説明

二次電池の冷却装置

【課題】二次電池の温度が急上昇しても適温に冷却できる二次電池の冷却装置を提供する。
【解決手段】二次電池の表面に設けられ、冷媒が循環して前記二次電池を冷却する冷却ジャケット21と、前記二次電池の温度を直接又は間接的に検出する温度検出手段22と、前記二次電池の温度が所定温度以上のときに、前記冷媒の循環速度を、ゼロを含む速度に低下させる制御手段26と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、二次電池の冷却装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
リチウムイオンなどの二次電池は過充放電により高温になることがあり、またこれにより隣接する二次電池も高温になることがあるため、複数のリチウムイオン二次電池を積層した電池モジュールは、適温に冷却することが必要とされる。このため、正極、負極及びセパレータの積層体からなる電池素子と、電池素子と電解質を封入するラミネート外装体とを備え、ラミネート外装体の内層と外層との間に冷却水を循環させるリチウムイオン二次電池が提案されている(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007−66647号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記従来技術では、二次電池の温度が急激に上昇すると、冷媒が循環しているために却って冷媒の気化量が電池の温度上昇に追従できず、二次電池を適温に冷却できないという問題がある。
【0005】
本発明は、二次電池の温度が急上昇しても適温に冷却できる二次電池の冷却装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、二次電池の温度が高温になったら冷媒の循環速度を低下させることによって、上記課題を解決する。
【発明の効果】
【0007】
本発明のように冷媒の循環速度を低下させると、高温となった二次電池に接する単位時間当たりの冷媒量が減少し、これにより二次電池から冷媒に対して伝達する単位冷媒量当たりの熱量が増加する。その結果、冷媒の気化量が増加して気化潜熱が増加するので、二次電池の冷却効率が高まり、二次電池の温度が急上昇しても適温に冷却することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】本発明の一実施の形態を適用する薄型電池の一例を示す平面図である。
【図2】図1のII-II線に沿う断面図である。
【図3】本発明の一実施の形態に係る冷却装置を示すブロック図である。
【図4】図3の冷却装置を適用した電池モジュールを示す斜視図である。
【図5】図3に示す冷却ジャケットの他の例を示す正面図である。
【図6】図4の電池モジュールケースを示す模式図である。
【図7】図6の電池モジュールを複数組み合わせた組電池の電池パックを示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明に係る冷却装置の実施形態を図面に基づいて説明する。図1及び図2は、本発明に係る冷却装置が適用される二次電池の一例を示す平面図及び断面図であり、本例の薄型電池1は、リチウム系、平板状、積層タイプの薄型二次電池である。図1及び図2に示すように、薄型電池1は、2枚の正極板11と、4枚のセパレータ12と、3枚の負極板13と、正極端子14と、負極端子15と、上部外装部材16と、下部外装部材17と、特に図示しない電解質とから構成されている。なお、以下に説明する薄型電池1の構成は一般的なものであり、本発明の冷却装置がこれに限定的に適用される趣旨ではない。本発明の冷却装置はこれ以外の二次電池にも適用することができる。
【0010】
正極板11、セパレータ12、負極板13及び電解質が発電要素18を構成し、また、正極板11、負極板13が電極板を構成し、上部外装部材16及び下部外装部材17が一対の外装部材を構成する。
【0011】
発電要素18を構成する正極板11は、正極端子14まで伸びている正極側集電体11aと、正極側集電体11aの一部の両主面にそれぞれ形成された正極層11b,11cとを有する。なお、正極板11の正極層11b,11cは、正極側集電体11aの全体の両主面に亘って形成されているのではなく、図2に示すように、正極板11、セパレータ12及び負極板13を積層して発電要素18を構成する際に、正極板11においてセパレータ12に実質的に重なる部分のみに正極層11b,11cが形成されている。また、本例では正極板11と正極側集電体11aとが一枚の導電体で形成されているが、正極板11と正極側集電体11aとを別体で構成し、これらを接合してもよい。
【0012】
正極板11の正極側集電体11aは、たとえばアルミニウム箔、アルミニウム合金箔、銅箔、又は、ニッケル箔等の電気化学的に安定した金属箔から構成されている。また、正極板11の正極層11b,11cは、たとえば、ニッケル酸リチウム(LiNiO)、マンガン酸リチウム(LiMnO)、又は、コバルト酸リチウム(LiCoO)等のリチウム複合酸化物や、カルコゲン(S、Se、Te)化物等の正極活物質と、カーボンブラック等の導電剤と、ポリ四フッ化エチレンの水性ディスパージョン等の接着剤と、溶剤とを混合したものを、正極側集電体11aの一部の両主面に塗布し、乾燥及び圧延することにより形成されている。
【0013】
発電要素18を構成する負極板13は、負極端子15まで伸びている負極側集電体13aと、当該負極側集電体13aの一部の両主面にそれぞれ形成された負極層13b,13cとを有する。なお、負極板13の負極層13b,13cも、負極側集電体13aの全体の両主面に亘って形成されているのではなく、図2に示すように、正極板11、セパレータ12及び負極板13を積層して発電要素18を構成する際に、負極板13においてセパレータ12に実質的に重なる部分のみに負極層13b,13cが形成されている。また、本例では負極板13と負極側集電体13aとが一枚の導電体で形成されているが、負極板13と負極側集電体13aとを別体で構成し、これらを接合してもよい。
【0014】
負極板13の負極側集電体13aは、たとえばニッケル箔、銅箔、ステンレス箔、又は、鉄箔等の電気化学的に安定した金属箔から構成されている。また、負極板13の負極層13b,13cは、たとえば非晶質炭素、難黒鉛化炭素、易黒鉛化炭素、又は、黒鉛等のような上記の正極活物質のリチウムイオンを吸蔵及び放出する負極活物質に、有機物焼成体の前駆体材料としてのスチレンブタジエンゴム樹脂粉末の水性ディスパージョンを混合し、乾燥させた後に粉砕することで、炭素粒子表面に炭化したスチレンブタジエンゴムを担持させたものを主材料とし、これにアクリル樹脂エマルジョン等の結着剤をさらに混合し、この混合物を負極側集電体13aの一部の両主面に塗布し、乾燥及び圧延させることにより形成されている。
【0015】
特に、負極活物質として非晶質炭素や難黒鉛化炭素を用いると、充放電時における電位の平坦特性に乏しく放電量に伴って出力電圧も低下するので、電気自動車の電源として用いると急激な出力低下がないので有利である。
【0016】
発電要素18のセパレータ12は、上述した正極板11と負極板13との短絡を防止するものであり、電解質を保持する機能を備えてもよい。このセパレータ12は、たとえばポリエチレン(PE)やポリプロピレン(PP)等のポリオレフィン等から構成される微多孔性膜であり、過電流が流れると、その発熱によって層の空孔が閉塞され電流を遮断する機能をも有する。
【0017】
なお、本例に係るセパレータ12は、ポリオレフィン等の単層膜にのみ限られず、ポリプロピレン膜をポリエチレン膜でサンドイッチした三層構造や、ポリオレフィン微多孔膜と有機不織布等を積層したものも用いることができる。このようにセパレータ12を複層化することで、過電流の防止機能、電解質保持機能及びセパレータの形状維持(剛性向上)機能等の諸機能を付与することができる。
【0018】
以上の発電要素18は、セパレータ12を介して正極板11と負極板13とが交互に積層されてなる。そして、2枚の正極板11は、正極側集電体11aを介して、金属箔製の正極端子14にそれぞれ接続される一方で、3枚の負極板13は、負極側集電体13aを介して、同様に金属箔製の負極端子15にそれぞれ接続されている。
【0019】
なお、発電要素18の正極板11、セパレータ12、及び負極板13は、上記の枚数に何ら限定されず、たとえば1枚の正極板11、2枚のセパレータ12、及び2枚の負極板13でも発電要素18を構成することができ、必要に応じて正極板11、セパレータ12及び負極板13の枚数を選択して構成することができる。
【0020】
正極端子14も負極端子15も電気化学的に安定した金属材料であれば特に限定されないが、正極端子14としては、上述の正極側集電体11aと同様に、たとえば厚さ0.02mm程度のアルミニウム箔、アルミニウム合金箔、銅箔、又はニッケル箔等を挙げることができる。また、負極端子15としては、上述の負極側集電体13aと同様に、たとえば厚さ0.02mm程度のニッケル箔、銅箔、ステンレス箔、又は、鉄箔等を挙げることができる。
【0021】
既述したが、本例では、電極板11,13の集電体11a,13aを構成する金属箔自体を電極端子14,15まで延長することにより、換言すれば、1枚の金属箔11a,13aの一部に電極層(正極層11b,11c又は負極層13b,13c)を形成し、残りの端部を電極端子との接結部材とし、電極板11,13を電極端子14、15に接続する構成としたが、正極層及び負極層間に位置する集電体11a,13aを構成する金属箔と、接結部材を構成する金属箔とは別の材料や部品により接続してもよい。以下の本実施形態では、上記正極層間及び負極層間に位置する集電体と接結部材は1枚の金属箔で構成されているものとして説明する。
【0022】
上述した発電要素18は、上部外装部材16及び下部外装部材17に収容されて封止されている。特に図示はしないが、本例の上部外装部材16及び下部外装部材17は何れも、薄型電池1の内側から外側に向かって、たとえばポリエチレン、変性ポリエチレン、ポリプロピレン、変性ポリプロピレン、又は、アイオノマー等の耐電解液性及び熱融着性に優れた樹脂フィルムから構成されている内側層と、たとえばアルミニウム等の金属箔から構成されている中間層と、たとえばポリアミド系樹脂又はポリエステル系樹脂等の電気絶縁性に優れた樹脂フィルムで構成されている外側層と、の三層構造とされている。
【0023】
したがって、上部外装部材16及び下部外装部材17は何れも、たとえばアルミニウム箔等金属箔の一方の面(薄型電池1の内側面)をポリエチレン、変性ポリエチレン、ポリプロピレン、変性ポリプロピレン、又はアイオノマー等の樹脂でラミネートし、他方の面(薄型電池1の外側面)をポリアミド系樹脂又はポリエステル系樹脂でラミネートした、樹脂−金属薄膜ラミネート材等の可撓性を有する材料で形成されている。
【0024】
このように、外装部材16,17が樹脂層に加えて金属層を具備することにより、外装部材自体の強度向上を図ることが可能となる。また、外装部材16,17の内側層を、たとえばポリエチレン、変性ポリエチレン、ポリプロピレン、変性ポリプロピレン、又はアイオノマー等の樹脂で構成することにより、金属製の電極端子14,15との良好な融着性を確保することが可能となる。
【0025】
なお、図1及び図2に示すように、封止された外装部材16,17の一方の端部から正極端子14が導出され、当該他方の端部から負極端子15が導出されているが、電極端子14,15の厚さ分だけ上部外装部材16と下部外装部材17との融着部に隙間が生じるので、薄型電池1内部の封止性を維持するために、電極端子14,15と外装部材16,17とが接触する部分に、たとえばポリエチレンやポリプロピレン等から構成されたシールフィルムを介在させてもよい。このシールフィルムは、正極端子14及び負極端子15の何れにおいても、外装部材16、17を構成する樹脂と同系統の樹脂で構成することが熱融着性の観点から好ましい。
【0026】
これらの外装部材16,17によって、上述した発電要素18、正極端子14の一部及び負極端子15の一部を包み込み、当該外装部材16,17により形成される内部空間に、有機液体溶媒に過塩素酸リチウム、ホウフッ化リチウムや六フッ化リン酸リチウム等のリチウム塩を溶質とした液体電解質を注入しながら、外装部材16,17により形成される空間を吸引して真空状態とした後に、外装部材16,17の外周縁を熱プレスにより熱融着して封止する。
【0027】
電解質を構成する有機液体溶媒として、プロピレンカーボネート(PC)、エチレンカーボネート(EC)、ジメチルカーボネート(DMC)やメチルエチルカーボネート等のエステル系溶媒を挙げることができるが、本例の有機液体溶媒はこれに限定されることなく、エステル系溶媒に、γ−ブチラクトン(γ−BL)、ジエトシキエタン(DEE)等のエーテル系溶媒その他を混合、調合した有機液体溶媒を用いることもできる。
【0028】
以上が本例の冷却装置に適用される薄型電池1の基本的構造であるが、以下に本例の冷却装置について説明する。図3は本例の冷却装置2を示すブロック図であり、本例の冷却装置2は、冷却ジャケット21と、温度センサ22と、ポンプ23と、熱交換器24と、循環配管25と、コントローラ26と、を備える。
【0029】
冷却ジャケット21は、図2に一点鎖線で示すように上述した薄型電池1の表裏面のそれぞれに設けられ、冷媒が循環して薄型電池1を冷却する。この場合に、薄型電池1の外装部材16,17の外側にもう一つの外装部材(図示を省略する)を設け、その間に冷却ジャケット21を挟むようにしてもよい。また図4は、図1および図2の薄型電池1をその主面が互いに重なるように複数積層した電池モジュール19Aを示す斜視図であり、電池モジュール19Aに冷却ジャケット21を適用する場合は、たとえば各薄型電池1の間に一つの冷却ジャケット21を挟むように設けることができる。冷却ジャケット21の面積は薄型電池1の面積と同等程度であることが好ましく、少なくとも発電要素18と同じ面積を有し、発電要素18を含む範囲に設けることがより好ましい。
【0030】
冷却ジャケット21は、アルミニウムなど熱伝導性に富んだ金属又は軽量化を図るべくプラスチック材などで構成され、内部に冷媒が流通するように扁平状の筐体211とされている。そして、一方の端辺には冷媒流入口212が形成され、対向する端辺には冷媒流出口213が形成されている。冷却ジャケット21の筐体211内には冷媒流入口212から冷媒流出口213へ流れる冷媒が偏在するのを防止するために仕切り板214を設けてもよい。
【0031】
さらに、仕切り板214により仕切られた筐体211内の流路に対応する筐体211の表面には複数の弁215が設けられている。この弁215は、筐体211内の冷媒流路の圧力が所定以上に達すると開放する圧力感知構造とされ、当該圧力が所定上に達すると筐体211内を流通する冷媒を系外へ放出することができる。
【0032】
圧力感知構造の弁215としては、筐体211内の圧力が降下した場合には復元して開放状態から閉塞状態に戻るものの他、筐体211の弁部分を脆弱構造に構成し、筐体211内の圧力が所定以上に昇圧した場合には脆弱な弁部分が破壊されて冷媒が放出される構造であってもよい。
【0033】
また、上述した圧力感知構造の弁215に代えて、弁215の部分に開口部とこれを閉塞する蓋体からなる熱感知構造のシール部を設け、筐体211内の冷媒が所定温度以上に達したら開口部を閉塞する蓋体が剥がれたり、あるいは溶解したりする構造を採用してもよい。
【0034】
温度センサ22は、薄型電池1の温度を直接検出するように薄型電池1に接触して設けるか、又は冷媒の温度を検出するように冷媒流路の適宜箇所に設けて薄型電池1の温度を間接的に検出する。すなわち、冷媒配管25などの冷媒流路に温度センサ22を設ける場合は、予め実験的又はシミュレーションによって冷媒温度、冷媒流量及び薄型電池1の温度の関係を取得しておき、温度センサ22で検出された冷媒温度とそのときの冷媒流量とから薄型電池1の温度を推定する。温度センサ22により検出された薄型電池1の温度信号はコントローラ26に出力される。
【0035】
循環配管25は、冷却ジャケット21とポンプ23と熱交換器24とを接続し、ポンプ23を作動することにより冷媒は冷却ジャケット21→熱交換器24→冷却ジャケット21の順に循環する。ポンプ23による冷媒流量はコントローラ26によって制御され、冷却ジャケット21を通過して加熱された冷媒は熱交換器24によって冷却される。なお、熱交換器24には冷媒を冷却するための他の冷媒が循環する。
【0036】
コントローラ26は、温度センサ22により検出された薄型電池1の温度が所定の閾温度か否かを判断して冷媒の循環速度を制御する信号をポンプ23に出力する。そして、薄型電池1の温度が所定の閾温度以上の場合は、冷媒の循環が抑制されるので、筐体211内に冷媒が滞留し、単位冷媒量当たりに伝達される薄型電池1からの熱量が増加するため、冷媒の気化量が増加して気化潜熱が増加する。その結果、薄型電池1の冷却効果が高くなり、薄型電池1が急激に昇温した場合でも適温に冷却することができる。
【0037】
本例の冷却装置2で用いられる冷媒としては、気化したときの気体が酸素含有率の低い不活性ガスであることが好ましく、なかでもフッ素系溶媒、特にパーフルオロケトンであることが好ましい。これらの冷媒は不燃性又は消火性を有するので、後述するように電池システムの安全性をより高める機能をも司る。
【0038】
なお、図3に示す冷却ジャケット21は、筐体211の一方の端辺に冷媒流入口212が形成され、対向する端辺に冷媒流出口213が形成された構造であるが、図5に示すように、筐体211の一の端辺に冷媒流入口212と冷媒流出口213とを形成し、筐体211内の冷媒流路を図示するようにU字状に形成してもよい。こうすることで、冷媒配管25を薄型電池1の一方に集約することができ、図3に示す冷却ジャケット21と図5に示す冷却ジャケット21とを使い分けることで、図4に示す電池モジュール19Aなどにおいて冷媒配管25の取り廻しレイアウトの自由度が向上する。図5において、図3の冷却ジャケット21と共通する部材に同一の符号を付す。
【0039】
次に動作を説明する。
リチウムイオン二次電池などにおいては適温に維持することにより劣化が抑制されるが、過充電又は過放電すると発熱するといった特性もある。このため、本例の冷却装置2を用いて薄型電池1を適温に維持する。すなわち、温度センサ22により検出された薄型電池1の温度が定常状態を示す所定範囲にある場合は、コントローラ26からポンプ23へ駆動信号を出力し、冷却ジャケット21を流通する冷媒の単位時間当たりの流量(循環速度)が所定の範囲になるように制御する。これにより、薄型電池1は適温に維持される。
【0040】
これに対して、温度センサ22により検出された薄型電池1の温度が所定温度以上に上昇した場合は、コントローラ26からポンプ23へ駆動信号を出力し、冷却ジャケット21を流通する冷媒の単位時間当たりの流量が上記定常状態より少ない流量になるように設定する。換言すれば、定常状態に比べて循環速度を低下させる。この場合の少ない流量にはゼロ、すなわちポンプ23を停止することも含まれる。
【0041】
冷媒の循環速度(単位時間当たりの流量)を低下させると、高温となった薄型電池1に接する単位時間当たりの冷媒量が減少し、これにより薄型電池1から冷媒に対して伝達する単位冷媒量当たりの熱量が増加する。その結果、冷媒の気化量が増加して気化潜熱が増加するので、薄型電池1の冷却効率が高まることになる。特に、薄型電池1の温度が急上昇した場合でもこれに追従することができ、適温にまで冷却することができる。
【0042】
また、こうしたポンプ23による冷媒の循環速度の制御に加えて、本例では冷却ジャケット21の筐体211に圧力感知構造の弁215を設けているので、冷却ジャケット21を流通する冷媒温度が上昇して高圧になると弁215が開弁し、筐体211内を流通する冷媒を系外へ放出する。また、弁215に代えて上述した温度感知構造のシール部を設けた場合でも、冷却ジャケット21を流通する冷媒温度が上昇するとシール部が剥がれたり溶融したりして、これによっても筐体211内を流通する冷媒を系外へ放出することになる。
【0043】
図6は、図4に示す電池モジュール19Aをモジュールケース19A1に格納した状態を示す図であり、左から2番目の薄型電池1の温度が異常に上昇して、上述した圧力感知構造の弁215が開弁し、又は温度感知構造のシール部が剥がれるか溶融するかした状態を示す。この場合には、左から2番目の薄型電池1に接する冷却装置2の冷媒がモジュールケース19A1内に放出される。これにより、不燃性、消火性を有する液体又は気体である冷媒を電池モジュール19A1内に充満させることができる。
【0044】
図7は、図6に示す電池モジュール19Aを組電池ケース19B1内に複数格納した組電池19Bを示す図であり、一番左の電池モジュール19Aのうち左から2番目の薄型電池1の温度が異常に上昇して、上述した圧力感知構造の弁215が開弁し、又は温度感知構造のシール部が剥がれるか溶融するかした状態を示す。この場合には、左から2番目の薄型電池1に接する冷却装置2の冷媒がモジュールケース19A1に充満した後、組電池ケース19B1内にも放出される。これにより、不燃性、消火性を有する液体又は気体である冷媒を組電池ケース19B1内にも充満させることができる。
【0045】
上記温度センサ22は本発明に係る温度検出手段に相当し、上記コントローラ26は本発明に係る制御手段に相当し、上記弁215及びシール部は本発明に係る放出手段に相当する。
【符号の説明】
【0046】
1…薄型電池
11…正極板
11a…正極側集電体
11b、101c…正極層
12…セパレータ
13…負極板
13a…負極側集電体
13b、13c…負極層
14…正極端子(電極端子)
15…負極端子(電極端子)
16…上部外装部材
17…下部外装部材
18…発電要素
19A…電池モジュール
19A1…モジュールケース
19B…組電池
19B1…組電池ケース
2…冷却装置
21…冷却ジャケット
211…筐体
212…冷媒流入口
213…冷媒流出口
214…仕切り板
215…弁(シール部)
22…温度センサ
23…ポンプ
24…熱交換器
25…循環配管
26…コントローラ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
二次電池の表面に設けられ、冷媒が循環して前記二次電池を冷却する冷却ジャケットと、
前記二次電池の温度を直接又は間接的に検出する温度検出手段と、
前記二次電池の温度が所定温度以上のときに、前記冷媒の循環速度を、ゼロを含む速度に低下させる制御手段と、を備える二次電池の冷却装置。
【請求項2】
前記冷媒は、気化したときの気体が酸素含有率の低い不活性ガスである請求項1に記載の二次電池の冷却装置。
【請求項3】
前記冷媒は、パーフルオロケトンを含むフッ素系溶媒である請求項2に記載の二次電池の冷却装置。
【請求項4】
前記二次電池を複数積層した電池モジュールの二次電池に設けられる冷却装置であって、
前記冷媒が気化した気体を前記電池モジュールのケース内に放出させる放出手段をさらに備える請求項1〜3のいずれか一項に記載の二次電池の冷却装置。
【請求項5】
前記放出手段は、
前記冷媒の冷媒流路に設けられ、前記冷媒流路内の圧力が所定値以上の場合に開弁する弁を含む請求項4に記載の二次電池の冷却装置。
【請求項6】
前記放出手段は、
前記冷媒の冷媒流路に設けられ、前記冷媒流路内の温度が所定値以上になった場合に剥がれるか溶融するシール部を含む請求項4に記載の二次電池の冷却装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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