説明

二段式駐輪装置

【課題】軽量化・小型化が容易で、動作音が小さく円滑な昇降動作が可能で、構造を簡素化でき、安全性が高い駐輪装置の提供。
【解決手段】上下方向に延びる支柱1と、支柱に沿って昇降可能な昇降体2と、昇降体に対して上方向の引張力を付与する牽引手段3と、昇降体を支柱の下方位置に固定する固定手段4と、昇降体に対して前端部が取り付けられた自転車載置台5と、自転車載置台をスリット内に収容可能とする収容手段6とを備え、支柱は、幅方向中央に上下方向に延びるスリット11を有し、昇降体及び牽引手段は支柱内に配設され、牽引手段はスリットを挟んで配置された左右一対の定荷重バネからなり、定荷重バネは、支柱内の上方位置に配設された巻き芯31と、上端部が巻き芯に固定され下端部が昇降体と接続された帯状板32とからなり、帯状板はスリットを挟んで互いに略平行に上下方向に延びる左右一対の帯状板からなる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自転車を上段収納部と下段収納部の上下二段で収納することができる二段式駐輪装置に関し、より詳しくは上段収納部が昇降可能に構成されている二段式駐輪装置に関する。
【背景技術】
【0002】
自転車を上段収納部と下段収納部の上下二段で収納することができる二段式駐輪装置は、狭いスペースで多数台の自転車を収納することができるため、集合住宅や駅の駐輪場等において広く利用されている。
【0003】
二段式駐輪装置は、上段収納部が高い位置にあり、そのままでは上段収納部に自転車を載せることができない。そのため、通常、自転車を収納する際には上段収納部を低位置まで下降させる一方、自転車を収納した後には上段収納部を高位置まで上昇させることができる昇降手段を備えている。
【0004】
特許文献1には、液体を入れたバランサー容器を錘として利用し、バランサー容器と昇降台(自転車載置台)とをワイヤーにより連結して、昇降台を昇降させるように構成された二段式駐輪装置が記載されている。
しかしながら、このような装置は、錘を利用することから、装置全体の重量が増加し、装置が大型化してしまうという問題があった。加えて、錘の昇降に伴って大きな音が発生するという問題もあった。
また、この装置は、ワイヤーや昇降台(自転車載置台)の台車などが外部に露出した構造となっており、またワイヤーが昇降台の後方に向けて長い距離に亘って延出しているため、故障が生じやすいという問題があった。即ち、駐輪装置は屋外に設置して使用されることが多いため、土砂や塵埃、落ち葉等の異物がワイヤーや台車に挟まったり、悪戯されたり等の外的要因により故障が生じる虞があった。
また、昇降台(自転車載置台)は中央部で1本のワイヤーにより吊り下げられているため、バランスをとることが難しく、昇降台の台車に大きな荷重が加わって走行を阻害したり破損したりする虞があるという問題もあった。
【0005】
一方、特許文献2に記載された二段式駐輪装置は、昇降手段として、上端にある自転車ラックに対して当該ラックの重量とバランスする牽引力を付与する第1の定荷重バネと、自転車重量とバランスする牽引力を付与する第2の定荷重バネを備えている。
しかしながら、特許文献2に記載された二段式駐輪装置は、2種類の定荷重バネを使用しており、これらの作動を切り換えるための機構が必要となるため、構造が複雑になるという問題がある。
定荷重バネを1つとすると構造が簡単になるが、そうすると自転車がラックに乗っているときと乗っていないときとのバランス制御が困難となる。
【0006】
また、定荷重バネを1つとした場合、次のような問題もある。
自転車の重さにはバラつきがあるが、確実にラック(自転車載置台)を上昇させるためには、バネの強さを重い自転車を載せた場合に合わせて設定する必要がある。そうすると、軽い自転車を載せた場合には、急速にラックが上昇してしまうこととなり、非常に危険である。
【0007】
更に、2つの定荷重バネを装置の前後方向に配置して自転車ラック(自転車載置台)の端部に固定しているため、2つの定荷重バネが互いに干渉して自転車ラックの円滑な昇降動作が妨げられる虞があった。一方、2つの定荷重バネ同士の干渉を防ぐために互いの間隔を長くすると、装置の奥行きが長くなり、広い設置スペースが必要となるという問題が生じる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開平10−25917号公報
【特許文献2】特開2005−105550号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、上記したような従来技術の問題点を解決すべくなされたものであって、自転車を上段収納部と下段収納部の上下二段で収納することができる二段式駐輪装置において、装置の軽量化・小型化が容易であり、動作音が小さく円滑な昇降動作を行うことができ、構造を簡素化することが可能であり、バネ力の微調整が容易であり、しかも安全性が高い二段式駐輪装置を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
請求項1に係る発明は、上段収納部と下段収納部を有する二段式駐輪装置であって、前記上段収納部は、上下方向に延びる支柱と、前記支柱に沿って昇降可能な昇降体と、前記昇降体に対して上方向の引張力を付与する牽引手段と、前記牽引手段により付与される引張力に抗して前記昇降体を前記支柱の下方位置に固定する固定手段と、前記昇降体に対して前端部が取り付けられた自転車載置台と、前記自転車載置台を前記スリット内に収容可能とする収容手段と、を備えており、前記支柱は、幅方向中央に上下方向に延びるスリットを有し、前記昇降体及び前記牽引手段は前記支柱内に配設されており、前記牽引手段は、前記スリットを挟んで配置された左右一対の定荷重バネからなり、前記定荷重バネは、前記支柱内の上方位置に配設された巻き芯と、上端部が前記巻き芯に固定され且つ下端部が前記昇降体と接続された帯状板とからなり、前記帯状板は、前記スリットを挟んで互いに略平行に上下方向に延びる左右一対の帯状板からなり、前記収容手段は、前記自転車載置台を、前記昇降体への取付部分を支点として上方向に回動させることにより前記スリット内に収容することを特徴とする二段式駐輪装置に関する。
【0011】
請求項2に係る発明は、前記支柱内の上方位置には、左右一対の巻き芯が配置されており、前記左右一対の巻き芯には、前記左右一対の帯状板の基端部が夫々固定されており、前記左右一対の帯状板は、前記左右一対の巻き芯の前記スリットから遠い側から出て下方に延びており、それらの下端部は、前記スリット側に向けて曲がっていることを特徴とする請求項1記載の二段式駐輪装置に関する。
【0012】
請求項3に係る発明は、前記左右一対の帯状板の下端部には、夫々接続具が取り付けられており、前記接続具は、正面視略くの字状に折れ曲がった金属板からなり、前記折れ曲がった部分より下方部分は、上下方向に配置されて前記帯状板の下端部近傍と固定されており、前記折れ曲がった部分より上方部分は、斜め外向きに配置されて前記昇降体と接続されていることを特徴とする請求項2記載の二段式駐輪装置に関する。
【発明の効果】
【0013】
請求項1に係る発明によれば、牽引手段が定荷重バネからなり、錘を利用しないため、装置を軽量化・小型化することができるとともに、錘の昇降に伴う大きな音の発生がなく、操作音を低減することができる。
また、定荷重バネが、支柱内の上方位置に配設された巻き芯と、上端部が巻き芯に固定され且つ下端部が昇降体と接続された帯状板とからなり、昇降体及び牽引手段(定荷重バネ)は支柱内に配設されているため、外的要因による故障が生じにくく且つ安全であり、長期間に亘って動作が安定し、メンテナンスの手間を大幅に省くことが可能となる。
また、帯状板が、スリットを挟んで互いに略平行に上下方向に延びる左右一対の帯状板からなるため、一対の定荷重バネの帯状板同士の間隔が広くなって互いに干渉することがなく、しかも左右のバネ力のバランスを調整することができるため、自転車載置台を円滑に昇降させることが可能である。加えて、支柱の奥行き(前後方向長さ)を小さく(薄く)することが可能となり、装置の設置スペースを小さくすることができる。
また、自転車載置台を昇降体への取付部分を支点として上方向に回動させることによりスリット内に収容する収容手段を備えていることから、自転車が載置されていない状態では載置台はスリットに収容されて上昇することがない。そのため、引用文献2記載の発明で使用されているような2種類の定荷重バネやそれらの切換機構が不要となり、構造を簡素化して装置を小型化することができる。
更に、2つの定荷重バネを使用することから、1つの定荷重バネを使用した場合に比べて定荷重バネの動作時の摩擦が格段に大きくなり、重い自転車に合わせたバネ力に設定しておいて軽い自転車を載せた場合でも、急速にラックが上昇してしまうことがなく非常に安全である。
【0014】
請求項2に係る発明によれば、支柱内の上部位置には左右一対の巻き芯が配置され、左右一対の巻き芯には左右一対の帯状板の基端部が夫々固定されており、左右一対の帯状板は左右一対の巻き芯のスリットから遠い側から出て下方に延びているため、帯状板同士が干渉することが確実に防がれるとともに、帯状板がスリットから露出しにくく、破損しにくくなる。
また、帯状板の下端部はスリット側に向けて曲がっていることから、昇降体と帯状板との接続部がスリットに近い位置に配置される。そのため、昇降体と帯状板との接続及び分離を、支柱を分解することなくスリット部分から行うことが可能となり、メンテナンス性において非常に優れている。
つまり、帯状板を、巻き芯から下方に延びている部分においてはスリットから遠い側に配置し、昇降体との接続部分においてのみスリットに近づけることにより、昇降体の円滑な昇降動作、動作時の安全性、メンテナンスの容易性という条件の全てを満足することが可能となる。
【0015】
請求項3に係る発明によれば、左右一対の帯状板が、正面視略くの字状に折れ曲がった金属板からなる接続具を介して昇降体と接続されることから、帯状板の下端部を接続具により略くの字状に保形することができる。加えて、折れ曲がった部分より下方部分は、上下方向に配置されて帯状板の下端部近傍と固定されており、折れ曲がった部分より上方部分は、斜め外向きに配置されて昇降体と接続されていることから、帯状体のスリットからの露出を最小限にしつつ(帯状体の上方部分をスリットから遠い位置に保ちつつ)、帯状板から昇降体に対して作用する力の向きを正確に上下方向(垂直方向)とすることができ、昇降体の昇降動作を円滑にすることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明に係る二段式駐輪装置の上段収納部の側面図である。
【図2】本発明に係る二段式駐輪装置の上段収納部の正面図である。
【図3】本発明に係る二段式駐輪装置の要部拡大図であって、(a)は図1の要部拡大図、(b)は図2の要部拡大図である。
【図4】昇降体の本体を示す図であって、(a)は正面図、(b)は側面図、(c)は底面図である。
【図5】ストッパ固定板を示す図であって、(a)は正面図、(b)は底面図である。
【図6】ストッパピンを示す図であって、(a)は平面図、(b)は側面図、(c)は正面図である。
【図7】可動ストッパを示す図であって、(a)は側面図、(b)は正面断面図である。
【図8】付勢手段を示す図であって、(a)は正面図、(b)は側面図、(c)は取付状態を示す図である。
【図9】固定手段の作用を説明する図である。
【図10】延出部材を示す図であって、(a)は側面図、(b)は正面図である。
【図11】収容手段の作用について説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明に係る二段式駐輪装置の好適な実施形態について、図面を参照しながら説明する。
本発明に係る二段式駐輪装置は、自転車を上段収納部と下段収納部の上下二段で収納することができるものであり、上段収納部が昇降可能に構成されている。
図1は本発明に係る二段式駐輪装置の上段収納部を示す側面図であり、図2は本発明に係る二段式駐輪装置の上段収納部を示す正面図である。尚、図1では支柱を上下方向全体に亘って切り欠いて内部を示しており、図2では支柱の高さ方向の略中間位置から下方の部分を切り欠いて内部を示している。図3(a)は図1の要部拡大図、(b)は図2の要部拡大図である。
以下、本明細書において、図1の左側を前方、右側を後方と称し、図2の右側を右方、左側を左方と称する。
【0018】
上段収納部は、上下方向に延びるように床面上に立設される支柱(1)と、支柱(1)に沿って昇降可能な昇降体(2)と、昇降体(2)に対して上方向の引張力を付与する牽引手段(3)と、牽引手段(3)により付与される引張力に抗して昇降体(2)を支柱(1)の下方位置に固定する固定手段(4)と、昇降体(2)に対して前端部が取り付けられた自転車載置台(5)と、自転車載置台(5)を支柱(1)に設けられたスリット(11)内に収容可能とする収容手段(6)を備えている。
【0019】
支柱(1)は、内部に空間を有する四角柱状であって、自転車載置台(5)が位置する側(後方側)の面の幅方向中央に上下方向に延びるスリット(11)を有している。図2では支柱(1)の一部を切り欠いて内部を示しているためスリット(11)の幅が高さ方向に変化しているように見えるが、スリット(11)の幅は支柱(1)の上端部から下端部にかけて同幅とされている。
支柱(1)の内部空間には、昇降体(2)及び牽引手段(3)が配設されている。
昇降体(2)は、自転車載置台(5)の取付部分がスリット(11)に面するように配置されている。これにより、自転車載置台(5)の前端部をスリット内(支柱内)に位置させた状態で昇降させることが可能となる。そのため、外的要因の影響を受けにくくすることができて故障が生じにくくなり、安定した昇降動作を長期間に亘って維持することができる。
【0020】
図4は昇降体(2)の本体(21)を示す図であって、(a)は正面図、(b)は側面図、(c)は底面図である。
本体(21)は、左右一対の側板(211)と、左右一対の側板を連結する前板(212)を備えている。
左右一対の側板(211)には、四隅(上下前後)に夫々車輪取付用の穴(211a)が設けられており、これらの穴(211a)に対して夫々車軸が挿通されて車輪(22)が取り付けられる(図3参照)。
これにより、支柱(1)の幅方向中央を挟んだ位置に配置された左右一対の車輪(22)からなる車輪対が、上下に間隔をあけて二対設けられ且つ前後に間隔をあけて二対設けられることとなる。
これら合計四対(八個)の車輪(22)が支柱(1)の内面に沿って転動することにより、昇降体(2)が支柱(1)に沿って昇降する。
このように、昇降体(2)が、上下前後左右に間隔をあけて配置された合計四対(八個)の車輪(22)を用いて支柱(1)の内面に沿って転動するように構成されていることにより、自転車載置台(5)及び自転車の重さによる昇降体(2)の傾きやぶれが確実に防止され、昇降体(2)の昇降動作が非常に安定する。
【0021】
昇降体(2)の本体(21)において、側板(211)の上方位置を左右方向に貫通する穴(211b)には後述する連結棒(61)の一端部が回動自在に取り付けられる。また、側板(211)の下方位置を左右方向に貫通する穴(211c)は自転車載置台(5)の昇降体(2)への取付部分となり(以下、取付部分(211c)という場合がある。)、後述するピン(64)が挿通される。
また、前板(212)を前後方向に貫通する穴(212a)は後述するストッパピン(42)が挿入される穴となる。
穴(212a)は前後方向に延びる円筒状に形成されている。この円筒状部は、ストッパピン(42)の動きを前後方向にガイドして、後述するストッパ固定板(41)の貫通穴(411)に対して確実に挿入できるようにする役割を果たしている。
前板(212)の略中央には矩形状の穴(212b)が設けられている。この穴(212b)は、後述する付勢手段(ねじりコイルバネ)(44)を通すための穴となる。
また、前板(212)の上方部分には、後述する流体圧シリンダ(62)の基端部を取り付けるための左右一対の取付板(212c)が後方に向けて突出している。
【0022】
牽引手段(3)は左右一対の定荷重バネからなる。以下、定荷重バネ(3)とも称す。
定荷重バネ(3)は、支柱(1)内の上方位置に配設された巻き芯(31)と、この巻き芯(31)に巻回されて下方に延出された(巻き出された)帯状板(32)とから構成されている。
帯状板(32)は、スリット(11)を挟んで上下方向に互いに平行に延びる左右一対の金属製等の帯状板からなり、各帯状板は上端部が巻き芯(31)に固定され且つ下端部が昇降体(2)と接続されている。
左右一対の定荷重バネ(3)のバネ力は、自転車を載せた状態の自転車載置台(5)を引き上げることが可能な大きさに設定されており、必要に応じて異なる強さのものに交換することができる。
【0023】
このように牽引手段(3)が定荷重バネからなり、錘を利用しないため、装置を軽量化・小型化することができるとともに、錘の昇降に伴う大きな音の発生がなく、操作音を低減することができる。
また、定荷重バネ(3)を構成する巻き芯(31)と帯状体(32)はいずれも支柱内に配設されており、昇降体(2)も支柱内に配設されているため、ゴミが入り込むなどの外的要因による影響を排除することができて故障が生じにくく且つ安全であり、長期間に亘って動作が安定し、メンテナンスの手間を大幅に省くことが可能となる。
また、帯状板(32)が、スリット(11)を挟んで上下方向に互いに平行に延びる左右一対の帯状板からなるため、左右の帯状板が離れた位置となって互いに干渉することがなく、しかも左右の定荷重バネ(3)のバネ力のバランスを調整することができるため、自転車載置台(5)を円滑に昇降させることが可能である。加えて、支柱(1)の奥行き(前後方向長さ)を小さく(薄く)することが可能となり、設置スペースを小さくすることができる。
【0024】
更に、2つ(左右一対)の定荷重バネ(3)を使用することから、1つの定荷重バネを使用する場合に比べて、定荷重バネの動作時の摩擦抵抗が格段に大きくなる。そのため、定荷重バネ(3)のバネ力を自転車載置台(5)に重い自転車を載せた場合に合わせて設定しておいて軽い自転車を載せた場合でも、急速にラックが上昇してしまうことがなく非常に安全である。つまり、自転車載置台(5)に載せる自転車の重量にばらつきがあっても、常にほぼ一定の速度で自転車載置台(5)を上昇させることが可能となる。
【0025】
左右一対の帯状板(32)は、左右一対の巻き芯(31)のスリット(11)から遠い側から出て下方に延びている。つまり、左右一対の帯状板(32)は、巻き芯(31)の内側(スリット側)からではなく、外側(スリットから離れた側)から巻き出されてそのまま下方へと延びている。
これにより、左右一対の帯状板(32)は、スリット(11)から離れて支柱(1)内に収まった状態(スリットから露出しない状態)で下方へと延びることとなる。そのため、帯状板(32)が昇降(巻き出し及び巻き取り)動作時に他の物体と接触する虞が無く、円滑な昇降が確保できるとともに非常に安全である。
【0026】
左右一対の帯状板(32)の下端部は、スリット側(内側)に向けて曲がっている(図2(b)参照)。
左右一対の帯状板(32)の下端部には、夫々接続具(33)が取り付けられている。接続具(33)は、正面視略くの字状に折れ曲がった金属板からなり、折れ曲がった部分(以下、折り曲げ部と称す)(34)より下方部分は上下方向(垂直方向)に配置され、折り曲げ部(34)より上方部分は斜め外向き(スリットから離れる方向の斜め上向き)に配置されている。つまり、右側の帯状板(32)に取り付けられた接続具(33)と、左側の帯状板(32)に取り付けられた接続具(33)とは、折り曲げ部(34)より上方部分が上に向かうにつれて互いに離れるように配置されている。
折り曲げ部(34)より上方部分は、ボルト等の固定手段を用いて帯状板(32)の下端部近傍と固定されている。一方、折り曲げ部(34)より下方部分は、ボルト等の固定手段を用いて昇降体(2)と接続されている。(より具体的には、昇降体(2)の穴(211b)に固定された棒状体(35)と固定されている。)これにより、帯状板(32)の下端部が、接続具(33)を介して昇降体(2)と接続されている。また、左右一対の接続具(33)の折り曲げ部(34)より上方部分が斜め外向きとなっていることにより、左右一対の帯状板(32)の下端部は、スリット側(内側)に向けて曲がっている。
【0027】
このように、帯状板(32)の下端部がスリット側(内側)に向けて曲がっていることから、昇降体(2)と帯状板(32)との接続部がスリット(11)に近い位置となる。そのため、支柱(1)を分解せずとも、昇降体(2)と帯状板(32)との接続及び分離をスリット部分から行うことが可能となり、メンテナンス性に非常に優れている。
つまり、帯状板(32)を、巻き芯(31)から下方に延びている部分においてはスリット(11)から遠い側に配置し、昇降体(2)との接続部分においてのみスリット(11)に近づけることにより、昇降体(2)の円滑な昇降動作、動作時の安全性、メンテナンスの容易性の全てを満足することが可能となる。
【0028】
固定手段(4)は、ストッパ固定板(41)と、ストッパピン(42)と、可動ストッパ(43)と、付勢手段(44)とから構成されている。
図5はストッパ固定板(41)を示す図であって、(a)は正面図、(b)は底面図である。
ストッパ固定板(41)は断面コの字状の金属板からなり、コの字の開放側が支柱(1)の前方内面に当接するように、支柱(1)内の下方位置に固定されている(図3(a)参照)。
ストッパ固定板(41)は左右対になった貫通穴(411)を有している。貫通穴(411)は上下方向に間隔をあけて三対(六個)設けられている。
これらの貫通穴(411)に対してストッパピン(42)が挿脱される。
【0029】
図6はストッパピン(42)を示す図であって、(a)は平面図、(b)は側面図、(c)は正面図である。
ストッパピン(42)は、前方側が後方側に比べて小径となる段付きピンであり、後方側の大径部分には上下方向に且つ上方に向かうにつれて前方に傾斜した貫通穴(421)が形成されている。
この貫通穴(421)には、可動ストッパ(43)の下端部(一端部)が挿入される。
【0030】
図7は可動ストッパ(43)を示す図であって、(a)は側面図、(b)は正面断面図である。
可動ストッパ(43)は、側面視において略くの字状に屈曲しており、該屈曲部が昇降体(2)に対して回動自在に取り付けられている。具体的には、可動ストッパ(43)の屈曲部には穴(431)が設けられており、この穴(431)には回動支点となるピン(46)が挿通され(図3参照)、ピン(46)の両端は昇降体(2)の本体(21)に回動可能に支持されている。
可動ストッパ(43)は左右一対(2つ)設けられており、これら左右一対の可動ストッパ(43)は上端部(他端部)に設けられた穴(432)に挿通された連結ピン(45)により連結されている(図3(b)参照)。
可動ストッパ(43)の上端部(他端部)を連結する連結ピン(45)は、通常の状態(自転車の前輪が当たっていない状態)では、スリット(11)の開口部近傍に位置している(図3(a)参照)。
可動ストッパ(43)の下端部(一端部)は、上述したようにストッパピン(42)の貫通穴(421)に挿入される。尚、可動ストッパ(43)及びストッパピン(42)は左右一対(2つ)設けられている(図3(b)参照)。
【0031】
図8は付勢手段(44)を示す図であって、(a)は正面図、(b)は側面図、(c)は取付状態を示す図である。
付勢手段(44)は、図示の如く、ねじりコイルバネからなる。
付勢手段(44)(ねじりコイルバネ)は、コイル部(441)に可動ストッパ(43)の回動支点となるピン(46)が挿通される。また、コイル部(441)の上方部(442)が可動ストッパ(43)の屈曲部上方に係止され、コイル部(441)の下方部(443)が本体(21)の前板(212)の後面に係止される(図8(c)参照)。
これにより、付勢手段(44)は、可動ストッパ(43)を屈曲部に挿通されたピン(46)を支点として一方向(図8(c)の時計回り方向)に回動するように付勢している。可動ストッパ(43)が付勢された方向(一方向)は、可動ストッパ(43)の下端部(一端部)に取り付けられたストッパピン(42)がストッパ固定板(41)の貫通穴(411)に挿入される方向となる。
【0032】
次に、図9を参照しながら固定手段(4)の作用を説明する。
図9(a)に示すように、自転車の前輪(F)が可動ストッパ(43)の上端部を連結する連結ピン(45)に当たっていない状態では、付勢手段(44)の付勢力により可動ストッパ(43)は上記一方向(図9(a)時計回り方向)に付勢され、これによりストッパピン(42)がストッパ固定板(41)の貫通穴(411)に挿入された状態が維持されている。そのため、昇降体(2)は、定荷重バネ(3)による上方向の引張力が加わっているが、上昇することなく下方位置に固定され、自転車載置台(5)も下方位置に留まる。
【0033】
図9(b)に示すように、自転車が前進して前輪(F)が可動ストッパ(43)の上端部を連結する連結ピン(45)を押すと、可動ストッパ(43)が付勢手段(44)の付勢力に抗して上記一方向と反対方向(図9(b)反時計回り方向)に回動し、これによりストッパピン(42)がストッパ固定板(41)の貫通穴(411)から抜ける。すると、昇降体(2)は定荷重バネ(3)による上方向の引張力によって上昇し、これに伴って自転車載置台(5)も上昇する。
【0034】
上記したように、自転車の前輪(F)が可動ストッパ(43)の上端部を連結する連結ピン(45)を押さない限りは、固定手段による昇降体(2)の固定が解除されないため、自転車の未収納時において昇降体(2)及び自転車載置台(5)が上昇することがなく、安全である。
また、自転車を収納する際には、自転車の前輪(F)で連結ピン(45)を押すことにより、固定手段が解除されて昇降体(2)及び自転車載置台(5)が上昇する。これにより、特別な操作を必要とせずに自転車を前方に移動させるだけで自動的に自転車載置台(5)を上昇させることができ、操作の煩わしさが無い。しかも、自転車を前輪(F)が連結ピン(45)を押すまで前進させない限り、固定手段による固定は解除されないため、自転車が完全に載っていない状態で自転車載置台(5)が上昇することがなく、非常に安全である。
【0035】
また、ストッパ固定板(41)が上下方向に間隔をあけて複数対の貫通穴(411)を有しているため、図9(a)に示す固定状態において、ストッパピン(42)を挿入する貫通穴(411)の高さを変えることにより、自転車載置台(5)が固定される高さを変化させることができる。そのため、様々な大きさや種類の自転車に対応することが可能となる。また、ストッパピン(42)が上下方向に並んだ複数の貫通穴(411)のいずれかに挿入されれば自転車載置台(5)が固定されるため、容易に固定状態とすることができ、固定に失敗する虞が少なくて安全である。
【0036】
自転車載置台(5)は自転車を載せる縦断面凹字状の台であって、自転車の前輪と後輪を載せることができる幅と長さを有している。
自転車載置台(5)は、前端部が昇降体(2)に対して取り付けられており、これにより昇降体(2)と共に昇降する。
自転車載置台(5)の下面には、上昇した位置にある自転車載置台(5)を人力で引っ張って下降させる際の持ち手となる把持部(51)が設けられている。
【0037】
収容手段(6)は、自転車載置台(5)を、昇降体(2)への取付部分(211c)を支点として上方向に回動させることによりスリット(11)内(支柱(1)内)に収容するための手段である。
収容手段(6)は、左右一対の連結棒(61)と、流体圧シリンダ(62)とを備えている。
【0038】
連結棒(61)は長さ方向中途部に屈曲可能部(611)を有する棒であって(図3(a)参照)、屈曲可能部(611)はチェーン等から形成されている。
連結棒(61)の一端部は、昇降体(2)の本体(21)の側板(211)に対して回動可能に取り付けられている。具体的には、側板(211)の自転車載置台(5)の取付部分(211c)より上方部に設けられた穴(211b)に回動可能に取り付けられている。
連結棒(61)の他端部は、自転車載置台(5)の長さ方向中途部に対して回動可能に取り付けられている。
これにより、連結棒(61)は、昇降体(2)と自転車載置台(5)とを前方から後方に向けて下向きに傾斜するように連結している(図1、図3(a)参照)。
【0039】
流体圧シリンダ(62)はガスシリンダや油圧シリンダ等からなり、ロッド(621)が略上下方向に伸縮するように配設されている。
流体圧シリンダ(62)の基端部は、昇降体(2)の本体(21)の前板(212)に対して回動可能に取り付けられている。具体的には、本体(21)の自転車載置台(5)の取付部分(211c)より上方部であって且つ連結棒(61)の一端部の近傍位置において、左右一対の取付板(212c)に対して取り付けられている。
流体圧シリンダ(62)の先端部(ロッド(621)の先端部)は、延出部材(63)を介して自転車載置台(5)に対して回動可能に取り付けられている。具体的には、自転車載置台(5)は、前端部が本体(21)に対する取付部分(211c)よりもやや前方位置にあり、当該前端部より上方に向けて延びる延出部材(63)が取り付けられている(図3(a)参照)。
【0040】
図10は延出部材(63)を示す図であって、(a)は側面図、(b)は正面図である。
延出部材(63)は、側面視L字状に屈曲して一端部に貫通穴(631a)を有する左右一対の側板(631)と、左右一対の側板(631)を連結するように側板(631)の他端部に設けられた円筒部(632)とから構成されている。
円筒部(632)にはピン(64)が挿通される(図3(a)(b)参照)。このピン(64)は、昇降体(2)の側板(211)の穴(211c)及び自転車載置台(5)にも挿通されており、自転車載置台(5)を上方向に回動させる際の回動支点となる。
延出部材(63)の貫通穴(631a)にはピン(65)が挿通される(図3(a)参照)。このピン(65)は、流体圧シリンダ(62)の先端部(ロッドの先端部(621))に設けられた穴に挿通されており、延出部材(63)と流体圧シリンダ(62)のロッド(621)の先端部とを連結している。
【0041】
次に図11を(a)〜(g)の順に参照しながら、収容手段(6)の作用について説明する。
図11(a)の初期状態では自転車載置台(5)が水平状態にある。
この状態では、流体圧シリンダ(62)にはロッド(621)が短縮しようとする力が働いており、延出部材(63)は上方向に引っ張られている。これにより、自転車載置台(5)には下方向に回動しようとする力が作用するが、連結棒(61)により水平状態より下方に回動することが防がれている。
【0042】
図10(a)の状態から、使用者が自転車が載っていない状態の自転車載置台(5)の後方部分を持って上方向に押し上げると、自転車載置台(5)は昇降体(2)の本体(21)への取付部分(211c)のピン(64)を支点として上方向に回動する。
自転車載置台(5)の上方向への回動に伴って、流体圧シリンダ(62)のロッド(621)が伸長するとともに、連結棒(61)の屈曲可能部(611)の屈曲角度が大きくなり、自転車載置台(5)の床面に対する角度も大きくなる(図10(b)〜(f)参照)。
そして、自転車載置台(5)が上方向に90°回動すると、自転車載置台(5)はスリット(11)内(支柱(1)内)に収容された状態となる。
【0043】
このように自転車載置台(5)をスリット(11)内に収容して支柱(1)内に収めることにより、不使用時や搬送時には駐輪装置を非常にコンパクト化することが可能となる。また、自転車載置台(5)を上方に回動させる際には流体圧シリンダ(62)による抵抗力が加わるため、使用時において不用意に自転車載置台(5)が上方に回動することが防がれて安全である。また連結棒(61)により、自転車載置台(5)が基準位置(水平位置)よりも下方に回動することを確実に防ぐことができる。
【0044】
また、自転車載置台(5)を昇降体(2)への取付部分を支点として上方向に回動させることによりスリット(11)内に収容することができるため、自転車が載置されていない状態では自転車載置台(5)はスリット(11)に収容されて上昇することがない。そのため、特許文献2記載の発明のように、2種類の定荷重バネとそれらの切換機構を設ける必要がなく、構造を簡素化して装置を小型化することができる。
【0045】
本発明においては、少なくとも支柱(1)及び昇降体(2)を、ZAM鋼板と呼ばれる亜鉛−アルミニウム6%−マグネシウム3%の溶融めっきを施した鋼板から形成すると、耐食性に優れたものとなるため好ましい。但し、材質はこれに限定されない。
【0046】
本発明に係る二段式駐輪装置は、従来の二段式駐輪装置(例えば上記特許文献1,2参照)と同様に、上段収納部は幅方向に複数並んで設置され、上段収納部の下方には下段収納部(図示略)が設けられる。
下段収納部の構成は特に限定されないが、例えば、本出願人が特開2008−296784号公報、特開2004−256110号公報、実用新案登録第3045190号公報等において開示した自転車載置台を横方向にスライドすることができるスライド式の自転車収納装置が好適に使用される。
下段収納部としてスライド式の自転車収納装置を使用すると、上段収納部の自転車載置台(5)を下降させる場合には、その下方にある下段収納部の自転車載置台を横方向にスライドさせて移動させることにより、下段収納部の自転車載置台が下降の邪魔になることがない。
【産業上の利用可能性】
【0047】
本発明に係る二段式駐輪装置は、集合住宅や駅の駐輪場等の狭いスペースで多数の自転車を駐輪することが必要な場所において好適に使用される。
【符号の説明】
【0048】
1 支柱
11 スリット
2 昇降体
211c 自転車載置台の取付部分
22 車輪
3 牽引手段(定荷重バネ)
31 巻き芯
32 帯状板
33 接続具
34 折れ曲がった部分(折り曲げ部)
5 自転車載置台

【特許請求の範囲】
【請求項1】
上段収納部と下段収納部を有する二段式駐輪装置であって、
前記上段収納部は、
上下方向に延びる支柱と、
前記支柱に沿って昇降可能な昇降体と、
前記昇降体に対して上方向の引張力を付与する牽引手段と、
前記牽引手段により付与される引張力に抗して前記昇降体を前記支柱の下方位置に固定する固定手段と、
前記昇降体に対して前端部が取り付けられた自転車載置台と、
前記自転車載置台を前記スリット内に収容可能とする収容手段と、
を備えており、
前記支柱は、幅方向中央に上下方向に延びるスリットを有し、
前記昇降体及び前記牽引手段は前記支柱内に配設されており、
前記牽引手段は、前記スリットを挟んで配置された左右一対の定荷重バネからなり、
前記定荷重バネは、前記支柱内の上方位置に配設された巻き芯と、上端部が前記巻き芯に固定され且つ下端部が前記昇降体と接続された帯状板とからなり、
前記帯状板は、前記スリットを挟んで互いに略平行に上下方向に延びる左右一対の帯状板からなり、
前記収容手段は、前記自転車載置台を、前記昇降体への取付部分を支点として上方向に回動させることにより前記スリット内に収容する
ことを特徴とする二段式駐輪装置。
【請求項2】
前記支柱内の上方位置には、左右一対の前記巻き芯が配置されており、
前記左右一対の巻き芯には、前記左右一対の帯状板の基端部が夫々固定されており、
前記左右一対の帯状板は、前記左右一対の巻き芯の前記スリットから遠い側から出て下方に延びており、それらの下端部は、前記スリット側に向けて曲がっていることを特徴とする請求項1記載の二段式駐輪装置。
【請求項3】
前記左右一対の帯状板の下端部には、夫々接続具が取り付けられており、
前記接続具は、正面視略くの字状に折れ曲がった金属板からなり、
前記折れ曲がった部分より下方部分は、上下方向に配置されて前記帯状板の下端部近傍と固定されており、
前記折れ曲がった部分より上方部分は、斜め外向きに配置されて前記昇降体と接続されていることを特徴とする請求項2記載の二段式駐輪装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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