説明

予備サーバ

【課題】サーバの構築コスト、ランニングコストを抑えながら被災時の復旧を短期間で実現する。
【解決手段】サーバ29において、初期処理部30はOSなど各機能ブロックの動作に必要な基本的なプロセスを起動する。起動状態特定部32は電源投入直後に機能し、起動状態設定ファイル102を参照して、このサーバ29に設定された起動状態を特定する。抑止プロセス特定部34は、抑止対象設定ファイル110を参照し、サーバ29に対し設定された起動状態において起動を抑止すべきプロセスを特定する。プロセス起動部36は、起動を抑止すべきプロセス以外のプロセスを起動させる。抑止解除信号受信部38は、抑止解除信号を障害監視装置26から受信する。抑止プロセス起動部40は、抑止解除信号を受信した場合に、それまで抑止していたプロセスを起動する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は情報処理技術に関し、特にクライアントサーバシステムに含まれるサーバに関する。
【背景技術】
【0002】
近年の情報処理技術の進歩およびネットワーク環境の充実化に伴い、クライアントサーバシステムを構築することによる様々なサービス提供が一般的なものとなっている。このような環境においてサーバが被災するなどにより障害が発生してしまった場合、サービス提供の停滞時間を最小限に止めるために、サーバを安全かつ即座に復旧できるようにすることが肝要である。そのため、ダウンした処理を一時的に担うことのできる構成をあらかじめサーバに組み込んでおく二重化サーバやクラスタシステムといった技術が提案されている(例えば特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2001−290670号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
二重化サーバやクラスタシステムでは基本的に、システム設計時に処理の引き継ぎに係る規則を決定しておき、それに則してシステム内のハードウェア構成が固定的に構築されていた。そのため、システムが実行する処理内容に応じてハードウェア構成を個別に設計する必要があったり、サーバ全体など、引き継ぎに係る規則を制御するハードウェアそのものに障害が及んだ場合に、復旧処理が困難になったりすることが考えられる。
【0005】
本発明はこうした状況に鑑みてなされたものであり、その目的は、システムの構築コストを抑えつつ障害発生時の復旧を短時間で達成することのできる情報処理技術を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明のある態様は予備サーバに関する。この予備サーバは、クライアント端末に対しネットワークを介して所定のサービスを提供する主サーバと同じサービスを提供可能な予備サーバであって、起動時に、主サーバで起動する複数のプロセスを全て起動可能状態にする初期処理部と、予備サーバを待機状態で起動する際に、当該待機状態に対応させてあらかじめ設定された起動抑止対象のプロセスを特定し、主サーバで起動する複数のプロセスのうち起動抑止対象のプロセスを除外したプロセスを起動するプロセス起動部と、主サーバの被災時に、抑止解除信号を受信することにより、起動抑止対象のプロセスを起動して、待機状態から主サーバと同等の本稼働状態へ移行させる抑止プロセス起動部と、を備えたことを特徴とする。
【0007】
なお、以上の構成要素の任意の組合せ、本発明の表現を方法、装置、システムなどの間で変換したものもまた、本発明の態様として有効である。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、安価なコストで障害発生時の復旧処理を速やかに実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本実施の形態を適用できるシステムの構成例を示す図である。
【図2】本実施の形態におけるサーバの構成を詳細に示す図である。
【図3】本実施の形態の第1サーバおよび第2サーバの起動時および第1センター被災時の処理手順を示すフローチャートである。
【図4】本実施の形態において起動状態設定ファイルで設定できる起動状態と、各起動状態において起動するプロセス数の例を示す図である。
【図5】本実施の形態における、あるサーバの起動状態設定ファイルの例を示す図である。
【図6】本実施の形態における抑止対象設定ファイルの設定例を示す図である。
【図7】図3のS14およびS34における起動分岐処理の詳細な手順を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
図1は本実施の形態を適用できるシステムの構成例を示している。同図においてクライアントサーバシステム10はサーバとして第1センター12、第2センター14を含み、それぞれネットワーク28を介してクライアント群16と通信可能に構成される。第1センター12および第2センター14は、クライアント群16に含まれる、ユーザが操作するクライアント端末と通信し、当該ユーザ所望のサービスを提供する。クライアントサーバシステム10はさらに、第1センター12で発生した障害を検知し、第2センター14にその旨を通知する信号を送信する障害監視装置26を含む。
【0011】
第1センター12は第1サーバ18および第1記憶装置20を含む。第2センター14は第2サーバ24および第2記憶装置22を含む。クライアントサーバシステム10において、第1センター12は障害の発生しない通常の状態(以下、通常状態と呼ぶ)においてクライアント群16と通信し、所定のサービスを提供する。第2センター14は通常状態においては、第1センター12で処理しているプロセスの少なくとも一部の起動を抑止した状態とする。
【0012】
そして第2センター14は、第1センター12が被災するなど障害が発生した際、抑止しておいたプロセスを起動することにより、第1センター12に代わりクライアント群16との通信およびサービス提供を開始する。なお同図では第1センター12、第2センター14の2つのセンターのみを示しているが、その数を限定するものではなく、第1センター12の役割、第2センター14の役割、のいずれかまたは双方を、同様の構成を有する複数のセンターで担うようにしてもよい。
【0013】
障害監視装置26は通常状態において第1センター12を監視し、あらかじめ設定された障害発生状態となった場合にその情報を出力する。このとき、その旨を通知する信号が直接、第2センター14に送信されるようにしてもよいし、障害監視装置26に備えられた表示装置(図示せず)に表示したり、保守管理を行う人員へ何らかの通信手段を用いて通知するようにしてもよい。
【0014】
前者の場合、この信号をもって、抑止したプロセスを起動させる信号とする。後者の場合、人の最終判断による指示入力を受け付けた段階で、抑止したプロセスを起動させる信号を第2センター14に送信する。障害監視装置26は第1センター12、第2センター14のいずれかに含まれていてもよい。また障害監視装置26はクライアントサーバシステム10の環境に応じて、その障害の検出手法等を適宜選択してよく、サーバ監視ツールとして実用化されているものを利用できるため、以後、詳細な説明は省略する。
【0015】
通常状態において第1センター12では第1サーバ18が、サービス提供に必要なプロセスを処理し、その際に必要な情報およびサービス提供の結果を第1記憶装置20に対して読み書きする。このとき、第1記憶装置20に書き込まれた情報は、同時にネットワーク28を介して第2センター14の第2記憶装置22にも格納しておく。これにより常に、第2記憶装置22を第1記憶装置20と同じ状態にしておく。第2サーバ24は第1サーバ18と同一のハードウェア構成でよい。通常状態において第2サーバ24は電源を投入し第1サーバ18で起動するプロセスの一部のみ、例えばOS(Operating System)などの基本プロセスのみを起動した状態とする。
【0016】
第2サーバ24と第1サーバ18を同一の構成とすることにより、クライアントサーバシステム10全体の構築が容易になりコストが抑えられるうえ、システムの構成を臨機応変に変化させることができる。またサービス提供に必要な処理は、どの状況においても第1サーバ18または第2サーバ24のいずれか一方のみで行うため、ソフトウェアライセンスのコストが2重に発生するということはない。さらに、第1センター12と第2センター14を、記憶装置のデータ更新以外の点において独立に設けることにより、自然災害などによって第1センター12全体が機能しない状況に陥っても、第2センター14の稼働開始への影響は最小限に抑えられる。
【0017】
第1センター12の被災時、同じ条件で第2センター14を稼働させるには、第1サーバ18が行っていたのと同一のプロセスを第2サーバ24で実行開始するとともに、同一のデータにアクセス可能とする必要がある。そのため上述のように、通常状態においては第1記憶装置20と同一のデータ更新を第2記憶装置22に対しても行うとともに、第2サーバ24が第2記憶装置22のデータを更新しないようにする。例えば第2記憶装置22をマウントしない状態にしておく。そのうえで、第1センター12被災時には、第2センター14へ効率よく処理を切り替えるため、第2サーバ24を次に述べるような構成とする。
【0018】
図2は第2サーバ24などのサーバの構成を詳細に示している。なお上述したように、サーバを汎用的に構築するために、第1サーバ18と第2サーバ24を同一の構成としてよく、同図ではそれらを総括してサーバ29としている。図2において、様々な処理を行う機能ブロックとして記載される各要素は、ハードウェア的には、CPU、メモリ、その他のLSIで構成することができ、ソフトウェア的には、演算やファイル操作、ネットワーク通信などを行うプログラムなどによって実現される。したがって、これらの機能ブロックがハードウェアのみ、ソフトウェアのみ、またはそれらの組合せによっていろいろな形で実現できることは当業者には理解されるところであり、いずれかに限定されるものではない。
【0019】
サーバ29は、このサーバをどの状態で起動させるかを示す「起動状態」を設定する起動状態設定ファイル102、各起動状態において起動を抑止すべきプロセスを設定する抑止対象設定ファイル110を格納した設定ファイル記憶部42を含む。サーバ29はさらに、初期処理部30、起動状態特定部32、抑止プロセス特定部34、プロセス起動部36、抑止解除信号受信部38、抑止プロセス起動部40を含む。
【0020】
初期処理部30はOSなど各機能ブロックの動作に必要な基本的なプロセスを起動する。起動状態特定部32は電源投入直後に機能し、設定ファイル記憶部42に格納された起動状態設定ファイル102を参照して、このサーバ29に設定された起動状態を特定する。ここで「起動状態」は、サービス提供に必要な全てのプロセスを起動する「本稼働」状態、あるいはあらかじめ設定した、一部のプロセスの起動を抑止する「起動抑止」状態のいずれかである。
【0021】
抑止プロセス特定部34は、設定ファイル記憶部42に格納された抑止対象設定ファイル110を参照し、サーバ29に対し設定された起動状態において起動を抑止すべきプロセスを特定する。ここで「プロセス」は、区切りが設けられた何らかの処理単位であればよく、タスク、スレッド、関数などその粒度は限定されない。プロセス起動部36は、抑止プロセス特定部34が特定した、起動を抑止すべきプロセス以外のプロセスを起動させる。起動状態設定ファイル102および抑止対象設定ファイル110の具体例は後に述べる。
【0022】
抑止解除信号受信部38は、抑止されていたプロセスを起動させるための信号、すなわち抑止解除信号を障害監視装置26から受信する。抑止プロセス起動部40は、抑止解除信号受信部38が抑止解除信号を受信した場合に、設定ファイル記憶部42に格納された抑止対象設定ファイル110などを参照し、それまで抑止していたプロセスを起動する。
【0023】
次にこれまで述べた構成によってなされる動作について説明する。図3は第1サーバ18および第2サーバ24の起動時および第1センター12被災時の処理手順を示すフローチャートである。まず第1サーバ18および第2サーバ24のいずれも電源が入っていない状態において、サーバ管理を行う人員などがそれぞれ電源を投入する(S10、S30)。するとどちらのサーバにおいても、初期処理部30がOSなど基本的なプロセスを起動させる(S12、S32)。続いてそれぞれのサーバの起動状態特定部32、抑止プロセス特定部34、プロセス起動部36は、同サーバに設定された起動状態の特定、起動抑止対象プロセスの特定、抑止対象プロセス以外のプロセスの起動、をそれぞれ行うことにより、起動状態を設定通りに分岐させる(S14、S34)。
【0024】
それにより、第1サーバ18は本稼働状態となり(S16)、第2サーバ24は起動抑止状態となる(S36)。同図ではこのときにそれぞれのサーバで処理されているプロセスの集合を、網掛けした矩形で表している。第1サーバ18では、N個のプロセスからなるプロセス集合50が処理されている。一方、第2サーバ24では、第1サーバ18で処理されているプロセス集合50のうちの一部である、n個(n<N)のプロセスからなるプロセス集合52のみが処理される。通常状態では電源をオフしない限りこの状態で、第1サーバ18を含む第1センター12よりサービスが提供される。
【0025】
ここで第1センター12が被災するなどして障害が発生した場合、障害監視装置26がそれを検知し(S20)、それに応じて人手または自動で抑止解除信号が第2サーバ24に送信される(S22)。第2サーバ24の抑止解除信号受信部38が当該信号を受信すると(S38)、抑止プロセス起動部40が、それまで起動を抑止していたプロセスを特定し、起動する(S40)。これにより第2サーバ24は本稼働状態となる(S42)。このときに処理されるプロセス集合54は、S36の起動抑止状態において処理されているプロセス集合52に、第1サーバ18における本稼働状態で処理されていたプロセス集合50との差分、すなわち(N−n)個のプロセスを加えたものである。この差分がS40で起動するプロセスである。
【0026】
第2サーバ24での本稼働状態(S42)は、当該サーバの電源をオフする(S44)まで継続する。このような動作により、第1サーバ18を含む第1センター12が被災して正常稼働が困難になった場合などに、第2サーバ24を短時間で本稼働状態とすることができ、サービス提供のダウンタイムを最小限に抑えることができる。一方、第1サーバ18、第2サーバ24のハードウェア構成、起動可能なプロセスは同一であるため、起動状態設定ファイル102の設定を変化させれば、最初から第2サーバ24を第1サーバ18と同等に機能させることもでき、システム構成の変化に臨機応変に対応できる。例えば第1サーバ18を含む第1センター12の被災状況が深刻で復旧の予定が立ちにくい場合などは、無期限で第2サーバ24を代替装置として利用することが容易にできる。
【0027】
図4は起動状態設定ファイル102で設定できる起動状態と、各起動状態において起動するプロセス数の例を示している。この例では「環境設定」と「動作設定」の2段階の設定によって最終的な起動状態を設定している。「環境設定」としては「第1サーバ」および「第2サーバ」の2つの設定を可能とする。ここで「第1サーバ」は、設定対象のサーバを図1の第1サーバ18として機能させたい場合、「第2サーバ」は第2サーバ24として機能させたい場合に、それぞれ設定する。「第1サーバ」と設定されていた場合は「動作設定」は行わない。その結果、起動抑止対象のプロセスは自動的に「なし」と判定され、サービス提供に必要な全てのプロセス、例えばN個のプロセスが起動される。ここで起動するプロセスは例えば、ウェブサービスやデータベースアクセスサービスなどのサービスを実現するためのアプリケーションに対応する。
【0028】
「環境設定」は、そのサーバが初期に与えられた環境による分岐であり、図1の第1サーバ18と第2サーバ24の役割分担を決定づけるといえる。第1サーバ18のように常時本稼働状態とするサーバは「第1サーバ」と設定することにより、その後のプロセス起動抑止処理を省略する。結果として処理が簡略化されるとともに、誤動作によるプロセス起動抑止を防止することができる。
【0029】
一方「環境設定」が「第2サーバ」と設定されていた場合はさらに「動作設定」を行う。すなわち図1の第2サーバ24のように状況に応じて起動状態の切り替えを行うサーバは、「環境設定」において「第2サーバ」と設定することにより、起動抑止状態/本稼働状態の切り替えを可能とする。また起動抑止状態のなかでも、起動を抑止すべきプロセスの切り替えを可能とする。同図では起動抑止状態として「ウォームスタンバイ」、「テスト」、「リハーサル」の3つの設定を用意している。
【0030】
「動作設定」において「本稼働」と設定されている場合は、サービス提供に必要なN個のプロセスを起動する。これは第2サーバ24において、電源投入時から本稼働状態としたい場合の設定であり、結果的な動作は「環境設定」を「第1サーバ」としたときと同等である。第1センター12が被災し復旧見込みが立たないときや、第1センター12のみでは処理能力が不足した場合などにそのような設定とすることが考えられる。
【0031】
「ウォームスタンバイ」と設定されている場合は、Nより少ないn個のプロセスを起動する。例えばハードウェアのチェックなど、提供するサービスに対応するプロセスや記憶装置をマウントするプロセスを除外したプロセスを起動する。これにより、図1の第2サーバ24の役割、すなわち第1サーバ18が被災した際に本稼働へ移行するために待機するサーバを実現できる。
【0032】
同様に、「テスト」と設定されている場合は、Nより少ないn個のプロセスを起動する。「リハーサル」と設定されている場合は、Nより少ないn個のプロセスを起動する。「テスト」は例えばデータベースの定義の入れ替えなど一部の機能に係る何らかの更新を行った際、当該機能のみをテストするときなどに設定する。「リハーサル」は本稼働と同等の環境で処理を実施して、サーバが正常稼働するか否かを確認するときなどに設定する。このようにすることで第2サーバ24を様々な用途に容易に利用することができる。
【0033】
図5は、あるサーバの起動状態設定ファイル102の例を示している。起動状態設定ファイル102は「環境」欄104および「動作」欄106を含む。「環境」欄104は図4の「環境設定」の設定値であり、この例では「第2サーバ」を設定している。「動作」欄106は図4の「動作設定」の設定値であり、この例では「ウォームスタンバイ」を設定している。このような起動状態設定ファイル102をサーバごとに準備し、設定値を変化させることにより、起動時のサーバの状態を切り替えることができる。なお上述のとおり「環境」欄104を「第1サーバ」とした場合、「動作」欄106の設定値は無効とする。
【0034】
図6は抑止対象設定ファイル110の設定例を示している。抑止対象設定ファイル110は「動作」欄112、「格納場所」欄114、および「起動抑止対象」欄116を含む。「動作」欄112は「動作設定」で設定可能な状態を全て記載する。そして「格納場所」欄114、「起動抑止対象」欄116には、「動作」欄106に記載した各状態において起動抑止対象のプロセスを実行するためのスクリプトやプログラムの、記憶装置における格納場所および当該スクリプトやプログラムのファイル名をそれぞれ記載する。
【0035】
同図では「ウォームスタンバイ」状態においては、「/etc/rc2.d」および「/etc/rc3.d」なるディレクトリにそれぞれ格納された「S01httpd」、「S99xxxxx」なるファイルに対応するプロセスを起動抑止対象とする、という設定がなされている。以後、「テスト」状態や「リハーサル」状態においても、それぞれ起動を抑止すべきプロセスに対応するファイルを設定する。全てのプロセスを起動する「本稼働」状態に対しては、抑止対象設定ファイル110への設定は行わなくてよい。抑止対象設定ファイル110は全てのサーバで共通のものを準備してもよいし、第2サーバ24など「動作設定」を行うサーバにのみ準備してもよい。
【0036】
図7は図3のS14およびS34における起動分岐処理の詳細な手順を示すフローチャートである。まず起動状態特定部32は、サービス提供に必要な全プロセス、図3の例ではN個のプロセスを起動対象として準備する(S62)。次に起動状態設定ファイル102を参照し、「環境設定」が「第1サーバ」であるか「第2サーバ」であるかを確認する(S64)。「第2サーバ」であったら(S64のN)、「動作設定」の設定値を特定し、抑止プロセス特定部34が抑止対象設定ファイル110を参照することにより、起動抑止対象のファイルを特定する(S66)。続いて特定したファイルを起動対象から除外する(S68)。S64において、「環境設定」が「第1サーバ」であったら(S64のY)、S66とS68の処理は省略する。そしてプロセス起動部36は、最終的に起動対象として残っているスクリプトファイルを順次実行していくことによりプロセスを起動する(S70)。
【0037】
ここでサーバをUNIX(登録商標)上で動作させる場合を考える。UNIXでは装置起動時に、所定のディレクトリ配下にあるスクリプトファイルを所定の順序で実行していくことにより各ファイルに対応するプロセスが起動される。このときファイル名の先頭に“_”があるスクリプトファイルは実行対象から除外される。このような場合、まず起動状態特定部32、抑止プロセス特定部34の機能を実現するスクリプトファイルを生成したら、当該ファイルが全スクリプトファイルのうち最初に実行されるようにファイル名や格納場所を決定する。
【0038】
そのようにすることで図7のS62〜S68の処理を他のプロセスに先駆けて実施する。そしてS62において、全スクリプトファイルのファイル名を確認していき、先頭に“_”がついていたらそれを外す。またS66において起動抑止対象のファイルを特定したら、S68において当該ファイルのファイル名の先頭に“_”を付けてファイル名を更新する。これにより一般的な手順と同様にプロセス起動を行っても、起動抑止対象のプロセスは起動されない。
【0039】
図3のS40において抑止していたプロセスを起動させる場合は、スクリプトファイルのうち名前の先頭に“_”がついているファイルを検出するか、抑止対象設定ファイル110を参照して、起動が抑止されているファイルを特定し、当該スクリプトを実行すればよい。上記はUNIXの場合であるが、例えば抑止対象のプロセスのスクリプトファイルをその他のスクリプトファイルと別の格納場所に移動させるなど、使用するOSによって様々な処理が考えられることは当業者には理解されるところである。
【0040】
以上、述べた本実施の形態によれば、サーバとしてサービス提供を担う第1センターと半ば独立に、同様の構成を有する第2センターを設ける。そして第1センターにおいて記憶装置に書き込まれた情報は第2センターの記憶装置にもコピーすることにより、記憶装置を同等にしておくとともに、第2センターのサーバはサービス提供に係るプロセスを動作させず、かつ電源を投入した状態としておく。起動を抑止するプロセスは起動状態設定ファイルのみで設定可能とする。これにより、第1センターが被災するなどしてサービス提供が滞る状態が生じた場合に、第2センターのサーバを立ち上げ直すといった作業をせずに、起動抑止を解除する信号のみで、速やかに抑止対象であったプロセスを起動させ、サービス提供を再開できる。また起動抑止対象のプロセスを臨機応変に変化させることができ、テストやリハーサルといった用途で第2センターのサーバを利用することができる。
【0041】
さらに起動状態設定ファイルのみで起動状態を設定できるようにすることで、第1センターのサーバ、第2センターのサーバといった区別なくシステムを構築することができ、人手によるサーバの起動作業も同様とすることができる。結果としてシステム構築に係るコストを抑えることができる。また第1センターにおけるサーバで稼働しているサービスに係るプロセスは第2センターにおけるサーバで起動しないことにより、ソフトウェアのライセンスコストが二重にかかることがない。本実施の形態は一般的なOSで実現可能であり、サーバも汎用的なもので実現できるため、導入障壁が低い。
【0042】
以上、本発明を実施の形態をもとに説明した。この実施の形態は例示であり、それらの各構成要素や各処理プロセスの組合せにいろいろな変形例が可能なこと、またそうした変形例も本発明の範囲にあることは当業者に理解されるところである。
【符号の説明】
【0043】
10 クライアントサーバシステム、12 第1センター、 14 第2センター、 18 第1サーバ、 20 第1記憶装置、 22 第2記憶装置、 24 第2サーバ、 30 初期処理部、 32 起動状態特定部、 34 抑止プロセス特定部、 36 プロセス起動部、 38 抑止解除信号受信部、 40 抑止プロセス起動部、 42 設定ファイル記憶部、 102 起動状態設定ファイル、 110 抑止対象設定ファイル。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
クライアント端末に対しネットワークを介して所定のサービスを提供する主サーバと同じサービスを提供可能な予備サーバであって、
起動時に、前記主サーバで起動する複数のプロセスを全て起動可能状態にする初期処理部と、
前記予備サーバを待機状態で起動する指示入力を受け付けた際、当該待機状態に対応させてあらかじめ設定された起動抑止対象のプロセスを特定し、前記複数のプロセスのうち前記起動抑止対象のプロセスを除外したプロセスを起動するプロセス起動部と、
前記主サーバの被災時に、抑止解除信号を受信することにより、前記起動抑止対象のプロセスを起動して、前記待機状態から前記サービスを提供する本稼働状態へ移行させる抑止プロセス起動部と、
を備えたことを特徴とする予備サーバ。
【請求項2】
前記プロセス起動部はさらに、前記予備サーバを、前記主サーバの一部の機能をテストするためのテスト状態で起動する指示入力を受け付けた際、当該テスト状態に対応させてあらかじめ設定された起動抑止対象のプロセスを特定して、前記複数のプロセスのうち当該起動抑止対象のプロセスを除外したプロセスを起動し、
前記抑止プロセス起動部はさらに、前記抑止解除信号を受信することにより、前記起動抑止対象のプロセスを起動して、前記テスト状態から前記本稼働状態へ移行させることを特徴とする請求項1に記載の予備サーバ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2011−209768(P2011−209768A)
【公開日】平成23年10月20日(2011.10.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−73762(P2010−73762)
【出願日】平成22年3月26日(2010.3.26)
【出願人】(000155469)株式会社野村総合研究所 (1,067)
【Fターム(参考)】