ波照射処理と調湿乾燥処理との併用による乾燥処理を麺の水分含量が24質量%になる前で止めると、もちもちした食感や良好な風味が得られず、また麺の水分含量が17質量%未満まで乾燥させると、麺線にクラックが入りやすく好ましくない。
【0015】
マイクロ波照射処理は、マイクロ波の出力が、生麺1kgに対して、好ましくは0.5〜1.5kW、より好ましくは0.8〜1.2kWの範囲で行うのが、喫食時の麺の食感(特に麺のコシ)が損なわれない点から好ましい。マイクロ波の出力が生麺1kgに対して0.5kW未満であると、食感改良の効果が少なく、また1.5kW超であると、処理のバラつきや部分的な過乾燥が生じやすい。
【0016】
マイクロ波の照射時間は、15〜60分間、特に30〜50分間とするのが、喫食時の麺の食感(特に麺のもちもち感)が損なわれない点から好ましい。
マイクロ波の照射時間が15分間未満であると、食感改良効果が小さく、また60分間超であると、処理のバラつきや部分的な過乾燥が生じやすい。
【0017】
マイクロ波の周波数は、特に制限されるものではないが、通常の電子レンジに使用される2450MHzのマイクロ波を使用するのが好ましい。
また、マイクロ波照射処理は、常圧下で行われるのが、作業効率向上の点から好ましい。
【0018】
マイクロ波照射処理併用時の調湿乾燥処理としては、例えば、冷風または温風調湿乾燥処理などが挙げられる。
マイクロ波照射処理併用時の調湿乾燥処理は、温度25〜50℃、特に30〜40℃で、湿度(相対湿度)60〜85%、特に65〜80%で行うのが、喫食時の麺の食感や風味が損なわれない点から好ましい。
なお、調湿乾燥処理における冷風または温風の風速は、麺線全体の乾燥状態を均一にするため、0.5〜1.5m/s、特に0.7〜1.2m/sとするのが、喫食時の麺の食感が損なわれない点から好ましい。
【0019】
上記のマイクロ波照射処理と調湿乾燥処理との併用による乾燥処理後は、調湿乾燥処理のみにより、麺の水分含量が15質量%以下、好ましくは12〜14質量%になるまで麺を乾燥させる。
この調湿乾燥処理は、乾麺やパスタ類の乾燥で通常使用される乾燥条件(普通乾燥、高温乾燥、超高温乾燥)で行なえばよい。
【実施例】
【0020】
以下、実施例および比較例を挙げて本発明をさらに具体的に説明するが、本発明は以下の実施例によって何ら制限されるものではない。
【0021】
製造例1
中力粉10kgに、11%の食塩水4kgを加えて、製麺用ミキサー(トーキョー麺機械製)にて20分間混練し、製麺ロール機(トーキョー麺機械製)で常法に従い、圧延、裁断後、水分含量35.5質量%、幅3.7mm、厚さ2.5mmの生麺線(うどん)を得た。
【0022】
実施例1
上記製造例1で得られた生麺線1kgを、調湿乾燥処理(温度30℃、相対湿度80 %、風速1m/s)と、マイクロ波照射処理(出力1.0kW、周波数2450MHz)とを30分間同時に行い、水分含量20.5質量%の半生麺を得た。
得られた半生麺を、さらに調湿乾燥処理(温度30℃、相対湿度75%、風速1m/s)を7時間行い、水分含量13.5質量%の乾麺(乾燥うどん)を得た。
【0023】
実施例2
上記製造例1で得られた生麺線1kgを、調湿乾燥処理(温度35℃、相対湿度75%、風速1m/s)と、マイクロ波照射処理(出力1.5kW、周波数2450MHz)とを15分間同時に行い、水分含量23.6質量%の半生麺を得た。
得られた半生麺を、さらに調湿乾燥処理(温度30℃、相対湿度75%、風速1m/s)を7時間行い、水分含量13.5質量%の乾麺(乾燥うどん)を得た。
実施例3
上記製造例1で得られた生麺線1kgを、調湿乾燥処理(温度30℃、相対湿度80%、風速1m/s)と、マイクロ波照射処理(出力0.5kW、周波数2450MHz)とを60分間同時に行い、水分含量17.6質量%の半生麺を得た。
得られた半生麺を、さらに調湿乾燥処理(温度35℃、相対湿度75%、風速1m/s)を8時間行い、水分含量13.2質量%の乾麺(乾燥うどん)を得た。
【0024】
比較例1
上記製造例1で得られた生麺線1kgを、調湿乾燥処理(温度35℃、相対湿度75%、風速1m/s)を9時間行い、水分含量13.3質量%の乾麺(乾燥うどん)を得た。
【0025】
比較例2
上記製造例1で得られた生麺線1kgを、調湿乾燥処理(温度30℃、相対湿度80%、風速1m/s)と、マイクロ波照射処理(出力0.5kW、周波数2450MHz)とを70分間同時に行い、水分含量16質量%の半生麺を得た。
得られた半生麺を、さらに調湿乾燥処理(温度35℃、相対湿度75%、風速1m/s)を7時間行い、水分含量13.0質量%の乾麺(乾燥うどん)を得た。
【0026】
比較例3
上記製造例1で得られた生麺線1kgを、調湿乾燥処理(温度30℃、相対湿度80%、風速1m/s)と、マイクロ波照射処理(出力1.0kW、周波数2450MHz)とを15分間同時に行い、水分含量25質量%の半生麺を得た。
得られた半生麺を、さらに調湿乾燥処理(温度35℃、相対湿度75%、風速1m/s)を8時間行い、水分含量13.8質量%の乾麺(乾燥うどん)を得た。
【0027】
試験例1
実施例1〜3で得られた乾麺および比較例1〜3で得られた乾麺を12分間茹でた後、食感、風味及び外観について、下記の評価基準に従ってパネラー5名で評価を行った。その結果(食感及び風味については平均点)を表1に示す。
【0028】
食感の評価基準
5:もちもちした食感が強く非常に良い
4:もちもちした食感があり良い
3:ややもちもちした食感あり
2:もちもちした食感が弱い
1:もちもちした食感が全く無い
【0029】
風味の評価基準
5:小麦粉の風味があり非常に美味しい
4:小麦粉の風味があり美味しい
3:小麦粉の風味がやや感じられる
2:小麦粉の風味があまり感じられなく、あまり美味しくない
1:小麦粉の風味が全く感じられなく、美味しくない
【0030】
外観の評価基準
クラックの有無について観察した。
【0031】
【表1】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
生麺を調湿乾燥処理により水分含量15質量%以下に乾燥して乾麺類を製造する方法において、麺の水分含量が24〜17質量%になるまでは、マイクロ波照射処理と調湿乾燥処理とを併用して生麺を乾燥させることを特徴とする乾麺類の製造方法。
【請求項2】
マイクロ波の出力が、生麺1kgに対して0.5〜1.5kWである請求項1記載の乾麺類の製造方法。
【請求項3】
マイクロ波照射処理併用時の調湿乾燥処理を、温度25〜50℃、相対湿度60〜85%で行う請求項1又は2記載の乾麺類の製造方法。