説明

二光子吸収材料とその用途

【課題】光学特性の変化を、高感度に実現し、効率良く二光子を吸収する有機材料、すなわち二光子吸収断面積の大きな有機材料、また、二光子吸収断面積が大きい二光子吸収化合物を少なくとも有し、二光子吸収化合物の二光子吸収を利用して書き換えできない方式で記録を行った後生じた光学特性の違いを検出することで再生可能である二光子吸収光記録材料、及びそれらを用いた優れた二光子吸収三次元光記録材料の提供。
【解決手段】下式(I)で表される二光子吸収材料。


式中、Ar、Ar及びArは、置換または無置換の芳香族炭化水素基の二価基、Arは、置換または無置換の芳香族炭化水素基、R及びRは、それぞれ独立に、水素原子、置換または無置換のアルキル基、置換または無置換のアルコキシ基、もしくは置換または無置換のアルキルチオ基から選択される基、x及びyは、それぞれ独立に、0から2までの整数、nは、0または1。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は二光子吸収材料に関し、特に、高い二光子吸収断面積を有する二光子吸収単分子材料または高分子材料に関し、三次元メモリ材料、光制限材料、光造形用光硬化樹脂の硬化材料、光化学療法用材料、二光子蛍光顕微鏡用蛍光色素材料などの用途に応用される。
【背景技術】
【0002】
二光子吸収材料に関する従来例として、特許文献1〜3開示のものがある。
また、三次元メモリ媒体(材料)に関する従来例として、特許文献4〜6開示のものがある。
また、光制限素子(材料)に関する従来例として特許文献7開示のものがある。
また、光造形技術に関する従来例として、特許文献8開示のものがある。
また、二光子特性を利用した(蛍光)顕微鏡に関する従来例として、特許文献9〜11開示のものがある。
特許文献1〜11の従来例に従って光メモリ、光学素子、機器等に本発明の優れた二光子吸収特性を有する二光子吸収材料を適用すれば、本発明の請求項7〜10の三次元メモリ材料、光制限材料、及び光造形用光硬化樹脂の硬化材料、二光子蛍光顕微鏡用蛍光色素材料を達成できる。
【0003】
二光子吸収現象を利用すると、極めて高い空間分解能を特徴とする種々の応用が可能となるが、現時点で利用可能な二光子吸収化合物では二光子吸収能が低いため、二光子吸収を誘起する励起光源としては高価な非常に高出力のレーザーが必要となる。従って、小型で安価なレーザーを使って二光子吸収を利用した実用用途を実現するためには、より高効率の二光子吸収材料の開発が必須である。
【0004】
<二光子吸収材料を用いた三次元多層光メモリへの応用>
最近、インターネット等のネットワークやハイビジョンTVが急速に普及している。また、HDTV(High Definition Television)の放映も間近にひかえて、民生用途においても50GB以上、好ましくは100GB以上の画像情報を安価簡便に記録するための大容量記録媒体の要求が高まっている。さらにコンピューターバックアップ用途、放送バックアップ用途等、業務用途においては、1TB程度あるいはそれ以上の大容量の情報を高速かつ安価に記録できる光記録媒体が求められている。そのような中、DVD±Rのような従来の二次元光記録媒体は原理上、たとえ記録再生波長を短波長化したとしてもせいぜい25GB程度で、将来の要求に対応できる程の充分大きな記録容量が期待できるとは言えない状況である。
そのような状況の中、究極の高密度、高容量記録媒体として、三次元光記録媒体が俄然、注目されてきている。三次元光記録媒体は、三次元(膜厚)方向に何十、何百層もの記録を重ねることで、従来の二次元記録媒体の何十、何百倍もの超高密度、超高容量記録を達成しようとするものである。三次元光記録媒体を提供するためには、三次元(膜厚)方向の任意の場所にアクセスして書き込みできなければならないが、その手段として、二光子吸収材料を用いる方法とホログラフィ(干渉)を用いる方法とある。二光子吸収材料を用いる三次元光記録媒体では、上記で説明した原理に基づいて何十、何百倍にもわたって、いわゆるビット記録が可能であって、より高密度の記録が可能であり、まさに究極の高密度、高容量光記録媒体であると言える。
二光子吸収材料を用いた三次元光記録媒体としては、記録再生に蛍光性物質を用いて蛍光で読み取る方法(レウ"ィッチ、ユージーン、ポリス他、特表2001−524245号公報[特許文献1]、パベル、ユージエン他、特表2000−512061号公報[特許文献2])、フォトクロミック化合物を用いて吸収または蛍光で読み取る方法(コロティーフ、ニコライ・アイ他、特表2001−522119号公報[特許文献3]、アルセノフ、ウ"ラディミール他、特表2001−508221号公報[特許文献4])等が提案されているが、いずれも具体的な二光子吸収材料の提示はなく、また抽象的に提示されている二光子吸収化合物の例も二光子吸収効率の極めて小さい二光子吸収化合物を用いている。さらに、これらの特許文献に用いているフォトクロミック化合物は可逆材料であるため、非破壊読み出し、記録の長期保存性、再生のS/N比等に問題があり、光記録媒体として実用性のある方式であるとは言えない。特に非破壊読出し、記録の長期保存性等の点では、不可逆材料を用いて光を照射した時の光学特性の変化、例えば反射率変化、透過率変化、発光強度の変化などを検出して再生するのが好ましいが、このような機能を有する二光子吸収材料を具体的に開示している例はなかった。
また、河田聡、川田善正、特開平6−28672号公報[特許文献5]、河田聡、川田善正他、特開平6−118306号公報[特許文献6]には、屈折率変調により三次元的に記録する記録装置、及び再生装置、読み出し方法等が開示されているが、二光子吸収三次元光記録材料を用いた方法についての記載はない。
【0005】
上に述べたように、二光子吸収により得た励起エネルギーを用いて反応を起こさせ、その結果レーザー焦点(記録)部と非焦点(非記録)部で光を照射した際の光学特性の変化を書き換えできない方式で変調することができれば、三次元空間の任意の場所に極めて高い空間分解能で、究極の高密度記録媒体と考えられる三次元光記録媒体への応用が可能となる。さらに、非破壊読み出しが可能で、かつ不可逆材料であるため良好な保存性も期待でき実用的である。
しかし、現時点で利用可能な二光子吸収化合物では、二光子吸収能が低いため、光源として非常に高出力のレーザーが必要であり、かつ記録時間も長くかかる。特に三次元光記録媒体に使用するためには、速い転送レート達成のために、高感度にて光学特性の違いによる記録を二光子吸収により行うことができる二光子吸収三次元光記録材料の構築が必須である。そのためには、高効率に二光子を吸収し励起状態を生成することができる二光子吸収化合物が有力であるが、そのような材料は今までほとんど開示されておらず、そのような材料の構築が望まれていた。
【0006】
【特許文献1】特開2005−213434号公報
【特許文献2】特開2005−82507号公報
【特許文献3】特開2004−168690号公報
【特許文献4】特開2005−100606号公報
【特許文献5】特表2005−517769号公報
【特許文献6】特表2004−534849号公報
【特許文献7】特開平08−320422号公報
【特許文献8】特開2005−134783号公報
【特許文献9】特開平09−230246号公報
【特許文献10】特開平10−142507号公報
【特許文献11】特開2005−165212号公報
【特許文献12】特表2001−524245号公報
【特許文献13】特表2000−512061号公報
【特許文献14】特表2001−522119号公報
【特許文献15】特表2001−508221号公報
【特許文献16】特開平6−28672号公報
【特許文献17】特開平6−118306号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記従来技術に鑑みて、本発明の目的は、効率良く二光子を吸収する高感度な二光子吸収材料、すなわち二光子吸収断面積の大きな有機材料を提供することにある。
また、本発明の目的は、二光子吸収断面積が大きい二光子吸収化合物を少なくとも有し、二光子吸収化合物の二光子吸収を利用して書き換えできない方式で記録を行った後、光を記録材料に照射してその光学特性の違いを検出することにより再生することが可能な二光子吸収光記録材料を提供することにある。
さらに、それらを用い優れた二光子吸収三次元光記録材料を提供することにある。
またさらに、それらを用いた二光子吸収三次元光記録材料、光制限材料、光造形用光硬化樹脂の硬化材料、二光子顕微鏡用の蛍光色素材料を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは鋭意検討した結果、特定の構成単位を含有するアリールアミンの単量体もしくは重合体(ポリマー)により上記課題が解決されることを見出し、本発明に至った。
即ち、本発明の上記目的は、(1)「下記一般式(I)で表される二光子吸収材料;
【0009】
【化1】


式中、Ar、Ar及びArは、置換または無置換の芳香族炭化水素基の二価基であって、
Arは、置換または無置換の芳香族炭化水素基であって、
及びRは、それぞれ独立に、水素原子、置換または無置換のアルキル基、置換または無置換のアルコキシ基、もしくは置換または無置換のアルキルチオ基から選択される基であって、
x及びyは、それぞれ独立に、0から2までの整数であって、
nは、0または1である。」、
(2)「下記一般式(II)で表されることを特徴とする二光子吸収材料;
【0010】
【化2】

式中、Arは、置換または無置換の芳香族炭化水素基の二価基であって、
Arは、置換または無置換の芳香族炭化水素基であって、
、R、R及びRは、それぞれ独立に、水素原子、置換または無置換のアルキル基、置換または無置換のアルコキシ基、もしくは置換または無置換のアルキルチオ基から選択される基であって、
x及びyは、それぞれ独立に、0から2までの整数であって、
z及びuは、それぞれ独立に、0から4までの整数であって、
nは、0または1である。」、
(3)「下記一般式(III)で表されることを特徴とする二光子吸収材料;
【0011】
【化3】

式中、Arは、置換または無置換の芳香族炭化水素基の二価基であって、
、R、R、R及びRは、それぞれ独立に、水素原子、置換または無置換のアルキル基、置換または無置換のアルコキシ基、もしくは置換または無置換のアルキルチオ基から選択される基であって、
x及びyは、それぞれ独立に、0から2までの整数であって、
z及びuは、それぞれ独立に、0から4までの整数であって、
vは、0から5までの整数であって、
nは、0または1である。」、
(4)「一般式(IV)で表される繰り返し単位を有する二光子吸収材料;
【0012】
【化4】

式中、Ar、Ar及びArは、置換または無置換の芳香族炭化水素基の二価基であって、
Arは、置換または無置換の芳香族炭化水素基であって、
及びRは、それぞれ独立に、水素原子、置換または無置換のアルキル基、置換または無置換のアルコキシ基、もしくは置換または無置換のアルキルチオ基から選択される基であって、
x及びyは、それぞれ独立に、0から2までの整数であって、
nは、0または1である。」、
(5)「下記一般式(V)で表されることを特徴とする二光子吸収材料;
【0013】
【化5】


式中、Arは、置換または無置換の芳香族炭化水素基の二価基であって、
Arは、置換または無置換の芳香族炭化水素基であって、
、R、R及びRは、それぞれ独立に、水素原子、置換または無置換のアルキル基、置換または無置換のアルコキシ基、もしくは置換または無置換のアルキルチオ基から選択される基であって、
x及びyは、それぞれ独立に、0から2までの整数であって、
z及びuは、それぞれ独立に、0から4までの整数であって、
nは、0または1である。」、
(6)「下記一般式(VI)で表されることを特徴とする二光子吸収材料;
【0014】
【化6】


式中、Arは、置換または無置換の芳香族炭化水素基の二価基であって、
、R、R、R及びRは、それぞれ独立に、水素原子、置換または無置換のアルキル基、置換または無置換のアルコキシ基、もしくは置換または無置換のアルキルチオ基から選択される基であって、
x及びyは、それぞれ独立に、0から2までの整数であって、
z及びuは、それぞれ独立に、0から4までの整数であって、
vは、0から5までの整数であって、
nは、0または1である。」、
(7)「前記第(1)項乃至第(6)項のいずれかに記載の二光子吸収材料を含む平面及び膜厚方向に記録が可能な三次元メモリ材料」、
(8)「前記第(1)項乃至第(6)項のいずれかに記載の二光子吸収材料を含む光制限材料」、
(9)「前記第(1)項乃至第(6)項のいずれかに記載の二光子吸収材料を含む光造形用光硬化樹脂の硬化材料」、
(10)「前記第(1)項乃至第(6)項のいずれかに記載の二光子吸収材料を含む二光子蛍光顕微鏡用蛍光色素材料」によって達成される。
【0015】
即ち、本発明は、上記(1)〜(6)の二光子吸収材料、上記(7)のこれを用いた三次元メモリ材料、上記(8)の光制限材料、上記(9)の光造形用光硬化樹脂の硬化材料、上記(10)の二光子蛍光顕微鏡用蛍光色素材料に係わる。ここで、上記(1)〜(3)は、本発明の単分子系の二光子吸収材料の基本構造を示し、(4)〜(6)は、本発明の二光子吸収材料の重合体構造を示し、(7)〜(10)は、その好適な工業的適用材料例を示す。
【発明の効果】
【0016】
以下の詳細かつ具体的な説明から明らかなように、本発明により、光子吸収の遷移効率が高い二光子吸収化合物が実現でき、小型で安価なレーザーを使った実用用途(三次元メモリ材料、光制限材料、光造形用光硬化樹脂の硬化材料、光化学療法用材料、二光子蛍光顕微鏡用蛍光色素材料など)が実現可能となる。
また、以前は低分子化合物(単分子化合物)の二光子吸収材料を用いる場合、これまでは高分子材料中に分散させて使用していた。しかしながら長期保存性に関しては、二光子吸収材料の結晶化やマイグレーションによる偏析等による塗膜欠陥が発生するため、品質が変化する不具合があった。
二光子吸収能を有する部位を連結した二光子吸収重合体とすることで、長期保存でも塗膜欠陥が発生せず、安定した品質が得られるという極めて優れた効果を奏するものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、本発明ついてより詳細に説明する。
本発明の二光子吸収材料とは、非共鳴領域の波長において分子を励起することが可能な材料で、このとき励起に用いた光子の約2倍のエネルギー準位に、実励起状態が存在する材料のことである。
ところで二光子吸収現象とは、三次の非線形光学効果の一種であって、分子が二つのフォトンを同時に吸収して、基底状態から励起状態へ遷移する現象であり、古くから知られていたがJean−Luc Bredas等が1998年に分子構造とメカニズムの関係を解明して以来(Science,281,1653 (1998))、近年になって二光子吸収能を有する材料に関する研究が進むようになった。
【0018】
しかしながらこのような二光子同時吸収の遷移効率は、一光子吸収に較べて極めて低く、極めて大きなパワー密度の光子を必要とするため、通常使用されるレーザー光強度では殆ど無視され、ピーク光強度(最大発光波長における光強度)が高いモード同期レーザーのようなフェムト秒程度の極超短パルスレーザーを用いると、観察されることが確認されている。
二光子吸収の遷移効率は、印加する光電場の二乗に比例する(二光子吸収の二乗特性)。このため、レーザーを照射した場合、レーザースポット中心部、即ち電界強度の高い位置でのみ二光子の吸収が起こり、周辺部の電界強度の弱い部分では二光子の吸収は全く起こらない。三次元空間においては、レーザー光をレンズで集光した焦点の電界強度の大きな領域でのみ二光子吸収が起こり、焦点から外れた領域では電界強度が弱いために二光子吸収が全く起こらない。印加された光電場の強度に比例してすべての位置で励起が起こる一光子の線形吸収に比べて、二光子吸収は、この二乗特性に由来して空間内部の一点のみしか励起が起こらないため、空間分解能が著しく向上する。
【0019】
この特性を利用して、記録媒体の所定の位置に二光子吸収によりスペクトル変化、屈折率変化または偏光変化などの光学特性変化を生じさせ、ビットデータを記録する三次元メモリの研究が進められている。二光子吸収は、光の強度の二乗に比例して生じるため、二光子吸収を利用したメモリは、一光子吸収を利用したメモリに比べて、スポットサイズを小さくすることができ、超解像記録が可能となる。その他この二乗特性に由来する高い空間分解能の特性から、光制限材料、光造形用光硬化樹脂の硬化材料、二光子蛍光顕微鏡用蛍光色素材料などの用途への開発も進められている。
【0020】
さらに、二光子吸収を誘起する場合には、化合物の線形吸収帯が存在する波長領域よりも長波長でかつ吸収の存在しない、近赤外領域の短パルスレーザーを用いることが可能である。化合物の線形吸収帯が存在しない、いわゆる透明領域の近赤外光を用いるため、励起光が吸収や散乱を受けずに試料内部まで到達でき、かつ二光子吸収の二乗特性のために試料内部の一点を高い空間分解能で励起できるため、二光子吸収及び二光子発光は生体組織の二光子造影や二光子フォトダイナミックセラピー(PDT)などの光化学療法応用面でも期待されている。また、二光子吸収、二光子発光を用いると、入射した光子のエネルギーよりも高いエネルギーの光子を取り出せるため、波長変換デバイスという観点からアップコンバージョンレージングに関する研究も報告されている。
【0021】
二光子吸収材料としてはこれまでに多数の無機材料が見出されてきた。ところが無機物においては、所望の二光子吸収特性や、素子製造のために必要な諸物性を最適化するためのいわゆる分子設計が困難であることから実用するのは非常に困難であった。一方、有機化合物は分子設計により所望の二光子吸収の最適化が可能であるのみならず、その他の諸物性のコントロールも可能であるため、実用の可能性が高く、有望な二光子吸収材料として注目を集めている。
【0022】
従来の有機系二光子吸収材料としては、ローダミン、クマリンなどの色素化合物、ジチエノチオフェン誘導体、オリゴフェニレンビニレン誘導体などの化合物が知られている。しかしながら、分子あたりの二光子吸収能を示す二光子吸収断面積が小さく、特にフェムト秒パルスレーザーを用いた場合の二光子吸収断面積は、200(GM:×10−50cm・s・molecule−1・photon−1)未満のものが殆どで工業的な実用化には至っていない。
【0023】
本発明の二光子吸収光記録材料は、スピンコーター、ロールコーターまたはバーコーターなどを用いることによって基板上に直接塗布することも、あるいはフィルムとしてキャストしついで通常の方法により基板にラミネートすることもでき、それらにより二光子吸収光記録材料とすることができる。
ここで、「基板」とは、任意の天然又は合成支持体、好適には柔軟性又は剛性フィルム、シートまたは板の形態で存在することができるものを意味する。
基板として好ましくは、ポリエチレンテレフタレート、樹脂下塗り型ポリエチレンテレフタレート、火炎又は静電気放電処理されたポリエチレンテレフタレート、セルロースアセテート、ポリカーボネート、ポリメチルメタクリレート、ポリエステル、ポリビニルアルコール、ガラス等である。また、この基板にはあらかじめ、トラッキング用の案内溝やアドレス情報が付与されたものであっても良い。
【0024】
使用した溶媒は乾燥時に蒸発除去することができる。蒸発除去には加熱や減圧を用いても良い。
さらに、二光子吸収光記録材料の上に、酸素遮断や層間クロストーク防止のための保護層(中間層)を形成してもよい。保護層(中間層)は、ポリプロピレン、ポリエチレン等のポリオレフィン、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリビニルアルコール、ポリエチレンテレフタレートまたはセロファンフィルムなどのプラスチック製のフィルムまたは板を静電的な密着、押し出し機を使った積層等により貼合わせるか、前記ポリマーの溶液を塗布してもよい。また、ガラス板を貼合わせてもよい。また、保護層と感光膜の間および/または、基材と感光膜の間に、気密性を高めるために粘着剤または液状物質を存在させてもよい。さらに感光膜間の保護層(中間層)にもあらかじめ、トラッキング用の案内溝やアドレス情報が付与されたものであっても良い。
【0025】
モノマー化合物(低分子化合物)もポリマー化合物(高分子化合物、樹脂)もデバイスとして用いる形態としては、基本的に膜(フィルム)であり、従って、その形成方法としては通常の有機材料の溶剤塗工法(すなわち、スピンコート、浸漬塗布、ロールコート、スプレーコート、バーコート等)が使用可能である。低分子化合物(単分子化合物)はそれ自体に被膜形成能があれば、単独でも、高分子材料等の決着材との混合でも用いることが可能であるが、低分子化合物(単分子化合物)単独では被膜形成能が無い場合、高分子材料等の決着材との混合でも用いることになる。いずれの(低分子、高分子)構造においても用途によっては樹脂との混合等の形態で成形によってデバイス化することも可能である。
【0026】
また本発明(I)〜(III)で示される低分子系化合物に比べると本発明の(IV)〜(V)で示される高分子系化合物では塗膜欠陥(結晶化、マイグレーション)がより発生し難い傾向にあり、塗膜欠陥(結晶化、マイグレーション)が発生しない品質の安定した二光子吸収断面積の大きな有機材料を提供することも可能である。
【0027】
上述した三次元多層光記録媒体の任意の層に焦点を合わせ、記録再生を実施することで、本発明の三次元記録媒体として機能する。また、層間を保護層(中間層)で区切っていなくとも、二光子吸収色素特性から深さ方向の三次元記録が可能である。
【0028】
以下、三次元多層光メモリの好ましい実施形態(具体例)を示すが、本発明はこれらの実施形態により何ら限定されず、三次元記録(平面及び膜厚方向に記録)が可能な構造であれば、他にどのような構造であっても構わない。
【0029】
三次元多層光メモリの記録/再生のシステム概略図を図1(a)に、記録媒体の概略断面図を図1(b)に示す。
図中(b)の記録媒体においては、平らな支持体(基板(1))に本発明の二光子吸収化合物を用いた記録層と、クロストーク防止用の中間層(保護層)が交互に50層ずつ積層され、各層はスピンコート法により成膜されている。記録層の厚さは0.01〜0.5μ、中間層の厚さは0.1μ〜5μが好ましく、この構造であれば、現在普及しているCD/DVDと同じディスクサイズで、テラバイト級の超高密度光記録が実現できる。更にデータの再生方法(透過/或いは反射型)により、基板(1)と同様の基板(2)(保護層)、或いは高反射率材料からなる反射層が構成される。
記録時は単一ビームが使用され、この場合フェムト秒オーダーの超短パルス光を利用することができる。また再生時は、データ記録に使用するビームとは異なる波長、或いは低出力の同波長の光を用いることもできる。記録及び再生は、ビット単位/ページ単位のいずれにおいても実行可能であり、面光源や二次元検出器等を利用する並行記録/再生は、転送レートの高速化に有効である。
なお、本発明に従い同様に形成される三次元多層光メモリの形態としては、カード状、プレート状、テープ状、ドラム状等が考えられる。
【0030】
<二光子吸収材料を用いた光制限素子への応用>
光通信や光情報処理では、情報等の信号を光で搬送するために変調、スイッチング等の光制御が必要になる。この種の光制御には、電気信号を用いた電気−光制御方法が従来採用されている。しかし電気−光制御方法は、電気回路のようなCR時定数による帯域制限、素子自体の応答速度や電気信号と光信号との間の速度の不釣合いで処理速度が制限されることなどの制約があり、光の利点である広帯域性や高速性を十分に生かすためには、光信号によって光信号を制御する光−光制御技術が非常に重要になってくる。
この要求に応えるものとして本発明の二光子吸収材料を加工して作製した光学素子は、光を照射することで引き起こされる透過率や屈折率、吸収係数などの光学的変化を利用し、電子回路技術を用いずに光の強度や周波数を変調することで、光通信、光交換、光コンピューター、光インターコネクション等における光スイッチなどに応用することが可能である。
二光子吸収による光学特性変化を利用する本発明の光制限素子は、通常の半導体材料により形成される光制限素子や、一光子励起によるものに比べ、応答速度にはるかに優れた素子を提供することができる。また本発明の二光子吸収材料は高感度ゆえに、S/N比の高い信号特性に優れた光制限素子を提供することができる。
【0031】
図2は、本発明の二光子吸収材料を、二光子励起し得る波長の制御光により二光子励起させることによって、一光子励起し得る波長の信号光を光スイッチングする光制御素子の一例である。保護層で狭持された二光子吸収材料の形態を示すが、この構成が本発明を限定するものではない。本発明における光制限素子の公知文献として特開平8−320422号公報が挙げられる。これによると光照射により屈折率が変化する光屈折率材料に、その屈折率が変化する波長の光を照射してフォーカシングを行い、屈折率分布を形成する光導波路として開示されている。すなわち、本発明の高い二光子吸収能を有した材料、薄膜、もしくは光硬化性樹脂等に分散させた固体物を光学素子として配置し、ひとつの波長(λ1)の光で励起状態に励起こされ、さらにその状態から他の波長(λ2)の光で他の状態に励起こされることにより波長による屈折率変化分布を利用した光導波路の設計が可能となる。また、二光子吸収材料はその多くが蛍光を有するものが多く、光デバイスの一方の出射端またはその近傍に蛍光物質を配置し、他方から励起光(λ1)を出射させ、励起光と蛍光(λ2)で屈折率分布を形成することもできる。この場合、通常蛍光の方が励起光より弱いので、感度は蛍光の波長において大きくすることが望ましい。蛍光物質としては、蛍光色素を光硬化性物質に分散させたものなどが例示される。
【0032】
<光造形用材料への応用>
二光子光造形法の装置の概略図を図3に示し、以下に説明する。
近赤外パルスレーザー光源(31)からの光を、ミラースキャナー(34)に通した後、レンズを用いて光硬化性樹脂(39)中に集光させレーザースポットを走査し、二光子吸収を誘起することによって焦点近傍のみにおいて樹脂を硬化させて任意の三次元構造を形成する二光子マイクロ光造形方法である。
パルスレーザー光をレンズで集光して、集光点近傍にフォトンの密度の高い領域を形成する。このときビームの各断面を通過するフォトンの総数は一定なので、焦点面内でビームを二次元的に走査した場合、各断面における光強度の総和は一定である。しかしながら、二光子吸収の発生確率は、光強度の二乗に比例するため、光強度の大きい集光点近傍にのみ、二光子吸収の発生の高い領域が形成される。このように、パルスレーザー光をレンズによって集光させ二光子吸収を誘起することで、集光点近傍に光吸収を限定し、ピンポイントで樹脂を硬化させることが可能となる。集光点はZステージ(36)とガルバノミラーによって光硬化樹脂液内を自由に移動させることができるため、光硬化性樹脂液内において目的とする三次元加工物を自在に形成することができる。
【0033】
二光子光造形法の特徴としては、以下の項目が挙げられる。
1)回折限界を超える加工分解能
二光子吸収の光強度に対する非線形性によって、光の回折限界を超えた加工分解能を実現できる。
2)超高速造形
二光子吸収を利用した場合、焦点以外の領域では、光硬化性樹脂が原理的にも硬化しない。このため照射させる光強度を大きくし、ビームのスキャン速度を速くすることができる。このため、造形速度を約10倍向上することができる。
3)三次元加工
光硬化性樹脂は、二光子吸収を誘起する近赤外光に対して透明である。したがって焦点光を樹脂の内部へ深く集光した場合でも、内部硬化が可能である。従来のSIHでは、ビームを深く集光した場合、光吸収によって集光点の光強度が小さくなり、内部硬化が困難になる問題点が、本発明ではこうした問題点を確実に解決することができる。
4)生産性の向上
従来法では樹脂の粘性や表面張力によって造形物が破損、変形するという問題があったが、本手法では、樹脂の内部で造形を行うのでこうした問題は解消される。
5)大量生産への適用
超高速造形を利用することによって、短時間に、連続的に多数個の部品あるいは可動機構の製造が可能である。
【0034】
二光子光造形用光硬化性樹脂とは、光を照射することにより二光子重合反応を起こし、液体から固体へと変化するという特性を持った樹脂である。主成分はオリゴマーと反応性希釈剤からなる樹脂成分と光重合開始剤(必要に応じ光増感材料を含む)である。オリゴマーは重合度が2〜20程度の重合体であり、末端に多数の反応基を持つ。さらに、粘度、硬化性等を調整するため、反応性希釈剤が加えられている。光を照射すると、重合開始剤または光増感材料がこれを二光子吸収し、重合開始剤から直接または光増感材料を介して反応種が発生し、オリゴマー、反応性希釈剤の反応基に反応し、重合を開始させる。その後これらの間で連鎖的重合反応を起こし三次元架橋が形成され、短時間のうちに三次元網目構造を持つ固体樹脂へと変化する。
【0035】
光硬化性樹脂は光硬化インキ、光接着剤、積層式立体造形などの分野で使用されており、様々な特性を持つ樹脂が開発されている。特に、積層式立体造形においては
(1)反応性が良好であること、
(2)硬化時の堆積収縮が小さいこと、
(3)硬化後の機械特性が優れていること、等が重要である。
これらの特性は本手法においても同様に重要であり、そのため、積層式立体造形用に開発された樹脂で二光子吸収特性を有するものは本手法の二光子光造形用光硬化性樹脂としても使用できる。その具体的な例としては、アクリレート系及びエポキシ系の光硬化性樹脂が良く用いられ、特にウレタンアクリレート系の光硬化性樹脂が好ましい。
【0036】
本発明における光造形に関する公知文献として特開2005−134873号公報が挙げられる。これによると感光性高分子膜の表面に、パルスレーザー光を、マスクを介さずに干渉露光させている。前記パルスレーザー光としては、前記感光性高分子膜に感光性機能を発揮させる波長領域のパルスレーザー光であることが重要である。従って、パルスレーザー光としては、感光性高分子の種類、または、感光性高分子における感光性機能を発揮する基又は部位の種類などに応じて、その波長領域を適宜選択することができる。特に、光源から発光されるパルスレーザー光の波長が、感光性高分子膜に感光性機能を発揮させる波長領域でなくても、パルスレーザー光の照射に際して、多光子吸収過程を利用することにより、感光性高分子膜に感光性機能を発揮させることが可能となる。具体的には、光源から発光されるパルスレーザー光を集光して、集光されたパルスレーザー光を照射すると、多光子の吸収(例えば、二光子の吸収、三光子の吸収、四光子の吸収、五光子の吸収など)が生じ、これにより、光源から発光されるパルスレーザー光の波長が、感光性高分子膜に感光性機能を発揮させる波長領域でなくても、感光性高分子膜には、実質的に、感光性高分子膜に感光性機能を発揮させる波長領域のパルスレーザー光が照射されたことになる。このように、干渉露光するパルスレーザー光は、実質的に、感光性高分子膜に感光性機能を発揮させる波長領域となるパルスレーザー光であればよく、照射条件などにより、その波長を適宜選択することができる。たとえば、本発明の高効率二光子吸収材料を光増感材料とし、紫外線硬化樹脂等に分散し、感光物固体としこの感光物固体の二光子吸収能を利用して焦点スポットのみが硬化する特性を利用した超精密三次元造形物を得ることが可能となる。
【0037】
本発明の二光子吸収材料は、二光子吸収重合開始剤または二光子吸収光増感材料として用いることが出来る。従来の二光子吸収材料(二光子吸収重合開始剤または二光子吸収光増感材料)に比較し、二光子吸収感度が高いため、高速造形が可能で、励起光源としても小型で安価なレーザー光源が使用できるため、大量生産可能な実用用途への展開が可能となる。
【0038】
<二光子吸収材料を用いた二光子蛍光顕微鏡への応用>
二(多)光子励起レーザー走査顕微鏡とは、近赤外パルスレーザーを標本面上に集光し走査させて、そこでの二(多)光子吸収により励起されて発生する蛍光を検出することにより像を得る顕微鏡である。
【0039】
二光子励起レーザー走査顕微鏡の基本構成の概略図を図4に示す。
近赤外域波長のサブピコ秒の単色コヒーレント光パルスを発するレーザー光源(41)と、レーザー光源からの光束を所望の大きさに変える光束変換光学系(42)と、光束変換光学系で変換された光束を対物レンズの像面に集光し走査させる走査光学系(43)と、集光された上記変換光束を標本面(45)上に投影する対物レンズ系(44)と、光検出器(47)を備えている。
パルスレーザー光を、ダイクロイックミラー(46)を経て、光束変換光学系、対物レンズ系により集光し、標本面で焦点を結ばせることにより、標本内にある二光子吸収蛍光材料に二光子吸収により誘起された蛍光を生じさせる。標本面をレーザービームで走査し、各場所での蛍光強度を光検出器(47)などの光検出装置で検出して、得られた位置情報に基づいて、コンピューターでプロットすることにより、三次元蛍光像が得られる。走査機構としては、例えば、ガルバノミラーなどの可動ミラーを用いてレーザービームを走査しても良く、或いはステージ上に置かれた二光子吸収材料を含む標本を移動させても良い。
このような構成により、二光子吸収そのものの非線形効果を利用して、光軸方向の高分解能を得ることができる。加えて、共焦点ピンホール板を用いれば、さらなる高分解能(面内、光軸方向共)が得られる。
【0040】
二光子蛍光顕微鏡用蛍光色素は、標本を染色、又は標本に分散させることにより使用され、工業用途のみならず、生体系の細胞等の三次元画像マイクロイメージングにも用いることができ、高い二光子吸収断面積を持つ化合物が望まれている。
本発明における光子蛍光顕微鏡の公知文献として特開平9−230246号公報が挙げられる。たとえば走査型蛍光顕微鏡は、所望の大きさに拡大されたコリメート光を発するレーザー照射光学系と、複数の集光素子が形成された基板とを備え、該集光素子の集光位置が対物レンズ系の像位置に一致するように配置され、かつ、前記の集光素子が形成された基板と対物レンズ系との間に、長波長を透過し短波長を反射するビームスプリッタが配置され、標本面で多光子吸収による蛍光を発生させることを特徴とするものである。
このような構成により、多光子吸収そのものの非線形効果を利用して、光軸方向の高分解能を得ることができる。加えて、共焦点ピンホール板を用いれば、さらなる高分解能(面内、光軸方向共)が得られる。このような二光子光学素子は上述の光制御素子と全く同様に本発明の高い二光子吸収能を有した材料、薄膜、もしくは光硬化性樹脂等に分散させた固体物を光学素子として用いることが可能である。
【0041】
本発明の二光子吸収材料は二光子励起レーザー走査顕微鏡用の二光子吸収蛍光材料として用いることが出来る。従来の二光子吸収蛍光材料に比較し、大きな二光子吸収断面積を有しているので、低濃度で高い二光子吸収特性を発揮する。従って本発明によれば、高感度な二光子吸収材料が得られるだけでなく、材料に照射する光強度を強くする必要がなくなり、材料の劣化、破壊を抑制することができ、材料中の他成分の特性に対する悪影響も低下させることができる。
【0042】
本発明の二光子吸収材料は単独もしくは各種の樹脂との混合の薄膜、あるいはバルクで種々のデバイスへの応用が可能である。例えば、光ディスクでは上記薄膜が基板と接しており、その基板材料はポリエチレンテレフタレート、ポリカーボネート、ポリメチルメタクリレート、ポリエステル、ポリビニルアルコール、ガラス等である。また、積層する場合であれば、中間層(仕切層)に該薄膜表面が接している。中間層の具体例としてはポリプロピレン、ポリエチレン等のポリオレフィン、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリビニルアルコール、ポリエチレンテレフタレートまたはセロファンフィルムなどのプラスチック製のフィルムまたは種々の光硬化樹脂等が挙げられる。各種光学デバイス、光造形デバイスに応用するにしても、各種樹脂に混合されているか、光硬化樹脂に混合され用いる。
従って、本発明の二光子吸収材料の使用要件としては、該材料が各種樹脂、またはガラスに混合されているか、二光子吸収材料層界面が各種樹脂、またはガラスに接していることである。言い換えれば、本発明の二光子吸収材料はミクロレベル、又はマクロレベルで各種樹脂、又はガラスに接している構成となっている。
【0043】
以下に本発明のアリールアミン重合体の製造方法について説明する。
本発明のアリールアミン重合体の製造方法は、例えば、アリールジハロゲン化物とアリールジホウ素化合物を用いたSuzuki coupling、アリールジハロゲンとアリールジスズ化合物を用いたStille Couplingなどのクロスカップリング反応などが好ましい。
上記Suzuki couplingは、Synthetic Communications 11(7), 513-519 (1981)、Chem. Rev. 95, 2457-2483 (1995)、WO99/20675 (特許文献1及び実施例(ポリマー合成)の製法の参考にもなる)に記載されており、この合成方法に準じて合成することができる。
また、Suzuki couplingで用いる「アリールハロゲン化物」、「アリールホウ素化合物」の具体例を下記式に示す。
【0044】
【化7】

【0045】
【化8】

【0046】
アリールジハロゲン化物のハロゲン原子としては、反応性の観点からヨウ素化物または臭素化物が好ましい。このようなジハロゲン化物は、Macromolecules, 1994, 27, 7478.に従って合成することができる。
アリールホウ素化合物としては、アリールジボロン酸またはアリールジボロン酸エステルが用いられるが、アリールジボロン酸エステルは、アリールジボロン酸のように三無水物(ボロキシン)を生成しない、また、結晶性が高く、精製が容易であることからより好ましい。アリールジボロン酸エステルの合成方法としては、(i)アリールジボロン酸とアルキルジオールを無水有機溶媒中にて加熱反応させる(Polymer 38(5), 1221-1226 (1997)、Chem. Mater. 13, 1540-1544 (2001)に記載の合成方法)、(ii)アリールジハロゲン化物のハロゲン部位をメタル化した後に、アルコキシボロンエステルを加える反応(Macromolecules 30, 7686-7691 (1997)、Macromolecules 32, 3306-3313 (1999)、Macromolecules 37, 4087-4098 (2004)に記載の合成方法)、(iii)アリールハロゲンのグリニャール試薬を調製した後に、アルコキシボロンエステルを加える反応、さらには、(iv)アリールハロゲン化物とビス(ピナコラト)ジボロンやビス(ネオペンチル グリコラト)ジボロンをパラジウム触媒下にて加熱反応(J. Org. Chem. 60(23), 7508-7510 (1995)に記載の合成方法)することによって得られる。
パラジウム触媒としてはPd(PPh)、PdCl(PPh)、Pd(OAc)、PdClまたは、パラジウムカーボンに配位子として別途トリフェニルホスフィンを加える、など種々の触媒をもちいることができるが、最も汎用的にはPd(PPh)が用いられる。
【0047】
本反応には塩基が必ず必要であるが、NaCO、NaHCO、KCOなどの比較的弱い塩基が良好な結果を与える。立体障害等の影響を受ける場合には、Ba(OH)やKPOなどの強塩基が有効である。その他苛性ソーダ、苛性カリ、金属アルコシド等、例えばカリウムt−ブトキシド、ナトリウムt−ブトキシド、リチウムt−ブトキシド、カリウム2−メチル−2−ブトキシド、ナトリウム2−メチル−2−ブトキシド、ナトリウムメトキシド、ナトリウムエトキシド、カリウムエトキシド、カリウムメトキシドなども用いることができる。
【0048】
また、反応をよりスムーズに進行させるために相間移動触媒を用いてもよく、好ましくは、テトラアルキルハロゲン化アンモニウム、テトラアルキル硫酸水素アンモニウム、またはテトラアルキル水酸化アンモニウムであり、好ましい例としては、テトラ−n−ブチルハロゲン化アンモニウム、ベンジルトリエチルハロゲン化アンモニウム、または、トリカプリルイルメチル塩化アンモニウムである。
反応溶媒としては、メタノール、エタノール、イソプロパノール、ブタノール、2−メトキシエタノール、1,2−ジメトキシエタン、ビス(2−メトキシエチル)エーテル等のアルコールおよびエーテル系、ジオキサン、テトラヒドロフラン等の環状エーテル系の他、ベンゼン、トルエン、キシレン、ジメチルスルホキシド、N,N−ジメチルホルムアミド、N−メチルピロリドン、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン等を挙げることができる。
【0049】
上記重合反応の反応温度は、用いるモノマーの反応性、また、反応溶媒により適宜設定されるが、溶媒の沸点以下に抑えることが好ましい。
上記重合反応における反応時間は、用いるモノマーの反応性、または、望まれる重合体の分子量などにおいて適宜設定することができ、2〜50時間が好適であり、さらには、5〜24時間がより好ましい。
また、以上の重合操作において分子量を調節するために分子量調節剤、または末端修飾基として重合体の末端を封止するための封止剤を反応系に添加することも可能であり、反応開始時に添加しておくことも可能である。従って、本発明における重合体の末端には停止剤に基づく基が結合してもよい。
分子量調節剤、末端封止剤としては、フェニルボロン酸、ブロモベンゼン、ヨウ化ベンゼン等、反応活性基を1個有する化合物が挙げられる。
【0050】
本発明の重合体の好ましい分子量はポリスチレン換算数平均分子量で1000〜1000000であり、より好ましくは2000〜500000である。分子量が小さすぎる場合にはクラックの発生等、膜質が悪化し実用性に乏しくなる。また分子量が大きすぎる場合には、一般の有機溶媒への溶解性が悪くなり、溶液の粘度が高くなって塗工が困難になり、やはり実用性上問題になる。
また、機械的特性を改良するために重合時に分岐化剤を少量加えることもできる。使用される分岐化剤は、重合反応活性基を3つ以上(同種でも異種でもよい)有する化合物である。これらの分岐化剤は単独で使用してもよく、また複数併用してもよい。
以上のようにして得られた本発明の重合体は、重合に使用した塩基、未反応モノマー、末端停止剤、又、重合中に発生した無機塩等の不純物を除去して使用される。これら精製操作は再沈澱、カラムクロマト法、吸着法、抽出、ソックスレー抽出、限外濾過、透析等をはじめとする従来公知の方法を使用できる。
【0051】
上記製造方法により得られた本発明の重合体は、スピンコート法、キャスト法、ディップ法、インクジェット法、ドクターブレード法、スクリーン印刷法、スプレー塗工等の公知の成膜方法により、クラックがなく、強度、靭性、耐久性等に優れた良好な薄膜を作製することが可能である。
【0052】
このようにして得られる一般式(I)〜(VI)で表される単量体、または重合体の具体例を以下に示す。
前記一般式(I)または一般式(IV)における置換又は無置換の芳香族炭化水素基Ar2としては単環基、多環基(縮合多環基、非縮合多環基)の何れでもよく、一例として以下のものを挙げることができる。例えばフェニル基、ナフチル基、ピレニル基、フルオレニル基、アズレニル基、アントリル基、トリフェニレニル基、クリセニル基、ビフェニル基、ターフェニル基などが挙げられる。前記一般式(I)における置換又は無置換の芳香族炭化水素基の二価基Ar、Ar、Arとしては、一例として上記の置換又は無置換の芳香族炭化水素基の二価基が挙げられる。
また、これら環状構造を有する基(Ar、Ar、ArおよびAr)は、以下のとおり、種々の置換基を有していてもよい。
【0053】
(1)ハロゲン原子、トリフルオロメチル基、シアノ基、ニトロ基。
(2)炭素数1〜25の直鎖または分岐鎖の、アルキル基、アルコキシ基。これらはさらにハロゲン原子、シアノ基、フェニル基、ヒドロキシル基、カルボキシル基、アルコキシ基、アルキルチオ基で置換されていてもよい。
(3)アリールオキシ基(アリール基としてフェニル基、ナフチル基を有するアリールオキシ基が挙げられる。これらは、ハロゲン原子を置換基として含有しても良く、炭素数1〜25の直鎖または分岐鎖の、アルキル基、アルコキシ基、又はアルキルチオ基を含有していても良い。具体的には、フェノキシ基、1−ナフチルオキシ基、2−ナフチルオキシ基、4−メチルフェノキシ基、4−メトキシフェノキシ基、4−クロロフェノキシ基、6−メチル−2−ナフチルオキシ基等が挙げられる。)。
(4)アルキルチオ基又はアリールチオ基(アルキルチオ基又はアリールチオ基としては、具体的にはメチルチオ基、エチルチオ基、フェニルチオ基、p −メチルフェニルチオ基等が挙げられる。)。
(5)アルキル置換アミノ基(具体的には、ジエチルアミノ基、N−メチル−N−フェニルアミノ基、N,N−ジフェニルアミノ基、N,N−ジ(p−トリル)アミノ基、ジベンジルアミノ基、ピペリジノ基、モルホリノ基、ユロリジル基等が挙げられる。)
(6)アシル基(アシル基としては、具体的にはアセチル基、プロピオニル基、ブチリル基、マロニル基、ベンゾイル基等が挙げられる。)。
【0054】
本発明のアリールアミン(重合体)(I)〜(VI)は芳香環上にハロゲン原子、置換もしくは無置換のアルキル基、または置換もしくは無置換のアルコキシ基を置換基として有していてもよく、溶媒への溶解性向上の観点からは、置換基もしくは無置換の、アルキル基、アルコキシ基またはアルキルチオ基を有することが好ましい。これら置換基の炭素数が増加すると溶解性が向上するため、所望の特性が得られる範囲で置換基を選択することが好ましい。その場合の好適な置換基の例としては炭素数が1〜25の、アルキル基、アルコキシ基及びアルキルチオ基が挙げられる。これら置換基は同一のものを複数導入してもよいし、異なるものを複数導入してもよい。また、これらのアルキル基、アルコキシ基及びアルキルチオ基はさらにハロゲン原子、シアノ基、アリール基、ヒドロキシル基、カルボキシル基または、炭素数1〜12の直鎖、分岐鎖もしくは環状のアルキル基、アルコキシ基またはアルキルチオ基で置換されたアリール基を含有していてもよい。
【0055】
アルキル基として具体的には、メチル基、エチル基、n−プロピル基、i−プロピル基、t−ブチル基、s−ブチル基、n−ブチル基、i−ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、3,7−ジメチルオクチル基、2−エチルヘキシル基、トリフルオロメチル基、2−シアノエチル基、ベンジル基、4−クロロベンジル基、4−メチルベンジル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基等を一例として挙げることができ、アルコキシ基、アルキルチオ基としては上記アルキル基の結合位に酸素原子または硫黄原子を挿入して、それぞれアルコキシ基またはアルキルチオ基としたものが一例として挙げられる。
【0056】
本発明の重合体は、アルキル基やアルコキシ基の存在により、溶媒への溶解性が向上する。これら重合体において溶媒への溶解性を向上させることは、湿式成膜過程の製造許容範囲が大きくなることから重要である。溶解性の向上により、例えば塗工溶媒の選択肢、溶液調製時の温度範囲、並びに、溶媒の乾燥時の温度範囲及び圧力範囲を拡大することができ、これらプロセッシビリティーの高さにより、結果的に高純度で均一性の高い高品質な薄膜が得られる。
【実施例】
【0057】
以下に実施例を挙げて本発明を更に具体的に説明するが、本発明はその要旨を越えない限り、これら実施例により何ら制限されるものではない。
【0058】
<実施例1>
【0059】
【化9】

【0060】
100ml三つ口フラスコに、上記ジボロンエステル体0.872g(1.5mmol)、ジブロモ体1.069g(1.5mmol)、相間移動触媒として、Aliquat336(アルドリッチ社製)12.1mg(0.03mmol)、フェニルボロン酸5.5mg(0.045mmol)、また、テトラキストリフェニルホスフィンパラジウム4.33mg(0.00375mmol)、トルエン11mlを加え、窒素ガス置換した後、2M-炭酸ナトリウム水溶液を3.1ml加え、17時間還流したのち、停止反応として、ブロモベンゼン118mg(0.75mmol)を加え8時間還流した。その後、反応溶液を室温に戻した後、有機層をメタノール/水の混合溶媒中に滴下し再沈殿させることによりポリマーを得た。次いで、得られたポリマーをジクロロメタン溶液とし、イオン交換水で十分に洗浄した後に、テトラヒドロフラン溶液としメタノール中に滴下し再沈殿することによりポリマーを精製した。収量1.20g、収率91%。
GPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー)により測定したポリスチレン換算の数平均分子量は48200、重量平均分子量は134600であった。
示差操作熱量測定から求めたガラス転移温度は、122.1℃であった。
元素分析値(計算値);C:83.04%(83.23%)、H:8.05%(7.90%)、N:1.53%(1.59%)、S:7.49%(7.28%)
【0061】
<実施例2>
【0062】
【化10】

【0063】
100ml三つ口フラスコに、上記ジボロンエステル体0.872g(1.5mmol)、ジブロモ体0.838g(1.5mmol)、相間移動触媒として、Aliquat336(アルドリッチ社製)12.1mg(0.03mmol)、フェニルボロン酸5.5mg(0.045mmol)、また、テトラキストリフェニルホスフィンパラジウム4.33mg(0.00375mmol)、トルエン11mlを加え、窒素ガス置換した後、2M−炭酸ナトリウム水溶液を3.1ml加え、20時間還流したのち、停止反応として、ブロモベンゼン118mg(0.75mmol)を加え6時間還流した。その後、反応溶液を室温に戻した後、有機層をメタノール/水の混合溶媒中に滴下し再沈殿させることによりポリマーを得た。次いで、得られたポリマーをジクロロメタン溶液とし、イオン交換水で十分に洗浄した後に、テトラヒドロフラン溶液としメタノール中に滴下し再沈殿することによりポリマーを精製した。収量1.07g、収率98%。
GPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー)により測定したポリスチレン換算の数平均分子量は5900、重量平均分子量は11800であった。
示差操作熱量測定から求めたガラス転移温度は、108.3℃であった。
元素分析値(計算値);C:77.46%(77.75%)、H:7.12%(7.08%)、N:1.79%(1.93%)、S:8.69%(8.83%)
【0064】
<実施例3>
【0065】
【化11】

【0066】
100ml三つ口フラスコに、上記ジボロンエステル体0.872g(1.5mmol)、ジブロモ体0.853g(1.5mmol)、相間移動触媒として、Aliquat336(アルドリッチ社製)12.1mg(0.03mmol)、フェニルボロン酸5.5mg(0.045mmol)、また、テトラキストリフェニルホスフィンパラジウム4.33mg(0.00375mmol)、トルエン11mlを加え、窒素ガス置換した後、2M−炭酸ナトリウム水溶液を3.1ml加え、30時間還流したのち、停止反応として、ブロモベンゼン118mg(0.75mmol)を加え6時間還流した。その後、反応溶液を室温に戻した後、有機層をメタノール/水の混合溶媒中に滴下し再沈殿させることによりポリマーを得た。次いで、得られたポリマーをジクロロメタン溶液とし、イオン交換水で十分に洗浄した後に、テトラヒドロフラン溶液としメタノール中に滴下し再沈殿することによりポリマーを精製した。収量1.10g、収率99%。
GPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー)により測定したポリスチレン換算の数平均分子量は8500、重量平均分子量は19400であった。
示差操作熱量測定から求めたガラス転移温度は、84.1℃であった。
元素分析値(計算値); C:81.30%(81.58%)、H:7.94%(7.80%)、N:1.84%(1.90%)、S:8.48%(8.71%)
【0067】
<実施例4>
【0068】
【化12】

【0069】
100ml三つ口フラスコに、上記ジボロンエステル体1.182g(2.03mmol)、ジブロモ体0.659g(2.03mmol)、相間移動触媒として、Aliquat336(アルドリッチ社製)16.4mg(0.03mmol)、フェニルボロン酸7.4mg(0.06mmol)、また、テトラキストリフェニルホスフィンパラジウム5.87mg(0.0051mmol)、トルエン14mlを加え、窒素ガス置換した後、2M-炭酸ナトリウム水溶液を4.1ml加え、14時間還流したのち、停止反応としてブロモベンゼン157mg(1.0mmol)を加え同様に6時間還流した。その後、反応溶液を室温に戻した後、有機層をメタノール/水の混合溶媒中に滴下し再沈殿させることによりポリマーを得た。この得られたポリマーはテトラヒドロフランやクロロホルムに不溶であった。収量1.00g、収率100%。
元素分析値(計算値); C:77.90%(78.17%)、H:5.87%(5.94%)、N:2.73%(2.85%)、S:13.02%(13.04%)
【0070】
<実施例5>
【0071】
【化13】

【0072】
<実施例6>
【0073】
【化14】

【0074】
<実施例7>
【0075】
【化15】

【0076】
<実施例8>
【0077】
【化16】

【0078】
<実施例9>
【0079】
【化17】

【0080】
実施例1〜4の前駆体例示化合物においては、ビスボロン酸エステル、またはビス臭素置換体を示したが、実施例5〜9においては各合成式で示すように、モノ置換体同士を反応させることで同様に単量体5〜9の構造化合物を得ることができる。
【0081】
<比較例1>
【0082】
【化18】

【0083】
比較例1に示す構造化合物において、濃度0.01(mol/l)のテトラヒドロフラン溶液を作成し、以下に示す二光子吸収断面積の評価方法により、その二光子吸収断面積を測定した。
【0084】
(二光子吸収断面積の評価方法)
測定システム概略図を図5に示す。
測定光源 フェムト秒チタンサファイアレーザー
波長 800nm
パルス幅 100fs
繰り返し 80MHz
光パワー 800mW
測定方法 Zスキャン法
光源波長 800nm
キュベット内径 10mm
測定光パワー 約 500mW
繰返し周波数 80MHz
集光レンズ f=75mm
集光径 40〜50μm
集光されている光路部分に試料溶液を充填した石英セルを置き、その位置を光路に沿って移動させることによりZ-scan測定を実施した。
【0085】
<計算式>
透過率を測定し、その結果から下記理論式(I)により非線形吸収係数を求めた。
【0086】
【数1】

(上記式中、Tは透過率(%)、I0は励起光密度[GW/cm]、L0は試料セル長[cm]、βは非線形吸収係数[cm/GW]を示す。)
【0087】
この非線形吸収係数から、下記式(II)により二光子吸収断面積δを求めた。
(δの単位は1GM=1×10−50cm・s・photon−1である。)
【0088】
【数2】

(上記式中、hはプランク定数[J・s]、νは入射レーザー光の振動数[s−1]、NAはアボガドロ数、Cは溶液濃度[mol/L]を示す。)
【0089】
(評価結果)
実施例1〜9及び比較例1の評価結果を表1に示す。
【0090】
【表1】

【0091】
実施例1〜9において、従来(比較例1)よりも二光子吸収能の高い材料を得ることができた。
また本発明の二光子吸収材料は、従来知られている二光子吸収能を発現する化合物の二光子吸収断面積と比較すると、1桁以上の特性改善効果があり、高出力レーザーを必要としない安価なレーザーで、三次元メモリ、光制限素子、光造形用材料、二光子蛍光顕微鏡用色素材料等の応用が期待できる材料であることが明確となった。
【図面の簡単な説明】
【0092】
【図1】(a)は三次元多層光メモリの記録/再生のシステム概略図であり、(b)は記録媒体の概略断面図である。
【図2】本発明の二光子吸収材料を、二光子励起し得る波長の制御光により二光子励起させることによって、一光子励起し得る波長の信号光を光スイッチングする光制御素子の一例を示した図である。
【図3】二光子光造形法の装置の概略図である。
【図4】二光子励起レーザー走査顕微鏡の基本構成の概略図である。
【図5】本発明で用いられる測定システム概略図である。
【符号の説明】
【0093】
30 光造形物
31 光硬化樹脂液に対して透明性を有する近赤外パルスレーザー光の光源
32 過光量を時間的にコントロールするシャッター
33 NDフィルター
34 ミラースキャナー
35 集光手段としてのレンズ
36 Zステージ
37 モニター
38 コンピューター
39 光硬化性樹脂液
41 レーザ光源
42 光束変換光学系
43 走査光学系
44 対物レンズ系
45 標本面
46 ダイクロイックミラー
47 光検出器

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(I)で表される二光子吸収材料。
【化1】


式中、Ar、Ar及びArは、置換または無置換の芳香族炭化水素基の二価基であって、
Arは、置換または無置換の芳香族炭化水素基であって、
及びRは、それぞれ独立に、水素原子、置換または無置換のアルキル基、置換または無置換のアルコキシ基、もしくは置換または無置換のアルキルチオ基から選択される基であって、
x及びyは、それぞれ独立に、0から2までの整数であって、
nは、0または1である。
【請求項2】
下記一般式(II)で表されることを特徴とする二光子吸収材料。
【化2】

式中、Arは、置換または無置換の芳香族炭化水素基の二価基であって、
Arは、置換または無置換の芳香族炭化水素基であって、
、R、R及びRは、それぞれ独立に、水素原子、置換または無置換のアルキル基、置換または無置換のアルコキシ基、もしくは置換または無置換のアルキルチオ基から選択される基であって、
x及びyは、それぞれ独立に、0から2までの整数であって、
z及びuは、それぞれ独立に、0から4までの整数であって、
nは、0または1である。
【請求項3】
下記一般式(III)で表されることを特徴とする二光子吸収材料。
【化3】

式中、Arは、置換または無置換の芳香族炭化水素基の二価基であって、
、R、R、R及びRは、それぞれ独立に、水素原子、置換または無置換のアルキル基、置換または無置換のアルコキシ基、もしくは置換または無置換のアルキルチオ基から選択される基であって、
x及びyは、それぞれ独立に、0から2までの整数であって、
z及びuは、それぞれ独立に、0から4までの整数であって、
vは、0から5までの整数であって、
nは、0または1である。
【請求項4】
一般式(IV)で表される繰り返し単位を有する二光子吸収材料。
【化4】

式中、Ar、Ar及びArは、置換または無置換の芳香族炭化水素基の二価基であって、
Arは、置換または無置換の芳香族炭化水素基であって、
及びRは、それぞれ独立に、水素原子、置換または無置換のアルキル基、置換または無置換のアルコキシ基、もしくは置換または無置換のアルキルチオ基から選択される基であって、
x及びyは、それぞれ独立に、0から2までの整数であって、
nは、0または1である。
【請求項5】
下記一般式(V)で表されることを特徴とする二光子吸収材料。
【化5】


式中、Arは、置換または無置換の芳香族炭化水素基の二価基であって、
Arは、置換または無置換の芳香族炭化水素基であって、
、R、R及びRは、それぞれ独立に、水素原子、置換または無置換のアルキル基、置換または無置換のアルコキシ基、もしくは置換または無置換のアルキルチオ基から選択される基であって、
x及びyは、それぞれ独立に、0から2までの整数であって、
z及びuは、それぞれ独立に、0から4までの整数であって、
nは、0または1である。
【請求項6】
下記一般式(VI)で表されることを特徴とする二光子吸収材料。
【化6】


式中、Arは、置換または無置換の芳香族炭化水素基の二価基であって、
、R、R、R及びRは、それぞれ独立に、水素原子、置換または無置換のアルキル基、置換または無置換のアルコキシ基、もしくは置換または無置換のアルキルチオ基から選択される基であって、
x及びyは、それぞれ独立に、0から2までの整数であって、
z及びuは、それぞれ独立に、0から4までの整数であって、
vは、0から5までの整数であって、
nは、0または1である。
【請求項7】
請求項1乃至6のいずれかに記載の二光子吸収材料を含む平面及び膜厚方向に記録が可能な三次元メモリ材料。
【請求項8】
請求項1乃至6のいずれかに記載の二光子吸収材料を含む光制限材料。
【請求項9】
請求項1乃至6のいずれかに記載の二光子吸収材料を含む光造形用光硬化樹脂の硬化材料。
【請求項10】
請求項1乃至6のいずれかに記載の二光子吸収材料を含む二光子蛍光顕微鏡用蛍光色素材料。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2007−246790(P2007−246790A)
【公開日】平成19年9月27日(2007.9.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−74156(P2006−74156)
【出願日】平成18年3月17日(2006.3.17)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】