説明

予測装置および予測方法

【課題】証券業務システムに含まれるサーバの使用の度合いをより正確に予測する。
【解決手段】予測装置100は、証券業務システムに含まれるサーバのCPU使用率を基本パターンに基づいて予測する。予測装置100は、証券の値動きに関連し発生が予定されているイベントに関する予定イベント情報を保持する予定イベント情報保持部102と予定イベント情報と証券の値動きに関してネットワーク134から得られる動向情報の集計結果とに基づいて、基本パターンを補正すべきか否かを判定する蓋然性判定部128と、補正すべきであると判定された場合、複数の補正パターンのなかから適用されるべき補正パターンを選択する補正パターン選択部130と、選択された補正パターンを基本パターンに適用することによってサーバのCPU使用率の予測値を演算する予測部118と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、予測技術に関し、特に証券業務システムに含まれるサーバの使用の度合いを予測するための予測装置および予測方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ユーザがインターネットを介して株式売買や外貨取引を行えるオンラインサービスが普及している。その手軽さや手数料の低さから、オンラインサービスのユーザ数は年々増大している。ユーザ数の増大に伴い、オンラインサービスを提供する証券業務システムへの負荷も大きくなってきている。オンラインサービスでは取引の即時性が特に重要視されることから、過負荷によるシステムダウンをできる限り回避しなければならない。
【0003】
そこで本出願人は特許文献1および特許文献2において、証券業務システムへの負荷を予測する技術を提案している。このように予測された負荷に基づき、システムのキャパシティが予測された負荷を十分上回るようにするための処理が行われることが望ましい。本出願人は特許文献3および特許文献4において、そのような処理の例を提案している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007−265244号公報
【特許文献2】特開2007−265245号公報
【特許文献3】特開2010−39763号公報
【特許文献4】特開2010−152818号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
企業の破綻や地震や国債の格付け引き下げなどの突発的なイベントが発生すると、証券業務システムへの負荷はそれまでのトレンドから外れた動きを示す場合が多い。主に過去の稼動実績に基づいて証券業務システムへの負荷を予測する従来の手法では、そのような突発的なイベントへの対応は困難である。
【0006】
本発明はこうした課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、金融商品業務システムに含まれるサーバの使用の度合いをより正確に予測できる予測技術の提供にある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明のある態様は予測装置に関する。この予測装置は、金融商品業務システムに含まれるサーバの使用の度合いを、所定の変動パターンに基づいて予測するための予測装置であって、金融商品の値動きに関連し発生が予定されているイベントに関する予定イベント情報を保持する予定イベント情報保持部と、予定イベント情報保持部によって保持される予定イベント情報と、金融商品の値動きに関してネットワークから得られる動向情報とに基づいて、変動パターンを補正すべきか否かを判定する判定部と、判定部において補正すべきでないと判定された場合、変動パターンに基づいてサーバの使用の度合いの予測値を演算する予測部と、変動パターンを補正するための補正パターンが複数あるとき、判定部において補正すべきであると判定された場合、複数の補正パターンのなかから適用されるべき補正パターンを選択する補正パターン選択部と、を備える。予測部は、判定部において補正すべきであると判定された場合、補正パターン選択部によって選択された補正パターンを変動パターンに適用することによってサーバの使用の度合いの予測値を演算する。
【0008】
この態様によると、予定イベント情報と動向情報とに基づいた補正パターンの適用の可否の判定が可能となる。
【0009】
なお、以上の構成要素の任意の組み合わせや、本発明の構成要素や表現を装置、方法、システム、コンピュータプログラム、コンピュータプログラムを格納した記録媒体などの間で相互に置換したものもまた、本発明の態様として有効である。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、金融商品業務システムに含まれるサーバの使用の度合いをより正確に予測できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】実施の形態に係る予測装置の予測対象となるサーバを含む証券業務システムの構成を示す模式図である。
【図2】図2(a)〜(f)は、証券取引所の売買立ち会い時間におけるサーバのCPU使用率の変化の例を示すグラフである。
【図3】本実施の形態に係る予測装置およびそれに接続された部材の機能および構成を示すブロック図である。
【図4】図3の予定イベント情報保持部の一例を示すデータ構造図である。
【図5】図3の集計結果保持部の一例を示すデータ構造図である。
【図6】図3の第1対応関係保持部の一例を示すデータ構造図である。
【図7】図3の第2対応関係保持部の一例を示すデータ構造図である。
【図8】図3の予測装置における一連の処理を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、各図面に示される同一または同等の構成要素、部材、処理には、同一の符号を付するものとし、適宜重複した説明は省略する。
【0013】
本実施の形態に係る予測装置は、ユーザがネットワークを介して証券の売買、外貨取引、証拠金取引等を行えるオンラインサービスを提供する証券業務システムに含まれるサーバの将来の使用の度合いを、一日のなかの時間帯単位や日単位や週単位等の比較的短期的な視点で予測する。その予測では、CPU(central processing unit)使用率や消費電力やストレージ空き容量や通信パケット量などのサーバの使用の度合いの履歴および口座数の履歴に基づき決定される基本的な変動のパターン(以下、基本パターンと称す)が使用される。基本パターンは、例えば特許文献1や特許文献2に記載されるキャパシティ予測技術を使用して決定されてもよい。
【0014】
基本パターンは過去の稼動実績や変化のトレンドを反映する。したがって、例えば証券の値動きに関する突発的なイベントが発生すると、サーバの実際の使用の度合いは基本パターンのみに基づく予測値(補正パターン(後述)が適用されない状態の基本パターンに基づいて取得されるサーバの使用の度合いの予測値であり、以下、未補正予測値と称す)から乖離し、特に大きくなることが多い。突発的なイベントは、例えば地震や大企業の破綻、不祥事やIPO(Initial Public Offering)や予想に反した決算・市況・雇用統計や予想に反した選挙結果や主要国の国債の格付け引き下げなどである。本発明者の独自の解析によると、突発的なイベントの属性によって未補正予測値からの増加の態様をパターン化できる。すなわち、突発的なイベントの属性に応じて、基本パターンを補正する補正パターンを定めることができる。
【0015】
例えば、大企業が突然破綻した場合や、発表された企業決算が予想に反している場合、ひとつまたは少数の銘柄が他の銘柄よりも活発に動くことが多い。この場合、その銘柄に値がついた時点で取引件数が増える、すなわちサーバの使用の度合いが増える傾向にある。また、その銘柄の値動きを興味本位で見るユーザが増えることにより、情報参照系の処理が通常よりも増加する傾向にある。このような知見に基づき、基本パターンを補正するひとつの補正パターンとして1銘柄パターンを定めることができる。
【0016】
また、地震などの天変地異が発生したり、選挙の結果や市況が予想に反している場合、相場全体または多くの銘柄が通常よりも活発に動くことが多い。この場合、自分の資産がどのように推移するかをチェックするユーザが増えることが考えられる。そのため、情報参照系の処理が通常よりも増加する傾向にある。また、狼狽売りがより起こりやすい環境になる。このような知見に基づき、基本パターンを補正するひとつの補正パターンとして相場全体パターンを定めることができる。
【0017】
実施の形態に係る予測装置は、報道機関のウェブサイトや電子掲示板やウェブログやSNS(Social Network Service)サイトなどからインターネットなどのネットワークを介して得られる情報に基づき、突発的なイベントの発生の蓋然性を判定する。予測装置は、そのような蓋然性が高い場合、起こるかもしれない突発的なイベントの属性に応じた補正パターンを基本パターンに適用することによって、サーバの使用の度合いを予測する。これにより、突発的なイベントの発生を考慮に入れた形で使用の度合いを予測できるので、予測の精度を高めることができる。
【0018】
(証券業務システム200)
図1は、実施の形態に係る予測装置の予測対象となるサーバを含む証券業務システム200の構成を示す模式図である。証券業務システム200は、証券会社に設置され、顧客などのユーザからの証券の売買注文を受け付けたり、証券注文に役立つ様々な情報を提供するシステムである。
【0019】
証券業務システム200は、プレゼンテーションレイヤ210とビジネスロジックレイヤ220とデータベースレイヤ230とを含む。プレゼンテーションレイヤ210は、主にクライアント端末202、204、206から入力されるデータを受け付けてビジネスロジックレイヤ220に渡したり、またはビジネスロジックレイヤ220から提供されるデータをウェブページに加工してクライアント端末202、204、206に提供する役割を有する。ビジネスロジックレイヤ220は、証券の売買注文や情報の提供などの実際の処理を担当する役割を有する。
【0020】
プレゼンテーションレイヤ210は、複数のウェブサーバ212、214、216、218を含む。本実施の形態では、証券業務システム200に対するアクセスチャネル毎に、ウェブページの処理を実行するサーバのグループが準備されている。図1では、ウェブ経由の一般顧客、コールセンタ、支店からそれぞれのクライアント端末202、204、206を使用して証券業務システム200にアクセスする場合を想定している。したがって、プレゼンテーションレイヤ210は、一般顧客からのアクセスに対する処理を担当する一般用ウェブサーバ212と、コールセンタからのアクセスに対する処理を担当するコールセンタ用ウェブサーバ214と、支店からのアクセスに対する処理を担当する支店用ウェブサーバ216と、を備える。さらに、通常は休止している予備の予備ウェブサーバ218を準備しておいてもよい。各ウェブサーバ212、214、216、218は、複数のサーバで構成されてもよい。各ウェブサーバ212、214、216、218は、上記の機能の他、クライアント端末202、204、206からの要求に応じてプログラムを実行しその結果を送信する動的ページの生成機能やトランザクション管理機能などを実装している。
【0021】
ビジネスロジックレイヤ220には、アクセスチャネル毎ではなく、所定のアプリケーションを専用に実行するサーバのグループが準備されている。ビジネスロジックレイヤ220は、現在および過去の株価や出来高、会社情報などの証券売買の際に必要となる情報をクライアント端末202、204、206に提供するアプリケーションを実行する情報提供アプリケーションサーバ222、株や投資信託などの売買注文を受け付けるアプリケーションを実行する注文処理アプリケーションサーバ224、ユーザのログインやログアウト、顧客情報などを管理するアプリケーションを実行する事務処理アプリケーションサーバ226を備える。これ以外にも、例えば、外部の新聞社のサイトなどと連携して経済ニュースを提供する外部連携アプリケーションサーバや、顧客毎に取引残高の報告書などを提供する報告書アプリケーションサーバなどを備えていてもよい。各アプリケーションサーバ222、224、226は、複数のサーバで構成されてもよい。各アプリケーションサーバ222、224、226は、上記の業務処理の機能の他、一般のアプリケーションサーバが有している機能、例えば、データベースレイヤ230のデータベースへの接続機能、複数の処理を連結するトランザクション管理機能なども実装している。
【0022】
データベースレイヤ230には、ビジネスロジックレイヤ220から参照されたり更新されたりするデータベース(database、DB)が準備されている。データベースレイヤ230は、ビジネスロジックレイヤ220の各サーバの主たるデータベースとなるメインDB232と、主に参照目的で設けられた情報系DB234と、を備える。
【0023】
各アプリケーションサーバ222、224、226では、複数のクライアント端末に対するサービス242、244、246、248、250、252が同時に実行される。例えば、情報提供アプリケーションサーバ222では、一般顧客に対して株価情報を提供するサービスA242と、コールセンタに対して株価情報を提供するサービスB244が同時に実行されてもよい。注文処理アプリケーションサーバ224では、コールセンタからの株式売買注文を処理するサービスC246と、店舗からの投資信託売買注文を処理するサービスD248が同時に実行されてもよい。
【0024】
一般顧客、コールセンタや支店の担当員は、それぞれのクライアント端末202、204、206からウェブブラウザなどのソフトウェアを使用し、インターネット等のネットワーク208を介して証券業務システム200にアクセスする。コールセンタや支店に備えられるクライアント端末204、206は、証券業務システム200と専用線209によって接続されていてもよい。
【0025】
クライアント端末202、204、206から証券業務システム200にアクセスすると、プレゼンテーションレイヤ210のアクセスチャネルに応じたウェブサーバ212、214、216によって作成されたウェブページが、クライアント端末202、204、206に送信される。クライアント端末202、204、206は、送信されたウェブページをディスプレイに表示する。ユーザがウェブページ上でログイン、情報の閲覧、売買注文などの操作を実行すると、その情報がウェブサーバ212、214、216を介してビジネスロジックレイヤ220のアプリケーションサーバ222、224、226に渡される。各アプリケーションサーバ222、224、226による処理の結果は、ウェブサーバ212、214、216によってウェブページに加工され、そのデータがクライアント端末202、204、206に送信される。こうしてユーザは、ウェブページに表示される種々の情報を参照したり、またはウェブページを通じて証券の売買注文をすることができる。
【0026】
上述したような証券業務システムでは、アクセス数の増大によりシステム内のサーバに負荷がかかりすぎると、正常なサービスを提供できなくなる虞がある。このような事態は顧客に迷惑をかけるため、証券業務システム内のサーバの使用の度合いを予測し、その予測に基づいて計画的にシステムの構成変更、例えば予備のサーバをオンラインにする等の処理を行うことが望ましい。そこで本実施の形態に係る予測装置は、基本パターンに必要に応じて適切な補正パターンを適用することにより、サーバのCPU使用率を精度良く予測する。
【0027】
(パターン)
図2(a)〜(f)は、証券取引所の売買立ち会い時間におけるサーバのCPU使用率の変化の例を示すグラフである。各グラフにおいて、横軸は一日のうちの時刻を示し、縦軸はサーバのCPU使用率を任意の単位で示す。図2(a)、(b)はそれぞれ、突発的なイベントのない日の情報提供アプリケーションサーバ222および注文処理アプリケーションサーバ224のCPU使用率の推移を示す。図2(c)、(d)はそれぞれ、売買立ち会い時間開始前に突然大企業破綻の報が流れた場合の、情報提供アプリケーションサーバ222および注文処理アプリケーションサーバ224のCPU使用率の推移を示す。図2(e)、(f)はそれぞれ、売買立ち会い時間開始前に発表された市況の内容が予想に反したものである場合の、情報提供アプリケーションサーバ222および注文処理アプリケーションサーバ224のCPU使用率の推移を示す。図2(a)〜(f)において、実線のグラフはCPU使用率の実測値を示し、破線のグラフはCPU使用率の未補正予測値を示す。
【0028】
図2(a)、(b)に見られるように、突発的なイベントがなければ、未補正予測値と実測値とは良く一致するので、基本パターンを補正しなくても各サーバのCPU使用率を十分精度良く予測することができる。しかしながら、図2(c)〜(f)に見られるように、突発的なイベントが発生した場合、未補正予測値と実測値との乖離が比較的大きくなる。
【0029】
突然大企業破綻の報が流れた場合、図2(c)、(d)に見られるように、情報提供アプリケーションサーバ222についても注文処理アプリケーションサーバ224についても立ち会い時間を通じてCPU使用率が高まる傾向にある。特に立ち会い開始直後に見られるCPU使用率の最大値は、未補正予測値の最大値よりも大きくなる。また、前場、後場を通じてCPU使用率は一定の割合で高くなる。前場と後場との間の休憩時間はCPU使用率は未補正予測値と大差ない値となる。さらに、情報提供アプリケーションサーバ222と注文処理アプリケーションサーバ224とで比較した場合、注文処理アプリケーションサーバ224のほうが未補正予測値からの増分が大きくなっている。
【0030】
このように、大企業の破綻や予想に反する決算が出た場合のCPU使用率の変化を解析することにより、1銘柄パターンを定めることができる。この1銘柄パターンは、情報提供アプリケーションサーバ222についても注文処理アプリケーションサーバ224についてもCPU使用率の予測値を増やす方向に基本パターンを補正する。また、増やされる割合は、情報提供アプリケーションサーバ222よりも注文処理アプリケーションサーバ224のほうが大きい。
【0031】
発表された市況の内容が予想に反したものである場合、図2(e)、(f)に見られるように、情報提供アプリケーションサーバ222についても注文処理アプリケーションサーバ224についても立ち会い時間を通じてCPU使用率が高まる傾向にある。情報提供アプリケーションサーバ222については、未補正予測値からの増分は突然大企業破綻の報が流れた場合(図2(c)の場合)の増分よりも大きい。注文処理アプリケーションサーバ224については、未補正予測値からの増分は突然大企業破綻の報が流れた場合(図2(d)の場合)の増分よりも小さい。さらに、情報提供アプリケーションサーバ222と注文処理アプリケーションサーバ224とで比較した場合、情報提供アプリケーションサーバ222のほうが未補正予測値からの増分が大きくなっている。
【0032】
このように、発表された市況の内容が予想に反したものである場合や地震が発生した場合や選挙の結果が予想に反している場合のCPU使用率の変化を解析することにより、相場全体パターンを定めることができる。この相場全体パターンは、情報提供アプリケーションサーバ222のCPU使用率の予測値が1銘柄パターンによる補正によって得られる予測値よりも大きくなるように、基本パターンを補正する。また、相場全体パターンは、注文処理アプリケーションサーバ224のCPU使用率の予測値が、未補正予測値よりは大きいが1銘柄パターンによる補正によって得られる予測値よりは小さくなるように、基本パターンを補正する。
【0033】
(突発的なイベントの発生の蓋然性)
本実施の形態に係る予測装置は、証券の値動きに関連し発生が予定されているイベント(以下、予定イベントと称す)に関する予定イベント情報と証券の値動きに関してネットワークから得られる動向情報とに基づき、突発的なイベントの発生の蓋然性を判定する。
【0034】
突発的なイベントは、1銘柄パターンに対応するものであるか相場全体パターンに対応するものであるかといった属性とは別に、蓋然性の判定の観点から少なくとも以下の3種類に分類できる。すなわち、以下の種類のそれぞれについて、1銘柄パターンに対応するイベントと相場全体パターンに対応するイベントとが存在しうるということである。
【0035】
(1)予想とは異なる結果を生じる予定イベント(以下、予想外イベントと称す)
市況の発表や雇用統計の発表や企業の決算の発表や選挙やキャンペーンなどの予め所定の期日に発生が予定されている予定イベントの結果が予想通りである場合、株価等はその結果を既に織り込み済みであることが多く、サーバのCPU使用率は大きくは上ぶれしない。しかしながら、予定イベントが予想とは異なる結果を生じる場合は、その予定イベントが市場に与える影響は大きく、CPU使用率が未補正予測値よりも顕著に大きくなる可能性が高い。したがって、そのような予想外イベントを突発的なイベントと見なすことができる。また、IPO対象企業の人気が想定よりも高い場合も突発的なイベントと見なすことができる。
【0036】
近年、インターネット等は社会により深く浸透し、ウェブログやSNSに代表されるように個人がより容易に公衆に向けて情報を発信できるようになってきている。ネットワークの性質上、そのように発信された情報の検索、収集は容易である。したがって、予想外イベントが発生する場合、そのことについて内部の者から発信される情報やアナリストによる示唆などを事前にネットワークから取得できることが多い。予想外イベントが発生する蓋然性が高いほど、そのような情報発信や示唆の数も多くなると考えられる。したがって、ネットワークから取得できる情報の数が一定数を超えたところで、それを予想外イベントの発生の予兆の捕捉とすることができる。
【0037】
個々の情報の質や真偽のほどはどうあれ、情報の数が増えればそれだけ注目度が高いことを意味している。一般に注目度が高いほどそのイベントの発生の蓋然性も高い。したがって、情報の数を見ることでイベントの発生の蓋然性を測るという思想である。
【0038】
(2)予定イベントではないがネットワーク上に予兆が現れるイベント(以下、予兆捕捉可イベントと称す)
例えば、前日のニューヨーク市場で暴落が発生した場合、東京市場でも大きな値動きが発生し、それに伴いユーザのアクセス件数も増える可能性が高い。したがって、前日のニューヨーク市場の暴落を予兆とすることができる。また、企業の突然の破綻や企業の不祥事の露呈が起こる場合、そのことについて内部の者から発信される情報やアナリストによる示唆などを事前にネットワークから取得できることが多い。破綻や露呈の蓋然性が高いほど、そのような情報発信や示唆の数も多くなると考えられる。したがって、ネットワークから取得できる情報の数が一定数を超えたところで、それを企業の破綻や企業の不祥事の露呈の予兆の捕捉とすることができる。
【0039】
(3)予定イベントでなく、ネットワーク上に予兆も現れないイベント(以下、予兆捕捉不可イベントと称す)
地震などの天変地異である。あるいはまた、企業の突然の破綻や企業の不祥事の露呈について、予兆が現れないものもある。
【0040】
本実施の形態に係る予測装置は、(1)および(2)については、予定イベント情報と動向情報の数とを監視し、予兆を捉えることで蓋然性を判定する。予測装置は、(3)については、サーバのCPU使用率の実測値と予測値との乖離を監視することで蓋然性を判定する。
【0041】
(予測装置)
図3は、本実施の形態に係る予測装置100およびそれに接続された部材の機能および構成を示すブロック図である。ここに示す各ブロックは、ハードウエア的には、コンピュータのCPUをはじめとする素子や機械装置で実現でき、ソフトウエア的にはコンピュータプログラム等によって実現されるが、ここでは、それらの連携によって実現される機能ブロックを描いている。したがって、これらの機能ブロックはハードウエア、ソフトウエアの組合せによっていろいろなかたちで実現できることは、本明細書に触れた当業者には理解されるところである。
【0042】
検索集計装置132は、ネットワーク134を介して報道機関サーバ136や電子掲示板サーバ138やウェブログサーバ140やSNSサーバ142から動向情報を取得し集計する。検索集計装置132は例えば、予測装置100の管理者から与えられた予定イベントに関する関連キーワードに基づき動向情報を検索し、集計する。特に検索集計装置132は、動向情報の取得先(以下、ソースと称する)ごとに、検索でヒットした動向情報の数を得る。また検索集計装置132は、予測装置100の管理者によって指定された報道機関サーバ136や電子掲示板サーバ138やウェブログサーバ140やSNSサーバ142から任意に動向情報を収集し、それをイベントごとに分別し、集計する。特に検索集計装置132は、ソースごとイベントごとに、収集した動向情報の数を得る。検索集計装置132は定期的に、例えば一日一回、その日の集計結果をネットワーク134を介して予測装置100に送信する。
【0043】
検索集計装置132は、例えば株式会社野村総合研究所が提供する「TRUE TELLER」などを使用して構成されてもよい。あるいはまた、報道機関サーバ136や電子掲示板サーバ138やウェブログサーバ140やSNSサーバ142からネットワーク134を介して取得された情報を、人が分別したり集計したりしてもよい。
【0044】
予測装置100は証券業務システム200の内部に設けられてもよく外部に設けられてもよい。予測装置100は、予定イベント情報保持部102と、集計結果保持部104と、第1対応関係保持部144と、第2対応関係保持部146と、予定イベント情報取得部110と、集計結果取得部112と、実稼動取得部114と、補正パターン取得部116と、予測部118と、比較部120と、あふれ処理部122と、基本パターンの情報および補正パターンの情報を保持するパターン情報保持部148と、を備える。
【0045】
図4は、予定イベント情報保持部102の一例を示すデータ構造図である。予定イベント情報保持部102は予定イベント情報を保持する。予定イベント情報保持部102は、予定イベントを特定する予定イベントIDと、予定イベントの内容と、予定イベントの発生が予定されている時刻である発生予定時刻と、予定イベントに関連する関連キーワードと、を対応付けて保持する。
関連キーワードは、予定イベントについての動向情報を検索するために検索集計装置132によって使用されるキーワードである。
【0046】
図5は、集計結果保持部104の一例を示すデータ構造図である。集計結果保持部104は、予定イベントIDと、イベントの内容と、集計日と、ソースと、集計値と、を対応付けて保持する。集計結果保持部104に保持される予定イベントIDは、検索集計装置132において検索、集計の対象とされる予定イベントを特定する。イベントの内容は、対応する予定イベントIDのないものについては、検索集計装置132における分別の際に定められるイベントの内容である。このイベントの内容は、検索集計装置132において装置により自動的に定められてもよいし、検索集計装置132を管理する人の判断により定められてもよい。集計日は、検索集計装置132において集計の対象となった日を示す。集計値は、集計された動向情報の数である。
【0047】
図6は、第1対応関係保持部144の一例を示すデータ構造図である。第1対応関係保持部144は、予定イベントIDと、補正パターンを特定する補正パターンIDと、を対応付けて保持する。この補正パターンIDは、予定イベントIDによって特定される予定イベントが予想とは異なる結果を生じる場合に適用されるべき補正パターンを特定するIDである。以下、補正パターンは1銘柄パターンおよび相場全体パターンのなかから選択される場合について説明する。しかしながら、本明細書に触れた当業者であれば、補正パターンを3つ以上定める場合でも以下と同様にして予測装置を構成できる。なお、1銘柄パターン、相場全体パターンのいずれも、サーバのCPU使用率の予測値を増やす方向に基本パターンを補正する補正パターンである。
予測装置100の管理者は、予定イベントと補正パターンとの対応関係を予め定め、第1対応関係保持部144に登録しておく。
【0048】
図7は、第2対応関係保持部146の一例を示すデータ構造図である。第2対応関係保持部146は、イベントキーワードと、補正パターンIDと、を対応付けて保持する。イベントキーワードは、補正パターンIDによって特定される補正パターンに対応する突発的なイベントの内容を特徴付けるキーワードである。予測装置100の管理者は、そのようなキーワードを予め定め、第2対応関係保持部146に登録しておく。
【0049】
図3に戻る。
予定イベント情報取得部110は、予測装置100の管理者からキーボード、マウスなどの入力装置150を介して、予定イベント情報を取得し、予定イベント情報保持部102に登録する。あるいはまた、予定イベント情報取得部110はネットワーク134を介して予定イベント情報を取得してもよい。
集計結果取得部112は、検索集計装置132によって送信された集計結果をネットワーク134を介して取得し、集計結果保持部104に登録する。
【0050】
補正パターン取得部116は、予定イベント情報保持部102によって保持される予定イベント情報と集計結果保持部104に保持される動向情報についての集計結果とに基づいて、補正パターンが適用されるべきか否かを判定し、適用されるべきと判定された場合は1銘柄パターンおよび相場全体パターンのなかから適用されるべき補正パターンを選択する。補正パターン取得部116は、予測対象期間決定部124と、予定イベント抽出部126と、集計結果参照部106と、しきい値決定部108と、蓋然性判定部128と、補正パターン選択部130と、を含む。
【0051】
予測対象期間決定部124は、証券業務システム200に含まれるサーバのなかから予測対象とするサーバ(以下、予測対象サーバと称す)を決定し、また予測を行う期間である予測対象期間を決定する。以下、予測対象期間はある日のある時間帯であるとし、それぞれ予測対象日、予測対象時間帯と称す。
予定イベント抽出部126は、予定イベント情報保持部102を参照し、予測対象日の予測対象時間帯以前に発生予定時刻が含まれる予定イベントがあればその予定イベントの予定イベントIDを取得する。
集計結果参照部106は集計結果保持部104から予測対象日の直近の集計結果、特に集計日が予測対象日の前日となっている集計結果を抽出する。
【0052】
しきい値決定部108は、補正パターン取得部116における補正パターンの選択の基準を、予測対象時間帯における未補正予測値の最大値が大きいほど補正パターンが選択されやすくなるよう変更する。特にしきい値決定部108は、パターン情報保持部148によって保持される基本パターンの情報を取得し、予測対象時間帯における未補正予測値の最大値を演算する。しきい値決定部108は、後述の蓋然性判定部128におけるソースごとのしきい値を、演算された最大値が大きいほど小さくなるよう設定する。特にしきい値決定部108は、演算された最大値に対して単調に減少する関数にしたがってしきい値を設定してもよい。
【0053】
実稼動取得部114は証券業務システム200と接続され、証券業務システム200に含まれるサーバのCPU使用率やトランザクション数、口座数をリアルタイムで取得する。
【0054】
蓋然性判定部128は、予想外イベント、予兆捕捉可イベント、予兆捕捉不可イベントのそれぞれについて、予定イベント情報保持部102によって保持される予定イベント情報と集計結果保持部104に保持される動向情報についての集計結果とに基づいて、そのようなイベントの発生の蓋然性を判定する。蓋然性判定部128は、発生の蓋然性が高いと判定された場合は変動パターンに補正パターンが適用されるべきであると判定し、そうでない場合は補正パターンが適用されるべきでないと判定する。
【0055】
予想外イベントについて、蓋然性判定部128は、集計結果参照部106によって抽出された集計結果のなかから、予定イベント抽出部126によって取得された予定イベントIDと同等のまたは一致する予定イベントIDを有する集計結果を抽出する。蓋然性判定部128は、抽出された集計結果の集計値としきい値決定部108によって設定されたしきい値とをソースごとに比較する。蓋然性判定部128は、少なくともひとつのソースについて、抽出された集計結果の集計値がしきい値を超える場合、予定イベント抽出部126によって取得された予定イベントIDによって特定される予定イベントが予想とは異なる結果を生じる蓋然性が高いと判定する。すなわち、蓋然性判定部128は、予想外イベントが生じる蓋然性が高いと判定する。
【0056】
例えば、予測対象日を2011年8月5日とし、予測対象時間帯を11:00〜12:00とすると、予定イベント抽出部126は図4に示される予定イベント情報保持部102から、予定イベント内容「A社決算発表」に対応する予定イベントID「A001」を抽出する。蓋然性判定部128は、図5に示される集計結果保持部104のうち集計日が「2011年8月4日」となっている集計結果のなかから、予定イベントID「A001」を有する集計結果(ソース「報道機関サーバ」について集計値「120」、ソース「電子掲示板サーバ」について集計値「25000」、ソース「ウェブログサーバ」について集計値「7050」、ソース「SNSサーバ」について集計値「3520」)を抽出する。ソース「報道機関サーバ」、ソース「電子掲示板サーバ」、ソース「ウェブログサーバ」、ソース「SNSサーバ」についてしきい値決定部108によって設定されたしきい値をそれぞれ「200」、「40000」、「7000」、「4000」とする。蓋然性判定部128は、ソース「ウェブログサーバ」について集計値がしきい値を超えるので、発表されるA社の決算が予想とは異なる蓋然性が高いと判定する。
【0057】
本実施の形態ではソースごとにしきい値を設けてソースごとに比較するので、ソースによらずに動向情報の数を集計しソースによらないしきい値と比較する場合と比較して、各ソースから得られる動向情報の質や信頼性などに応じて適切に重み付けを行うことができ、蓋然性の判定の信頼性が高まる。つまり、報道機関サーバから得られる動向情報のほうが電子掲示板サーバから得られる動向情報よりも信頼性が一般に高いので、報道機関サーバに対応するしきい値をより低く設定できる。
【0058】
予兆捕捉可イベントについて、蓋然性判定部128は、集計結果参照部106によって抽出された集計結果のなかに、対応する予定イベントIDのないイベントの内容についてのものがあれば、そのイベントの内容を抽出する。蓋然性判定部128は予定イベント情報保持部102を参照し、抽出されたイベントの内容と、予定イベント情報保持部102に含まれる関連キーワードとを比較する。蓋然性判定部128は、抽出されたイベントの内容のなかに、発生予定時刻が予測対象日よりも先の予定イベントの関連キーワードを所定の個数以上含むイベントの内容があれば、そのイベントの内容に対応する集計値としきい値との以下の比較処理は行わない。蓋然性判定部128は、抽出されたイベントの内容のなかのそれ以外のものについては、集計結果参照部106によって抽出された集計結果から対応する集計結果を取得する。すなわち、蓋然性判定部128は、集計結果参照部106によって抽出された集計結果から、予定イベントではないイベントについての集計結果を取得する。
【0059】
蓋然性判定部128は、取得された集計結果の集計値としきい値決定部108によって設定されたしきい値とをソースごとに比較する。蓋然性判定部128は、少なくともひとつのソースについて、取得された集計結果の集計値がしきい値を超える場合、予測対象期間内またはそれ以前に予兆捕捉可イベントが生じる蓋然性が高いと判定する。
【0060】
例えば、予測対象日を2011年8月5日とし、予測対象時間帯を10:00〜11:00とすると、集計結果参照部106は、図5に示される集計結果保持部104から集計日が「2011年8月4日」となっている集計結果(イベント内容が「A社決算発表」のもの、イベント内容が「D社買収」のもの、およびイベント内容が「選挙、B氏収賄容疑」のもの)を抽出する。蓋然性判定部128は、抽出された集計結果のなかから、予定イベントIDが「N/A」となっている集計結果(イベント内容が「D社買収」のものおよびイベント内容が「選挙、B氏収賄容疑」のもの)を抽出する。蓋然性判定部128は、イベント内容「選挙、B氏収賄容疑」について、図4に示される予定イベント情報保持部102の予定イベント内容「選挙」に対応する関連キーワード「選挙、候補者B氏、…」を所定の個数である2つ以上含むので、予定イベントに対応すると判定する。結果として、蓋然性判定部128は、イベント内容「D社買収」についての集計結果(ソース「報道機関サーバ」について集計値「11」、ソース「電子掲示板サーバ」について集計値「30500」、ソース「ウェブログサーバ」について集計値「9500」、ソース「SNSサーバ」について集計値「4050」)を取得する。各ソースについて設定されるしきい値は上記の例と同じとすると、蓋然性判定部128は、ソース「ウェブログサーバ」およびソース「SNSサーバ」について集計値がしきい値を超えるので、D社の買収という突発的なイベントの予兆を捉えたと判定し、2011年8月5日にD社の買収が発生する蓋然性が高いと判定する。
【0061】
予兆捕捉不可イベントについて、蓋然性判定部128は、実稼動取得部114によって取得されたリアルタイムのCPU使用率を監視する。蓋然性判定部128は、リアルタイムのCPU使用率の、後述の予測部118によって取得された予測値からの増分が所定のしきい値を超えると、そのCPU使用率の増加が予定イベントによるものであるか否かを判定する。蓋然性判定部128は予定イベント情報保持部102を参照し、現在の時刻に対応する発生予定時刻を有する予定イベントIDの有無を判定する。蓋然性判定部128は、そのような予定イベントIDが存在する場合、CPU使用率の増加は予定イベントによるものであると判定する。蓋然性判定部128は、そのような予定イベントIDが存在しない場合、予兆捕捉不可イベントが発生したまたは発生する蓋然性が高いと判定する。
【0062】
補正パターン選択部130は、蓋然性判定部128において予想外イベントの発生の蓋然性が高いと判定された場合、1銘柄パターンおよび相場全体パターンのうち、予想外イベントの属性により適する方のパターンを適用されるべき補正パターンとして選択する。特に補正パターン選択部130は第1対応関係保持部144を参照し、予定イベント抽出部126によって取得された予定イベントIDに対応する補正パターンIDを、適用されるべき補正パターンを特定する補正パターンIDとして決定する。
【0063】
補正パターン選択部130は、蓋然性判定部128において予兆捕捉可イベントの発生の蓋然性が高いと判定された場合、1銘柄パターンおよび相場全体パターンのうち、予兆捕捉可イベントの属性により適する方のパターンを適用されるべき補正パターンとして選択する。特に補正パターン選択部130は第2対応関係保持部146を参照し、予兆捕捉可イベントのイベントの内容に含まれるイベントキーワードの数を補正パターンIDごとに算出する。補正パターン選択部130は、含まれるイベントキーワードの数が最も大きい補正パターンIDを、適用されるべき補正パターンを特定する補正パターンIDとして決定する。
【0064】
例えば、蓋然性判定部128においてイベント内容「D社買収」を有する予兆捕捉可イベントの発生の蓋然性が高いと判定された場合、補正パターン選択部130は図7に示される第2対応関係保持部146を参照し、イベント内容「D社買収」に含まれるイベントキーワードの数として、補正パターンID「1銘柄」について1個、補正パターンID「相場全体」について0個を算出する。補正パターン選択部130は、含まれるイベントキーワードの数が最も大きい補正パターンID「1銘柄」を決定する。
【0065】
補正パターン選択部130は、蓋然性判定部128において予兆捕捉不可イベントの発生の蓋然性が高いと判定された場合、1銘柄パターンおよび相場全体パターンのうち、未補正予測値からの増分がより大きくなるほうの補正パターンを決定する。未補正予測値からの増分がより大きくなるほうの補正パターンは、図2(c)〜(f)にも見られる通り、予測対象サーバおよび予測対象時間帯に応じて異なる。
【0066】
補正パターン選択部130は、蓋然性判定部128において予想外イベントの発生の蓋然性が高いと判定され、かつ、予兆捕捉可イベントの発生の蓋然性が高いと判定された場合、そのそれぞれの場合に対応する補正パターンIDを決定する。そのようにして決定された補正パターンIDが一致する場合、補正パターン選択部130はその一致する補正パターンIDを、適用されるべき補正パターンを特定する補正パターンIDとして決定する。一致しない場合、補正パターン選択部130は、未補正予測値からの増分がより大きくなるほうの補正パターンを、適用されるべき補正パターンとして決定する。
【0067】
予測部118は、補正パターン取得部116によって選択された補正パターンを基本パターンに適用することによって、予測対象期間における予測対象サーバのCPU使用率の予測値を演算する。予測部118は、基本パターンの情報および補正パターン取得部116によって選択された補正パターンの情報を、パターン情報保持部148から取得する。予測部118は選択された補正パターンを基本パターンに適用する。予測部118は、補正パターンを適用した後の基本パターンを使用して、予測対象期間における予測対象サーバのCPU使用率の予測値を演算する。
予測部118は、予測対象期間に対して補正パターンが選択されなかった場合すなわち蓋然性判定部128において蓋然性が低いと判定された場合、補正パターンを適用しない状態の基本パターンを使用して、予測対象期間における予測対象サーバの未補正予測値を演算する。
【0068】
比較部120は、予測部118によって演算された予測値の最大値と、予測対象サーバの種類ごとに設定される上限値と、を比較する。上限値は、ネットワーク障害やハード障害などを加味して設定される。
【0069】
あふれ処理部122は、比較部120における比較の結果、予測部118によって演算された予測値の最大値が上限値を超える場合、所定の警戒処理を実行する。警戒処理は、例えば新規ログインの制限である。また、警戒処理は、本出願人が先に出願した特許文献3や特許文献4に記載される制御処理であってもよい。
【0070】
上述の実施の形態において、保持部の例は、ハードディスクやメモリである。また、本明細書の記載に基づき、各部を、図示しないCPUや、インストールされたアプリケーションプログラムのモジュールや、システムプログラムのモジュールや、ハードディスクから読み出したデータの内容を一時的に記憶するメモリなどにより実現できることは本明細書に触れた当業者には理解されるところである。
【0071】
以上の構成による予測装置100の動作を説明する。
図8は、予測装置100における一連の処理を示すフローチャートである。予測対象期間決定部124は、予測対象サーバおよび予測対象期間を決定する(S302)。予測対象期間以前に予定イベントの発生が予定されている場合(S304のY)予定イベント抽出部126はその予定イベントの予定イベントIDを抽出する(S306)。予測対象期間以前に予定イベントの発生が予定されていない場合(S304のN)または予定イベント抽出部126によって予定イベントIDが抽出されると、集計結果参照部106は、予測対象期間の直近の集計結果を集計結果保持部104から抽出する(S308)。一方で、しきい値決定部108は、予測対象期間における未補正予測値の最大値に基づき、蓋然性判定で使用されるしきい値を設定する(S310)。ステップS306において予定イベントIDが抽出された場合(S312のY)、蓋然性判定部128は予想外イベントが生じる蓋然性を判定する(S314)。ステップS306において予定イベントIDが抽出されなかった場合(S312のN)または蓋然性判定部128によって予想外イベントが生じる蓋然性が判定されると、蓋然性判定部128は、予兆捕捉可イベントが生じる蓋然性を判定する(S316)。蓋然性判定部128は、予兆捕捉不可イベントが生じる蓋然性を判定する(S318)。予想外イベント、予兆捕捉可イベント、予兆捕捉不可イベントのうちの少なくともひとつの発生の蓋然性が高いと判定された場合(S320のY)、補正パターン取得部116はそのようなイベントに対応する補正パターンを選択する(S322)。予測部118は、選択された補正パターンを基本パターンに適用する(S324)。予測部118は、補正パターンが適用された状態の基本パターンに基づいて、予測対象期間における予測対象サーバのCPU使用率を予測する(S326)。なお、予想外イベント、予兆捕捉可イベント、予兆捕捉不可イベントのいずれについても発生の蓋然性は高くないと判定された場合(S320のN)、予測部118は補正パターンが適用されない状態の基本パターンに基づく予測を行う(S326)。
【0072】
本実施の形態に係る予測装置100によると、予定イベント情報と動向情報の集計結果とに基づいて突発的なイベントの発生の蓋然性が判定される。この蓋然性が高いと判定された場合、突発的なイベントの属性に基づいて適用されるべき補正パターンが選択される。これにより、突発的なイベントの発生も考慮した形で予測がおこなわれるので、突発的なイベントが発生しても証券業務システム200への負荷が証券業務システム200のキャパシティを超えないようにすることができる。また、必要な時に必要なだけキャパシティを増強することが可能となるので、不要な時は冗長な構成をオフにする等により省電力化が図れる。また、突発的なイベントの属性に応じて定められる補正パターンのなかから適切なものが選択されるので、より的確にサーバの使用の度合いを予測できる。
【0073】
また、本実施の形態に係る予測装置100では、予測対象期間における未補正予測値の最大値が大きいほど蓋然性判定部128におけるしきい値は低く設定される。これにより、最大値が大きくより上限値に達しやすい場合に、突発的なイベントの発生の蓋然性が高いと判定される確率がより高くなる。その結果、証券業務システム200のオーバーフローが発生しやすいと考えられる所で上ぶれ補正がかかりやすくなるので、証券業務システム200の運用の安全性がより強化される。
【0074】
以上、実施の形態に係る予測装置100の構成と動作について説明した。この実施の形態は例示であり、その各構成要素や各処理の組み合わせにいろいろな変形例が可能なこと、またそうした変形例も本発明の範囲にあることは当業者に理解されるところである。
【0075】
実施の形態では、検索集計装置132と予測装置100とは別体である場合について説明したが、これに限られず、検索集計装置132と予測装置100とは一体とされてもよい。
【符号の説明】
【0076】
100 予測装置、 102 予定イベント情報保持部、 110 予定イベント情報取得部、 112 集計結果取得部、 114 実稼動取得部、 116 補正パターン取得部、 118 予測部、 120 比較部、 122 あふれ処理部、 132 検索集計装置、 136 報道機関サーバ、 138 電子掲示板サーバ、 140 ウェブログサーバ、 142 SNSサーバ、 150 入力装置、 200 証券業務システム。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
金融商品業務システムに含まれるサーバの使用の度合いを、所定の変動パターンに基づいて予測するための予測装置であって、
金融商品の値動きに関連し発生が予定されているイベントに関する予定イベント情報を保持する予定イベント情報保持部と、
前記予定イベント情報保持部によって保持される予定イベント情報と、金融商品の値動きに関してネットワークから得られる動向情報とに基づいて、前記変動パターンを補正すべきか否かを判定する判定部と、
前記判定部において補正すべきでないと判定された場合、前記変動パターンに基づいてサーバの使用の度合いの予測値を演算する予測部と、
前記変動パターンを補正するための補正パターンが複数あるとき、前記判定部において補正すべきであると判定された場合、複数の補正パターンのなかから適用されるべき補正パターンを選択する補正パターン選択部と、を備え、
前記予測部は、前記判定部において補正すべきであると判定された場合、前記補正パターン選択部によって選択された補正パターンを前記変動パターンに適用することによってサーバの使用の度合いの予測値を演算することを特徴とする予測装置。
【請求項2】
前記判定部は、予定イベント情報に対応するイベント以外のイベントについての動向情報の数が所定のしきい値を超えると、前記変動パターンを補正すべきであると判定することを特徴とする請求項1に記載の予測装置。
【請求項3】
サーバの使用の度合いをリアルタイムで取得する実稼動取得部をさらに備え、
前記判定部は、前記実稼動取得部によって取得されたリアルタイムの使用の度合いの、前記予測部によって取得された予測値からの増分が所定のしきい値を超えると、前記変動パターンを補正すべきであると判定することを特徴とする請求項1または2に記載の予測装置。
【請求項4】
前記予測部は、所定の予測対象期間におけるサーバの使用の度合いの予測値を取得し、
補正パターンが適用されない状態の前記変動パターンに基づいて取得されるサーバの使用の度合いの予測値を未補正予測値と称すとき、前記判定部におけるしきい値は、前記予測対象期間における未補正予測値の最大値が大きいほど小さく設定されることを特徴とする請求項2または3に記載の予測装置。
【請求項5】
前記予測部は、所定の予測対象期間におけるサーバの使用の度合いの予測値を取得し、
前記判定部は、前記予測対象期間内またはそれ以前に発生が予定されているイベントについての動向情報の数が所定のしきい値を超えると、前記変動パターンを補正すべきであると判定することを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載の予測装置。
【請求項6】
補正パターンが適用されない状態の前記変動パターンに基づいて取得されるサーバの使用の度合いの予測値を未補正予測値と称すとき、前記判定部におけるしきい値は、前記予測対象期間における未補正予測値の最大値が大きいほど小さく設定されることを特徴とする請求項5に記載の予測装置。
【請求項7】
前記変動パターンはサーバの使用の度合いの履歴に基づき決定されることを特徴とする請求項1から6のいずれかに記載の予測装置。
【請求項8】
金融商品業務システムに含まれるサーバの使用の度合いを、所定の変動パターンに基づいて予測するための予測方法であって、
金融商品の値動きに関連し発生が予定されているイベントに関する予定イベント情報を予定イベント情報保持部に保持するステップと、
前記予定イベント情報保持部によって保持される予定イベント情報と、金融商品の値動きに関してネットワークから得られる動向情報とに基づいて、前記変動パターンを補正すべきか否かを判定するステップと、
補正すべきでないと判定された場合、前記変動パターンに基づいてサーバの使用の度合いの予測値を演算するステップと、
前記変動パターンを補正するための補正パターンが複数あるとき、補正すべきであると判定された場合、複数の補正パターンのなかから適用されるべき補正パターンを選択するステップと、
補正すべきであると判定された場合、選択された補正パターンを前記変動パターンに適用することによってサーバの使用の度合いの予測値を演算するステップと、を含むことを特徴とする予測方法。
【請求項9】
金融商品業務システムに含まれるサーバの使用の度合いを、所定の変動パターンに基づいて予測する機能をコンピュータに実現させるコンピュータプログラムであって、
金融商品の値動きに関連し発生が予定されているイベントに関する予定イベント情報を予定イベント情報保持部に保持する機能と、
前記予定イベント情報保持部によって保持される予定イベント情報と、金融商品の値動きに関してネットワークから得られる動向情報とに基づいて、前記変動パターンを補正すべきか否かを判定する機能と、
補正すべきでないと判定された場合、前記変動パターンに基づいてサーバの使用の度合いの予測値を演算する機能と、
前記変動パターンを補正するための補正パターンが複数あるとき、補正すべきであると判定された場合、複数の補正パターンのなかから適用されるべき補正パターンを選択する機能と、
補正すべきであると判定された場合、選択された補正パターンを前記変動パターンに適用することによってサーバの使用の度合いの予測値を演算する機能と、を前記コンピュータに実現させることを特徴とするコンピュータプログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2013−45366(P2013−45366A)
【公開日】平成25年3月4日(2013.3.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−184078(P2011−184078)
【出願日】平成23年8月25日(2011.8.25)
【出願人】(000155469)株式会社野村総合研究所 (1,067)
【Fターム(参考)】