説明

二次精錬スラッジの処理方法

【課題】製鋼二次精錬工程に付随する湿式除塵装置で処理され、コンデンサ下の貯留槽内に循環水とともに貯留されている製鋼スラッジの処理を、二次精錬操業を停止することなく、かつ、操業コストを極めて低く押えることができる方法を提供する。
【解決手段】二次精錬設備に付設された湿式除塵装置で処理され、コンデンサ下の貯留槽内に循環水とともに貯留されている二次精錬スラッジに対し、二次精錬設備を稼動させた状態で、該スラッジを前記貯留槽内から循環水とともに回収タンク内に吸引する段階と、回収タンク内に吸引した前記循環水及びスラッジをシックナーに供給して固形物と循環水とに分離する段階とを、順次施す二次精錬スラッジの処理方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、製鋼設備、特にVOD、RHなどにより鋼を二次精錬するに際して湿式除塵設備で発生し、コンデンサ下の貯留槽内に循環水とともに貯留されている二次精錬スラッジの処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
高クロム鋼、例えば、Cr含有量が6mass%以上の耐熱鋼やステンレス鋼を精錬する際には、Crを含有するダストが発生し、その一部は六価クロム(Cr(VI))の形態をとるので、これを無害化する必要がある。その手段として、ダストを、例えば特許文献1に記載されているように湿式集塵装置により水を含むスラリーとして回収した後、シックナー及びフィルタープレスにより処理し、固形物を鉄源としてリサイクルするとともに、回収された水は無害化された後に放流する方法が採られる。
【0003】
一般に、転炉などの一次精錬設備においては、発生するダストが多いため、上記処理は連続的なプロセスとして行われるが、精錬設備のうちでも、二次精錬設備と称される、例えば、VOD設備やRH設備などでは、操業1回当たりのダストの発生量が少ないため、図3に示すようにダストを循環水とともに一旦貯留槽に貯留した後、貯留槽が満杯になったとき、別に設けた処理槽に汲出して無害化するバッチ式の処理が行われる。
【0004】
この形式の処理設備は、VODなどの二次精錬設備1にガスクーラ2a、バグフィルタ2b、スティームエジェクタ2c等により構成されるガス処理設備2を経由して凝縮装置3に接続されている。凝縮装置3は、コンデンサ9a、エジェクタ9b、冷却塔15を備え、下部に循環水4及びスラッジ5を貯留する貯留槽6を有している。さらに、循環水4をコンデンサ9aに環流使用できるようにするためにポンプ7及び配管8を備えている。したがって、上記設備構成をとるときには、貯留槽6内の循環水4及びスラッジ5に対して無害化処理等の処理を行おうとすると、二次精錬処理作業を停止し、前記貯留槽内から堆積したスラリーを汲出し、これを別途準備した処理槽に移し替えた上で、Cr(VI)を無害化する薬剤処理を行う。かかる薬剤処理作業には相当の長期間、例えば数ヶ月を要し、処理費用も莫大である。また、上記循環水4及び二次精錬スラッジ5の移し替えのため、二次精錬操業を数日間停止しなければならず、製鋼工場の生産性を低くする要因にもなる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2003−141493号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、二次精錬工程において発生し、コンデンサ下の貯留槽内に循環水とともに貯留されている製鋼スラッジの処理を、二次精錬操業を停止することなく、かつ、操業コストを極めて低く押えて処理することができるようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、二次精錬設備の湿式除塵装置で処理され、貯留槽内に循環水とともに貯留されている二次精錬スラッジに対し、二次精錬設備を稼動させた状態で、前記スラッジを前記貯留槽内から循環水とともにタンクローリに搭載された回収タンク内に吸引する段階と、回収タンク内に吸引した前記循環水及びスラッジをシックナーに供給して固形物と循環水とに分離する段階とを、順次施すことを特徴とする二次精錬スラッジの処理方法である。
【0008】
前記回収タンクは、タンクローリに搭載されたものであることが好ましい。
【0009】
前記スラッジを前記貯留槽内から循環水とともに回収タンク内に吸引する段階で、前記循環水が湿式除塵装置のコンデンサ側へ環流可能となるように必要量の循環水を貯留槽内に残置して、二次精錬操業を稼働させた状態で行うことが好ましい。
【発明の効果】
【0010】
本発明により、鋼の二次精錬工程に際して、湿式除塵装置で処理され、貯留槽内に例えばCr(VI)を含有する循環水とともに貯留されている二次精錬スラッジの処理を、二次精錬操業を停止することなく、かつ、操業コストを極めて低く押えることができるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の実施工程を示す模式説明図である。
【図2】塩化第一鉄の添加量と処理後のCr(VI)濃度との関係図である。
【図3】本発明の適用される二次精錬設備の概念図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
図1は、本発明の実施工程を示す模式説明図である。図1に示すように、本発明の第I段階では、吸引装置としてタンクローリ10を利用してそのタンク部11内に貯留槽6内に貯留されている循環水4及び二次精錬スラッジ5を吸引する。そのタイミングは、二次精錬スラッジ5及び循環水4の貯留量が貯留槽6の貯留可能量の80〜90%程度に達したときとすればよく、また、吸引量もタンクローリ10の吸引可能量に合わせて、かつ、後述する撹拌操作を可能にするように行えばよい。なお、上記操作を行うに当たり、二次精錬操業が継続されているので、循環水4が湿式除塵装置3のコンデンサ9側へ環流可能とするように必要量の循環水を貯留槽6内に残置することが必要である。
【0013】
上記のようにして、循環水4とともに二次精錬スラッジ5が吸引されたタンクローリ10のタンク部11内に循環水4に溶解し、また、二次精錬スラッジ5に付着しているCr(VI)がある場合にはCr(VI)をCr(III)に還元するために還元剤として塩化第一鉄溶液を添加する第II工程を行ってもよい。この操作は、タンクローリ10のタンク部11の上部ハッチ14から還元剤12として塩化第一鉄の水溶液を必要量投入することにより行われる。
【0014】
還元剤の添加量は、理論的には、反応式
Cr6++3Fe2+→Cr3++3Fe3+
から計算される理論当量値に相当する量と算出される。しかしながら、循環水4のほか二次精錬スラッジ5にもCr(VI)が付着しており、また、前記理論当量だけでは、十分にCr(VI)をCr(III)に還元することは困難である。したがって、便宜上、循環水4に含有されるCr(VI)の含有量を検出し、その還元に必要な還元剤の当量値(A)を算出し、次いで、次工程を含む試験操業を行い、Cr(VI)を実質的に残留することのないようにするための還元剤添加量を前記当量値(A)の倍数値として算出し、その値を用いて還元剤の必要量を求めることにより決定する。
【0015】
上記のように処理した結果得られた処理水は、実質的にCr(VI)フリーとされた場合は、環境を害することなく放流することができる。また、Cr(VI)フリー処理をした場合は、得られた固形物もCr(VI)フリーであるから、その再利用(リサイクル)の際の乾燥や配合などの作業環境を作業員への健康被害の生じないものとすることができる。
【0016】
例を挙げて説明すると、次のようになる。
(1)循環水中のCr(VI)濃度:2.4mg/L(リットル)
(2)上記循環水中のCr(VI)を還元するために必要な還元剤(塩化第一鉄(FeCl))の当量値(A):0.5L(リットル)
但し、吸引量:10m,塩化第一鉄溶液濃度:31mass%,比重:1.34とする。
(3)試験操業の実施
塩化第一鉄の添加量を上記当量値(A)の1〜5倍にとり、次工程IIIの撹拌時間を10minにとって試験操業を行う。
(4)試験操業結果及び還元剤添加量の決定
試験結果を図2に示す。図2の結果に基づき、還元剤の添加量は当量値(A)の4倍、すなわち、2L(但し、吸引量1m当たり、スラッジを含む)と定められる。
【0017】
前記第II工程に続いて、第III段階として、タンク部11内に循環水5とともに吸引された二次精錬スラッジを還元剤と十分に撹拌するための撹拌操作を行ってもよい。この撹拌操作は、タンク部11内に撹拌用ガスを導入することにより行われる。具体的には、タンクローリ10に搭載されているタンク部11の吸引口13を開として外気を吸引することにより行うことができる。
【0018】
上記撹拌時間は、吸引された循環水及び二次精錬スラッジに含有されるCr(VI)の濃度、吸引量、撹拌ガスの吸引速度等により変動するが、前記還元に必要な還元剤を添加したとき、Cr(VI)を完全に消失させるに足りる時間として定めればよい。具体的には、循環水のCr(VI)濃度が0.1〜0.2mg/Lの場合、10min程度で十分であった。
【0019】
上記の工程を行うことにより、鋼の二次精錬を継続した状態を維持しながら、換言すれば、循環水を、図3に示すように、ポンプ7及び配管8により循環水4を湿式除塵装置3内で循環使用しながら、貯留槽6内の循環水4、二次精錬スラッジ5を一部ずつ吸引して処理することが可能になる。
【0020】
このようにして、循環水及び二次精錬スラッジはタンクローリ10のタンク部11から、例えば、シックナー(図示しない)に供給して固形物と循環水とに分離し、固形物はフィルタープレスにより脱水後、乾燥して鉄源として利用し、循環水は、必要に応じて、貯留槽6に戻して再利用すればよい。
【符号の説明】
【0021】
1:二次精錬設備
2:ガス処理設備
3:湿式除塵装置
4:循環水
5:スラッジ
6:貯留槽
7:ポンプ
8:配管
9a:コンデンサ
9b:エジェクタ
10:タンクローリ
11:タンク部
12:還元剤
13:吸引口
14:ハッチ
15:冷却塔

【特許請求の範囲】
【請求項1】
二次精錬設備の湿式除塵装置で処理され、貯留槽内に循環水とともに貯留されている二次精錬スラッジに対し、
二次精錬設備を稼動させた状態で、前記スラッジを前記貯留槽内から循環水とともに回収タンク内に吸引する段階と、回収タンク内に吸引した前記循環水及びスラッジをシックナーに供給して固形物と循環水とに分離する段階とを、順次施すことを特徴とする二次精錬スラッジの処理方法。
【請求項2】
前記回収タンクは、タンクローリに搭載されたものであることを特徴とする請求項1に記載の二次精錬スラッジの処理方法。
【請求項3】
前記スラッジを前記貯留槽内から循環水とともに回収タンク内に吸引する段階で、前記循環水が湿式除塵装置のコンデンサ側へ環流可能となるように必要量の循環水を貯留槽内に残置して、二次精錬操業を稼働させた状態で行う請求項1又は2に記載の二次精錬スラッジの処理方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2013−107078(P2013−107078A)
【公開日】平成25年6月6日(2013.6.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2013−6665(P2013−6665)
【出願日】平成25年1月17日(2013.1.17)
【分割の表示】特願2008−331089(P2008−331089)の分割
【原出願日】平成20年12月25日(2008.12.25)
【出願人】(000001258)JFEスチール株式会社 (8,589)
【Fターム(参考)】