説明

事例解析装置および事例解析方法。

【課題】解析者が事例をより客観的に解析して深層要因を見つけ出し、データベース化することを支援し、深層要因が類似する事例を検索することが出来る事例解析装置を提供することを目的とする。
【解決手段】事例解析装置は、複数の構成要素と構成要素間の相互作用とによって活動を表す活動構造図で失敗事例を記述し、活動構造図におけるいずれかの構成要素おいて発生した矛盾にキーワードを割り当てて事例とともに蓄積し、構成要素とキーワードとに基づいて、ある事例と類似する事例を検索する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、トラブルや事故等の事例のデータベースに関し、特に、事例の解析及び類似する事例の検索に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、トラブルや事故等の過去の事例をデータベース化して蓄え、再発防止や危険予知に役立てようとしている。
【0003】
例えば、生産システムにおける設計から製造プロセスまでの全てについての知見及びノウハウを、体系的に記述して蓄積する技術が提案されている(特許文献1等参照)。この技術は、対象装置の構造や特性情報にもとづいて、部品の異常や故障がどのように生じ、どのように伝播するかといった現象を解析し、データベース化を支援するものである。
【0004】
また、失敗とは、ある原因によって人が行動し、期待した結果とならなかったことであるとして、失敗事例をデータベース化したものがある。失敗に至る脈略を「原因」、「行動」、「結果」の観点から階層的にまとめたキーワード(「失敗まんだら」)を用い、「原因」、「行動」、「結果」のキーフレーズを因果関係を考えて配列した「シナリオ」によって失敗知識を表現した失敗知識データベース(登録商標、以下同様。)である(非特許文献1参照)。
【0005】
この失敗知識データベースから、原因、行動、結果のパターンやキーワードを指定して類似する事例を検索し、教訓を得ることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2007−241774号公報
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】科学技術振興機構(JST)、失敗知識データベース、”失敗事例を探す”、[online][平成22年10月1日検索]、インターネット<URL:http://shippai.jst.go.jp/fkd/Search>
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
失敗の原因を究明する「失敗学」において、事故やトラブル等の現象の背景には、個人や組織等の潜在的な問題があり、なんらかの事象を契機に事故やトラブル等が顕在化するという考え方をとっている。従って、失敗の原因の究明に際しては、個人や組織の要因までを視野にいれた原因分析の重要性を指摘している。すなわち、事故やトラブル等の失敗事例の知識化において、発生した現象(表層要因)よりも、そのような現象に至った人間、組織等の背景要因(深層要因)に着目することが重要である。
【0009】
事故やトラブル等は、なんらかの「種」が、様々な環境や要因のもとで、次第に関係者の行動様式を変化させ、それが、なんらかの偶然的な出来事を契機に顕在化する場合が多い。
【0010】
例えば、失敗事例の原因解析や総括にあたって、解析者は、事例における「小さな種がトラブルとして顕在化するまでのプロセス」を主観的にイメージしたうえで、そのプロセスの特徴づけ、すなわち、キーワードを割り当てる。割り当てるキーワードは、表層要因から深層要因までの事故やトラブルの原因を記述するためのキーワードが整理されている「失敗まんだら」から選択される。
【0011】
しかし、失敗の再発防止や危険予知において、解析者が主観的にイメージしたプロセスに割り当てたキーワードで類似する事例を検索するだけでなく、失敗に至った実際のプロセスが類似する事例を検索できた方が有用である場合も多い。すなわち、解析者が気づかないような深層要因に類似する事例が、再発防止や危険予知には有用である場合が多い。
【0012】
そこで、本発明は、解析者が事例をより客観的に解析して深層要因を見つけ出し、データベース化することを支援し、深層要因が類似する事例を検索することが出来る事例解析装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明にかかる一態様では、事例解析装置は、複数の構成要素と構成要素間の相互作用とによって活動を表す活動構造図で示すことができる事例と、活動構造図におけるいずれかの構成要素において発生した矛盾が属するカテゴリを示すキーワードとを対応付けて記憶している事例記憶手段と、前記構成要素と前記キーワードとに基づいて、ある事例と類似する事例を前記事例記憶手段から検索する類似検索手段とを備えることを特徴とする。
【0014】
そして、本発明の他の一態様に係る事例解析方法は、複数の構成要素と構成要素間の相互作用とによって活動を表す活動構造図で示すことができる事例と、活動構造図におけるいずれかの構成要素において発生した矛盾が属するカテゴリを示すキーワードとを対応付けて記憶している事例記憶手段を有する事例解析装置で用いられる事例解析方法であって、前記構成要素と前記キーワードとに基づいて、ある事例と類似する事例を前記事例記憶手段から検索する類似検索工程を備えることを特徴とする。
【0015】
このような構成の事例解析装置及び事例解析方法によれば、活動構造図を用いて客観的に解析し、構成要素に発生した矛盾を深層要因としてカテゴリ分けしたキーワードが蓄積してあるので、解析者がある事例と深層要因が類似する事例を検索することが可能となる。
【0016】
深層要因が類似する事例を検索できるので、異なる領域の事例であっても検索することができ、未然防止ないし業務改善にむけて応用可能な知識として活用できる。
【0017】
また、上述の事例解析装置において、更に、事例の内容を表示する事例表示手段と、前記事例を構成する複数の活動を表す活動構造図を生成する為の情報を、ユーザから取得する活動情報取得手段と、活動構造図に発生した矛盾のキーワードと当該矛盾が発生した構成要素とを、ユーザから取得するキーワード取得手段と、前記事例と、前記キーワード取得手段で取得した矛盾のキーワードと当該矛盾が発生した構成要素とを対応付けて前記事例記憶手段に記憶させる事例蓄積手段とを備え、前記類似検索手段は、対応付けて事例蓄積手段に記憶されているキーワードと構成要素とが、ある事例に対応付けて記憶されているキーワードと構成要素と同一である事例を、類似する事例として検索することを特徴とする。
【0018】
この構成によれば、解析者が事例を、活動構造図を用いて客観的に解析し、発生した矛盾を深層要因として見つけ出してカテゴリ分けして蓄積することができるので、容易に事例を解析し、深層要因をカテゴリ分けして蓄積することが可能となる。
【0019】
また、上述の事例解析装置において、前記活動情報取得手段が取得する活動構造図を生成する為の情報は、CNM(Causal Network Model、因果関係ネットワークモデル)記述で表されていることを特徴とする。
【0020】
この構成によれば、定義及び構造がより明確な「フォーマル言語」であるCNM記述で活動構造図を生成するための情報を記述するので、空間的視点及び時間的視点での情報抽出、整理が容易になり、より客観的な解析が可能となる。
【発明の効果】
【0021】
本発明にかかる事例解析装置は、解析者が事例をより客観的に解析して深層要因を見つけ出し、データベース化することを支援し、深層要因が類似する事例を検索することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】事例解析装置の機能的構成を示すブロック図である。
【図2】矛盾キーワード一覧の構成及び内容の例を示す図である。
【図3】事象キーワード一覧の構成及び内容の例を示す図である。
【図4】実施形態で用いるCNM記述を示す図である。
【図5】CNM記述の具体例を示す図である。
【図6】事例解析装置の解析処理を説明するためのフローチャートである。
【図7】事例選択画面の例を示す図である。
【図8】スクリプト記述画面の例を示す図である。
【図9】活動構造記述画面の例を示す図である。
【図10】プロセス記述画面の例を示す図である。
【図11】シナリオ抽出画面の例を示す図である。
【図12】類似事例画面の例を示す図である。
【図13】類似度判定表の構成及び内容の例を示す図である。である。
【図14】活動要素図の構成を示す図である。
【図15】大きな「活動」の活動構造図20の例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
<実施形態>
<概要>
本実施形態の事例解析装置は、トラブルや事故等の失敗事例に至るプロセスを解析するための支援を行い、解析結果を蓄積する。また、本実施形態の事例解析装置は、失敗事例の解析結果を用いて、その事例に類似する事例を検索して表示する。
【0024】
失敗に至るプロセスの解析結果をもとに類似事例を検索することから、失敗事例と同じ領域に属する事例だけでなく、他の領域に属する事例も検索されることが有り得、いわば「他山の石」として学ぶことのできるような類似事例を検索することが容易となる。
【0025】
本実施形態の事例解析装置では、失敗にいたるプロセスの解析に、「活動理論」における活動構造表現方法が用いられる。
【0026】
本来、活動理論は、歴史の発展、社会の変化等、人間、コミュニティ、社会、文化等さまざまな要素が複雑に相互関係しながら変化する態様を、きわめて抽象度の高いモデル(活動構造図)で記述するアプローチである(活動理論については、エンゲストローム著「拡張による学習」(新曜社)初版発行日1999年8月5日参照)。
【0027】
実施形態の事例解析装置は、活動構造図の理論的枠組みの簡潔さと記述能力の高さとに着目し、それをベースとしたトラブル発生までの動的プロセスを記述する手段を提供し、それをもとに、失敗の深層要因を解析する支援を行う。
【0028】
以下、本発明にかかる実施の一形態を図面に基づいて説明する。
【0029】
尚、各図において同一の符号を付した構成は、同一の構成であることを示し、適宜、その説明を省略する。
【0030】
実施形態の事例解析装置1000の構成を説明する前に、失敗に至るまでの動的プロセスを記述する活動構造図について説明し、事例解析装置1000において失敗事例を特徴付けるためのキーワードを、どのように決定するかについて説明する。
【0031】
<活動構造図>
図14に、活動構造図の構成を示す。
【0032】
活動理論では、「活動」が、6つの構成要素11(A〜F)と、構成要素間の相互作用12としてモデル化され、活動構造図として表される。構成要素11は円で記載し、相互作用12は構成要素11を結ぶ線分(リンク)で記載する。
【0033】
6つの構成要素11から成る活動構造図で表される活動は、最小分析単位の活動であり、この最小分析単位の活動を表した図を、以下、「活動要素図10」というものとする。また、「活動構造図」という場合は、1又は複数の活動要素図10から成る図を言うものとする。
【0034】
大きな活動は、複数の活動から成り、図14の活動要素図10が複数個関連して示される。事例解析装置1000では、失敗に至るまでのプロセスを1つの大きな活動として捉え、解析者が活動構造図を作成する際の支援を行う。
【0035】
6つの構成要素11(以下、「ノード」という。)とは、「主体」、「対象」、「コミュニティ」、「ツール」、「ルール」、「分業」である。
【0036】
「主体」は、活動に含まれる行為を行う人を示す。
【0037】
「対象」は、「主体」が行う行為の対象であり、行為によって「結果」を生じさせるものである。
【0038】
「コミュニティ」は、「主体」が属する組織(社会)を示す。
【0039】
「ツール」は、「主体」が行為に用いる物を示し、ここでは、知識のような無形物、装置のような有形物の両方を含む。
【0040】
「ルール」は、「コミュニティ」の中での明示的又は黙示的な規範、習慣等をいう。
【0041】
「分業」は、「対象」に行う行為においての、「主体」と「主体」が属する「コミュニティ」の構成員との連携を示す。
【0042】
これら「主体」、「対象」、「コミュニティ」、「ツール」、「ルール」、「分業」の具体的な実体は、事例に応じて適時設定される。
【0043】
図15に、複数の活動要素図10が関連して成る大きな「活動」の活動構造図20の例を示す。
【0044】
図15では、4つの活動要素図10、すなわち、活動要素図21「生産技術/設備創出活動」、活動要素図22「生産・操業ライン」、活動要素図23「生産マネジメント」、及び、活動要素図24「ユーザ」で示される4つの活動の連鎖を示す。図15において、活動間の相互作用(リンク)は矢印で記載している。
【0045】
活動要素図22「生産・操業ライン」で示される活動は、活動要素図21「生産技術/設備創出活動」で示される活動から作用25「生産技術、設備の提供」を受け、また、活動要素図23「生産マネジメント」で示される活動から作用26「操業管理」を受け、原材料を生産し、活動要素図24「ユーザ」で示される活動に対して作用27「原材料の提供」を行っている。活動要素図24「ユーザ」で示される活動は、活動要素図22「生産・創業ライン」で示される活動から作用27「原材料の提供」を受け、製品を製造している。
【0046】
尚、各ノードに付与した用語は、対象により合致した語句に置き換えている。例えば、「主体」を「技術者」等にである。
【0047】
<活動に生ずる矛盾>
活動要素図10で示されるノード間の関係、及び、活動要素図10で示される活動間の関係が、それぞれ健全かつ順調であるかぎり問題は顕在化しない。そのような関係に破綻をきたし、それが顕在化するのがトラブルである。
【0048】
従って、トラブル発生プロセスの記述とは、上記の活動要素図10で示される活動の内部での関係が破綻、又は、活動要素図10で示される活動間での関係が破綻するプロセスを記述することでもある。活動理論では、活動要素図10で示される活動内や活動要素図10で示される活動間で、4種類の矛盾が顕在化することで活動に破綻が生じるとしている。
【0049】
矛盾は、まず第1の矛盾が生じ、第2の矛盾を誘引し、第3の矛盾、第4の矛盾と順に矛盾が発生していく。
【0050】
事例解析装置1000では、失敗に至るプロセスにおいて最初に発生した矛盾である第1の矛盾と、第1の矛盾によって引き起こされる第2の矛盾を解決するために生じた活動の変化とに着目し、これらにキーワードを割り当ててプロセスを特徴付ける。
【0051】
以下、4つの矛盾について説明する。
【0052】
<第1の矛盾>
活動は、各ノードが役割機能を果たす過程であると考えれば、「自分が果たすことのできる、あるいは果たしたい機能」と「他者が果たして欲しいと望んでいる、あるいは果たさざるを得ない機能」といった、自己の観点と他者の観点との間での役割機能のバランスが問題となる。
【0053】
このバランスがとれている間は問題が生じない。トラブルは、自己の観点と他者の観点との乖離が契機となる。これが第1の矛盾である。すなわち、ノード内に生ずる矛盾が第1の矛盾である。
【0054】
以下、図15の活動要素図22「生産・操業ライン」で示される活動を例に説明する。
【0055】
例えば、設備が旧態化した場合、本来実現すべき機能要求を満足することができない。この場合、ノード「ツール/設備」において、「これまで通りの機能(自己視点での機能) VS(versus) 新たな要求にこたえるためのより高度な機能(他者視点での機能)」という第1の矛盾が生じる。
【0056】
<第2の矛盾>
第1の矛盾自体は潜在的なものであり、それ自体は何も変化を引き起こさない。
【0057】
しかし、リンクでつながれた隣接するノードとの間で「のっぴきならない状態」となった場合、活動要素図で示される活動内に変化が生じる。
【0058】
例えば、隣接するノード「操業者」は、より高度で効率的な生産に対するプレッシャーを受け、「これまで通りの操業 VS 新しい要求に応えるためのより高度な操業」という第1の矛盾が生じたとする。
【0059】
「操業者」(主体)にとっては、旧態化した機械が矛盾の原因と考えることもあるであろう。第2の矛盾とは、このように、ノード「操業者」(主体)とノード「ツール/設備」(ツール)との間で顕在化する矛盾である。換言すれば、ノード「操業者」(主体)がノード「ツール/設備」(ツール)の性能限界に我慢できなくなった状況に相当する。すなわち、ノード間のリンクに生じた矛盾といえる。
【0060】
この第2の矛盾が活動要素図10で示される活動内に変化を引き起こす。その変化が、後にトラブルとなることもあれば、進歩となる場合もある。いくつかの変化の例を下記に示す。
【0061】
例えば、「労働時間を増やすことで要求に応える」という変化で第2の矛盾を解消させる場合が考えられる。これは、ノード「ツール/設備」(ツール)をそのままに、一方的にノード「操業者」(主体)に変化を求めた場合である。この場合、生産コストの上昇、あるいは過労による事故といった現象、すなわち、トラブルや失敗につながる可能性がある。
【0062】
また、例えば、「よりよい操業方法やより有効な機械活用方法を考案する」という変化で第2の矛盾を解消する場合が考えられる。この場合も、ノード「操業者」(主体)側の変化ではあるが、ノード「ツール/設備」(ツール)との関係をより進歩的に改善することで第2の矛盾を解消している。
【0063】
また、例えば、「より優れた機械を開発及び導入する」という変化で第2の矛盾を解消する場合が考えられる。これは、ノード「ツール/設備」(ツール)における変化である。
【0064】
このように、生産活動をとりまく環境変化が第1の矛盾を生じ、それらが「我慢できない状態」ともいうべき第2の矛盾として顕在化した場合、活動要素図で示される活動内に変化が生じる。
【0065】
<第3の矛盾>
活動要素図10で示される活動内の上述のような変化は、まず、同一の活動要素図10で示される活動内における「これまでの活動 VS 新しい活動」という対立を引き起こす。これが第3の矛盾である。
【0066】
例えば、「残業」(変化)により第2の矛盾を解消する場合、「残業に協力的なメンバー」と「非協力的なメンバー」との間で、第3の矛盾が生じる。あるいは、新しい道具の活用方法や導入については、「使いこなせる操業者」と「使いこなせない操業者」との間で、第3の矛盾が生じる。
【0067】
変化が、活動の中に定着することで第3の矛盾は解消する。
【0068】
<第4の矛盾>
活動要素図10で示される活動内の変化は、次に、他の活動要素図10で示される活動に影響する。
【0069】
例えば、より高度な操業スキルが必要となった場合、活動要素図22「生産・操業ライン」と、操業者を育成する活動要素図23「生産マネジメント」との間で、活動要素図22「生産・操業ライン」内のノード「操業者」(主体)の育成に関して「第四の矛盾」が生じる(作用26「操業管理」参照)。
【0070】
あるいは、ユーザがより品質のよい原材料を望んだ場合には、活動要素図22「生産・操業ライン」と活動要素図24「ユーザ」との間で、原材料に関して第四の矛盾が生じる(作用27「原材料の提供」参照)。
【0071】
この第4の矛盾は、第1の矛盾の誘因となり、さらに活動要素図10で示される活動内の変化につながる可能性がある。
【0072】
このように「活動理論」では、図14に示す活動要素図10を用いて、矛盾とその解消という観点で、活動内の変化を記述する。
【0073】
実施形態では、失敗事例における失敗に至ったプロセスを示す活動構造図を記述し、第1の矛盾、及び、第2の矛盾を解決した変化の2つに着目して、プロセスを特徴付ける。
【0074】
言い換えれば、第1の矛盾、及び、第2の矛盾を解決した変化に、それぞれキーワードを割り当てて、プロセスを明確にする。
【0075】
すなわち、解析者が、活動構造図によって失敗事例のプロセスを記述することで、プロセスをより客観的に解析することができ、より客観的な深層要因を抽出することが可能となる。
【0076】
<構成>
以下、図1を用いて、事例解析装置1000の構成を説明する。
【0077】
事例解析装置1000は、表示部1010、操作部1020、制御部1030、事例選択処理部1100、スクリプト記述処理部1200、活動構造記述処理部1300、プロセス記述処理部1400、シナリオ抽出処理部1500、類似事例検索部1600、キーワード一覧記憶部1700、解析対象事例記憶部1800及び解析結果記憶部1900を備えて構成される。また、解析結果記憶部1900は、解析事例1910、スクリプト1920、活動構造図1930及び矛盾記述1940を備えて構成される。
【0078】
表示部1010は、液晶パネル等のディスプレイを有し、制御部1030からの指示によりディスプレイに文字、図等を表示する機能を有する。
【0079】
操作部1020は、キーボード、マウス等を有し、ユーザ、本実施形態では、失敗事例の解析者からのコマンド入力等の操作を検出し、制御部1030に通知する機能を有する。
【0080】
制御部1030は、事例解析装置1000が備える機能の全体的な制御を行う機能を有する。具体的には、操作部1020から受け取った解析者からの操作内容に応じて、事例選択処理部1100等に処理を行うよう指示を出す等の処理を行う。
【0081】
事例選択処理部1100は、解析の対象とする失敗事例を、後述する解析対象事例記憶部1800に記憶されている事例から、解析者の指示に応じて選択する機能を有する。事例選択処理部1100は、選択された事例を解析結果記憶部1900の解析事例1910に記憶させる。記憶させるデータは、事例の具体的内容を示す自然言語で記述した「本文」、事例の名称等の「管理情報」である。
【0082】
事例選択処理部1100が選択した事例の解析は、スクリプト記述処理部1200、活動構造記述処理部1300、プロセス記述処理部1400、シナリオ抽出処理部1500の各処理部が順に実行されることで行われる。すなわち、各処理部は、解析処理の工程をそれぞれ実行し、解析者がその工程で行うべき作業を支援する。
【0083】
また、事例選択処理部1100は、制御部1030から、解析結果記憶部1900に記憶されている事例から検索を行う旨の指示がある場合は、解析対象事例記憶部1800に記憶されている事例から検索を行うのではなく、解析結果記憶部1900に記憶されている事例から検索を行う機能も有する。この機能は、既に解析済みの事例に類似する事例を検索する場合に、使用される機能である。
【0084】
スクリプト記述処理部1200は、解析事例1910に記憶された事例の「本文」をディスプレイに表示させ、解析者がスクリプトを作成するのを支援する機能を有する。作成されたスクリプトは、解析結果記憶部1900のスクリプト1920に記憶される。スクリプトとは、事例を記述するためのスクリプト言語で記述されたものをいい、詳細は、<CNM記述>の項で説明する。
【0085】
活動構造記述処理部1300は、解析結果記憶部1900のスクリプト1920に記憶されているスクリプトを基に、解析者が活動構造図を作成するのを支援する機能を有する。完成された活動構造図は、解析結果記憶部1900の活動構造図1930に記憶される。尚、活動構造図1930に記憶される活動構造図のデータについては、<動作>の項で活動構造記述処理部1300の動作を説明する際に、<活動構造図データ>の項で説明する。
【0086】
プロセス記述処理部1400は、解析結果記憶部1900の活動構造図1930に記憶されている活動構造図をディスプレイに表示し、解析者が、事例において生じた第1の矛盾の内容、及び、その矛盾に対応するキーワード(以下、「矛盾キーワード」という。)を入力するのを支援する機能を有する。入力された第1の矛盾の内容及び矛盾キーワードは、解析結果記憶部1900の矛盾記述1940に記憶される。
【0087】
また、プロセス記述処理部1400は、解析者が、第2の矛盾によって生じた変化の内容を入力するのを支援する機能を有する。入力された変化の内容は、矛盾記述1940に記憶される。
【0088】
尚、矛盾記述1940に記憶されるデータについては、<動作>の項でプロセス記述処理部1400の動作を説明する際に、<矛盾記述データ>の項で説明する。
【0089】
シナリオ抽出処理部1500は、解析結果記憶部1900の矛盾記述1940に記憶されている変化の内容を抽出し、失敗事例のシナリオを作成してディスプレイに表示し、解析者が、シナリオに対応するキーワード(以下、「事象キーワード」という。)を入力するのを支援する機能を有する。入力された事象キーワードは、解析結果記憶部1900の矛盾記述1940に記憶される。尚、矛盾記述1940に記憶される事象キーワードのデータについては、<動作>の項でシナリオ抽出処理部1500の動作を説明する際に、<事象キーワードデータ>の項で説明する。
【0090】
類似事例検索部1600は、解析した事例に類似する事例を、解析結果記憶部1900から検索する機能を有する。類似するか否かは、矛盾記述1940に記憶されている矛盾キーワード及び事象キーワードに基づいて判断する。判断方法は、それぞれの事例に付された矛盾キーワード及び事象キーワードに、事例間で共通するキーワードが多いほど、それらの事例は類似すると判断する。
【0091】
キーワード一覧記憶部1700は、プロセス記述処理部1400において第1の矛盾に付する矛盾キーワードの一覧、及び、シナリオ抽出処理部1500において第2の矛盾によって生じる変化に付する事象キーワードの一覧を記憶しておく機能を有する。これらキーワードの一覧は、事例の解析が開始されるときには、記憶されているものとする。
【0092】
解析対象事例記憶部1800は、解析の対象となる事例を記憶しておく機能を有する。すなわち、未だ解析がすんでいない事例を記憶しておく。
【0093】
具体的には、解析対象事例記憶部1800は、事例の具体的内容を自然言語で記述した「本文」、及び、事例の名称、発生日時、場所、記録者、要約等の「管理情報」を、事例毎に記憶している。
【0094】
この解析対象事例記憶部1800には、予め事例が複数個記録されているものとする。
【0095】
解析結果記憶部1900は、解析結果を事例毎に記憶しておく機能を有する。
【0096】
この解析結果記憶部1900には、解析された複数の事例が記憶され、解析事例1910には1つの事例が記憶されるものとする。すなわち、事例毎に、解析事例1910が作成され、対応するスクリプト1920、活動構造図1930及び矛盾記述1940が作成されるものとする。尚、解析事例1910に記憶されている内容は、解析対象事例記憶部1800が記憶している内容と同様のもの、すなわち、「本文」及び「管理情報」である。
【0097】
スクリプト1920には、解析事例1910に記憶されている事例のスクリプトが記憶され、活動構造図1930には活動構造図が記憶され、矛盾記述1940には矛盾キーワード等、及び、事象キーワードが記憶される。
【0098】
このような構成の事例解析装置1000は、例えば、マイクロコンピュータ等のコンピュータによって構成可能であり、事例解析方法をプログラムしたソフトウェアを実行することによって上述の各ブロックがコンピュータに機能的に構成される。
【0099】
<データ>
以下、事例解析装置1000で用いる主なデータについて説明する。
【0100】
<第1の矛盾のキーワード>
図2は、矛盾キーワード一覧1710の構成及び内容の例を示す図である。
【0101】
矛盾キーワード一覧1710には、解析者が第1の矛盾に付するキーワードが登録されている。
【0102】
この矛盾キーワード一覧1710には、活動構造図の各ノード(図14参照)の役割機能を様々な観点から整理したキーワード、言い換えれば、第1の矛盾のカテゴリを示すキーワードが登録されている。
【0103】
解析者は、矛盾キーワード一覧1710からキーワードを選択することで、第1の矛盾のカテゴリ分けをすることとなる。
【0104】
矛盾キーワード一覧1710は、ノード1711、及び、矛盾キーワード1712で構成される。
【0105】
ノード1711は、活動構造図のノードを示す。
【0106】
矛盾キーワード1712は、ノード1711で示されるノードに付されるキーワードを示す。
【0107】
ノード1711「主体」に生じ得る第1の矛盾は、「業務特性」、「能力」及び「態度」の3つの観点にカテゴリ分けされている。そして、それぞれのカテゴリには、下位概念のキーワードが登録されている。例えば、カテゴリ「業務特性」の下位概念のカテゴリとして、「効率」及び「品質」のキーワードが登録されている。以下、3つの観点を示すカテゴリを「大分類」、下位概念のカテゴリを「小分類」という場合がある。
【0108】
すなわち、これらのカテゴリにおいて、自己の観点(提供可能、ないし提供したい水準)と他者の観点(提供してほしい、ないし提供すべき水準)とのバランスが崩れた場合に「第1の矛盾」が生ずることになる。
【0109】
同様に、矛盾キーワード一覧1710には、他のノード1711「ツール」、「ルール」、「コミュニティ」、「分業」及び「対象」に生じ得る第1の矛盾も、カテゴリ分けされてキーワードが登録されている。
【0110】
失敗事例においては、第1の矛盾として様々な具体的な矛盾が生ずるが、図2の矛盾キーワード一覧1710の矛盾キーワード1712で示されるキーワードとの紐付けを行うことで、検索や分類等で活用可能なパターン化が可能となる。
【0111】
<第2の矛盾を解消するために生じた変化のキーワード>
図3は、事象キーワード一覧1720の構成及び内容の例を示す図である。
【0112】
事象キーワード一覧1720は、第2の矛盾を解消するために生じた変化に付されるキーワードが登録されている。
【0113】
この事象キーワード一覧1720には、前述の「失敗まんだら」のうち、「原因」のまんだらのキーワードが事象キーワードとして登録されている。尚、「失敗まんだら」は、失敗に至る脈略を「原因」、「行動」、「結果」の観点から階層的にまとめたキーワードである。
【0114】
第2の矛盾を解消するために生じた変化は、通常の「トラブルに至るシナリオ」の構成要素となる現象であると考えることができる。従って、その変化に対して「失敗まんだら」のキーワードを付与するのが妥当であると考えることができるからである。
【0115】
以下、「無知」、「不注意」等を「大分類」、「知識不足」、「伝承無視」等を「小分類」という場合がある。
【0116】
<CNM記述>
以下、活動を記述する言語について説明する。
【0117】
解析結果記憶部1900のスクリプト1920には、ここで説明する言語で記述されたスクリプトが記憶される。
【0118】
「活動理論」を用いた解析においては、空間的視点と時間的視点とが必要となる。
【0119】
空間的視点とは、活動を構成する個々の活動、すなわち、活動要素図10で示される活動と、活動要素図10を構成する「実体」(ノード)を特定することである。
【0120】
時間的視点とは、活動の変化が生じる順序であり、変化が伝播する順序である。
【0121】
これらは、解析者が事例の内容の中から抽出する。この際、あいまいな自然言語記述ではなく、定義及び構造がより明確な「フォーマル言語」で事例を記述することにより、空間的視点及び時間的視点での情報抽出、整理が容易になる。
【0122】
従って、実施形態では、フォーマル言語としてCNM(Causal Network Model)と呼ばれる方法の中で開示されている言語を用いる。
【0123】
基本的には、事象(誰が何をしたか)の記述であるが、CNMでは、ある事象の結果がある主体を満足させる(不満足にさせる)、あるいは、ある事象の結果が、ある主体の新たな行動を動機づける、といった、人間を介在として事象連鎖記述に関する記述を有している点が特徴である。
【0124】
実施形態では、活動構造図を記述するために、簡略化された表記方法を用いる。
【0125】
図4に、実施形態で用いるCNM記述を示す。実施形態では、5種類の記述を用いる。
【0126】
事象記述、すなわち、誰が何をしたのかの記述については、実施形態では2つのCNM記述を用いる。
【0127】
1つは「認識する」(Perceive)、もう1つは「実行する」(Do)である。
【0128】
例えば、「E1:〔主体、Perceive、対象〕」のように記述する。
【0129】
「E1」は「事象ID(identification)」を示す。続いて、「:」、「誰が(主体)」、「認識する」(Perceive)又は「実行する」(Do)、「何を(対象)」の順番で記述する。
【0130】
尚、「認識する」(Perceive)及び「実行する」(Do)の否定である「認識しない」(not Perceive)及び「実行しない」(not Do)の記述も可能である。
【0131】
また、事象間の人間に対する影響については、2つのCNM記述を用いる。
【0132】
1つは、新たな行動に対する動機づけを表す「動機付ける」(Motivate)であり、もう1つは、人間に対する満足/不満足といった心理的効果を表す「満足する」(Satisfy)である。
【0133】
例えば、「Motivate(E5、主体、E6)」のように記述する。
【0134】
すなわち、事象「E5」が、「主体」が「E6」をするように動機付けとなることを意味する。尚、この否定は記述しない。
【0135】
また、例えば、「Satisfy(E7、主体)」のように記述する。
【0136】
すなわち、「主体」は、事象「E7」に満足することを意味する。尚、「満足する」(Satisfy)の否定である「不満を抱く」(not Satisfy)の記述も可能である。
【0137】
事象間の時間的順序については、「引き続き、…生じる。」(Sequence)を用いる。
【0138】
例えば、「Sequence(E9、E10)」のように記述する。
【0139】
すなわち、事象「E9」に引き続き、事象「E10」が生じることを意味する。尚、この否定は記述しない。
【0140】
ここで、「Motivate」も、「Sequence」と同様に時間的視点を有するものである。「Motivate」は人間を介した事象間の時間的順序を記述し、それ以外の時間的順序には「Sequence」を用いる。従って、以下、「Motivate」を、時間的順序を記述するものとして扱う場合がある。
【0141】
図5に、CNM記述の具体例を示す。図5に示すスクリプトは、後述する解析対象の事例(図7の事例本文表示2030参照)を、実際に記述した例である。
【0142】
この例では、4つの状況を、5つの事象としてCNMで記述している。そして、事象間の関連を7つのCNM記述で表している。
【0143】
例えば、1つ目の状況「工程Aで品質異常を見出す」は1つの事象で構成され、CNMで記述すると、「E1:〔作業者、Perceive、品質異常〕」と記述される。2つ目の状況「品質異常を修正する」は1つの事象で構成され、「E2:〔作業者、Do、品質修正処理〕」と記述される。
【0144】
作業者は、品質異常を見出したことが動機付けとなって、品質修正処理を行ったので、「Motivate(E1、作業者、E2)」と記述され、作業者は、品質修正処理を行って満足したので、「Satisfy(E2、作業者)」と記述される。
【0145】
<動作>
以下、事例解析装置1000の動作について説明する。
【0146】
図6は、事例解析装置1000の解析処理を説明するためのフローチャートである。
【0147】
図7〜図12は、解析処理において、事例解析装置1000のディスプレイに表示される画面例である。これらの画面例を参照しながら、失敗事例を具体的に示しながら解析処理を説明する。図7は、事例選択画面2000の例を、図8は、スクリプト記述画面2100の例を、図9は、活動構造記述画面2200の例を、図10は、プロセス記述画面2300の例を、図11は、シナリオ抽出画面2400の例を、図12は、類似事例画面2500の例をそれぞれ示す図である。
【0148】
事例解析装置1000は、大きく2つの処理を行う。
【0149】
1つは、失敗事例を解析して、解析結果を蓄積する処理であり、もう1つは、ある失敗事例と類似する失敗事例を検索する処理である。
【0150】
フローチャートにおいて、点線の矩形は、矩形内のステップを行う処理部、すなわち、事例選択処理部1100〜類似事例検索部1600(図1参照)を示している。
【0151】
まず、解析者は、新たな失敗事例の解析を行うのか、類似事例を検索するのかを指示する操作を操作部1020のキーボード等を用いて行う。
【0152】
例えば、表示部1010のディスプレイに表示されているメニューから、メニュー項目「失敗事例の解析」又は「類似事例の検索」を選択する。
【0153】
解析者の操作を検出した操作部1020は、検出した操作を制御部1030に通知する。
【0154】
通知を受けた制御部1030は、通知された操作が、「失敗事例の解析」を選択したと判断した場合(ステップS100:解析)、事例選択処理部1100に事例選択処理を開始するよう指示する。
【0155】
<失敗事例の解析処理>
<1:事例選択>
指示を受けた事例選択処理部1100は、解析の対象となる事例を解析者に選択させる処理を行う。
【0156】
より具体的には、事例選択処理部1100は、制御部1030を介して表示部1010に事例選択画面2000を表示するよう依頼する(図7参照)。
【0157】
依頼を受けた表示部1010は、事例選択画面2000をディスプレイに表示する。このとき、事例検索条件エリア2010の入力領域、及び、事例本文表示エリア2030の事例内容領域2031には何も表示されておらず、検索結果一覧エリア2020に事例の名称は表示されていない。
【0158】
解析者は、表示された事例選択画面2000のうち、事例検索条件エリア2010の入力領域に、対象事例の発生日時、件名キーワード、本文キーワードの何れか又は全て、すなわち、検索条件を入力し、検索ボタン2011を押下する。
【0159】
操作部1020及び制御部1030を介して検索条件を取得した事例選択処理部1100は、解析対象事例記憶部1800に記憶されている事例から、検索条件に合致する事例を検索する。そして、事例選択処理部1100は、制御部1030を介して表示部1010に、検索された事例の名称一覧を事例選択画面2000の検索結果一覧エリア2020に表示させる。
【0160】
解析者は、検索結果一覧エリア2020に表示された一覧から、事例の名称をカーソル2021でフォーカスし、選択する操作を行う。
【0161】
事例選択処理部1100は、選択された事例の名称を取得し、事例本文表示エリア2030に、選択された事例の管理情報及び本文を解析対象事例記憶部1800から読み出して、事例内容領域2031に表示する。
【0162】
解析者は、事例内容領域2031に表示されている管理情報及び本文を読み、この事例を解析の対象にすると決めると(以下、この事例を「対象事例」という。)、事例選択画面2000の「ステップ2:スクリプト記述」と記載されたタブを選択する。尚、事例選択処理部1100が実行されているときは、「ステップ2:スクリプト記述」と記載されたタブ以外のタブは選択できないように制御部1030が制御しているものとする。解析を正しい順序で行わせるためである。
【0163】
解析者のタブ選択を検出した操作部1020は、検出した操作を制御部1030に通知する。
【0164】
通知を受けた制御部1030は、通知されたタブが、「ステップ2:スクリプト記述」であることから、事例が選択されたと判断して、事例選択処理部1100に事例選択処理を終了するよう指示する。
【0165】
指示を受けた事例選択処理部1100は、対象事例、すなわち、事例内容領域2031に表示されている事例の管理情報及び本文を、解析結果記憶部1900の解析事例1910に記憶させる(ステップS110)。
【0166】
対象事例を記憶させた事例選択処理部1100は、その旨を制御部1030に通知し、通知を受けた制御部1030は、スクリプト記述処理部1200にスクリプト記述処理を開始するよう指示する。
【0167】
以下、図7の事例内容領域2031に表示されている事例を対象事例として解析する場合を例に説明する。
【0168】
<2:CNMスクリプト記述>
指示を受けたスクリプト記述処理部1200は、解析者が対象事例のスクリプトを作成する処理の支援を行う。
【0169】
より具体的には、スクリプト記述処理部1200は、表示部1010にスクリプト記述画面2100を表示するよう依頼する(図8参照)。
【0170】
この際、スクリプト記述処理部1200は、対象事例の本文及び管理情報を解析事例1910から読み出し、読み出した本文及び管理情報を表示部1010に渡して、スクリプト記述画面2100の事例記述エリア2110に表示するよう依頼する。また、語句リストのデータを渡して、語句リストエリア2130に表示するよう依頼する。語句リストのデータは、予め、スクリプト記述処理部1200が内部の領域に記憶しているものとする。
【0171】
依頼を受けた表示部1010は、スクリプト記述画面2100をディスプレイに表示する。このとき、スクリプト記述エリア2120には、何も表示されていない。
【0172】
解析者は、事例記述エリア2110に表示されている対象事例の本文等を見ながら、スクリプト記述エリア2120にCNM記述を書き込んでいく。事象の記述(Perceive、Do)は矩形で示し、事象間の時間的順序(事象間遷移)の記述(Motivate、Sequence)は実線矢印で示し、人間に対する影響(心理的効果)の記述(Satisfy)は点線矢印で示すものとする。
【0173】
この際、語句リストエリア2130に表示されている語句を参照しながら書き込んでいく。
【0174】
スクリプト記述エリア2120に示すように、CNM記述は矩形及び矢印と共に書き込み、この矩形等の図形及びCNM記述を書き込むためのツールは、スクリプト記述処理部1200が提供しているものとする。
【0175】
ここで、図8のスクリプト記述エリア2120には、対象事例(図7参照)のスクリプト記述(図5参照)が表示されている。
【0176】
図5に示すように、対象事例は5つの事象と、7つの事象間の関連に分けられ、12個のCNM記述で表される。
【0177】
この12個の記述をスクリプト記述エリア2120に書き込んだスクリプト記述画面2100が、図8である。
【0178】
例えば、CNM記述2121は、事象ID「E1」で示される事象の記述である。また、CNM記述2122は、事象ID「E1」で示される事象から、事象ID「E2」で示される事象への時間的順序の記述であり、CNM記述2123は、事象ID「E2」で示される事象が「作業者」に与える影響の記述であり、CNM記述2124は、事象ID「E2」で示される事象から、事象ID「E3」で示される事象への時間的順序の記述である。
【0179】
解析者は、対象事例のスクリプト記述の書き込みが完了したら、スクリプト記述画面2100の「ステップ3:活動構造記述」と記載されたタブを選択する。尚、スクリプト記述処理部1200が実行されているときは、「ステップ3:活動構造記述」と記載されたタブ以外のタブは選択できないものとする。
【0180】
解析者のタブ選択を検出した操作部1020は、検出した操作を制御部1030に通知する。
【0181】
通知を受けた制御部1030は、通知されたタブが、「ステップ3:活動構造記述」であることから、スクリプト記述の書き込みが完了したと判断して、スクリプト記述処理部1200にスクリプト記述処理を終了するよう指示する。
【0182】
指示を受けたスクリプト記述処理部1200は、スクリプト記述エリア2120に書き込まれたスクリプト記述を、解析結果記憶部1900のスクリプト1920に記憶させる。この際、スクリプト記述のみを抜き出して記憶させる(ステップS120)。
【0183】
スクリプト記述を記憶させたスクリプト記述処理部1200は、その旨を制御部1030に通知し、通知を受けた制御部1030は、活動構造記述処理部1300に活動構造記述処理を開始するよう指示する。
【0184】
<3:活動構造記述>
指示を受けた活動構造記述処理部1300は、解析者がスクリプトから活動構造図を作成する処理の支援を行う。
【0185】
より具体的には、活動構造記述処理部1300は、表示部1010に活動構造記述画面2200を表示するよう依頼する(図9参照)。
【0186】
この際、活動構造記述処理部1300は、スクリプト記述画面2100の事例記述エリア2110に表示していた対象事例の本文及び管理情報を、活動構造記述画面2200の事例本文エリア2211に表示するよう表示部1010に依頼する。
【0187】
また、活動構造記述処理部1300は、対象事例のスクリプトをスクリプト1920から読み出し、読み出したスクリプトを表示部1010に渡して、スクリプトエリア2212に表示するよう依頼する。
【0188】
依頼を受けた表示部1010は、活動構造記述画面2200をディスプレイに表示する(ステップS130)。このとき、活動構造図エリア2220には、何も表示されていない。
【0189】
解析者は、事例本文エリア2211に表示されている対象事例の本文等と、スクリプトエリア2212に表示されているスクリプト記述とを見ながら、活動構造図エリア2220に活動構造図を書き込んでいく(ステップS140)。この活動構造図を書き込むためのツールは、活動構造記述処理部1300が提供しているものとする。
【0190】
解析者は、スクリプト記述を参照しながら、1つの活動を表す三角形(図14の活動要素図10参照)を活動構造図エリア2220に、活動の個数分配置する。対象事例の場合、3つの活動要素図10を配置する。主体が、原材料(部品)を製造する「作業者」、出荷前検査を行う「検査者」及び提供された原材料(部品)を加工した最終製品を製造する「顧客」の3人だからである。
【0191】
次に、各活動要素図10に、活動名を書き込む。例えば、活動名2221「製造工程」である。
【0192】
各ノードには、対象事例における実体記述を、コメント(吹き出し)として書き込む。例えば、活動名2221「製造工程」の活動要素図10におけるノード「ツール」には、コメント2222「製造設備、技能」と書き込む。
【0193】
活動間のリンクとして、点線矢印で結び、関係をコメントとして書き込む。例えば、コメント2223「製品の需給関係」である。
【0194】
次に、活動要素図10とスクリプトの対応付け、すなわち、活動要素図10のノード「主体」とスクリプトの主体(動作者)との対応づけを行う。具体的には、対応するCNM記述をコメントとして書き込む。例えば、コメント2224「イベント E1:[作業者、Percieve、品質異常]・・・」である。
【0195】
また、時間的順序を示すCNM記述をコメントとして書き込み、太線矢印を書き込む。例えば、コメント2225「Sequence(E2、E3)」及びコメント2225の背後の太線矢印である。これは、活動名2221「製造工程」で示される活動における「イベント E2」の次に、活動名2226「検査工程」で示される活動における「イベント E3」が行われることを示す。
【0196】
これらの書き込みにより、事例を構成する活動の数及び内容、ノードの実際の名称、時間的流れが解析結果として記録される。
【0197】
解析者は、対象事例の活動構造図の書き込みが完了したら、活動構造記述画面2200の「ステップ4:プロセス記述」と記載されたタブを選択する。尚、活動構造記述処理部1300が実行されているときは、「ステップ4:プロセス記述」と記載されたタブ以外のタブは選択できないものとする。
【0198】
解析者のタブ選択を検出した操作部1020は、検出した操作を制御部1030に通知する。
【0199】
通知を受けた制御部1030は、通知されたタブが、「ステップ4:プロセス記述」であることから、活動構造図の書き込みが完了したと判断して、活動構造記述処理部1300に活動構造記述処理を終了するよう指示する。
【0200】
指示を受けた活動構造記述処理部1300は、活動構造図エリア2220に書き込まれた活動構造図を、解析結果記憶部1900の活動構造図1930に記憶させる。記憶させるデータ形式は、<活動構造図データ>の項で説明する。
【0201】
解析者が作成した活動構造図を記憶させた活動構造記述処理部1300は、その旨を制御部1030に通知し、通知を受けた制御部1030は、プロセス記述処理部1400にプロセス記述処理を開始するよう指示する。
【0202】
<活動構造図データ>
ここで、活動構造図を記憶させる際のデータ形式について説明する。
【0203】
実施形態では、活動構造図について、活動要素図10を示すデータ、及び、CNM記述を示すデータを記憶する。尚、解析者が作成した活動構造図を再現できるようなデータ、例えば、活動要素図10の配置されている位置、CNM記述が表示されている位置のデータ等も記憶されるものとする。
【0204】
まず、1つの活動要素図10を以下のような形式のデータとして記憶する。
【0205】
データ形式は、「活動要素名:{主体(実体記述)、ツール(実体記述)、対象(実体記述)、コミュニティ(実体記述)、ルール(実体記述)、分業(実体記述)}」である。実体記述は各ノードの噴出し内に記述されているコメントである。
【0206】
活動名2221「製造工程」で示される活動要素図10(図9参照)を記述すると、「製造工程:{主体(製造作業者)、ツール(製造設備、技能)、対象(製品製造)、コミュニティ(工程部門)、ルール(作業標準)、分業(役割分担)}」となる。
【0207】
次に、CNM記述を以下のような形式のデータとして記憶する。
【0208】
ノード「主体」に対応付けされたCNM記述のデータ形式は、「{(主体の実体記述、主体に関連したスクリプト)の並び}」である。
【0209】
コメント2224として書き込まれたCNM記述は、「{(製造作業者、E1:[作業者、Percieve、品質異常]E2:[作業者、Do、修正措置]・・・)}」となる。
【0210】
活動要素図10を結ぶリンクのデータ形式は、「{(活動名1、ノード1、活動名2、ノード2、関連に関する記述)の並び}」である。
【0211】
コメント2225として書き込まれたCNM記述は、「{(製造工程、製造作業者、検査工程、検査技術者、Sequence)}」となる。
【0212】
<4:プロセス記述>
制御部1030から、プロセス記述処理を開始するよう指示を受けたプロセス記述処理部1400は、解析者が第1の矛盾、第2の矛盾、その解消にむけた事象の発生(第2の矛盾により生じる変化)等を、活動構造図の中に記述していく処理の支援を行う。
【0213】
より具体的には、プロセス記述処理部1400は、表示部1010にプロセス記述画面2300を表示するよう依頼する(図10参照)。
【0214】
この際、プロセス記述処理部1400は、活動構造記述画面2200の事例本文エリア2211に表示されていた対象事例の本文及び管理情報を、プロセス記述画面2300の事例本文エリア2311に表示するよう表示部1010依頼する。
【0215】
また、プロセス記述処理部1400は、矛盾キーワード一覧1710をキーワード一覧記憶部1700から読み出し、読み出した矛盾キーワード一覧1710を表示部1010に渡して、矛盾キーワードエリア2312に表示するよう依頼する。
【0216】
また、プロセス記述処理部1400は、活動構造図1930から活動構造図のデータを読み出して、読み出したデータを渡して、活動構造図を活動構造図エリア2320に表示するよう依頼する。
【0217】
依頼を受けた表示部1010は、プロセス記述画面2300をディスプレイに表示する。尚、図10の活動構造図エリア2320には、説明の便宜上、3つの活動要素図10、活動名、活動間のリンクを示す点線矢印のみが表示されている。
【0218】
解析者は、事例本文エリア2311に表示されている対象事例の本文と、矛盾キーワードエリア2312に表示されている矛盾キーワード一覧1710とを参照しながら、活動構造図に第1の矛盾、第2の矛盾の解消にむけた事象の発生等を書き込んでいく。この第1の矛盾等を書き込むためのツールは、プロセス記述処理部1400が提供しているものとする。
【0219】
まず、ノードに対して、第1の矛盾を記入する。
【0220】
ノードに発生する矛盾をコメント(吹き出し)として、自由記述で書き込む。また、自由記述とともに、矛盾キーワード一覧1710のキーワードを選択して書き込む(ステップS150)。
【0221】
例えば、活動名「製造工程」で示される活動要素図10のノード「主体」に、コメント2321として、自由記述「簡易な品質修正手段の効果を信頼する楽観的な判断 VS 危険予知観点からの品質修正に対する慎重な判断」と、矛盾キーワード「(主体:能力:知識、判断)」とを書き込む。
【0222】
次に、隣接ノードの間に、第1の矛盾から生じる第2の矛盾を回避すべく生じた現象(変化)を、コメント(矩形内)として書き込む(ステップS160)。
【0223】
例えば、活動名「製造工程」で示される活動要素図10のノード「主体」とノード「ツール」との間に生じた変化として、コメント2322「時間的、コスト的に利用可能な対応方法の選択」を書き込む。
【0224】
また、活動要素図10と活動要素図10の間の変化は、コメント(ハッチングをかけた矩形内)として書き込む。
【0225】
例えば、活動名「検査工程」で示される活動要素図10のノード「対象」と、活動名「顧客」で示される活動要素図10のノード「対象」との間の変化は、コメント2323「潜在品質異常材の出荷」と書き込む。
【0226】
解析者は、対象事例の活動構造図に、第1の矛盾、矛盾キーワード、及び、第2の矛盾を回避すべく生じた変化の書き込みが完了したら、プロセス記述画面2300の「ステップ5:シナリオ抽出」と記載されたタブを選択する。尚、プロセス記述処理部1400が実行されているときは、「ステップ5:シナリオ抽出」と記載されたタブ以外のタブは選択できないものとする。
【0227】
解析者のタブ選択を検出した操作部1020は、検出した操作を制御部1030に通知する。
【0228】
通知を受けた制御部1030は、通知されたタブが、「ステップ5:シナリオ抽出」であることから、第1の矛盾等の書き込みが完了したと判断して、プロセス記述処理部1400にプロセス記述処理を終了するよう指示する。
【0229】
指示を受けたプロセス記述処理部1400は、活動構造図エリア2320に書き込まれた第1の矛盾及び矛盾キーワードを、解析結果記憶部1900の矛盾記述1940に記憶させる。記憶させるデータ形式は、<矛盾記述データ>の項で説明する。
【0230】
第1の矛盾等を記憶させたプロセス記述処理部1400は、その旨を制御部1030に通知し、通知を受けた制御部1030は、シナリオ抽出処理部1500にシナリオ抽出処理を開始するよう指示する。
【0231】
<矛盾記述データ>
ここで、第1の矛盾等を記憶させる際のデータ形式について説明する。
【0232】
実施形態では、第1の矛盾、矛盾キーワード、第2の矛盾を回避すべく生じた変化、事象キーワードを、矛盾記述として記憶する。プロセス記述処理部1400は、矛盾記述のうち、第1の矛盾、矛盾キーワード、第2の矛盾を回避すべく生じた変化を記憶させる。また、シナリオ抽出処理部1500は、矛盾記述のうち、事象キーワードを記憶させる。
【0233】
第1の矛盾及び矛盾キーワードを、以下のような形式のデータとして記憶する。
【0234】
データ形式は、「<活動名、ノード、矛盾キーワード、(自由記述)>」である。
【0235】
活動名「製造工程」で示される活動要素図10のノード「主体」に付されたコメント2321を記述すると、「<製造工程、主体、能力:知識・判断、(簡易な品質修正手段の効果を信頼する楽観的な判断 VS 危険予知観点からの品質修正に対する慎重な判断)>」となる。
【0236】
また、第2の矛盾を回避すべく生じた変化のうち、活動要素図10内で生じた変化を、以下のような形式のデータとして記憶する。
【0237】
データ形式は、「<活動名、ノード1、ノード2、(自由記述)、事象キーワード>」である。プロセス記述処理部1400が記憶させるときは、まだ事象キーワードが付されていないため、事象キーワード部分はブランクが記述される。
【0238】
コメント2322を記述すると「<製造工程、主体、ツール、(時間的、コスト的に利用可能な対応方法の選択)、>」となる。
【0239】
また、活動要素図10と活動要素図10との間の変化は、以下のような形式データとして記憶する。
【0240】
データ形式は、「<活動名1、ノード1、活動名2、ノード2、(自由記述)、事象キーワード>」である。
【0241】
コメント2323を記述すると「<製造工程、対象、顧客、対象、(潜在品質異常材の出荷)、>」となる。
【0242】
<5:シナリオ抽出>
制御部1030から、シナリオ抽出処理を開始するよう指示を受けたシナリオ抽出処理部1500は、シナリオを抽出して表示し、解析者がシナリオにキーワードを付する処理の支援を行う。
【0243】
より具体的には、シナリオ抽出処理部1500は、表示部1010にシナリオ抽出画面2400を表示するよう依頼する(図11参照)。
【0244】
この際、シナリオ抽出処理部1500は、プロセス記述画面2300の事例本文エリア2311に表示されていた対象事例の本文及び管理情報を、シナリオ抽出画面2400の事例本文エリア2411に表示するよう表示部1010に依頼する。
【0245】
また、シナリオ抽出処理部1500は、事象キーワード一覧1720をキーワード一覧記憶部1700から読み出し、読み出した事象キーワード一覧1720を渡して、事象キーワードエリア2412に表示するよう依頼する。
【0246】
また、シナリオ抽出処理部1500は、矛盾記述1940から、第2の矛盾を回避すべく生じた変化を記述したデータ(以下、「変化記述データ」という。)のみを読み出して、シナリオを生成する。この際、シナリオ抽出処理部1500は、読み出した変化記述データを、内部の作業領域に記憶しておくものとする。
【0247】
シナリオは、トラブルが発生するまでの活動の変化、すなわち、プロセス記述画面2300の活動構造図におけるノード間、活動間のリンク上のコメント(矩形内に書き込んだ記述)を、活動要素図10の時間順序に従って並べたものである。同一活動要素図10に記載されたコメントは、横に並べ、活動要素図10間のリンクが示す時間順序に従って上流から下流にむかって並べる。
【0248】
シナリオ抽出処理部1500は、生成したシナリオを表示部1010に渡して、シナリオエリア2420に表示するよう依頼する。
【0249】
依頼を受けた表示部1010は、シナリオ抽出画面2400をディスプレイに表示する(ステップS170)。
【0250】
解析者は、事例本文エリア2311に表示されている対象事例の本文等を参照しながら、シナリオエリア2420に表示されている変化を記載した矩形1つ1つに、事象キーワードエリア2412に表示されている事象キーワード一覧1720から最適なキーワードを選択して、付していく。このためのツールは、シナリオ抽出処理部1500が提供しているものとする。
【0251】
シナリオ抽出処理部1500は、割り当てられた事象キーワードを、作業領域に記憶している変化記述データの該当箇所に書き込む。
【0252】
解析者は、事象キーワードの対応付けが完了したら、シナリオ抽出画面2400の「類似事例検索」と記載されたタブを選択する。尚、シナリオ抽出処理部1500が実行されているときは、「類似事例検索」と記載されたタブ以外のタブは選択できないものとする。
【0253】
解析者のタブ選択を検出した操作部1020は、検出した操作を制御部1030に通知する。
【0254】
通知を受けた制御部1030は、通知されたタブが、「類似事例検索」であることから、事象キーワードの割り付けが完了したと判断して、シナリオ抽出処理部1500にシナリオ抽出処理を終了するよう指示する。
【0255】
指示を受けたシナリオ抽出処理部1500は、事象キーワードを追加した変化記述データを、解析結果記憶部1900の矛盾記述1940に記憶させる(ステップS180)。記憶させるデータ形式は、<事象キーワードデータ>の項で説明する。
【0256】
変化記述データを記憶させたシナリオ抽出処理部1500は、その旨を制御部1030に通知し、通知を受けた制御部1030は、類似事例検索部1600に類似事例検索処理を開始するよう指示する。
【0257】
<事象キーワードデータ>
ここで、事象キーワードを記憶させる際のデータ形式について説明する。
【0258】
事象キーワードは、上述の矛盾記述のデータに追加されて記憶される。
【0259】
第2の矛盾を回避すべく生じた変化のうち、活動要素図10内で生じた変化を記憶するためのデータ形式「<活動構造名、ノード1、ノード2、(自由記述)、事象キーワード>」の、「事象キーワード」の部分に追加される。
【0260】
矩形2421に対応付けられた変化かキーワードが「誤判断」である場合は、記憶されるデータは「<製造工程、主体、ツール、(時間的、コスト的に利用可能な対応方法の選択)、誤判断>」となる。
【0261】
<6:類似事例検索>
制御部1030から、類似事例検索処理を開始するよう指示を受けた類似事例検索部1600は、対象事例に類似する事例を、解析結果記憶部1900から検索し、表示する。
【0262】
より具体的には、類似事例検索部1600は、対象事例に対応付けて矛盾記述1940に記憶されている矛盾キーワード及び事象キーワードと、他の事例に対応付けて記憶されている矛盾キーワード及び事象キーワードとを比較し、一致するキーワードが多いほど類似度が高いと判断する。類似判断の詳細は、<類似判断の方法>の項で説明する。
【0263】
類似事例検索部1600は、他の事例のうちから最も類似度が高い事例を検索し、類似事例として、類似事例画面2500に表示する。
【0264】
より具体的には、類似事例検索部1600は、表示部1010に類似事例画面2500を表示するよう依頼する(図12参照)。
【0265】
この際、類似事例検索部1600は、シナリオ抽出画面2400の事例本文エリア2411に表示されていた対象事例の本文及び管理情報を、類似事例画面2500の事例本文エリア2511に表示するよう表示部1010に依頼する。
【0266】
また、類似事例検索部1600は、類似事例の本文及び管理情報を解析事例1910から読み出し、読み出した管理情報を表示部1010に渡して、類似事例画面2500の類似事例エリア2512に表示するよう依頼する。また、本文を類似事例活動構造図エリア2520の事例内容領域2521に表示するよう依頼する。
【0267】
更に、類似事例検索部1600は、類似事例に対応付けて記憶されている活動構造図1930からデータを読み出し、読み出したデータを表示部1010に渡して、活動構造図を再現して類似事例活動構造図エリア2520に表示するよう依頼する。
【0268】
依頼を受けた表示部1010は、類似事例画面2500をディスプレイに表示する(ステップS190)。
【0269】
<類似判断の方法>
ここで、類似事例の検索方法を、図13を用いて説明する。
【0270】
図13は、類似度判定表1610の構成及び内容の例を示す図である。
【0271】
対象事例「品質トラブル」のキーワード1611と、他の事例「臨界事故」のキーワード1612と、これらを比較した結果である一致性1613とを示す図である。
【0272】
類似事例検索部1600は、矛盾記述1940に記憶されているデータから、類似度判定表1610を作成する。
【0273】
類似度判定表1610は、対象事例のキーワードと他の事例のキーワードとを比較するために、ノード毎に対応させて記載している。
【0274】
例えば、「活動1」のノード「ツール」に付された対象事例「品質トラブル」のキーワード1611は「機能:効果」であり、他の事例「臨界事故」のキーワード1612は「機能:信頼性」である。
【0275】
矛盾記述1940に記憶されている第1の矛盾及び矛盾キーワードのデータは、「<活動名、ノード、矛盾キーワード、(自由記述)>」の形式で記憶されている。このデータから、「矛盾キーワード」を、「活動名」で示される活動の「ノード」で示されるノードの欄に書き込む。
【0276】
例えば、対象事例に対応付けられて矛盾記述1940に記憶されている「品質トラブル」1611「<製造工程、主体、能力:知識判断、(簡易な品質修正手段・・・)>」というデータの場合は、「品質トラブル」1611の「活動1」のノード「主体」の欄に、「能力:知識判断」と書き込む。
【0277】
また、第2の矛盾を回避すべく生じた変化のうち、活動要素図10内で生じた変化は、「<活動名、ノード1、ノード2、(自由記述)、事象キーワード>」の形式で記憶されている。このデータから、「事象キーワード」を、「活動名」で示される活動の「ノード1−ノード2」で示されるノードの欄に書き込む。
【0278】
例えば、「<製造工程、主体、ツール、(時間的、コスト的・・・)、誤判断>」というデータの場合は、「品質トラブル」1611の「活動1」のノード「主体−ツール」の欄に、「誤判断」と書き込む。
【0279】
類似度判定表1610にキーワードを書き込んだら、「品質トラブル」1611のキーワードと「臨界事故」1612のキーワードとの比較を行う。比較の結果は、一致性1613に記載する。具体的には、キーワードが完全一致する場合は「◎(二重丸)」を記載し、大分類が一致するが小分類が異なる場合は「○(丸)」を記載し、比較の対象が無い場合は「+」を記載する。
【0280】
類似事例検索部1600は、「◎」が多いほど類似度が高いと判断する。例えば、「◎」、「○」、「+」をそれぞれ「5」、「3」、「0」と点数化し、他の事例の合計点を算出する。そして、他の事例のうち、もっとも合計点が高い事例を類似事例とするなどである。
【0281】
図13の類似度判定表1610を参照すると、「品質トラブル」1611は「品質」に関する事例であり、「臨界事故」1612は「安全」にかかわる事例であるという違いがあること、及び、「臨界事故」1612は、よりガバナンスの欠如が明確である(+の要素)ことがわかる。しかし、失敗に至るプロセスでは類似度が高いことがわかる。
【0282】
このように、品質に関する失敗事例と安全に関する失敗事例というように、一見すると関係のなさそうな事例であっても、活動構造レベルでの類似性比較を行うことが可能になる。すなわち、様々な領域の失敗事例を類似事例として検索することができるので、失敗の再発防止や危険予知において有用な教訓を得ることができる可能性が高くなる。
【0283】
尚、図13では、他の事例として、活動の個数が対象事例と同じ3つの事例を記載しているが、これに限られない。
【0284】
<類似事例の検索処理>
解析者の、類似事例の検索を指示する操作を検出した操作部1020は、検出した操作を制御部1030に通知する。
【0285】
通知を受けた制御部1030は、通知された操作が、「類似事例の検索」を選択したと判断し(ステップS100:検索)、事例選択処理部1100に、解析結果記憶部1900から事例を選択させる事例選択処理を開始するよう指示する。
【0286】
<1:事例選択>
指示を受けた事例選択処理部1100は、類似検索の対象となる事例を解析者に選択させる処理を行う。
【0287】
具体的には、事例選択処理部1100は、ステップS100と同様の処理を行う。異なる点は、解析対象事例記憶部1800から事例を検索するのではなく、解析結果記憶部1900から事例を検索する点と、対象事例、すなわち、事例内容領域2031に表示されている事例の管理情報及び本文を、解析結果記憶部1900の解析事例1910に記憶させない点である。
【0288】
解析者は、事例内容領域2031(図7参照)に表示されている管理情報及び本文を読み、この事例の類似事例を検索すると決めると(以下、この事例を「対象事例」という。)、事例選択画面2000の「類似事例検索」と記載されたタブを選択する(ステップS200)。尚、事例選択処理部1100が類似検索処理で実行されているときは、「類似事例検索」と記載されたタブ以外のタブは選択できないように制御部1030が制御しているものとする。
【0289】
解析者のタブ選択を検出した操作部1020は、検出した操作を制御部1030に通知する。
【0290】
通知を受けた制御部1030は、通知されたタブが、「類似事例検索」であることから、類似事例検索部1600に類似事例検索処理を開始するよう指示する。
【0291】
<6:類似事例検索>
制御部1030から、類似事例検索処理を開始するよう指示を受けた類似事例検索部1600は、対象事例に類似する事例を、解析結果記憶部1900から検索し、表示する(ステップS190)。この処理は、<失敗事例の解析処理>における類似事例検索処理と同様である。
【0292】
本発明を表現するために、上述において図面を参照しながら実施形態を通して本発明を適切且つ十分に説明したが、当業者であれば上述の実施形態を変更および/または改良することは容易に為し得ることであると認識すべきである。したがって、当業者が実施する変更形態または改良形態が、請求の範囲に記載された請求項の権利範囲を離脱するレベルのものでない限り、当該変更形態または当該改良形態は、当該請求項の権利範囲に包括されると解釈される。
【0293】
尚、必要に応じて事例解析装置1000は、外部記憶部又は通信インターフェース部(不図示)を更に備えてもよい。
【0294】
外部記憶部は、例えば、フレキシブルディスク、CD−ROM(Compact Disc Read Only Memory)、CD−R(Compact Disc Recordable)及びDVD−R(Digital Versatile Disc Recordable)等の記録媒体との間でデータを読み込み及び/又は書き込みを行う装置であり、例えば、フレキシブルディスクドライブ、CD−ROMドライブ、CD−Rドライブ及びDVD−Rドライブ等である。通信インターフェース部は、ネットワークに接続され、ネットワークを介して他のサーバやクライアント等との間で通信信号を送受信するための機器である。
【0295】
事例解析方法をプログラムしたプログラムが事例解析装置1000内の記憶部に格納されていない場合には、これらを記録した記録媒体から外部記憶部を介して事例解析装置1000内の記憶部にインストールされるように構成してもよく、また、これらプログラムを管理するサーバ(不図示)からネットワーク及び通信インターフェース部を介して各プログラムがダウンロードされるように構成してもよい。また、解析対象事例記憶部1800に記憶されているデータは、このデータを記憶した記録媒体によって外部記憶部を介して事例解析装置1000に入力されるように構成してもよく、また、クライアントからネットワーク及び通信インターフェース部を介して事例解析装置1000に入力されるように構成してもよい。
【符号の説明】
【0296】
10 活動要素図
20 活動構造図
1000 事例解析装置
1010 表示部
1020 操作部
1030 制御部
1100 事例選択処理部
1200 スクリプト記述処理部
1300 活動構造記述処理部
1400 プロセス記述処理部
1500 シナリオ抽出処理部
1600 類似事例検索部
1610 類似度判定表
1700 キーワード一覧記憶部
1800 解析対象事例記憶部
1900 解析結果記憶部
1910 解析事例
1920 スクリプト
1930 活動構造図
1940 矛盾記述
1710 矛盾キーワード一覧
1720 事象キーワード一覧
2000 事例選択画面
2100 スクリプト記述画面
2200 活動構造記述画面
2300 プロセス記述画面
2400 シナリオ抽出画面
2500 類似事例画面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の構成要素と構成要素間の相互作用とによって活動を表す活動構造図で示すことができる事例と、活動構造図におけるいずれかの構成要素において発生した矛盾が属するカテゴリを示すキーワードとを対応付けて記憶している事例記憶手段と、
前記構成要素と前記キーワードとに基づいて、ある事例と類似する事例を前記事例記憶手段から検索する類似検索手段と
を備えることを特徴とする事例解析装置。
【請求項2】
前記事例解析装置は、更に、
事例の内容を表示する事例表示手段と、
前記事例を構成する複数の活動を表す活動構造図を生成する為の情報を、ユーザから取得する活動情報取得手段と、
活動構造図に発生した矛盾のキーワードと当該矛盾が発生した構成要素とを、ユーザから取得するキーワード取得手段と、
前記事例と、前記キーワード取得手段で取得した矛盾のキーワードと当該矛盾が発生した構成要素とを対応付けて前記事例記憶手段に記憶させる事例蓄積手段とを備え、
前記類似検索手段は、対応付けて事例蓄積手段に記憶されているキーワードと構成要素とが、ある事例に対応付けて記憶されているキーワードと構成要素と同一である事例を、類似する事例として検索する
ことを特徴とする請求項1に記載の事例解析装置。
【請求項3】
前記活動情報取得手段が取得する活動構造図を生成する為の情報は、CNM記述で表されている
ことを特徴とする請求項2に記載の事例解析装置。
【請求項4】
複数の構成要素と構成要素間の相互作用とによって活動を表す活動構造図で示すことができる事例と、活動構造図におけるいずれかの構成要素において発生した矛盾が属するカテゴリを示すキーワードとを対応付けて記憶している事例記憶手段を有する事例解析装置で用いられる事例解析方法であって、
前記構成要素と前記キーワードとに基づいて、ある事例と類似する事例を前記事例記憶手段から検索する類似検索工程
を備えることを特徴とする事例解析方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2012−98787(P2012−98787A)
【公開日】平成24年5月24日(2012.5.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−243676(P2010−243676)
【出願日】平成22年10月29日(2010.10.29)
【出願人】(000001199)株式会社神戸製鋼所 (5,860)
【Fターム(参考)】